学校イチの不良獣人と初体験する話

  僕の通う学校は、ちょっと周りとは違う。素行の悪い連中が[[rb:蔓延>はびこ]]る、いわゆる不良学校と呼ばれるものだ。

  といっても全員が全員悪い奴ばかりじゃないし、普通の学生もいる。まあ一部の生徒は怯えながらも登校したり、不登校になったりしているけど。

  ちなみに僕はそのうちで人間の1人だ。でも毎日楽しく過ごせている。理由は単純、みんなが僕を受け入れてくれるからだ。

  不良校とは思えないほど至って普通な校門をくぐると、早速目に入るのは既に始まっている喧嘩。互いが互いを殴り合い、鼻から血を流して悶えながらも続けている。

  取り囲んで騒ぐ野次馬を避けながらその場を後にし、靴箱のある入り口に足を踏み入れた。僕の上靴が入っている場所以外、ベコベコにへこんだりスプレーなどの落書きが施されている。

  何度も見慣れたその光景を眺めながらいつも通り靴を履き替えていると、朗らかな声で話しかけられた。

  「うっす!武川先輩!」

  「おはよう。…ってか、同学年なんだから先輩呼びはやめてって言ったじゃんか」

  「あ、そうだったな。でもお前の立ち位置だと、この学校に慣れた俺らからしたらそう呼んじゃうって」

  ただ1人話の分かる同級生である犬獣人の善田と話していた時、後ろの騒ぎ声が一斉に止んだ。校門に背を向けていた僕以外の全員が頭を下げ、目の前にいた善田ですらも90度に腰を曲げる。

  僕はゆっくりと振り向き、向こうから歩いてくる巨躯を眺めていた。風に揺れる豊かな[[rb:鬣>たてがみ]]と、黒の制服をまくり道のど真ん中を進む。

  玄関に差し掛かった彼の体がどんどん大きくなり、人間男子の平均より少し身長の小さい僕は天井を見上げるように顔を向ける。

  彼の顔は傷だらけで、見るだけで恐れ[[rb:慄>おのの]]いてしまいそうなほど怖い雰囲気を醸し出している。学生と思えない屈強な体を持ち、筋金入りの不良ですら声を上げることもできないらしい。

  この学校で恐れられている彼の顔を、その瞳を僕は見つめる。もちろん頭を下げて挨拶もしない。

  そう、彼と面を向かってしまえる。そんなことができるのは、この学校において僕1人だけなのだ。

  「「「おはようございます!!」」」

  僕以外の全員が大声で言い放つ。ビリビリと響くその声に耐えながらも、まだ彼を見つめ続けていた。

  彼はいつもその言葉に「おう」と答えるだけである。そう呟いただけで、あんなにうるさかった獣人たちが素早く教室へと向かうのだ。

  「じゃあまた後でな…先輩も、失礼します!!」

  善田はその中でも、全く怯えずに彼に挨拶することのできる精神の持ち主だ。大体の人は言葉すらまともに言えないのに、彼はすんなりとそれをやってのける。それは生まれ持ったものか、それとも普通に天然なだけか…

  そう考えを巡らせていると、真後ろにとても強い気配を感じる。鼻息が首筋に触れてしまう前に振り向いた。

  「おはようございます。[[rb:百目鬼>とどめき]]先輩」

  「………ああ」

  交わした言葉は、たったそれだけ。だが彼はそれだけで、顔を赤らめていたのが見えた。

  思えば、初めて来た時もそうだった気がする。

  怯えながらも訪れたこの学校で、誰が誰だか分からない状態だったあの時。彼が学校一の凶悪な番長だということを知らずに自分から話しかけたのは、下級生では僕が最初で最後だという噂を聞いたことがある。

  そんな彼に告白された時は、人生の中で1番と言っていいほどの衝撃だった。

  ────

  「おっ……俺と…その、つ、つつ……付き合って……くれ…っ…!!」

  「……………は?」

  そよ風の吹く屋上でそう言われた時、全ての思考が止まった。

  僕は人間で、彼は雄獣人。そして普通の生徒と、不良だ。呼び出された時、ついにカツアゲの対象になったかと腹を括ったあの緊張と不安を返して欲しかった。

  だって彼はそんな存在なのだ。遅刻早退は当たり前、先生ですら手をつけず、売られた喧嘩は全て買い、その全てにおいて負け無しである。

  どんなに束になってかかろうと、1人残らず返り討ちにされるそうだ。そのせいで付いたあだ名が、苗字の通り『百の目を持つ鬼』らしい。

  また唯一参加している柔道部では幽霊部員ながらも部内で1番強く、前に一度だけ出場した大会では圧倒的な強さを誇ったそうだ。その体格は巨大な岩のようで、逞しく鍛え上げられた筋肉に包まれている。

  それは全て、喧嘩に勝つためだと後に聞いたことがある。顔や体には男の勲章とでも言わんばかりに古傷が刻まれ、痛々しいほどくっきりしていた。

  考えれば考えるほど混乱を極めた僕は、ワケが分からなすぎその場で気絶したらしい。気づいた時には保健室のベッドの上で、隣にはあの番長がいた。

  「き、気がついたか…!?」

  「……なんで、ここに…」

  「俺の責任だ。やっぱりいきなりすぎたんだ…ケンカしかできねぇ俺が人間に、しかも男に気安く付き合ってくれなんて、浮かれるにもほどがある…!」

  彼は傷だらけの手のひらを顔に当て、イメージとはまるで違う声で呟いた。おかしい…なんであんなに凶悪だと言われていた彼が目の前にいるのに、全く怖くないのだろう。

  むしろこの学校の中で1番優しく見えてしまうのは、一体なぜなんだ?

