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輝く金貨に視線を落としたまま、オネェさまと中年男性は残業が終わって疲労困憊のサラリーマンみたいな溜め息を吐いた・・
「まさか異世界の金貨だったなんて・・」
「どおりで出所があやふやなワケだねぇ・・」
「・・何て言うか、徒労感が凄いわ・・」
「俺ちゃんの能力なかったら判明しなかったヤツじゃない?コレ・・」
再度2人して「はぁ・・」とため息を吐く様子に、自分が金貨を換金した所為で何か迷惑を掛けたのではないかと思い口を開く。
「すみません・・何か、ご苦労をお掛けたみたいで・・」
「あぁ。気にしないで。頼子ちゃんが原因といえばそうなんだけど、責任を感じる事なんかないわ」
「そだよ~。悪い事したワケでなし。気にしない、気にしな~い」
「こういう事って、コウちゃんの能力的にままある事なのよ」
「そ。散々苦労して駆けずり回ったのに答えがひょっこり関係ないトコから現れたりすんの」
「かと言って調べない訳にはいかないのよね。お仕事ですもの」
「ね~」
「そうなんですね・・でしたら、気にしないことにします」
2人から「そうして(ろ)」と言われたので多少の罪悪感は仕方ないにしても、余計に気負う事はすまいと自らを戒めた。
「そういえば・・私も、どうして黒峰さんが金貨を持っていたのか気になってるんですけど・・」
「そうね。それも話さなくちゃね」
「あ。おいちゃんパス。その辺の話は裕二郎に任せてケーキ食べてるわ」
「アンタもう3つ目よ?これで終いにしなさいね」
「とか言って、コーヒーのお代わりも淹れてくれるゆーくんてば俺ちゃんの事好き過ぎ♪」
手を合わせ組んで、くねくねと揺れる中年男性を「はいはい」と軽くスルーしたオネェさまがケーキとコーヒーを用意しながら語ってくれた事によると・・
まず、この金貨は金そのものの価値は勿論だけど、異能力者たちの力の源。つまり霊力の事だが、その霊力の貯蔵が出来るお役立ちアイテムの一種らしい。
例えるなら電池や輸血パック。
自分の霊力を一時的に貯蔵出来るまぁまぁレアなアイテムとの事だが、元々それなりの数が出回っている。
それらの品物は、大体が霊力が馴染んだ鉱物やガラス、様々な呪物などであり、金貨のように嵩張らない物は携行しやすい事から需要が高いそうだ。
そんな便利なモノが、何の前触れもなくかなりの数が出回るようになった。しかも金貨。
何処かで発掘されたという話も聞かないし、出所が分からない。
組合としては調べない訳にはいかなかったらしい。
「異能力を行使するには基本、自分の霊力が必要なの。霊力は燃料みたいなものだと思ってくれたらいいわ。燃料が切れたら車は動かないでしょ?だから、自分の霊力が切れた時用のストックとして、普段から少しずつ「器」に溜めておくのよ」
オタク知ってる。つまり「器」ってのはコエ○マ様の魔封○か。
静かに納得して頷いている間にも、話は進む。
「でも容量の多い高品質の「器」は需要に対して供給が追い付いて無くてね。良いものを作ろうと思ったらそこそこ時間が掛かるから、慢性的に不足してるのよ・・」
つまり、換金した金貨がどこかで異能力者の目に留まり、それなりの質の高さもあって重宝され、いつの間にか流通していたと。
ま。質が高いといっても一番多く出回っている品質の物より、二割り程容量が多いという程度らしいが。
でだ。この「器」というもの。異能力者たちの間では通貨のような扱いをされる事もあると・・・
「Оh・・」
それって。とっても面倒な事に巻き込まれる可能性が高いのでは?
通貨扱いされるような物がザクザク手元にあるってバレたら、異能力者たちがわんさか絡んで来る未来しか見えないんですけど?!
嫌な予想で顔を曇らせた私に、オネェさまは安心させるように「大丈夫よ」と明るく笑った。
「金貨を手元に置いておくのが不安なら、組合に預けちゃえばいいのよ!というか、いっそのこと組合で買い取らせてもらうというのはどうかしら?そうしてもらえると、とても助かるのだけど・・」
まぁ、そうだよね。
通貨になるようなものがいきなり増えるのって良いことばかりではないだろうし、ある程度流通はコントロールしたいのだろうな。
期待に満ちた視線を向けられる中、サクッと結論を出して頷き「よろしくお願いします」と軽く頭を下げる。
「本当?!ありがとう!助かるわ!あ、勿論金貨としての価値にちゃんと上乗せした額を支払うから、そこは安心してちょうだい!」
「・・・マジっすか・・」
驚きに思わず言葉が乱れた。
いや、実はもう詐欺だなんだと疑うのが面倒臭くなっていたので『騙されたらそれまで』と考えていたのである。
元々身の丈に合わないあぶく銭だし。
ところがどっこい。付加価値分まで上乗せしての買い取りとはこれ如何に。
『またお金が増えるの?・・なんだか怖くなってきたぜ』
現実感の無さに若干遠い目をしていると、ぽん!と小気味よく手の平を打ち鳴らしたオネェさまが笑顔で小首を傾げ「じゃあ、金貨の話はこれくらいにして」と話題を切り替えてきた。
「次は頼子ちゃんのお話を聞かせて欲しいわ!アド君って異世界の人の事よね?さっき胸の模様が契約の印?みたいな事を言ってたけど、その辺も是非詳しく教えてちょうだい!」
鼻息荒く身を乗り出して問うオネェさまの後ろから、中年男性もひょいと顔を覗かせて来て口を挟む。
「お?そっちの話題なら俺ちゃんも聞きたい!聞きたい!」
2人の結構な勢いに思わず身を引く・・なんかグイグイ来過ぎじゃね?
困惑が表情に出ていたらしく、それに気付いたオネェさまは「あらやだごめんなさい」と姿勢を戻して元の位置に座り直した。
その隣で中年男性も「テヘっ♪」と舌を出して席に着く。
「あ・・アド君の事を話せば、良いんですか?」
戸惑いつつも答えると、依然興奮気味に返された。
「そうね!出来れば最初からお願い!」
「だね!よろしくドウゾ!」
という訳で、結局最初から説明することに。
無論。エロ方面は全面カットである。
そうして、1ヶ月半ほど前から始まった異世界交流の流れを語った。
「文字起こし用に」とレコーダーまで回されたので本格的な聞き取り調査みたくなってしまったが、オネェさまの質問のテンポが良かったのと中年男性が口を挟む事無く大人しくしていたのでさくさくと進み、ほんの15分くらいで終わる。
「成程ねぇ・・知り合った彼が冒険者として旅をしてると。それは心配ね」
「はい・・やっぱり、こっちより断然危険な事が多いですし・・リアルタイムで解るのは健康状態くらいなので・・」
「そっかぁ。そりゃ心配だろうし、不安にもならぁね~。恋人と直ぐに連絡取れないなんてさ」
中年男性の言葉に同意して、うんうんと大きく頷くオネェさま。
一方私は、内心で首を捻った。
・・・・うん?
誰と誰が恋人だって?
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