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両親に誰でもいいから恋人連れて来いと言われたから、会社のニンゲン後輩くんに5万円渡して連れて行った虎獣人のお話

  ★

  「虎山先輩……。どうしたんですか、それ!」

  月曜日。

  目の回りに黄色と黒の体毛の上からでも明らかにわかる青タンを作って出勤した俺を見て、後輩の衣笠は目を丸くする。

  俺はそんなニンゲンを見下ろすと、仏頂面のまま言葉を返した。

  「親父と殴り合いの喧嘩しちまった」

  「ええ……」

  小柄なニンゲンはドン引きしたような顔をする。

  

  「先輩……。親と殴り合いの喧嘩なんて、高校生じゃないんだから……」

  「うるせえ」

  その呆れたような顔に、ぼそりと俺は言い返した。

  虎山雄大、32歳。

  名は体を表すの通り、縦にも横にもデカくてごつい身体をした虎獣人の俺は、最近実家の両親と揉めてしまっていた。

  両親曰く、お前はいつまで独り身なんだ、って。

  つまりはいい加減結婚して、さっさと孫を作れと言われてるのだ。

  そりゃ俺だって結婚してえよ。

  もう30も越えちまったし、友達連中はガキまでこさえてる奴も多いし。

  でも、いくら俺が結婚したくたって、相手がいるもんだから仕方ねえじゃねえか。

  ガタイもごついし顔だって厳ついし、おまけにぶっきらぼうで女なんか寄りついてきやしねぇ。

  結婚どころか、生まれてこの方、彼女だって出来たことねえってのに。

  昨日もせっかくの休みに家でゴロゴロしてると、結婚しろ結婚しろってあんまりうるせえから、『んなもん出来るわけねえだろうが。結婚して欲しいならこんな強面に生むんじゃねえ』と母さんに言ったら、親父が激怒しちまって……。

