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会話に一区切りついたところで、親友は小さく咳払いをして傍仕えさんに引き続き質問をした。
「すみません幾つか疑問があるのですが・・」
「どうぞ、何なりと」
「「魂名」を明かし合った夫婦が離婚する場合とか、何か対策があるんですか?」
「勿論ございます」
引き続き傍仕えさんの解説によると、婚姻関係を解消するとなった時には記憶から相手の「魂名」の情報を消す処置を施すそうな。
婚姻している時に相手の「魂名」を悪用することは「精霊誓約」により難しいと・・
口頭は勿論、文字や記録した音声などを介して他の人に伝える事も不可能なんだとか。
「え・・では、他人に知られるのは盗み聞きされた時、とかですか?」
「はい。それと、本人が自ら告げた場合ですね」
あぁ。正にさっき青年がしようとしたみたいにか・・
って。こうして聞くとやっぱりアカン行動だったんじゃないか!
アド君、やっぱりもっと反省してっ!!
その後に聴いた話では通常「魂名」は生まれた直後に授けられ、一時神殿預かりとなって半成人した頃に本人だけに明かされるそうで、生まれた時に保護者に名付けられるのが「普名」なんだそうな。
あれか、幼名みたいな感じなのかな?
一生使うからそうでもないか。
そして「魂名」関連のトラブルは「神殿」にて大体は解決する・・と。
はぇ~・・やっぱ異世界ってこっちとは色々違うんだなぁ。
まぁ「異」世界ですしね。
そりゃそうか、ってな話ですな。
その後、青年にもらったカラフルな実をカップのバニラアイスに散らして全員で食べながらお話し継続。
傍仕えさんが遠慮してたけど、アド君が「構わないから一緒に食べよう」と口添えして無事全員揃ってウマウマしましたよ。
色んな果物の味がして面白美味しかった!
実は椅子が足りなくて少し困ったけど、アド君にお水を提供でスライムみたいなあの不定形椅子を作って解決!
んで、会話の内容はといえば魔法や、食べてるアイスについてだったり日常生活についてだったり・・
つい話し込んでトイレ休憩も入れて2時間くらいお喋りしてたかな?
途中傍仕えさんが淹れてくれたお茶を頂いて(すっごく美味しかった!!)遠征での行動予定を聞いたり・・
そうそう!なんか事情があって「変装の道具で髪色を変えるのが少し面倒」って言ってたから、こっちの髪染め剤の話をしたら傍仕えさんにめっちゃ食いつかれたよ!
なので明日の買い物リストに赤茶色の髪染めをしっかり入れときました。
他にも話の中で役に立ちそうな物や食材なんかに色々目星ついたから、買い物リストが凄いことになったんだぜ!
「アコ・・何でそんな鼻息荒くしてんの?」
スマホに入れた買い物リストを見返していると、親友が怪訝な顔で訊いてきた。
「いやさぁ。普段こんな一気に買い物することってないから、なんだか凄いワクワクしちゃってねっ!」
「ま、確かに。特にアコは普段ネット注文ばっかだもんね」
「そ!お店に行って商品を直接手に取って選んだりするのって楽しいんだけど、つい時間と手間を惜しんでネットに頼っちゃうんだよね・・」
「分かるっ!それな!」
「なっ!」
向かい合い、両手の人差し指を向け合う2人に鏡の向こう側で青年は首を傾げる。
「自宅に運んでもらえるのが楽なのは理解できるが、直接品物を見ないで買うという感覚が今一つ分らん・・」
「そうですね。こちらでは品物を持って売り込みに来られる商人の方はいらっしゃいますが、対面せずに買った物を個人宅まで届けるというのは・・大きな取引の際には在り得る事ではありますが、なんとも大変そうな話ですね」
「だな」
そう言って頷く主従に、オタク二人は説明に困って顔を見合わせた。
「あ~・・まぁ、確かにネットでの買い物では現物を確認出来ない分、気を付ける事も多い、かな?」
「リスク込みで買ったりね。でもやっぱ当たり外れはあるよね~・・高い物ほど評判やら口コミやら確認して買ったりするけど・・トラブルになる事も時々あるし?」
「成程・・それなりに気を付けて購入するのか」
「その辺はこちらと大差ございませんね」
「そりゃね。ただの買い物だもの」
根本的な所は変わらないんじゃないかな?
