疲れ果てた人リーマンがガハハ系龍神様に命を救われるお話【ケモホモ】

  【繭神様】

  疲れ果てた人間の元に現れ、心身を癒やすと言われる神。吉兆の印。繭のような優しさと温かさで全身を包み込んでくれるような様からそう言われている。繭神様に出会った人間は全て不況から抜け出し、幸せになることができるとの言い伝えがある。

  1

  夏の夜は、酷く暑く感じた。

  汗で張り付いたスーツのシャツも、重いバックの感触も、もう何も感じない。電車が駅を通過する度、ホームには生ぬるい風が吹き抜けた。きっとこれが最後の景色なんだと思うと、それさえもやるせなくなる。

  見上げた夜空には、星は見えなかった。

  ただあるのは、駅のホームから見える蛍光灯の明かりと、空を張り巡らせた電線の陰だけ。やっと、自由になれる。そう頭の中で思う反面、意外と自分の感情は冷静だった。何もない空っぽの虚無に支配されたようで、身体が現実味を帯びていない。だから自分は、今こんなことをしようとしているのだと悟った。

  もう一本、快速の電車が通過しようとしている。

  俺は、一歩、足を前へと踏み出した。

  その時だった。

  「おっと、危ない危ない!!」

  かしゃがれた、男の声だった。

  それもつかの間、身体が丸太のような腕に引き上げられる。

  体制を崩した俺は、そのまま駅のホームに尻餅をついてしまった。

  「すまんすまん・・・力が入りすぎたようだな。・・・坊主、怪我はないか?」

  大きな手が差し出される。

  よく見ると、人間の手ではなかった。これは、鱗? そう思った瞬間、俺は顔を見上げてハッと息を飲む。

  目の前にいたのは、着物を着た大柄な龍だった。

  その人外のような見た目に、俺は頭の中が真っ白になる。

  「あ、あなたは・・・」

  「ハッハッハ!! まぁこの姿を初めて見たなら驚くのも無理はない!! だが坊主・・・ここで巡り会えたのも何かの縁じゃ。今夜は心ゆくまで、お前さんを癒やしてあげるからな」

  そう言って、彼は俺の手の平を握りしめる。

  固く握りしめたその手の平は、強く俺の心を引き上げてくれるようだった。尻餅をついていた俺の身体を引き上げると、彼は屈託無く笑う。

  「ワシは繭神じゃ」

  そう言って、彼は笑った。

  「繭神、その名をジンと申す。・・・よろしくな、坊主」

  もし、この世に神様がいるとしたら。

  彼は、その類いのものだったのだろう。思い返しても、この奇跡的な出会いを誰が想像出来たのだろうと思った。

  夏のあの日。

  こうして俺は、目の前の神様に命を救われた。

  2

  「なんじゃ・・・お前さん繭神を知らんのか。割りと有名になってきたと思ってきたんじゃが・・・」

  そう肩を落とす彼は、太い尻尾をゆらゆらと着物の端から揺らめかせていた。

  とりあえず、お前さんの家はどこだとの話になり、今こうして肩を並べて歩いて帰っている。

  その奇妙な光景に、未だに俺は慣れずにいた。

  「その、繭神という神様なんですが・・・」

  「ん? タメ口で良いぞ坊主。その方がワシも気楽じゃ」

  「あ、じゃぁ・・・その、繭神という神様は、ジンさんの他にもまだいるのか?」

  何気ない質問をぶつけてみる。

  とりあえず、何か会話を繋いでいなきゃ気が持たなかった。

  「あぁ、同業者は結構いるぞ。なんせ今や現世は所謂ブラック企業と悪政が蔓延っとるからのう・・・ワシらのような繭神は結構需要が高い。・・・ワシらも頑張ってはいるんだがな。それでも救えない人の子は沢山いる。・・・お前さんはワシと出会えてラッキーだったな、坊主」

  そう言って、目の前の龍神はその大きな手の平で俺の頭をワシワシとなで付ける。

  その温もりが、ただ有り難かった。

  「・・・その、さっき・・・俺は――」

  「・・・よいよい。皆まで言わずとも分かっておる。今日は、お前さんが明日も生きたいと思える程、幸せで満ち足りた夜にすることを約束しよう。・・・何、こう見えてもワシは一応神様の類いじゃ。坊主の悩みも全部分かっておる。・・・今日は全部吐き出すだけ吐き出せ、坊主」

  大きな手の平が、バンっと俺の背中を叩き付ける。

  その鼓舞するような彼の振る舞いに、なぜか救われている自分がいた。

  誰かと一緒に家路を共にするなんて、もう何年ぶりだろうか。

  一緒に誰かと帰ることがこんなにも心地よいことだったなんて、知らなかった。

  「まずはお前さんの心と体に巣くった邪気を払うことだな。膿んで化膿した傷口のように、まずは膿を吐き出さんと傷は治らん。まずは全部吐き出して、その後ぽっかり開いた心の傷口をワシが埋める。・・・そうずれば、お前さんにも自然と笑みが戻ろう。・・・人の子は、ワシらが思っている以上に強い。その事を思い出しさえすれば、自然と立ち直れる。ワシらはそのきっかけと手助けをするだけじゃよ、坊主。・・・後はお前さんが勝手に回復していく。そんなもんじゃ」

  彼はその人外の見た目通り、神様なのだろう。

  何も説明していないのに、こちらの状況は手に取るように把握しているように見えた。

  俺が、ブラック企業に勤めていることも。

  連日の残業とパワハラでもう心が壊れかけていることも。

  さっき、電車に飛び込もうとしたことも。何一つ詳しい事情は聞いていないのに、全てをくんでくれている。

  そんな彼の優しさが、今はありがたかった。

  「まずは部屋の掃除じゃな。部屋に溜まった邪気も払わんといかん」

  「な・・・どうしてうちが散らかっていることを――」

  「はははは!! 坊主!! そう身構えんでもええ!! これはワシが神だから分かるとかではない。あくまでも経験則じゃ。大抵、病んだ人の子の部屋は総じてゴミ屋敷になることが多い。そして邪気が溜まり、心身にも邪気が巣くうようになる。そしてまた部屋が汚れ、邪気が溜まり・・・まぁその繰り返しよ。まずは坊主の部屋に帰って掃除、その後お前さんの心身に溜まった邪気を払い、最後はお前さんの心を満たしていく。それでワシの役目は終わりじゃ。・・・その頃には、お前さんも見違えるように元気になっていることを保証しよう。・・・何。人の子を救うのはこれが初めてではない。ワシもそれなりに手練れじゃ。・・・お前さんはただ、ワシに身を任せとけばいい」

  彼はそう言葉を続けると、横目でにこやかに笑った。

  見上げたその顔は、俺より身長が二回りほど大きい。

  なぜか懐かしさを覚えるその横顔に、俺は見とれていた。

  「・・・本当に、神様なんだな・・・あんた」

  「なんだ? 未だに実感がわかんか?」

  「実感というか・・・現実味がない。その割りには、この状況をすんなり受け入れている自分も怖いというか・・・」

  「あぁ、すまん。それはワシの神力をちょっとばかし使っている。ワシもこの見た目、人外の姿をしている以上・・・人の子が見れば普通怖がる。そこをワシは、神力を使ってお前さんの心の防波堤をちょっとばかし軽くしている。・・・ワシが神様の類いのモノだと信じやすくする為にな。だから、ワシの姿を見てもさほど驚かんかっただろう?」

