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【24】やっぱ和食は出汁と旨味っすよ!!

  「そんなワケで、本日は和食をご用意しました~」

  「どんな訳だ」

  青年のツッコミをスルーして、頼子は本日の食事を説明する。

  「お品書きは白米。アジの一夜干しを焼いたのと、ブリ、マグロ、イカのお刺身。ちょいと崩れましたが出汁巻き卵。大根おろしを添えまして、主婦の頼もしい味方!茶わん蒸しのカップとフリーズドライのお味噌汁、となっております」

  そして酒瓶を掲げて見せ「また日本酒用意したけど飲む?」と訊ねると、青年は嬉しそうに目を輝かせて「勿論!」と返事をした。

  返却するつもりで持参したのであろう、頼子が預けていたガラスのおちょこを取り出す。

  「お、準備いいねぇ!」

  頼子の言葉に思うところがあったのか、何か言おうとしたが「まま、一献!」と瓶を差し出された青年は大人しく口を閉じた。

  「・・今日は品数が随分と多いようだが、どれが「わしょく」なのだ?」

  「あぁ。ごめんごめん「和食」ってのはうちの国の伝統的な調理法?・・まぁ食事の事だよ。ほら、国によって食べる物ってさ。見た目や味付けが千差万別でしょ?」

  「まぁ、確かに」

  「この献立はうちの国に昔からあるやつなんさ!ま、まずは食べるとしましょうや!」

  「いただきまーす」と手を合わせた頼子に習い、青年も「いただきます?」と手を合わせてフォークとナイフを手に取る。

  が、頼子の手元を見てそれを置いた。

  「アヤ、何故私はナイフにフォークなのだ?」

  「アヤが使っているのは「箸」だろう?」と首を傾げる青年に頼子は驚いて言う。

  「えっ!アド君「箸」知ってんの?!」

  「あぁ、他国の品だが、うちの国にも伝わっている。片手で扱う食器だろ?」

  「そうそう!そっちにも似たような文化があるのかな?不思議だねぇ」

  「体の構造がそう違う訳ではないし、たまたま似通った道具を作り出したのかもしれん」

  「んだねぇ。あっ!もしかしてアド君、箸普通に使える?」

  「無論だ。だから私にも箸をくれ」

  気を使ったつもりが完全に的外れだった事を知った頼子はそう言って片手を差し出す青年に少々気恥ずかしさを覚えつつ、食器棚から取って来た箸を一膳「はいドウゾ!」と手渡した。

