【EX】わたし達の大冒険(前編)

  これは、とある晴れた日の朝のこと。

  わたしがいつも通りに目を覚まして居間らしき所へと向かうと、そこには誰も居ませんでした。

  いつもならば、モグリーナさんとモグラーニャさんが挨拶をしてくれるのですが……。

  「今日はまだみなさん、寝てるんでしょうか……。」

  それにしては静か過ぎます。

  わたしはふと、嫌な予感がしてきたので巣穴の外へと出ました。

  ─────

  「やっぱり居ない……ん?」

  すると何やら手紙らしきものが落ちているのを見つけましたが、その一部分にはわたしの思い出したくない顔が書かれていた為に一度見ないふりをしようとしました。

  しかし、結局何が書いてあるのか気になってしまったわたしは、恐る恐る紙を広げてみます。

  そこには、何処か書き殴ったような感じでこう書かれていました。

  『~ラビッピちゃんへ~

  お元気ですか?突然ですが、お前の大好きな家族は、預かった。

  返してほしければ、じんべえパークに遊びに来てね!

  待ってるよ。 じんべえより』

  わたしは手紙を読み終えると、モグラーニャさん達がそのじんべえという人に連れ去られた事を知り、しばらく心ここにあらずな状態に。

  どうして、こんなことに……。

  「も、モグリーナさん……。子モグラさん……。……モグラーニャ、さん……っ。……っ!」

  モグラーニャさんも、あの頃はこんな思いをしていたのでしょうか……。

  突然、大切な家族を連れ去られて、やっぱり悔しかったと思います。

  実際にわたしも、今はそんな気持ちでいっぱいですから。

  でも、あの人はもうわたししか恨んでは居なかったはず……。

  だって、モグラーニャさんはもうあの人から約束通りモグリーナさんと子モグラさん達を返して貰えて、関係ないはずです。

  なのに、どうして……しかも、モグラーニャさんまで連れ去るなんて……。

  「っ……。行くしか、ないですよね……。」

  今、モグラーニャさん達を救えるのはわたししか居ません。

  そう言ってあの人からの手紙を握りしめると、わたしは巣穴の戸締りをして、モグラーニャさん達が捕まっている「じんべえパーク」へと向かいました。

  [newpage]

  しばらく走り続けていると、森が見えてきました。

  ここはわたしにとってモグラーニャさんを始め、色々な人との出会いがあった場所です。

  今でもキャビッジ集めや子モグラさん達とのお散歩でよく訪れています。

  「じんべえパーク……って何処なんでしょう……。」

  手紙にはあいにく場所が書かれていませんでしたが、かつてモグラーニャさんが同じくじんべえランドへ誘われた時、この森の近くへ向かっていたらしいです。

  なので、きっとこの辺りに居れば……。

  「……?誰か、居るんでしょうか。」

  ふと、片耳がぴくっとなったので森の方を向くわたし。

  すると、森の中から鼻歌を歌いながらこちらへ歩いてくる人影が見えてきました。

  その姿は、手紙の主である……あの人でした。

  ─────

  「フンフンフーン♪……やっぱり来たか。」

  「……っ。」

  帽子を被った無精ひげの農夫、じんべえ。

  わたしにとっては、もう二度と会いたくない人間でした。

  「ようこそ、我がじんべえパークへ!おめでとう、お前が1人目の来場者だ。ラビッピ!」

  何が、おめでとうなんですか。人の大切な人々を連れ去って、こんな所に誘い出しておいて……。

  わたしは普段他人に怒ることはないですが、この人だけは許せない気持ちでいっぱいです。

  そもそも、あの時モグラーニャさんに助けてもらえなかったら、わたし……。

  だから、わたしは……。

  「……返して、ください……。」

  「モグラーニャさん達を、今すぐ返してくださいっ!!」

  そう、目の前のじんべえに対して怒りをぶつけようと思いました。

  「……フンッ、返せと言われて素直に返す奴が居るか!オラの大切な野菜を盗んだお前が言うな。」

  「っ……そ、それは……。」

  ただ、元後言えばあんな事になったのはわたし自身のせい……。

  じんべえの反論についビクッとなり、かつてのわたしのしたことを思い出させられました。

  「まぁいい。これからたっぷりお前にお礼をしてやる。」

  「……きゃっ!?」「こいつを連れてけ。」

  笑みを浮かべてじんべえがそう言うと、突然何処からか二人組の黒ずくめの人が現れ、何も言い返せず[[rb:俯 > うつむ]]いているわたしの両腕を掴んできて。

  「は、離してください……っ。あ、ちょっ……んんっ!」

  「ウサギが一名様、ご来園でーす!」

  わたしはそのまま目隠しをされると、黒ずくめの二人組に森の奥へと連れて行かれてしまいました。

  [newpage]

  ──あれからしばらく経って、目を開けるとわたしは見慣れない場所に居ました。

  「っ……此処は……?」

  辺りには何やら銅像がたくさん並んでいて、看板があるだけでそれ以外には何もない部屋。

  銅像はじんべえの姿をしているので、もしかして……。

  「ここが、じんべえパークですか……。」

  かつて、モグラーニャさんも「じんべえランド」という所で、皆さんを助ける為に奮闘されていたと聴きました。

  その道中、アジラさんや子ネヂミちゃんは彼を邪魔していて、その中にはわたしも居ましたが……。

  「モグラーニャさん……っ。」

  今でもあの頃を思い出すと、申し訳無さが込み上げてきて胸がチクチクと痛くなってきます。

  まるで、ウニチクさんや怒った時の子ネヂミちゃんのハリに突かれているように……。

  「っ……いえ、こんな所で立ち止まっている場合じゃないです。行かなきゃ……っ。」

  そうでした。今のわたしは皆さんを助ける側のウサギですっ。

  その為に来たんですから!

  「待っていてください……!モグラーニャさんっ、そして皆さん……っ。」

  わたしはすでに開いている出口へ向かうと、目の前の看板には気づかずこの部屋を後にしました。

  そこには、わたしの知っている方の絵とセリフが書かれていることを知らずに──。

  [newpage]

  最初の部屋を後にすると、次はなんだか周りが切り株に囲まれていました。

  「あれ、此処から先はどうするんでしょう……?」

  地面は掘れそうなやわらかい土ですが、わたしはモグラーニャさんと違って掘ることはできません。

  品種的には、わたしはアナウサギのはずなんですが……。

  「えっと……あっ、何か書いてある……。」

  どうしようか悩んでいると、わたしの横に看板があるのを見つけました。

  そこには、とあるお年寄りのモグラさんが描かれていて、何やら説明が書かれています。

  『~ウサギでも出来ること~

  ラビッピはやさしいウサギじゃ。

  掘ることも跳ねることも出来ないだろうが、お主にも出来ることならあるじゃろ?

  モグラーニャ達と何をしてきたか思い出せば、

  きっと道は開けるはずじゃ。』

  とのことですが。えっと、どういうことなんでしょう……?

  わたしに、このまま待てと言うのでしょうか……。

  「とりあえず、待ってみようかな……。」

  わたしはこのお爺さんと直接お会いしたことはありませんが、何故か当時からわたし達のことは知っていて、かつては道中モグラーニャさんのことをサポートしていたというのは知っています。

  見た目はモグラーニャさんにそっくりですが、彼のお父さんではないようなので親戚なんでしょうか。

  いえ、今はそんなことを考えている場合じゃないです。

  とにかく、目の前の切り株を越える方法を考えないと……。

  「もしかして、今のわたしなら……。」

  ピョンピョンと跳ねることはできませんが、勢いを付けて飛び越す事なら出来るかも。

  モグラーニャさんとの特訓、子モグラさん達との追いかけっこなどをしているうちに、いつの間にかウサギの脚力を思い出してきました。

  だってわたしは、ウサギなんですから!

