妻子持ちの白獅子獣人の課長が年下のハスキー犬獣人に催眠術をかけられてエッチしちゃうお話

  [chapter:部下視点]

  地方の市役所の職員は楽に稼げるというイメージを抱いている奴はそれなりに居ると思う。しかし、オレ――[[rb:犬飼 零二 > いぬかい れいじ]]が所属する福祉政策課はかなり忙しいし残業する日も多い。

  今日もオレは、最低限の照明だけ点けた夜の仕事場で、ぼんやりと輝くディスプレイと睨めっこをしていた。

  「ふあぁ……」

  キーボードを叩きながら欠伸をすると、オレのすぐ隣の席でデスクワークをしている白獅子獣人が鋭い視線を向けてきた。思わず、心の中でやべっと呟いてしまう。

  「犬飼。仕事中は気を引き締めろ」

  「はい、すみません……」

  夏場であるというのに黒いスーツをきっちりと着込んだこの白獅子獣人の名は[[rb:獅子ヶ谷 千侍 > ししがや せんじ]]。福祉政策課の課長でありオレの上司だ。今日、オレはこの獅子ヶ谷課長と二人きりで残業をしていた。

  獅子ヶ谷課長はとにかく、真面目だ。仕事で手を抜く事は一切許さないし、さっきのオレみたいに緩んだ姿を見せたら即注意してくる。堅物で厳しい、四十五歳のおじさんだ。

  いまだに学生に間違えられる事が多い童顔のハスキー犬獣人であるオレも、課長と同い年になる二十年後にはこんな威厳がある見た目になれるのかなあ。

  「……どうした。俺の顔をぼんやりと見つめて」

  「うわわ、すみません!」

  年中変わらない課長の仏頂面をついまじまじと見つめてしまった。

  「疲れているようだな。少し休憩するぞ」

  「は、はい!」

  課長は立ち上がってどこかに行ったかと思うと、紙パックに入ったジュースを手に持って戻ってきた。

  「飲め。疲れた時は甘いものが効く」

  「ありがとうございます!」

  課長が俺の前に置いたジュース。そのパッケージにはファンシーなフォントでいちごミルクと書かれていた。

  ――この堅物で強面の課長は、意外にも甘党である。休憩時間にはいつもいちごミルクを啜っているため、ギャップがすごい。なのに、体型は緩んでおらず筋骨隆々だ。課長曰く、学生時代に野球をしていた時の癖が抜けずに自宅で毎日筋トレをしているとのこと。本当に、真面目だよなあ。

  「ふぅ……」

  目を閉じ、甘さを噛み締めるようにしていちごミルクをストローで啜る課長を見るとつい口元が緩んでしまう。それを悟られないように、オレもストローを咥えて貰ったいちごミルクを啜る。

  ……ああ。確かに疲れた時は効くな。僅かな酸味と強い甘味が脳にガツンとくる。

  「美味しいです」

  「それは良かった。……おかわりも要るか?」

  「い、いえ。気持ちだけで大丈夫です。ありがとうございます」

  「そうか。もしまた飲みたくなったら遠慮なく言え」

  福祉政策課の冷蔵庫には、課長が買い溜めした大量のいちごミルクが入っている。もしおかわりが欲しいと言えば、課長はそこから本当におかわりのいちごミルクを持ってくるだろう。別に甘いものが嫌いな訳ではないが、オレは一本飲めば充分である。

  「……あの、もう結構遅い時間ですがお家の方は大丈夫ですか?」

  いちごミルクを飲み終えた後、オレは課長にそう尋ねた。時刻は夜の九時を過ぎている。

  「大丈夫だ。明日は休みだし、外出して家族サービスをする。それであいつらのご機嫌取りをするさ」

  「……そうなんですね」

  独身であるオレと違い、課長は妻帯者だ。

  課長のデスクには写真立てが置かれているのだが、その中には温和そうな獅子獣人の女性とやんちゃそうな獅子獣人の男の子の姿が写し出された写真が入っている。課長の奥さんと息子さんだ。奥さんは課長と同い年で、息子さんは十一歳になったらしい。

  オレは知っている。普段仏頂面の課長が、休憩時間にこの写真を眺めている時だけは穏やかな笑みを浮かべている事を。そしてそれを見る度に、オレの胸はズキリと痛むのだ。

  オレは、昔から歳上の男に惹かれる傾向があった。ざっくり言うと、歳上が好きなゲイである。けれど、オレはそれを公言していない。田舎は噂が広がるのも早いし、それが面倒で嫌だから隠しているのだ。しかし、隠していても心は勝手に恋をする。

  ――我ながら、最悪だと思う。妻子持ちの上司に恋をしているだなんて。

  「犬飼は、休みの日はどうしているんだ」

  「えっ? あー、えっと……」

  あれこれ考えている最中に、課長から急に話題を振られて動揺してしまった。気持ちを切り替えて返答せねば。

  「……動画を観ながら家でゴロゴロしていることが多いですね」

  あっ、正直に答えすぎた。これは真面目な課長の好感度が下がりそうな返答だ。オレのバカ!

  「ふむ。今時の若者はみんなそうなのか。[[rb:万葉 > かずは]]も暇があれば寝転がって菓子を摘みながらタブレットで動画を観ていてな……。注意はしているのだが」

  万葉とは、彼の息子の名だ。どうやら、万葉くんは真面目な課長と違ってごく普通のやんちゃな子のようである。

  「うーん。注意したくなる気持ちは分かりますが、注意しすぎると反発して仲が拗れるかもしれないから気をつけた方が良いかもしれませんよ」

  「そういうものなのか?」

  「はい」

  何故ならば、オレがそうだったからである! 大人になった今は自分に非があって注意されるのが当たり前だったのだと分かる。でも、ガキだった頃のオレは何で注意するんだよって親に逆ギレしちゃったんだよなあ。万葉くんはそうならないといいんだけれど。

  「どう接すればいいのだろうか。万葉に嫌われてしまったら、俺は……」

  恐らく、課長は結構な親バカだ。万葉くんを溺愛していて、嫌われるのが怖くてたまらないようである。いいなあ。オレも愛されたい。

  「とりあえず、一緒に何か動画を観て楽しんでみたらどうですか? 仲が深まるかもしれませんよ」

  好かれたい相手に対しては、趣味に共感するのが効果的。そう聞いたことがある。

  「動画か。犬飼は、どんな動画をよく観るんだ?」

  「うーん。オレは最近、マジック系の動画にハマっていますね。この前なんか、有名な配信者がマジシャンに催眠術をかけられてどんな命令にも従ってしまうみたいな動画を見ました。やらせだろーと思いつつ、オレも催眠術の練習をしたりして」

