野望編 第六話 巨人を学ぶ乙女達の園

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  ダインの元を離れたくフェカトは、自室で朝食と小休憩を取った後、会合に参加した。

  居並ぶ参加者は先ず、フェカトの変わった衣装に度肝を抜かれ、それがこの世界には無い未知の技術で作られている事は明らかだった。

  たかが衣装一つの事で有ったが最初に技術差を見せつけた事は効果的で有った様で、会合ではフェカトの思惑通りにダイン達に対する期待の声が大きく、その扱いはポロルグ領でも最上級の国賓待遇で接する事が決まった。

  とはいえ、中世レベルの文明のこの世界には高級ホテルなど存在せず、ポロルグ家が賓客用として所持している都合の良い屋敷に一行を迎え入れる事となった。

  そこはポロルグが運営しているマギガント搭乗者育成施設、テガス魔動力学院の国賓向けの屋敷で、警備も万全でマギガントもかなりの数が用意されている、そして学院のマギガントを使ってダイン達の適正を見極める事となった。

  因みにシーベアー号は型枠を作って固定して今の場所に留める事となった。

  ダイン 「国賓用の屋敷ですか、確かにシーベアーはあくまで乗り物ですから、長期滞在を考えると手狭では有りますが」

  フェカト 「はい、護衛はフェカトの責任を持って致しますのでご安心下さい、もっともダイン様には不要かも知れませんが」

  ダイン 「いや、私だって巨人と生身では戦えませんよ」

  七実 「どうでしょうね、真夏ちゃんは飛び道具ですから試してみたいんじゃ無いですか?」

  真夏 「確かに、いざという時にアテになるのか試したい気持ちは有りますけど、巨人って高いんですよね」

  フェカト 「三乗貴族貨ぐらいですね、大体家一軒が一乗貴族貨ですから、家百件分ぐらいです」

  七実 「感覚で言うと貴族貨が百万円ぐらいです、乗は掛け算の意味で一乗だとかける十で一千万、三乗だと十億ぐらいですか」

  ダイン 「現用の戦車と同じぐらいの額ですね、機能を考えれば当然それぐらいはしそうですね」

  フェカト 「確かにかなり高級な物です、用意する屋敷には皆さま様にマギガントを調達しますし、フェカトの機体と護衛機やら訓練機が二十機以上、学院にはちゃんとした整備施設や整備員も大勢居ますので正に打って付けなんですよ」

  ダイン 「本来の目的は私達をマギガントで勇者と戦わせる事なんですよね」

  フェカト 「はい、王の選定戦は五戦で行われます、一対一が三戦と、ニ対ニ、五対五が一戦ずつで三戦勝った方が勝ちになります、相手の勇者達は三人組なので全てで誰かと対戦すると思います」

  ダイン 「処女三人組と言ってましたが、処女に利点が有るんですか?」

  フェカト 「はい、処女の魔力だとマギガントで空を飛べるんですよ、天翔ける処女っていう飛行装備が使えます」

  ダイン 「なるほど、見たところ飛び道具を装備した機体が無いので飛行が有効というわけですね」

  フェカト 「はい、勇者達は最低でも二万の魔力が有りますから、飛行で一万消費しても凄腕の乗り手と互角の魔力が有るんですよ、中でも一番の娘は魔力七万って言われてます」

  ダイン 「なるほど、三人トータルで十二万と言ってましたから残る一人が三万ですね、となると七万は別格ですか」

  フェカト 「はい、ダイン様以外では太刀打ち不可能かと、ダイン様は単体で十二万の魔力でしたから、七実さん二万、真夏さん三万、ファービさん四万、愛耶さん四万、ニアさん三万で合計二十八万でした、因みに元のフェカトは八千で今は三万です」

  ダイン 「ですが、魔力=戦力でもないんですよね」

  フェカト 「はい、魔力は起動出来る装備の数とか機体の出力に影響します、でもダイン様ぐらい桁違いだと防御に五万振るだけで、この世界の騎士には倒すの不可能ですね、実際強い勇者もそういうモノらしいです、普通は防御に二、三千の魔力ですから」

  七実 「普通二、三千のところ五万じゃ凄いチートですね」

  フェカト 「強打で五百ぐらい削れますが、数十打打ち込めば機体が限界で動きません」

  ダイン 「そういう物なんですか、ロボットアニメに慣れてるともっと頑丈だと思ってました」

  フェカト 「アニメ、ああ、ダイン様の世界の娯楽ですね」

  七実 「はい、七実も大好きなんでマギガント弄ってみたいです、あとやっぱり銃欲しいですよね」

  ダイン 「確かに、この世界は火薬を使う武器が無い様に見えますが」

  真夏 「はい、みんな槍とか薙刀とか長い武器ばっかりですよね」

  フェカト 「ここじゃそれが普通ですけど、空飛ぶ機体には長槍で対抗するんですよ」

  ダイン 「なるほど、一度マギガント同士の戦いという物を見てみたいですね」

  フェカト 「なら、引っ越しが終われば案内しますよ、黒豹の訓練は毎日やってますし、週末には闘技場も開かれます、確かに戦いのイメージが掴めてませんとどう戦っていいか解りませんよね」

