虎狼シ合い

  『溜まってる』

  

  ポケットに入れていた携帯が振動した瞬間、茹だるような夏の正午の暑さもおかまいなしに、俺は飼い犬の様に尻尾を振った。

  友人の虎獣人のメールの文面はいつも素っ気なく色気ない。今回も御多分に漏れず、ただ溜まっているという事実を述べただけのものだった。

  

  なし崩し的に始めたモテない野郎同士のセックスが、全ての始まりだった。

  アナニーで乱れるために使っていたディルドを、洗面台に置きっぱなしにしていたのが遊びに来ていた虎の目に留まってしまい、狼藉していたところに虎から好奇心混じりのセックスに誘われたのだ。

  友人同士でそんなことを、なんて一度は断ったものの、目の前に蒸れた上反り勃起チンポを出されるとその思いはすぐに打ち砕かれ、吸い寄せられるように俺はチンポを吸ってしまった。初めてしゃぶるチンポの味は存外に美味しくて、熱くて、固くて、これをケツに挿れられたらディルドなんて目じゃないほどに気持ちが良いんだろうと確信していた。

  前戯は程々にすぐにケツを解して挿れてもらうと、おおよそ一人では経験しようのない強い快感が襲った。ケツを突かれる度に普段では漏らさない喘ぎ声が漏れ出し、ごりごりと前立腺を突かれる度に意識が飛びそうになった。そうして何度も何度も犯される度に、俺は生チンポの虜になっていった。

  友人としての付き合いも、互いに性欲を発散しあう関係も、もうそれなりに長いが未だに飽きることなんて無い。それどころか、回数を増すごとにどんどんと次が楽しみになってしまうくらいだ。

  

  『りょーかい。どっちの家でヤる?』

  

  また濃ゆいザーメンを俺の中に注ぎ込んでくれると想像するだけで、俺は外を歩いているにも関わらず勃起してしまう。

  表では平静を装いつつも、既に頭はこれから執り行われる艶事のことでいっぱいだ。セックスが出来る期待と愉楽で、自然と歩調が早まってしまう。

  ズボンを軽く膨らませながら尻尾をぶんぶんと振り、薄ら笑いを浮かべながら早足で歩く狼は、端から見たら完全に事案の対象だろう。周囲に人が居ないから、こうも興奮をオープンにしているだけで、普段人混みの中でメールが来た時は至って自然に振舞っている。

  

  『お前ん家。ケツ洗って待ってろ』

  

  画面が点いたままに、矢継ぎ早に来るメッセージ。ああ、もうすぐケツにチンポをぶち込んでもらえる。ケツを洗っておけ、と具体的に言われるだけで現実感はさらに増し、俺の中の雌を強制的に疼かせていく。

  この後の予定なんてもう考えられない。全て投げ打ってセックスに明け暮れたいという欲求が俺を掻き立てて、そうして踵を返させる。少しくらい昼飯を抜いたところで、夏バテになんてならないだろう。飯よりもずっと美味しいモノが貰えるんだから。

  

  『分かった、早く来てくれよな』

  

  そうと決まればもう話は早い。急いで家に帰ってさっさとケツを洗っておかないと。前戯からのそのままの流れでぶち込まれないと興が殺げてしまう。

  最高に昂ぶっている状態で直ぐに挿れてもらうのが、俺にとっては至上の悦びなのだ。理性が吹っ飛んだケダモノらしい交尾は、アナルを壊してしまうほどに激しく、そして思考を破壊してしまうほどの快感を与えてくれるのだ。

  下着に染みた汗とはまた別の、少しだけ冷たい感覚が下腹部に貼りつくように走る。俺の逸る気持ちをそのまま表しているように滔々と溢れ出てくる我慢汁は、下着を易々と濡らして薄手のズボンの表面にすら滲んできてしまいそう。

  もしこの姿を誰かに見られたりでもしたら。そう思うとふやけた脳は少しだけ機能を取り戻し、俺の脚をより速く動かしていく。そうして、誰にもこの痴態を見られることはなく、気付けば自宅の前に到着していた。さて、今日も奴のチンポを味わうとするか。

  

  

  それからきっかり二十分後に、ノックもせず無遠慮に俺の家の玄関を開ける音が聞こえた。既に洗い終わり、虎の太さとちょうど同じくらいのプラグを挿れ、ベッドに腰掛けながら心臓を高鳴らせていた俺にとって、その音は福音だった。

