Ad
"再び"、、孝之助は囚われていた
目の辺りを二重に回る帯での目隠しは、僅かな光さえ感じる事さえ許さず、、
声を上げようにも、口尻まで噛み込まされた指二本ほどの太さの竹筒を然と結わえる紐は頬にも食い込み舌と唇の動きを封じ、意味を成さないうめき声が漏れ出るのを許すのみ、、
出来るのは、只、耳にて周囲の様子を拾うのみ....
自身の有り様さえ、、判るのは身包みを全て剥がされ露わにされた肌より伝わる感触のみ、、
全身の肌を隈なく覆う"縄"の感触が教えてくる....
首元を締める縄が
そのまま下へ伸びて胴を編み目の様に隈なく覆って締め付け、
肩口と肘を締める縄も
上下から胸を挟むように圧し締め、、
手首を背中で縛める縄は
両肘へ伸びて二の腕も胸に括りつけて腕の僅かな動きさえ許さず、、、
両の足首を一括りにした縄では
下肢を真っ直ぐに閉じさせられ、足首をうなじへ引っ張るように結ばれ、、、、
目口を塞がれ、反り気味に真っ直ぐに仰臥し全身を縄で縛められた太り肉の犬の姿、、そんな自身の姿が脳裏に浮かぶ....
僅かな身じろぎさえ、、、、、
喉元に感じる革の首枷が、首と床を然と結びつけて体を捻る事さえ許さず、、
両足首を括った縄は、脚を引き伸ばさんばかりに下へと引っ張り、、
背に回された両手首は、床の腰辺りに開いた窪みに繋がれて、、
もはや、僅かに首より上を動かして耳をそばだてる事しか........
他の場所なら
これより先にどんな"尋問"が待ち受けているのかと身を震わす所であろうが、
縄の隙間より床に感じる上質な絹の敷き布の感触、、仰臥するは床で無く寝台の上、
そして、、股間に着けられた金属製の"貞操帯"の感触...
そう、、此処は商船『白龍』の中、、、その一角を占める広さ十丈(三十メートル)四方の
船の主の老白龍"白天龍"・・・・西域の商いでは名の知れた大立者・・・・の寝室
話は三刻半(七時間)前、昼九つ半(午後一時)に遡る....
・
・
・
・
・
・
再び自身の元を訪れた東夷の愛弟子、太り肉の犬の商人、黒田孝之助に、
再度の精一杯の『もてなし』をと、、皆が大人(ターレン)と呼ぶ白毛の老龍人は、、、、
先日仕込まれた媚薬の効き目が体から未だ消え去ってはいない太犬から
半ば強引に身包みを剥がし"否"を言う間も与えず、今度は別の西域の数種の秘薬を調合した薬湯へ昼八つ(午後二時)より約一刻半(三時間)の間浸からせて、、、
一つ、、急激な劣情では無い、体の芯からの"疼き"を長く持続させる為の強精作用と、
二つ、、別の秘薬と交じわると肌の感度を上げて感触で劣情を促す効能に、
三つ、、とある西域の媚薬酒の効き目を増す効果で、
これら秘薬湯の効能を長い沐浴で体の芯より染み込ませて『下拵え』をした後、
湯殿の前の長椅子に腰掛け諦め顔で薬入りの冷茶を受け取った太犬が、一時の躊躇の後、、、自棄気味に一気に飲み干しそのまま眠りに落ちると今回の『仕込み』に取り掛かる....
体を揺らし心地良さげに眠る太犬を抱きかかえ、、そっと顔を近づけ
「では、、これから夢中よりも良い所へ連れて行ってやろうぞ、、、」
寝息を立てる口にそっと唇を合わせる最中に....脇に控える
歳は六十を超えて尚も颯と振舞い、青の漢法服を着こなす
でっぷり横に貫禄を蓄え顎髭を生やした虎の大番頭"趙進"が慇懃に
「万事抜かりなく支度を整えて御座います、大人、、ごゆるりとお楽しみを...」
と左手を胸に添え頭を恭しく下げるのに、、顔を上げ悪戯っぽい目で見下ろすと
「そう言えば、、そなたにも久しく"褒美"を取らせておらぬな...