  「さ、催眠術? 胡散臭いな……」

  「ハハッ、オレもそう思います。でも意外と、課長みたいな[[rb:獣人 > ヒト]]は催眠術にかかりやすかったりして。試してみますか?」

  オレがそう言うと、課長は鬣を指で軽く掻きながら考え込むような素振りを見せた。くだらないと一蹴されるのを予想していたから意外な反応だ。

  「……話のネタにはなるかもしれん。やってみせてくれ」

  課長の表情は真剣そのもの。万葉くんが食いつきそうな話のネタを求めているのがよーく伝わってきた。間違いない。やはり彼は子煩悩であり親バカである。

  「分かりました。とりあえずやってみます」

  オレはデスクの上に置いていたスマホを取り、あるアプリを起動した。

  今、オレが起動したアプリの名は『[[rb:神之音 > カミノネ]]』。一定の間隔で鈴の音を鳴らすアプリであり、オレが数日前に観た動画に登場したマジシャンが催眠術をかける時に使用していたやつだ。

  アプリが起動すると、薄暗い職場内にしゃんしゃんと鈴の音が響き始めた。その状態でオレは人差し指を課長の顔の前に突き出し、ゆらゆらと左右に揺らしながらこう呟く。

  「神之音を聞き、我に従え。神之音を聞き、我に従え。神之音を聞き……」

  短い呪文をひたすらに繰り返す。

  うーん、課長が言ったようにこれは胡散臭いと自分でも思う。なんか恥ずかしくなってきた。

  「……ってなワケで、これで催眠完了です」

  鈴の音に合わせて短い呪文を二十回唱える。それだけで催眠は完了して相手を意のままに操れると、オレが観た動画では説明されていた。

  「ふむ。特に変わった感じはしないが」

  「でしょうね!」

  そりゃそうだ。こんな簡単に相手を意のままに操れる訳がない。

  「まあダメもとで課長に命令してみますよ。そうだなあ……」

  今、オレは課長の顔の前に人差し指を突き出している状態だ。それでオレが思いついた命令は、

  「オレの指を舐めてください!」

  というものだった。まあ、何言ってんだお前と一蹴されて終わるだろうけどね!

  「ああ。分かった」

  「えっ?」

  課長は大きな口を開け、オレの指をぱくりと咥えた。そしてそのまま、ざらりとした舌でオレの指を舐め始める。

  「か、課長!?」

  一瞬、冗談でやっているのだと思った。だが、課長はこんなことを冗談でするタイプではない。まさか本当に催眠術にかかったのか?

  「課長! もういいです!」

  オレがそう言うと、課長は口を離した。透明な唾液が、指先からつう、と垂れる。

  心臓がバクバクと鳴って張り裂けそうだ。

  本当に課長が催眠術にかかっているのだとしたら、何でもしてくれるのか? 課長が何でもしてくれるとしたら、オレは……。

  「……課長。オレにキスしてくれませんか?」

  もしも、さっきの課長が冗談で柄にも無い行動を取ったのだとしたら、この命令には絶対従わないだろう。ノンケかつ愛妻家である彼がオレに口付けするなど、絶対にありえない。そう思ったのに、

  「んんっ……!?」

  課長は、躊躇せずにオレと口付けをした。

  口内に、甘いいちごミルクの味が広がる。ああ、甘くて、熱くて、蕩けそうだ。心臓が、さらに早鐘を打つ。

  間違いない。課長は、催眠術にかかっている。命じれば、何でもしてくれる。オレの望みを、何でも叶えてくれるんだ。

  「んっ……」

  分かっている。奥さんや子供を愛する課長を操ってキスするなんて、最低な行為だ。罪悪感が胸を締め付ける。

  ……でも、それでも、オレは今、幸せなんだ。ずっと好きだった課長とキスできて、幸せなんだよ。

  「……っ、はあっ……」

  長い長い口付けの後、オレは深く息を吸った。その最中、こう思ってしまう。キス以上の行為を、したいと。

  「大丈夫か、犬飼」

  色んな感情がない混ぜになった今のオレは涙目になっているだろう。そんなオレを見て、課長は心配そうな表情を浮かべている。

  ああ、そんな反応をしないでくれ。もっと好きになってしまうから。

  「……大丈夫です」

  きっと、ここで止めるのが正解だ。これ以上はいけない。踏み止まらないと。

  課長に、奥さんと子供を裏切るような真似はさせちゃいけない。

  ……そう思うのに、オレの中の悪魔は囁く。これはチャンスだ。今までやりたくてもできなかったことをしてしまえと。

  ――いつも仏頂面で、何かある度に細かく注意をしてくる課長。オレがミスした時は、一緒にその過ちを正そうとしてくる課長。疲れた時や落ち込んでいる時はいちごミルクを差し出して労ってくれる課長。そんな課長が、オレは好きだ。好きで好きで、たまらないんだ。

  「……課長。もう一度、オレにキスしてください」

  結局、オレは悪魔に勝てなかった。

  オレの命令に、課長は頷く。それから数瞬の後、再びオレたちの口は触れ合った。

  もう戻れない。[[rb:獣人 > ヒト]]の道に反する選択を、オレはしてしまったのだ。

  「んあっ、んんっ……」

  今度は、口付けをしたまま舌を絡ませる。

  こうなったら、とことんまで課長を貪ってやろう。やりたかったことを、全てやる。もう躊躇はしない。

  「……オレのちんこ、しゃぶってください」

  ディープキスを堪能した後、オレはズボンと下着を脱いで椅子に座った。課長との濃厚な口付けで興奮したオレのちんこは限界まで硬くなって我慢汁を流している。

  「……大きいな。犬飼のがこんなに立派だったとは……」

  課長はしゃがみ込み、オレのちんこをまじまじと眺めた後にそんな感想を漏らした。

  自慢じゃないが、オレのちんこはでかい方だと思う。この前、銭湯に行った時に周りの獣人のちんこを見る機会があったが、その中でオレが一番でかかった。

  「んむっ……」

  「うあっ、凄い……!」

  オレのちんこが、温かいものに包まれる。

  夢みたいだ。あの課長が、今、オレのちんこを咥えている。

  「んっ、んんっ……」

  亀頭部を咥えた課長は、猫科の獣人特有のざらざらした舌を動かして刺激を与えてきた。ざりざりと刺激される度に、オレの理性も削れていく。

  すっかり情欲の炎が燃え上がったオレは、両手で課長の後頭部を抑えてゆっくりと腰を前後に揺り動かした。

  「むぐっ、んっ、んん……!」

  少し苦しそうな課長の声が、さらに興奮を煽る。気持ち良過ぎて、早くも射精してしまいそうだ。もう我慢できない。このままの勢いのままに快楽を貪ろう。そう思ったオレは椅子をギシギシと鳴らしながら無我夢中で腰を動かした。