  訳のわからない感情に突き動かされた僕は、魔法にでもかかってしまったかのように聞いてしまっていた。

  「百目鬼、先輩…でしたっけ?」

  「……?」

  「その、本当に僕のことが好きなんですか?」

  「………えっ?」

  キョトンとした顔。僕も初めて彼と話す言葉にしてはおかしいものだと分かっていたが、それでも告白されたならそれなりの訳があるのだろうと覚悟した上で聞いた。

  「じゃあ、理由が聞きたいんです。訳もなく付き合うのは…僕も不安なので」

  「そ、それって…」

  クリーム色をした彼の顔が急激に赤みを帯びていく。鬣が重力に逆らって上を向き、いかつい顔がみるみるうちに強張っていった。

  「だから、理由を教えて欲しいんですよ。どうしてなんですか?」

  「その……は、初めて話しかけられた時から…お前のことがずっと気になるようになっちまって…」

  え?嘘だろ?恋に関してには疎い僕でも、それくらいは分かるものだった。

  「それってつまり、一目惚れってことですか……?」

  「ちッ、ちち違う!!そうだ、きっと初めて下級生で話しかけたのがお前だったからだ!だから変な気持ちになっちまっただけで…」

  どんどん口調があやふやになり、焦っているのが誰の目でも分かるほどだった。たぶん保健室の先生がいないからこんなに話しかけてくれるのだろう。そうでもしなければこんな姿なんて見せないはずだ。

  「絶対そうじゃないですか…」

  「そ、そんなことじゃない!何かもっと別の理由が」

  「もう、そんなに認めないなら付き合ってあげませんよ?」

  「んにゃッ!?」

  唐突だった。聞いたこともない、ましてや聞きたくもなかった声が強面の彼から発されていた。この時至って冷静だった僕は呆気に取られてしまい、笑いが堪えきれなくなる。

  「あ……今のは、先輩の弱みってことでいいですか?」

  「ちが、そんなこと言ったって誰も信じねぇよ!」

  「いくら喧嘩の強い先輩でも、そんな声出るんですね。んにゃって…ふふ…」

  「や、やめろ笑うなッ!!ぶん殴るぞ!」

  顔が爆発しそうなぐらい真っ赤になっている。物騒なことを言いながらも、抑えきれない喜びで口角が上がっているのが丸見えだった。

  「別にいいですよ、付き合っても。でも僕もこれが初めてなんでよく分からないですけど」

  「……へっ?」

  僕だって受け入れるとは思わなかった。でもなぜか彼の顔や雰囲気が聞いていたものと全く違うものだから、驚くどころか好意すら抱いてしまったのかもしれない。

  だってあんなに真っ正面から好きだなんて言われたことがなかったから、正直嬉しかったのも事実だった。

  ────

  こうして、誰しもが恐れる獅子獣人と付き合うことになった僕。あまり大々的に知らせないでくださいと頼んだが、それは早くも無駄に終わった。

  翌日から彼は僕に何かと話しかけてくるようになったし、何も無くてもつきまとって来るようになったのである。昼ごはんも一緒に食べようと言われ、帰り道にまで現れた時は次の日から休もうかとも考えた。

  いわゆるべったりだ。本人は全く分かっていないようだが、そのせいで噂は瞬く間に広がり、僕は百目鬼先輩に認められた唯一の人物として周りからの目線を浴びるようになってしまったのだ。

  それでも、絶対に提出しなければいけない宿題を手伝ってあげたというなんとも変な理由でやり過ごせたのは奇跡だった。彼にも友達は数人いるようだが、そのほとんどの学力はダメらしい。

  そこで僕が助け舟を出したという話にすることにした。まあ教えてあげたのは本当だし、実際は怖くて誰も寄り付けないというのが大半の理由なのだろうけど。

  

  そのおかげで変な奴に絡まれることはなくなったが、初めの頃はそれ以上に過ごしづらかった。信頼できる友達は善田だけになり、先生に授業のことを聞きに行っても軽くあしらわれる羽目にまでなるとは思っていなかった。

  それほどまでに、彼の影響力が大きいのだろう。しかし時が経って慣れてしまえば、これまでよりかは随分過ごしやすいと思えてきた。

  もちろん彼を盾にして悪さや不良めいたことは絶対にしなかったし、普通の男子生徒として振る舞うように努めていると徐々に皆から受け入れられるようになった。また先輩のだらしない習慣を改善するよう頑張っていた結果、ひとまず遅刻しなくなっただけでも嬉しかったのを覚えている。

  でも、百目鬼先輩には誰も頭が上がらないままだ。だからこそ先輩の威厳を守るためにも学校で接する時ぐらいは普段通りにしてくれと懇願して、最近になってやっと落ち着いてきたのであった。