偶には仕事を若い者に任せて儂の相手をしてくれても良いのだぞ、ん?」
頬をほんのりと赤く染め目を逸らす様子を満足気に見やり、、くるりと背を向け太犬を抱き抱えたまま寝室へ、、
中程に鎮座する豪奢な天蓋付きの寝台の上で、、獣人としてはやや長毛の部類に入る太犬が自身では拭き切れなかった背中や拭き忘れた耳裏などの未だ湿った毛を丁寧に拭きとり乾かしてやり、
床の絨毯の上に大の字に下ろし、、、、先日の『もてなし』で確かめた縄の通り道、
胸、腹、脇下、肘裏、みぞおち、臀部の割れ目、股下、腿、膝裏、それらの縄が通る部分の被毛を傍目には隣に残した長毛で隠れる様に注意を払いながら、縄の太さで毛を刈る特注の殻繰鋏(ばりかん)で短く刈っていく、、、そうして前回よりも縄の通りと食い込みが良くなるように肌を仕上げ、
刈った毛を丁寧に払い抱き上げると、今度は中央の寝台では無く
部屋の隅の・・・・・・・・大番頭の老虎に命じ船底の倉庫より運び込ませた・・・・・・・・
西域で誂えさせた特別な"寝台"に張られた上質な絹の敷き布の上にそっと横たえると、
寝台の下の引き出しより取り出したのは
肌に染み込ませた秘薬と交じって肌の感度を増すもう一方の秘薬を染み込ませた幾束もの縄、其れを
先ずは、輪にして結んで首に掛け、喉元より伸ばした二本の縄を
一尺毎に結び目を作りながら股下へと伸ばしくぐらせ、臀部の割れ目より背を真っ直ぐに上らせ首元のうなじへ戻して結び胴体を縦に括る"縦糸"にすると、
其処(うなじ)より両脇下へ縄を伸ばし、胸前と背中を通る"縦糸"の間を交互に結んで"横糸"
と成して茶の被毛の上に作る『縄の胴着』、其れを
被毛を刈って作った肌上の"縄の通り道"に程良く食い込む様に案配を見ながら胴に編み込んで行き、、その縄端を臀部の割れ目に食い込む"縦糸"に両の側から結んで引いて"割れ目"を開く様に然と結んで程良く胴全体を締め付けさせる、、、、更にその上より各々の縄を
左右の手首を後高小手に腰元で十字に縛める縄を
両肘へ伸ばして脇の隙間を埋めるように肘より上を胸に括りつけて
肘裏と二の腕を脇下の縄に押し付け、、
喉元で交じわり両肩の縁を二重に巻いて肩口を締める縄で
被毛を刈って作った"縄の通り道"に沿って胸元より上で交差させ、両肘に伸びると肘の縁を三回りして鳩尾(みぞおち)周りを締め付けさせ、先に胸に這わせた縄と併せて上下左右から胸を囲って迫り出させ、、
両の足首を一括りにした縄にて
ふくらはぎ、膝裏、太ももを括って締め付け下肢を真っ直ぐに閉じさせ腰へと伝わせ、脚の付け根を縛める縄と結び、うなじと足首を繋いで背側に反らせ、、
こうして隈なく全身に"縄化粧"を施し
「ふふ、、艶っぽくなっておるぞ『孝之助』、、、
これからもっと可愛く"飾って"やるぞ...」
と腹辺りの縄の隙間からはみ出す被毛を愛おしそうに撫で、、縄で膨らませた胸の感触
を舌と唇で"味見"し、、無意識に喘ぎ声を漏らす口吻の味も確かめると、
陰嚢を前に引き出し紐で根元を然と括り、真鍮の"貞操帯"へ陰茎を挿し入れて鍵を掛け、
目の辺りを紺の絹帯で二重に回して目隠しして、
媚薬酒が徐々に染み出す竹筒を、慎重に呼吸を確かめながら徐々に紐で締め付け口尻まで噛み込ませ、、
そうして全身を『仕込まれた』の茶の被毛の塊を、
背中の手首が寝台の上に開けられた窪みに収まる位置へ仰臥させると
窪みの奥の"鈎穴"へ手首の縄を、革帯で繋いで据え付け、
うなじの傍らに留めた革帯の片端を、首上を廻して対側の留め具で首を締め止め、
寝台の端より伸びる細鎖の端の鈎を足首の縄に繋ぐと、寝台脇の把手(はんどる)を回して鎖を巻き取り引っ張って脚を引き伸ばし、
そうして丸い茶の毛玉を上下に引き延ばす様に寝台の上に張り付けると、
再度、問題が無い事を確かめ天蓋より帳を下ろし、横たえられた太犬"孝之助"が外から見えぬようにして今度は『焦らし』へと移り.................
太犬が微睡みから徐々に抜け出していくと
身動きも目も口も封じられ、耳をそばだてる事しか儘ならないまま、、
口に噛まされた猿轡の筒から染み出す"件"の西域の媚薬酒が口を伝い
先に取り込まれた秘薬の効能でじわりじわりと体を芯から火照らし股間を疼かせ、、、、
肌に染み込ませた秘薬と交じると肌の感度を増す秘薬を染み込ませた縄が体を縛めるだけでなく、、上気した体から吹き出す汗に薬を溶かし込んで隈なく全身の肌を伝わせ、僅かに身動ぎする度に、体の柔らかな、被毛を薄くした部分、
胸、腹、脇下、みぞおち、臀部の割れ目、腿、股下、、それらへ当たる様に結ばれた"結び目"が肌へ秘薬を擦り込んで、並の愛撫よりも強い快楽の"疼き"を肌へ生み出させ、、、、
目隠しされ、無視したくとも聞き入ってしまうのは、
この地で見つけた大人(ターレン)好みの太り肉の雄の"雌犬"が哭かされる嬌声、
しかも、どうにも知った声の様な、、
...アレ、、まさかとは思うけど幻内はん....?
いや、あん人があないないやらしい"哭き声"でよがるなんて、、そないな事
見えぬ事でより一層、淫靡な方向へ想像を掻き立てられ、、、、
そんな『焦らし』を一刻(二時間)以上続けられ、
もはや、体に触れられずとも何度でも果ててしまいそうになる太犬"孝之助"に焦らしを強いるのは股間に嵌められ我慢汁でしとどに濡れた"貞操帯"ともう一つ、、、、
・
・
...くぅ、、、今度のも....
