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熊獣人で恋人のおっちゃんが、虎獣人の俺の誕生日をお祝いしてくれた話

  1

  「つよさん、いるかい?」

  鍵のかかっていないドアノブを回しながら、俺、野口圭吾は扉を開けた。

  「おう」

  いつものように振り向きもしない。

  ぷかぷかとタバコをふかしながらその巨体を丸め、つよさんは小さなノートパソコンに向かっている。

  仕事中なのだ。

  そっけない態度は普段通りなので、俺はそれ以上声を掛けない。

  音を立てないように後ろ手に扉を閉めて、つよさんの背中をじっと眺めた。

  11月だというのに、暖房もつけないままTシャツに短パンという格好。

  時折汗をぬぐいながら、キーボードを一心不乱に叩いていた。

  Tシャツの腹の部分からはみ出している熊獣人特有のビロードのような黒い体毛は、雨に濡れているように薄く光っている。

  仕事の進み具合はいいのだろう。その短く丸い尻尾を機嫌よさげに振っていた。

  俺はごくりとつばを飲み込みながらその背中を見つめる。

  付き合ってもう半年になるというのに、今でもその後姿だけで3回はせんずりをかく自信はある。

  大学時代にラグビーで鍛えた190センチもあるガタイは、42歳になっている今でも全然衰えてないらしい。

  『仕事も忙しいのに、よくキープできてるなぁ』なんて聞くと、『鍛えんのが趣味なんだからしょうがねえだろうが』と苦笑いする。

  そうは言うものの、俺は激しく体を動かしてるつよさんなんて、セックスの時以外見たことない。

  ほとんど寝てるか、パソコンの前に座っているか。

  つよさんこと河村毅は、小説家だ。

  俺はほとんど本を読まないからどれくらい売れてる作家なのかは知らないけど、ひっきりなしに注文がきて、豪勢な3LDKのマンションに一人で住んでるくらいだから、きっとそれなりに有名なんだろう。

  そんなことをぼんやり考えていると、

  「まぁた、俺の背中見て、欲情してるのか」

  いかつい顔が振り返って、にやりと笑う。

  「……うん」

  素直に答える俺の体を上から下までじろりと眺め、つよさんは言った。

  「しかしまあ、お前また少し太ったんじゃねえのか」

  「そうかな」

  俺は、ごまかすように虎獣人特有の細長い尻尾をゆらゆらと振って答える。

  大学を卒業して5年、学生時代はボート部で鍛えたこの体も、会社勤めのせいで少し緩んでしまった。昔は70キロ前半だった体が、いまや80キロ後半にまでなってしまっているのだ。

  もっとも、27歳で腹がせり出すほど不細工なことになってはいないが。

  そう言えば、俺の体を彩る黒の縞模様が、前より間延びして見えると、こないだ会社でからかわれたっけ。

  ……1週間前に会ったばかりだというのに、俺そんなに太ったのか。

  気にしてあちこち触ってみる俺に、

  「まあ、いいさ。気にするほどじゃねえさ」

  立ち上がったつよさんが、俺の短い頭の毛をくしゃくしゃと掻き回す。

  「それよりさ」

  「え?」

  「今日の仕事は終わりだ。いつまでも突っ立ってねえでよ。奥へ行こうぜ。いつもみたくかわいがってやるからよ」

  不器用にウインクなんかして、部屋の奥を肩越しに指差す。

  その男くささに、思わず『はい!』、と直立不動で返事をしてしまった。

  