  あとは、デートと言えることも何回かした。学校では文字通り鬼みたいな顔をしているのに、お出かけともなると性格が全くの正反対になるから面白かった。

  でも彼の見せる笑顔は想像できないほどに楽しそうだったし、だんだんと恥ずかしさにも慣れてきていたようだ。僕が真面目な話をした時にも、真摯に受け答えをしてくれた。

  全く想像もできなかった学校生活だが、普通に暮らすよりは楽しく過ごせていたと思える。だがその平穏が突如として破られることになろうとは、全く思いもしなかったのだけど。

  「明日休みだし、今日は俺の家に泊まっていかないか?」

  帰り道を共にしていた百目鬼先輩から、唐突に言われた。2メートルほどはあろうかという身長を縮こませ、恥ずかしそうに呟く。

  「え、今日ですか?別にいいですけど」

  その日はちょうど親が2人とも出張で家にいない日だった。恋人の家に行くと言っても相手が不良の獣人だということは隠しておきたかったし、特に心配事もなく了承した僕であった。

  初めての外泊を期待したが、それは全くの見当違いだということを後に気付かされることになる。

  思えば先輩の家に来たのは初めてだし、素性についてもあまり考えたことはなかったから余計に少し楽しみだと思っていた。そのはずだったのに。

  彼の部屋に入った途端、彼がある言葉を発したのが全ての始まりだった。

  「……い、今なんて…?」

  「だから俺と、交尾してくれないかって…言った」

  交尾?セックスのことか?誰と?………僕と?

  「もう、冗談言わないでくださいよ。何言ってるんですか?男と女がすることですよ」

  「雄同士でもできるぞ。ずっと言えなかったが…俺はそういうヤツなんだ」

  「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。それじゃあ先輩、ホモってことに…ッ!?」

  瞬間、百目鬼先輩は僕に一瞬で抱きついてきた。張り詰めた筋肉に締め付けられて冷や汗が止まらず、逃げようとしても体が動かない。

  なんだ、なんなんだ!?本当に意味が分からない!そう混乱していた時、彼の体が小刻みに震えていることに気がついた。

  「俺、初めてこんなに誰かのことを大好きって思ったんだ。バカな俺ができるのはこんなことしかなくて、断られるかもって怖くて…言えなくて」

  「先輩…」

  「結局こうやって不器用なことしかできねぇ。なんて言えばいいかも分からないんだよ…」

  先輩は、泣きそうな声で呟いた。ずっと張り続けてきた不良としての仮面を剥ぎ取った今、彼はただの獅子獣人なのだと僕は今ここで改めて気付くのだった。

  「男好きなのを隠してたのは謝る。今日限りで別れてもいい。でも今だけは……やっとここまで来れたんだ、どうかお願いできないか…?」

  全く、なんでこうも変なことに巻き込まれてしまったのだろう。男同士で性交するなんて考えたこともなかった。

  ましてやまだ高校生だ。不純異性…同性交遊にも程がある。

  でも、彼のことが嫌いと言えば嘘になる。もともと雄同士で付き合っていたこと自体あり得ない話だったのに、今さら性交を迫られても仕方ないんじゃないか?

  本当に好きな相手とする……そして誰にも話さなければ、誰も知ることはない。ならば、少しは彼の望むことをしてやるのも恋人の務めなのではないだろうか。

  暑い。季節はまだ秋だというのに、汗は未だに止まらなかった。

  少しの時間を費やして人生で最大の決断を下した僕は、仕方なく先輩の背中に手を回してぽんぽんと軽く叩く。

  「あーもう、分かりましたよ。好きにしてください。でも怪我だけは勘弁ですよ」

  「ほ…本当に?ありがとう[[rb:隼汰>しゅんた]]ぁ!!」

  さらに締め付ける力が強くなる前に制し、服を着たまま僕の体の倍はあるベッドにどさっと転がる。ニコニコしていた先輩だったが、すぐにその表情は一変した。

  「待て、なんでお前が寝っ転がってるんだ?」

  「えっ?だって先輩がするんじゃ…」

  「………俺は、その…される方を…したいんだが……」

  [newpage]

  シャワーを浴びた先輩が、タオルを腰に巻いて部屋に入ってきた。乾かしたであろう鬣はまだ微かに湿り、毛皮はぼさぼさになっている。

  先に風呂に入っていた僕は下着一枚で、色々と調べ物をしている最中だった。本当は服を着ていたかったのだが、先輩の要望により剥がされたままでいた。

  どうしても目がいってしまう股座を見ると、雄としての象徴が膨らみを作っていた。獣人の、ましてや学校で1番恐れられている先輩のモノを見ることになろうとは、一体誰が想像しただろうか。

  体全体をよく見れば、さすがは学校内で最強だともわれる逞しい体だということが分かる。胸はこれまで見たことがないくらいに膨らんでおり、見事にシックスパックに割れている腹筋に目をみはってしまう。腕や太ももにある岩石のように盛り上がった筋肉が主張し、もはや学生とは思えない体つきをしていた。

