002-009
突然の勇者アーキアの来訪で戸惑うダイン一行だったが、そんな中、七実だけは何処かズレていた、一人無警戒にアーキアの回りを一周回ると、その括った長い髪を手に取ってマジマジ見つめてから口を開いた。
七実 「凄いですね、この赤も地毛ですよ、こんな深い赤の髪の毛も存在するんですね、一本貰ってもいいですか」
アーキア 「何だか変な娘だよね、アキの髪の毛なんて普通だよ」
七実 「いえ、七実の居た世界にはこんな赤い髪の毛の人は居ませんでした、という事はアーキアさんはまた別の異世界人ですよ」
ダイン 「異世界って多いんですね、もしかしてルヴァルテという世界の方ですか?」
アーキア 「ルヴァルテ、聞いた事無いかな、大体自分の世界に名前なんて付いてるの?」
ダイン 「そうですよね、私達も世界は世界でしたよ、他の世界を観測出来てる世界では有るのかも知れませんね、このファービは異世界ルヴァルテの人間なんですよ」
アーキア 「嘘、なら今ここに四つの世界の人間が居る訳かぁ、来て良かったよ」
ポーカ 「私は迷惑なんですけど、勇者リエルにやられた私のウウル・ジーの他に手間の掛かる機体が増えたんですから、おまけに明日からダインさん達のマギガントも搬入されるんですよ、正式にクガトに抗議しましょうか?」
アーキア 「それは止めて欲しいかな、身勝手過ぎるって何時も言われてるんだよ、でも、来ちゃったのは仕方ないよね、ダインさんもそう思うでしょ?」
ダイン 「まぁ確かにそれは有りますが、ここはここで楽しそうな世界ですよね、マギガントは結構私のツボですから」
アーキア 「ダインさんそういう人かぁ、まぁアキも楽しいんだけどね、でも恋愛禁止ってのは頂けないよね」
ダイン 「そうなんですか、私は構いませんよね」
フェカト 「もちろんです、それにダインさんのお仲間も大丈夫ですよ」
アーキア 「それって、空飛べないって事だよね、アキは空飛べるから本当に飛んで来たけど」
フェカト 「そうだとは思ってましたが、マギガントはどうしたんです?」
アーキア 「普通に闘技場の外に置いてるけど、悪かったかな」
ポーカ 「私は別に、でもクガトの人間は怒るでしょうね、テガスの人間は優秀ですから間近で見るだけで色々解っちゃいますよ」
アーキア 「あー、それならアキが来た事内緒にしてよ」
フェカト 「それはもう無理じゃ無いですか、フーティアは勇者のマギガントって有名ですから」
アーキア 「ヤバいなぁ、どうしよう」
フェカト 「いっその事ポロルグに寝返りません、そうすれば保護して上げますけど」
アーキア 「ちょっと魅力的だけど、リィは裏切れないかな、ずっと友達だし」
フェカト 「リィですか、誰です?」
アーキア 「リエルの事だよ、アキ達は親しい仲だと省略して呼ぶんだよ」
フェカト 「ならリエルを説得するとか」
アーキア 「そういう手もあるよね、でも戻るとアキが怒られるじゃん」
ダイン 「なら、アーキアさんを人質にしたと言って誘き寄せましょうか、それならアーキアさんも怒られませんよ」
アーキア 「良いアイデアかも、でもリィ以外にもクガトに友達も居るからね、ポロルグには来れないよ」
フェカト 「まぁ軽い冗談です、でも、頼られれば受け入れますからね、フーティア使えば直ぐでしょう」
アーキア 「この人怖い人だよね、普通に裏切り薦めて来るよ」
ポーカ 「誰だか知らないのに話してたんですか、この人がフェカト・ポロルグさんですよ」
アーキア 「うわぁ、レボトがキレてた人じゃん、でもレボトより話通じそうだな」
フェカト 「高圧的で有名なレボト・クガトに比べればフェカトは話が解る女ですよ、ダインさん達も国賓用の屋敷に暮らして貰いますから、そうだ、この後の夕食をご一緒にどうですか、どうせ怒られるなら、今は楽しんだ方がいいですよね」
フェカトは意味深な視線をダインに送っている、何かを食べさせるという事は堕液を仕込むチャンスという訳だ、そして、アーキアを籠絡してしまえば、ポロルグは戦う前から勝った様なモノなのだ。
ダイン 「それは名案ですね、四つの世界の人間が集まれば面白い話が出来ると思います、私達の世界から持ち込んだお菓子もそろそろ処分しないと行けませんからね」
アーキア 「え、ダインさんの世界のお菓子とか有るの、アキもそれは興味有るかも、この世界は甘味が足りて無いから」