  普通の状態であれば怒るところだが、待ち侘びていた虎のチンポが貰えると思うと怒るに怒れない。それどころか、感謝すら覚えてしまうほどには[[rb:来 > きた]]る快楽を甘んじて受け入れようとしていた。

  

  「ノックぐらいしろよ、バカ」

  

  それでも口から出す言葉は、虎が来る前から乱れていることを悟られないようにと棘を生やさせ武装する。尤も、興奮で上擦った声でそう言っても、虎には俺の胸中など透けて見えているのだろうが。

  

  「どうせ俺しかこんなクソ暑い時にわざわざお前ん家なんて来ねえだろ。……洗ってるよな?」

  「あ、ああ……」

  

  汗を浮かべた虎の匂いは、脳を揺さぶるほどに暴力的なフェロモンを放っていて、それに直に当てられた俺は虎のセックスへと誘う言葉を吐かれると、直ぐに肯定をしてしまう。汗臭い、と形容するよりも雄臭い、と形容するほうが適した、虎からの不快感を伴わぬ嗅覚への陵辱に、俺はただ屈することしか出来ない。

  それと同時に、暑さで蕩けていた脳が、熱さでより融かされていって、俺はもう虎のチンポをしゃぶることと、ケツにチンポを入れてもらうことしか考えられなくなっていた。

  取り憑かれたかのように俺は虎の目の前に跪いて、虎のベルトを外してズボンをずり下ろす。安物のパンツの下でも、臨戦態勢に入っていなくてももっこりと己の存在を主張する虎のチンポは美味そうな匂いを放っていた。ぐにゅりと鼻先を押し付けて、俺はこの耽美な匂いを独り占めする。

  ああ、雄臭え。だけども虎に五感の全てを掌握されている俺にとっては、この蒸れた雄臭さですらもまるで麝香のような芳しい香りに脳内で変換されてしまう。呼吸をする度に虎の臭いでフィルタされた空気が肺を満たしていくのが、嬉しくてたまらない。

  パンツだけでこんなにくらくらしちまうほどの臭いなら、その中に包まれているチンポや会陰部の、パンツの柔軟剤の香りを取っ払った臭いなど、さらに雄臭えに違いない。想像するだけで俺のチンポは限界と言わんばかりにがちがちに張り詰めてしまう。

  鼻先の感触が柔らかいものから固くなっていくまでに、そう時間はかからなかった。雄筒に突っ撥ねられて鼻先を埋めることが叶わなくなって、匂いが強く味わえない。

  俺の倒錯的な欲望を発散すべく、俺は虎のパンツのゴムに手をかける。だけどもその手を下げようとした時に払い除けられ、じんわりと先走りが滲み出ている、チンポの先端の部分を俺の鼻先にもう一度押し付けて挑発的に口端を上げるだけ。我慢できないと抗議するように再度手を掛けるが、それ以上を許されることはなく、パンツの表面を地を這う虫のようになぞって嗅ぐことしか出来ない。

  

  「あ、ああぁあ……じ、直で嗅がさせてくれよおおっ!! 我慢なんて、出来ねえんだよ……!」

  

  俺の必死の懇願も奴には届かない。ゆっくりと押し付けられたチンポは俺の鼻先から離されて、扇情的に糸を引いていく。切れるのが勿体無くて、俺は指でその橋を絡めとって、虎に見せつけるように淫らにしゃぶりついた。

  俺にとってはもう慣れた、だけども極上の味に感じられる先走りを舌上で余すことなく味わう。粘っこく塩辛い、虎の匂いの強いそれは、まだ咥えてすらいないのに俺の心をメスに堕としていく。

  ああ、早くしゃぶりてえ。虎の雄臭さを銜えて早く味わいてえ。

  産み出された雌心は、いっその事パンツの上からでもチンポを、玉を食んでしまいたいという欲求を暴れさせる。でもそんな事をしたら、俺の唾液の臭いで虎自身が持つ臭いが上書きされてしまう。俺はまだ虎の臭いを余すことなく堪能できていないのに。

  逸る欲求がせめぎ合って、頭がおかしくなりそうだ。尤も、チンポと臭いのことしか考えられないから、もう既におかしくなっているのかもしれないが。

  