  また体中に刻まれた傷が歴戦を物語っており、本当に喧嘩をして生きてきたのだと実感する。そんな先輩は未だにドキドキしている僕の隣に座り、小さく話しかけた。

  「風呂上がったぞ。どうだ?心構えは」

  「心構えもどうも、まず先輩がウケだった方に驚きですよ。あの状況だと確実にタチだったでしょ…」

  「うまく言えなくてすまねぇな。にしても、もう言葉覚えたんだな」

  「しっ、調べたやつ読んでたら覚えちゃっただけですよ…!」

  その雰囲気からは想像もできない声をあげ、その獅子獣人は笑った。体が大きいせいで手を伸ばすのが精一杯だったが、僕は頑張って彼の肩を掴んで押し倒す。

  「…もうやる気か?」

  「先輩が言ったんですからね。僕もできる限り、頑張りますから」

  「じゃあ…優しく頼むぜ、隼汰」

  先輩はぶっとい太ももを両手で押さえて広げ、いとも簡単に自身の秘孔をあらわにした。あまりにも躊躇のなさすぎる行動に目を背けたくなるが、これが彼の素直さでもあるのだろうと考え直して向き合う。

  大柄な獣人だけあって、穴もまあまあ大きかった。今はソコが排泄口では無いことを必死に考え、僕は作業を始める。

  「えっと、まずはローションでほぐす…」

  とろりとした初めて触る粘液を指に付けて、彼の穴に触れる。するとそれだけでビクッと腰が震え、シワのできたその部分が収縮を繰り返していた。

  だがすぐに僕は、ある異変に気がつく。予想していたよりも既にそこが柔らかくなっていたのだ。

  すぐにその理由を察し、おもむろに指を突っ込んでみる。

  「…ッうは!?っあ、ちょっ…うぁ……」

  「先輩、もしかして慣らしてました?」

  「………わ、悪いかよ…」

  その言葉と同時に肛門がぎゅうと指を締め付け、彼の感情が直に伝わる。予想通りの答えが返ってきてなんとも言えない気持ちになった僕は、指を挿入したまま体に覆い被さった。

  「ほんっとに、僕が好きなんですね。なんか今、すごい嬉しいです」

  「そ、そうか…俺も嬉しい……んひッ!!?」

  嬉しさから少しいたずらじみたことがしたくなった僕は、先輩が言い切る前に弄る指を強めにした。ずぽずぽと出し入れする強さを大きくしていくと、彼の声が熱を帯びていく。

  「ちょッ、っア、お゛ッ…ま、まて、ま゛っ…!」

  「少し激しくしますね」

  「えっ、待てって……あ、あぁ゛あ゛っ!?やめ、や゛、そんな…ぐちょぐちょ、すん゛、な゛ッ!」

  文字通り尻穴を乱暴にほぐしていく。触れているのは直腸と呼ばれる部分らしく、前々から弄っていた影響なのかずいぶんと柔らかくなっていた。

  そしてもう少し奥へと指を挿れ、百目鬼先輩の腹側へと起こして探るように撫で始める。調べたものが正しければ、多分この辺りに…

  と思った時、柔くなった肉壁の中に少しだけ硬くなった部分を感じた。ココだと直感した僕は、その辺りを入念に押し始める。

  「〜〜〜ッ!!??…おい、そこ……!」

  「気がつきました?たぶん、前立腺ってところです。気持ちいいですか?」

  「な、なんか……腹が熱いっていうか…じんじんするっていうか…」

  「うーん、もうちょっと強くした方がいいのかな」

  体が大きいせいで指をめいっぱい突っ込まなければ届かないために少し大変だったが、なんとか気合を入れる。ぐにぐにとさっきより強めに押してみると、腰のビクつきが激しくなった。

  「ッん゛お゛!?……やば、やばいって……なんか…っあ゛!!もう、イキそ…!」

  「大丈夫です。そのまま力抜いてて下さい」

  冷静な声に聞こえても、僕の手は依然として止まることはなかった。卑猥な音がより一層強さを増し、その度に先輩も腰をくねらせて悶える。

  「あ゛っ、あ、無理…い、イ゛グッ!!う゛ぐぅ゛ぅ゛ぅっ!!」

  そして僕は初めて、他人が射精する瞬間を見た。まさかそれが不良の獣人だなんて思いもしなかったけど。

  どびゅうと勢いよく飛び出た精液が先輩の体に付着し、不規則な模様を作る。それは立派な鬣にまで飛んでおり、強すぎる彼の精力を実感した。

  突っ込まれたままの指はヒクヒクと収縮を繰り返す肛門に揉まれており、初めて経験する不思議な感覚に浸っていたかった僕はまだ抜きたくなかった。

  「っはぁ、はっ、はっ…す、すげぇ……今まで何回か弄ったことあるけど、他の人からやられるとこんなに気持ちいいんだな…」

  「……すぎです…」

  「…え?」

  「エロすぎですよ、先輩…!!」

  先輩のあまりにも弱すぎる一面を見てしまった僕は、なんらかのリミッターが外れてしまったようだ。再び挿入していた指を激しく動かし、今度は先輩の凶悪なペニスを掴んでしまう。

  「あひゃッ!?ちょ、お、出したばっ…かああ゛ぁ゛っ!!あ、あ!んあっ、う゛ぅぁッ!!」

  少しだけ長い缶ビールみたいな太さと長さを誇るその肉棒は石みたいに硬く、指がくっつくことはなかった。先走りと精液でぬらぬらした皮を乱暴に扱くと、手を動かすたびに声を上げている。