  「それは・・・言われてみれば、確かに・・・」

  「まぁ・・・神様と言っても、ワシもそう万能ではない。邪気を払い、膿を抜き、疲れ果てたその心身を癒やす事ができたとしても・・・心の傷は、人の子が自らの意思と力で癒やすしか他に道はない。ワシはただのきっかけに過ぎんのだよ、坊主。あとは人の子が勝手に治っていく。この世の通りと付き合い方、そして覚悟の決め方を学ぶのは、その道を歩む人の子本人に他ならない。・・・こればっかりは、他人に教えて貰うものでもないからな。それでも生きてさえいれば、何度でもやり直せる事はワシもお前さんに教える事ができる。もしまた行き詰まったら、ワシがまたお前さんを助けよう。・・・その為に、ワシら神々は存在しているのだからな」

  見返りは、ないのだろうか。

  ふと、考えていたのはそんなことだった。

  無償で助けてくれるほど、この世界は甘くはない。神様という彼も、何も見返りを求めないとは思えなかった。

  俺には、何一つ差し出せるものなどない。

  本当に、救われるだけでいいのか分からなくなってしまった。

  「・・・なんじゃ、浮かない顔をして。何か不安な事があるのか?」

  「い、いや・・・その――」

  「・・・なんじゃなんじゃ、今更隠しても意味はないぞ、坊主。・・・どうせ、お前さんを救った見返りとして何かしなきゃいけんのかとか考えておったんじゃろ?」

  図星だった。

  「なんで――」

  「・・・ワシらが出会う人の子は、総じて真面目な者が多い。・・・それも、真面目過ぎる程のな。だから病むんだろう。何も見返りはいらんと言っても、何か差し出した方が気が楽だという者もいる。・・・だからワシ達繭神は、ちょっとばかし人の子の精力を貰うことにしている。・・・それが見返りだ、坊主」

  「精力って・・・」

  「まぁ・・・お前さん達の言葉で言うなら、“エッチ”じゃな」

  そう言って、彼は左手の親指と人差し指で作った輪っかに、右手の人差し指を入れて抜き差しした。

  顔が、一気に真っ赤になる。

  意味が分からなかった。

  「え、エッチって――」

  「そのまんま、セックスじゃ。お前さんとまぐわって、精液を貰う。まぁ・・・一種の契約のようなものじゃ。神と人の子がまぐわうのには、ある一種の契りのような意味合いを持つ。それに、ワシがこの姿でお前さんの前に顕界したということは・・・お前さんもこの姿が満更でもないということになる。・・・良かったな、坊主。今日はスリット姦というものが楽しめるぞい!!」

  そう言って、目の前の龍神はがはははと笑った。

  どこで覚えてきたのか分からないその単語に、俺は頭の中が真っ白になる。

  焦るなという方が無理だった。

  「ち、違う!! 俺は、ただ・・・!!」

  「もういいんじゃ、隠すな・・・坊主。お前さんがケモホモ好きで、スリット姦に憧れているのはワシも織り込み済みじゃ。ワシらだって、人の子の好みに合わせて姿形は変える事ができる。・・・そう恥ずかしがるでない。折角お前さんの好みに合わせて顕界してきたんだ。もっとお前さんの好きにしてもいいんじゃぞ・・・?」

  悪魔の囁きのようだった。

  いや、相手は神様だからこれは神様の囁きなのだろうか?

  確かに、彼は俺の好みドストライクの姿をしていた。40代から50代の年上、がっちりとした体格に少し出た腹、緩やかに着こなす着物、そして絵巻きから出てきたような雄々しい顔をした龍の顔。惹かれない訳がなかった。

  もし、許されるなら。

  そんな言葉が頭の中に浮かんでは消えていく。

  さっきまで死のうとしていた自分が馬鹿らしくなるほど、俺は浮き足だっていた。

  「・・・何、そう慌てんでもいい。ワシらの夜はまだまだ長い・・・じゃろ?」

  甘く、渋さをはらんだ声だった。

  それが、耳元で囁かれる。

  ドキリと、胸が高鳴った。

  「・・・さて、ここがお前さんの家か」

  そうこうしている内に、俺達は俺が住んでいる家へとたどり着く。

  見上げたそこは、俺が住んでいるアパートだった。

  階段を上り、玄関を開ける。部屋の中は彼が予想していた通り、ゴミ屋敷の一歩手前といった状況だった。毎日残業明けに帰り、寝るだけの部屋。思えば、ここに誰かを連れてきたのは初めてだった。

  「じゃあ、早速掃除と邪気払いといくかのう。ほれ、お前さんはゴミ集めじゃ」

  「え、掃除って物理的な・・・」

  「・・・当たり前じゃ。いくらワシが神様だと言っても、指パッチンでいきなり部屋が掃除できるわけではない。・・・ま、掃除道具は新界から持ってきたがのう」

  そう言って、彼は着物の裾に手を入れると、何かを探すように手をまさぐり始める。

  出てきたのは、掃除機に似た機械のようなものだった。

  「それは・・・」

  「新界の掃除機じゃ。電源がなくても何でも吸ってくれる。・・・邪気もな。ワシはこいつで掃除するから、お前さんはゴミを分別じゃ。・・・ま、小一時間もかからんじゃろ」

  着物の裾を紐で縛りながら、彼は笑う。

  なぜかその姿に見とれている自分が、少し怖かった。

  太い龍の尾が、着物の端から揺れる。

  俺はカッターシャツの腕をまくると、言われた通りゴミの分別から手に取りかかかった。

  3

  「ふぅ・・・まぁこんなもんかな」

  それから小一時間後。

  彼が言っていた通り、部屋は見違えるように綺麗になっていた。

  綺麗になっただけじゃない。なぜか、すっきりしているように感じる。これが、彼が言っていた“邪気”というものを払った効果なのだろうか? 額に浮かぶ汗を拭いながら、俺は一人達成感を感じていた。

  「こんなにこの部屋・・・広かったんだな」

  「そうだろうそうだろう。・・・ま、ワシにかかればこんなもんよ。しっかり邪気も吸い取っておいた。・・・後はお前さんの心身に宿った邪気を払うだけじゃな、坊主」

  そう言って、彼は俺の方へと近づく。

  彼はその大きな手の平を俺の胸へと押し当てると、もう片方の腕でグッと腰を捕まれた。

  半ば抱きかかえられたようなその体制に、心拍数が上がり始める。

  見上げれば、あの龍の顔がすぐ目の前にいた。

  「それじゃあ、坊主。ゆっくり息を吸って・・・そして吐き出せ。お前さんの心の中に溜まったネガティブなモノを全部吐き出して、その代わりにワシから感じる温もりを吸い込んでいくイメージじゃ。その動きに合わせて、ワシもお前さんの邪気を払っていく。・・・よいな?」