  「まどろっこしいことしてんな」

  背広を脱いでネクタイをはずし、ワイシャツのボタンに手を掛けたところで、2秒とかからず素っ裸になったつよさんは俺をせかす。

  「おい、さっさとしろよ」

  そうは言っても、向こうはTシャツと短パンだ。一緒にしてもらっては困る。

  「分かってるよ」

  せかされた俺はワイシャツのボタンを乱暴に開けながら、せっかくのつよさんの全裸を舐めるように凝視した。

  俺の頭の位置にあるのは、黒い体毛の下にある筋肉でガチガチにかためられた分厚い胸板。

  昔は割れていたという腹筋は、今は少しメタボ気味で、本人は少々気にしているらしい。

  その下にはでん、と構えた黒チンポが、枝になった椰子の実みたく股間一杯にぶら下がっている。

  勃起もしてないのに、親指と人差し指とでは回りきらないほどの太さ。

  金玉だって、でかい。鶏卵二つぶら下げているみたいなもんだ。

  「……おいおい、いつまでかかってんだよ」

  その言葉に、はっ、と意識を取り戻す。

  凝視しすぎてて、手がお留守になっていた。

  つよさんはあきれたように俺に言う。

  「ちんたらやってるなら、俺が脱がしてやろうか」

  「い、いやいい」

  俺は顔が熱くなるのを感じた。

  一瞬、無理やりに服を脱がされる図が頭に浮かんだのだ。

  「何照れてやがるんだよ。恥ずかしいのか」

  「う、うるせぇ」

  「……ひょっとして、興奮してるとか」

  「そ、そんなわけねえだろう」

  俺は何も言わず服を脱ぎ捨てると、組み伏せてやろうと本気でつよさんに飛び掛った。

  「太った体で俺に向かってくるとはいい度胸じゃないか」

  笑いながら片手で簡単に俺をねじ伏せると、つよさんはそのまま布団に押し倒す。

  「だから俺は太ってなんて……むぐぅ……」

  弁解をする暇も与えられず、俺は口をふさがれて舌をねじ込まれた。

  「むぐ……んん……」

  いつもより激しい舌の動き。まるで口の中を犯されているようだ。ヤニの苦味が唾液と一緒になって俺の口に広がっていく。何とか舌を絡めて激しい動きを止めようとすると、今度は引っこ抜かれるほど舌を吸われる。

  「……んん……」

  「なんだ、感じてやがるじゃねえか。お前、無理やりにされるのが好きなんじゃないのか」

  「そんなこと……む、んん」

  かぶりつくような2度目のキス。俺はそれだけで完全に骨抜きにされてしまった。放心状態の俺は体勢を変えようと体を起こす。そんな俺の口元に、つよさんはぶっとい股間の太竿を突きつけた。

  「ほれ、咥えろ」

  汗の匂いと男の匂いがぷんぷんするチンポ。それをぐいぐいと顔面に股間を押し付けられる。俺は座ったままあえぐように口を開け、それを頬張った。

  「おら、どうだ。うまいだろう」

  「んぐ……んぐ」

  どうしたというのだろう。

  普段はぶっきらぼうでも、布団の中ではバカ丁寧に俺を扱うつよさんが、今日は別人のように荒っぽい。

  フェラだっていつもなら、シャワーを浴びてからでないと嫌だろうなんて気を使うのに。だが、その荒々しさは、妙に俺を興奮させた。

  「んぐ……んん……んぐ」

  俺は亀頭の汚れを舐め取るように舌を這わせた。

  「んんん、ああ、……いい気持ちだ」

  雁首を舐めまわすと、少しずつ呑み込みながら首を上下に動かしていく。興奮したつよさんのチンポが徐々に太く、長くなっていく。それと同時に、つよさんの腰も上下に動き出す。