  無我夢中だった。こんなにも雄獣人の魅力に気付かされるとは思ってもみなかったからだ。

  先輩が不良だからということも要因かも知れない。普段あんなに怖がられている人が僕だけに見せてくれるこの姿に…言いようのない感情が渦巻いていくのが分かる。

  精液がべっとりと付着していた右手で先輩の肉棒を扱き続ける。逆の手ではローションと腸液によってくちゅくちゅといやらしい音を立てながら尻穴をほぐされ、彼は体を存分に震わせていた。

  「ん゛っ、あ、あ゛う゛っ……ま、まて…!おい、また… い゛っ、ぢゃう、から゛ァッ!!!!」

  早すぎる2発目を噴射して先輩は絶叫する。勢いもさっきより強く、尻穴が再び指をキツく締め付けた。

  性感帯を2つ同時に責められたらたまったもんじゃないかと考えていた僕は、精液が顎にまで付着した先輩の顔を覗く。はあはあと息を切らし、力が入らないのか舌をだらんと垂らしていた。

  「おい…ちょっとお前、やりすぎだって…」

  「す、すみません!でも先輩がめちゃくちゃ可愛く見えて…やっと今、先輩と付き合ってるんだなって実感が湧いてきました」

  僕は素直に言った。それはきっと、僕も先輩のことが好きになってしまったということなのだろう。

  不器用だから直接言えるわけでもなかったが、先輩は察してくれたと思う。ぎゅうっと締め付ける尻穴の収縮が今までで1番強くなったからだ。

  

  「僕は人間だから先輩ほど精力はありません。たぶんすぐ終わっちゃうと思うので、もう少しだけ頑張ってくれませんか?」

  「そこまで言うなら別に構わねぇけどよ…でも一応言っとくけど、俺も初めてだからな?」

  「分かってますよ。ありがとうございます、[[rb:豪>ごう]]先輩」

  「ッ!!」

  返答はなかった。耐えきれなくなった僕が、初めて彼を下の名前で呼んだことに驚いたからだろう。

  顔は極限まで強張り、血管が見えてしまいそうなぐらいに紅潮し、ぶんぶんとシーツが破れそうなほど暴れていた尻尾が彼の心の激情を存分に表していた。その反応に嬉しくなった僕は指を抜いて下着を脱ぎ去り、はち切れそうになっている自身の男根を曝け出す。

  そして人生で初めてのコンドームを調べた通り的確に、ゆっくりと装着していく。部屋の明かりに照らされて反射した光が生々しく、それが余計に興奮を掻き立てた。

  はあはあと互いの息が上がっている声だけがこだまする。僕は先輩の汗ばんだ胸筋から腹筋、下腹部にかけてを優しく撫でてから呟いた。

  「じゃあ…挿れます」

  「お、おう。ゆっくり頼む……」

  ヒクつく先輩の秘孔へ亀頭を押し当て、ゆっくりと挿入しようと思っていた。なのにその穴はまるで意思を持つかのように僕の男根を飲み込み、ぶじゅっと大きな水音を立てる。

  「ん゛ぉ゛ッッ!?ッぐ、ふぐぅっ…!」

  「うあ……なんだ、これっ…!あったか…」

  そこは未知の空間だった。体温よりも熱く、ふやふやと柔らかい壁に囲まれた魅惑の穴。想像を超えた感触に僕の男根はゴムが切れてしまいそうなほど膨張し、高まる興奮を抑えきれない様子だった。

  「先輩、全部入っちゃいましたよ…!」

  「本当か…?ってかお前、意外と太ぇな……」

  「きっ、気にしないでくださいよ!それより、先輩は大丈夫なんですか?」

  「苦しくないワケじゃねぇ。でもお前のが入ってるって思うと…なんか、すげぇ興奮すんだよな」

  そう言う先輩の顔は笑っていて、全く苦しそうに見えなかった。初めて見せた穏やかな表情に不覚にも射抜かれてしまった僕は急激に恥ずかしくなる。

  くそくそくそ。なんなんだよ可愛すぎるだろ……!!

  竜巻の如く吹き荒れる感情で胸が張り裂けそうだった。照れ隠しをするようにニヤついてしまった顔をすぐに伏せる。

  「も、もう動かしますからね!」

  「え?ああ………ッあ!うぁ、んぐっ…ちょっ、もうちょっと…弱めに…んあ、あッ…!」

  「せっ、せんぱいがっ、いけないんですから…ねっ!」

  「な、なんて言っ……んが、あっ、あ゛ッ!!」

  ずぼずぼと抜き差しするその感覚は、言葉にできない感覚だった。ゴム越しでも先輩の熱や肉壁の動きが伝わり、容赦なく男根を揉みしだいてくる。

  それはいつものように手で上下に擦るのとは訳が違った。押しても引いても柔らかな感覚が続き、正直本当に訳が分からないのだ。

  先輩の強すぎる性欲によってだらだらと垂れていた先走りが接合部まで流れ出し、僕の男根、ひいては下腹部全体を濡らしていく。

  ぱちゅぱちゅと聞いたことのない音を立てながら透明な粘液が何本も糸を引いているのを見るたびに、先輩と繋がっているということを実感していた。

  「せ、んぱっ……すごい、気持ち…いいです…っ!」

  「ッあ゛ぁ!!んぐっ、うがッ!……俺も、初めてでっ…これ、あ、やべ、え゛ぇ゛ッ!!」

  あの寡黙な不良が、僕のチンポでこんなにも叫んでくれる。気持ちいいと言ってくれる。

  付き合っていた時でさえも嬉しい気持ちは確かにあったはずなのに、こんな姿を見てしまったらもう…僕も我慢の限界だった。

  最強と謳われた百目鬼先輩が、もっと喘ぐ姿を見たい。ただ1人の好きな人として認めてくれた僕にだけしか見せてくれない彼の本性を、この目で見届けたい。

  そんな焦燥に駆られてしまった僕は腰を浮かせる姿勢になり、自身の男根が上向きになるように力強く突き上げる。コリッとした部分に亀頭を押し当て、あえて突かずにそこだけをぐりぐりとなぞった。