と今度は別の理由でまだ"理性"を投げ捨てる訳にはいかぬ太犬の耳へ
「今度は如何な理由で"今"を愉しむ事が出来ぬのだ? 『孝之助』よ、、」
音も無く忍び寄り耳元で甘い吐息と共に西域の呼び名で呼ぶ心地良い深みのある声
の持ち主は白天龍....この船の主"大人(ターレン)"、更に吐息が耳に近づき、、
「ん!、ふ、」
耳への甘噛みで思わず身じろぎし、縄の擦れが生む悦楽の疼きに耐える太犬の体の上を、
手が"視えぬ目"の上を通って胸へ伸びる仕草が感じられ、、、、
やがて、抑えきれない悦びを滲ませた"咎め"の言葉で
「全く、、、、前の"仕込み"と併せて更に体が仕上がっているというのに、、」
縄で囲われ、丸く零れ落ちそうに張り出す胸を揉みしだく老練な手業、、
胸周りの縄も擦れる相乗効果で、
「!?、ふ!、、ん~、、ふ!、んん~、、んふ!、」
と猿轡より、喘ぎとも嬌声ともつかない声が漏れ出るが、、
その中に未だ微かな抵抗の気配を聞き取った声の主は
「まだ、堪えようとするか....この頑固者め、、」
いつの間にか腹を跨いで立つ声の主より、含み笑いを忍ばせた"叱り"の言葉が降ってくると、
太腿を抑えこむ様に腰を下ろして膝上に座り込む裸の尻の感触と共に、手が両側から臀部を然と掴んで腰全体を揺するように揉み始め
「!、、んん、、ふ、、、んふ!、、!、、」
尻の割れ目に両脇から指をかけ、ねっとりと開く様に揉みほぐす手業に加え、
太腿、臀部、股下、下腹部の縄が一斉に擦れて生み出される悦楽に息も絶え絶えに、、
もはや、縄に縛められてるのではなく、縄に身を預けている様な有り様、、、、
ふと臀部より手が離され
「ふふ、流石に少し堪えたか....」
縄越しにゆっくりと、、"視えぬ目"では判らず、、、肌にて
ぽっこりと突き出た腹の上に一際大きな腹が伸し掛かり、やがて胸を丸く押しつぶす様に胸板が伸し掛かってきて、、全身の縄がゆっくりと擦れるのを堪えながら、、
吐息を頬で感じる程近くに声を感じると
「どれ、、そろそろ取ってやろう
お主も話したい事があるであろうしな、、、」
頬へ手がそっと触れ、そのままうなじへ回って猿轡を結んだ紐が解かれると、ゆっくりと引き剥がすように口から竹筒が離され、、
口を塞ぐ物が無くなり大きく息を一呼吸、、そしてもう一呼、、
「!、、」
二息目を大きく吸おうと口を大きく開けたその刹那、
口吻を合わされ口中を舌で蹂躙する長い長い口づけを、、、、
頭を抱えられ口を離す事も出来ず、
指一本自由に動かせぬまま、更に立て膝で支えられていたであろう体の重みが一気に伸し掛かり、体中の縄が急に擦れて喜悦の波が肌を激しく掻きむしる、、、、
もはや呻き声さえ出せずに、、息も続かずにぼうっと...........
唇より糸を引きながら口が離され、、
伸し掛かっていた大きな体が傍らに身を横たえ、、
ようやくに少し?"風変わり"な抱擁と口づけから解放され、、、、
ぐったりと口を開き、喘ぐ様に少しづつ呼吸を整えていると
「ふむ、、、油断しておったな?
儂の元に居た頃は斯様な不覚は取らなかったであろう?ん?」
からかいの言葉に微かに"なじり"の響きが混じるのは、自分の元を離れた太犬への未練故か、、そんな気恥ずかしさを誤魔化す様に下腹部を縄越しにやんわりと揉んでくる辺りが如何にもこの大人(ターレン)らしいと言えるのであるが、、、、
傍目には"息も絶え絶えに受け答えも覚束ない"様子の太犬の胸の内は
...もう少し"素直"にしんみり言うてくれたらなぁ、、
先刻の全身の肌を快楽の渦が襲った時を経て、、縄の擦れが与える快楽に少し慣れ、下腹部の肌の"疼き"を少しばかり余裕を持って受け流しながら、
思いを馳せるのは声の主の意外な一面、、、、
西域の共に過ごした僅か二年半なれど濃密な時で、声の主の心の一端を知る事になり、、、
貪欲に、、、時に周りの都合さえ度外視して相手を求めるその裏にあるのは、人一倍、淋しがりな性分、、、、
そんな本音を晒すのに気恥ずかしさを感じて、より一層の淫乱爺を演じる様は少し可愛いとも言える....尽きること無い性欲を抱えた紛れも無い本物の"変態"でもあるが、、
東夷に帰ると告げた日の晩から丸三日間続いた"戯事"や、東夷に帰り着くまでの船旅の間の
"まぐわい"は今の比では無く、今でも"とらうま"になっている程....
...まあ、湿っぽくせんで面白可笑しく
見送ってくれたんのもターレンなりの心遣いなんやろうけど、
もしも、真面目に引き止められとったら、、、
うち、、東夷に帰らんかったかも知れんのになぁ....
と、、、、"息が乱れている様に見える間"を使い、少しばかりの物思いに沈んでいたら、、、
「ふぁあ!?、、、あ、あぅ、ぁ、、」
今度は、、物も言われずに、太腿の前に飛び出た陰嚢を掴まれ揉まれ、、
どうやら"演技"がバレたらしい....