  「・・・あ、あぁ・・・」

  「・・・よし。じゃあ、行くぞ」

  グッと、胸に手の平が押し込まれる。

  俺はその手の平を押し返すように、胸を膨らませて息を吸い込んだ。

  胸の奥に、チクリと痛みが走る。

  頭の中で、あの職場の光景が浮かんでは消えた。

  「・・・よし。ゆっくりだ。ゆっくり吐き出せ、坊主。・・・そうだ、ゆっくりだ」

  胸の奥から、何かが吐き出ていく感覚がする。

  芋づるのように引き抜かれていくそれは、胸の奥底で蠢いているようなイメージだった。それが、口の中からあふれ出ていく。

  息が、出来なかった。

  「・・・大丈夫だ。ゆっくりでいい。ゆっくり、息を吸うんだ、坊主。・・・大丈夫だ、ワシがここにいる」

  腰を抱きかかえていた腕に、力が入る。

  今までのトラウマが、走馬灯のように蘇っては消えていく。

  彼の手の平の感触がなければ、今にも発狂してしまいそうだった。段々速くなっていく呼吸の音に、パニックになっていく自分がいる。

  彼の顔が、一瞬だけ険しくなった。

  「ふむ・・・これは結構根深いな。・・・どれ、坊主。ちょっと我慢しろ」

  そう言って彼は顔を近づけると、その唇を重ね合わせて塞いだ。

  ねっとりとした舌先が、腔内に侵入する。

  俺は、言葉を失った。

  「んんんんんん!!! んっぁ――」

  突然の事に、どう反応していいのか分からない。

  それもつかの間、胸の奥が一気に軽くなったような気がした。さっきまで感じていた禍々しいものが、すっと抜け落ちていく。

  絡みついた舌先が、ただ心地よかった。

  甘い、蜜のような味がする。それを飲み干すだけで、胸の奥が満たされたような気がした。凝り固まった心を解きほぐしていくように、柔らかな舌先が絡みついていく。

  段々と、呼吸が落ち着いていくのを感じた。

  「ぷはっ・・・これでいいじゃろ。突然すまんな、坊主。中々手強い邪気じゃったから、少し手こずったわい。・・・大丈夫か? 坊主。 気分はどうだ?」

  目の前の龍が、優しく微笑みかける。

  さっきまでの胸の痛みが、全くない。軽くなった身体が、まるで羽根が生えたようだった。

  「・・・あぁ。だいじょうぶ、だ――」

  それもつかの間、全身の力が急に抜けていく。

  両足が、ガクガクと震えるようだった。立っていられないその力の抜け方に、身体がバランスを崩し始める。

  「・・・おっと、危ない危ない」

  そっと、彼が俺の身体を抱きかかえたのはその時だった。

  がっしりした両腕が、俺の身体を支える。

  その温もりだけが、ただ固く俺の身体をつなぎ止めていた。

  「・・・大丈夫か、坊主」

  甘く、渋さをはらんだ声だった。

  それが、耳元で囁かれる。

  胸が、ときめいた。

  「・・・なかなか、手強い邪気だったからな。一気に抜け落ちた、その反動が来たんじゃろう。・・・どれ、寝床まで運ぼう。少し横になればすぐに楽になる。・・・心配するでない」

  そう言って、彼は俺の身体を易々と持ち上げると、お姫様抱っこのように抱きかかえる。

  そのまま俺は、ベットの上へと運ばれた。

  優しく、そっといたわるように、彼の腕が俺の身体をベットの上へと乗せていく。

  その気遣いが、今はただありがたかった。

  「・・・大丈夫じゃ、坊主。・・・ワシが側にいる」

  優しく、彼は微笑みかけた。

  大きな手の平が、俺の頭を撫でる。

  一気に、目頭が熱くなった。

  「すまない、その・・・ジンさん・・・」

  「・・・いいんじゃ。落ち着くまで、手を握っていよう。・・・これで、お前さんの心と体に溜まっていた膿は取り除いた。・・・後は、お前さんの心の傷口を塞いで、満たしてあげるだけじゃ」

  そう言って、彼は俺の胸を優しくさする。

  握りしめたもう片方の手の平が、ただ温かかった。

  「・・・何だか、背負っていたものを全部脱ぎ捨てたみたいだ」

  「そうじゃろう。中々根も深かったからな。相当なダメージを負っていたはずじゃ。・・・どれ、坊主。もう一回チューじゃ」

  そのまま、彼は俺の唇を塞ぐ。

  柔らかな舌先が絡み合い、甘い唾液が混ざり合っていく。

  それを飲み込んだ瞬間、胸の中に暖かな物がジワリと染み出していくのを感じた。

  その感覚に、俺は夢中になってそれを飲み干す。

  今まで負ってきた心の傷口が、ふと、癒やされていくような感覚だった。

  「・・・ふむ。ここも元気になってきたな、坊主」

  そう言って、彼は俺の股ぐらをさする。

  久しぶりに勃起したそれは、雄としての快感を求め始めていた。ニヤリと笑う彼の眼差しが、どこか濡れているように見える。

  急に、恥ずかしさがこみ上げてきた。

  「・・・こ、これは――」

  「・・・大丈夫だ、坊主。これも生理現象のようなものじゃ。お前さんの身体が、本能的にワシとエッチすることを望んでしまっているのだろう。・・・心配せずとも、この後たっぷりスリット姦は堪能できるぞい、坊主。・・・ほれ、ワシの割れ目もそれを望んでおるじゃろ・・・?」

  掴まれた手の平が、彼の着物の中へと押し当てられる。

  柔らかな褌の布地から、微かに縦割れのような凹凸が浮き出ていた。そしてその割れ目に沿って、じっとりと濡れた粘液のようなものを感じる。

  指先が、そこに触れた瞬間。

  ドクンと、胸が高鳴った。

  喉の奥が、急に渇いたような気がする。ゴクリと生唾を飲み込んだ瞬間、喉仏が上下に大きく動いたのを感じた。

  「・・・じ、ジンさん・・・」

  「・・・そう物欲しそうな目でワシを見るでない。ワシも興奮してしまうじゃろ・・・?」

  大きな手の平が、そっと俺の頭を撫でる。

  真っ直ぐに見つめ返す彼の眼差しに、目を離すことが出来なかった。

  暫くの沈黙が、二人の言葉を埋める。

  先に言葉を発したのは、彼の方だった。

  「・・・じゃあ、そろそろ夕餉の準備に取りかかるとしよう・・・坊主。お前さんはこのまま休んでおれ。まずは食うもんを食って、英気を養って、それからエッチじゃ。・・・一人でマスをかくんでないぞ? 坊主」