  そして、ついにその時が来る。

  「ああっ、課長っ……! イきますっ! 口の中に出しますよっ!」

  課長の熱に包まれながら、オレは全身をガクガクと震わせた。課長の口の中でオレのちんこが激しく暴れ回り、精液を撒き散らしているのが感覚的に分かる。

  「んぐっ……」

  課長が上目遣いでオレを見ながら、何度も喉を鳴らす。

  今、課長はオレの精液を飲んでいるんだ。その事実に、オレは身震いする。歓喜と快感による震えだ。

  「げほっ……。精液を飲んだのは初めてだ。こんな味なんだな」

  オレが放った精液を飲み込んだ後、課長はちんこから口を離してそんな感想を述べた。

  「美味しくないですか?」

  「ああ。美味くはないな」

  いつもと変わらぬ仏頂面のまま、課長は口の端から垂れる精液を手で拭う。その仕草にオレは酷く興奮してしまう。

  射精しても、全然熱が冷めない。もっと課長と繋がりたい。気持ちよくなりたい。気持ちよくさせたい。

  「……課長。ズボンとパンツを脱いでください」

  催眠術にかかっている今の課長は、その命令に抗えずに立ち上がる。そして、流石に恥ずかしいのか少し頬を赤く染めながらも、彼はカチャカチャと音を鳴らしてベルトを外し、下着ごと一気にズボンを下ろした。

  少し皮を被った、だらりと垂れた太い肉棒。それを見たオレは思わず息を呑む。僅かに見える亀頭部の色は僅かに色素が沈着しており、子作り経験がある父親のものだと示しているようだった。理性の箍が外れた今のオレにとってそれは興奮材料にしかならない。

  「そのまま動かないでください」

  そう命令し、オレは課長のちんこに顔を近づける。息を吸うと、蒸れた汗の匂いが鼻腔を満たした。冷房はついているが省エネモードのためこの部屋は少し暑く、課長が汗をかくのも無理はない。

  「臭くないか?」

  課長も汗をかいているのを気にしているようで、オレにそう尋ねてきた。その問いに、オレは首を左右に振る。オレにとっては、どんな香水よりも好きな匂いだ。

  「あむっ……」

  だらりと垂れた肉棒を右手で持ち上げ、そのまま先端を咥える。

  「ぐっ……犬飼……っ!」

  肉棒の先端を咥えたまま舌を動かして包皮を剥くと、課長の身体が小さく震えた。そのまま鈴口やカリ首を舌でなぞり、剥き出しになった亀頭部に満遍なく刺激を与える。すると、課長のちんこはオレの口の中で徐々に大きくなっていった。

  オレにちんこをしゃぶられて課長が感じている。その事実に、オレの胸は高鳴った。

  「あっ、部下に、くうぅっ……こんなことをさせて、興奮してしまうなんて……っ!」

  いくらでも興奮すればいい。そう思いながら、オレは根元まで課長のちんこを咥えた。そのまま喉に力を込め、先端部を強く締め付ける。

  「がああっ!」

  課長の身体が大きく震えた。構わず、オレは課長のちんこに刺激を与える。

  「離れろ、犬飼! このままでは……!」

  離れるものか。オレの中に出すまで、絶対に離れない。

  「ぐっ……おおおおぉっ!!」

  獅子の咆哮が辺りに響いた。同時に、オレの口の中で課長のちんこが何度も跳ね、熱い液体が口内を満たしていく。汗と雄の匂いが鼻を突き抜けて、くらくらする。課長が放った熱くて粘りがある液体を飲み込んでいくと、よりその匂いが強くなって酷く興奮した。

  「うあっ、ああぁっ……」

  長い射精の最中、課長はいやらしい声を漏らしながらびくびくと身体を震わせ続けていた。

  「……へへっ、溜まっていたみたいですね。課長」

  ジョッキに入ったビールくらいの量を飲んだ気がする。腹の中が課長の精液でたぷたぷだ。

  「すまない。我慢できず、口の中に出してしまった……」

  「謝らないでくださいよ。オレは課長のを飲めてめちゃくちゃ嬉しいですよ」

  「しかし……」

  催眠術にかかっても生真面目な性格はそのままだ。欲に負けて部下の口に精液を放ったことに負い目を感じているようである。

  「……そんなに申し訳ないと思うなら、またオレのを飲んでくださいよ。今度は下の口で」

  「それはどういう……」

  「床に寝転がって、股を大きく開いてください」

  頬を赤く染めた課長は小さく「分かった」と呟き、硬い床の上に寝転がって股を開いた。

  萎えたちんこの鈴口から垂れる精液の残滓。白い毛に覆われた丸々とした睾丸。そして、使用済みちんこの亀頭部と違って色素が薄い肛門も丸見えだ。

  秘部をまじまじと見られて恥ずかしかったのか、課長はオレから目を逸らした。その反応も、オレをより興奮させる。

  「うおっ!?」

  オレは課長の尻肉を左右の手で押し広げた後、固く閉じた薄いピンク色の肛門に顔を近づけて舌を這わせた。

  「犬飼……そんな汚い所を舐めるな……っ!」

  すみませんが、その命令には従えません。心の中でそう呟きながらひたすらに課長の肛門を舐める。ほんのりと汗の味がして、しょっぱい。興奮する味だ。

  「……くっ、俺はどうして、こんな……っ! 犬飼、ダメだ……! 俺には家族が……」

  催眠が解けかけているのだろうか。課長がオレの頭を押さえて、止めようとしてきた。

  ――今更、ここで止められるかよ。

  「うああぁっ……!!」

  固く閉じた肛門に舌の先端を挿入すると、課長の全身から力が抜けた。その隙を逃さず、オレは激しくピストン運動を行って肉穴を解す。ぐちゅぐちゅと湿った音が響く度、課長の肉穴が緩んでいく。

  「頼む、やめてくれ……!」

  その言葉を無視し、舌でひたすらに肉穴を穿る。抵抗のつもりなのか時々きゅうっと収縮したが、舌を動かすとすぐにまた緩む。そうしている内に、課長の肉穴はトロトロに解れた。

  さて、念のためにもう一度催眠術をかけよう。

  神之音を起動したオレは、鈴の音に合わせて指を左右に振り呪文を唱えた。その後、こう命令する。

  「課長。自分の手でお尻の穴を広げてオレによく見せてくださいよ」

  「……こうか?」

  先程のように抵抗する素振りは一切無く、課長は自らの手で尻肉を左右に開いて小さく口を開いた肛門をオレに見せつけてくれた。目論見通り、再び催眠術にかかってくれたようだ。