  ダイン 「はい、ですから私達も早く引っ越しの準備を始めましょうか、まぁ私達も旅行中でしたのでそれ程荷物も有りませんが」

  愛耶 「はい、服が数着と着替えぐらいしか有りません、でも、シーベアーの調理器具や調味料は持っていった方がいいですよね」

  ダイン 「そうですね、皆で手分けしてなるべく多く持ち出しましょう、発電機と燃料は無理ですかね」

  愛耶 「魅力的ですけど、無理ですね、船体に組み込まれてますから」

  ダイン 「なら、電化製品は置いて行きましょう」

  そうして、身支度を整えた遊魔達は使えそうな荷物をフェカトが用意した馬車に詰め込んで目的地に向かうのだが、精々四人乗りの馬車には別れて乗るしかない。

  ダイン 「七実、愛耶はフェカトと同じ馬車で先行して下さい、残りは私と同じ後ろの馬車に乗りますよ」

  真夏 「いいんですか、フェカトさんに尋ねる事が有ると思いますけど」

  ダイン 「最近、七実と愛耶に偏ってますからね、私としても機会を作ってファービやニアと話さないと行けません」

  ニア 「ダイン様に気を遣って貰えるだけでもニャアは幸福です」

  ファービ 「ファービは真夏先輩と居れれば大丈夫ですけど」

  ダイン 「では、真夏はどうですか、ファービが居れば大丈夫ですか?」

  真夏はファービの顔を申し訳なさそうに見ると口を開く。

  真夏 「真夏はダイン様の側がいいです、ファービの事は嫌いじゃありませんけど、ダイン様じゃないと満たされない事も有りますから」

  ファービ 「そんな、ファービの尻尾じゃ物足りないんですか!」

  真夏 「そういうファービも、ダイン様の肉槍には勝てませんよね?」

  ファービ 「それは・・・愛じゃ無くて肉欲を満たすというか」

  ニア 「ニャアはダイン様大好きですから隣に座ります、ファービは真夏の隣がいいんですよね」

  真夏 「それだと真夏が可哀想じゃ無いですか」

  ダイン 「なら正面に座って下さい、それぐらいなら舌が届くでしょう」

  真夏 「それって」

  真夏の顔が笑顔になる、キスも遊魔の重要なコミュニケーションなのだ。

  ダイン 「動き始めたなら人目にはつかないでしょう、なるべく正体は隠した方が良さそうですから」

  ファービ 「今のところここには人間しか居ませんから、ファービの世界ルヴァルテには普通に異形も居ましたけど」

  ダイン 「文明レベルはどうですか、ここは中世ぐらいですけど」

  ファービ 「ルヴァルテも変わりませんよ、日本のビル見てびっくりしましたから、アレに比べればこの世界の方が馴染みますね」

  真夏 「そうだったんですか、初めて聴きました」

  ファービ 「イレイサーは日本のコンテンツが参考にされてますから中世感有りませんけど、本来は鎧でしたから、でも良く考えると鎧の意味は無かったんですよ、動き難いし」

  ニア 「イレイサー怖いので、もっとダイン様に抱きついていいですよね、ニャアこの二人に追い回されたんですよ」

  真夏 「どさくさに紛れて甘え過ぎですよ」

  ダイン 「まぁ猫は気まぐれなモノですから」

  そうして、ダイン達の馬車も目的地に向かって出発する、中世レベルの乗り物の乗り心地は悪く、激しく揺られて舌を噛みそうなので真夏へのキスはお預けになったが、一緒に乗る牝達は真夏も含めて楽しそうにしているのでこの組み合わせで正解だったのであろう。

