ルナアスールモーテル 5 取り調べ 4

  グエイト キツネ男性

  「……キツネさん、お待たせしてしまってごめんなさいね。

  お仕事の予定もあったでしょうに、

  引き留めてしまって申し訳ない。

  亡くなったウサギの彼とは、

  ご友人だったそうですね。

  さぞショックを受けられていることと

  思います……。」

  (相手を緊張させないよう、

  いつもの穏やかな笑顔を浮かべて)

  「実はね、ウサギの彼女さんから、

  昨日あなたと彼がたまたまここで

  会ったというお話を聞いたんです。

  彼、あなたと会えて少し機嫌が良くなっていた

  みたいですよ。

  昨日、彼とお会いしたときのこと……

  どんなお話をされたのか、

  少しだけ私に教えてもらえるかい?」

  「…いつか殺されると思ってたけど今日とはね…。」

  (キツネはハハハと苦笑いをする )

  「……あっちがどう思ってたか

  知らないけど自分は親友と思ってましてたね。

  話が逸れちゃいましたね……偶然会って、

  地元でやる今日の祭りの事を話したり…

  昔の事を話してました。」

  (「いつか殺されると思ってた」という、

  あまりにも重く、諦めを含んだような言葉に、

  一瞬だけ目を見開く。

  けれどすぐにいつもの優しい眼差しに戻り、

  彼の言葉をすべて受け止めるように深く頷く)

  「……『いつか殺されると思ってた』、ですか。」

  (手元のメモにその言葉をそっと書き留め、

  本当に彼を気遣うように声を低くする)

  「親友だと思っていた彼から、

  そんな不穏な気配を感じていたなんて……

  あなたもずっと、胸を痛めていたんだね。

  話の腰を折ったりしないから、

  あなたのペースで話してくれて大丈夫だよ。」

  (一呼吸置き、さらに距離を縮めるように優しく語りかける)

  「昨日、ここで偶然会って、

  地元の今日のお祭りのことや、

  昔のことをお話ししていたんだね。

  そのとき……ウサギの彼女さんからね、

  『あなたが彼に、何か飲み物を手渡していた』って

  聞いたんだ。

  彼、そのとき喉が渇いていたのかな?

  あなたが彼にあげた飲み物がどんなものだったか、

  少しだけ教えてもらえるかい?」

  「ペットボトルのお茶ですよ。自分の店で売ってる

  自家製ブレンドのお茶なんですけどね…」

  (「自家製ブレンドのお茶」という言葉を聞いて、

  なるほど、と納得したように小さく微笑んで頷く)

  「へぇ、自家製ブレンドのお茶なんだね。

  花屋さん特製のお茶なんて、

  きっと体に良くて美味しいんだろうなぁ。

  彼も『喉が渇いた』って言って、

  喜んで受け取ったんじゃないかい?」

  (手元のメモに『キツネ:自家製お茶

  (ペットボトル)』と書き添えながら、

  自然なトーンで次の質問へ移る)

  「ウサギの彼女さんはね、そのお茶を飲んだあと、

  彼が少し具合を悪そうにしていたって

  心配していたんだ。

  でも、親友のあなたが作ったお茶だもの、

  変なものが入っているわけがないよね。」

  「……ところでね、キツネさん。

  他のお客さんからね、昨夜の二十三時ごろに、

  あなたの部屋のドアが閉まるのを見たっていう

  お話があるんだ。

  二十一時すぎに彼らと別れたあと、

  二十三時ごろにお部屋を出入りしていたのかな?

  その時間帯に、外で何か不審な物音が聞こえたり、

  あるいは……彼や、

  他の誰かとすれ違ったりはしなかったかい?」

  「今日出す予定の物から一つ渡したから

  変な物が入ってるなんてそんな事ないはず」

  「その時間帯はヴァンが自分の部屋に来てたな。

  でも…ヴァンのケータイが鳴ったと思ったら、

  外に出たからそれかも。」

  (「ヴァンさんが部屋に来ていた」

  「彼の携帯が鳴って外に出た」という

  言葉を聞いた瞬間、頭の中のパズルが、

  音を立てて最後の形へと組み上がっていく。

  しかし、それを目の前のキツネさんには

  悟られないよう、ただ驚いたように、

  そして本当に腑に落ちたというように、

  優しく目を見開いて頷く)

  「……あぁ、そうだったんだね。」

  (手元のメモの『二十三時』の横に、力強く

  『ヴァン(ウサギ)はキツネの部屋にいた』

  『誰かからの着信で外へ出た』と書き加える)

  「今日出す予定の、大切なお茶だったんだものね。

  変なものが入っているわけがない、その通りだよ。

  疑うようなことを聞いて本当にごめんね。

  そして……二十三時のこと、

  教えてくれて本当にありがとう。

  ウサギの彼……ヴァンさんは、

  その時間にあなたの部屋に遊びに来ていたんだね。

  親友のあなたの部屋で、お祭りの話をしながら、

  きっと楽しい時間を過ごしていたんだ。

  でも、彼の携帯が鳴って、

  彼は外へ出ていってしまった……。」

  (キツネさんの肩をそっと優しく叩き、

  安心させるように微笑みかける)

  キツネさん、たくさん辛い質問に答えてくれて

  ありがとう。おかげで、彼が最後に誰と過ごして、

  どうして部屋を飛び出してしまったのか、

  その『理由』がはっきりと見えてきたよ。」

  「あなたは何も悪くないからね。

  親友を亡くして本当に辛いと思うけれど、

  今日のお祭りの準備、

  どうか無理のない範囲で頑張ってくださいね」

  (深く一礼して、キツネさんの元を離れる。そして、

  パトカーの並ぶモーテルの駐車場を見渡し、

  手元のメモを固く握りしめた)