  「な、なあ……お願いだ! 早く……早く、嗅がせてくれよおお! 限界、なんだよ……!!」

  

  精一杯の二度目のおねだり。馬鹿になっちまった頭は思考することを放棄して、ただただ嗅ぐことだけを求める。

  

  「……仕方ねえな」

  

  その言葉を聞いた時、俺はどんな下卑た笑みを浮かべたのだろうか。虎の手がパンツのゴムにかかり、ゆっくりと焦らすように下ろしていく様を、俺はオオカミのくせに待てを食らったイヌのようにじっと見つめる。

  じわじわと虎の手によってパンツは降ろされていき、徐々に太いチンポの根本が露呈していく。それと同時に、蒸れた匂いが一層強くなって、俺の鼻腔はその匂いを少しでも深く味わおうと、無意識にひくひくと動いてしまう。

  亀頭が見えるか見えないかのぎりぎりの位置にパンツを下げた後、虎は腹にぐっと力を入れて、より硬くチンポを勃たせた。まるで射精する直前のように膨らんだ亀頭は、パンツをいとも簡単にずり下げる。そうして窮屈なパンツから解放された虎のブツは、反動でびんと反り返った。

  ごくり、と喉に生唾が流れていくのを、俺は抑えることが出来ない。ああ、こんな時に口の中が乾いたら、フェラがあまり気持ちよくなくなっちまうのに。

  慌てて唾液を出そうとしたその瞬間、頭を掴まれて一気に俺の口の中にチンポを突っ込んでくる。口から鼻へと通り抜ける匂いは求めていたまさにそのものであり、同時に我慢汁の塩辛さが俺の味覚を蹂躙した。

  それだけで、すぐに咥内が唾液で潤ってきて、虎のチンポを受け入れるための一種の性器であることを思い知らされる。だけどそれでもいい、気持ちよければなんだっていい。咥内をチンポが出入りするだけなのに、俺は興奮を覚えて床を先走りで濡らす。

  

  「がっ……く、やっぱお前の口マンは気持ちいいな」

  「ん゛、うむ、え、ひんほっ……んえ」

  

  虎のチンポが美味いということを伝えようにも、喋ろうとしても口をいっぱいにするほどの巨根が出入りしているものだから、言葉を口にするのもままならない。

  チンポが喉奥まで当たってえづきそうになりながらも、美酒を舌上で転がすのと同じように、俺は舌を亀頭や竿に絡みつかせていく。虎はより気持ちよくなれるし、俺はより虎のチンポを味わうことが出来る、この上なく両得な行動。

  がぽがぽと虎が腰を振る度に音が鳴り、ぴちゃぴちゃと俺が舌を動かす度にまた音が鳴る。そんな淫靡なデュエットは、俺達の心を燃え上がらせるには充分すぎるほどだった。

  挿していたプラグをケツから抜いて、名残惜しくもチンポを口から開放して、俺はベッドになおって股を開く。たっぷりとプラグに塗っていたローションは腸内ですっかりと慣れてくれて、俺のアナルはチンポを受け入れるためのただのトロマンとなっていた。

  

  「ちんぽぉ……ちんぽ、入れてくれぇ……」

  

  アナルも、俺自身も出来上がって、チンポを早くぶち込まれないと気が狂ってしまいそうだ。[[rb:譫言 > うわごと]]のようにそうおねだりしながら、片指でアナルをくぱあと開いた。

  

  「言われなくてもくれてやるよ、ほら」

  「あ゛、ん゛ん゛ぐあ゛……!!」

  

  虎はそう言いながらずん、と一気に奥までチンポを突き立てるものだから、俺は歓喜の呻き声を上げてしまった。肉をいきなりかき分けられる異物感も、チンポが入っているという事実の前には塵も同じですぐに消え去り、昂奮と愉悦で全てが上塗りされていった。

  幾度ものセックスで虎のチンポの形に変えられた腸内は、きゅうきゅうと締まりすぐにご褒美を貰おうとする。その捕食行動にも似た締まりに呼応するかのように、虎のチンポは腰を動かさずにもぴくぴくと動いて俺を善がらせた。