  とりあえず後ろに下がると、そこから構えの姿勢をとります。

  そして、何かを追いかけるように思い切ってスタートダッシュを切り。

  「え~い……っ!!」

  切り株の前にくると、あたかも跳び箱の踏切板を踏むようにタイミングよく地面を踏みこんで跳び上がりました。

  すると、先程まで目の前にあった切り株が、いつの間にかわたしの後ろにあるのが見えて。

  「……っ? や、やった……わたし、ついに跳べました……っ!」

  ずっと、跳べないと思ってたわたし。

  でもついに跳べましたよ、モグラーニャさん……!

  「今の見ましたか?モグラーニャさ……。」

  わたしは嬉しくなって、居ないはずのモグラーニャさんの方へ振り向くと、現実に引き戻されました。

  「そうでした……モグラーニャさんは……。」

  もう、特訓の成果を見せられないんですよね……。

  きっと、今のわたしを見たら真っ先にわたしの頭を撫でてくれて、わたしは嬉しくなってモグラーニャさんに抱き着いてました。

  でも、今はそんなこと出来ないんですよね……。

  「モグラーニャさん……っ。」

  ずっと独りだった頃とは違って、モグラーニャさんによって家族に迎え入れられてからは寂しさとは無縁の日々を送ってきて、これからも皆さんの温もりを感じながら生きていけるのだと思っていました。

  それだけに、こうして大切な家族を奪われて、元の独りぼっちに戻るとやっぱり寂しいです。

  いえ、今のわたしは多分どうすることもできないと思ってしまいます。

  「だから、今は行かなきゃ……っ。」

  そう、じんべえから皆さんを返してもらいに……。

  [newpage]

  「えいっ……!」

  その後は、モグラーニャさんとの特訓を活かして、黒い玉を運んだり投げたりしました。

  始めは、大きなキャビッジすら持ち上げられなかったわたしですが、今はそんなことはないです。

  なんだったら、バックドロップだって出来ちゃいます……!

  「これも、モグラーニャさんのおかげです……っ。ありがとうございます……っ///」

  だからこそ、会いたいです……。

  「モグラーニャさん……。いえっ、今は落ち込んでなんかいられません……!」

  すぐに落ち込んじゃう所は相変わらずですが、今はそんなことをしている場合じゃないですよね。

  わたしは、パンパンッと両手で顔を叩くと気合いを入れて次のお部屋へと入りました。

  しかし、そこには信じられない光景が待ち受けていました……。

  [newpage]

  「も、モロQとアジラさん……?」

  わたしの目の前には、何故かわたしのよく知っている人がうろうろしていました。

  でもお二人とも、じんべえとはもう関わりがないはずですけど……。

  「どうしてここに……。」

  ただ二人とも何だか様子がおかしく、わたしに気づいてないのかただただ同じ場所を走り続けているだけ。

  もしかして、あの頃のわたしと同じでしょうか……?

  わたしも、かつては今のお二人のようにモグラーニャさんのことを邪魔していました。

  ただひたすら同じ場所を行ったり来たり、雪山では子ネヂミちゃんとも一緒になってましたね。

  モグラーニャさんに助けてもらった時にもお話したのですが、行動自体は無意識でもあの人とぶつかった時の感覚だけは今でも覚えています。

  今でも、その時の事を申し訳なく思って胸が張り裂けそうなくらい……。

  もしそうなら、今のお二人もわたしの姿が目に入ったら気づくはずです。

  「モロQさん、アジラさん……!」

  わたしは、お二人の目の前に立つと名前を呼びました。

  しかし、二人は……。

  「……ぐはっ!!」

  目の前に立ちふさがるわたしを、恰も認識していないように突き飛ばしてきました。

  体当たりされ、その場に倒れるわたし。

  「っ、ど、どうして……。」

  わたしに体当たりをした二人は、何故か反対の壁でしばらく足踏みをしています。

  どちらもわたしより背が高くて力があるので痛い……。

  「そんな……。ひどい……。」

  でも、わたしもあの頃はモグラーニャさんに同じ事をしていたんですよね。

  今、改めてあの人が受けた痛みが分かりました……。

  「ごめんなさい……っ、モグラーニャさ……っ!?」

  あの人にはもう許して貰えたのに、こんな所で申し訳ない気持ちが押し寄せてきて、両手で顔を伏せようとするわたし。

  すると、何故かそんなわたしの長い耳を、突然戻ってきたモロQさんが掴んできました。

  ─────

  「ゃぁっ……!!」

  モロQさんは耳を掴まれて痛がるわたしを、先ほどと変わらない表情で見つめています。

  普段のモロQさんはちょっと不思議な方ですが、そんなことはしないです。

  「はっ、離してっ!!……ゃあっ!!」

  痛みで泣き叫ぶわたし。

  今度はいつの間にか戻ってきたアジラさんに、しっぽを鷲掴みにされて。

  「っっ、耳も……しっぽも、ダメ……っ!!///」

  もはや身動きが出来ず、ただただ二人がやめてくれるのを待つばかり。

  でも、何だかわたしの様子を楽しんでいるかのように思えてきて……。

  「(わたしはどうしたらいいのかな……。このまま皆さんを助けられないで、終わっちゃう……。)」

  心の中でそう思い、痛みに耐えながら目を瞑るわたし。

  すると、何処からか声が聴こえてくると共に突然お二人に解放されました。

  「ハァッ、ハァッ、ラビッピをいじめるなでチュ!!」

  「こ、子ネヂミちゃん……!?」

  そこに現れたのは、子ネヂミちゃんでした。

  [newpage]

  「だいじょーぶだったでチュ?」

  「は、はい……。でも、どうしてここに……?」

  「さっきモグラーニャがつれさられてラビッピがじんべえのところへむかったっていうのを、モグラのおじいさんからきいたんでチュ。そしたらちょうどラビッピがつかまってたからたすけにきたんでチュ!……って、きいてるでチ…?」

  「……子ネヂミちゃん……っ!」

  わたしは、恐怖から解放してくれた嬉しさのあまり、子ネヂミちゃんを抱き締め。

  「チュ~、くるしーでチュ~……でも、ぶじでよかったでチュ。よちよち。」

  「子ネヂミちゃん……ぐすっ……。」

  嬉しさと襲われていた怖さが混じったのか、子ネヂミちゃんに顔を埋めて泣いてしまいました。

  ─────

  「ぇっ……親ネヂミさん達まで、ですか……?」

  「じんべーのやつゆるせないでチュ!あたちだけはなんとかにげてきたでチュ。」

  泣き止んで顔をあげると、子ネヂミちゃんはここに来た経緯を話し始めました。

  まさか、モグラーニャさん達だけじゃなくて、親ネヂミさん達まで連れ去られたなんて……。

  噂程度ですがアジラさんに対しても酷い事をしていたらしいですし、わたし達はかつてそんな人の為にあんなことを……。

  「……行きましょう……っ!」

  「チュ?……はいでチュ!」

  わたしは立ち上がると前を向いてそう言い、まずはこの部屋から出ることを考えます。

  その為にするべきことと言ったら……。

  「どこかに黒い球があるはずです……っ。」

  木々に囲まれた中を見回すと黒い球を探します。

  すると、子ネヂミちゃんが見つけたようで。

  「あったでチュ!あれをあそこにどかーんってすればいいんでチュ!」

  「ありがとうございます……!じゃぁ、ここから……えいっ!!」

  わたしは黒い球のもとへ向かうと、ちょうど石の壁が目の前なので、球を掴みそこから壁へ向けて勢いよく蹴ります。

  すると、球は真っ直ぐに転がっていき。

  《ドカーン!》

  壁を壊し、何故か消えてしまいました。

  「や、やりました……!」

  「さすがはラビッピでチュ!つぎいくでチュ~!」

  「はい……っ!」

  喜んで先へと進む子ネヂミちゃんの後を追って、わたしの次の部屋へと向かいました。

  [newpage]