何せ"目隠し"で、、何処からどんな攻め手が来るのか、予想はおろか見る事も出来ず、
しかも体は指一本動かせぬまま、、たとえ判っても受けれいる他無く、
更に、少しは慣れたとはいえ秘薬で肌が敏感にされているのだから
前回にも増してターレンの玩具(おもちゃ)とされてるこの体、、
「目の前の儂を差し置いて、物思いに耽るとは、、、 全く、
妻を娶るだけでは飽きたらず、今度はその箏雪という者に心奪われたか、『孝之助』、」
と少し拗ねた様子の声音で陰嚢を揉みほぐす手に力が入る声の主に
慌てて弁明を、、、、
「あぅぅ、、ちゃ、ちゃい、、んぁ!、、、
ちゃいま、、ん、、ね、、(ちゃいますねん)」
流石に今度は余裕など無く、まともに言葉を紡げずに喘ぐ様子に
些か憮然とした声音で
「ならば、何なのか申してみよ」
五年ぶりだというのに、、あの喘ぎから"言葉"を拾える辺り、、
共に居た二年半がどれだけ"濃密"だったのかが伺える
「い、、いや、その、、、」
陰嚢を"放免"され、
これ以上何かされる前にと、一息付く間を惜しんで慌てて答えようとするが、、本当の事を言うのは、何やら気恥ずかしいやら、癪に障るやらで、
口籠もっていると、、、、
「ん?どうした? 頬が赤くなっておるぞ?」
と吐息が頬だけでなく"目隠し"にかかる程に間近に顔を近づけられて
「そないな事、、、
只、、こないな風にされて体が火照っとるだけですって..」
なるべく何でもない風を装って答えてみるが
「ふふ、、確かに頬の血色は先刻のままで色の判別などつかんが、、
嘘をつく時の癖は未だ直りきってはおらんようだな」
先程答えた時に他の者には決して判らぬ微かな動きをした鼻先を、舌先で突つかれ
「ふぁ、あ、、、、、、ず、ずるいですやん...」
鼻声混じりに抗議すると
「お主が素直でないからだ」
"余計な事を言わせぬ"とばかりに覆い被さられ
今度は、、互いが愉しめる様にゆっくりと口吻を合わせて舌を交換しあう口づけを...
そっと伸し掛かり、胸を緩やかに圧し歪める被毛の感触も心地良く、、
絡み合った舌が解けて口が離れ、、思わず「ほぅ、、」と声を漏らすほどに感じ入ってぼぅっとしていると、
うなじに手が回り、、目を二重に覆う帯の結び目が解かれ、
上より覗き込む、、白い被毛と顎髭に年経た者の威厳を纏った真摯な顔が視界に入る...
やがて、、、気恥ずかしさを誤魔化す様に笑みを浮かべ
「ずるいのはお主の方であろう、、
そんな顔をされてはな...ん?」
喉元から顎下の被毛を指で撫で掻かれ
「ちょ、、んん、、あ、あか、、あかん、、、です、て、、」
秘薬の効果で感じ過ぎ、、思わず喉を鳴らしそうになる"疼き"を堪え、
途切れ途切れの声で訴えると
「ふふふ、、、もう音を上げるか、
そう言えば....なにか頼み事あると言っておったな
今なら聞いてやらん事も無いが、、、、無論、只という訳にはいかぬぞ」
淫乱爺の表情(かお)で、、舌なめずりが頬に触れる程の近さに迫った老白龍に
顔を引き攣らせながらも
...や、やっとや、、、、
と極力"安堵"が表情(かお)に出ないように気をつけながら心の内で胸をなで下ろす
そう、これも又、西域でよく遭わされた"焦らし"の一手、、
一旦仕事にのめり込むと片時も頭を離れない質(たち)を少しばかり矯正してやろうと
からかい半分で老白龍がとある仕事を太犬へ、、
老白龍へ直に相談せねばならぬ事案を仕込まれ、面談を申し込んだ太犬は延々と報告できぬままに老白龍の"戯事"に付き合わされる事になり、、、
軽い気持ちで始めた悪戯の焦らしに太犬が思いの外粘る姿をいたく気に入った
老白龍が仕掛ける頻度を徐々に増やし、行為も高じて行って、、
今ではこの様な光景が殆ど"恒例"に....
今日とても、、最初に「御願いしたい事がありますんや」と切り出した時の老白龍の嬉しそうな顔といったら、其れはもう、、、、
「顔色がすぐれんようだが、、少し疲れてるのではないか?」
と有無を言わさず身包み剥がされ秘薬の湯に浸けられた際の、老虎の大番頭を筆頭とする周囲の手際の良さには、正直頭を抱えてしまう
大人(ターレン)が"玩具(孝之助)"に夢中な間は周りに累が及ばないからである....
寝台の天蓋の鏡に映るは、
太り肉で白い被毛の巨躯の裸体の上に現地調達の"赤褌"を締め寝そべる老白龍の傍らで
全裸で仰臥し全身を赤い縄で縛められ、縄の間から茶の被毛がはみ出す自身の姿、、、、
...あんまり真面目な話する格好やないなぁ、、、、
と恥ずかしいやら、げんなりするやら、、
兎も角も、、此処で"気を変えられ"でもしたら事である....
気を取り直し、傍らで寝そべる老白龍へ横向きに顔を向け話し始める
「実は、、、、ひょっとしたら一人預かって欲しい者が出るかも知れんのですや..」
「ほう、、」
先を促す老白龍の視線を受け、太犬が話し始める....
[newpage]
「此処も居ない、か....」
廃都の芝居小屋から出て来た若い虎の出で立ちは普段と違い
原色の紺をあしらった抑えめだが上品な西域風の男装、、知り合いも一目では漁師の息子の"宗吉"とは気づかぬであろう姿、、、
その隣を歩くのは艶やかな桃色の和装、、こちらは"上品さ"よりも色艶が強調された女らしい装いの大熊猫の稚児"鈴零"、、、
二人して聞いて回るは、役者兼人形師の表の顔を持つ殻繰遣いの小柄な狸の忍、華焔の姿
兄の大狸の"元?"忍、箏雪より心当たりの場所を聞き、順繰りに回って見るも未だ手がかりは得られず、、、、
其処から少し離れ、密かに二人を付けていく大きな影が一つ、、
旅僧の少しやつした装いで目深に傘を被って顔を隠した大狸、箏雪、、、二人の護衛である
話は四日前、鏑木森の悪鬼騒動の終了後に遡る、、、、
・
・
・
・
・
・
獅子堂鉄斎が廃都での仮の拠点とした、元は民家の急ごしらえの"診療所"にて....