  「ひくひく動いてて、やらしいですよ」

  「そんなことを言うな……!」

  やはり羞恥心はあるらしく課長の顔がみるみる赤くなっていく。

  ああ、もう我慢できない。早く課長と繋がりたい。そう思ったオレは床の上に仰向けで寝転がった。そして、こう命令する。

  「課長。オレに跨ってください。そして、オレのちんこをケツで受け入れてください」

  「……犬飼が、それを望むのならば……」

  どこか虚な目をした課長がオレの身体に跨る。そして、天を仰ぐオレのちんこの先端に肛門を宛てがい、ゆっくりと腰を落とした。

  「ぐうっ……!」

  「すげえっ、入ってく……!」

  課長の肉穴の中に、オレのちんこがずぶずぶと飲み込まれていく。

  課長の穴はとてもキツくて、熱い。きっと、ノンケである課長がケツで誰かを受け入れた経験は無いだろう。つまり、オレは今、課長の初めてを貰ったんだ。

  「ふ、太いっ……!」

  オレのちんこを半分ほど挿入したところで課長の動きが止まった。痛みと圧迫感があるのかもしれない。

  「ゆっくりで良いですよ。深呼吸しながら、体重をかけて腰を落としてください」

  「分かった、言う通りにする……っ!」

  課長はオレの命令に従い、何度も深呼吸をしながら腰を落としていった。

  「がっ、はあっ……全部、入ったぞ」

  少し時間はかかったが、オレのちんこは根元まで課長の中に沈み込んだ。課長の呼吸に合わせて肉穴がきゅうきゅうと蠢いて、オレの射精欲が高まっていく。しかし、本番はここからだからまだイくわけにはいかない。

  「手を斜め後ろに突いた後、オレのちんこが抜けないように気をつけながら腰を上下に動かしてください」

  課長は頷いた後、斜め後ろに手を突いて腰を振り始めた。

  「んっ、ううっ、くっ……!!」

  課長が腰を上下に動かす度に太いちんこが上下に揺れるのが見えて、めちゃくちゃ興奮する。

  上半身は普段見慣れているスーツ姿なのも良い。いつも一緒に仕事をしている課長を犯しているのだと実感するから。

  「千侍さん……っ!」

  下の名前で呼んだのは、これが初めてだった。独占欲が胸の内で膨れ上がる。

  家族の事なんか忘れてオレだけ見て欲しい。オレを好きになってほしい。オレだけのものになってほしい。

  様々な感情を込めながら、下から腰を突き上げる。

  「んおっ、おおっ……!」

  千侍さんの口から漏れる声が、徐々に艶やかなものに変じていく。いつの間にか、彼の肉棒は芯を持ち天を仰いでいた。

  オレのちんこで、感じてくれているんだ。嬉しい。嬉しくてたまらない。

  「あっ、犬飼……犬飼っ……!!」

  千侍さんが腰を振る速度がどんどん上がり、彼の腸液とオレの我慢汁が混ざり合って奏でる淫らな音が次第に大きくなっていく。そして、それに連動して徐々に高まっていく射精感。

  ――もう、限界だ。

  「イきますっ、千侍さん!!」

  全ての力を込め、腰を突き上げる。その瞬間に千侍さんの肉穴の締め付けが強くなり、電流のような快感が全身を駆け巡った。

  オレのちんこが千侍さんの中で激しく跳ね、どろどろの欲望を吐き出す。

  「ぐうっ、俺ももう……! がああああぁっ!!」

  咆哮と共に、千侍さんも二度目の射精を迎えた。びくびくと震える太い肉棒の先端から、大量のザーメンが迸る。オレの上着が千侍さんの欲望で白く染め上げられていく。

  「はあっ、はぁっ……」

  千侍さんがオレの身体の上で荒い呼吸を繰り返す中、オレはゆっくりと上半身を起こした。そして、繋がったまま彼の身体をしっかりと抱き締める。

  「好きです、千侍さん」

  これは空虚な告白だ。言い換えればただの自己満足。これが受け入れられないのはオレがよく知っている。

  「犬飼……俺は……」

  「何も言わないでください」

  しばらく千侍さんの温もりを堪能した後、オレは再び千侍さんに催眠術をかけた。今の行為を全て忘れるように、と。

  §

  

  休み明けの月曜日。オレと課長はまた薄暗い職場の中で残業をしていた。

  「休憩するぞ、犬飼」

  オレは頷き、デスクに置いていたブラックの缶コーヒーを啜る。

  ……ぬるくてまずい。そして、苦い。

  「お前がコーヒーを飲むのは珍しいな」

  「苦いものが欲しい気分だったので」

  「そうか」

  課長はオレの隣でいつものようにいちごミルクを啜りながら、デスクの上に置かれている小型のラジオの電源を入れた。

  課長は、休憩中にラジオを聴く事がたまにある。大抵はラジオニュースを聴いているが、今ラジオから流れているのはニュースでは無さそうだった。

  ……ネットロアがどうのって聴こえたが、よく分からない。興味もないので、オレはラジオから流れる音声を聞き流して課長と話をすることにした。

  「……そういえば、お休み中はどこに行ったんですか? ご家族と外出するって言っていましたよね」

  「ん? 海に行ったが……」

  「楽しかったですか?」

  「まあな。だが、大変でもあった。万葉が沖の方に泳いで行きたがるから目を離せなかったな」

  そう語りながら、課長は穏やかな笑みを浮かべた。

  「……楽しかったようで、何よりです」

  結局、オレは今でも課長が好きだ。家族想いである部分も含めて。

  「……どうしたんだ、犬飼。今日のお前は、元気が無いように見えるが」

  「そうですか?」

  「ああ。悩みがあるのなら相談に乗るぞ」

  課長が、心配そうにオレの目を見つめる。

  ――頭の中に、鈴の音が鳴り響いた。それと同時に、自分の声も鳴り響く。

  『また千侍さんの身体を貪れ。どうせ無かったことにできる。だから何度も愛し合える。遠慮するな。貪れ。貪れ。貪れ』

  ……五月蝿いな。頭が割れそうだ。どうすればこれは鳴り止む。

  ――ああ、分かったぞ。また、千侍さんを操って犯せばいいんだ。そうすればきっとこの音は鳴り止む。きっとそうだ。そうに違いない。

  「犬飼?」

  ポケットの中に入れていたスマホが震える。

  ……分かっているよ。あれを起動すればいいんだろう。

  「一体、何をしている……?」

  スマホを取り出して神之音を起動した瞬間、あの鈴の音が鳴り響いた。

  不思議だ。さっきと違って全然五月蝿いと感じない。むしろ心地良い。

  「――神之音を聞き、我に従え」

  オレがこの力を操っているのか。それとも、オレがこの力で何かに操られているのか。分からない。でも、どうでもいい。

  この力を使えば、オレは望みを叶えられる。この力を使っている時だけは千侍さんがオレだけを見てくれる。オレだけを愛してくれる。それは確かなんだ。だから、これからもオレはこの力を使い続ける。そして、千侍さんと愛し合うんだ。ずっと。ずっとずっと。

  ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと。

  【了】

  課長視点バージョン → [jump:2]

  [newpage]

  [chapter:課長視点]

  基本的に残業はするべきではないと思う。しかし、福祉政策課には急を要する案件が舞い込む事が多い。

  特に多い緊急の案件は、虐待を受ける児童や高齢者を然るべき施設で保護するための手続きと支援経過の記録だ。

  今日は夕方に高齢者への虐待の通報があり、その対応に追われている内に部下と共に残業をする事になってしまった。

  「ふあぁ……」

  隣のデスクで、オレの部下であるハスキー犬の獣人――犬飼 零二が大欠伸をしている。疲れているのだろう。残業に付き合わせてしまって申し訳ないと思う。しかし、緩んだ態度を許してはいけない。厳しいようだが、しっかりと注意せねば。

  「犬飼。仕事中は気を引き締めろ」

  「はい、すみません……」

  犬飼は頭を下げ、素直に謝った。素直なのは、彼の長所だ。抜けているところがあるためつい厳しい言葉をかけてしまうこともあるが、俺は彼を好ましく思っている。彼は素直で頑張り屋だから、きっとそう遠くない内に良い伴侶と巡り逢えるはずだ。

  「……どうした。俺の顔をぼんやりと見つめて」

  「うわわ、すみません!」

  「疲れているようだな。少し休憩するぞ」

  「は、はい!」

  疲れている時は糖分だ。

  俺は冷蔵庫から紙パックのジュースを二つ取り出し、一つを犬飼のデスクの上に置いた。

  「飲め。疲れた時は甘いものが効く」

  「ありがとうございます!」

  犬飼は普段、水ばかりを飲んでいる印象がある。たまには甘みがあるいちごミルクを飲んでリフレッシュするのも良いはずだ。

  「ふぅ……」

  座って、俺もいちごミルクに口をつける。

  うむ、やはり美味い。強烈な甘みが身体の隅々に澄み渡り、疲れが取れていくようだ。

  「美味しいです」

  いちごミルクを飲みながら、犬飼はそんな感想を漏らした。

  「それは良かった。……おかわりも要るか?」

  「い、いえ。気持ちだけで大丈夫です。ありがとうございます」

  「そうか。もしまた飲みたくなったら遠慮なく言え」

  冷蔵庫の中に大量のストックがあるため、いくらか犬飼にあげても問題はないのだがな。カロリーを気にしているのだろうか。若者はそんなのを気にしなくても良いと思うが。

  「……あの、もう結構遅い時間ですがお家の方は大丈夫ですか?」

  いちごミルクを飲み終えた後、犬飼が心配そうにそう尋ねてきた。

  「大丈夫だ。明日は休みだし、外出して家族サービスをする。それであいつらのご機嫌取りをするさ」

  「……そうなんですね」

  俺は大切な妻子――[[rb:百華 > ももか]]と万葉の姿を思い浮かべた。

  俺たちの仕事は、誰かの命に関わる仕事だ。万葉は、誰かの命を助けるヒーローに憧れている。俺は、万葉が憧れるヒーローのようになりたい。だから、日々全力で仕事に取り組んでいる。

  だが、仕事ばかりにかまけて家族を蔑ろにはしたくない。なので、明日の休日は二人と共に海へ行く約束をしている。

  心置きなく楽しむために、仕事をしっかりと片付けなくては。

  ……そういえば、犬飼は休みの時はどのように過ごしているのだろう。気になったため、俺は彼に尋ねてみた。

  「犬飼は、休みの日はどうしているんだ」

  「えっ? あー、えっと……動画を観ながら家でゴロゴロしていることが多いですね」

  「ふむ。今時の若者はみんなそうなのか。[[rb:万葉 > かずは]]も暇があれば寝転がって菓子を摘みながらタブレットで動画を観ていてな……。注意はしているのだが」

  怠惰なのは良くない。もっと有意義な時間を過ごしてもらいたいのだが。

  「うーん。注意したくなる気持ちは分かりますが、注意しすぎると反発して仲が拗れるかもしれないから気をつけた方が良いかもしれませんよ」

  「そういうものなのか?」

  「はい」

  犬飼の言う事にも一理あるな。最近、俺が事あるごとに注意するせいなのか万葉の態度が冷たくなってきた気がするのだ。

  「どう接すればいいのだろうか。万葉に嫌われてしまったら、俺は……」

  「とりあえず、一緒に何か動画を観て楽しんでみたらどうですか? 仲が深まるかもしれませんよ」

  「動画か。犬飼は、どんな動画をよく観るんだ?」

  「うーん。オレは最近、マジック系の動画にハマっていますね。この前なんか、有名な配信者がマジシャンに催眠術をかけられてどんな命令にも従ってしまうみたいな動画を見ました。やらせだろーと思いつつ、オレも催眠術の練習をしたりして」

