【2/15最新話】イケ渋なケモおっさん神様といちゃラブハーレムするお話(7-9)【ケモホモ】
7
この部屋を出るのは、昨日で二度目だ。
あの時は周囲を見渡す余裕もなかったが、本当に大きな城だ。窓の向こうを見れば、自分がいた部屋がどれだけ高い位置にあったのかを思い知らされる。
遠くに見える海は、今日も透き通ったように蒼かった。
自分は、あの向こう側から来た。その曖昧な記憶だけが、確かな事実として脳裏に刻まれている。
対岸の先へと吸い込まれそうになる視線を誤魔化すように、俺は目の前の大きな背中へと目を向けた。
聞けば、この城には大浴場があるらしい。
一緒に風呂に入ると聞いて、昨日俺が入浴した備え付けの浴室のことを指していると思っていたら、どうやらそうではないらしい。大きな黒い尻尾を揺らせながら、目の前の狼はそう否定した。
「まぁ…あの風呂もいいがな。折角お前さんと初めて一緒に風呂に入るんだ。どうせなら、広い方がいいだろう?」
黄金色の瞳を輝かせながら、彼はそう言葉を続けた。
「それに、今朝はお前さんの為に特別な薬草と湯薬をこしらえておいた。…昨日の今日だ。お前さんも、正直疲れとるだろ?」
俺の体を気遣うように、彼は笑う。
何もかもを見透かすようなその言葉に、俺は何も否定することができなかった。
「…すまない、その…気を遣わせてしまって…」
「…何を言っとるんだ。お前さんのケアをするのも、副神の立派な役目だ。俺はお前さんの幸せを守ることに、誇りと生きがいを持っている。…お前さんはただ、それを素直に受け取って、ただ…笑ってくれればいい。それが、俺達副神に対する最大の誉れと褒美だ」
俺の頭を撫でながら、彼はそう微笑みかけた。
眼帯をしていない片方の瞳が、優しく細められる。
雄々しくも固い指先が、しなやかに髪の毛の間をすり抜けた。
「ルーカス…」
「…やっと俺のことを名前で呼んでくれたな、坊主」
待ちわびたかのように、彼はそう声色を明るくさせた。
「言っただろう? 俺は、お前さんだけのハニーだ。ガルディアにはまだ気を遣ったかもしれんが、俺にはその必要はない。…それを今日は、お前さんに嫌と言うほど教えてやるとしよう。甘々に、頭から脚の先まで蕩けるほどにな」
耳元で、彼は甘くその声を囁く。
見上げれば、その瞳は何かを含ませるように笑いかけていた。どこか嬉しそうに、目の前の狼はその頬をはにかませる。
満足げに振られた大きな尻尾が、どこか無邪気にその感情を表していた。
「っとその前に…まずはあいつらを紹介してやらんとな。この時間なら、皆食堂にいるだろう。…お前さんとのラブラブでエッちぃ湯浴みはその後だ」
大きな背中越しに、彼はそう言葉を続けた。
彼の歩く歩幅に遅れを取らないよう、目の前の黒い毛並みを追い続ける。歩き始めてそれほど時間は経たなかっただろう。大きな扉を目の前に、彼はその足並みを止めた。
「ここだ」
俺の顔を見下ろすように、彼はそう声をかける。
見上げれば、黒い狼がその眼差しを一心に俺の方へと向けていた。
「…怖いか? 坊主」
小さな声で、彼はそう俺に耳打ちをした。
駄目だ。
何もかもを読まれてしまっている。
「少し、な。だが…緊張しているだけだと思う」
「…そうか。そう身構えんでも、皆心底いい奴だ。…皆、お前さんのことを歓迎している」
俺を安心させるように、彼はそう俺の耳元で囁いた。
「それに…もし怖くなったら、俺の指先を握りしめてくれ。お前さんの意図が悟られぬよう、皆からお前さんを遠ざけることを約束しよう。…何、中にはガルディアもいる。お前さんが思っているほど、あいつらもケダモノではないぞ」
目を向ければ、優しく彼が俺に微笑みかけている。
吸い込んだ息が、少しだけ痛かった。
「それじゃ、開けるぞ」
一瞬だけの暇が、吐き出した息を詰まらせる。
俺の背中を押すように、彼は目の前の扉を開けた。
「…良かった。皆、揃っとるな。…坊主、こいつらがお前さん専属の護衛達だ」