  「ぷはぁっ!」

  これ以上咥えられない、というところまでチンポが太くなり、俺は口を離した。

  「休んでんじゃねえよ。ほら、咥えろ」

  チンポで俺の頬を叩き、催促するつよさん。

  俺は、ガチガチの亀頭からあふれる先走りを舐め、血管の浮き出たぶっとい竿全体に舌を這わしていく。

  裏筋から蟻の門渡りに行き、そのまま玉を咥えてしゃぶる。じゅるじゅる音を立てて。

  「うれしそうな顔してるじゃねえか」

  つよさんのでかい手のひらが俺の頭をぐいとつかむ。顔を心持ち上に向けられ、一心不乱に舐めしゃぶる俺の顔をじっくりと眺めているのだ。

  「圭吾、何喜んでるんだよ」

  つよさんが、人の悪そうな笑みを浮かべ、あごをしゃくる。

  「ええ、お前ビンビンに勃ってるじゃねかよ。触られてもいねえのによ」

  確かに。見るまでもなく、俺のチンポが痛いほど勃起しているのを感じる。

  「次は俺が気持ちよくしてやるよ」

  そう言うなり、つよさんはもう一度仰向けに押し倒す。そのまま俺の両手を片手でつかみ、頭の上で押さえつけた。

  「な、何を……んわっ」

  身動きできない俺を押さえつけたまま、つよさんは俺のわき腹に舌を這わす。

  くすぐったい。

  舌の微妙な動きが、俺の体をうごめかせる。それでも、押さえつけられているせいで、ほとんど身動きできない。

  「うう……つ……つよさん、くすぐった……」

  「でも、気持ちいいんだろうが。お前、Mっ気があるんじゃねえのか」

  耳元で、嫌らしい声でささやかれると、体がかぁ、と熱くなる。

  「ば、馬鹿なこと……んん……」

  「こんなことされて、興奮してるだろうが」

  「はぁはぁ……そんなこと……」

  乳首を甘噛みされ、反論も出来ない。

  「俺も燃えてきた。このままぶちこんでやるよ」

  押さえつけていた両手を開放したつよさんは、両腕で俺の太ももを抱え込むと、ぶっといチンポを俺のケツにねじ込んできた。

  「んぐわぁぁ!」

  ローションをつけないままの亀頭が、俺のケツの穴を押し広げていく。

  めりめりめりめり……。

  「え、どうだ。つらいか、気持ちいいのか」

  「ぐぐぐ……ん……ぐぐ」

  ぶち込まれていく逸物は、メリメリ音を立てているのかと錯覚するほどの迫力だった。

  「うわぁぁぁぁぁ……ぐぅ」

  チンポが突き進むたび、焼け付くような痛みが俺のケツを刺激する。

  しかしそれはなぜか、快感を伴った刺激だった。

  「うん、どうだ。感じてるんだろう」

  つよさんは、突き進んだチンポの動きを一度止め、俺にささやきかけた。

  動きを止められると、太竿がどく、どくと脈打つのが分かる。

  「あ……うう……」

  「どうなんだよ、おら。気持ちいいんだろうが」

  答えを要求するかのように、勢いよくチンポが動き出す。

  あ、あ、あ、と心ならずも声が出てしまう。

  「き、気持ちいい」

  ケツの奥が熱い。ずん、ずんと突き上げてくる衝撃で、俺はおかしくなってしまいそうだ。

  「ああ……はあはあ……うう……」

  「なんだ、いい声出しやがって」

  体が……体が……燃えるみたいだ。

  「うう……があぁ……イ、イクぅ!」

  イってしまうぅ!

  どく、どく。

  触られてもいない俺のチンポが弾けた。

  「トコロテンかよ、おい」

  突然の俺の発射に、つよさんは、あきれたような顔をする。

  「でも」

  一転、にやりと興奮した表情を見せ、

  「俺はまだイってないからな。このまま俺がイクまで、天国に連れてってやるよ」

  結局、そのまま俺は三連チャンでイカされてしまったのだった。

  「そういや、圭吾。そろそろ誕生日じゃなかったけな」

  疲れ果てて身動きできない俺の隣で、つよさんは満足げにタバコを吸いながら、俺に話しかける。

  「そういえば、そうだったけ」

  頭の中に霧がかかったようで、自分のことなのにはっきりしない。

  「おいおい、自分の誕生日ぐらい覚えておけよ。前に一二月の一八日って言ってなかったけ」

  「うん」

  そうだ、確か来月だったような……。

  「誕生日、なんか欲しいもんはあるのかよ」

  何も考えられないときにそんなこと聞いてくるなんて、詐欺みたいなもんだ、としばらくして俺は思ったのだが、それは後の祭り。

  「今のままで満足だけど……」

  その答えを聞いて、つよさんはつまらなさそうに頷いた。

  「そうか、まあなんか考えとくさ。せっかくの誕生日が最高になるようにな」

  2

  誕生日が来るというのは、あんまり嬉しいことじゃなかったりする。

  28にもなると、ケーキでお祝いって感じでもないし、仕事仕事の毎日じゃ特別な日って気もおこらない。

  それでも、今年の誕生日は楽しいはずだった。

  出不精のつよさんが、わざわざ外に呑みに行こうと誘ってくれたのだから。

  午後7時。

  バーで待ち合わせということで、仕事帰りの俺はいそいそと指定されたバーへ急ぐ。

  「いらっしゃい」

  扉がカランカランと音をたて、マスターの声が俺を迎え入れる。筋肉質の犬獣人が、ラガーシャツを着て立っていた。

  俺はちょっと頭を下げて、カウンターだけのバーの店内を見回す。

  ぱらぱらと客の姿は目に付くが、つよさんはまだ来てないようだ。

  「おたく初めて?」

  「ええ。ここで、待ち合わせすることになってて」

  棚にさりげなくゲイ雑誌が並んでいるから、ここはゲイバーなんだろう。

  ゲイバー初体験の俺は珍しくて、周りを見回す。

  「何にする?」

  「じゃあ、ビールを」

  瓶からグラスに注がれたビールを、俺は一気に飲み干す。

  やっぱり、仕事帰りの一杯はうまい!