  そこからは、ただひたすら迷路のような部屋を抜けてゴールを塞いでいる壁へと球をぶつける事を繰り返していきます。

  その途中、先ほどのようにモロQさんやアジラさんが襲ってきましたが、その度に子ネヂミちゃんがわたしのことを守ってくれました。

  「まったく、あのひとたちはラビッピのことすきすぎでチュ!ラビッピはあたちのもn……?」

  「ごめんなさい、子ネヂミちゃん……っ。わたしのせいで……。」

  そんな子ネヂミちゃんを見ていると、申し訳なくなりギュっと抱き締めるわたし。

  「チュ?いやいや!ラビッピはわるくないでチュ!」

  「そう、でしょうか……。いたっ!」

  「そうでチュ!」「こ、子ネヂミちゃんハリ……っ。」

  小っちゃいのに本当に逞しいです、子ネヂミちゃん。

  わたしも、せっかくお姉ちゃんとして接しているのですからしっかりしないといけませんよねっ。

  と、そうこうしているうちに、いつの間にか最後の部屋にたどり着きました。

  あの壁の先には、子モグラさんが待っているんですよね……。

  「ハァっ、ハァっ……やっと、ここまで来ました……っ。」

  「チュ……。」

  息を切らし、ゴールの壁を見つつ言うわたし。

  しかし、子ネヂミちゃんは何故かその場で俯いてしまいました。

  「子ネヂミちゃん……?」

  気になって話しかけると、子ネヂミちゃんはどこか申し訳なさそうな顔をして。

  「あのさきは、ラビッピひとりでいってほしいでチュ……。」

  「えっ、どうしてですか……?」

  「あたちは……ううん!いくらあたちも、みんなをつれさられたからっていっても、ここでのしゅやくはラビッピでチュ。だからあたちがいっちゃダメなんでチュ!」

  「そんな……っ。でも、これからもついてきてくれるんですよね……?」

  わたしは子ネヂミちゃんの態度に戸惑いつつ、不安そうにたずねます。

  「うん。とちゅうのおへやは、これからもあたちがサポートするでチュ。でも、ボスにはラビッピだけでたちむかってほしいんでチュ!」

  子ネヂミちゃん、そんなわたしの為に……。

  自分も皆さんを連れ去られているというのに、どうしてそんな余裕があるんですか。

  わたしは、モグラーニャさん達を連れ去られたという事だけでいっぱいいっぱいなのに……。

  「……分かりました、わたし頑張りますね……っ。」

  「ラビッピ……。」

  「心配しないでください……!子ネヂミちゃんが、向こうから見守ってくれるって思うだけでもわたしは大丈夫です……っ。わたしもちょっと、子ネヂミちゃんに頼り過ぎちゃってるなって思ってましたから……。」

  わたしは、子ネヂミちゃんの意向を[[rb:汲 > く]]むとうなずいて、ボスの扉の方へ向き直りました。

  すると、そんなわたしの背中に子ネヂミちゃんは抱きついてきて。

  「ぐすっ……せーちょー、したでチュね。うれしいでチュ……っ。」

  「わっ!……ふふっ、子ネヂミちゃんったら……////」

  「ラビッピ……////」

  っと、いつまでも子ネヂミちゃんといちゃいちゃしている場合じゃないですよね。

  わたし達の様子に気づいたのか、ゴールの前でうろうろしていたモロQさんとアジラさんがこちらへ向かってきたため、子ネヂミちゃんをそっと離します。

  「わわわ、モロQさん達が来ました……っ。」

  「まかせてでチュ!」

  そう言うと真っ先にモロQさん達の元へと走っていき、わたしから気をそらす子ネヂミちゃん。

  その隙にわたしは、奥に見える黒い球のもとへと向かいます。

  「あと少し……っ。」

  しかし、そんなわたしの前には何故か子ネヂミちゃんの方へ行ったはずのアジラさんが立っていて。

  「……ひっ!?」

  もう少しで球に触れそうな所で、わたしは足を止めてしまいました。

  「ぁ、アジラさん……っ。」

  アジラさん、恐竜でわたし達よりもおっきいので立っているだけでも圧がすごいんですよね……。

  ただ、今のモロQさんもアジラさんも、わたし達を狙う敵さんだからかいつもとは違う威圧感を感じてしまいます。

  「チュ!?しまったでチュ!ラビッピ~!!」

  「子ネヂミちゃん?……ぁっ、今のうちに……!」

  すぐにこちらのアジラさんに気が付いたのか、子ネヂミちゃんがあちらへアジラさんを引きつけてくれました。

  アジラさんが向こうを向いたその隙にわたしは、黒い球を運び出します。

  そして……。

  「えいっ……!!」

  わたしは、壁に向かって思い切り黒い球を蹴ると壁を壊しました。

  しかし……。

  「ぁ、あれ……?も、もう一個ありました……っ!」

  さすがはボスの前です。

  そう簡単には通してくれないですよね。

  「子ネヂミちゃん、もうちょっとだけ耐え……きゃあっ!?」

  慌ててたせいか、わたしはもう一個の黒い球へ向かおうとして落ちている石につまずいてしまいました。

  その音に気づいたアジラさんが、子ネヂミちゃんのもとからわたしの方へと向かってきます。

  「いたた……っ、は、早くしないと……っ。」

  「ラビッピ~!」

  すぐに起き上がると、黒い球のもとへ走るわたし。

  アジラさんが迫ってくる恐怖に耐えながら、何とか黒い球につきました。

  「えっと……わわわ、どうしたら……っ。」

  しかし、気がつくとわたしの目の前にはアジラさんが立ち塞がっていて、そこへ子ネヂミちゃんに足止めされていたモロQさんもついにこちらへと向かってきてしまいました。

  「ゴメンでチュっ、あたちにはもうムリでチュ~……。」

  頑張って足止めしてくれていたのが分かる程に、疲れている子ネヂミちゃんの様子が遠目に見えます。

  ごめんなさい、わたしがヘマをしちゃったから……。

  「っ……アジラさん、モロQさん……。」

  わたし、やっぱりこの二人をやっつけないといけないのでしょうか。

  さっきまで、直接手を掛けなくても壁を壊せば二人は消えてしまいましたが……。

  「モグラーニャさん……。」

  ふと、最近モグラーニャさんが、こんなお話をすることが増えていたのを思い出しました。

  (ラビッピ。)

  (はい、なんですか……?)

  (ラビッピは……もし、敵が目の前に居たらどうする?)

  (敵が……ですか……。)

  (あぁ。優しいお前には辛い事かも知れない、だが幾ら優しくても、時にはやらなければならないことがあるんだ。)

  (それって、もしかして……っ。)

  (例え相手が、自分の知っている奴であっても敵として立ち向かってきたなら戦うしかない……。あの頃のオレはそうしてきた。もちろん、お前が立ち向かってきた時もな……。)

  (モグラーニャさん……。きゃっ。)

  (ん?いやいや、今のお前はオレ達の家族だろ?)