豪快に、彼はそう笑って声を続けた。
彼の背中に隠れるようにして見えたのは、まさしく食堂と言うに相応しい光景だった。大きな長テーブルに椅子、そして奥に見える厨房であるであろうカウンター。目の前のテーブルに、昨日会ったはずの彼等が腰をかけている。
橙色の獅子に、焦げ茶色の大きな熊。そして昨夜愛し合ったはずの、あの蒼い虎。
ガルディアだ。
怯えた俺を励ますように、そのエメラルド色の瞳を俺に投げかけてくれた。
「そうか。あんたはもう、ガルと昨日会っているのか」
先に口を開いたのは、橙色をした獅子だった。
気高くも、凜々しい。野性的な渋さの中に、王者としての余裕と切なげな優しさが隠れている。
威厳たる重みと風格を漂わせる佇まいだった。琥珀色をしたその瞳が、俺にだけ穏やかにさせるように彼は微笑む。
「…エイベルだ。エイベル・テスティファイ。皆俺のことを、エイベルか、テスと呼んでいる。よろしくな、マスター」
大きな手の平が、目の前へと差し出される。
橙色に光る鬣が、優雅に揺れた。山吹色をしたその衣装に、よく似合う。
「ほら見ろテス。お前のせいでご主人が怖がってるじゃねぇか。 可愛そうによ…こんなにも震えちまって」
そう隣から顔を出してきたのは、茶色の熊だった。
彼等の中でも、随を抜いて体格が大きい。胴回りもそうだが、その両腕に太もも、首回りまでもが太い丸太のようだった。
古い木目調のような焦げ茶色の毛並みの中で、明るいミルクチョコレート色の瞳が煌めいている。どこか可愛らしい、優しくも穏やかな瞳だった。その瞳の奥に感じる深い慈悲めいた落ち着きに、心が、奪われる。
「…冗談は止めろ、ドクター。どう見てもお前を怖がって震えているんだろ?」
「俺は愛されキャラを通してんだよ、お前と違ってな。この愛くるしいわがままボディが目に入らねぇのか? なぁ、ガル」
意味ありげに、目の前の熊はガルディアにその目線を投げかける。
昨夜愛し合ったはずのあの蒼い虎は、両腕を組んだまま大きくため息をついた。
「…俺に振るな。お前もテスも、ルーもそれなりに威圧的だ。彼が怯えても仕方ない」
「…だそうだ」
不敵な笑みを浮かべながら、獅子はその熊へと目線を投げかける。
彼が両腕を挙げたのは、それから数秒経ってからだった。
「…ま、時間はたっぷりある。俺とテスどっちが怖かったのか、ご主人にはちゃんと聞かねぇとな」
そう言って、目の前の熊はおもむろに立ち上がった。
俺よりも、頭三つは大きい背丈だ。深緑色をしたその衣装が、緩やかに揺れる。
「…すまねぇ。本当は、もっと安心して欲しかったんだけどよ。…上手くいかなかったな」
どこかバツが悪そうに、彼は笑う。
見上げたその瞳は、優しくその目尻を細めていた。
「アイザックだ」
手を差し伸べながら、彼はそう言葉を続けた。
「アイザック・グレイヴス。こいつらは俺のことを、ドクターと呼んでいる。…よろしくな、ご主人」
差し出されたその手の平を、恐る恐る握り返す。
ただそれだけで、目の前の熊は嬉しそうに笑った。穏やかな温もりが、皮膚を通り越して骨の奥までも伝わる。
なぜか、目尻が急に熱くなった。
「…な。皆存外にいい奴だっただろ?」
耳元で、ルーカスがそう囁く。
見上げた先には、どこか満更でもなく微笑んでいる黒い狼がいた。眼帯越しに、その表情が手に取るように分かる。
「じゃあ顔合わせはこの辺にしといて…だな。俺と坊主は、これから湯浴みだ。…覗くなよ?」
「誰が覗くか。…なぁ、ご主人。もしこのエロ親父に何かされたら、すぐに声を上げるんだぞ。俺達がこのセクハラ野郎を懲らしめてやるからよ。…な?」
「…俺もそれには賛同だ。怖くなったら…すぐに俺達に助けを求めてくれ。俺もドクターも…ガルもそれなりに脚は速い。何かあったら、すぐに逃げるんだ。いいな?」
小声で耳を打つように、目の前の熊と獅子はそう言葉を続ける。
眼光に切迫する何かを感じるのは、冗談か何かなのだろうか?
