SNS炎上により見捨てられた狼アイドル、俺だけは離れられないように濃厚な匂いでマーキングする

  ◆お品書き◇

  アイドルグループに所属していた狼獣人ちゃん。

  しかし、炎上してしまい脱退することに。

  それからしばらく。

  ロンリーウルフとして、路上ライブを行なっていた。

  それは、キラキラした目標ではなく、生きる意味を探す為。

  そんなとき、とある男性が現れる。

  ーーーーーーーーーー

  [過去の栄光:ライブ]

  [拍手喝采]

  ???

  はぁ、はぁ……

  ……よしっ!

  みんなー!!♡

  今日は来てくれてありがとー!!♡

  この素敵なメンバーたちと、

  最高の思い出が作れましたっ♡

  また、私たちに会いに来てくれるかなー??♡

  『フゥー!!!』

  『また来るよー!!』

  『大好きだー!!』

  (あぁ……また、だ……)

  (いやらしい視線)

  (愛玩動物を見るような目つき)

  (アタシ自身のことなんて、誰も眼中にない)

  (──在るのはただ、アイドルとしてのアタシ)

  (そのアイドルと親密になりたい、という浅はかな考え)

  (もう、うんざりだ)

  みんなーー!!♡

  またねー!!♡

  愛してるっ♡

  今日のこと、忘れないでっ♡

  ーーーーーーーーーー

  [舞台裏]

  [ジッポとタバコを鞄から取り出す]

  トントン

  カチャンッ

  ……すぅーーーー。

  ……はぁーーーー。

  あー、やっぱコレだわ。

  やっと呼吸できる……

  [グループリーダー、マネージャー、偉い人がやって来る]

  ……何か用ですか?

  [スマートフォンを取り出し……]

  [数枚の写真を見せられる]

  [そこには、舞台裏でタバコを吸う狼ちゃんが写っていた]

  ……これ、アタシ?

  な、なんで。

  誰が撮ったの……?

  えっ?

  『アイドルを辞めてもらう』……?

  『舞台上でも無愛想』

  『舞台裏ではタバコ』

  『そして──SNSに流出、炎上した』

  ……これを見てみろ?

  [コメント欄には……]

  『ヤニカスアイドルで草』

  『臭くて草』

  『やっぱ獣人は野蛮』

  『金返せ』

  なぜ……アタシに見せたんですか……?

  (終わった、何もかも……)

  事の重大さを認識させる為……?

  ──そう、ですか。

  わかりました……

  失礼します。

  (こんなことで辞める?)

  (いや……アタシのせい、か)

  (ははっ……なんだよ……)

  (ちゃんと悔しいじゃねぇか……)

  ーーーーーーーーーー

  [それからしばらく:路上ライブ]

  [誰も立ち止まらない]

  [それでも歌い続ける]

  偽りの仮面を被り〜♪

  世の中に抗い〜♪

  すべてに絶望〜♪

  哀れな私はだぁれ?♪

  [一人、立ち止まる]

  『苦しそうに歌うんだね』だと……?

  ……んだよ。

  見世物じゃねぇぞ。

  勝手にしろ。

  [その日はずっと傍で聴いていた]

  ーーーーーーーーーー

  [それからしばらく:路上ライブ]

  おい。

  今日も聴いてくのか?

  お前……

  アタシが歌う日は絶対に来てるよな?

  暇人なのか?

  (またアタシは……嫌味で返すのか……)

  は?

  アタシのファン……?

  実はアイドル時代から追いかけてた……?

  なぁ、お前。

  ……あの炎上のこと、知ってるよな?

  どうして……

  どうしてッッッ!!!

  こんなクズなアタシに構うんだよ!?

  『キミの、キミ自身のファンだから』……?

  っっっ!?!?

  ばっ、バカじゃねぇの!?

  アタシの何を知ってんだよ!?

  え?

  だから今、知ろうとしてる……?

  (あぁ、そうか)

  (いまアタシは……)

  (心の底から嬉しいんだ…… /// )

  ーーーーーーーーーー

  [別の日:路上ライブ]

  おい、お前。

  ……きょ、今日も最後まで聴いていけよな?

  やっ、約束だぞ……? ///

  [そんなとき]

  [遠くに見覚えのある人物たちが]

  ん?

  あれは……

  (嘘……なんであいつらが……)

  [そこには、脱退したアイドルグループのメンバー]

  [特典イベント(チェキ会)を開催していた]

  [そして──]

  ッッッ!!!

  (お前……まさか、いま向こうの方をじっと見てた……?)

  (やっぱり……)

  (お前も “ そっち ” へ戻るのか……?)

  (またアタシは……)

  (捨てられる……?)

  (だったら……)

  [ズッと身体を寄せて]

  おい!

  今はアタシだけを見ろ!!

  良いなッ!?!?

  ーーーーーーーーーー

  [演奏終了後:路地裏]

  [壁際に追い詰められるファンくん]

  はぁッ、はぁ……

  [とても小声で]

  クソっ!

  なんでこんなに心が苦しいんだ……

  おい!!

  さっき、アイドルの方を見てたよな?

  アタシはそういう目線の動きに敏感なんだ。

  これって……浮気、だよな?

  なぁ……出来心なんだよな……?

  [気弱そうに]

  ……お前もアタシを見捨てるのか……?

  「アタシ自身のファンだから」って言葉、嘘だったのか……?

  ……違うよな?

  [一変、狼としての獣の本能が前に出る]

  アタシがいるのに。

  他の奴にうつつを抜かしやがって。

  [抱きつき、首筋に犬歯を立てる]

  [艶かしく]

  さっき歌ったばっかだからよ?

  汗臭いよな?

  それで、締めのタバコも吸った。

  この匂い……

  お前にたっっっぷり覚えてもらう。

  寝ても覚めても忘れられないような。

  濃厚な匂い。

  ……お前には、アタシだけいればいい。

  アタシは。

  お前さえいればいいんだ。

  ーーーーーーーーーー

  [エピローグ]

  [ファンくんと二人暮らしを始めた]

  [二人の部屋]

  なぁお前。

  ここでタバコ吸ってもいいか?

  ……部屋の中はダメ?

  ベランダならいいって?

  しょうがねえな。

  わかったよ。

  ……お前も一緒に来い。

  お前が隣にいないと、タバコも美味くねぇんだよ ///