暗躍編 第十九話 厨なる心

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  国賓屋敷に場所を移した会見はルーフィンを威圧させない様に遊魔側の出席者を絞った形で行われたいた。

  大きなテーブルの片側中央にダインが座り、両脇を七実とフェカトが固める、対して乳魔はダインの正面にルーフィンが座って片側にリレッタが控えている。

  ダイン 「どの様な状態でもルーフィンさんには不安が付き纏うでしょうが、取り敢えず二人の同席を許して頂きたい」

  ルーフィン 「覚悟はしてましたから、それにルゥと読んで下さい、ダイン君にはそれだけの力も有りますし」

  ダイン 「私もダインで結構ですが、ダイン君と呼ばれるのも悪くない感じです」

  ルーフィン 「それならダイン君で行きますね、その方が親しみが湧きますから」

  ダイン 「はい、それで単刀直入に主題を挙げると相互不可侵条約の締結ですよね、ククジア国王選定戦では双方の勢力は敵対しているかも知れませんが」

  ルーフィン 「いえ、ルゥはククジアの国王なんて誰でもいいですよ、ティアスさんの方が優秀ですのでそれでいいですよ」

  ダイン 「それではこちら側が有利では有りませんか」

  ルーフィン 「いや、クガトの王子は優秀では有りますが、それだけですからやる事に面白みが無いんですよ、その点ティアス・ククジアは面白い娘ですよね」

  ダイン 「それは私が保証します、ティアスは良い意味の馬鹿が出来る娘ですから、出会って直ぐに私に一服盛ろうとしましたからね」

  リレッタ 「ティアスらしいです、欲しいモノを得るのに手段を選ばないんですよ」

  ダイン 「リッタも何かされたんですか?」

  リレッタ 「いや、学院主席の地位を得る為に手当たり次第に協定戦してましたから、でも殆ど勝ってましたよ、普通はマギガントの修理にお金が掛かるから余りやりませんがティアスは今でも学院の勝利記録を保持してます」

  フェカト 「ポロルグが全面支援してましたから、今はダイン様の元にあるポナリアをローテーションでティアスに送っていたんですよ」

  リレッタ 「ポロルグの野望は見え見えでしたからね、でもそれでリッタもフーティア貰えたのでチョット感謝してたんですよ、ルゥ様に取られちゃいましたけど」

  ルーフィン 「フーティアなんてルゥには不要でしたけどね、ルゥは戦いには向いてませんから」

  ダイン 「色々思惑があったんですね、ティアスの努力は私が利用させて貰いますけど」

  ルーフィン 「ティアスにカリスマが有るのは理解してますのでそのまま進めて下さい、元々ククジアって地域の力が強いですから、ルゥにはクガトを手中にするだけで十分ですし、今はそれで手一杯なんですよ」

  フェカト 「ククジアは二代国王の暴挙で王家の力が弱められてますからね、代わりに地方の有力貴族が力を持ってましたから、ポロルグはその一貴族となる事で勢力を立て直したんですよ」

  ダイン 「それは分裂もあり得るという事ですよね」

  七実 「ダイン様とても悪い顔してますよ、何を考えているかは解りますけど」

  リレッタ 「人類圏国家って、戦争は起こしていませんけど、協定戦はしょっちゅうですからね」

  フェカト 「協定戦は産業として重要ですから、人が殺し合うより強いマギガントを作る方が技術も発展して、それが生活に応用されるんですよ、マギガントの鎧を作る技術で鍋が進歩したのは有名な話です」