  予想外の言葉が出てきて驚いてしまった。

  「さ、催眠術? 胡散臭いな……」

  「ハハッ、オレもそう思います。でも意外と、課長みたいな[[rb:獣人 > ヒト]]は催眠術にかかりやすかったりして。試してみますか?」

  あまり気乗りはしないな。俺は非科学的なものがあまり好きではない。しかし、万葉と仲を深めるためには犬飼のような若者が好むものを知る必要があるかもしれん。

  「……話のネタにはなるかもしれん。やってみせてくれ」

  「分かりました。とりあえずやってみます」

  犬飼はデスクの上に置いていたスマホを手に取り、画面を何度かタップした。直後、鈴の音が辺りに響き始める。

  ――何だ、これは。背中が寒くなるような音だ。本能が警告している。この音は聞くべきではないと。

  犬飼を止めなくては。そう思うのに、身体が動かない。

  「神之音を聞き、我に従え。神之音を聞き、我に従え。神之音を聞き……」

  犬飼の指が、俺の目の前でゆらゆらと左右に揺れる。彼の言葉が、鈴の音とともに脳に刻まれていく。そんな感覚に襲われた。

  「……ってなワケで、これで催眠完了です」

  「ふむ。特に変わった感じはしないが」

  身体が動く。言葉を発せる。

  奇妙な感覚に襲われはしたが、俺の身体に特に変化は無いと思う。先程の呪文のような犬飼の言葉と鈴の音が、頭の中で鳴り響き続けているくらいで。

  「でしょうね! まあダメもとで課長に命令してみますよ。そうだなあ……オレの指を舐めてください!」

  「ああ。分かった」

  「えっ?」

  犬飼の頼みを聞かねば。俺は彼の上司なのだ。部下の頼みを断る訳にはいかない。それが当然だ。従うのが当然だ。

  俺は差し出された犬飼の人差し指を咥えて、舐めた。

  「か、課長!?」

  ほんのりと汗の味がする。だが不快ではない。不思議だ。

  「課長! もういいです!」

  犬飼がそう命じるのならば、俺はそれに従うのみだ。俺は、犬飼の命令に従わなければならない。頭の中でそれを肯定するかのように鈴の音が鳴り響き続けている。

  「……課長。オレにキスしてくれませんか?」

  それが彼の望みならば、叶えねば。

  「んんっ……!?」

  犬飼に近付き、口付けをする。

  口付けをしただけで、彼の体温が高くなっているのが分かった。照れているのかもしれないな。

  それにしても、口付けをしたのはいつぶりだろうか。

  ……ん? 以前、俺は誰と口付けをしたんだ。俺には大切な誰かが居るはず。それなのに、その誰かの名前が思い出せない。何故だ。先程までは確かに覚えていたはずなのに。

  「んっ……」

  余計な事を考えるな。そう言わんばかりに、頭の中で激しく鈴の音が鳴る。

  「……っ、はあっ……」

  犬飼から口を離すと、彼は目尻に涙を浮かべながら苦しそうに息を吸った。

  「大丈夫か、犬飼」

  「……大丈夫です」

  俺は犬飼の望み通りに行動したはずだ。それなのに、彼は何故苦しそうな表情を浮かべているのだろうか。

  「……課長。もう一度、オレにキスしてください」

  良いのだろうか。いや、躊躇うべきではないな。犬飼がもう一度口付けをしたいと言うのなら、何も考えずに従うべきだ。

  「んあっ、んんっ……」

  再度口付けをすると、犬飼が俺の口内に舌を捩じ込んで絡ませてきた。先程の口付け以上に、彼の体温を感じる。熱と舌が絡み合う感触が、心地良い。いつまでもこうしていたいと思う程に。

  「……オレのちんこ、しゃぶってください」

  永遠に続いてほしいと思った口付けの後、犬飼は下衣を脱いで椅子に座った。

  ――今の口付けで興奮したようで、犬飼の男性器は硬くなっている。そして、小刻みに震えながら先端から透明な汁を溢れさせていた。

  「……大きいな。犬飼のがこんなに立派だったとは……」

  他者の硬くなった男性器を見たのは初めてだが、犬飼のこれは恐らく大きい方だ。

  ……おっと、見とれている場合ではないな。犬飼は男性器をしゃぶれと命令した。つまり、これを咥えればいいのだろうな。

  「んむっ……」

  「うあっ、凄い……!」

  犬飼の男性器を咥えた瞬間、口内に塩気が広がった。汗やカウパー線液が混ざった味なのだろう。

  「んっ、んんっ……」

  口淫の経験は無いが、知識はある。咥えたまま舌を動かして刺激を与えれば、きっと犬飼は快感を得られるはずだ。

  「むぐっ、んっ、んん……!」

  突如、犬飼が両手で俺の後頭部を押さえてゆっくりと腰を前後に動かし始めた。少し苦しいが、これで彼がより快感を得られるなら喜ばしいことだ。

  犬飼が腰を動かす度に、椅子がギシギシと鳴る。その音は、彼が絶頂するまでのカウントダウンのように思えた。

  ――やがて、カウントがゼロになる瞬間が訪れる。

  「ああっ、課長っ……! イきますっ! 口の中に出しますよっ!」

  犬飼の身体が激しく震え、俺の口内に熱い液体が放たれた。

  「んぐっ……」

  犬飼が放った精は濃厚で、飲み込むと喉に絡みついてきた。若さを感じるな。

  職場を汚す訳にはいかない。全て飲み干さねば。

  「げほっ……。精液を飲んだのは初めてだ。こんな味なんだな」

  僅かな苦さと甘さが混ざったような不思議な味がした。個人差があるのだろうか。それとも、皆このような味がするのだろうか。俺には判断ができない。

  「美味しくないですか?」

  「ああ。美味くはないな」

  しかし、嫌悪感は無い。大切な部下が放ったものだからだろうか。

  「……課長。ズボンとパンツを脱いでください」

  頰を赤くした犬飼が、俺にそう命令してきた。

  流石にそれは少し恥ずかしい。だが、命令されたのならば従うのみだ。

  俺は立ち上がり、ズボンと下着を下ろした。

  下衣を脱いだ瞬間から、犬飼が俺の男性器を凝視している。俺みたいな中年の男性器を見て、何が楽しいのだろうか。分からん。

  「そのまま動かないでください」

  犬飼が俺の男性器に顔を近づけ、鼻をすんすんと鳴らす。俺の臭いを嗅いでいるのか?

  「臭くないか?」

  汗をかいているから不快な臭いがするかもしれない。そう思って臭くないかと尋ねてみたら、犬飼は首を左右に振った。気を遣っているのだろうか。それとも、本当に臭いとは思っていないのだろうか。

  「あむっ……」

  犬飼は俺の男性器を右手で持ち上げ、そのまま亀頭部を咥えた。突然のことに、俺の頭が一瞬だけ真っ白になる。

  「ぐっ……犬飼……っ!」

  犬飼は口内で舌を器用に動かし、包皮を剥いてきた。その刺激に、俺の身体はつい反応してしまう。

  そういえば、長らく発散していなかった。俺の男性器が久々の性的な刺激に反応し、膨らんでいく。

  「あっ、部下に、くうぅっ……こんなことをさせて、興奮してしまうなんて……っ!」

  上司として、部下にはしたない姿は見せたくない。だが、刺激に抗えなかった。

  「がああっ!」

  俺の男性器を根元まで咥え込んだ犬飼は、喉をきゅっと強く締め付けて強い刺激を与えてきた。

  熱くて、きつくて、脳髄がビリビリと痺れるほどに気持ちいい。

  「離れろ、犬飼! このままでは……!」

  長らく発散していなかった俺に犬飼が与える刺激は強すぎた。このままだと犬飼の口内で射精してしまう。部下の口の中に汚い体液を注ぐわけにはいかない。そう思うのに、

  「ぐっ……おおおおぉっ!!」

  俺は我慢できずに絶頂してしまった。犬飼の口内で、俺の男性器が激しく跳ねている。

  久しぶりの射精は、全身が痺れるほどの快楽を俺にもたらした。

  「うあっ、ああぁっ……」

  誰かに口淫されるのは、こんなに気持ちいいものなのか。こんなの、××もしてくれたことがない。

  ……ん? 今、俺は誰を思い浮かべた?