  つい殴り合いの喧嘩になっちまったのだ。

  ……くそ、あの親父め。

  俺も青あざ作っちまったが、あっちも顔がぼこぼこに腫れてたから、いい気味ではあるんだが。

  「先輩……。いい大人なんだし、拳でやり取りしなくても、言葉でわかり合いましょうよ。大体、先輩営業でしょ? お客さん口説くの得意なのに」

  「し、仕事は別なんだよ!」

  ……そりゃ、こいつみたいに如才なく立ち回れりゃいいけどよお。

  俺は目の前の小柄なニンゲンをジト目で見る。

  俺の5年後輩の衣笠は、要領のいい奴で。

  口もうまいし性格も人懐っこい奴だから、会社でもお客にも可愛がられている。

  ……そういや見た目もわるくねえよな。

  女にも割とモテるんじゃねえかな。

  ニンゲンだから獣人ほどごつくはないが、それなりに鍛えてるみたいだし、顔も整っている方だ。

  ……見てたらなんかムカムカしてきたきた。

  俺は腕を伸ばして衣笠の首に引っ掛けると、そのままヘッドロックをかけようとする。

  「ちょ、先輩! そんな太い腕で絞められたら、俺死んじゃうから!」

  慌てて腕をタップする衣笠。

  「大袈裟に言うな。……しかし、今晩家に帰るの憂鬱だわ。なあ、衣笠、お前一人暮らしだろ。今日おまえんち泊めてくんねえ?」

  そんな俺を見てため息をつく衣笠。

  「そりゃ1日ぐらい泊めるのわけないけど……それじゃ根本的に解決しないでしょうが」

  「うう……」

  俺は顔をしかめる。

  「そりゃそうだが……。だからって両親に紹介するような彼女もいねえしよ……んん?」

  俺はふと、殴り合いの最中に親父が言っていたことを思い出す。

  『この甲斐性なしがっ! 誰でもいいから、1度ぐらい嫁候補を連れて来やがれっ!」

  あの親父、誰でもいいと言ってやがったな。

  ……じゃあ、別にこいつでもいいじゃねえか。

  俺は腕の中にいる衣笠に目をやる。

  いや、むしろこいつの方が好都合だ。

  まさか両親も、俺が男を嫁候補として連れて来るとは思うまい。

  俺が男好きだと勘違いしちまえば、それ以上結婚しろだのうるせえこと言ってこねえだろ。

  最近は同姓婚なんてのもあるらしいが、頑固な親父なんかそんなのもってのほかだろうしな。

  「なあ、衣笠ちゃぁん」

  俺は我ながら嫌らしい笑みを浮かべて、懐に捕らえた衣笠に話しかける。

  押し潰すように、徐々に腕に力を入れていきながら。

  「俺、衣笠ちゃんに一生の頼みがあるんだけどよぉ……」

  ★

  「ほんと、親父さんに殴られそうになったらかばってくださいよ!」

  「わかってるって。それにうちの親父も見ず知らずのニンゲンに手をあげるほど常識ねえわけじゃないから、安心しろよ」

  「……」

  納得いかないのか、ジト目で俺を見あげる衣笠。

  ここは俺の実家の前。

  そう、俺は衣笠を連れて家に帰ったのだ。

  こいつを俺の嫁候補として紹介するために。

  もちろん初めは嫌がった衣笠だったが、俺が誠心誠意お願いした結果、渋々彼女役をやってくれることになったのだ。

  もっとも、昔気質の頑固親父だから、手が出ちまうかもしれねえと言うと、衣笠はびびりまくっているようだが。

  そりゃ、前から俺の親父は俺と同じぐらいごついって話してるから、びびるのも仕方ねえだろう。

  こいつはちっこいニンゲンなんだからよ。

  ただ、それだけの事をさせるんだ、もちろんただじゃねえ。

  大枚五万円も払うことになっちまった。

  給料日前の俺にとっちゃ痛い金額だが、それで両親がうるさく言わなくなるなら、安いもんだ。

  「でも、ほんと大丈夫なんですか?」

  「何が?」

  「ご両親にゲイだと勘違いさせて。先輩、女の子好きなんでしょ?」

  「ああ」

  「それだったら……」

  「別にいいだろ。どうせ俺みたいな奴には一生嫁なんてこねえんだからよ」

  それなら男好きと思われたところで問題なんてねえだろ。

  「……」

  黙ったままの衣笠を一瞥すると、俺は玄関の扉を開けた。

  「おう、帰ったぞ! あんまりうるせえから、嫁候補を連れてきたぜ」

  ★

  ……ええと。

  予想と全然違うんだが。

  連れて来られた居間で、がちがちに緊張したまま正座している衣笠。

  その正面に座っている2人の虎獣人は、機嫌がいいのが丸わかりの満面の笑みで。

  「そうかそうか。君が雄大と付き合ってくれているのか」

  いつもは苦虫をかみつぶしたような顔をしている親父が、笑顔で衣笠に話しかける。

  「えっ、あの、はい……。虎山さんとお付き合いさせていただいてます、衣笠佑太といいます……」

  ちらちらとこちらを見ながら、困惑したように口を開く衣笠。

  ……いや、俺も驚いてんだよ。

  男なんか連れて来やがって!と怒鳴り付けられると思ってたんだが……。

  「衣笠さんとおっしゃったわね」

  母さんもニコニコ笑いながら口を開く。

  「いつ頃から、うちの雄大と付き合ってるのかしら」

  「あ……ええと……半年ぐらい前です。せんぱ……いや、虎山さんは会社で僕の指導をしてくださってて、それで……」

  「そうかそうか」

  親父は鷹揚に頷くと、俺の方を見る。

  「なんだ雄大。こんないい子がいるんなら、さっさと連れて来りゃあいいだろうが」

  「……。親父は、というか母さんも、俺が男と付き合ってても抵抗ないのかよ」

  俺の言葉に二人はキョトンとした顔をする。

  「なんでだ?」

  「いや、だって男同士だぜ」

  息子が男好きだなんて、ショックじゃねえのか?