  この一杯をつよさんと一緒に乾杯したかったなあ、なんてなことをぼんやり考えながら、2杯目をグラスに注ぐ。

  「待ち合わせの人って、どんな人? ここの常連かい」

  一人寂しく飲んでいる俺を見て、気を使ってくれているのだろう。

  マスターが話し掛けてくる。

  「ここの常連かどうかわからないけど、河村さんて人」

  「うーん、知らないなあ」

  首を捻るマスターを見ていると、胸ポケットに入れている俺の携帯が震えた。

  「あ、メールだ」

  『悪い。仕事の都合で、一時間ほど遅れる。そこで呑んでてくれ。今日は最高の誕生日にしてやるからな』

  つよさんからだった。

  了解、と返信をする。

  こんなこと書かれると、なんか気恥ずかしい。

  顔が火照ってくるのを感じ、ごまかすようにまたビールをあおった。

  30分もすると、店の雰囲気にもなじんでくる。

  ビールを焼酎に切り替えて、マスターと会話をしながら呑んでいると、客の一人である狸獣人が話し掛けてきた。

  「兄ちゃん、待ち合わせしてんのかいな」

  五〇代ぐらいだろうか。背丈は俺よりも低いが、横幅は俺より2倍はある。

  所々油で汚れた作業着に無理やり体を押し込んだようで、動くたびに服が破れそうで見ていてはらはらする。

  特に股間に収められている金玉は、相当の大きさなのだろう。そのぱつぱつの作業服にくっきりと影が映っていた。

  「はい」

  「そうかいな。見かけん顔やけど、ここ初めてか」

  「そうなんですよ」

  声は優しいが、口調はきつい。もっとも、それは聞きなれない関西訛りのせいかもしれないが。

  「ふうん。そやけど、自分みたいなんは、ここでは珍しいんやで」

  「え?」

  自分というのは俺のことか。

  あごにまででっぷりと脂肪を溜め込んだおっさんは、いかにも精力の強いエロ親父な顔をしている。

  年上好きの俺としては充分いけるタイプだ。

  「この店に若者はなかなか来えへんからな。周り見てみ。おっさんばっかりや」

  「あんたもそのうちの一人じゃないか」

  マスターが横からチャチャを入れる。

  「ほっとけ」

  「この人、辰さん。若い子見るとすぐに手を出したがるスケベ親父だから、気をつけなよ」

  「そんなことわざわざ言わんでも、わしの顔を見たら分かるやろ、な」

  俺は思わず、ぷっと吹き出す。自分で自分の顔のことはよくご存知らしい。

  「笑いよったで。失礼な兄ちゃんやな」

  すねたような口調だが、顔は笑っている。

  「すいません」

  「まあ、ええわいな。どや、一杯おごったろ」

  辰さんは、俺の空いたグラスに持っていたボトルの焼酎を流し込んだ。

  「あ、ありがとうございます」

  「それにしても辰ちゃん、あんた珍しい格好してるじゃないか。仕事変えたのか?」

  「ああ、これか。よう似合うてるやろ。撮影で人手が足らんかったんで、しょうがなしに出たったんや」

  撮影?