  そう言ってガハハハと笑うと、彼はその場を立ち上がった。

  一瞬の名残惜しさが、心を襲う。

  ベットから見上げた大きな背中は、ただ優しかった。

  「な、なぁ!! ジンさん!!」

  俺は、なんとか声を振り絞った。

  まだ、身体には力が入らない。

  それでも上半身は、なんとか起き上がることができた。

  「・・・なんじゃ?」

  「そ、その・・・ありがとうな。何から、何まで・・・」

  その言葉に、彼は目を一瞬だけ見開く。

  それもつかの間、優しく彼はその瞳を細めた。

  まるで、優しく見守る神様のように。

  その眼差しが、ただ好きだった。

  「・・・いいんじゃ。ほれ、ちゃんと休んでいろ・・・坊主」

  かしゃがれた低い声が、部屋の中に木霊する。

  もう一人じゃないんだと、そう悟った瞬間だった。

  4

  台所から、料理をしている音が聞こえる。

  菜を刻む音、何かをかき混ぜる音、何かを焼く音。手慣れたリズムと抑揚に満ちたそれは、聞いているだけで心が満たされるものだった。

  思えば、誰かの手料理を食べるなんて久方ぶりだった。

  毎日の残業続きで、店も開いていない。食べられるのはコンビニ弁当か、冷凍食品ばかり。こうして料理をしている時に漂ってくる匂いや音が、こんなにも心地いいものだったなんて知らなかった。

  「・・・ほれ、坊主。飯が出来たぞい」

  着物の裾を紐で縛り上げた龍が、そう声をかける。

  この見てくれで料理ができるのだから、人は見かけにはよらないのだと思った。まぁ彼の場合、人ではなく神なのだが。

  「これは・・・」

  「ふふん。今日は腕を振るったぞい。だし巻き卵に、最高級銀ダラの西京漬け焼き、山菜とエビの天ぷら盛り合わせ、そしてワシ特製の豚汁ときた。・・・これで落とせなかった男はおらんぞ、坊主。白米もとんと炊いた。・・・さ、一緒に飯を食おうではないか、坊主」

  自慢げに胸を張りながら、彼は笑う。

  漂ってくる香りに、自然とお腹が鳴る自分がいた。さっき邪気を払ったせいなのだろうか。身体が、羽根が生えたように軽い。

  俺はテーブルの椅子へと腰掛けると、彼が勧めるがままに箸を手に取った。

  「じゃあ・・・いただきます。ジンさん」

  「・・・おう。たんと食え、坊主」

  手に取ったお椀が温かい。

  俺はだし巻き卵を箸でつまむと、一口頬張った。

  じゅわっと、出汁が口いっぱいに広がる。

  ぷるぷるとしたその食感に、俺は目を見開いた。

  「・・・う、うまい・・・」

  「がはははは!! そうだろうそうだろう!! 繭神は料理ができんとなれんからな。ワシも手慣れたもんじゃよ。・・・ワシの手料理には、坊主の心と身体が元気になるようまじないをかけておいた。食べ終わる頃には、精力旺盛でむんむんじゃぞい?」

  いやらしい笑みを浮かべながら、彼は笑う。

  そんな彼とのやりとりが、なぜか心地よかった。

  胸の中に、何か温かいものがジワリと溶け出していく感覚がする。

  まるで喉が渇いた魚のように、俺は目の前の料理を頬張った。

  「・・・で、気分はどうじゃ? 坊主。 少しは楽になったか?」

  一緒に飯を食いながら、彼はそう俺に尋ねる。

  思い返せば、ふと、「生きたい」と思うのは随分と久方ぶりのような気がした。

  忘れていたその感覚に、自分がどれだけ深く病んでいたのかを思い知らされる。

  確かに今生きているんだと、俺は痛く実感していた。

  「あぁ・・・随分と楽になったよ、ジンさん。・・・ありがとうな」

  「いいんじゃ。まぁ・・・お前さんの心の闇は、エッチが終わった後ゆっくり聞こう。・・・身も心も満たされた状態なら、案外すんなりと話せるはずじゃ。今は食べることの喜びを思い出せ、坊主。美味い飯を食えば幸せになる。誰かと一緒に飯を食えば身も心も元気になる。・・・それを忘れさえしなければ、これから何かがあった時も心の支えになるじゃろう。・・・何、ワシとエッチしてくれるなら、時々ワシが飯を作りに来てもよい。これも何かの縁じゃ、坊主。心配せずとも、今夜がワシと会える最後の日ではないぞ。・・・また、会える日は必ずくる。必ずな」

  その言葉に、どれだけ救われただろうか。

  また、会える。

  その言葉だけで、涙がこみ上げてくる自分がいた。

  もう、自分は一人じゃない。

  少なくともこの人は、俺が立ち直れるよう励まして、料理を作って、支えようとしてくれている。

  その事実が、今の俺にどれだけ嬉しかったことか。

  言葉にできなかった。

  「・・・ほら、泣くでない坊主。・・・良い男が台無しじゃぞ?」

  「だって、だって――」

  「・・・ほらほら。そんな顔せんでも、ワシはどこにも行かん。この後はお前さんと、いちゃいちゃラブラブなエッチをするんじゃ。・・・そこで心の傷をしっかりと癒やせ、坊主。生きてさえいれば、この世界はどれだけでも輝くのだということを・・・今一度思い出すのじゃ」

  そう言って、彼は俺の頭を優しく撫でる。

  溢れかえる嗚咽に、美味く息が出来ない。

  もう、寂しくなかった。

  「・・・生きるんじゃ、坊主」

  彼はそう、言葉を続けた。

  「・・・生きてさえいれば、なんとかなる。・・・何、ワシが保証する。この世界は、まだ腐ったもんじゃないとな」

  5

  二人で夕飯を共にした後、俺達はそれぞれ入浴することになった。

  それが一体何を意味するのかは、子供だって想像できる。俺達はこの後、彼の言葉通り身体を重ね合わせるのだろう。彼はそのままでも良いと言っていたが、身を清めたいと言ったのは俺の方からだった。流石に神様相手に汚いままの身体を捧げる訳にはいかない。散り散りになりそうな理性をかき集めて、なんとか俺は最後の抵抗を押し切ることに成功した。