ダイン 「そうなんですか?」
フェカト 「いえ、フェカトは普通だと思いますけど、でもダインさんに招待されて食べた甘い物は絶品でしたね、確かにああいう菓子はここには無いですね」
アーキア 「マジで、アキも食べてみたいかも」
ダイン 「生菓子はそろそろ駄目になるので今がチャンスですよ、十分な量も有りますから、私達も食べ納めですね」
七実 「そんな、お菓子もう食べれないんですか、それに美味しいお菓子無いなんて聞いてませんよ」
フェカト 「いえ、フェカト達の世界のお菓子も十分美味しいですよね」
ポーカ 「私達は美味しいと思ってますけど、もっと凄い物食べてればこうなるんじゃ無いですか、フェカトさんが一番解ると思いますけど」
フェカト 「あー、あのレベルはここの料理人じゃ絶対無理ですね、そもそも甘味って果物から得るので今の時期は余り有りませんよ」
七実 「嘘、砂糖無いんですか、塩の甘い版の様な粉なんですけど」
フェカト 「ダインさんの世界にはそんな便利な物が有るんですか?」
ダイン 「むしろ無い方おかしいのでは、ファービのルヴァルテにも砂糖は有りましたよね」
ファービ 「はい、配給制でしたけど、砂糖は有りましたよ」
アーキア 「今ので納得したよ、砂糖無いからここのお菓子は甘く無いんだよ、マジか、今まで砂糖使って無い菓子食べてたなんて」
愛耶 「砂糖なら結構持って来てますけど、それほど貴重ならば節約しないと行けませんね、生菓子も貴重ですけど、悪くなる前に食べないと勿体無いですよ」
愛耶も参戦して、遊魔はアーキアを籠絡するつもりだ、砂糖が無くても甘い母乳を出せる遊魔は甘味に困る事はないのだ、そして、異世界の貴重な甘味という何処の世界の女子にも有効な手段の前にアーキアも折れてしまう。
アーキア 「砂糖おみあげにくれるなら、夕食一緒に食べてあげるよ、アキだけが美味しい物食べるのリィに悪いから」
ポーカ 「本来お願いする立場なのはアーキアさんだと思いますけど、私はここの学長として学院内で出される料理には責任が有るから食べないと行けませんが」
ダイン 「はは、学長も女の子なんですね」
ポーカ 「何だか私が甘い物好きなのがおかしい様な発言ですよね」
フェカト 「ポーカ学長はいっつも渋い顔してますからね」
ダイン 「そうですか、渋いじゃ無くて知的だと思いますけど、とても魅力的です」
愛耶 「もう、またすぐそんな事言って、ダイン様が女性に優しいのは知ってますけど、誰にでも優しいのは間違っていると思います、もっと身近な女性達を大切にすべきです」
アーキア 「達って、やっぱりそういう事なの、異世界から女五人の男一人って怪しいとは思ってたけど、一夫多妻の世界だったの?」
愛耶 「ダイン様は常識に囚われない方なんですよ、女の子達が幸せに思うなら受け入れてくれます、そして私達は全員幸せなんです」
アーキア 「まぁ、当人達が納得してるならアキも何も言わないよ、でも、アキはアキだけを愛してくれる人がいいかな、まぁ恋愛禁止なんだけどね」
アーキアは苦笑いして言った、柔軟な思考の持ち主な様でダインも一先ず安心したが、表面上と言葉は偽れるモノなのでまだまだ安心は出来ない、今はアーキアに余り不信感を持たれてはこの後がやり難くなるかも知れないのだ。
フェカト 「ですが、多くの人が好きになるという事はそれだけ魅力的って事ですよね」
アーキア 「まぁそうなるのかな」
七実 「深く接すると見える事は有りますからね、気に食わない事が有っても私達がアーキアさんの欲しい物持ってるわけですから、我慢してくださいね」
アーキア 「気に食わないとか嫌いじゃ無いんだよ、正確に言うと理解出来ないかな」
ダイン 「アーキアさんは自由奔放そうですが、常識人なんでしょうね、外れちゃいけないところが解ってるですよ、ですが外れてみると解る事もあるんですよ」
アーキア 「あーもう、そういうのはいいや、取り敢えずご飯食べて甘い物食べて、砂糖貰って帰るよ」
フェカト 「それでいいんじゃ無いですか、後の事はポーカ学長に任せて屋敷に帰りましょう、フェカトも異世界に興味有りますし」
ダイン 「そうですね、ちょうど小腹が空いて増すのでお茶にしましょう、今日の予定はもういいですか?」