  「辰さんて、俳優やってるんですか」

  俺が聞くと、マスターと辰さんがいきなり笑い出した。

  「がはははははは、わしが俳優やてぇ。どこにこんな体の役者に金払う阿呆がおんねん」

  「……」

  マスターは笑いすぎて悶絶している。

  「わしの仕事は雑誌の編集長や。撮影帰りにそのままここに寄ったんや。まあ、こんな格好してたらそうは見えんやろ」

  確かに。編集長よりは作業員のほうが似合いそうだ。

  「でも、雑誌の編集長なんて、すごいんですね」

  「すごくなんてないさ」

  これはマスター。

  「雑誌の編集長なんて言っても、三流のエロ雑誌なんだから」

  「まあ、マスターの言う通りやな。そんなにたいしたんもんでもない」

  苦笑いしながら辰さんは言う。

  「それより自分、どんな男と待ち合わせしてんねん」

  「河村さんといって、熊獣人の……」

  「ひょっとして、毅かいな」

  辰さんは驚いたように言う。

  「知ってるんですか」

  「ああ、知ってるで。あいつとは飲み友達やからな。この店に一緒に来たことはないけどな。そやけど、こんなええ男を捕まえてるんやからな、うらやましいこっちゃ」

  「いや、そんなこと」

  「あいつの連れならもっとええもん呑ませたろ。マスターいつものアレ、持ってきてくれ」

  「え、大丈夫かい?」

  眉をひそめるマスター。

  「大丈夫、心配せんでも」

  辰さんは笑いながら、マスターからラベルの貼ってないボトルを受け取る。中には琥珀のような色の酒が入っている。

  「何なんですか、それ」

  「特別製の焼酎や。なかなか呑まれへんねんで、これ。ええ値段すんねんから。ささ、先にその焼酎ぐい、と空けてしもうて」

  俺は勧められるままグラスに入っていた焼酎を一息で飲み干す。酒は喉を焼きながら胃に落ちていく。

  「お、なんや。自分、酒強いねんな。ほな、次はこの特製焼酎や」

  とくとく、と空いたグラスに注ぎ込まれるべっ甲色の酒。

  俺はグラスに口をつける。一口呑み込むと、体がカッと燃えるように熱くなる。

  「どや、うまいやろ」

  「なんか、不思議な味ですね。焼酎に、何か入ってるんですか」

  「そうや、いろいろと調合してな。ささ、どんどん呑みや」

  嬉しそうな顔で、焼酎を注ぎ足す辰さん。

  俺は勧められるまま、杯を重ねて……。

  「気ぃついたか」

  俺は眠っていたのだろうか。ぼんやりしている頭を振ってみる。

  「気分はどうや。まあ、そないに悪うないやろう」

  辰さんは、俺の乳首を指ではじく。びくん、と体が動く。

  乳首?