  (そ、そうですけど……////)

  (まぁ、どうするかはラビッピ……お前次第だっ。)

  (……っ、はい……////)

  モグラーニャさんは、わたし次第って言ってました。

  でも、わたしは……。

  「……えいっ!」

  ごめんなさい。モグラーニャさんのやったように、わたしはアジラさん達をやっつけます……!

  だって、お二人共普段はあんなことをする人ではないですから。

  「やったでチュ!」

  「ごめんなさい、今のあなた達は……敵なので……。」

  相手が偽者とは言え、申し訳ない気持ちはあります。

  本当なら、こんなことしたくないのに……。

  「ラビッピ~!」

  「……きゃっ!?」

  ふと、そう思っていると嬉しそうに駆け寄ってきた子ネヂミちゃんに抱きつかれてしまいました。

  「やったでチュねっ。」

  「はい……っ、なんだかモグラーニャさんに励まされた気がしました……////」

  「チュ。……いよいよでチュね。」

  「はい……。わたし、頑張りますね……?」

  「ラビッピ……。」

  「っ、もう……っ。子ネヂミちゃんも、子モグラさん達と変わらず、甘えん坊さんなんですから……♪」

  「えへへ、ラビッピだからでチュ////」

  でも、ああ言いながらも心配してくれているんですよね。

  ハリを倒して、顔を埋めてくる子ネヂミちゃんを優しく撫でるわたし。

  本当に、妹みたいでかわいいです。

  「……じゃ、本当に行ってきますっ。」

  「うん……きをつけてでチュ。」

  そう言って子ネヂミちゃんを離すと、わたしは黒い球を蹴って2つ目の壁を壊しました。

  いよいよですが、どんな人なんでしょか……。

  気になりながらも、わたしはボスのお部屋へと入っていきます。

  [newpage]

  《ギィィィ……ガチャンッ!》

  お部屋へと入ると、すぐに入り口が閉まりました。

  本当にわたし一人で戦わないといけないんですね。

  「き、来ましたよ……。早く、モグラーニャさん達を返してください……っ!」

  わたしは、向こうから誰かが来る気配を感じ取るとそちらへと向かって。

  すると、やがてその姿が見えてきました。

  その相手は……。

  「ピョーンピョーン♪来たわね、ラビッピちゃんっ。」

  「……ぇっ、カンガルーン……さん?」

  わたし達にいつも、リンゴを下さるカンガルーンさんでした。

  「えぇ、あたしはカンガルーンさまよ♪……って、ちゃんと書いておいたはずだけれど。」

  あっ、そういえば……。

  あの時は動揺していて、もう一つ看板があったことには気づいていませんでした。

  「どうして、こんなことを……。」

  「ごめんなさいね?あたし、じんべえにお願いされたのよ。まったく、あの人の人遣いの悪さは変わってなくて参っちゃうわ~。」

  わたしのお知り合いまで利用するなんて……。

  どれだけあの人は卑怯なんですか。

  「……。」

  「さて、アナタは大切な子供を取り返しに来たのよね?」

  「はい……もちろん、です……っ。」

  「ならばラビッピちゃん、優しいアナタには辛いと思うけれど、あたしを倒してちょうだい。」

  「……カンガルーンさん……。」

  わたしにとって、カンガルーンさんは優しいお姉さんのような方です。

  でも、今はやっぱり先程までのアジラさん達と同様、敵なんですよね……。

  もし子ネヂミちゃんが助けに来てくれなかったら、わたしはアジラさん達にさえ手を掛けられないで終わっていたかもしれません。

  「戦わないなら、子供はずっとあの人のもt……」「それはダメです……!」

  確かに、カンガルーンさんに手をかけるのは本当は嫌です。

  でも、そのせいでわたしの大切な子モグラさんが酷い目に遭うのはもっと嫌です。

  「……そう、じゃぁ行くわよ!」

  カンガルーンさんはそう言うと、いきなりお腹からリンゴを取り出して投げつけてきました。

  「えっ?……キャアっ!!」

  そのまま跳び上がるのだと思いこんでたせいか、飛んできたリンゴに避けられず当たってしまいます。

  「いたた……っ。」

  「あらあら、油断したわね?戦いが始まったらそれじゃダメよ、ラビッピちゃん。」

  「っ……で、ですよね……。しっかりしなきゃ……あれ……?」

  と、わたしがカンガルーンさんへ向き直ると目の前には相手の姿がありません。

  「カンガルーンさん……!?」

  カンガルーンさんがすかさず高く跳び上がった事に気づかないわたしは、相手の姿を探そうと上を向きます。

  すると、カンガルーンさんは突然わたし目掛けて降りてきました。

  「キャ……っ!?」

  辛うじて踏み潰そうとしてくるカンガルーンさんを避けると、カンガルーンさんはそのまま跳ね続けました。

  わたしと違って跳ねられるの羨ましいです。

  「ウフフフっ、さぁどうするのかしらっ?」

  「カンガルーンさん……。」

  戦うと言ってもどうしたらいいんでしょうか……。

  周りには黒い球もキャビッジすらもありません。

  あるのは、何故か大きな先の尖ったもの……。

  「あれはなんでしょうか……。」

  とりあえず、尖ったものが置いてある場所へと向かうわたし。

  その間もカンガルーンさんは絶えず「ピョーンピョーン」と言いながら、部屋中を跳ねています。

  ふと、その様子を見ていると悪い予感がしてきました。

  「まさか、これをカンガルーンさんに……?」

  攻撃手段が他にないとしたらこれしか考えられず、まさかと思い。

  するとわたしに気づいたカンガルーンさんは、一旦跳ねるのをやめてこちらを向き。

  「気づいたわね、ラビッピちゃん!」

  「カンガルーンさん、まさか……。」

  わたしがそう言うと、カンガルーンさんは不敵な笑みを浮かべて。

  「えぇ、そのまさかよ?[[rb:画鋲 > それ]]をあたしに踏ませてみせなさい!」

  な、何を言ってるんですか?

  そんなことしたら、カンガルーンさんは……。

  「どうしたの?あなたの子供がどうなってもいいの?」

  「そ、それは……。」

  先程までのモロQさんやアジラさんは、ただただ無言で襲い掛かってきたので敵意しか感じられず、倒すのも躊躇いはなくなっていました。

  でも、今目の前に居るカンガルーンさんは普通にお話はするし、普段お会いしている時と変わらない雰囲気で、とても敵意は感じられません。

  それだけに、カンガルーンさんを傷つける事には抵抗感しかないです。

  「じゃあ、そうねぇ……。あたしと子供達どっちが大事かしら?」

  「……。」

  子モグラさん達はもちろん、カンガルーンさんもどっちも大事です。

  だから、どっちもはダメなんでしょうか……。

  《しっかりするでチュ!》

  「ぇっ……?」

  ふと、わたしが思い悩んでいると扉の向こうから子ネヂミちゃんの声がしました。

  《ラビッピ!カンガルーンをたおすでチュ!!》

  《ラビッピがまけたらモグラーニャやみんながかなしむでチュ!あたちもおかあさんたちとあえなくなるんでチュ!もしそんなことになったらあたち、ラビッピとはぜっこーでチュ!!》

  「……っ!子ネヂミ、ちゃん……。」

  ごめんなさい、子ネヂミちゃん……。わたし、ずっと勘違いしていたみたいです。

  あまりに過去の自分に囚われ過ぎてしまって、大切なことを忘れていました。

  「ウフフッ、アナタにはお友達が居て羨ましいわ。あたしもそんな子が欲しいわね~。」

  カンガルーンさんはそう、どこか寂し気に言うと再び跳ね始めます。

  そんな様子を見て、わたしは……。

  「……ごめんなさい、カンガルーンさんっ。わたし、決めました……!」

  [[rb:画鋲 > がびょう]]の元へと走ると、それをカンガルーンさんの影へと運びます。

  そして、わたしが目を閉じた瞬間……。

  「ギャアッ!!」

  「っ……。」

  ハリへ降り立ち、それが足に刺さるとカンガルーンさんは呻[[rb:呻 > うめ]]き声を上げながら辺りをのた打ち回りました。

  「カンガルーンさん……っ!」

  余裕そうな顔を見せていながら、痛そうに跳ね回るカンガルーンさんの様子を見るわたし。

  もし、わたしも跳ねてたりしたらあんな風になってたんでしょうか……。

  「……や、やったわね、ラビッピちゃんっ……それでこそ、モグラーニャの弟子よっ!!」

  えっ、どうしてそのことを……?