  ……もちろん、これだけでは足りない。もっと激しく、いっそ壊れるくらいまでにガン掘りされる方が、虎のチンポ専用オナホと化した俺には丁度いいんだ。

  だが虎は動かない。微弱な蠕動による生殺しのような快感に耐えかねた俺は、自分から不格好に腰を動かすも、すぐに虎はがっちりと俺の太腿を掴み、動けないように組み敷く。満たされているのに充たされていない、そんな倒錯的な燻りは俺の心をかき乱して、切なさに似た感情を覚えさせて涙を流させた。

  

  「な、なん、で……だよぉ……!」

  「……入れてくれ、って言っただけだろ? 満足じゃないのか?」

  

  吐き捨てるようにそう言いながら、虎はにたりと口端を上げた。

  

  「こっ……! こし、振って! 犯して、くださ、い……!」

  

  チンポを打ち付けてもらうことしか脳になかった俺は、力の入らぬ腹で泣き叫ぶようにそう言って、虎に何度したかわからないおねだりをした。

  

  「……虐めすぎたか、すまんすまん。じゃあ……!」

  

  その言葉と共にゆっくりとチンポが引き抜かれて、再度同じ奥の方へとチンポをずん、と思い切り押し戻される。 待ち侘びすぎていた感覚に脳が痺れを切らして、快楽への耐性が壊れてしまったのか、一度突かれただけで俺のチンポはどろ、と白濁を漏らした。

  それを見た虎はまたも不敵な笑みを浮かべ、俺が望んだ通りにがんがんと腸の奥の奥までチンポを擦り付けてくる。その度に俺は雌のような嬌声を上げ、身体全体を揺すられてぶるぶると震えるチンポからは、我慢汁と精液が混じり合った愛液を[[rb:滔々 > とうとう]]と漏らし続ける。

  繰り返される快感の奔流に[[rb:揺蕩 > たゆた]]う暇もなく俺は溺れ、もがくように再度自分の腰を動かして、ケダモノよりも激しい交尾を本能から欲しがっていた。虎もそれに呼応するかのように、腰を動かすスピードを上げた。ぐちゅぐちゅと肉が擦れ合う音が、液で濡れそぼった毛皮を打ち付けられるパンパンとした音が、今まさにセックスをしているんだと自認させて、より昇りつめていく。

  

  「~~~~はああ゛っ、お゛ぉ、ごぁあ゛あ……ッ゛!!」

  

  虎は不意に少し角度を変えて、一番敏感な前立腺を[[rb:舐 > ねぶ]]るように突き上げて来た。脳髄までをも衝かれたような、そんな鋭い快感が俺の身体を支配して、喜色を混じえた悲鳴を上げる。

  色に狂った俺の視界は一瞬真白に染め上げられて、それは直ぐに元に戻るも、何度も、何度も、いいところを突かれる度に、ちかちかと白と現実を行き来していく。

  最早知的生命体と呼べるかも怪しいほど、度重なる雌アクメで馬鹿になってしまった俺は、色よりも白を求めるようになっていた。より一層アナルはチンポに媚びて、チンポから譲り受ける白を今か今かと待ち焦がれているかのように締まる。

  

  「あ゛ーー……いい、っ、締りだ、そろそ、ろっ……!」

  「あ、あ゛、ぁぁ゛、くれ、せっ、えき、ひ……くれェ、ッ……!」

  「い、イクぞ、っ……!! うぐっ、あ゛……!」

  

  強く振っていた腰をぴたりと止めて、奥に突き立てられたチンポの硬さが増したと思うと、間もなく律動と共にじんわりと中が濡らされていくのが分かった。どくどくと種付けされている感覚は、前立腺をごりごりと突かれている時よりも多幸感を与えてくれる。

  やがて虎のチンポは出し終えたのか、ゆっくりと熱が引いて俺の中から抜け出ていき、ごぷ、と音を立てながら空気と様々な液が混ざりあった白濁が俺のアナルから垂れていくのが感じられた。蝋のように垂れていくそれが勿体なくて締めようとするも、直前まで巨根を収めていたアナルはヒクつくだけでそれを許してくれない。

  

  ――そうだ。勿体無いなら、また貰えばいい話じゃないか。いつもいつも、一日に何度だってセックスしてるじゃないか――

  

  「はーっ、はぁ……もっと、ちんぽ、せーえき、くれ……」

  

  気付けば俺はただ只管に、虎の身体を求めていた。夜まで続く絶倫さを持つ虎との、白昼の交尾はまだ始まったばかりだ。