「…おい、お前ら…揃いも揃って坊主に何吹き込んでやがんだ!? 俺の坊主が怖がっちまうだろう?」
大げさに、目の前の狼は俺を後ろから抱き寄せる。
柔らかな毛並みが、全身を包み込んだ。その優しい胸の鼓動に、心が躍る。
微かに、甘いガーベラのような香りがした。
「一体俺のどこがアブねぇっていうんだ…なぁ、坊主。ほら、お前らのせいで坊主が震えちまってるだろう? 怖かったよなぁ、坊主…よしよし、お前さんだけのハニーが、こいつらから守ってやるからな。さ、二人っきりで湯浴みに行こうな? 大丈夫だ、お前さんだけのハニーが――」
「…そういう所じゃないのか?」
ガルディアの的確な指摘が、数秒だけの沈黙を張り詰めさせる。
それから皆が腹を抱えるようにして笑い始めたのは、それから暫くしてからのことだった。
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8
食堂を出た俺達は、当初の目的に戻り始めていた。
隣にいる黒い狼は、どこか不機嫌そうだ。どうやらさっきのやりとりがどうにも納得できていないらしい。そんな彼の喜怒哀楽豊かな表情を見て、どこか可笑しく思う自分がいた。
漆黒に揺れる彼の衣装は、彼の大きな尻尾に釣られどこか大人しめだ。
さっきまでの興奮したような大型犬のような反応が、どこか嘘のようだった。
「すまんなぁ、坊主」
「え?」
「あ、いや…お前さんを安心させたかったんだがな。…逆効果だったか?」
恐る恐る、怯えたように彼はそう俺に問いかける。
そんな彼の優しさが、なぜか可笑しかった。
「何を言うんだ。そんなことはない」
「…そうか?」
「あぁ。…ありがとう、ルーカス。皆と会えて…俺も安心した」
「そ、そうか」
その言葉を境に、背後の尻尾が大げさに左右へと振られる。
眼帯越しでも分かる程、彼は照れているようだ。指先でポリポリと頬を掻くその姿は、どこかウブにも見える。
「着いたぞ、坊主」
彼のその声に、俺は思わず息を飲む。
辿りついた大浴場は、圧巻の一言だった。
大理石のような滑らかな石面を切り取り、それでいて純白を思わせる内装が太陽の光を反射させている。見上げれば、空を切り取ったように天井はガラス張りだった。外の方へと目を向ければ、露天風呂を思わせる浴室さえ微かに見える。
奥へ進めば、彼はもう目の前の戸棚からバスタオルのようなものを手に取っていた。
どうやら、ここが脱衣所らしい。
辺りを見渡す俺の反応に目を向けながら、彼は自分の服に手をかけた。
「な? なかなかなものだろ?」
服を脱ぎながら、目の前の黒い狼はそう微笑んだ。
ちょうど左肩の銀装と手甲を外し、腰に巻かれたコルセットを取り終わった所だった。黒い煌びやかなその衣装が、するりとはだける。
黒いその毛並みを浮きただせるように、胸元の白く柔らかな毛並みが目の前で露わになった。固く隆起する筋肉の凹凸に、数々の深い傷跡が体中のあちこちに残っている。
首元に揺れる銀色のドッグタグが、日光を煌めかせるようにその光を反射させた。
「…気になるか?」
俺の視線に彼も気づいたのだろうか。自身の身体に目を向けながら、彼はそう肩をすくめた。
雄々しい指先が、自身の傷跡をなぞる。
刃物で傷つけられたであろう傷跡の他に、動物のかぎ爪で抉られたであろう深い傷もそこにあった。その痛々しい傷跡へ、自然と俺は指を伸ばす。
指先が、彼の身体に触れる。
柔かな毛並みの中で、彼の呼吸が指先を通じて伝わった。
「これは…」