  ベットに座った俺の身体が、緊張で強ばっている。

  浴室からは、シャワーの音がした。その断続的な音が、心の余裕をガリガリと削っていく。

  ふと、その音が止んだ。その時だった。

  ビクリと、俺は身体を震わせる。緊張するなと言われる方が無理だった。

  それでも俺の身体は、これから行うであろう行為に興奮しているのか、じっとりと前を濡らしている。

  こんなはしたない自分の反応が、ただ恥ずかしかった。

  「・・・すまん、坊主。・・・待ったか?」

  着物を脱いで、肌襦袢だけになった龍が俺の隣に腰掛ける。

  隣から、嗅ぎ慣れた石けんの香りがした。いつもとは違う他人から香るその香りに、胸が弾んでいる自分がいる。

  俺は、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

  「・・・大丈夫だ、ジンさん。その・・・」

  「なんじゃなんじゃ。緊張しておるのか?」

  そう言って、彼は俺の肩に手を回す。

  引き寄せられた身体が、もう胸の鼓動を抑え切れていなかった。

  柔らかな、彼の温もりが肩に伝わる。

  興奮するなという方が無理だった。

  「・・・ほら、坊主。坊主のここは・・・もう元気になってるぞい」

  甘く、かしゃがれた声だった。

  その声が、耳元を震わせる。

  彼の指先が、ゆっくりと俺の秘部をなぞる。

  もう勃起して下着を押し上げたそれは、ジワリと透明な粘液を染み出させていた。

  「ジンさん・・・」

  「・・・大丈夫だ、坊主。・・・全てワシに身を任せろ。二人で気持ちよくなるんじゃ。・・・な?」

  グッと抱き寄せられた肩が、彼の胸の中へと包み込まれる。

  内股をなぞる大きな手の平が、ただいやらしかった。

  彼の吐息が、頬に吹きかかる。

  その甘くも温かい感触が、ただ興奮を加速させた。

  「ほれ、坊主・・・チューじゃ」

  そう言って、彼は俺の唇を塞ぐ。

  ねっとりとした舌先が、俺の腔内を犯した。

  俺の舌先を絡め合わせながら、彼は俺の胸をいやらしく揉み扱いていく。

  ピンと立ち上がった乳首の先端が、彼の親指の腹に触れたのはその時だった。

  「っぁ!! んっ・・・」

  「なんじゃ・・・お前さん、ここが感じるのか?」

  「そ、そんなことは・・・んんっ!!」

  「ほれ・・・こっちの乳首もねぶってやるぞい・・・どうじゃ? 気持ちいいか?」

  薄いシャツ越しに、彼の爪先が俺の胸の先端をカリカリとなぞる。

  微かな電撃のような快感が、じわじわと俺を追い詰めて行った。

  彼の両手が、俺のシャツをまくし上げる。

  そのまま彼は大きく口を開けると、俺の乳首に吸い付くように頬張った。

  「ああっ!! っは・・・っぁ――」

  じゅるじゅると音を立てながら、彼は俺の乳首を舐めあげていく。

  まるで別の生き物のようなその舌使いに、俺は身もだえた。

  彼は俺の乳首を舐めあげながら、ゆっくりと俺の股間へと手を這わせていく。

  もう限界まで勃起したその場所を、彼は下着越しにゆっくりと指をなぞらせていった。

  「ほら・・・坊主。もう我慢するでない。気持ちいいなら大声で喘いでいいんじゃぞ・・・?」

  「じ、ジンさん・・・」

  「・・・大丈夫じゃ。お前さんはワシがちゃんと天国に連れて行ってやる。・・・腰が砕けるまでな」

  ゴツゴツとした指先が、俺の下着の中へと入っていく。

  そして彼は、勃起した俺のモノをゆっくりと握りしめた。

  肉々しい快感が、俺の下腹部を駆け抜ける。

  目の前の瞳が、確かな情欲で濡れていた。

  「ほれ・・・お前さんのちんぽから汁が溢れとるぞい・・・こんなに濡らして・・・気持ちよかったのか?」

  「ぁ、っぁ!! っは・・・そ、それは――」

  「ふむ・・・随分と長い間マスもかいてなかったと見える。こりゃあ、今日はお前さんの特濃ザーメンが出るじゃろうなぁ・・・」

  彼の言うとおりだった。

  もうずっと、オナニーもしていない。ずっと、射精することすら忘れる毎日だったのだ。久々に感じる快感に、俺の身体は歓喜の声を上げていた。

  「じ、ジンさん・・・」

  彼の両手が、優しく俺の身体を押し倒す。

  ベットに横になった俺の身体に、彼はゆっくりと覆い被さっていった。そしてそのまま、俺の下着をゆっくりと剥ぎ取っていく。

  彼の身体を包み込んでいた肌襦袢が、はらりとベットのマットレスへと落ちる。

  褌だけを身につけた彼の身体が、俺の目に焼き付いた。

  「坊主・・・」

  褌の割れ目を俺のモノへとこすりつけるように、彼は腰をくねらせる。

  そのまま彼は身体を落とすと、俺の唇を塞いでいった。

  甘い蜜の味がする彼の唾液が、喉を潤していく。

  絡め合わせていく舌先が、ただ気持ちよかった。

  「気持ちいいか、坊主・・・」

  彼の指先が、俺のモノを握りしめる。

  ゴツゴツした指先が、カリ首に絡まって気持ちよかった。

  俺の反応を確かめるように、彼はゆっくりと俺のモノを扱いていく。

  そのまま彼は寝そべるように上体を落とすと、俺の胸の方へと口先を近づけていった。

  「ここはどうじゃ・・・? ん?」

  彼の唇が、俺の胸の先端を舐めあげる。

  そしてそのまま、吸い付くようにその舌先で俺の乳首をねぶりはじめた。

  唾液を吸う卑猥な音が、部屋の中に木霊する。

  ピンと立った乳首の先端が、彼の細い舌先で何度も抉られていった。

  「あぁ!! っは!! ぁぁん!!」

  「じゅる・・・じゅるるるるるるる・・・ちゅううう・・・」

  「じ、ジンさん・・・や、やめ・・・あぁああああ!!!」

  まるで、全身に電撃が走ったような快感だった。

  彼は俺の乳首を舐めあげながら、緩やかに俺のモノを扱きあげていく。乳首から感じる激しい快感と、俺のモノから伝わる緩やかな快感に、俺の腰はもう砕けそうだった。

  扱きあげる手の動きが、段々と速くなっていく。

  一気にせり上がる射精感に、俺は腰を浮かせながら弓なりになった。

  「だ、駄目だ!! ジンさん!! い、イク!! イってしまう!! がぁ――」

  あともう少しで、イッてしまう。

  その寸前の所だった。

  俺のモノを扱きあげていた彼の手が、急にその動きを止める。寸止めされて射精できなかった俺のモノが、ビクビクと涎を垂らしながら脈打っていた。

  俺は肩を上下させながら、荒くなった呼吸を落ち着かせようとする。

  鈴口から滴り落ちる粘液を纏わせるかのように、彼の指先が俺の先端をゆっくりとなぞっていった。

  「イキそうじゃったか?」

  ニヤリと、彼は笑う。

  そのいやらしい笑みに、胸を弾ませている俺がいた。

  限界まで勃起した俺のモノを弄ぶように、彼の指先が根元から先端までゆっくりと絡みついていく。

  あふれ出した透明な粘液に濡れたそこは、銀色の糸を指先から垂れさせていた。

  「じ、ジンさん・・・」

  「・・・いい顔じゃ。安心せい・・・今度はちゃんとイかせてやる。ワシの口でのう・・・」

  そう言って、彼は上体を起こすと顔を俺の下腹部へと近づける。

  ゆっくりと俺のモノを扱きながら、その鼻先を俺の先端へと近づけていった。