  俺には大切な誰かが居る。なのに、顔も名前も思い出せない。思い出そうとすると頭の中で鈴の音が鳴り響く。何故だ。

  「……へへっ、溜まっていたみたいですね。課長」

  犬飼は俺が放った精液を全て飲み込んだようだ。

  「すまない。我慢できず、口の中に出してしまった……」

  「謝らないでくださいよ。オレは課長のを飲めてめちゃくちゃ嬉しいですよ」

  「しかし……」

  いくら犬飼が嬉しいといっても、申し訳ない。汚い体液を部下の口の中に放ったうえに飲ませてしまったなんて。

  「……そんなに申し訳ないと思うなら、またオレのを飲んでくださいよ。今度は下の口で」

  「それはどういう……」

  「床に寝転がって、股を大きく開いてください」

  犬飼の意図がよく分からないが、命令には従わねば。

  床に寝転がり、股を開く。すると犬飼は俺の恥部を凝視してきた。

  むう。やはり、恥部を見られるのは恥ずかしいな。まともに犬飼の顔が見られない。

  「うおっ!?」

  しばし俺の恥部を眺めた後、犬飼は左右の手で俺の尻たぶを押し広げ、肛門をぴちゃぴちゃと舐め始めた。予想外な彼の行動に、またも俺の頭の中が真っ白になる。

  「犬飼……そんな汚い所を舐めるな……っ!」

  こんな場所、舐めるべきではない。万葉もよく色んなものを舐める癖があるが、その度に汚いものは舐めるなと百華と一緒に注意している。

  ……ん? 万葉に、百華?

  ――そうだ。俺には妻子が居る。なのに何故、俺は部下とこのような行為に耽っている?

  「……くっ、俺はどうして、こんな……っ! 犬飼、ダメだ……! 俺には家族が……」

  これは家族に対する裏切りだ。俺は万葉と百華を悲しませたくない。だからやめなければ。犬飼を止めなければ。そう思って彼の頭を手で押さえたが、彼はこの行為をやめようとしない。

  「うああぁっ……!!」

  犬飼の舌が、俺の肛門をこじ開けて侵入してきた。何故かじんじんと下腹部が痺れる奇妙な感覚に襲われ、身体の力が抜けていく。その隙に、犬飼は舌を激しく動かして俺の肛門に刺激を与えてきた。