  「別にいいだろうが。今時、同姓婚なんてざらにあるだろ。それに獣人とニンゲンの組み合わせなら子供だって出来るんだし」

  「そうそう」

  「……」

  当たり前のように話す親父と、当たり前のように頷く母さん。

  ……なんでこんなとこだけ先進的なんだよ。

  そりゃ、獣人の子種は強ぇから、ニンゲン相手なら雄でも孕ませられるって聞いたことあるけど。

  「しっかしお前みたいな厳つい奴が、こんなかわいい子を捕まえてくるとはなあ」

  「ほんとねえ。……衣笠さん、これからちょいちょい遊びにいらしてね」

  「あ、ありがとうございます……」

  「せっかくだから、寿司でも取ろうか母さん。衣笠くんも夕飯食っていけるんだろ?」

  「え、あ、はい……」

  「よしよし。母さん、特上注文しといてくれよ。そうだ、とっておきの酒もあるんだ。衣笠くんも飲まないか?」

  「あ、ありがとうございます……」

  「……」

  ★

  普段頼まないような高い寿司を食わされて……俺は最寄の駅まで衣笠を送ってこいと、親父に追い出された。

  「……なんかすいません。お寿司までごちそうになって」

  「いや……。しかし、想像もしてない展開になっちまったなあ」

  歩きながら俺はため息をつく。

  「はい。まさかご両親がそういうのにご理解のある方とは思ってもみませんでした」

  「俺もだ。母さんはともかく、父さんは頭の固い頑固親父だと思ってたんだが……」

  まあ、確かに獣人とニンゲンならガキは出来るからな。そんなに抵抗ないのかもしれない。

  「ま、まあよかったじゃないですか。一応仲直りできたんですし」

  「そうだな」

  そうだ。

  喧嘩したままに比べりゃ、随分マシな展開には違いない。

  「しっかし、親父のやつよっぽどど嬉しかったのか、随分お前を褒めてたよな。かわいいかわいいって」

  よほど衣笠の事を気に入ったのだろう。

  そりゃ愛嬌もあるし、年上のおっさんとのやり取りは営業で鍛えられてるからな。

  「ちょっと照れちゃいますよね」

  酒でほろ酔いの衣笠が赤い顔で照れてみせる。

  「……」

  その表情は確かに親父が言ったようにかわいらしくて……。

  ……いかんいかん。俺は後輩、しかも男相手に何を考えてるんだ。

  「と、ともかく、お前のお陰で無事乗り切れたよ。ありがとう。じゃあな」

  「はい、じゃあまた会社で……」

  駅の改札で頭を下げる衣笠に俺は手を振った。

  めでたしめでたし、だな。

  これで両親も、家にいても結婚しろとがっついてくることはねえだろ。

  しばらくは衣笠を連れて来いとうるさいだろうが、そのうち別れたと話をすりゃあ、親父たちも諦めて何も言わなくなるはずだ。

  ……5万円払った甲斐があったぜ。

  俺はそんな風に単純に考えていたんだが…。

  ★

  「ただいま」

  土曜日の昼下がり。

  趣味のパチンコを終えて家に帰ってくると、玄関に見慣れない男物の靴が置いてあった。

  ……誰だ?

  今日は親戚が訪ねてくるような予定なかったよな。

  俺は首を傾げながら、居間に顔を出す。

  「おう、お客さんか……。衣笠?」

  居間の座布団の上にちょこんと座らされているのは……見慣れた会社の後輩であるニンゲンだった。

  「あっ、せ、先輩……」

  その顔は助かったと言わんばかりの困惑した顔で。

  「なんでお前がこんなところに……」

  別にうちに来る用事なんてないだろうが。

  「いやあ、たまたまスーパーで見かけたのよお」

  お盆に湯呑みとお菓子を乗せて、台所から姿を見せる母さん。

  「声かけたら丁寧に挨拶してくれてね、せっかくだから色々お話したいじゃない。だからお昼でも食べていってと誘ったのよぉ」

  「……」

  なるほど。

  つい先日恋人なんて挨拶しちまったから、無下に断るわけにもいかなかったんだろ。

  ……すまん、衣笠。

  俺は心のなかで衣笠に謝った。

  母さんにはうまいこと言って、すぐに帰れるようにしてやるからな。

  「あんた、衣笠くんから普段の仕事ぶりを教えてもらったわよ。なんでも、後輩達に無茶ぶりばかりしてるみたいじゃない。もう少し気を使うってことを覚えないと……」

  ……前言撤回。

  俺はどっかりと衣笠の隣に座ると、衣笠の肩を抱く。

  「おい、衣笠。どうせ今日は暇なんだろ。昼飯と言わず、夕飯まで喰ってから帰れよ」

  「……」

  ★

  昼過ぎまで寝ていた親父も起きてきて、結局この間と同じように食事会になってしまう。

  いや、食事会というより酒盛りか。

  俺や親父は種族柄ザルだし、衣笠もニンゲンにしちゃけっこうイケる口だ。

  それに接待で飲み会は慣れているから、なかなかに場を盛り上げてくれる。

  そんな衣笠をニコニコしながら見ている母さん。

  奮発して色々肴を作っては持ってきてくれるから、切れ間なく酒を飲む羽目になる。

  そのまま何時間も過ぎて……。

  「さすがに……酔っ払いました」

  時計を見ながら、ふらふらしながら立ち上がる衣笠。

  その顔は真っ赤で、酩酊しているのが一目瞭然だった。

  「すごく楽しかったです。でも、もうそろそろ帰らないと」

  確かにもう9時間も飲み会しているのだ。

  セーブしながら飲んでいるようだったが、ニンゲンには辛いだろう。

  「あっ」

  不意に力が抜けてよろめきそうになる衣笠を、俺は慌てて支えてやる。

  「大丈夫かよ、衣笠」

  「はい、なんとか……」

  そんな衣笠を見て母さんは言う。

  「衣笠くん。せっかくだから泊まっていったらどう?」

  「えっ……」

  確かに客間にこいつが寝る布団ぐらいはあるはずだ。

  「そうだな。衣笠、その方が……」

  「いや、駄目だ」

  だが、なぜか親父が俺の誘いを止める。

  「なんでだよ」

  さっきまで衣笠と機嫌よく飲んでたのに。

  「あのなあ」

  呆れたような口調で言う親父。

  「嫁入り前の衣笠くんを泊めるのはよくないだろ」

  「……いやいや、嫁入り前も何も、こいつ男……」

  「……言われてみればそうかもしれないわね」

  俺の言葉を遮ると、母さんは親父に賛同するように言う。

  「かといって、1人で帰らせるのは危ないわ。雄大。衣笠くんをおぶって家まで送ってあげなさい」

  母さんの指示に、とんでもないとばかりに首を振る衣笠。

  「いや、だ、大丈夫です……」

  「大丈夫じゃないから言ってるの。雄大は体力馬鹿なんだから、あなたを背負って家に帰るぐらいなんてことないわ。そうそう、二日酔いにならないように今いいお薬あげるわね。これはよく効くのよ……」