  「はだか……」

  俺ははっと自分の体を見る。いや、見ようとした。でも、首はほとんど動かせなかった。

  縛られているのだ。両手両足をベッドの四隅に縛り付けられ、俺は大の字になっていた。真っ裸にされて。

  「そうそう。むしろ悪いどころか、夢見ごこちで感じやすくなってるはずや。そういう効用の酒やったからな、あれは」

  当たり前のように言う辰さん。

  酒……。そう、あの琥珀色の酒を呑んでいるうちに、酔いがだんだん回ってきたのまでは覚えているけど、それから先は覚えていない。

  気が付くと、こんなところで縛られて。睡眠薬でも入っていたのだろうか。頭がはっきりしない。

  「なんで、こんな」

  「自分あの後、酔うて寝てしもうてな、あんまりかわいいからしょうがなくラブホテルに連れ込んだんや」

  そんなバカな。

  大体なんで、あんな店に……そう、つよさんと待ち合わせしてたんだ。

  「つ、つよさんに」

  「毅のことなんか心配せんでもええやないか。今日はたっぷりかわいがったるさかい」

  「こんなこと……犯罪に……」

  「何を言うてんねん。合意の上やないか」

  この男は嫌らしい笑みを浮かべる。

  「第一、なんやそれは。縛られて勃起してるやないか」

  くそう。なぜか俺のチンポは、こんな状態でビンビンになっているのだ。

  「縛られて勃たせるなんて、変態やのぉ。これはちゃんと写真に撮っといたるからな」

  そう言いながらこいつは、携帯を取り出すと、妙に明るいシャッター音を響かせながら俺の裸を何枚も写していく。

  俺は身をよじるが、よっぽどきつく縛っているらしく、少しもほどけてこない。

  「や……やめろよ」

  声に力が入らない。あの酒のせいか。

  「写真を家のパソコンに送って、と。まあ、これで自分が変なことしたら、この写真がばらまかれるというわけやな」

  「な……」

  その言葉に、完全に脱力してしまった俺。男の自宅のパソコンに送られては、もうこの場で抵抗しても取り戻すことが出来ない。

  「さあて、そろそろお楽しみの時間やな」

  作業着を脱ぎながらこいつはニタニタ笑う。

  「わしはなあ、若いのんを犯すのが大好きなんや」

  汗に濡れてでっぷりと太った体からは、すえた汗の匂いがむっ、とただよってくる。

  「ほれ、咥えんかい」

  頭の毛ををわしづかみされ、俺は顔を力ずくで起こされた。鼻先に、男のそそり立つツンポを突きつけられる。

  「くっ」

  異臭が鼻をつく。

  男の逸物はでかかった。すでに完全勃起したそれは、かなり太長く使い込んだ色をしている。

  だが何より異様なのはその金玉のどでかさ。狸獣人特有のそ両手でつかんでもはみ出すぐらいに大きいのだ。

  「何しとんねん、はよ咥えんかい!」

  「あがぁっ」

  手のひらで口を割られ、ガチガチの亀頭を無理やり押し込まれる。すえたようなすっぱい味が、口中に充満する。

  「うう……」

  ビンビンに勃ったチンポは、勢いよく喉もとまで入り込んできた。

  「ぐぇ!」

  「何や、ディープスロートもでけへんのかいな」

  それでも、問答無用で逸物を押し込んでくる。

  「どや、わしのチンポはうまいやろう」

  またしても携帯を取り出し、チンポを咥える俺の姿を撮影していく。

  「ぼんやりせんと、ちゃんとしゃぶらんかい」

  髪をつかんだまま、ぐいぐいと顔を前後に動かされる。亀頭が喉まで潜り込んできて、息ができない。

  せっかくの誕生日、つよさんが祝ってくれるはずだったのに、なんでこんなことに……。

  「ん……うぐ……んん」

  苦しくて悔しくて涙が出てくるが、男はおかまいなしだ。じゅぷじゅぷとチンポを動かす。

  「舌を使えよ。噛んだりしたらしょうちせえへんからな」

  俺は言われた通り吐きそうになりながら舌を使う。

  「ほれ、チンポだけやない。金玉も舐めんかい」

  俺の顔ほどもある金玉を俺は唾液をまぶしつけるように丁寧に舐めさせられる。

  「歯ぁ立てたらあかんでぇ。よしよし、いい具合や。……ほら、もういっぺんチンポを咥えてみぃ。わしの我慢汁はうまいか、ああ?」

  顔を自分の涙と唾液と、狸親父の先走りとでべとべとに濡らしながら、俺は男の言葉に従う。

  「ま、こんなもんでええやろ」

  俺の口で満足したのか、こいつはチンポを抜いた。

  じゅぽ、と鳴った太長いチンポは俺の唾液でてかてかと光っている。

  「涙流しながらそれでも萎えへんのやから、よっぽどのMやな、自分」

  勃ちあがったままのチンポを見ながら言うと、男は俺の乳首を抓り上げた。

  「ぐあぁ」

  「どうや、感じるやろ」

  俺はぶんぶんと首を横に振った。

  「嘘をつけ。ほれ、自分のチンポが涙流して喜んでるやないか」