「皆、、本当に済まねぇ!!」
自身の脇腹の怪我(骨折)の痛みを堪えて土下座する元天壊の忍の大狸"箏雪"に、
「なあ、、頼むから頭を上げてくれないかい?
うちらがこうなったのはアンタの所為じゃないんだから、、、」
と上から声を掛けるは、細身の狐娘"なり"....大狸と共に駆けつけた若虎に応急処置を施されて他の皆と共に此処に運び込まれ、、与えられた解毒剤により体の痺れが抜けて半身を起こし、、
大狸に"自身を責める"事を止めるように諭すも
「いや、、あんたらだけじゃねぇんだ....
無関係な此処の住民(ひと)達にも、弟(あいつ)は手をかけちまった、、
俺を殺した"仇"だって思い詰めて、、あいつ...
俺が、、、、俺があいつを、追い詰めちまった、、」
項垂れ肩を落とし顔を上げぬまま応える大狸、、脇に付いた若虎がおろおろと、、、
どう声を掛ければいいのか躊躇っていると
「何をぐだぐだ落ち込んでんだい!!!」
と狐娘の後ろから近づき雷を落とすのは、昇月村の"皆のおかん"織部八千代、
先の戦いで自身も重症を負い、安静にしてなくてはならないのだが....
「あんたがうちらに付かなかったらどうにか成ってたって言うのかい!、、ええ?
それとも、あの連中(天壊)と一緒に此処の無関係な人達を殺す側に回ってた方
がマシだったッて言うんじゃないだろうね」
と返答次第では只では済まさぬ気概で睨みつける猪の女傑に
「....いや、、、、違(ちげ)ぇけど..」
漸くに顔を上げ力ない目で見上げて答える....そんな大狸に
「あんたがそうやって自分を責めたら、何か良い事でもあるのかい?」
先程より僅かに語調を緩めて問い直すと
「...でもよ、、
もっと他にやり様が有ったんじゃねぇかって、、、ついそう思っちまって...」
縋る様な目で見返す大狸、、
険しい表情(かお)より一転、自嘲の笑みを浮かべた女傑が
「痛い事を言うねぇ、、、あたしもそうなんだよ」
「「「え!?」」」
呆気にとられる皆を前に
「幕府湾の騒ぎは知ってるかい?」
「え~と、、確か南蛮出身の象の戦士が暴れた所為とか、、」
若虎が自信無さげに答えると
「アレねぇ、、、あたしの所為って言えなくも無いんだよ
少なくとも彼処で暴れさせた事だけに関してはね、、
あの戦士と全く関係ない訳じゃなくてね...」
肩を竦めて若虎へ返すと、再び大狸に向き直り
「だからね、
あんたの気持ちが判らなくは無いんだよ...
むしろあんたよりもあたしの方が責任感じなきゃならないだろうけどね
被害の大きさを考えたら、、」
「.....」
「けどさ、、
今、後悔だけしていてもしょうがないだろ?
やる事やって、、それでもどうにもならなかった事は
後で後悔すればいい....時間がある時にね、、
今のあんたにはやる事があるんじゃないのかい?」
そう微笑まれた大狸が、
「一体、、どんな、、」
「決まってるじゃないか
怪我人はとっとと寝るんだよ!」
と豪快な笑いに釣られて、大狸の表情(かお)少し明るくなった事を確かめ
「其れじゃ、あたしももう寝るよ、、
これでも一応は怪我人だからね」
と踵を返し廊下で待つ医者の老獅子"鉄斎"の元へ向かうのを見送った皆は
「確かにまあ、、うちらも寝た方がいいだろね」
と狐娘が笑いながら振り返り
「取り敢えず話は、明日の朝にしないかい?
やる事ってやつがたっぷり待ってそうだしね、、
其れじゃ、寝るよ、、....」
と横になった途端に寝息を立て始めるのを見て、若虎が
「俺たちも寝ませんか?
孝さんも明日の朝には戻って来るだろうし、、」
「そうだな、、」
と怪我人が寝ている間に二人が雑魚寝出来る場所を見つけ
「其れじゃ、箏さん、、、お休み....」
「ああ、、」
と背中合わせで眠りに就く...
その頃、廊下では.....
「全く、、"怪我人"とは八千代さん、、君の事だよ」
と珍しく少し"諌め"の言葉を掛ける老獅子と
「いや、、せんせえ、、ちょっと無理しただけだってば、、」
と少し涙目で、、先程の豪快な笑いで痛めた脇腹をさする女傑の二人が
今後の事を話し合いながら廊下を歩む....
この時の二人は未だ藤兵衛の敗北を知らない.................
「....、、孝さん!?」
優しく揺する手で目を覚まされ、眠い目を擦りながら見上げるは見慣れた太犬の姿
隣を見れば、少しばかり乱暴に・・・・大熊猫が大狸の腹に乗って起こす姿が、、
「ぐぇ!、、、ちったぁ優しくだな、、」
「うるさいアル!!