  2人が話しているのを聞いていると、横からこっそり親父が俺を手招きする。

  「こっち来い」

  「……なんだよ」

  俺はよっこらしょと立ち上がると、親父に連れられ廊下まで出る。

  「なんなんだよ、親父」

  面倒くさそうな顔をしてる俺に親父が差し出したのは、万札三枚。

  親父はそれを、俺の手にクシャリと握らせる。

  「なんだよ、これ」

  ……衣笠の送り賃にしちゃ高いと思うが。

  そんな親父は俺の耳元に顔を寄せると、そっと囁いた。

  「おい、雄大。これでラブホへ行ってこい」

  「は、はぁ?」

  目を丸くする俺を見て、なおも言葉を続ける親父。

  「おめえ、まだ衣笠くんに手ぇ出してねえだろ」

  「……」

  「あの子の身体からおめえの匂いがしねえからよ」

  「……そ、それは」

  別にあいつは彼女でもなんでもねえ、ただの後輩なんだから。

  しかし、勘違いしたままの親父は俺ににじり寄る。

  

  「馬鹿だなあ。なんでさっさと手をつけてしまわねえんだ。あんないい子いねえぞ」

  「……」

  「かわいいし、性格だっていい。気配りは出来るし、それにいい身体してるじゃねえか。あらぁ、安産体型だぞ」

  「……」

  「それになにより、おめえみてえな奴を好きだなんて言ってくれる奴は他にいねえだろうが。早く手ぇつけねえと、よその奴に取られちまうぞ」

  「……」

  ★

  「衣笠、大丈夫か?」

  「はい、大丈夫で~す」

  俺の背中から、陽気な後輩の声が聞こえる

  いつもよりも大きく朗らかな声は、酔っている証拠なのだろう。

  落ちないようにと、ぎゅっと抱き着いて来るその腕は、俺とは違って小さくて細かった。

  「……」

  火照った身体の熱が俺の背中に伝わって来る。

  それと同時にニンゲンの匂いが俺の鼻を刺激する。

  ……衣笠って、いい匂いがするんだな。

  そんなこと、気にしたこともなかった。

  「よっ、と……」

  俺は動揺をごまかすように、その小さな体をきちんと背負い直すと、夜道を歩く。

  「悪かったな。こんな遅くまで付き合わせて」

  「そんなことないですよー」

  俺の言葉にぶんぶんと首を振る様子は、見なくてもわかった。

  「俺、地元が離れてるから、久しぶりに実家に帰ったみたいな気がしてすごく嬉しかったです」

  「そ、そうか……」

  「はい。お父さんもお母さんも優しかったし大好きです。ああいう人が義理の両親になってくれたらいいなあ」

  「……」

  その言葉に胸がドキドキしてくるのを感じた。

  ……くそ。俺まで酔ってきちまってるな。

  じゃなきゃ、ただの後輩のこいつを……かわいいなんて思わないはずだ。

  ……違う。俺は女の子が好きなんだ。別に男が……衣笠が好きなわけじゃ……。

  そんな逡巡を勘違いしたのか、衣笠は俺の耳元で囁いた。

  「あ、大丈夫ですよ。ご両親だけじゃなくて、先輩の事だって、俺大好きなんですから」

  『おめえみてえな奴を好きだなんて言ってくれる奴は他にいねえだろうが。早く手ぇつけねえと、よその奴に取られちまうぞ』

  その時の俺の目は……きっと据わってしまっていたのだろう。

  衣笠を背負うために後ろに回した両手に、ぎゅっと力がこもる。

  「なあ、衣笠。ちょっと疲れてねえか。……少し休んで行くか」

  目の前にあるのは、お誂え向きのラブホだった。

  ★

  親父が渡してきた金で取った一番上等なラブホの部屋に、俺は衣笠を連れ込む。

  「……」

  嫌も応もなしに部屋に担ぎ込まれた衣笠は、不思議そうな顔をして部屋を見回していた。

  きっとこいつは酔い醒ましのためだけにこの部屋を借りたと思っているのだろう。

  「……」

  その無防備な表情に俺は昂ぶりを必死に抑えようとする。

  この期に及んで俺はまだ、少し迷っていたから。

  「すごいですね」