  「頼む、やめてくれ……!」

  犬飼に俺の言葉は届かなかった。

  彼はスマホを握り、画面をタップする。直後、再び鈴の音が鳴り響き始めた。

  犬飼の指が、俺の眼前で左右に揺れる。呪文のような言葉が、また脳に刻まれる。

  ――先程の俺はどうかしていた。犬飼を拒もうとするなんて。

  「課長。自分の手でお尻の穴を広げてオレによく見せてくださいよ」

  彼にどんな命令をされても、どんなことをされても、受け入れないといけない。それが上司としての務めだ。

  「……こうか?」

  左右の手で尻たぶを掴み、左右に開く。恥ずかしいが、犬飼の望みを叶えなくては。

  「ひくひく動いてて、やらしいですよ」

  「そんなことを言うな……!」

  犬飼が喜んでくれるのは嬉しいが、顔から火が出そうだ。あまり見ないでほしい。

  「課長。オレに跨ってください。そして、オレのちんこをケツで受け入れてください」

  世の中には肛門を使って性交する者も居ると聞いた事はある。だが、まさか俺がそれをする立場になるとは思わなかった。

  正直なところ、怖い。けれど、犬飼のためにやらねば。

  ――急かすように、鈴の音が頭の中で鳴り響く。

  「……犬飼が、それを望むのならば……」

  俺は犬飼に跨り、肛門に彼の男性器の先端を宛てがった。とても興奮しているのか、犬飼の男性器は硬い。体重をかければ俺の中に沈み込むだろう。

  俺は意を決し、歯を食いしばりながら腰を落とした。

  「ぐうっ……!」

  「すげえっ、入ってく……!」

  犬飼の男性器が、肛門をこじ開けて侵入してくる。とてつもない圧迫感だ。そして、少し痛い。これが男性器で肛門を貫かれる感覚なのか……。

  「ふ、太いっ……!」

  犬飼の男性器を半分ほど受け入れられたが、これ以上はきつい。身が裂けそうだ。

  「ゆっくりで良いですよ。深呼吸しながら、体重をかけて腰を落としてください」

  「分かった、言う通りにする……っ!」

  深呼吸をすると、少し痛みが和らいだ気がする。このまま深呼吸を繰り返しながら、腰を落としてみよう。

  ……よし。ちょっとずつだが、犬飼の男性器がさらに俺の中に沈み込んでいっている。この調子だ。

  「がっ、はあっ……全部、入ったぞ」

  やがて、俺は犬飼の男性器を全て受け入れる事に成功した。先程よりも圧迫感があるが、慣れてきたのか痛みはあまり無い。

  「手を斜め後ろに突いた後、オレのちんこが抜けないように気をつけながら腰を上下に動かしてください」

  俺は頷き、斜め後ろに手を置いた。痛みがあまり無い今ならば、腰を振っても大丈夫なはずだ。

  「んっ、ううっ、くっ……!!」

  腰を上下に動かすと、湿った音が辺りに響いた。

  中で犬飼の男性器が擦れ、自身の内側の肉が捲れているのが分かる。不思議な感触だ。

  「千侍さん……っ!」

  縋るように名前を呼ばれ、俺の心臓がどくんと跳ねた。

  そういえば、犬飼が俺を下の名前で呼ぶのは初めてだな。何だか、照れ臭くて胸がむずむずする。

  「んおっ、おおっ……!」

  犬飼に下の名前を呼ばれながら勢いよく突き上げられた瞬間、全身がびりびりと痺れるような感覚に襲われた。

  口から声が漏れてしまう。まるで、厭らしいケダモノのような声が。これが自分の口から漏れているなんて、信じられなかった。

  抑えようとしても、抑えられない。己の男性器に血が集まっていくのが分かる。それで俺は理解してしまった。犬飼に犯されて、感じてしまっているのだと。

  「あっ、犬飼……犬飼っ……!!」

  気が付けば、俺は必死で腰を振っていた。犬飼の男性器が最奥に到達する度、俺の身体がびりびりと痺れる。この痺れの正体は、恐らく快感と呼ばれるものだ。

  腰を動かす度に結合部から湿った音が鳴り響き、その音が鳴る度に快感という名の痺れが俺の身体を支配する。

  「イきますっ、千侍さん!!」

  犬飼が一際強く腰を突き上げた直後、腹の中がじわじわと熱くなった。

  どうやら、犬飼が俺の中に精を放ったようだ。それを理解した瞬間に、俺の全身を支配する痺れがより強くなる。

  「ぐうっ、俺ももう……! がああああぁっ!!」

  俺の中で犬飼の男性器が激しく震えているのを感じながら、俺はまた果ててしまった。俺が放った精で、犬飼の上着が汚れていく。

  「はあっ、はぁっ……」

  後で犬飼にクリーニング代を渡さねば。そんな事を考えていると、彼が身体を起こして俺を強く抱きしめてきた。

  「好きです、千侍さん」

  他者からよく鈍いと言われる俺でも、彼が放った『好き』にどんな意味が込められているのかを理解できる。だが、それに応える訳にはいかない。何故かそう思った。

  ……俺には大切な誰かが居る。今は名前も顔も思い出せないが、確かに居るんだ。

  「犬飼……俺は……」

  「何も言わないでください」

  犬飼はしばらく俺の身体を強く抱きしめたまま動かなかった。

  犬飼の体温はとても高く、心臓の鼓動が伝わってくる。それを俺は、心地良いと感じた。

  だが、心地よい時間は呆気なく終わりを迎える。犬飼が鈴の音を鳴らしながら、今の行為を全て忘れるようにと命じてきたからだ。

  きっと、程なくして俺は彼と交わった事を忘れる。その前にこう伝えたかった。

  お前には、俺なんかよりも相応しい相手が現れるはずだ。その相手と幸せになってくれ、と。

  §

  

  休み明けの月曜日。俺と犬飼はまた薄暗い職場の中で残業をしていた。また、夕方に急を要する案件が舞い込んだのだ。

  俺はともかく、犬飼にも残業ばかりさせてしまうのは忍びない。この案件が落ち着いたら、埋め合わせをしよう。少し豪華な飯を奢ったり、有給休暇を取らせなければ。

  ……時計を確認したら、夜の八時を過ぎていた。根を詰めるのは良くないな。

  「休憩するぞ、犬飼」

  犬飼は頷いた後、缶コーヒーを飲んだ。

  ……犬飼がブラックコーヒーを飲む姿は初めて見た気がする。

  「お前がコーヒーを飲むのは珍しいな」

  「苦いものが欲しい気分だったので」

  「そうか」

  そういう日もあるのだろうか。俺は苦いのが苦手なためブラックコーヒーは飲めない。なので、いつものようにいちごミルクを啜る。

  やはり甘いものは良い。疲れが和らぐ。

  ……少し、ラジオでも聴いて気分転換でもするか。そう思い、デスクの上に置いている小型ラジオの電源を入れた。

  『……皆さんはネットロアって知っていますか? 簡単に言うと、インターネット上で発生した都市伝説の事です』

  都市伝説か。俺が学生だった頃、同級生でそういった類の話が好きな奴が居たな。俺は根も葉もない噂は好きではないため興味が無く、話題を振られたら適当に相槌を打った覚えがある。

  『近年はスマートフォンの普及に伴い、アプリを介したネットロアも増えているんですよ。例えば、自分以外の時間を止める事ができるアプリとか、誰かを操れるようになるアプリとか。そんなのが神様に選ばれた者に与えられる……なんてネットロアが流行っているみたいです』

  くだらないと思ってチャンネルを変えようとしたが、誰かを操れるようになるアプリという言葉が妙に気になって指が止まってしまった。

  『もしそんなアプリがあったら、リスナーの皆様は使用しますか? ……使用したいと思ったリスナーさんは気をつけてくださいね。これらのアプリを使用すると、本当に欲しいものが手に入らなくなったり、何かに取り憑かれたように人格が変わってしまったりとか、良くない事が起きるという噂がありますから』

  非科学的だ。だが、今の俺にとって無関係な話ではない気がする。何故だろう。

  『まあ、神……欲望の赴くままに……を使って破滅する……の姿を……楽し……』

  

  急にノイズまみれになったラジオの音声を遮るかのように、犬飼が缶コーヒーを勢いよく机の上に置く。そして、俺にこんな話題を振ってきた。

  「……そういえば、お休み中はどこに行ったんですか? ご家族と外出するって言っていましたよね」

  「ん? 海に行ったが……」

  「楽しかったですか?」

  「まあな。だが、大変でもあった。万葉が沖の方に泳いで行きたがるから目を離せなかったな」

  元気なのは良いが、元気すぎるのも困りものだ。これからも俺がしっかり守らねば。万葉も、百華も。

  「……楽しかったようで、何よりです」

  そう言って犬飼は微かに笑みを浮かべたが、どこか寂しそうに見えた。

  上手く言葉にできないが、今日の犬飼はいつもと違う気がする。何か、悩みでもあるのだろうか。

  「……どうしたんだ、犬飼。今日のお前は、元気が無いように見えるが」

  「そうですか?」

  「ああ。悩みがあるのなら相談に乗るぞ」

  犬飼は大切な部下だ。悩みがあるのなら、それを解消するために協力したい。それが上司である俺の役目だ。

  「犬飼?」

  犬飼は無言でスマートフォンを取り出し、画面をタップした。直後、辺りに鈴の音が鳴り響く。

  「一体、何をしている……?」

  犬飼は答えない。心ここに在らずといった表情だ。

  ……明らかにおかしい。俺は非科学的なものが好きではない。だが、今の犬飼を見ていると考えてしまうのだ。このままだと犬飼が犬飼ではない何かになってしまうという、非科学的な事を。

  

  「――神之音を聞き、我に従え」

  犬飼を止めろ。本能がそう警告を発している。なのに、身体が動かない。

  ……ああ、駄目だ。意識が薄れていく。鈴の音が、俺の意識を塗り潰していく。

  すまない、犬飼。俺はお前を助けられそうにない。そして俺も、この不可思議な現象に抗えないのだろう。

  ――俺は神を信じない。だが、もしもそのような存在が居るとしたら、どうか犬飼を犬飼ではない何かにしないでくれ。素直で頑張り屋な彼を、変えないでくれ。

  どうか、どうか。

  【了】