と、まぁこんな感じで雑談という情報交換を楽しんだところ、時間も遅いという事で解散となりましたとさ。
う~ん、人が増えると話題があっちに跳びこっちに飛び・・マジもんの雑談だったね。
けど楽しかったから、またこんな風にお喋りしたいなぁ・・
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
「変わり実」を散らした「ばにらあいす」なる甘味を食した。
何だコレは?
白くやや硬い塊を匙で掬い、舌に乗せた途端体温でさらりと溶けて広がる甘味・・
丸太牛の乳に似たまろやかな脂肪の旨味が一緒に噛み砕いた変わり実の味と混ざって、やさしく包み込むように全てが一体となって脳髄を揺さぶる・・
こちらでも、冷たい菓子は在るには在る・・が、それはどれも良く冷えたというだけの代物で、熱で溶け出すような氷に近い物では決してない。
冷たい菓子や甘い果実は勿論、天の光が重なる今この時期に暑気払いにと良く求められる品ではあるが、基本光が隠れる時期に保存した氷を使用することで冷やす物・・
値段は相応に高くなり、見栄もあって食すのは貴族や大富豪の商人ばかりだ。
なので普通、多くの民が嗜むのは、不必要になった氷で冷やした飲み物くらいだと聞いた・・
しかし、まさかこの冷たい甘味は、4人全員分合わせても昼に食べた食事代より安いとは・・
彼女の部屋にある、縦に長い箱。
よく保存食を取り出すその品物を冷やす事の出来る箱が、一般家庭にも普及しているお蔭で氷の如く冷たい菓子を固め冷やして保存し、いつでも好きな時に楽しめるそうだ・・
外の気温が暑かろうが寒かろうが関係なく。
今まで何度も氷を浮かべた冷たい飲み物を出してくれたが、まさか自宅でその氷を作っているとは思わなかった・・
てっきり、氷は外で買ってきている物だとばかり。
謙遜していたが、やはり彼女はそれなりに裕福なのだなと勝手に納得していたのだが、飛んだ思い違いだったという訳だ。
衝撃とともに冷たい甘味を楽しんだ後、傍仕えのジャスが淹れた茶を全員で味わう・・
冷やされ、未だ甘味が色濃く残る舌を温め洗い流した茶が喉を通り過ぎると、ふんわりと芳醇な茶葉の香りが鼻腔に満ちて満足の溜息が零れた。
毎度のことながら素晴らしい味と香りだ。
私の傍仕えとなり、身の回りの世話の為にと様々な技術を磨いてくれる彼には感謝の念が絶えない。
彼女も、私の傍仕えが淹れた茶には驚き「美味しい!」と言ってくれた。
その喜ぶ顔を見た傍仕えも、表情は変えないまま頭を下げて謝意を伝える。
私しか気付いていないだろうが、その様子はとても誇らしそうだ。
まったりと会話を続ける中、彼女が席を離れた時にアキ殿へ一つ相談を持ち掛ける。
「アコの「しゃしん」が欲しい?何故です?」
『急にどうしたのだろう?』と言いたげに首を少し傾げ、問われてしまった。
とても言いにくい事ではあるが、正直に答える。
「・・今回の遠征は国外に出る事もあり、何が起こるか分らん・・不安になる事もあるかもしれん。勿論、そうやすやすと弱音を吐くつもりは無いが、何かあった時の為の支えが欲しいのだ・・」
「その理屈は理解しますけど・・何でアコに直接頼まないんですか?」
当然の疑問だろう。
アキ殿からしてみれば、友人同士となった私と彼女の間で「しゃしん」・・姿絵の交換などは特に問題無い行動なのだろうが・・
家族以外の者の絵姿を持つのは、その・・こちらでは想い合う者たち・・恋人同士がすること、なのだ。
それ故どうにも気恥ずかしく、こちらの事情を明かさずに「しゃしん」を手にしたい理由をどう説明すればよいか苦慮していると、意外にもアキ殿の方から恐る恐る訊ねられる。
「・・もしかして、ですけど・・アド氏、アコのこと好きだったりします?」
確信を突かれ、心臓がドッと荒々しく飛び跳ねた。
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