  「そ、そうか?」

  「はい。俺、ラブホとか初めてだから」

  「ふうん」

  まあ、出張で泊まるようなホテルとは違うからな。

  ……それにしても。

  「意外だな」

  衣笠のことだから、あちこちで遊んでるかと思ったのに。

  「あ、先輩。俺のこと遊び人だと思ってるでしょ!」

  酔って酒臭い息を吐きながら、衣笠は怒ってみせる。

  その顔さえかわいく見えてしまうのは、なぜなのか。

  「俺はこう見えて、一途な方なんですよ。こうと決めた子意外と遊んだりしないんです」

  「そうか。じゃあ、いま付き合ってる奴とはどうなんだ?」

  そう言えば、衣笠から彼女の話は聞いたことなかった。

  ……こいつから、あんまり女の匂いもしねえよな。

  「……」

  ふと衣笠の顔を見ると、さっきよりも赤い顔で俯いている。

  「?」

  「内緒……ですよ」

  俺が首を傾げると、衣笠は酒の勢いを借りて、恥ずかしそうに口を開いた。

  「俺……誰かと付き合ったことないんです……」

  「っ!」

  その言葉に俺は目を見張る。

  「お前……経験ないのかよ……」

  「わ、悪いですかっ!」

  ちょっと泣きそうな顔をして衣笠は言う。

  「俺だって、童貞卒業したかったけど、うまく彼女とか出来なくて……」

  衣笠はこの年まで彼女が出来たことがないを恥じているのだろう。

  だが、俺が衝撃を受けたのはそこではない。

  ……まっさらな身体じゃねえか。

  誰のものにもなったことのねえ、きれいな身体。

  『かわいいし、性格だっていい。気配りは出来るし、それにいい身体してるじゃねえか。あらぁ、安産体型だぞ……』

  俺を慕う、雌にしか見えないかわいい後輩が、酔っ払ってラブホに俺と泊まっているのだ。

  ……こんなシチュエーション、雄に我慢できるわけねえだろ。

  むしろここで手を出さなかったら雄じゃねえ。

  心の片隅にほんの一欠けらだけ残っていた罪悪感が姿を消した。

  だからだろう。

  俺の……獣人としての本能が、この身体から溢れさせたのだ。

  雌を虜にするフェロモンを。

  まるでハチミツを煮詰めたような甘ったるい匂いが俺の身体から部屋中へと広がっていく。

  「なに……これ……」

  突如部屋に漂い出したその匂いを嗅いだ衣笠の身体から、力が抜けていくのがわかる。

  「先輩……なんですか、この匂い……」

  「なんだ、知らなかったのか」

  きっと俺は、ひどい顔をしているのだろう。

  理性のないケダモノが、獲物に飛びかかる寸前のような表情。

  だが、熱に浮かされたような衣笠は、己の身に降りかかろうとする貞操の危機を察することは出来なかった。

  「この匂いはなあ」

  俺はそっと、その小さな背中に腕を回すと、優しく抱き寄せる。

  「ひゃいっ♡」

  だが、その行動の意味を考える余裕など、衣笠にはなかった。

  こいつは自分の身体に走る快感を堪えるので精一杯なのだろう。

  「雄の獣人が交尾の時に出すフェロモンなんだよ。こいつを嗅いだ雌は発情しちまって、目の前の雄の種で孕みたくなっちまう」

  「っ!」

  驚いたような顔をする衣笠。

  「ちょうど今のお前みてえにな」

  「そんな……俺、男なのに……」

  混乱している衣笠に俺は優しく告げる。

  「おかしいなあ。これ、雄には効き目ないんだぜ。…ということは、衣笠。お前は雌だってことだよなぁ」

  嘘だ。このフェロモンは耐性のないニンゲンの場合、雄にも雌にも変わらず効果があると言われているのだ。

  しかし、そんなことは知らない衣笠は戸惑ったまま。

  「せ、先輩! 俺、男……ひゃうっ♡!」

  必死にアピールしようとしても、俺の指が頬を撫でるだけでびくりと身体を振るわせるのだ。

  

  「ふうん。じゃあ、おめえが本当に雄かどうかを俺が確認してやるよ」

  どさっ!