こっちは一睡もしてないアルヨ!」
と何の為に静かに揺り起こしたのか、、物音で周りの怪我人が起き始めたのに慌て
「取り敢えず飯食いに行こか、、、」
とまだ薄明かりの中、三人を引き連れ仮設の食堂へ、、、、
「あのなぁ、、、こっちはホントに怪我人なんだぞ....一応」
と握り飯を頬張りながら抗議する大狸に
「いやぁ~ちょっと心配になって、、鈴零に元気になる起こし方頼んだやけど...」
と頭を掻いてにししと笑いながら握り飯をかじる太犬に
「お前の所為かー!!」
と後ろから頭をぐりぐりする大狸....いつもの調子が少し戻ってきたようである
・
・
「そうか...そっちは今までそんな事してたのか、、、、」
「咲月はんのお父はん、五百枝蔵人の使(つこ)うてた施設の入口を鈴零が見つけてな、
うちらではしょうもないんで、咲月はんに来てもらったんやけど、、、
正直、気持ちの良い場所や無かったよ....
他に適任が居らん以上、咲月はんに見てもらうしか無かったんやけど、、
資料は『結晶木の目貫』以外は全部持ち去っておったのに、
動く事も叶わんかった"実験体"はかなりの数がそのまま残されておって、、、
安楽死させる以外の方法が無くてな....」
出来る限り声に感情が籠らぬように淡々と事実を述べていこうとするも、
陰鬱な表情(かお)になる事はどうしようもなく、、、、
太犬が不意に自身の両頬を掌(てのひら)でピシャリと叩くと、
「あっちは、今は咲月はん達殻繰師に任せるしかあらへん、、
今は、あんちゃん、、、あんたの弟の事をどないするかや」
と少しぎこちない笑顔で、
「そっちはどないだったのか聞かせて貰えんかな?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「....大まかな事は聞いておったけど、
そうか、、、あんちゃんまで"仇"に見られてるんか、、、、厄介やな...」
大狸の話を聴き終えて....太犬がポツリと漏らす
「....ああ、、、其れでも、、、一度は、手を握る事が出来たんだ、、
あの面野郎に連れてかれなけりゃあ、、今頃、、
畜生!!」
歯噛みして拳を壁に打ち付ける大狸、、ドスンという大きな揺れが苛立ちを指し示す
「...."すねこすり"言うんやったな?、、、確か
天壊の中でも正体を知っとる奴が居らんちゅう噂やけど、、どうなんや?あんちゃん」
「ああ、、、確かに俺もあのふざけた"面"の裏側は知らねぇし、
他の連中で知っている奴も聞いたことがねぇ」
「手掛かり無しか....」
若虎が呟きに
「せやなぁ、、、取り敢えず、思い当たる筋を総当りしてみよか、、、、
昨日の今日や、、あっちも今度みたいな事をそう間を置かんでやれるとも思えん
少しは腰を据えて探す時間はあるんやないかな?」
太犬が"焦る事は無い"と言い聞かせる様に言うのに
「ああ、、、
此処は一応、俺の地元だ....未だ、裏切った事が知られてなけりゃ、、
伝(つて)を頼って聞いて回れば何か判るかも知れねぇ」
言葉とは裏腹に"こうしては居れぬ"と立ち上がりかけた大狸へ、、若虎が慌てて裾を掴み
「ちょっと待ってください!!
箏さんはこないだの戦で死んだ事になっているんですよ!
いくら何でも箏さん本人が聞いて回るのは無理がありますって、、
その役は俺がやります!」
今度は大狸が慌て
「ちょ!?
何言ってんだ、宗!」
「だって、、
俺がもう少し早く着いていたら、、、もしかして、、、
其れに、、もし箏さんが先に相手に見つけられたら、襲われるかも知れないし..」
自身の"忸怩たる思い"を言葉の端々に滲ませ言い返すが
「だけどよぉ、、、
単なる御用聞きじゃねぇんだぞ?
相手は裏家業の連中だ、下手を打てばお前が襲われるかも知れねぇんだぞ?」
諭す大狸の言葉に、、それでも食い下がり
「だけど、、このままじゃ...」
「これは俺達兄弟の問題だ
気持ちは有難てぇけどよ、、、
その為にお前を危ねぇ目に遭わせる訳にはいかねぇよ」
首を横に振る大狸を前にして、若虎の視線が助け舟を求めるように太犬の方へ...
「せやなぁ、、、
そのまま宗一人を行かせるのは危険過ぎるわな....
あんちゃんが護衛につくにしても、離れとかんと意味あらへんし、、
せやけど、、もう一人腕利きが付きっきりで護衛してくれるんなら、
少しは試してみる価値もあるんやないかい?」
と"何か"含ませた悪戯っぽい目で視るは、
若虎の横でニコニコしながら握り飯を頬張り話の行方を面白そうに見ている大熊猫の顔
「ちょっと頼まれてくれんかな?」
と目配せする太犬に
「ふふ、、いいアルヨ
面白そうだし、、
だけど、、、その前に大人(ターレン)に報告しに戻らないと...
勿論、孝之助も一緒に行くアルネ?」
嬉しそうな大熊猫とは裏腹に太犬が頭を抱え始め、
「あかん.....鈴零こないな長い時間帰さんかったら、もう......
ああ、、、、このまま"挨拶"しに行ったら、どんな新しい"おしおき"されてまうか..」
「何だそりゃ?