  もしかして、誰かからわたしの噂を聴いてたんでしょうか。

  「そんなアナタにはあたしのリンゴをたくさんあげなきゃねっ!!」

  「きゃふっ!!」

  ふと考え事をしていると、カンガルーンさんから投げつけられたリンゴに気づかず当たってしまいました。

  痛いです……。

  「余所見なんて!している場合っ!」

  「わわわわっ、カンガルーンさん投げすぎです……っ!」

  さっきよりもリンゴの数が多いですけど、カンガルーンさんはどれだけリンゴを持ってるんでしょうか。

  リンゴを投げ終えるとカンガルーンさんが再び跳ね始めた為、わたしはすぐに画鋲の元へと向かいます。

  そして、カンガルーンさんの影の下へ画鋲を置くとためらいもなくカンガルーンさんは画鋲を踏んで。

  「ギャアアッ!!」

  「か、カンガルーンさん……!」

  断末魔を上げながら何処か笑顔を浮かべているカンガルーンさん。

  そんな痛々しい顔、こちらに見せないでください。

  またわたし、[[rb:躊躇 > ちゅうちょ]]しちゃうじゃないですか……。

  やがてカンガルーンさんが起き上がると、さっきよりも大量のリンゴを投げつけてきたので休む間もなく避けると、ボロボロになる中立ち上がったカンガルーンさんは、とうとう何も話さず再び跳ね始めました。

  「カンガルーンさん、ごめんなさい……!」

  そう言って、すかさずわたしはカンガルーンさんの影の下に画鋲を置きます。

  すると、カンガルーンさんは何のためらいもなく画鋲へと狙いを定めて。

  「……ウフフッ、ラビッピちゃん?次に会う時は、またアナタ達においしいリンゴを分けてあげるわね……。じゃ、その時まで──。」

  「カンガルーンさん……!!」

  しかし、わたしがそう叫ぶと同時に、カンガルーンさんは画鋲のハリに突き刺さると、笑顔のままでその場から姿を消してしまいました。

  「カンガルーンさん……っ、ぐすっ……。」

  カンガルーンさんと共に画鋲も消え、ただ一人その場に残されたわたし。

  結局、カンガルーンさんを傷つけてしまった事を思うと、わたしはその場に泣き崩れました。

  [newpage]

  ──あれからしばらく経って、立ち上がるといつのまにか子ネヂミちゃんがやってきていました。

  「ラビッピ?きがついたでチュ?」

  「っ、子ネヂミちゃん……。ごめんなさい、わたしつい……。」

  「だいじょーぶでチュ!さぁはやくキャビッジをあけるでチュ!」

  「キャビッジ……?わわわっ、いつの間に……っ。」

  子ネヂミちゃんに慰められると、わたしの背後には全く気づかないうちにおっきなキャビッジが置かれていました。

  わたしの倍はある大きさなのでびっくりです。

  「じゃぁ……えい……っ!」

  恐る恐るキャビッジに手を掛けると、中から子モグラさんらしき人が飛び出してきました。

  「ぷはぁっ!あ!らびっぴねーたんっ!」

  「ぇ、子モグラさん……!」

  すぐにわたしに気づいて飛びつく子モグラさん(水色)を抱き留めるわたし。

  良かったです、無事で……っ。

  「かんどーのさいかいでチュねっ。」

  「えへへ、あいたかった!」

  「も、もうっ……わたし、心配したんですよ……?」

  どこか楽し気な水色モグラさんを見ると、呆れたように言いつつギュッと抱き締めてあげました。

  でも、本当に無事で良かったです……。

  [newpage]

  子モグラさんを一人助け出したわたし達は、その場を後にすると次のエリアへと向かいました。

  まだあと6人の子モグラさんとモグリーナさんにモグラーニャさん、そして子ネヂミちゃんのお母さんである親ネヂミさんが待っていますし、のんびりしている時間はないです。

  「えっと、次は……。」

  目指すエリアはどうやら浜辺みたいですね。

  何だか日差しが強くなってきた気がしますが、とりあえず入口へとたどり着きました。

  「あついでチュ~……。」

  「ねぢみねーたんだいじょーぶー?」

  わたしの後ろでは、水色モグラさんが子ネヂミちゃんをパタパタと仰いでいました。

  雪山が住処な子ネヂミちゃんにとって、暑さは大敵かもしれないですね。

  「じゃぁ、わたし、先に行ってますね……?」

  「チュ?ラビッピ?」

  「はい……っ。わたしはもう、一人でも大丈夫です……!それに、あまり子ネヂミちゃんに迷惑掛けたくないですから……っ。」

  「らびっぴねーたんにはぼくもついてるからだいじょーぶだよ!」

  「ラビッピ、モグラくん……わかったでチュ。あたちもあとでちゃんとくるでチュ!」

  「ありがとうございます……っ。じゃあ、行ってきます……!」

  そう言うとわたしは目の前の扉を開け、水色モグラさんと共に次のエリアである浜辺と入っていきました。

  [newpage]

  浜辺のエリアへと入ると、辺りは海で囲まれていました。

  そして、目の前に何だか見覚えのある人が描かれた看板があります。

  「らびっぴねーたん、あれなにー?」

  「えっ……サンデスさん?」

  看板に描かれていたのはサンデスさんの顔と、台詞でした。

  『ホーッホッホッホ、吾輩はサンデスなのだ!

  とにかく明るいのが取り柄なのだ!

  待っているのだ、ホーッホッホッホ!』

  わたしは直接お会いした事はなく、いつも空からわたし達を見守ってくれている事しか知らなかったのですが、こんな方だったんですね。

  文字と顔写真だけでも眩しくて暑さが伝わってきます……。

  「たいよーさんかわってるねー」

  「そ、そうですね……。とりあえず行きましょう……!」「うん!」

  そう言うと早速、ステージへと入っていきました。

  [newpage]