  「ぁ!ソコは、やめ……ふぁぁあ゛ぁ゛あ゛ぁッ!!」

  ビクビクと腰を震わせて痙攣し、もはや触らずともイっていた。凶器みたいな先輩の肉棒が僕の前後運動によって暴れ回り、凝縮された白濁がベッドを超えて飛び散っていくのが見えた。

  後始末への倦怠感と申し訳なさが一瞬頭をよぎるが、魅惑的すぎる先輩の筋肉や嬌声に酔いしれてしまっていた僕はすぐに思考を切り替えてしまう。

  今はただ、先輩だけを気持ちよくさせたい。その一心だった。

  「先輩、先輩……!可愛いです、先輩…!」

  「お゛ッ、俺もぉ、きもっ…気持ち、い゛ひッッ!!んあっ、ぅあん!!やべっ、またイク…ッ!!あ゛、でる゛ぅっ!!」

  既にこの短時間で3回以上吐精している先輩のチンポはまだまだ元気そうに膨張を続けており、獣人の…というよりは先輩の精力の強さに謎の安心感を覚えた。

  突けば突くほどに強くなっていく先輩への思いは次第に手を動かし、ぷくりと膨らんだ淡い桃色の突起物へと伸ばしていた。

  「んあ゛!?おい、ま゛ッ!!やめ、そこ弱いッ、からぁ゛ッ!」

  丸みを帯びた先端を摘むと先輩が叫び、そのままクリクリと弄るたびにその巨体を捩らせていた。

  けど手を止めるつもりはない。というより、止められなかったのだ。

  そのまましばらく夢中でばんばんと突きながら先輩の体を愛撫していた時、ある異変に気がついた。あんなに耳をつんざいていた先輩の叫び声が止み、荒い息継ぎだけしか聞こえない。

  流石に疲れたのだろうか。その顔を見るとあろうことか先輩の目はとろんとしており、どこを見ているか分からなかった。

  「はぁ…♡は、ぁへ…♡」

  「せ、先輩…?」

  閉じる気配のない口からはだらだらと涎を垂らし、舌がほとんど出てしまっている。これはもう、喧嘩最強と言われた先輩の姿ではなかった。

  でもなぜか僕には、別の感情が生まれていた。こんなにも無防備な先輩を見たことがないし、どうこうできるのは今のところ僕だけなのだ。

  ゾクゾクと自分の中の何かが湧き上がる感覚を覚えた。今だけなら…先輩を好きにしても良いのではないかと。

  そう思った時には、自身の男根をずるずると後ろへ引きずっていた。次いで勢いよく突き刺し、残っていた力を振り絞って繰り返し始める。

  「ッはん!!♡♡や♡あんっ♡♡う゛ごッ♡がァっ♡」

  「百目鬼先輩…!カワイイ声で、哭くんですねっ…!」

  「だか、らっ♡だ、ダメッてぇ♡♡いったじゃ、ねぇかよ、ぉ゛お゛ッ♡」

  完全に声音が変わっていた。乱れた音程で喘いでは息切れも激しく、言葉を紡ぐだけでも精一杯のようだ。

  おそらく乳首が起爆スイッチみたいな役割を果たしてしまったのかもしれない。僕もこんな状況になって初めてやりすぎたと感じたが、逆に言えばここまできてしまったからには最後までやり遂げてみたかった。

  同時に先輩への気持ちにも気づけた僕は、なりふり構わず腰を振り続ける。そろそろ限界だったが、まだもう少しだけ耐えていたかった。

  この先輩の姿を、しっかりと目に焼き付けておきたかったからだろう。

  「んがッ♡♡あ゛♡♡ソコ、あたるぅッ♡♡きもちっ、ん゛い゛ぃ゛ッ♡♡やべ♡やべェッて♡♡」

  「先輩、番長なんかに見えないです…もうただの、可愛いメスネコですよ…!」

  柄にもない言葉をかけてしまった。それは不良とも言える先輩に対しては侮辱とも取れてしまうものだったが、先輩がまともに聞いているとも思えなかったからこそ口から飛び出したのだ。