その"たーれん"ってのは、、、そんなにおっかねぇ人なのか?」
太犬の様子を不思議そうに眺めながら、大狸が大熊猫に聞くと
「そんな事ないアルヨ
今日もきっと、いい事沢山してくれるアル、、、
うふふふ、、、楽しみアル....」
と何やら一人悦に入ってこれ以上詳しい話を聞けそうもない大熊猫を
不思議そうに見る大狸と若虎に、、、
「ちょっと、、挨拶にいってくるさかい、
明日の夕方くらいには帰れるとは思うんやけど、、、
他の所にも声は掛けてあるさかい、、、ちと戻るのが遅うなっても
取り敢えずうちらが戻ってくるまでは無茶せんといてな....」
引き攣った笑みを浮かべ大熊猫に連れて行かれる太犬を
「あ、はい、、」
「ああ、」
と不思議そうに見送る若虎と大狸、、、
・
・
・
両人とも毛の色艶と血色が"挨拶"へ行く前よりも良くなっているというのに、
どういう訳か少しやつれた感の太犬と、、前よりも更に元気になった大熊猫が
戻ってきたのは翌々日の昼前....
「と、取り敢えず、、、うちの方で当たれる伝(つて)は全部当たって来たさかい、、
あとは知らせを待つだけや...
ほな、、あんちゃんの伝(つて)の方、、当たってみよか、、、」
[newpage]
「あっちもうちらの事を"探り入れてる"て考えた方がええやろ....
せやから、、あんちゃんの伝(つて)当たって普通に知り合いの振りして聞いてったら、
うちらの事を知られて逃げられるか、
もしくは、あんちゃんの事を目の敵にして襲ってくるか、、、」
戻って相談を始めて直ぐの太犬の言葉へ
「これでも"忍"は長えんだぜ、、
当たろうとしてんのは、事情を知ったとしても漏らすような連中じゃねぇし
知られるようなヘマもする連中じゃねぇよ」
と少し自尊心を傷つけられたのか、些かムッとして返す大狸に
「まあ、大方そうやろ、、、せやけど互いに"忍"なんやって考えると、、
このままお互い身を隠したまま、、次に会うのはまた"戦場"って事にならへんか?」
大狸からの言葉を予期してたかのように含みを持たせて聞き返す太犬、、
「....なんか考えがあるのかよ、、旦那?」
じっと見返してくる大狸へ
「上策とは言えんけどな、、、、」
と気が進まぬ様子で太犬が話し始めた....
・
・
...おっと、いけねぇ、、
今は二人の方に集中しねえとな....
昨日の太犬の話を思い返していた大狸が、
結局は"自分も納得したのだ"と自身に言い聞かせて、意識を現在(いま)に戻す、、、
目深に被った傘の下より見つめる二人が"今日"訪れているのは、大狸の伝(つて)では無く
弟"華焔"の表の顔に関りのある芝居小屋や人形職人の工房、、
大狸の伝(つて)の方は昨日の昼過ぎに、
太犬の後ろを大狸と大熊猫が別々に離れて付けて、太犬は"単なる伝言役"と称して回り
「亡くなった箏雪さんから生前に預かった物がありまして....
何かあったら弟さんに渡してくれって言われとるんですわ
もし何か判ったら茶屋『白』に伝言を御願いしますわ」
そして今日、若虎が述べている口上は、、、
「華焔さんの居場所を知りませんか?
先日、約束した場所でお待ちしていたのですけど、お見えになられなくて、、、
あ、いえその、、どういう用事でと言うのはちょっと、、」
顔を赤らめ、、、、相手に
僅かな額ではあるが金子と手紙を握らせると伝言を廃都のとある逢引茶屋へ御願いする
昨日一日だけの練習にしてはそこそこの"演技"だと、出かける前に"其れ"を見て大狸も思う
昨日のは、玄人筋への探索の依頼、、
今日のは、一見すれば"役者"華焔の熱心すぎる信者が、この辺りの破落戸風情にでも騙されて茶屋での逢引きを約束されたのを鵜呑みにして待ち惚けを食らわされたという間抜けな話という事で一笑に付されて終わるのだろうが、、、、
「向こう任せか、、、、、」
我知らず呟く大狸、、
兄の死を信じており、、天壊側もまだ、箏雪の死を信じているならば昨日の話が華焔本人へ届くかもしれない....
箏雪の"寝返り"が既に知られている場合、、西域の装束で華焔を訪ねてきた者が居た事に対して天壊が"裏切り者の弟"としてどういう形で疑いの目を向けるのか....
そのまま早急に"処分"されてしまう事も考えられるが、
もしも"疑わしき者"として天壊城の牢に繋がれてしまうなら其れも又、良し、、
少なくとも戦場で会うよりは、、天壊を負かせれば助けられるかもしれない....
或いは詰問され、、自らの身の潔白を晴らさんと此処へ出て来れば、再度捕らえる事が出来るかもしれない....
又はどちらでも無いまま、この混乱の中でこちらの動きが何一つ伝わらぬままに戦場で再会するのかもしれない....
何れにしても向こう(天壊)の中の動きが判らぬ以上、こうして"探り"と"誘い"を入れていく以上の事は大狸にしても思いつかない
溜息を突きつつ、、、ふと人形工房の前の若虎の様子が急に、、慌てている?
何事かと槍の代わり手にした錫杖を握り直して見直せば
若虎と大熊猫が揃って来た道を駆け戻り始め、、、こっちに来る!?
前を通り過ぎる前からゆっくりと走り始め、、、工房のある通りから丁度二人が角を曲がった所で合流する
もしも監視されていたら、後ろから付けていた事がバレてしまうが仕方がない
「どうした!?」
後ろから声を掛ける大狸に
「今の所(工房)、、華焔さんが浄瑠璃人形を取りに来たって!!」
「そうアルヨ!」
振り返らずに若虎と大熊猫が答え、
「一体何処へ行く気だ!?」
「さっき行った浄瑠璃の芝居小屋です!