  俺はそう言うと、ベッドの上に衣笠を押し倒す。

  「ああっ♡!」

  ただでさえ体格差があるというのに、フェロモンに犯された身体には力なんて入らない。

  その上全身が性感帯になった身体で、衣笠が俺に抵抗することなど出来ないのだ。

  それがわかっている俺は、ゆっくりとこの後輩の服を脱がしていく。

  中から現れたのは、うっすらと筋肉がついた体毛のないきれいな身体だった。

  ごくり。

  俺は唾を飲み込む。

  「衣笠……きれいな身体してるじゃねえか」

  発情したその肌は、桜色に染まっていた。

  誰の手も触れたことのない、無垢なこの身体を今から俺のものにしてしまえるのだ。

  「衣笠……大好きだぞ」

  そう言うと、俺は汗の浮いた胸に舌を這わせる。

  ざらり。

  「きゃんっ♡!」

  まるで子犬のような悲鳴を上げる衣笠。

  「気持ちいいのか?」

  「……」

  涙目で俺を見あげる雌の顔はとてつもなく愛おしかった。

  「だめ♡……だめです♡……先輩♡……」

  もはや懇願することが出来ない衣笠に、俺は優しく囁いた。

  「大丈夫だ。……もっと気持ちよくしてやるからな」

  「えっ、だ、だめ……あああああっ♡!」

  衣笠の絶叫が部屋中に響いた。

  ぬちゅ、じゅるっ、ぬちゅぬちゅぬちゅっ!

  俺の愛撫がその身体を襲ったのだ。

  猫科のざらついた舌がその小さなニンゲンの全身を這い回る。

  ぬちゅっ、じゅるっ、ざらっ、ぐちゅっ、がりっ、こりっ、ぬちゅっ、ぐちょっ……。

  「ひぃぃぃぃぃぃぃっ♡!」

  フェロモンのせいで感じやすくなった身体は、肉をこそげとるような強い舌の刺激を完全に快感として受け止めていた。

  「いやあああ♡っ、だめっ♡、だめえええ♡っ!」

  その音色を楽しみながら、俺は舌先だけ出なく、10本の指先をも踊らせる。

  ピアニストの指先のように変幻自在にうごめくそれは、ただでさえ感じやすい身体の感度を高めてしまうのだ。

  「ひぎいいい♡っ!!」

  目を見張り、身体を硬直させ、のけ反らせる衣笠。

  ぴんと張った胸の中央には、処女に相応しいその小さな乳首がぽっちりと主張していた。

  俺は軽く口を開くと……その片方にむしゃぶりついた。

  じゅるじゅるじゅるじゅるっ!!

  「んあああああっ♡!!」

  口からよだれを垂らしながら泣きわめく衣笠。

  それは今まで感じたことのないほどに凶悪な快感なのだろう。

  動かない身体に鞭を打つように死に物狂いでその快感から逃れようとする。

  「イグっ♡、イグっイグぅっ♡♡!!」

  荒い息のせいで大きく上下する胸の動き。

  その途中でびくんっと小刻みに震える瞬間が垣間見える。

  イッているのだ。

  生まれて初めての乳首イキ。

  その顔は驚愕というよりも恐怖に満ちていた。

  もうどうすればいいのかわからないのだ。

  「大丈夫だ」

  俺は乳首を舐め舐め、衣笠に囁く。

  「お前は俺に身を任せてりゃいいんだ」

  そう言いながら、俺の指先はゆっくりと衣笠の身体を下に下りていく。

  薄く割れた腹筋を越え、すでに白濁液にまみれてしまった股間を通りすぎ。

  たどり着いたのは、小さくすぼまる無垢な雌穴だった。

  俺はそこに優しく指を潜らせる。

  ぬちゅんっ。

  「や、やだ♡……」

  初めての感覚に顔を歪める衣笠

  だが、フェロモンに狂わされたこの身体なら痛みなど感じなかったはず。

  それどころか……。

  ずぶずぶずぶずぶ……。

  「んぎいいいいっ♡♡!!」

  再び身体をのけ反らせて、全身で快感を訴える衣笠。

  そう、開発された雌穴同然に緩んでしまっているのだ。

  「……もう、いいだろ」

  俺はぽつりと呟くと、身につけた服を脱ぎ捨てる。

  シャツを脱ぎ、スエットを投げ捨て、トランクスを剥ぎ取る。

  そこにあるのは……。

  「なんですか……それ……」

  息を呑む衣笠。

  その目の前でびくびくと震えているのは、子供の腕ほどもある巨大な赤黒い肉杭だった。

  鋭く飛び出した雁首に、全体を包み込むように張り巡らされた凶悪な棘。

  生殖器というよりも、人を壊す凶器のようで。

  それがだらだらとよだれを垂らす様は、我ながら醜悪でしかなかった。

  「……快感で、俺を忘れられねえようにしてやる」

  その言葉で、衣笠は俺が何を求めているかわかったのだろう。

  「先輩……お願いですから……先輩……」

  蚊の鳴くような声で呟くその姿は、かわいそうで哀れで……淫らだった。

  俺の情欲を、この上なくそそったのだ。

  もう、我慢などできはしなかった。

  俺は無言のまま、逸物をその肉穴に押し付けると……一気に貫いた。

  ぐじゃりっ!