  「んぐゎ!」

  ずるずると亀頭をなでまわされ、先走りが出てることを思い知らされる。

  「正直に言うてみぃ。なあ、どうや。たまらんのやろう」

  歯を食いしばって首を振ったが、男の言う通りだった。

  乱暴に扱われたり、痛みを与えられると、どこか体を快感が走ってしまう。

  酒の……あの酒のせいだ。

  俺は首を振り続ける。

  「強情なやっちゃな」

  まあ見とれ、と男は乳首から手を離すと、金属のクリップを取り出して俺の両乳首にはさみつけた。

  「うぐぐぐっ」

  「よぉしよぉし、もっと気持ちようしたるからな」

  ご機嫌の男は、俺の腰の下に枕を当てた。縛られた体勢で腰を浮かされたもんだから、繋がれた手足が引っ張られて痛い。しかし、それすらも快感に変わってしまう。

  「ケツがうずいてしゃあないねやろ。今、満足さしたるからな」

  身動き取れない俺の見えないところで、こいつはごそごそと動く。ぴちゃ、ぴちゃ、と何かが粘るような音がする。

  「んんんっ」

  冷たく濡れたものが、蠢きながらケツの中に入ってくる。

  「ん、なんやキツキツやないか。指一本がなかなかはいらへんやなんて。毅には掘られてなかったんかいな」

  「あああ……」

  あの芋虫のような太い指が、怪しい動きをしながらケツに侵入してくると思うと、それだけで声が出る。

  「どうや、たまらんやろ」

  太短い指が、俺の前立腺を柔らかく刺激する。

  「あ……ああ……」

  「気持ちいいのんか。ケツの中がとろとろになってきたで。でも、まだイカしたれへんぞ」

  ニヤニヤ笑いながら、この男の指はケツの中をかき回す。

  「ううああ……」

  気持ちいい。でも刺激が弱すぎて、イケそうでイケない。このままじゃ、生殺しだ。

  「イキたいのか、イカせてほしいのか」

  「ううう……」

  思わず頷きそうになったそのとき、男はさっ、と指を引いた。

  「あ……」

  落胆の声をなんとか噛み殺す。

  「まだまだ楽しませてやるからな」

  そう言うと指についたローションを、俺に見えるように取り出したバイブになすりつけた。

  「次はもっと太い奴や。気持ちええぞぉ」

  ローションを付けてべたべたにしたバイブは、馬獣人のチンポを思わせるほどでかい。

  「力を抜かなぁあかんぞ。ケツが裂けてしまうからな」

  そう言うと、ゆっくりと俺のケツに押し込んでいく。

  「うぐがぁ……」

  は、張り裂けてしまうぅ。

  「そうや、口を開けて、力を抜いて。ほら、だんだんと入っていきよる。どうや、気持ちがええか、なあ、気持ちええか」

  「うう……あ、ああ……き……つい」

  「何がきついじゃ。ちゃんと咥えこんでるやないか」

  ぶっといそのバイブを入れられると、まるで体の芯を串刺しにされたように感じてしまう。

  たとえ縛られていなかったとしても、これを突っ込まれたら、身動きできないに違いない。それぐらい、圧倒的なのだ。

  ずんっ!

  完全にケツに入った衝撃で、体が震えだす。

  「ほら、全部入ってしもうた。なんや、体が喜びに打ち震えてるやないか」

  男は、嬉しそうに言う。

  「やっぱり、Mやなあ。さあ、スイッチを入れようか」

  俺の顔を真正面から見つめながら、男はバイブのスイッチを入れた。

  グィィィィンという振動は、内臓にまで響いてくるのだ。

  「あっ、あっ、ううう、わああああ」

  悲鳴をあげる俺の顔を、男はよだれをたらしそうな顔で眺める。

  「こんな気持ちええ目に、おうたことないやろう。なあ、気持ちよすぎて、気ぃ狂うんちゃうか」

  男はそう言いながら、片手でバイブをゆっくりと出し入れする。そしてもう一方の手は、太ももをさわさわとなでまわす。

  触れるか触れないかのタッチで、優しくなでてくるのだ。

  「くぅぅぅぅぅっ!」

  ……イキたい!

  ……イカせてほしい!

  もう、我慢できない。

  「イカせてやろうか」

  俺の心の叫びを聞き取ったかのようにこいつは俺に聞いた。

  悪魔のような男の微笑みに、俺はぶんぶんと何度も頷いた。

  「ほな、言うてみぃ。辰さん、イカして下さいと、言うてみぃ」

  「お、お願いします……辰……辰さん……イ……イカせてください!」

  「かわいい声で鳴きやがって。よっしゃ、ほなイカしたろうやないか」

  右手でバイブを触ったまま、左手で俺のチンポをぎゅ、と握ってしごき始めた。

  「あ、ああ……もう……い、イキそ……」

  イク寸前、男は俺の口にかぶりついてきた。歯をこじ開け、俺の口を蹂躙する男の舌。俺は恋人どうしのように必死で舌を絡める。

  「ぅんぐぐ……、んぐぅ!んぐぅ!」

  イクぅ、イくぅ!