  荒い、温かな鼻息が俺のモノへ吹きかかる。

  そのまま彼は大きく口を開けると、一気に俺のモノを頬張った。

  「ああああああああああ!! っぁああ!!」

  ねっとりとした、絡みつくような快感だった。

  それが、俺のモノを優しく舐めあげていく。

  彼の細長い舌先が、根元から先端までを絡みつかせていくようだった。亀頭の雁首を舐めあげる舌先が、俺の身体を弓なりにさせる。

  パックリと割れた鈴口の中に、彼の舌先がねじ込まれる。

  片手で俺のモノを扱きあげながら、彼は俺のモノを吸い付くように舐めあげていった。

  一気に、射精感が高まる。

  さっきまで根元に溜まっていた精液が、今にももう出そうだった。

  「じ、ジンさん!! 出る!! も、もう・・・出る!!」

  息も絶え絶えに、俺は彼に告げた。

  それでも、彼は上下する顔の動きを止めてくれない。

  俺のモノを扱きあげていくスピードが、段々とその速さをましていく。

  指を絡ませて掴んだベットのシーツが、その皺を寄せた。

  「い、イク!!」

  俺は、必死になってそう叫んだ。

  「イク!! イっちまう!! がぁああああ!! っぁ――」

  まるで、頭の中で蛍光灯が爆発したかのような快感だった。

  彼の口の中で、俺の精液があふれ出す。それを一滴残らず搾り取るように、彼の舌先が俺のモノを吸い付いた。

  彼の大きな喉仏が、上下しているのが見える。

  俺の精液を飲み干しているのだろう。大きな鼻息を立てながら、愛おしそうに俺の精液をしゃぶるように飲むその姿が、ただ艶めかしかった。

  彼の口から、俺のモノが離される。

  彼の唾液と俺の精液で濡れたそれは、未だに堅さを失っていないままだった。

  「ふぅ・・・なかなか濃いザーメンだったぞ、坊主。・・・一体何日溜め込んでたんじゃぁ?」

  嬉しそうに、彼は口元をニヤつかせていた。

  彼の手が、未だに萎えない俺のモノをまた扱き始める。

  敏感になったそこに、また快感がせめぎ寄せ始めた。

  「じ、ジンさん・・・」

  「・・・安心せい。次はちゃんとワシのスリットの中に入れてやる。・・・無論、生でな」

  かしゃがれたその声が、俺の耳元で囁かれる。

  その卑猥な声色に、俺の胸は高鳴った。

  俺の手の平が、ふと、彼の手に掴まれる。

  そしてそのまま、彼は俺の手を自身の褌の上へと押しつけた。

  その割れ目を、誇張するように。

  喉が、一気に渇いた。

  「・・・ほれ。分かるか? お前さんのちんぽを見てワシの割れ目が濡れておるぞ?」

  息が出来なかった。

  指先に、じっとりと濡れた布地の感触がする。確かに、土手肉を寄せたような割れ目の凹凸が感じられた。その柔らかな感触に、胸が弾む。

  「こ、これが・・・ジンさんの・・・」

  「そうじゃ・・・ここにお前さんのちんぽが入るんじゃ。・・・見ておれ、坊主・・・今、褌を外すからな」

  そう言って、彼は身につけていた最後の一枚を脱ぎ捨てる。

  ハラリと落ちていったその布地の中に、真っ白な鱗に包まれた股間と、薄いピンク色をした割れ目が露わになった。

  彼の割れ目から滴り落ちた粘液が、蛍光灯の光に照らされて反射しているのが見える。

  俺は、息を飲んだ。

  「・・・どうじゃ、坊主。初めて見るスリットは」

  ニヤリと、彼は笑った。

  そして彼は大股で足を開くと、割れ目の土手肉を人差し指と中指で挟み押し広げ始める。

  銀色の粘液が糸を引きながら、ピンク色をしいた割れ目がその口の中を露わにした。

  「・・・ほら。この中にワシのちんぽは入っている。見えるか? お前さんのちんぽが欲しくてぐしょぐしょに濡れておるぞ?」

  スリットの最奥に、ピンク色をした陰茎の亀頭のようなものが見えた。

  そして無数のヒダと凹凸のある内壁が、彼の愛液でじっとりと濡れて糸を引いている。

  俺は、目を見開いた。

  そんな俺の反応を楽しむように、彼は俺の身体の上に覆い被さると、俺のモノを自分の割れ目へと重ね合わせていく。

  ジンとした火傷するような熱が、俺のモノを包み込んだ。

  「っぁ・・・じ、ジンさん・・・」

  「ほれ・・・温かいじゃろ? お前さんのちんぽが、ワシの中に入りたいとヒクヒク言ってるぞい。・・・どうじゃ? 坊主。気持ちいいか・・・?」

  そのまま、彼は俺のモノにスリットを重ね合わせたまま腰をくねらせ始めた。

  じゅるじゅると、卑猥な音を立てながら俺のモノが彼の土手肉の割れ目を刺激する。

  あと少し彼が体重をかけただけで、今にも俺のモノは彼の中に入っていきそうだった。でもその寸前のところで、彼はまた腰を前後にくねらせてしまう。

  じれったい快感が、腰の奥を駆け抜けた。

  「入れたいか? 坊主・・・」

  円を描くように腰をくねらせながら、彼はそう言葉を続けた。

  「ワシの中に・・・お前さんのちんぽを入れたいか・・・? ん・・・?」

  もう、我慢の限界だった。

  限界まで勃起した俺のモノは、今か今かとその瞬間を待ちわびている。

  彼の割れ目から溢れ出した愛液が、俺のモノと擦り合わされて白く泡立っているのが見えた。

  それが、糸を引いて絡みついている。

  息が出来なかった。

  「い、入れてくれ!! ジンさん・・・た、頼む!!」

  「坊主・・・どこに、何を入れて欲しいのかちゃんとお願いするんじゃ・・・ほれ・・・」

  「っぁああ!! ち、ちんぽを・・・!!」

  「ちんぽを・・・?」

  「じ、ジンさんのスリットの中に入れてくれ!! た、頼む!!」

  ただ、必死だった。

  その声を聞いた瞬間、目の前の龍がニヤリと笑う。

  胸が高鳴った。

  「・・・よく言った、坊主。・・・ご褒美じゃ」

  そう言って、彼は俺のモノを手で支えるとその先端をスリットの入り口へと押し当てた。

  火傷しそうな熱が、亀頭全体を包み込み始める。

  待ちわびた瞬間が、今迎えようとしていた。

  「・・・よく見ておれ、坊主。お前さんのちんぽが、ワシの割れ目に入っていくぞ・・・?」

  そう、声をかけた瞬間。

  彼はゆっくりと、体重をかけて俺のモノを中へと挿入していった。

  「がっ!! ぁあああああああ!! じ、ジンさん・・・っぁ――」

  「ふぅ・・・ふぅ・・・っぁ!! っく・・・!!」

  熱い、マグマのような熱だった。

  それが、柔らかく、吸い付くように俺のモノを優しく包み込む。

  糸を引くような粘液と、無数のヒダの数々が、俺のモノを搾り取るようだった。その優しくも激しい締め付けに、俺は今にも達してしまいそうだった。

  トクトクと、彼の心音が伝わっていくのが分かる。

  今ひとつになれたんだと、そう実感した瞬間だった。

  「ふぅ・・・全部入ったぞい・・・ほれ、お前さんのちんぽがワシの中でビクビクいっとる。・・・イキそうじゃったか?」

  俺の胸をなで下ろしながら、彼は笑う。

  スリットの中で、何か固い肉質のものが脈打っているのが分かる。それが、彼の勃起したモノなのだろう。それが分かった瞬間、俺は興奮で心拍数が一気に上がった。

  「動くぞ、坊主・・・」

  目を細めながら、彼はそう言葉を続けた。