「まぁ…あまり褒められたもんじゃないな。今までの勲章、と言いたいところだが…全てを守り切れた訳ではないからな」
肩から胸、そして体の中心へと指先を這わせる。
柔らかな毛並みの中で、確かに隆起する筋肉の凹凸を感じた。押し返す弾力に、彼の胸の鼓動を感じる。指先が、彼の腹筋をなぞった。その時だった。ビクリと、彼の身体が微かに震える。
「なぁ、なぁ…坊主…」
「え?」
「そ、その…俺もお前さんにそうされると、抑え切れんくなる…というか、その…」
その声に、彼の顔を見上げる。
何かを耐えるように、彼はその歯を軋ませていた。天井を見上げるその瞳は、どこか切なげに左右へ泳いでいる。
視界の下で、何かが微かに脈動したのが微かに見えた。
「あ、えっと…その――」
「…すまん、その…俺も、溜まっててな。…堪忍だ、坊主。いきなり恥ずかしいところ見せてしまったな」
どこか照れたように、彼はそう頭を掻きむしる。
薄い布地を押し上げるそれは、まるで別の生き物のように震えていた。少しずつ高度を上げていくその先端に、目が奪われる。
「今日はお前さんの為に、色々工夫を凝らしたぞ。…気に入ってくれるといいんだが」
話題を誤魔化すように、彼はそう言葉を続けた。
俺に背を向け、彼は残った衣服を脱ぎ去る。大きな尻尾の毛並みの向こうで、確かに熱を帯びたそれが揺れたのが微かに見える。
胸の鼓動が、痛い位に高鳴った。
「坊主…?」
無意識だった。
目の前の背中に、俺は静かに体を預けていた。
抱きしめようと伸ばした腕が、恐る恐る彼の背中へ寄り添う。長く柔らかに逆立った毛並みが、どこまでも俺の体を吸い込んでいった。
「…すまない。その…」
声が、上手く出ない。
そんな俺を気遣うように、彼はそっと、振り向いてくれた。
俺の体を抱き寄せながら、その大きな手の平で俺の頭を優しく撫でる。
見上げたその瞳は、どこか切なげに濡れていた。
「…こらこら。お前さんとエッチぃことをするのはこれからだぞ?」
「すまない、ルーカス…その――」
「…何を言っとるんだ。愛しいお前さんが、お前さんから俺のことを求めてくれたんだぞ? …これ以上に嬉しいことはない」
誇らしげに、彼はそう笑う。優しく俺の頭を撫でていった彼の手の平が、ただ、温かかった。
満足げにその瞳を細めながら、彼は俺の服をほどいていく。しなやかに、愛撫をするように、一つ一つの布地を取り去っていくようだった。
微かに触れる雄々しい指先が、薄い皮膚の上を滑り込ませる。
欲情し始めた俺の表情を、彼は噛みしめるようにじっと見つめていた。
「ルーカス…」
「…そう恥ずかしがらんでもいい。ここにいるのは俺とお前さん…二人きりだ。…安心しろ」
囁くように、彼はそう耳元で優しく唸る。何かを含ませるように微笑みながら、彼はもう一度俺の頭を撫でた。
頭のてっぺんまで、真っ赤に染まってしまったようだ。もう少しで、勃起してしまったそれを彼に見られてしまう。そう思い下を向けば、彼のものがはち切れんばかりに天を仰いでいた。鏡のように光を反射するまで張り詰めた亀頭。微かに微動する鈴口。エラの張ったカリに少しだけかかる柔らかな包皮と、完熟したビワのように重たくズッシリとした双球。太い幹のように脈動するそれの先端から、微かに甘い蜜のような滴が垂れ落ちた。その甘美なヌメリのある潤いに、喉が、一気に渇くのを感じる。
「…こら。そうまじまじと見るでない。…恥ずかしいだろう?」
照れくさそうに彼は笑いながら、俺の耳元を優しく撫でる。
最後の一枚が、はらりと俺の体からはだけていった瞬間だった。互いに生まれたままの姿になった途端、なぜか、寂しさがこみ上げる。