  「あれ、ガジャさん……?」

  目の前には先程から引き続きアジラさんがうろうろしていましたが、その奥にはガジャさんらしき姿がありました。

  行動パターンはどうやらモロQさんと同じようですね。ただ、顔が顔なのでちょっと怖いです……。

  「んー?きょーりゅーのおにーたんなにしてるの?」

  と、水色モグラさんが目の前のアジラさんに興味を持ったのか、じっと不思議そうに見ながら近づいているのに気づいて。

  「あっ、子モグラさん……!!」

  わたしが呼び掛けると途端にうろうろしていたアジラさんが此方を向き、水色モグラさんへ襲い掛かってきました。

  「……ッ!きゃあっ!?」

  咄嗟にその場に立ち尽くしている水色モグラさんへ覆いかぶさるように守ると、アジラさんの体当たりを受けてしまいました。

  辛うじてギュッと抱き締めていたので、水色モグラさんは無事みたいです。

  「らびっぴねーたん?」

  「いたたっ……良かったです、わたしお姉ちゃんとして子モグラさんを守ってあげられました……っ。」

  転がる瞬間体を丸めていたおかげで、わたしも掠り傷程度で済んだようです。

  「むー!らびっぴねーたんいじめちゃだめ!!」

  「子モグラ、さん……?」

  すると、そんなわたしの様子を見てか、水色モグラさんはわたしの前で両手を拡げるとアジラさんを一喝しました。

  水色モグラさん、普段はあんなに甘えん坊さんなのにいつの間にか逞しくなっていたみたいです。

  「子モグラさん……。っと……わたしは全然大丈夫ですが、ありがとうございますっ。」

  当然の水色モグラさんの行動に、わずかながら戸惑いを見せているアジラさんの様子を横目に見ると、わたしはその隙に黒い球の元へと向かいました。

  その途中ガジャさんに気づかれて襲われかけましたが、黒い球を掴むとすぐに投げつけたおかげでガジャさんをやっつける事が出来ました。

  「ガジャさんも……ごめんなさい……っ。」

  水色モグラさんが必死にアジラさんを止めている中、わたしは壁へと黒い球をぶつけると、アジラさんはその場から姿を消しました。

  「やりました……!」

  「わぁ!らびっぴねーたんすごーい!」

  「そ、そうですか……?でも子モグラさんも、すごいです……っ。」「えへへー。」

  よしよしと頭を撫でてあげると、嬉しそうに笑う水色モグラさん。

  でも、今はどんどん先へ進めないとです!

  「さて、次いきましょう……!」「おー!」

  出口から次のお部屋へ入ると、今度はアジラさんだけのようです。

  もう対処法は分かりましたし、ここからしばらくは余裕ですねっ。

  「らびっぴねーたん、いまー!」

  「分かりました……!えい……っ!!」

  水色モグラさんがアジラさん達を惹きつけている隙に、ゴールへと黒い球を投げつけます。

  なんだか、いつの間にか水色モグラさんが子ネヂミちゃんのポジションになっている気がしますね。

  でも、子ネヂミちゃんは大丈夫なんでしょうか……。

  「子ネヂミちゃん……。」

  「んー?あ、ねぢみねーたんきたよ!」「えっ?あ、ホントです……!」

  心配そうにしていると、入口の方から足音が聴こえてきました。

  どうやら、大丈夫だったようです。

  「おくれてゴメンでチュ!あたちはもーだいじょーぶでc」

  「子ネヂミちゃんっ……!」「ラビッピ……。」

  わたしが駆け寄ってきた子ネヂミちゃんを抱き締めてあげると、子ネヂミちゃんはハリを倒して頬を寄せてきます。

  「良かったです……っ。」

  「もうっ、おおげさでチュね。でもありがとでチュ。」

  よしよしと頭を撫でてあげ、子ネヂミちゃんを離すと再び出口の方を向いて。

  「さて、ここからは三人で頑張りますよ……!」

  「「おー!(でチュ!)」」

  掛け声とともに、わたし達は次の部屋へと入っていきました。

  [newpage]

  三人寄れば[[rb:文殊 > もんじゅ]]の知恵とは違いますが、もう怖いものなしです。

  水色モグラさんと、子ネヂミちゃんがそれぞれ敵を惹きつけている間、わたしはその隙を狙ってひたすら黒い球の元へと向かい、そして黒い球を運んでゴールを壊していくだけですが……。

  でも、時々二人がピンチになることあるので、黒い球を運びながらもちゃんと守ってあげないとですっ。

  「えい……っ!!」

  《ドガシャーンッ!》

  「いいちょーしでチュ♪」

  「らびっぴねーたんかっこいいー!」

  「ありがとうございます……っ//// でもお二人もかっこいいですよ……♪」

  「えへへー!」「とーぜんでチュ!」

  順調にお部屋を進んでいき、盛り上がるわたし達。

  もう向かう所敵なし……と思ったのですが。

  「この調子でサンデスさんまで行きましょう……!」

  「あたちたちはさいきょーでチュ!」

  「さいきょーさいきょー!」

  「はいっ、では次に……ってなんですかこれは……。」

  部屋へ入ると、何故か目の前がトゲだらけになっていて、先へ進めなくなっていました。

  「チュ、だれがこんなコトしたんでチュ!?」

  「なんかいたそー。」

  トゲの前は、今度はアジラさんに代わってフェイスネークさんがうろうろしています。

  幸い、まだこちらには気づいてないみたいですが。

  「ぁ、看板があります……っ。」

  「ホントでチュ!なにかかいてあるみたいでチュね。」

  「とりあえず、その前にフェイスネークさんをどうにかしないとです……!」

  看板の前をうろうろしているフェイスネークさん。

  普段は少しおっとりしていますが、口を開けたままでうろうろしている様子はちょっぴり怖いかもです。

  「らびっぴねーたんあそこ!」

  「ぇ?あ、球がありました……っ。」

  水色モグラさんに呼ばれ、その方向を向くとちょうど木の陰に黒い球がありました。

  三人で向かうと難なので、わたしと水色モグラさんで球へ向かうことにして、子ネヂミちゃんにはフェイスネークさんの動きを観察してもらいます。

  「あたちはフェイスネークのよーすをみとくでチュっ。ラビッピはモグラくんとたまのほーへいくでチュ!」

  「分かりました……!行きましょう、子モグラさん……っ。」「うん!」

  しかし、黒い球へ向かおうとした途端……。

  「わぁっ!」

  「っ、大丈夫ですか……!?子モグラさん……っ!」

  「モグラくん!?……チュ!しまったでチュ!」

  水色モグラさんが石につまずいて転んでしまい、わたし達の声でフェイスネークさんに気づかれてしまいました。

  「ぼくはだいじょーぶ!」

  「良かったです……って、フェイスネークさん!?」

  水色モグラさんを立ち上がらせると、すぐそばにまでフェイスネークさんが迫ってきていました。

  わたしはすぐに木陰へ水色モグラさんを連れていき、そこへと待避させると黒い球を掴みます。

  「ゴメン、まにあわないでチュ!」

  「仕方ありません……、ごめんなさい……!」

  申し訳なさそうに球へ力を込めると、子ネヂミちゃんが避けたのを見計らってフェイスネークさんへ投げつけました。

  「ッ……やったでチュ!」

  「ふぅ、良かったです……。ところで何と書いてあるんでしょう……?」

  無事にフェイスネークさんを一人やっつけると、さっきから気になっている看板へと向かいました。

  「なんてかいてあるでチュ?」

  「えっと……。」

  その看板の内容は……。

  『ーあれ、通れないの?ー

  このイガイガの地面は、今のお主達はそのままでは通れないのじゃ。

  球を乗せたり転がすのは大丈夫じゃ。

  ただし、お主達が通るにはそこにあるブーツを履けば大丈夫じゃ。』

  “今の”という所が何処か引っ掛かりますが、確かにあの頃のわたし達なら普通に通れたかもしれないです。

  何となくそのままでも行けそうな気はしますが、さすがに痛いですよね……。

  「ブーツってこれでチュ?」

  「ぶーつってなーに?」

  「足に履くものです……っ。こんな感じでしょうか……。」

  わたしは看板の下に置いてあったブーツを両足に履いてみました。

  何だか少しキツいような気がしますが、そのうち慣れますよね。

  「なにげにあたちたちにあわせてあるんでチュね……。」

  「んんーっ、はぁ!はけたー!」

  「それじゃぁ行きましょう……!」

  子ネヂミちゃん達が履き終えると、早速イガイガへと向かいます。

  何だかちょっとだけ足が速くなった気がしますが、気のせいでしょうか?