  「最初はゆっくり・・・いちゃいちゃラブラブなエッチといこうじゃないか・・・ん?」

  その言葉通り、彼はゆっくりと腰をくねらし始める。

  粘液が糸を引いていくようなその腰遣いに、俺は心を奪われた。

  こんなに心の籠もったセックスを、俺は一度も体験したことがない。

  心の輪郭に触れそうなその感覚が、ただ愛おしかった。

  「じ、ジンさん・・・」

  「どうじゃ? 坊主・・・気持ちいいか?」

  「あ、あぁ・・・と、とろけてしまいそうだ・・・っぁ――」

  自然と俺は腰を浮かし、身体を弓なりにさせる。

  彼の腰つきに合わせて腰をくねらせれば、それだけで快感が増した。

  柔らかな肉質のある締め付けが、俺のモノを掴んで離さない。

  ゆっくりと軋んでいくベットの音だけが、ただ俺の欲情を煽った。

  「いい締め付けじゃろ・・・お前さんのちんぽもなかなかの太さじゃぞい・・・っっぁ・・・っぐ!!」

  「はぁ・・・はぁ・・・じ、ジンさん・・・」

  「どれ・・・そろそろ一発イかせるとするかのう・・・気を失うでない、ぞ!!」

  そう言葉を続けると、彼は激しく腰を上下に動かし始めた。

  円を描くように。その腰つきを、くねらせながら。

  激しい快感が、下腹部を襲った。

  「ぁあああ!! っが!! っぐ!! じ、ジンさん!!」

  「ふぅ・・・ふぅ・・・!! っっぁ・・・っぐ!! 気持ちいいか、坊主!! 気持ちいい、か!!」

  結合部からあふれ出た彼の愛液と俺の我慢汁が、白く泡立ってベットのシーツを汚し始める。

  恋人つなぎのように彼の両手を固くつなぎ止めながら、俺は彼の腰つきを受け入れていた。

  せり上がる射精感を、止める事ができない。

  まるでその瞬間を絞る取るように締め付ける彼の内壁が、俺のモノに絡みついた。

  もう、限界が近い。

  我慢できなかった。

  「じ、ジンさん!! い、イク!! イッちまう!!」

  「ああ!! イけ!! 坊主!! たっぷりと中に出すんじゃ!! ワシも、もう――」

  「がぁあああああああ!! い、イク!! ジンさん!! イク!! がぁあああ!!!」

  「わ、ワシも!! ぁあああ、っぁ!!!」

  ドクンと、それは彼の中で弾けた。

  その衝撃に、俺は目を見開く。

  今までに味わった事のない、強すぎる快感だった。それが、電撃のように何度も駆け抜ける。

  身体を痙攣させながら、俺は何度も彼の中に射精した。

  脈打つ俺のモノから、大量の精液が壊れたホースのように吹き出しているのが分かる。同時に、彼も達したのだろうか。結合部からは、彼の物と思われる精液が溢れだしていた。

  彼の身体から、俺のモノがズルリと抜け落ちる。

  パックリと割れたスリットから、大量の精液が零れ始めた。

  白濁としたその水たまりに、あの精液独特の匂いが香り始める。

  俺はただ、肩で息をしながらそれを見ることしかできなかった。

  「どうじゃ? 坊主・・・良かったか?」

  ニヤリと、目の前の龍神は笑う。

  俺の頬を指で撫でながら、そっと、俺の身体を抱きしめた。

  柔らかな温かさが、全身を包み込む。

  まるで、優しい繭に包まれているかのようだった。

  「ジンさん・・・」

  「どれ・・・坊主、このまましばらくイチャイチャしようではないか。お前さんの傷が、癒えるまでな」

  抱きしめていた腕に、力が入る。

  涙がこぼれ落ちたのは、その時だった。

  「大丈夫じゃ、坊主。・・・なんとかなる」

  そう言って、彼は言葉を続けた。

  「・・・ワシが保証する。・・・なんとかなる、坊主」

  6

  緩やかな時間が過ぎていた。

  あれから二人で風呂に入った後、俺達はまたベットに横になっていた。身につけているのは互いに下着だけ。その心の防波堤の薄さが、彼への親近感の近さを物語っていた。

  もう、胸の奥は痛くない。

  身体も重くない。

  むしろ、羽根が生えたように身も心も軽かった。それが、彼が言う「邪気」を取り除いた証なのだろう。その変化に、俺はまだついて来られずにいた。

  「つらいか? 坊主」

  ふと、声が聞こえてきた。

  抱きしめていた身体に、力が入る。

  顔を上げれば、目の前の龍が目を細めて微笑んでいた。

  「・・・もう大丈夫だ。ありがとう・・・ジンさん」

  「・・・何を言っとる。人の子を助けるのが、我ら繭神の使命じゃ。・・・お前さんの心が満たされたのであれば、これ以上嬉しいことはない」

  穏やかな声だった。

  それが、耳元を優しく震わせる。

  今なら、人に打ち明けられる気がした。

  話せる気がした。

  ずっと抱えていた心の闇を、痛みを、全てさらけ出せるような気がした。

  吸い込んだ息が、少しだけの痛みを伴って胸の奥を膨らませる。

  ただ目の前の温もりが、優しかった。

  「・・・死にたかったんだ、俺」

  零れ落ちた言葉は、あっけなく消えていった。

  抱きしめていた彼の身体が、ふと、その力を増す。

  涙が、零れ落ちた。

  「・・・もう、何もかも嫌になってた。仕事もできない。友達もいない。何のために生きているのかも分からない。毎日怒られて、怒鳴られて、ボロボロになるまで働かされて・・・何の為に生きているのかさえ分からなかった!! 何のために、生まれてきたんだろうって・・・俺の人生、どこで間違えちゃったんだろう、って・・・」

  そんな時、あなたに出会えた。

  あなたに、命を救われた。

  「嬉しかったんだ、俺・・・」

  嗚咽も気にしないまま、俺は言葉を続けた。

  「ジンさんに、助けて貰って・・・生きててもいいんだよって、それだけで偉いんだよって言われて・・・本当に、嬉しかった!! 誰かと一緒になることがこんなにも温かいものだったなんて・・・ずっと、忘れてた。もう一度、生きてみたいって思えた!! で、でも・・・明日になったら・・・俺は――」

  その時だった。

  彼の手の平が、そっと、俺の頬を包み込む。

  柔らかな、大きな温もりだった。

  目の前の瞳は、真っ直ぐに俺を見据えている。

  言葉が出なかった。

  「・・・大丈夫じゃ、坊主。その希望さえあれば、どんな明日が来ようと乗り越えられる。・・・お前さんならな」

  ふと、彼の手が俺の手の平を握りしめる。

  固く、指と指とを重ね合わせるように。

  心が、震えた。

  「・・・心配せずとも、お前さんは十分強い。今は分からないことも・・・後になれば分かることがこの世には沢山ある。・・・まずは今の職場を辞めるんじゃ、坊主。そしてやり直せ。その力が、お前さんには十分ある。金のことなら、手当を使えばある程度の期間はなんとかなる。その間にゆっくりと身と心を休ませて、じっくりと充電するんじゃ。医者と薬が必要なら、それを頼るのも良かろう。・・・自分が選びたい道は、自ずとその道がお前さんに示してくれる。ワシはただのきっかけに過ぎん。必要とあらば、何度でもワシはお前さんの目の前に現れよう。・・・そして、また甘々でらラブラブなエッチをするんじゃ。美味い飯もまた作ってやろう。言っただろう? これが最後ではないと。・・・明日を怖がる理由は、どこにもないぞ、坊主。希望があれば・・・生きてさえいれば、自ずとそこに光は射す」