ふと、彼が俺の体を抱きしめたのはその時だった。
柔らかな長い毛並みが、全身を優しく包み込む。どこまでも吸い込まれそうな、そんな温かさが俺を襲った。思わず目を細め、息を深く吐き出してしまう自分がここにいる。
彼の首すじから微かに薫る、ガーベラの香り。
なぜか酷く、狂おしい程に懐かしかった。
「ずっと…お前さんとこうするのを、夢見ていた」
切なげに、彼は俺の耳元でそう囁いた。そしてその大きな手の平が、俺のいきり立ったそれを優しく包み込む。
腰が砕けるような快感が、背筋を轟かせた。
しなやかに、愛撫するように彼はそれをしごきあげる。たまらず俺は、彼のモノを同じように握りしめた。
手の平いっぱいに伝わる、柔らかくも弾力のある肉質。熱く、煮えたぎるような固さの中で、確かなヌメリを感じる。
ピクリと、それが弾けた。その時だった。
「…そう焦るな。続きはちゃんと…湯船の中でしてやる」
俺を制するように、彼は俺の手首を優しく握りしめる。
見上げれば、彼は俺を愛おしそうに見つめていた。黄金色の瞳と、眼帯に隠れた片方の瞳が、優しく俺を射貫いている。
ふと、彼が俺の耳元を撫でたのはその時だった。
その切なさを孕んだ指使いに、心が、奪われる。
「…まずは、お前さんと湯浴みをして…ちゃんと俺の魔力を提供してからだ。最初からガッつくと魔力酔いを起こすぞ?」
からかうように彼は笑うと、俺の背後から大きな布地を手に取った。
タオルケットに似たそれを俺と彼の体へと羽織わせると、優しく彼は俺の肩を抱いた。さっきまで疼いていた寂しさも、火照ったように乾いた胸の痛みも、すっと和らいでいくのが感じる。
ただその柔らかな温もりが、全身を満たしてくれるようだった。
「すまない、その…はしたない所を見せてしまって…」
「何を言うんだ。お前さんが俺に、こんなにもエッチく甘えてくれたんだぞ? これ以上の誉れはない」
豪快に、彼は笑う。
そのどこか懐かしい声に、なぜか、俺は胸の奥がざわつき始めているのを感じた。
ポッカリと空いてしまったような、何かが足下をすくませる。
その感覚がなぜか、俺はどうしようもなく怖かった。
「…さ、行こうか…坊主。お前さんと、記念すべき初の湯浴みだ」
手の平を握りしめながら、彼はそう俺に笑いかけた。
俺よりも、二回り以上大きい。そんなゴツゴツとした雄々しい指先が、柔らかく俺の手を包み込む。
その指先にしがみつくように、俺は懸命にそれを握りしめた。
[newpage]
9
彼が案内した浴場は、圧巻の一言だった。
柔らかく立ちこめる湯気の中に、いくつもの甘い花の香りがする。湯船を見れば、透き通った淡い黄色に染まっていた。少しとろみのある滑らかな水面に、いくつもの花が浮かんでいる。
息を吸い込めば、胸一杯に花畑が広がるようだ。
足先から、指の先まで、芯のある温もりが体を解きほぐしていく。今までのこわばりも、緊張も、全てを洗い流してくれるようだった。肌に吸い付くとろみのある感触が、心までも溶かしだしていく。
「…な。なかなかにいい湯加減だろ?」
隣にいる黒い狼が、ふと俺に笑いかける。
三角の大きな耳を寝せたままその瞳を細める彼も、この湯船に骨抜きになっているようだった。
「…あぁ。ここまでとは…思っていなかった」
「…そうか。お前さんが喜んでくれたなら、俺も光栄だ。いつでも俺に言えば、お前さんの為に特別に湯薬をこしらえてやる。もちろん、お前さんのその日の体調に合わせてな」