  「あ”あ”あ”あ”あ”っっ!!!!」

  破瓜の叫びをあげる衣笠。

  だが、痛みなどないはずだ。

  このフェロモンは雄をくわえ込むために最大限に働く媚薬になるのだから。

  ぐじゅりぐじゅりぐじゅりぐじゅり……。

  ……すげえ。

  俺は心の中で呻く。

  衣笠の中は、まるでイソギンチャクのようだった。

  ぬるぬるとうごめく触手に取り込まれてしまったかのような快感が俺を襲う。

  「うぅ……」

  思わず雄汁を漏らしちまいそうで、俺は唇を噛み締めた。

  ……こんなに気持ちいいのは、初めてだ。

  俺だってこの歳だ。

  誰かと付き合ったことはないにしろ、風俗で遊んだことぐらいはある。

  だが、その時に感じた快感とは雲泥の差があった。

  なんというか……雌が求めてくれているのがわかるのだ。

  孕ませてくれる俺の子種を。

  肉壁が必死にすがりつき、ザーメンをねだるように亀頭と竿を舐めしゃぶる。

  そのコリコリとした襞で吸盤のように吸い付かせ刺激されると、快楽で脳がイカれちまいそうになる。

  「衣笠……」

  こいつは、こいつはこんなにも俺を求めてくれてるんだ。

  「せ、先輩ぃ♡……」

  快感と不安とで、どうしていいのかわからないのだろう。

  そのおぼこい顔をくしゃくしゃに歪めて、衣笠は俺を見上げる。

  「心配すんな。おめえはただ、よがってりゃいいんだ」

  俺はそう告げると、ゆっくり腰を上下させた。

  ぬこっ、ぬこっ、ぬこっ、ぬこっ……。

  「んぉぉぉぉぉぉぉぉっ♡♡!!」

  俺の逸物で肉襞を擦られ、悲鳴を上げる衣笠。

  全身を痙攣させ、肉穴がきつく締め付けた。

  ……イッちまったのかよ。

  軽い抜き差しだけで、絶頂に達したのだ。

  「なんでぇぇぇ♡……」

  怯えた顔をする衣笠がたまらなく愛おしい

  ……こいつは俺の雌だ。

  ……こいつを孕ませててえ。

  その本能で、ただでさえ馬鹿でかい俺のデカマラが膨れ上がった。

  めり、めりめりめり……。

  「んんんんっ♡♡!」

  雄膣を押し広げられる感触に涙を流す衣笠。

  そんなかわいい雌の身体を搔き抱くと……俺は情け容赦なく抽挿を開始する。

  がちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅがちゅっ!

  「んがあああああああっ♡♡!!!」

  衣笠の嬌声が部屋中に響き渡る。

  「イグっ♡、イッじゃうよぉぉぉっ♡♡!」

  生まれてこの方、感じたことがないような悦楽に飲み込まれているのだろう。

  「やだやだやだやだああああっ♡♡!」

  フェロモンによって雌の身体になった衣笠の肉穴は逸物の与える刺激を、莫大な快感として脳へと伝えてしまうのだ。

  きっとそれは命の危険を感じるほど。

  だからかっと目を見開き、その快楽から逃れようと死に物狂いで暴れようとする。

  だが、俺の獣の本能は雌を逃がしたりはしない。

  小柄な雌の抵抗など、何の意味もなさないからだ。

  ぬこっ、ぐちょっ、がちゅんっ、ごりっ、ごりごりごりごりごりごりごりごりっ、がちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんっ、ばちゅんばちゅんばちゅんばちゅんばちゅんばちゅんばちゅんばちゅん!

  俺は欲望のまま腰を振る。

  いや、衣笠を屈服させるために、二度と忘れられない快楽地獄に突き落とすべく、ただでさえ快感に爛れたその身体がもっとも感じる場所を逸物で探るのだ。

  肉襞を逸物で掻き回し、強弱を付けて攻め抜くと……。

  「ぴぎゃああああっ♡♡!」

  ひときわ高い声で鳴く場所があった。

  ちんこの裏側。

  前立腺という奴だろう。

  「だ、だめぇぇ♡……」

  俺はそこを集中的にえぐりぬいた。

  ごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅっ!!!

  「おおおおおおおおっ♡♡!」

  聞いたこともないような野太い声が衣笠の口から放たれる。

  びゅるっ、びゅるっ、びゅるっ!