  ただ、イガイガの上は靴底に当たる感じはあっても痛くはないので、これなら大丈夫ですねっ。

  「向こう側へ行けました……!」

  「やったー!」

  無事、イガイガの向こう側へ渡ることが出来て喜ぶわたし達。

  ですが、なにか忘れてるような……。

  「ちょっと!わすれものでチュー!」

  「えっ?あ、まだ球が向こう側にあるんでした……!」

  子ネヂミちゃんに止められ、うっかり黒い球を入口側へ転がしたままだった事を思い出しました。

  急いでイガイガの上を戻って向こう側へ向かいます。

  「何だか慣れるには時間が掛かりそうです……っ。」

  モグラーニャさんなら、こういう所は地面を掘って進んでたんでしょうね。

  水色モグラさんは、まだ小さいからか掘れなさそうですし、子ネヂミちゃんと地下を移動することは出来ても掘ることは出来ないみたいですから。

  「ここからいっきにきめられるでチュ!」

  「本当です……っ。じゃぁここから……えいっ!!」

  球のもとへ行くと、いつの間にか子ネヂミちゃんが壁まで一直線の所にセットしてくれていました。

  わたしは球を掴むと、そこから思い切りゴールへ向かって蹴り。

  《ドカァーン!!》

  勢いでゴールの壁を壊すことができました。

  それにしても、わたし達はそのままでは進めないのに普通に球が転がっていくのは不思議ですね。

  「やったー!」

  「それじゃぁ行きましょう……!」

  「オー!でチュっ。」

  その先はアソンさんやバルさんが新たに敵として加わったりしましたが、どうやら皆さんわたし達に気づかない限り襲っては来ないようなので、子ネヂミちゃんや水色モグラさんによる作戦のお陰で難なく進むことかま出来ました。

  そして、ようやくサンデスさんのお部屋へ辿り着くと。

  「着きました……っ。」

  ところで、サンデスさんはどういう攻撃をしてくるのでしょうか。

  「あたちたちはおるすばんでチュっ。」

  「そーなの?」

  「チュ。ここはラビッピがヒーローなんでチュ、モグラくんにはあたちがついてるでチュっ。」

  「わかった!おるすばんするー!」

  そんな、ヒーローだなんて……。

  でも、わたしは皆さんをお助けしに来たわけですから間違いではないです。

  「じゃぁ、行ってきますね……っ。」

  「きをつけてでチュっ。」

  子ネヂミちゃん達へそう言うと、わたしは黒い球を蹴ってゴールの壁を壊し。

  「ヒーローの、出番です……!」

  サンデスさんの待つ部屋へと入っていきました。

  [newpage]

  部屋へ入ると、何だか暑くてまぶしいです。

  やっぱり、太陽さんなんですね。

  「ホーッホッホッホッ、待っていたのだ!」

  「サンデスさん……っ。」

  目の前には空から太陽であるサンデスさんが降りてきました。

  「こうしてお会いするのは初めてなのだ。では早速始めるのだっ。」

  会話する間もなくサンデスさんは、なにやら力を溜めはじめましたが、どうすればいいんでしょうか。

  「え、えっといきなりですか……!?」

  まともに受けたらまずいと思い、隠れる場所を探しましたが、周りには黒い球以外何もありませんでした。

  

  「わたし、モグラーニャさんみたいに掘れないし……って、キャアっ!!」

  《ドカァーン!!》

  成すすべもなく最初の攻撃を受けてしまうわたし。

  どうしたらいいんでしょうか……。

  「っ……?サンデスさん……?」

  目を開けるとそこには、攻撃によって疲れを見せるサンデスさんの姿がありました。

  もしかして、この隙に。

  「あれをぶつければいいんですよね……っ。」

  何となくサンデスさんの倒し方に気づくと、早速黒い球の元へ向かいます。

  そして、サンデスさんが再び攻撃を始める前にと勢いよく黒い球を蹴り込みました。

  「グハァッ!!」

  「サンデスさん……!」

  黒い球が顔に命中すると、サンデスさんはうめき声を上げながら海の方へと押されていきました。

  「あれ……?わわわっ!?」

  しかし、勢いのまま海へと追いやられるかと思っていたら、何故かすぐに振り子のようにこちらへと戻ってきたので慌てて避けます。

  えっと、これは一体……。

  「ホーッホッホッホ、吾輩はその程度では沈まないのだ!」

  「ぇっ……し、沈む……?」

  沈むって、どういうことでしょうか。

  まさか、サンデスさんを海に……?

  「そ、そんな……そんなことしたらサンデスさんはどうなるんですか……?」

  「んむ?不思議な事を聞くのだ、吾輩の姿を見て何も思わないのだ?」

  「サンデスさんの姿……あっ。」

  そうでした、サンデスさんは太陽です。

  太陽は夕方には西の空へ沈んでいきますが、朝になればまた顔を出すんでした。

  「ホーッホッホッホ、気づいたか。では行くのだ!」

  「へっ!?わわわ、隠れる場所……キャアっ!!」

  話の間も、サンデスさんが力を溜めている事に気付いていなかったわたしは、再びサンデスさんの攻撃を受けて吹っ飛びました。

  「いたたっ……そ、そろそろまずいです……っ。」

  既に二度攻撃を受けているので、わたしの体はすでにボロボロです。

  でも、どうやって攻撃を交わせばいいんでしょうか。

  「……ん?あれ、穴が……。」

  ふと足元を見ると、いつの間にか穴が開いている事に気付きました。

  今この場に居るのはわたし達だけのはずなんですが、さっきまでは無かったような……。

  「もしかして、此処ならやり過ごせるはずです……っ。」

  ただ、黒い球からはかなり離れているのでサンデスさんにぶつけた後、すぐに穴へ入らないと間に合わないかも。

  そうこうしているうちに、こちらの攻撃のチャンスは終わりサンデスさんは再び力を溜め始めていました。

  「わわわっ……!」

  わたしは早速、穴へ飛び込むとサンデスさんの攻撃から身を守ります。

  顔は出したらまずいですけど、耳だけなら大丈夫ですよね。

  「っ……!」

  穴に入っていると、地上に居る時よりも音が凄いです。

  うっかりわたしは耳を畳んでしまいましたが、やっぱり地面に潜ると平気みたいですね。

  わたしも、モグラーニャさんのように地面を掘れるようになれたらいいんですが。

  「ホー、なかなかやるのだ。」

  「そう何度も、やられたりはしません……!えいっ!」

  地面から出ると、わたしは黒い球の元へと駆け寄りながらそう言い、すかさず黒い球をサンデスさんへとぶつけます。

  先ほどよりも強めだった為か、海すれすれの所まで追い詰める事が出来ました。

  「わたしを、ただのウサギだと思ったら大間違いです……!」

  以前は、それこそ今のアジラさんやフェイスネークさんのようにうろうろするだけの存在でした。

  でも、モグラーニャさんと出会って特訓を重ねていくうちに、気づいたら心の中に自信が芽生えてきたと思います。

  ただ、今でも怖い時は怖いし……時々落ち込んじゃう時もありますが。

  「グッ……それでこそなのだ。しかし吾輩もこれで終わる訳にはいかないのだ!」

  「果たして、そうでしょうか……?」「なに!グハァッ!!」

  《ザバァーンッ!》

  まだもう一発入れられるのに気づくと、そう言って勢いのままサンデスさんへ止めを刺しました。

  そして、海へと落ちていくサンデスさんに背を向けるわたし。

  「サンデスさん……また、わたし達を空から見守って下さいね……。」

  そう言うと、サンデスさんが沈んでいくのを見ずに上から降ってきたキャビッジの元へと歩み寄りました。

  [newpage]