今戻れば、、」
その先を言う間を惜しんで駆ける若虎の後ろを追いかける大狸が歯噛みする
...行き違ったってのかよ!
本当に其処(芝居小屋)に行ったのかなど判らない、、だが、、
兎も角も先を急ぐ三人は話す間も惜しみ、、、
若虎"宗吉"が芝居小屋の入口の木戸番に声を掛けるその後ろを
大熊猫"鈴零"と大狸"箏雪"が駆け抜け、、、舞台を正面に見る客席への入口へ飛び込んだの
は二人同時、、、舞台には......浄瑠璃人形がぽつんと一体鎮座するのみ、、、
ぐっと唇を噛み締め、、何処かに未だ居ないか辺りを見渡し、、、、客席を真っ直ぐ通ってそのまま舞台へと上り、、華焔の浄瑠璃人形へと恐る恐る近づき、、、
そっと触れようと手を伸ばした刹那
「....待っていた、、、、」
舞台袖からゆらりと幽鬼の様に現れたのは、赤い血涙を流す小狸"華焔"、、、
「....華焔、、」
「兄様の知り合いを嗅ぎまわっている奴が居ると聞いて、お前達じゃないかと..
だから、、今日も現れるかと思って待っていた、、、、、」
赤い血涙が、、普通の涙に....
「こっちに来るんだ、華焔...俺は、、」
そう言って近づこうとする大狸へ、、、、表情(かお)を般若に豹変させ
「その"声"で僕の名前を呼ぶな!!、、この、、紛い物、、」
最後は絞り出す様に言葉を紡ぐ小狸の顔は苦悶に歪み、、
「俺は、紛い物なんかじゃねぇ、、華焔、、俺は、、」
ぐっと感情を抑え、、目の端に映る大熊猫"鈴零"がそうっと舞台袖の小狸へ近づく姿を目で追わない様に注意して....
「紛い物なのに、、、どうして、、、」
ふと緩んだ表情(かお)より流れだす"嬉し涙"が床を濡らす....
「どうして、、、"もう一度見たい"、、"もう一度聞きたい"なんて、、」
「華焔、俺は、」
"本物"と言う言葉を遮るように
「兄様が、、僕を捨てて罪人達に加担する筈が、、そんな筈無いのに、、なのに、、
どうして、、どうして、、そんなに兄様の生き写しなんだ、、紛い物なのに、、」
最早会話も成り立たず、、立っている事さえ辛そうに顔を歪め、、、そんな小狸に大熊猫が密かに近づき、、"後もう少しで飛びつける"......そう思った刹那
「さあ、帰る時間だよー~」
気配も見せずぬうっと現れ、小狸を抱えて天井近くまで上る黒衣の白面"すねこすり"
「お前か!! どうして!?」
今まで抑えていた感情を弾けさせ大狸が叫ぶ、、、、だが当の白面は飄々とした声で
「こっそり抜けだした悪い子を迎えに来ただけだよ
それじゃ、、」
言い終える前に、銃声が辺りを震わし白面の額に孔を開ける、、銃声のした方を振り返ればいつの間にか太犬と若虎が....これで小狸を取り返せる、、皆がそう思ったその時、、
「....酷いなぁ、、当たったらどうするんだよ~~もう、、、」
と相変わらず抑揚がない声で、、額に開いた孔はそのまま無視し、、
「ちょ!? 平気なんか?!」
慌てる太犬を他所に
「それじゃ、今度こそ、さよなら~~~」
と皆をからかう様に
天井の其処かしこより白面が落ちてくるに紛れて小狸もろとも姿を消した....
[newpage]
「結局、、浄瑠璃人形だけですわ、、手に入ったのは....
その後は結局、、姿も見せとりません、、」
老白龍"大人(ターレン)"に太犬"孝之助"が語り終えると....老白龍が
「"預かってもらうかもしれない"と言うのは、その華焔という忍か、、」
と呟くと、、
「ええ、、この戦がどないな結果に成ったとしても、、、
華焔ちゅう子にはこの土地自体が思い起こさせる記憶が辛いんやないかと」
「其れで儂の所か、しかし、、、生け捕るのも難儀しているようだが
大丈夫なのか?」
「さあ、、うちらが返り討ちに遭うかもしれまへんし、、なんとも...」
「全く、、、命など落としたら承知せぬぞ」
老白龍の半ば呆れ気味な声音の中に、、、、密かな親が子の身を案じる"憂い"にも似た響きを聞き取って....ふと優しい笑みを浮かべ
「はは、、努力してみますさかい
今は其れで勘弁して下さいな、大人(ターレン)...」
と申し訳なさそうに、出来る範囲で頭を垂れるのに...."聞き取られてしまった"気恥ずかしさと、それでもなお飄々と返す太犬へのほんの少し怒りが混じった声音で
「いや、許さんぞ、、、『孝之助』、
幸い、今日は儂がお主を生け捕っておる、、
儂の気が済むまで『おしおき』してやるから覚悟するがよい!」
「あの、、、先程の話は、、、」
「お主が生きて、その華焔という忍を連れてきたら考えてやろう
判ったら、、、今日も早く"儂の物"にならんか!」
と脚縄の一部を解き、各々の脚を天蓋の両端からの細鎖で吊り引いて左右に開き、、、、露わにした尻穴を太い指で押し開き慣らす様を天蓋の鏡で太犬に見せつけるように.....
今晩も又、、
太犬の嬌声は、一晩中止むこと無く廊下に漏れ聞こえてきたという....
Ad