  「や、てっきり使えないものだと・・」

  「・・様々な国の者や種族と会う機会があるのでな。必要だったので覚えた」

  「へぇ、すごいね!大変だったでしょ?」

  「・・・そうでもない」

  頼子はふいと目を逸らした青年を特に気にする様子もなく「いやいや凄いって」と軽く褒め、改めて「いただきまーす」と言うとお茶碗を片手に出汁巻き卵を口にした。

  青年もまた「いただきます」の言葉の後に味噌汁に手を伸ばす。

  「・・うむ。美味い」

  「あ、味噌汁美味しい?どれどれ・・う~んおいしっ!侮り難しフリーズドライ!」

  「先程も言っていたが、その「ふりーずどらい」とは?」

  「ん?保存食の製造方法の一つで、凍らせた食材を真空に置いて水分飛ばして乾かした物・・だったかな?」

  やや首を傾げながらそう説明する頼子に、手にした椀の中身に視線を向けた青年は一瞬硬直した後、驚きの声を上げた。

  「待て!このスープが保存食だと?!」

  「んだよ~。モノを入れてお湯を注ぐだけ~。汁物って少量作るの面倒なもんだからちょっと手抜き」

  「・・・信じられん・・」

  「ははっ!そこまで言うなら後で実演してあげるね!」

  両手で持った椀を見つめる青年に、頼子は笑いながらそう言って「とりま、食べなよ」と食事の続きを促した。

  だが青年はまた一口味噌汁を飲んで「これが保存食・・」と未だ納得できない様子だ。

  「ほらほら!折角焼きたてなんだから、温かいうちに食べよ!・・ん~!アジも良い塩梅だ~!白米が進む進む!」

  「・・分かった。これは魚を焼いたものか?」

  「そ、一晩干したのをさっきグリルで焼きました~片づけ面倒なんだけどね」

  「久々の焼き魚ウマ~」と味を語る頼子の声を聞きながら、青年は綺麗な所作で箸を扱って焼き魚の身を解すと口に運んだ。

  咀嚼して、驚きにクワっと目を見開くとやや慌てた様子で白米を追加で口にする。

  もぐもぐと口を動かし、大事そうに飲み込んだ後で僅かに顎を上げ、余韻に浸るような様子で言葉を零した。

  「なんだこれは、美味すぎる・・」

  そう呟くとまた焼き魚、白米と口にして「美味い」と言いながら食べ進める青年。

  途中、何気なく手にしたおちょこを傾け、今度はピシリと硬直。

  おちょこを片手に箸を置き、空いた片手で両目を覆う。

  「なんだこれは、美味すぎる・・」

  感動しているらしい青年に、頼子は笑いながら言った。

  「あはっ!お魚と日本酒は相性良いとは聞いてたけど、気に入ってくれたみたいで良かった!」

  そうして自分もイカを口に運びながら「お刺身とも合うって話だよ」と今度は刺身を勧める。

  「うむ・・しかしアヤ。その「おさしみ」と示すモノは生の状態に見えるのだが・・」

  「あ~うん。やっぱ気になる?うちの国だと新鮮な魚は生でよく食べるんだけどね。こっちでも内陸の国の人なんかは忌避感で食べられないってよく聞くし、無理する事は」

  「ないよ」と続けようとした言葉は青年の「いや、頂こう」という意を決した真剣な声音で遮られた。

  頼子が食べる様子を目にしていた青年は食べ方の説明を聞かされる前に、すっと醤油の入った小皿に箸を伸ばす。

  そして端の方に乗せてあったワサビを軽く溶くと、ブリの刺身をちょんと浸した。

  少し間を置いた後、やや勢いをつけ青年はパクリと口に放り込む。

  そのまま真剣な目で咀嚼していたが、その表情が驚きから感動へと徐々に柔らかく変化して、飲み込む頃にはまた目を閉じて余韻を味わっていた。

  「・・・美味い・・」

  「ん。美味しかったんなら良かった」

  生魚に果敢に挑む青年の様子を、箸を止めて思わず見守ってしまった頼子はほっとして食事を再開する。

  何を食べても「美味い、美味い」と顔を綻ばせる青年に『次はもうちょい凝ったのにしよ』と次回の和食に思いを馳せつつ、茶碗蒸しのカップに手を伸ばした。

  小さ目のスプーンでプラのカップから直接掬い、火傷に注意しながら舌に乗せる。

  この茶碗蒸し、自分だけなら適当な器にひっくり返すか、ぐちゃっと崩してレンチンするところ、客に出すのだからとわざわざ鍋で温めた甲斐あって、爆発させずに綺麗な状態で食卓に並べる事が出来ていた。

  いつもは玉子豆腐で茶碗蒸しの気分を味わうのだが、やはり本物とは別物なのでこちらも割と久々。

  これも出汁が効いてて美味いな~

  またこの何の具に当たるか分かんないのがくじ感あって楽しいよねぇ。

  そうして、ウマウマと食べる頼子へ「それはデザートでは?」と訊いた青年に笑いながら茶碗蒸しの説明をしたり、焼き魚と大根おろしを一緒に食べる事を勧めたりしながら食事は楽しくも恙無く終了した。

  食後の緑茶を啜りながら、若干膨らんだお腹を擦る。

  「いや~くちくなった。余は満足じゃ~」

  「だな。満腹だ」

  「アド君は私よりご飯お代わりしたもんね~」

  「あぁ。あの白い「こめ」と共に食す魚がまた美味で・・気づいたら無くなっているのだから仕方ない」

  「すごい分かる~それな~」

  そう言ってまた緑茶を啜る頼子に、おちょこを傾けた青年が咳払いをして訊ねる。

  「ん゛んっ。それで・・この後はどうする?」

  「ん?そうね~・・結局映画見れてないから何か鑑賞するとしますかね?」

  「んで私も何か飲もうかな~」と続けた頼子に、青年は何処か残念そうに頷いた。

  「わかった・・「えいが」は先延ばしになっていたしな・・・よし。今日はとことん付き合おうではないか」

  「え?いや~、それは嬉しいけど目が疲れたりするから程々で良いよ?そだ。せめてアド君が好きそうな内容にしよう!」

  タブレットを取りに鏡台から離れながら、頼子は「好きな物語とかあったら大まかでいいから教えて!」と青年に声をかけた。

  「好きな物語か。幼い頃は母が読んでくれた本の・・悪竜から姫を助け出す青年の話や、悪い魔法使いを懲らしめる冒険者の話が好きだったが・・最近ではこれと言ってとくには・・」

  「お~!王道だ、いいねぇ!勧善懲悪の冒険活劇って感じだね!」

  「それなら、最初はこれから行ってみよう!!」

  そう言って、頼子はDVD再生機器を繋いだタブレットを鏡台の上に置いた。

  ディスクを取り出し、機器にセットしてタブレットを操作。

  そうして青い画面の後に映し出されたのはジ〇リの名作中の名作。

  「親方!空から女の子が!」の台詞が有名なファンタジーアニメだった。

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