  「おねーちゃん!」

  「わわわっ……良かったです、無事で……っ。」

  先程と同じ大きなキャビッジに触れると、中から今度は赤モグラさんが飛び出してきました。

  慌てて抱き留めると、わたしは無事を確認し「よしよし」と頭を撫でて下ろしてあげます。

  すると、扉が開いて後ろから子ネヂミちゃん達が駆けつけてきて。

  「きゃふ!」

  「わーい!らびっぴねーたんっ!」

  「も、もうっ、子モグラさんったら……。」

  真っ先に抱きつく水色モグラさんをギュッとしてあげ、頭を撫でてあげました。

  「やったでチュ!」

  「はい……!おかげさまで二人目を取り返せました……っ。」

  でもまだ2人目で、残るは5人とモグリーナさんにモグラーニャさんが待ってるんですよね。

  皆さんの為にもまだまだ頑張らないといけません。

  「さて、次はまた森ですね……っ。ん?」

  「ぼくもいっていーい?」「えっ?」

  休んでいる暇はないとばかりに、次の場所へと向かおうとすると水色モグラさんがわたしの尻尾に抱きついてきました。

  そして、続くように赤モグラさんや子ネヂミちゃんも寄り添ってきて。

  「わたしもいくー。」

  「らびっぴにはあたちがひつよーでチュっ。」

  「皆さん……。ありがとうございますっ///」

  寄り添ってきた三人をまとめてギュッとしながら、皆さんの温もりを感じたわたし。

  もう、わたしには怖いものはないです……!

  「では行きましょう……!」

  「「はーい!」」「でチュ!」

  浜辺を後にし、次のエリアの方を向くとそのまま森へと向かいました。

  [newpage]

  最初のエリア以来の森みたいですが、何だかわたしにとってどこか懐かしい雰囲気がします。

  きっと、わたしの生まれ育った森やかつてわたしが居た場所に似ているからかもしれません。

  「看板がありますね……。」

  「チュ?フンドーン?」

  今までと同じく入口には看板があり、辺りはじんべえらしき銅像で囲まれていて何だか怖いです。

  子ネヂミちゃんが先に看板を覗くと、そこにはフンドーンさんの写真と台詞が書かれていました。

  『うらぁー!俺はフンドーンじゃ!

  楽しくっても、かかってこんかい!

  つまんなくっても、かかってこんかい!

  うらぁ!どりゃぁ!ぶんしんじゃぁ!

  待ってるよ。』

  えっと、最後だけ何だか違う人な気が……って、そんな事を思ってる場合じゃないですね。

  とりあえず、わたし達は最初のお部屋へと入りました。

  「これは、フンドウでしょうか……。」

  今でも微かに当時のことを覚えている為、すぐに名前が出てきました。

  確か、重いんでしたっけ……。

  「さっきのフンドーンとおんなじかたちでチュね。」

  「ふんどーん!」「おっきいねー。」

  子ネヂミちゃん達が[[rb:分銅 > ふんどう]]を眺めている中、わたしはすぐ側に立ててある看板を見つけました。

  『-重いぞ!-

  これは、押すことはできるが、

  引く事は出来ないのじゃ。

  押してもだめなら、あきらめな。』

  あ、諦めなって……もはやヒントではないじゃないですか。

  でも引く事は出来ないって、もし閉じ込められたらわたしは一生出られないってことになったりするんでしょうか?

  「んぬぬぬっ……!ハァッ、あたちではムリでチュ~。」

  「えー!じゃあぼくたちもだめ?」「わたしもー?」

  子ネヂミちゃんが必死に押そうとしていましたが、どうやらわたししか押せないのは間違いないみたいです。

  なので、モグラーニャさんとの特訓で鍛えた体を発揮して……。

  「じゃぁ、わたしが……っ。んんっ!」

  肩の力を抜いて分銅に手を掛けると、全身で押すように前へ。

  すると、何とか分銅が前へと動いで通れるようになりました。

  「良かった、動きました……!」

  「さすがラビッピでチュ!」「パパのおかげだねー!」

  「はい……っ。モグラーニャさん、いつもありがとうございます……っ///」

  「かおまっかでチュよ?」「ぇっ!?そ、そんなこと、ないです……///」

  モグラーニャさんの事を思うと、顔に出ちゃうのは相変わらずみたいです。

  だって、わたしにとって憧れの存在ですから……///

  「これでとおれるようになったでチュねっ。」

  「はいっ、……って、ウニチクさん?」

  分銅に隠れて見えませんでしたが、向こう側ではウニチクさんが身動き取れなくなっていました。

  ちなみにウニチクさんは、一見トゲのようなものを身に着けている鉄球のような姿をしていますが、喋らないけれどちゃんと生きていますよ。

  「わわわ、ごめんなさい……っ。でもこれで自由に動けるようになります……!」

  分銅に閉じ込められてその場に留まっているウニチクさんの姿を見ると、すぐそばにあった黒い球へと移動し、そこからゴールの壁へと思い切り蹴りました。

  壁が壊れると、ウニチクさんを閉じ込めていた分銅が消えましたが……。

  「じゆーどころかきえちゃったでチュねっ。」

  「あの人達と同じ存在だったみたいです……。」

  アジラさん達とは違って普段お会いする事が全くと言って良い程ないですが、時々何処かにふっと現れたりするという噂を聞いた事があります。

  なんだか、不思議な方です。

  「とりあえず、どんどん行きましょう……!」

  「そうでチュね!」「「わーい!」」

  一つ目のお部屋を済ませた所で、このままの調子で次へと向かう事に。

  しかし、この時のわたしはまだ……ウニチクさん以上にまさかの出会いが待っている事を知りませんでした。

  [newpage]

  次の部屋へ入ると、辺りは木々に囲まれていて迷路のようになっていました。

  あれ、ここってもしかして……。

  「なんだかさっきとふんいきかわったでチュね。」

  「くらいのこわーい……。」「ぼくはへいきー!ね、らびっぴねーたん?」

  わたしは、ふと嫌な予感がしたので少しの間その場で立ち止まっていました。

  不思議そうにわたしを見上げる子ネヂミちゃん達の視線にも気づかずに。

  ただ、水色モグラさんは先へと行こうとして……。

  「んー?あれ、らびっぴねーたん?」

  そんな水色モグラさんを追いかける子ネヂミちゃんでしたが、水色モグラさんはある姿を見つけると、わたしとその姿を見比べるようにキョロキョロとしていました。

  「モグラくん?……チュ?ラビッピ?でもラビッピは……どっ、どーゆーコトでチュ?」

  子ネヂミちゃんと水色モグラさんが妙な反応をしているのが気になり、わたしは恐る恐る水色モグラさんの元へと向かいました。

  ただ、その目の前には……わ、わたし……?

  「らびっぴねーたんがふたりいるー!」

  「あれ、ほんとだー!」

  「チュ?ラビッピ、どーしたんでチュ?」

  「……どうして……わたし……が……。」

  わたしは、自分そっくりの姿をしたウサギを目にすると、もう思い出したくないはずの記憶が蘇ってくると共にその場に倒れ込みました──。