ポーカ 「構いませんね、私もアーキアさんのお陰で仕事が出来ましたので、夕刻に屋敷の方に伺いますね」
フェカト 「ではフェカトはダインさん達連れて屋敷に戻りますね、お菓子に合う様な美味しいお茶も持って来てますし」
ダイン達にアーキアを加えた一行は、闘技場を後にして屋敷の有る公園区画に向かう、公園区画は学院でも生徒達の憩いの場になっており、一日の授業を終えた生徒達が大勢いるが、皆んな遠巻きに様子を伺っている様だ。
そして一行の中にクガトの勇者アーキアがいる事も広まっている様で、アーキアは噂されるのが嫌いな様で明らかに機嫌が悪くなっている。
アーキア 「コソコソ言わずに訪ねていたらいいのに、アキは逃げも隠れもしないし挑戦は受けるよ」
フェカト 「止めてください、これ以上工房の仕事増やしたら本当にこちらの妨害として報告しますよ」
アーキア 「でもさ」
ダイン 「何もアーキアさんだけが晒し者にされてるわけじゃ有りませんよ、私達も午前中に出迎えといって生徒の中を歩かされましたから、まぁ、私は若い女生徒達を値踏みするのが楽しかったですが」
アーキア 「あーダインさんそういう人なんだ、ちょっと幻滅しちゃうかも」
ダイン 「私は美しいモノを愛でるのが好きですからね、アーキアさん見るのも楽しいですよ」
アーキア 「褒めてくれてるんだろうけど、ゾッとするよね」
七実 「これがダイン様流の賞賛の言葉ですから許してあげて下さい、でも、アーキアさん七実が嫉妬するぐらいにお綺麗ですよ」
アーキア 「それ、ダインさんが褒めたからじゃん、女心解って無いよね」
アーキアもようやく遊魔達の集団に慣れてきた様だ、何というかこの集団の奇妙なところは同じ男を愛する女達が異常に中がいいのだ、集団の最後尾にいるファービと真夏は女同士でイチャイチャしているし、愛耶とニアは楽しそうにお菓子の話をしている、そして、ダイン、フェカト、七実は三人でアーキアの相手をしてくれている。
ダイン 「でも、七実も大目に見てくれるんですよ」
七実 「実際の話、七実達だけじゃまだダイン様を完全に満たしてないんですよ、ですから後何人か増えても大丈夫なんですよね」
アーキア 「でもアキみたいなのが来てダインさん独占しようとしたらどうするの?」
七実 「本当にダイン様が好きなら、そんな事出来ませんね、それが解っているからダイン様の牝達は仲が良いんですよ、アーキアさんがどう思うか解りませんけど、身体の関係も重要なんです」
アーキア 「男と女の関係ですか、アキじゃ駄目だな、知ると居場所が無くなっちゃう」
七実 「ダイン様に純潔を捧げるなら、絶対見捨てられませんけど」
アーキア 「でも無理だよ、リィが待ってるし」
ダイン 「それでいいんですよ、アーキアは魅力的ですが、私も全ての愛らしい者を独占する気など有りませんから、アーキアと私の道が交わった時に考えればいい事です」
ダインの言葉にアーキアは少し拍子抜けしてしまうが、ダインに今はその気は無いと言われると少し安心してしまう、敵としてこの世界に呼ばれて邂逅したダイン達とアーキアであったが、両者を敵としているのは召喚者側の都合で有って、互いに憎み合っているわけでは無い、そして、ダイン達はアーキアにとって、仲良くするとお得な相手で有る様なのだ。
おまけ
クガト領 ククジア王国の一地方、選定戦でポロルグとは別の候補を推しており、勝つ為に勇者の召喚を行ったが、前例の無い魔術で有った為にその出自について悪い噂も有る。
現領主のレボト・クガトの評判は余り良く無く、利益の為にかなり強引な事も平気で行っている悪徳貴族で、彼に対抗する為にポロルグを支援する貴族は多い。
その領土に旧魔王城が有り、クガト家が改修して今も居城にしている、勇者召喚に使った魔術は魔王の魔術とも言われており、魔王城から得られたとされている、実際、ポロルグ側に召喚術を伝えた魔術師がそう発言しており、かつての魔王自体も異世界からの来訪者だと言われている。
領地の広さに比べて作物の収穫量は多く無いが、多くの鉱山を抱えており鉱物の収益で莫大な財を蓄えている、そして、国内有数のマギガント工房も所有しており、ゾッフォの多くはクガトで製造されている。
お抱えとして、鉄杭騎士団を有しており、その名の通りゾッフォを採掘に使っている。