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エンブオーとドリュウズ 序章

  気が付けばむしゃむしゃ食べていた。

  

  それは誰の料理なのかと言われると マスターのお母さんの料理

  

  料理人ということもあり それは種別を超えたポケモンのオイラらですら美味しかった。

  

  だからこそ、オイラは一時的に太った。

  

  そして…… それが結局……。

  

  『ただの豚には興味ねぇーんだよ、食うだけ食ってぐーたらしてさぁ……』

  

  そして、二つの見慣れたシルエットがボールから現れる。

  

  オーダイルとライチュウ。 しかし いつもと様子が違う。

  

  「ブォー……?」

  

  平然と話しかける状態ではなかった。

  

  オーダイルは、戸惑った表情、ライチュウの方はというと。

  にやりと悪巧みに満ちた目であった。

  

  そして、思わぬ命令だった。

  

  「ライチュウ、電磁波、オーダイル、ハイドロポンプ」

  「ライラァーイ!」

  「ダッダイ……?」

  「はぁ……? あー わかった、 ライチュウ、オーダイルにでんじ……」

  「ダッ、ダイ!?……オーッ……」

  「エンブ!?、ブッ、ブォー!?」

  避けようにもそんな雰囲気じゃないのが伝わる。

  そしてようやく自分にも命令……

  「エンブオー、動くな」

  「ブォッ!?」

  

  そして、その2秒後に来る

  電磁波とハイドロポンプ

  動きが妨げられ、おまけにまともな防御姿勢もとれないまま

  勢いよく放水された水を全身に浴びる。

  当然ながら、技の威力は強力そして、炎タイプであるオイラには弱点だった。

  勿論致命傷。

  

  瀕死に近い状態になった、

  

  そして、二匹の元戦友は、ボールに戻る。

  オイラを見下すようなライチュウの目、そして、ごめんといいたそうな表情のオーダイル。

  そして、思わぬ一言

  「あばよ、豚、最後の最後でちっとは役にたったじゃんか、止めは刺さないでおしてやるからよ、あ、家付近にはもうくんなよ、次は加減無しだからな」

  

  「エンブ……ブォ……」

  目の前の現実は受け入れられなかった。

  そして、 そのまま気を失った。

  

  それから三日、水道水を飲むことはあったが、食べるものがなかった。

  

  知ってる場所にいこうにも。

  

  最後にトレーナーに言われたことが 頭をよぎる。

  

  『家付近にはもうくんなよ、次は加減無しだからな』

  

  そう言われ、足が動かない。代わりに、小さなしずくが膝に毀れる。

  

  それが泣いてるんだと気付いた時は、主人の家の方向に背を向けた時だった。

  

  更に三日、体についていた脂肪はだいぶ減った。

  

  水だけでは限界がある。 しのぎしのぎで木の実や人目を避け残飯を漁る。

  

  思うのは 元マスターのママさんの手料理。

  

  「食いたい……」

  

  その後、どこをどう歩いたかは覚えてなかった、気が付けば……。

  

  ふわりふわりと、食べ物の匂いが風に漂って鼻を刺す。

  

  確か食べ物の名前は……

  

  「たこ焼き……?」

  

  じわりじわりと唾液が溢れてくる。

  

  

  そして、匂いを頼りに体は勝手に動いていた。

  

  匂いの元は思ったより遠くだった。 そういえば豚のオイラは鼻がいい方らしい。

  

  やがて人気のない場所に出た、そこには、公園などにおいているものよりは丈夫そうなベンチがあった。

  

  そして、その真ん中に置いてある、まだ湯気の立つたこ焼き。

  

  たこ焼きには、しっかりと青のりとソースとマヨネーズがかかっていて

  

  恐らく手が付けられてないままの8個、笹で作った容器の上においてあった。

  

  毒とか罠とか そういう発想よりも 匂いが食欲を刺激し

  

  気が付けば、口をあけ、容器をひっくり返し、中身を全部自分の口へ運んだ。

  

  久々のあったかい食べ物、炎タイプとはいえ、熱を感じた。

  

  「あぅっ……はふはふっ……」

  

  そして、胃が食べ物を求めてか、気が付けば、10回も噛まないうちに飲み込んでしまった。

  

  「んぐっ……美味しかった……あぁ……」

  

  味わって食べればよかったなという罪悪感、

  

  はぁ……とため息をつくと同時に、頭が冷静になる。

  

  「あ……食べてよかったかな……?」

  

  辺りに人気はない、右往左往見渡しても誰も見当たらない。

  

  「えっと……ご馳走様でした」

  

  神様とかを信じてるわけではないが、そうとしか思えなかった。

  

  そして、その優しさというか偶然の出来事が、落ち込んでいた気持ちを活気づかせた。

  

  『強くなろう……』

  

  別に元マスターに認められたい訳じゃない。

  

  そういえば、散歩を許可された時に、野生のポケモンから少し聞いた話だ。

  

  人間界とは逸脱したポケモンだけの社会があると……

  

  そこに行ってみようか?

  

  でも場所は知らない……。

  

  ど……しよ……。

  

  そう考えている時にもまだたこ焼きの乗ってた、笹の容器からは僅かな匂いが漂っていた。

  

  気が付けば、犬のように舐めていた。

  

  そんな時だった。

  

  地面がもごもごと動いた。

  

  「んっ?……」

  

  思わず地面に覗き込む。

  

  そして……

  

  地面から何かが飛び出たと思った刹那。

  

  ドンッ

  

  「グガッ……」

  

  顎を強打し、地面に仰向けに倒れる。目の前にお星さまが見えた。

  

  「いっかんいっかん、オレとしたことが飯忘れるとなぁ……って ん……何かあたったか?」

  

  「ぅ……」

  

  まだクラクラする。 事態が把握し切れてない。えっと 現れたポケモンはドリュウズだったかな?

  

  

  「あれ……飯、きれいさっぱり食われとる…… んっ?…… お、あんさん大丈夫か?」

  

  ……よくわからないが、たこ焼きはこの人のものだったらしい。

  

  クビを振って意識を戻す。

  

  「あ、あの、すいません、お腹減ってたから、その、食べちゃいました……。 ごめんなさい」

  

  「ん……嗚呼……そか、レアなたこ焼きやったんやけどな……オレかてやっと……」

  

  そう言われると舌に蘇るたこ焼きの味、お腹が減ってたから凄く美味しかったとかではないみたいだ。

  

  そんなのよりずっとずっと美味しいものだったようだ。

  

  「あ……えっと……ごめんなさい。 代わりに何かオイラに出来ることありますか?」

  

  「んっ……せか……じゃ、頼むかな」

  

  そして、ドリュウズは、ゆっくりとオイラに歩み寄る。

  

  近づかれると改めて体格差があることに気付く。

  

  「オレは、ドリュウズや、名前は呼びやすいように呼んで構わんからな、あんさんは?」

  

  「オイラはえっと……人間界でいう漢字3文字で、炎武雄です」

  

  「そか、宜しくな、炎武」

  

  そして、差しのべられた手

  

  「あ、はい、ドリュウズさん」

  

  オイラはそれを掴み、ゆっくりと仰向け状態から立ち上がった。

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