彼の低く雄々しい声が、浴室の中に木霊する。
辺りを包み込む水の音が、なぜか俺を癒やしてくれた。この場所に俺と彼しかいないという事実が、どうしてか心を落ち着かせる。
「薬草も湯薬も、ドクターが栽培したハーブから作っている。あいつは薬として調合しているが、俺は風呂や料理、茶に転用して使用するのが多くてな。風呂を出たら飯にしよう。…俺がお前さんに、特別な朝食を作ってやるぞ」
彼の指先が、俺の頬を触れる。
濡れた彼の指先が、心をときめかせた。
「飯って、もしかして――」
「あぁ。この城で出す料理は、全部俺が作っている。…なんだ坊主。お前さん、気づかなかったのか?」
可笑しそうに、彼は笑った。
「ホントは、昨日お前さんの目の前で作ってやりたかったんだが…お前さんも昨日目覚めたばかりだったからな。今日はお前さんが喜んでくれるよう、この腕を振るって旨い飯をお前さんに喰わせてやろう。…案ずるな。坊主の好みはちゃんと把握している。お前さんが気を遣わんでも、必ずその頬が舌鼓するのを約束しよう」
自慢げに語るその瞳は、揺らぎ無い自信に満ちあふれていた。
黄金色をしたその瞳が、朝日に反射して輝いている。その瞳が、ただ綺麗だった。
まるで、朝焼けの太陽のようだ。静かにその光を放ちながらも、その奥は深く、熱い熱を轟々とたぎらせている。
彼の首元を揺れる銀色のドックタグに、湯船の滴が滴り落ちた。
「…っと、その前に…お前さんと軽い運動をせんとな」
大きな音を立てて、湯船が波立った。
立ち上がった彼の巨体が、俺の背後へと回る。
「…坊主。ちょいとここらで、俺からお前さんに魔力を提供しておこう。お前さんも…そろそろ俺とラブラブでえっちぃ運動をしときたいだろ?」
悪戯っぽく、彼は笑う。
背後から俺を抱き寄せる雄々しい腕が、ゆっくりと包み込んだ。
「軽い運動か?」
「…冗談だ。湯船は魔力の伝導率も高い。少しずつお前さんに俺の魔力を流し込んでいくから、具合が悪くなったらすぐに言うんだぞ…坊主。お前さんとは初めてヤルんだ。…がっつくなよ?」
耳元で囁くその甘い声が、鼓膜の奥までもを痺れさせた。
彼の体が、ゆっくりと俺を抱きしめる。後ろから回り込んだ彼の手の平が、俺の指先を握り締めた。固く、雄々しくも大きいその手の平に、心が奪われる。
彼の胸が、ふと息を吸い込んだ瞬間。
俺の体に、それは静かに流れ込んできた。
さらりとした、水のような透き通った感覚。それが骨の髄までを解きほぐすように、静かに俺の中へと入り込んでいく。山のせせらぎを流れる、澄んだ雪解け水のようだった。その優しくも透き通った熱に、魂が、ほころぶ。
「…どうだ? 気に入ったか?」
「あ、あぁ…これが――」
「あぁ。俺の魔力だ。ガルのとは全然違うだろ? こうして手を固く繋ぎ合わせれば…よく感じるはずだ」
湯船の中で握り締められた指先に、彼の鼓動を強く感じる。
絡みつく指先が、心までもを繋ぎ止めてくれるようだった。
「どうだ? 目眩や動悸はないか? 吐き気は…」
「大丈夫だ。それより…」
大きく吸い込んだ息が、花の香りと彼の温もりで満たされる。
やっぱりだ。
彼の身体から香るガーベラの香りが、酷く懐かしい。
「…もっと、欲しい」
「ぼ、坊主?」
「すまない、ルーカス…もう――」
俺はそれだけを告げると、目の前のマズルへと唇を重ね合わせた。
彼の温もりを、体温を、直接感じる。
血の中へと絡みつく粘液は、ただ、優しかった。俺を愛おしむように、傷つけないように、慈しみに溢れているのが分かる。
湯船の音が、辺りに響き渡った。