  それほどまでに快楽に溺れているのが分かっていたし、僕のことが好きなら許してくれるんじゃないかと思ったからというのもあるけど。

  「だって♡おめぇがッ♡♡こんなに上手いなんて…おごッ♡♡思わなかっ…たからぁ゛ぁ゛ッ!!♡♡♡」

  「よかったです…!ちゃんと調べたかいが…ありまっ、した、よっ!!」

  「ぅあん!!あ、おぐ♡おぐまできてる♡♡もっとくれッ♡♡ケツ、ぐちょぐちょって♡んァ゛ん♡♡」

  あぁ、先輩がこんな淫らな姿を隠し持っていたなんて…きっと誰にも知られてはいけない。

  僕だけの特権。先輩の全てを知ってしまった僕はもう、後戻りは絶対に出来ないのだろうな。

  だがそれでいい。僕だってもう、先輩のことが好きになってしまったのだから。

  溢れ出る欲情を手のひらに集中させ、抑えていた太ももから離す。それだけで先輩は自分から膝裏を押さえてくれるようになった。

  そのまま片方は乳首を、もう片方は先輩のチンポを鷲掴みにする。両手を使うのはうまく出来なかったが、それでも利き手に掴まれていた肉棒を優先して懸命にじゅこじゅこと扱いた。

  「ひゃあ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ああ!!♡♡♡ちんぽっ♡やめ♡んぁッ♡♡しこしこ♡♡すんなッ♡あ゛がぁ♡♡なんかい、イってるとおもっ♡てんだ…っぁ゛!!あ、むりッ♡またでる♡♡♡イ゛グっう゛♡♡」

  そしてまた、何回目かも分からない射精をする先輩。

  淫らで魅力的なその獣人は、ずっと吠えていた。というより、蕩けていた。

  このままずっと続けていたいと思っていたが、僕もさすがにそろそろ限界だ。腰の痛みに耐えながら突くスピードを可能な限り速め、ラストスパートを仕掛ける。

  先輩の肉棒を扱くことを忘れていた手のひらに大きなもどかしさを感じたが、諦めて突くことに専念した。だがここにきて野生の勘でも働いたのか、先輩は僕の状態に気づいたようだった。

  「ッあ゛ん♡う゛♡んお゛ッ♡♡な、んだぁ?♡♡もう゛っ♡♡限界、かぁッ?」

  「そうですよっ…もうっ、無理です…せんぱ、い…でますッ…!」

  「お゛う゛っ♡♡だせだせっ♡♡俺ン中にっ♡♡オメェのザーメン♡ぜんぶっ♡♡ぶっぱなして、くれぇっ♡♡」

  「せんぱい、好きです…!い゛、イ゛ぎます…ッ!」

  「おれもッ♡イ゛グ♡またでちまう♡♡んグッ♡ぐぅお゛お゛おオ゛ぉ゛ッ♡♡♡」

  次の瞬間、僕と先輩は射精した。僕からしたら、人生で最も強い噴射だったと思う。

  ビュルルと鈴口から飛び出していく精液がゴムの中を満たしていく初めての感覚。体感では切れてしまいそうなぐらいに出してしまった感覚があったが、どうやら大丈夫なようだ。

  当の先輩もまた激しく、体を起こしていた僕の目線あたりにまで上へと飛び上がっていた。それは一瞬にして体中に刻まれた先輩の古傷を覆い尽くし、あたかも模様のように斑点や筋を作っていた。

  「っはぁ、はぁっ、はっ…せん、ぱい……」

  「はーっ…はあっ、ふぅっ…ふひゅッ………ンぁッ♡」

  ぬぽんと男根を引き抜かれた先輩がビクビクと全身を震わせる。粘液で濡れた自分の男根を見た僕は、先端に溜まった白い液体の量に自分で驚いてしまった。想像以上に多かったのだ。おそらく2回分ぐらいはあるかもしれない。

