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【71】とあるオタク終了のお知らせ【閑話】

  中学生の時に初めて恋に落ちたの。

  〇君と△君。

  2人が一緒にいて、愛し合う世界線がすっごく尊いものだって気付いた。

  それからは似たようなシチュやキャラに胸がきゅんきゅんするようになって、直ぐに同人誌っていう存在に行きついたわ。

  こんな素晴らしい世界があるんだって知って、生まれ変わったみたいで楽しかった。

  高校生になってバイトしてお金を稼げるようになったらますますオタ活にはまって。

  好きな事の為に頑張る生活はとても充実していて幸せだったの。

  大学時代も似たようなものね。

  この頃になるとオタクってだけで差別されたり逆に絡まれたりして面倒だったから、一般人の擬態を覚えたわ。

  バイトしながら隠れてオタ活して、面倒ながらも充実した日々を送っていたの。

  そしたらある時、最悪な出来事が起きたのよ。

  神サークルの作家さんが推しジャンルから撤退したの!

  信じられる?もう本当に最低最悪っ!

  しかもそのジャンル自体が一気に衰退して、読める本がすっごく少なくなっちゃったの!

  あたしの推しが!大事な生き甲斐が!

  無下にされた、汚された・・許さない許さないっ!

  嫌いになったならそっとしておいてよ!

  何もジャンル丸ごと攻撃しなくたっていいじゃない!

  神サーだかなんだか知らないけど、そんな事許される筈がないわ!

  えぇ、絶対に絶対に許さないんだから!!

  あたしの推しが攻撃されたんだから、あたしもあっちを攻撃する権利、あるわよね?

  そうだよね・・うん。推しの為なら、あたし鬼にだってなれるわ!

  皆の生き甲斐の為に、あたし頑張る!

  あいつが二度とジャンル攻撃なんて出来ないようにしてやるんだから!

  だから付きまとって、家を突き止めて、手紙とか虫とか入れて、SNSに色々書き込んで本の感想でも散々文句言って、サークルにも直接言いたい事を伝えに行って・・

  え?ちょっと待って。

  なんであたしが責められるの?

  ストーカー?は?全然違うし!悪いのはあっちでしょ?

  あたしは皆の正義の為にやってるの!

  え・・内定・・取り消し・・うそ・・嘘、嘘、嘘!嘘よっ!

  なんであたしがこんな目に合うの?

  ははっ・・そう・・しかも逃げるの・・あたしから、逃げるの・・

  こんな目に合わせておいて?自分だけのうのうと幸せになるっていうのね?

  いいわ。今は吞気に勝った気でいればいいじゃない。

  でも、あたしは絶対に諦めないから・・

  絶対に復讐してやる・・信じていれば、機会はきっと巡って来るんだから!

  ・・・あぁ。ほらね?ふふ。やっぱりそうよ。運命は信じる者に与えられるの。

  同人ショップで見た女・・あいつだわ。間違いない。

  いつか巡り合った時の為に買っておいたナイフが、とうとう役に立つ時が来たわ!

  直ぐに家から取って来なくちゃ!

  ふぅ。良かった。まだ居る。よし、じゃあ人気のない所まで付いて行きましょう。

  ・・へー。良いとこに住んでるのね。

  あたしはボロなアパート暮らしなのに。

  あんたの所為でランクが下のところでしか就職出来なかったからね。

  そうよ。あたしがこんなせせこましい生活してるのも、親に見放されたのもあんたの所為よ。

  思い返したら怒りが甦って来たわ。

  あたしの怒り、想い知れっ!

  ふふふ!やった!やった!やってやったわ!

  驚いたあの顔!なんて間抜けなの!

  胸がスーッとしたわ!

  とうとう天罰が下ったのね!ざまぁみろだわ!

  これで明日から安心してオタ活が楽しめるわね!

  それから一週間、クソつまらない仕事も笑顔でこなして、晴れやかな気分でオタ活に勤しんでいたのに。

  最初に変だな?て思ったのは、ラジオの音声が聞き取り辛いなって事だった。

  イヤホンの調子が悪いのかなって思って、その時は気にしなかった。

  でもおかしいの。

  その日の夜には好きな声優さんの声が全然聞こえなくなっちゃった!

  なんで?なんでキャラの声だけ聞こえないの?

  CDもWEBラジオもアニメも・・全部全部、声だけ聞こえない・・

  変な現象はそれだけに止まらなかった。

  少しずつ、でも確実に、あたしの好きなものが聞こえなくなる・・見えなく、なる・・

  なんで?どうして?

  もうアニメを流しても真っ白。

  漫画も同人誌も真っ白。

  今では、新しく「いいな」って思った瞬間に、それも消えちゃう・・

  もちろん病院にも行ったわ。

  でもそんな症状初めてだって。お手上げだって言われた。

  このヤブ医者!今すぐ治しなさいよ!もうすぐ大きなイベントがあるのに!

  本が読めないなんて、生きてる意味が無いのよ!

  あぁ、待って、お願い・・あたしの「好き」が・・生き甲斐が・・

  零れてく、消えて行く・・待って、お願い・・

  大事なの・・大切な物なの・・

  消えない、で・・

  あーあ。

  からっぽ。

  なーんにも、なくなっちゃった・・

  あれ・・ねぇ。あたし・・なんでわざわざ・・

  いきてるの?

  ん?緋翠?・・あぁお帰り!お勤めご苦労様~。

  よーしよしよし!今日も素敵なふわふわですねぇ~・・

  ん?終わったって、何が?

  ・・あぁ、はいはい!お仕事ね!そっか~終わったか~随分と時間をかけたねぇ・・

  何?死んではない?うんうん。それで良いよ~後はなるようになるでしょ!

  ・・はっ?!緋翠たん!!その、お仕事終わったって事は・・もういつでも一緒に居てくれるってこと?

  ・・やったー!!嬉しいっ!じゃあ今日早速、一緒に寝ようよ~!

  アド君に魔力充填してもらって、ご褒美に私の血も分けてあげるね!

  ・・何?髪で良い?・・くぅ~っ!うちの子が優しくて可愛くて最高なんですが!

  誰かっ!この最高にキュートで素敵な至高の存在に御供え物をっ!!

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