抱き寄せる身体が、熱い。俺の背中で、何か固いモノがあったような気がした。それが火傷しそうな熱を持ちながら、力強く脈打っている。
さっき、脱衣所で見た。ルーカスのモノだった。それが今にもはち切れんばかりに、トロリとした粘液をその鈴口から滴らせている。
胸が、高鳴った。
「…坊主。…いいか?」
眼帯越しに、切なげな眼差しがそう俺に問いかける。
俺は無言のまま頷くと、彼の厚い胸板に身体を埋めた。
「っぁ…っは…」
大きな手の平が、優しく俺のモノを包み込む。
愛おしむように、彼はその場所をゆっくりと上下にしごき上げ始めた。俺のモノへと伝わる彼の魔力と、ゴツゴツとした指先が絡みつく甘い快感が、俺の背筋を痺れさせる。
限界まで張り詰めた俺の亀頭に、俺の粘液がしみ始めたのを感じた。
静かに、浴室の中に水気を帯びたその音が段々とその音量を増していく。蕩けるように見上げれば、優しい彼の瞳がジッと俺を見つめていた。眼帯越しに、その黄金色をした瞳を細めている。
「…気持ちいいか、坊主…」
甘く、かしゃがれた声だった。
それが、俺の反応を伺うように問いかける。
俺は顔を赤くしたまま、彼の胸の中へと顔を埋めた。目をぎゅっと閉じたまま、彼に頷いて見せる。
大きな手の平が、俺の頭を優しく撫でた。
「…そうか」
嬉しそうに、目の前の狼は笑う。
彼は俺の頭を引き寄せると、雄々しく俺の唇を塞いでいった。
さっきとは違う。快感を求めるような、獲物を貪るような舌使いだ。その雄々しさと渋さに、興奮が高鳴る。
俺は彼に口内を犯されながら、自分の手を彼のモノへと伸ばした。細い俺の指先が、今にも爆発しそうなソレに触れる。
彼のモノを、握り締めた瞬間。ビクリと、彼の巨体が震えた。
俺の指に、甘くも冷たい粘液が絡みついていく。
白く泡立ちながら、それは俺の手の平を汚していった。
「っは…っは…ぼう、ず…」
トロンとしたその眼差しが、俺を見つめる。
俺達はそのまま、思いっきり互いのモノをしごき合った。彼の指先の動きが、段々と速くなる。一気に上り詰める快感に、俺は思わず彼の身体へと抱きついた。
湯船の音が、激しくその波を立てる。
熱い濁流のような快感が、俺の下腹部からせせり上がった。
「い、イク…い…っぁ、ぁあ!! っっぁ――」
弧を描きながら、それは噴き上がった。
白い粘液が、彼の黒い毛並みをした指先をいやらしく染める。
余りにも強い快感に、俺の指先が彼の亀頭を強く抉った。
その時だった。
「だ、駄目だ!! 坊主!! お、俺も…い、イグ…がぁ!! ぁああ!!」
ブシャリと音を立てて、彼は射精した。
黄色い、痰の塊のような。とても濃い精液だった。それが、彼の胸板をビシャビシャと汚していく。
甘い香りが、辺りに漂った。それが温かくもしっとりとした湯船の湯気に包まれて、柔らかく彼の匂いで染め上げられていく。ゼリー質の塊が、パックリと開いた彼の鈴口からあふれ出ているようだった。ゆっくりとしごき上げる度に、俺の指先に固いゼリー質のそれが絡みついていくのを感じる。
「坊主…」
切なげな眼差しが、俺を射貫く。
俺達は何も言わないまま、もう一度唇を重ね合わせた。
甘く、とろけるような口づけだ。その舌使いに、心まで溶かし出されてしまいそうになる。
「…一回、背中を流さんとな。…坊主」
冗談を言うように、彼は俺に微笑みかける。
彼はそのまま俺を抱き寄せると、自分の胸板に俺の頭を押さえつけた。大きなその手の平で、俺の頭を撫でる。
彼の胸板からは、優しい彼の心音が確かに聞こえた。