  よく持ち堪えてくれたとゴムに感謝しながら外していくと、荒い息を繰り返していた先輩の声が聞こえた。

  「はぁーッ、はぁっ、すげぇ…死にそうだった…」

  「だっ、大丈夫ですか?」

  正気に戻ったのだろう。いつもの声だった。

  でも、自分があんなことになっていたのは覚えているのだろうか。かなり衝撃的な姿だったから覚えていなくても不思議じゃないけど…

  「ああ、でもあんなに気持ちいいとは思わなかった…途中からアタマおかしくなりそうだったしな…」

  「お…覚えてるんですか…?」

  「ちょくちょくな。でも…全部お前が好きだから嬉しかった。自分でもよく分かんねぇけど…初めての交尾がお前でよかったよ」

  数分前はあんなに喘いでいたくせに、今はもうすっかり普通の話し方そのものだ。疲弊しながらも見せてくれた笑顔は優しく、その眼差しを僕は見ることができなかった。

  「すまねぇな、こんなワガママに付き合わせちまって」

  「…好きです」

  先輩は時が止まったかのように動かなくなる。もちろん、僕も同じだった。

  「…………へ?」

  「だから、好きになっちゃったんです…!先輩のことが。……でもセックスだけじゃないですからね。ちゃんとした1人の獣人としてです」

  「おま……」

  「もし先輩が嫌じゃなければ、勉強とかも教えますから!今日のことも絶対に誰にも言いませんし、その…ちゃんと付き合い、ませんか…?」

  その言葉を理解するのに、頭の悪い先輩でもそう時間はかからなかったようだ。先輩の体が急に近づいたかと思うと、汗と精液に濡れた毛皮に抱きしめられた。

  喧嘩のせいで鍛え上げられた力は強く、抵抗しようとしても全くびくともしない。

  「ッ…!すげぇ、嬉しいっ……」

  「せ、せんぱ……ちょ、あの、すごいべっとべとなんですけど…」

  「風呂入りゃ済むだろ?ちょっとだけ恋人みたいなことさせてくれよ」

  「それはそうですけど…じゃあ恋人になったから言いますけど、先輩がこんなに淫乱だったなんて知りませんでしたよ」

  ちょっとからかい気味に言ってみた。学校で1番の不良と恐れられてきた彼にとって、この言葉をどのように受け取ってくれるか僕も気になっていたから。

  だが返ってきたのは、心のどこかで予想してもいた答えだった。

  「インランって、何だ?」

  「…やっぱり。いや、教えないです」

  「なっ、なんでだよ!?」

  また、あの時みたいに腑抜けた声が響き渡る。肩を持つ先輩に見つめられるが、目を逸らしたくなる気持ちを堪えて言った。

  「僕からじゃ教えたくないことだってあります。それぐらいは自分で調べてください、携帯使えるんですから」

  「ええ〜…」

  「それに、少しは勉強もしないとですよ?さっきだってゴム付けてるのに出してとか言ってましたもん」

  「あれは勢いっていうか……てか、んな恥ずかしいこと早速掘り返すなよ!」

  「あ、先輩また顔が真っ赤ですよ」

  そして再び、激しく取り乱す姿を見せてくれるのであった。こうして初体験を終えた僕たち2人は、互いの気持ちを共有できたことに喜びを感じていたと思う。

  後で淫乱の意味を知った先輩はどう思うだろうかと考えながら、先輩と2人で風呂に入ることにした。まさかこんなことになるとは思わなかったが、ぼちぼち慣れて行けたらなと改めて思う僕であった。

  ───

  先輩と初めての経験をした日の翌週、週初めの憂鬱を感じている人など皆無に等しいこの学校に、また足を踏み入れる。

  相変わらず喧嘩は絶えないし、靴箱が修復されることもおそらくずっと無い。普段通り靴を履き替えると、聞き慣れた声に呼びかけられた。

  「おーっす!隼汰!」

  「おはよう善田。…あ、今日は間違えなかったね」

  「だろー?俺だってそこまでバカじゃないんだぞ」

  ありがとうと返そうとした時、またいつものようにあたりが静まり返る。不良たちの一斉合唱が響き渡ると、流れるように校門及び靴箱付近から消えていった。

  善田もまたその1人であり、入り口には僕と獅子獣人の2人だけ。

  「おはようございます、百目鬼先輩?」

  「……おう、おはよう」

  初めて会った時のように、低く唸る雷鳴のような声で返す。これは彼の本当の姿であり、仮の姿でもあるのだろう。

  けれど、特に言葉を交わすことはない。僕もこの学校では極力恋人としてバレないように過ごさなければいけないからだ。

  だがその時、彼がキョロキョロと辺りを見回していることに気がついた。ボロボロになった学ランの裾が揺れ、大胆に開かれた前面からは着崩れたシワだらけのワイシャツが覗く。

  何か探し物ですかと聞こうとした時、突然その顔が近づいてきた。怖くて即座に目を閉じた僕は額に何かを感じる。

  その感触は、とても柔らかくて軽かった。他に感覚として記憶しているのは小さな毛皮の集まりによるくすぐったさと、温かい鼻息。

  不意打ちを喰らった僕は額を抑え、付着していたごく少量の液体に気づいた。まん丸になっていたであろう目を先輩の顔に向け、あんぐりと開いた口は何も話すことができずに目の前にいる獅子獣人を見つめてしまっている。

  当の本人は顔を赤らめながらも、小さく呟いた。

  「だ、誰もいなかったからよ…こうやってするんだろ?」

  「………」

  「な、なぁ。今日は…」

  「は!?しっ、しませんよ今日は!!出席始まっちゃいますから先に行きますよ!」

  「ええっ!?おい、ちょっと!」

  言葉の続きを容易に予想した僕は[[rb:踵>きびす]]を返して走り出てしまう。先輩の声にも反応せず、ただひたすらに体を動かした。

  そして1人取り残された獅子獣人の番長。彼は意味が分からず、ただそこに立ち尽くしている。

  「一緒に帰らねぇかって言おうと思ったのに…やっぱいきなりすんのはマズかったか?……まあ、後で聞けばいいか」

  僕は逃げるように走って階段を駆け登る。ドクドクと激しい動悸を感じながら、必死でさっきの出来事を反芻していた。

  全く、本当に先輩のすることは検討がつかない。あの日にすっかり忘れてできなかったことをここでやってのけるなんて、考えもしなかった…!

  どうしてあんなことをすぐにできるのだろう。いや、不良という彼の生き様が恥じらいや躊躇をかなり削っているとしか考えられない。

  苦しいが、足を止めたくはなかった。止まってしまったら先輩に追いつかれると思ったからだ。

  未だにその動悸が収まる気配はなく、こんなにも激しくなったのはいつぶりだろうと走りながらも自分で驚いてしまう。やっとの思いで自分の学年の階にたどり着くと、幸い廊下には誰もいないことを確認した。

  僕は再びそのままの勢いで走り出す。リュックが上下に揺れ、浮いた紐が肩から何度もずれては落ちていく。

  「はぁ、はぁ、はぁッ、はっ………なら、直接してくれてもよかったのに…っ!」

  体中が熱く、考えがまとまらない。

  息を切らして汗を滲ませ、僕は1番端にある自分の教室へと向かうのであった。