  チンポから飛び出たザーメンが、覆い被さる男の腹を濡らす。

  「はぁ……はぁ……」

  俺は力尽きて、ぐったりと体をベッドに横たえる。その耳元に、男はささやいた。

  「いい、イキっぷりやったな。毅に見せたかったわ」

  「……」

  つよさんに対する罪悪感が脳裏をよぎる。

  でも、どうしようもなかったんだ。

  男は腹についた俺のザーメンを拭いもせずに、俺の手足を縛ったロープを解き始めた。

  開放してくれるのだろうか。

  しかし、その考えは甘かった。ロープを解き終わった男は、俺に言うのだ。

  「何をしとるんや。さっさとベッドから降りて、四つんばいにならんかい」

  「な、な……に?」

  「何、やあるかい。自分ばっかりイキよって。今度はわしの番じゃ。後ろから突っ込んだるわ」

  「そんな……んあああああっ!」

  いやもおうもないうちに、バイブを抜かれた俺のケツには男のチンポが侵入してくる。

  「おお、ぬくうて、ようしまるおめこや。たまらんなあ」

  ずん、ずんと容赦なく激しく動く男の逸物。

  「うわあ、ああ、ああ」

  「どうや、ええ、どうや。わしのチンポは気持ちええやろう」

  男の言う通りだった。イッたばかりだというのに、男にケツを刺激され、俺のチンポが再び勃ってきたのだ。

  ばちんっ、ばちんっ!

  奥まで突っ込まれるたびに、巨大な金玉が俺のケツを叩く。

  特製の酒の効果とケツを襲う快感、それに先ほどの疲れがあいまって、頭がもうろうとなってくる。

  もう、何も考えられない。

  「おい」

  ぐい、と俺の頭が引っ張り上げられる。

  「ぼぉっとしてねえで、これを咥えろ」

  俺はわけもわからないまま、声の指示に従う。

  目の前に突き出された、勃起した太竿。先走りのあふれたそれに、むしゃぶるように喰らいつく。

  「ようし、いいぞ。そのまま、舌を絡めるんだ」

  俺はひたすら、チンポをしゃぶる。俺の立てるじゅぽじゅぽという音と、後ろから聞こえるばちばちという金玉の音が唱和する。

  「ん……?」

  後ろから突かれているなら、目の前のチンポは誰のだ?

  俺は目線を上に上げる。

  そこには、俺の知っている顔が。

  「ふ、ふよはん」

  チンポを口に咥えこんだまま、俺は呟く。

  そこにいるのは、つよさんだった。

  呆然としたままの俺を見下ろし、腰を振りながらつよさんは言う。

  「辰さんはな、俺の連載してる雑誌の編集長なんだ。ああ、いい。お前がMっ気があるのが分かったからな、うう、辰さんに開発してもらうことにしたのさ」

  「そうや、今までのは、全部芝居や。わしが連れ出しやすいようにあの店で待ち合わせにしてな。ああ、ええわぁ。あそこには、男を狂わせる酒もあるし。で、酒に酔わせてここに連れこんだんや。ようしまる。でも自分、興奮したやろう」

  ケツへの刺激がどんどん強く激しくなっていく。

  「あう……あう……」

  「俺はなあ、ずっと、バスルームから二人を覗いていたんだよ。んん、ああ。やっぱりお前はMだな。知らない奴に無理やり犯されて、あんなによがっているんだから。ほら、もっと、しゃぶれ」

  頬張ったつよさんのチンポが張り裂けんばかりに大きく膨らんでいく。先走りもだらだら流れてくる。発射間際だ。

  人の悪い笑みを浮かべて、つよさんは言う。

  「このまま、朝まで二人でかわいがってやるよ」

  「おい、ええか。わしはこのままイクぞ」

  後ろで声が聞こえる。

  「イクぞ、イクぞ……イク!」

  「うう、うう!」

  どくっ、どくっ、どくっ、どくっ……。

  ケツの中に、大量のザーメンが打ち込まれた。

  その衝撃に、俺も耐えられない。

  「ああ、また、出る!」

  俺もトコロテンで発射!

  二人のイク様に我慢が聞かなくなったのか。

  「うう、俺もだ。イクぞ!」

  俺の口から抜いたつよさんの逸物が、大きくしゃくりあげる。びしゃ、びしゃ、と激しく吐き出されたザーメンが、俺の顔にかかる。

  それを拭く力もなく、床に崩れ落ちる俺に、つよさんの声が小さく届いた。

  「どうだ、最高の誕生日になりそうだろう」

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