  すでに小さく縮んだ逸物から、何度も何度もザーメンが漏れ出した。

  それが俺には不快でたまらないのだ。

  ……雌のくせに雄汁なんか出すんじゃねえ。

  俺は決めた。

  こいつのザーメンが枯れ果てるまで、攻め抜いてやろうと。

  そして、その後にたっぷり種をつけてやるのだ。

  がちゅんばちゅんごりっ、ごちゅんっ、ばちゅんばちゅんばちゅんばちゅんっ、ずりずりずりずり……がつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつっ、ぐちゅん、ぬちゅん、ごりっ、ごりごりごりごりごりごりごりごりっ、ぬちゅぐちゅぬちゅぐちゅっ、がちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんっ!

  「んぎいいいいっ♡♡!!」

  俺の激しい抜き差しに泣きわめく衣笠。

  初めは抵抗を見せたその身体が、次第に俺を受け入れていくのがわかった

  激しい交尾によって、自分がただ与えられる快楽を受け入れるだけの雌だと、本能的に理解してしまったのだ。

  「しゅごいっ♡、しゅごいよおおおっ♡♡!!」

  その声も媚びた色を重ね出す。

  そして……。

  びくっびくっ……。

  すでに枯れ果てたのだろう。

  雄として相応しくないほど縮んでしまったちんこからは、もはや何も出てこないのだ。

  ただ、小さく震えるだけ。

  それを見た俺はケダモノの笑みを浮かべる。

  ……中出しして、孕ませてやる。

  そこには理性など皆無だった。

  野生の獣に先祖返りしちまったように、ただただ目の前の雌に種付けすることしか考えられなかった。

  俺は、放心状態のまま小刻みに震えるその身体を掴むと、さらに逸物を押し込んでいく。

  じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ……。

  弛緩しきっているその身体は、押し込まれる長大な逸物を受け入れていった。

  「あ……がががが……」

  ずるずると飲み込まれていく逸物。

  肉壁を押しのけ、襞を掻き分けて……行く手を阻むような弁を、無理矢理押し開いた。

  ぐじゅりっ。

  「んあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ♡♡!!」

  びしゃっ、びしゃっ!

  枯れ果てたはずの逸物から噴き出すのは、クジラのような潮だった。

  俺はもう、我慢出来なかった。

  その小さな身体を抱きしめると、壊すほどの勢いで腰を振った。

  がつんっ、がつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつっ!

  「っっっ♡♡♡♡!!!!!!」

  もう、声も出すことも出来ずに、快楽に溺れる衣笠。

  俺はたまらず……。

  「くそっ、出すぞっ出すからな! おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

  びゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるっ!!!

  雄の雄叫びとともに、えぐりぬいたその深い雌穴の奥に思い切り思いの丈をぶちまけたのだった。

  ★

  ちゅんちゅん。

  「あ……」

  窓の外からの雀の泣き声を聞いて、俺は目を覚ます。

  ……どこだ、ここ。

  見慣れないホテルの一室。

  ……なんでこんなとこに。

  「んん……」

  小さな声が腕の中から聞こえる。

  「なんだ?」

  ふと視線を下にやると、腕の中には……。

  ……げえっ!

  後輩の衣笠が意識を失ったまま俺の身体にしがみついていた。

  しかも全裸で。

  「なんで……」

  見れば二人の身体は繋がっている。

  「やば……」

  慌てて身体を離そうとすると……。

  ずるんっ。

  衣笠の肉穴から抜ける、俺の逸物。

  じわ、じわじわじわ…。

  そこから溢れ出すのは、俺の子種だった。

  「あ……」

  それを見て、俺は昨夜の事を思い出す。

  酔った俺は親父に唆されたせいで衣笠の事が雌にしか見えなくなって……。

  「種付けしちまったんだ……」

  衣笠をイカせまくって、俺もたっぷり中出しして、そのまま寝ちまったんだろう。

  「……」

  俺の頬はびくびくと引き攣る。

  ……あれ、完全に同意なかったよな。

  むしろフェロモンで無理矢理発情させて、強姦紛いに襲い掛かってしまったような記憶しかない。

  「やべえよな、これ……」

  いくらかわいい後輩とは言え、これ犯罪じゃねえか。しかも……。

  ……孕ませちまったかもしれねえ。

  雄獣人の本気汁をたっぷり種付けしちまったんだ。

  ニンゲンの衣笠なら、男でもガキが出来ててもおかしくはない。

  「せ、責任とらねえと……」

  というか、なんと言って謝ればいいんだ。

  許してもらえるんだろうか。

  それより何より……。

  ……こいつのこと、完全に俺の中でツガイとして認識しちまった。

  もう、衣笠以外が嫁になるなんて考えられねえ。

  獣人の執着心が悪い方に働いちまったのだろう。

  もう理性ではなく本能で、俺は衣笠を自分の雌だと決めてしまったのだ。

  ……こうなっちまったら、土下座でもなんでもして、俺の嫁になってもらえるように頼みこまねえと。

  俺はそんなことを考えながら、すやすやと眠る衣笠が目を覚ますのを待つことしか出来なかった。

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