  そう言って、彼は俺の頭を優しく撫でた。

  泣きぐぜった子供を、あやすかのように。

  「・・・だから大丈夫じゃ、坊主」

  そう言って、彼は笑った。

  「・・・大丈夫。生きてさえいれば、なんとかなる。だから生きるんじゃ、坊主。・・・胸を張ってな」

  ふと、彼の身体が起き上がる。

  そして首から提げていた何かを外すと、俺の方へと差し出した。

  俺の手に握らされたそれに、目を向ける。

  小さな鈴がついた、お守りだった。

  「これを、お前さんにやろう」

  そう、彼は言葉を続けた。

  「ワシが必要な時、この守りの鈴を鳴らして・・・ワシの名を呼べ。さすれば、ワシはお前さんの元へとはせ参じよう。・・・その為に必要な契約と儀式は、今日確かに承った。・・・お前さんに必要なのは、沢山の時間と休養じゃ。その中で生きていく喜びを、幸せを、しっかりと噛みしめるのじゃ。その為ならワシは、何度だってお前さんの元へ駆けつけてやるぞい」

  がははと、彼は豪快に笑った。

  その声に、涙が零れ始める。

  息が出来なかった。

  「じ、ジンさん・・・」

  「・・・言ったであろう。今日が最後ではないと」

  そう言って、彼は俺の頭を撫でた。

  乱暴に、乱雑に、優しさと温もりを込めて。

  上手く、前が見えなかった。

  「・・・また会おう、坊主」

  そう言って、彼は笑った。

  「生きて・・・また会うんじゃ、坊主。生きてさえいれば、また会えるんじゃ」

  7

  迎えた朝は、いつもより涼しく感じた。

  カーテンの隙間から、朝日が差し込んでいる。目が覚めた瞬間、いつもとは違う身体の軽さと、明白に覚醒した脳の感覚に、自分でも驚いていた。

  ふと、ベットの横を見る。

  昨日出会ったはずの龍神は、隣にその姿はなかった。

  「夢・・・だったのか?」

  こぼれ落ちた疑問は、誰もすくい上げてはくれなかった。

  ふと、自分の手が何かを握りしめていることに気づく。

  見れば、小さな鈴がついたお守りだった。

  それが、確かに手の平の中に握りしめられている。

  夢と言うには、あまりにも現実的過ぎた。

  「これは・・・」

  寝室から出て、部屋を見渡してみる。

  ゴミ屋敷だったはずのそこは、綺麗に片付いていた。

  引っ越したばかりの時以来見ていなかった、広々としたその空間に、俺は息を飲み込む。

  無駄に片付いた空間と広々とした寂しさが、胸の奥を襲った。

  「ジンさん・・・」

  やはり、あれは夢ではなかった。

  俺は、命を救われたのだ。あの龍神に。

  その事実を噛みしめた今、痛烈な寂しさが胸を襲う。

  もう一度だけでいい。

  もう一度だけでいいから、会いたかった。その胸に、抱きしめて欲しかった。

  この朝を、乗り越えられるだけの勇気と力を、もし貰えるとしたら。

  それだけで、俺は――

  「ジンさん・・・」

  お守りを握りしめながら、俺はふと、あの人の名前を呼んだ。

  「会いたい・・・会いたいよ・・・ジンさん・・・」

  零れ落ちた独り言が、誰もいない部屋の中に木霊する。

  もう、これ以上はない。

  そう思った、その時だった。

  「だああああああああああああああ!! ワシはまだ帰っておらんぞ!! 坊主ぅ!!」

  玄関のドアが乱暴に開いた途端、その叫び声は聞こえて来た。

  走ってきたのだろうか。肩を上下させながら、ぜいぜいと息を荒げている。

  俺は、目を見開いた。

  「じ、ジンさん・・・!!」

  「ば、馬鹿者!! いきなりその守りを使うんでない!!」

  「ご、ごめんジンさん・・・お、思わず・・・うっかり・・・」

  「突然だったからびっくりしたわい!! ただゴミ捨て場にゴミを出しに行ってただけじゃ!! ワシが、お前さんに別れの言葉も言わず出て行く訳がなかろう!! ちゃんとワシは、あふたーけあ?も重視している繭神なんじゃぞい!!」

  息を荒げながら、彼はそう怒っていた。

  その気迫のある顔に、思わず俺は笑みをこぼしてしまう。

  おかしくて、おかしくて、仕方がなかった。

  「こら、笑うでない!! ワシだって心配してるんじゃ!! 昨日救ったばかりの人の子がいきなりワシを呼んだらそりゃびっくりするじゃろうって!!」

  「ごめんごめん、ジンさん・・・あまりにもジンさんが必死だったから、つい――」

  「こら、だから笑うでないと言うておるだろうに!!」

  賑やかな朝だった。

  まるで、初めて迎えた朝のように。

  胸の奥が、軽い。

  心が、すっと透明に透き通っている。

  ただ目の前の朝日が、キラキラと輝いていた。

  「・・・本当に来てくれたんだね、ジンさん・・・」

  「・・・当たり前じゃ。お前さんを置いて、どこかにいくはずもなかろうに」

  すねたように、彼は眉間に皺を寄せる。

  その顔が、少し可笑しかった。

  そんな彼の身体に、俺は両腕を伸ばして抱き寄せる。

  柔らかな温もりが、全身を包み込んだ。

  「・・・坊主」

  大きな腕が、俺の背中を抱き返す。

  ずっと、このままでいたかった。その願いが、今叶えられている。

  ただその幸せが、俺は嬉しかった。

  「・・・ジンさん」

  「・・・何じゃ?」

  「・・・今日、辞表出していくよ。職場に」

  その言葉に、彼は俺の身体をそっと離す。

  目を細めたその眼差しは、俺の事を心配しているようだった。

  「・・・そうか。大丈夫か?」

  「・・・ああ。その為の勇気と力は、ジンさんに沢山貰った。・・・だから、問題ない」

  「・・・そうか。じゃあ、今日はお前さんが帰ってきたら飯をたんと作っておかんとな。・・・ここで待っておるから、行ってこい・・・坊主」

  「・・・い、いいのか?」

  「・・・あぁ。ちゃんと、お前さんの帰りを待っているぞ、坊主。胸を張って行ってこい」

  大きな手の平が、俺の頬を包む。

  目の前の瞳が、ただ優しかった。

  「・・・ワシは、お前さんがどの道を選ぼうとも応援している。疲れた時は、またワシを呼ぶとよい。・・・腰が砕けるまで、癒やし尽くしてやろう。・・・お前さんは、もう一人じゃない。・・・それを、忘れるな」

  彼はそう言うと、俺の額に自分の額を重ね合わせる。

  ジンとした温もりが、柔らかに伝わっていった。

  もう、何も怖くない。

  寂しくもない。

  ただ「生きろ」と、体中の細胞が声を高らかに叫んでいた。

  「・・・行ってきます」

  「・・・おう。行ってこい、坊主。・・・気をつけてな」

  何も保証されていない明日に、身を焦がしていこう。

  確かに俺は、「生きたい」と願っていた。