  愛耶 「結局、あんな乗り心地じゃ話す事なんて無理でしたよね、文明の素晴らしさを実感しました」

  七実 「七実なんて揺れ過ぎて酔っちゃいましたよ、ダイン様に醜態見せずに済んで助かりました」

  真夏 「それにしても刑務所みたいなところですね、高い塀ですよ」

  ダイン達一行が辿り付いた、テガス魔動力学院は塀というより四方を城壁で囲まれて城塞都市の様だった。

  七実 「むしろコレは三国志の都市みたいです、規模は小さいですが」

  フェカト 「色々と秘密の区画とかも有るんですよ、特別なマギガントのテストとか」

  七実 「七実そういうの大好きです、先ずは量産型改造して七実専用作りたいです」

  真夏 「また変な病気が始まったよ、そういうのはいいから」

  ダイン 「良くありませんね、私もダイン専用機を作るつもりですから」

  七実 「そうですよ、皆んなの特性に合わせてカスタムするんですよ」

  フェカト 「確かに普通の機体じゃ、皆さんの能力を発揮させるには役不足ですからね、平均的な騎士は魔力一万ぐらいですから」

  ダイン 「楽しみが一つ増えましたね、楽しんでこそ遊魔ですから」

  フェカト 「ダイン様には他にも楽しみを用意してますよ」

  ダイン 「そうなんですか」

  フェカト 「はい、中に入ると解ると思いますけど、ここ女子校なんですよ」

  ダイン 「いや、なら私は入っちゃ駄目でしょう」

  フェカト 「ダイン様が男である事以外、ここが一番都合の良いんですよ、元々警備厳重ですし、マギガントも沢山有ります、それに閉鎖された空間なので情報が漏れ難いんですよ、まぁ間者は既に入り込んでますが」

  ダイン 「ですがここの生徒が嫌がるんじゃ無いですか?」

  フェカト 「それは無いでしょうね、何せダイン様の魔力は十二万という桁違いですから、逆に誘われると思いますよ、子供に期待出来ますから」

  七実 「入れ食い状態って事ですか、でもダイン様は顔と純潔にうるさいですよ」

  フェカト 「マギガントの搭乗者には処女多いですよ、そもそも女性の方が魔力高くて、飛行ユニットの天翔ける処女は文字通り処女限定ですから、準備が出来れば門が開く筈なので楽しみにして下さい」

  何の準備かよくは分からなかったが、門が開くとそれが何の為だったか直ぐに理解出来た、正面の大きな建物までの道の両脇に女生徒達が整列して、一行を出迎えているのだ。

  余りの厚遇に遊魔一同は度肝を抜かれてしまうが、それを見るフェカトは面白そうに微笑んでいる。

  フェカト 「さぁ行きましょうか、皆んなダイン様に興味有るんですよ」

  ダイン 「余り期待しないで下さいね、私なんて大した事有りませんから」

  フェカト 「それはどうでしょう、マギガントに乗って下されば直ぐに解りますよ」

  フェカトはそう言ってダインの背中を押すと、腕を取ってダインと先頭を歩き始める、残る遊魔達も置いていかれるわけには行かないので後に続くと、列に並ぶ女生徒達からどよめきが起こっている。

  そしてその内容に耳を傾けてみると、ダイン達の魔力に関する内容だけで無く、フェカトの大胆な行動に付いても語られている、フェカトに婚約者がいる事は周知の事実の様だが、そのフェカトがダインの腕を取って共に歩いている事に皆困惑している様だ。

  ダイン 「昨日召喚した異世界人とこれだけ親しくしていれば皆驚くでしょうね」

  フェカト 「はい、フェカトも家の方針で大人しくしてましたけど、婚約者には不満だったんですよ、でもダイン様が相手なら家の者も文句は言えないと思います」

  ダイン 「私を出しに使ったわけですか」

  フェカト 「もう、堕したのはダイン様じゃないですか、でもフェカトも満足してますよ、何せ今のフェカトの魔力は勇者にだって負けてませんから、空は飛べなくなっちゃいましたけど」

  フェカトはよりアピールする様にダインの腕にすがると周囲からどよめきの声が上がる、ダインは衆目に曝される事に慣れてはいなかったが、フェカトが楽しそうにしているので素直に折れて周りに手を振ると、それに応えてくれる娘もいて最終的にはその状況を楽しんでいた。

  城門からの中央通路を抜けてようやく一行は正面の大きな建物の前に着くと、仁王像の様に両脇に立ったマギガントが道を遮っていた長物を持ち上げて道を開く、これにはダイン様を歓迎する意味合いが有った様で、一行はそれを通り抜けて建物へと入って行った。

  おまけ

  テガス魔動力学院 ポロルグに置けるマギガントの総合施設、整備修理から乗り手で有る騎士の育成まで様々な施設を備えている、女性向けの施設で男性の騎士候補はダインが初めてのケースになる。

  元々独立国家だったポロルグのマギガントであるジーカの操縦を訓練する為に設立された歴史ある学院でもある、マギガントが普及する以前に作られた城塞都市を原型にしており、城壁に囲まれている為周囲に情報が漏れにくい、その為、他国のマギガントの調査や運用試験も行われている。

  併設された工房ではマギガントをゼロから製造するノウハウも持っているが、材料不足でなかなか作業が進んでいない。