  ルーフィン 「確かにクガトって鍛治が盛んですよね、マギガント工房で修行して独立する者も多いと聞きますし」

  フェカト 「各国からの引き合いも多いですから、ジーカを作ったのも元はクガトで冷遇された天才工員ですから、頭良過ぎて理解して貰えなかったみたいです」

  ダイン 「お金の掛かる事は慎重になりますからね、非凡な人間には決断出来ませんよ」

  フェカト 「だからティアスの様な王が必要だと思うんですよ、ティアスは楽しいにお金を使いますから、辺境の村にはティアスが起源の祭りが幾つか有るそうです」

  ルーフィン 「良い人材です、乳魔に欲しいぐらいですけど、ダイン君のお気に入りですよね」

  ダイン 「当然です、ティアスはフルアーマー遊魔第一号ですから」

  ルーフィン 「ふるあぁまぁ、って何ですか?」

  七実 「武器を仕込んだ鎧みたいなモノですね」

  リレッタ 「確かにティアスの姿って尖ってましたけど」

  ダイン 「私は奪う事はあっても、奪われるのは大嫌いですから遊魔を奪おうとすると全面戦争ですね」

  ルーフィン 「異性っていうのが大きいんでしょうか、ルゥは大丈夫ですね、また増やせばいいだけですから」

  七実 「どちらも魔族ですけど、結構違いますよね」

  ルーフィン 「ダイン君の方はハーレムだからね、ルゥの力は存在証明みたいな感じだし、この世界で押し潰されそうになってたルゥに与えられた救いなんです」

  七実 「確かにアキやリィみたいな脳筋と比べられると大変ですよね、力強い英雄は解り易いですが、軍師の才能は凡人には理解出来ません」

  ルーフィン 「ダイン君は良い理解者に恵まれてるよね、ルゥの眷属はここまでルゥを解って無いよ」

  ダイン 「そう作り変える事が重要ですから、七実には資質が有りましたが私が延ばした事も大きいんですよ」

  フェカト 「その資質ってモノが他の娘とは根本的に違いますよね、だからナナがここに居るわけで」

  ダイン 「初めての眷属は色々と特別なんですよ、ルーフィンの初眷属がリレッタなので、揃えたという意図も有ります」

  ルーフィン 「なる程、ダイン君にとって初めての女の子というわけか」

  ダイン 「鋭いですね、確かにリスクを嫌う私は女性との肉体関係を避けていましたからね、ですが沸き起こる異形の欲望は七実を心から求めていたんですよ」

  ルーフィン 「それは二人共幸せな事ですよね、ルゥとリッタはお互いを評価してはいましたが愛情や信頼は無かったですから」

  リレッタ 「それではナナはダイン様が好きだったんですか?」

  七実 「それ聞いちゃいますか、恋愛とは違うと思いますけど、一緒に居て一番楽しい男性でしたね、最もナナに男友達なんてダイン様以外いませんでしたけど」

  フェカト 「お綺麗なのに意外ですね」

  七実 「今のナナの姿は遊魔である事が大きいんですよ、全体的に地味でしたから」

  ダイン 「私にはとても魅力的でしたけど、飾らなくて美しいのが一番です、化粧で美しさを作るのは絵と同じですよ」

  七実 「ダイン様って、絶対人間の女の敵ですよね、遊魔には唯一無二の大切な存在ですけど」

  ルーフィン 「そう言わせるダイン君の支配術ってやっぱり本物ですね、本当に魂への干渉では無いのですか?」

  ダイン 「出身世界の知識量の差が、発想の違いを生んでいるんでしょうね、私は得られる情報から知性とは何かという疑問の解答を導き出したんですよ、そしてその回答を中心に置くと魂など存在しないという結論になったんですよ、まぁ魔術の存在が有るなら変わるかも知れませんが、私の真理はここでも通用してますからね」

  ダインはそう言ってフェカトの髪を撫でるとフェカトとは満面の笑みを浮かべる、このフェカトの姿がダインの自説が正しいという証明でも有るのだ。

  リレッタ 「確かにフェカト・ポロルグは完全にダイン様に堕とされてますよね、とても仲の良い許婚が居た筈ですけど」

  ダイン 「愛する女性はちゃんとモノにしないと、いつ心変わりするか分かりませんから」

  ルーフィン 「確かに魂否定の証明と言われれば妙な説得力が有ります、この短期間にダイン君が真っ向手段でこの子を惚れさせたとは思えませんから、やはり根底に精神支配の方法が有るんですよね」

  ダイン 「支配では有りませんよ、私の真理を知ればこうなってしまうだけです、人間の思考は得た情報から導き出されますから」

  ルーフィン 「思考誘導という事ですか、縛れないなら道を示すわけですね、ですが魂を否定するならルゥを乳魔にしたザキトスの思念とは何でしょう、アレが存在したから今のルゥが産まれたんですよ」

  ダイン 「まぁ何かしらの魔術でしょうね、状況を詳しく教えてくれると可能性の提示は出来るかも知れませんが、私に手の内は教えたく無いでしょう」

  ルーフィン 「ダイン君の精神誘導を教えてくれるなら良いですよ」

  ダイン 「この手段の有効性は十分に理解してますが、体感して盗み取るしか不可能だと思います、つまり私とルゥの頂上決戦になる訳ですね、私としては負ける気はしませんが、三百年の叡智は私の予測を超えている可能性も否定出来ません」

  ルーフィン 「ルゥの自尊心を煽る作戦みたいだけど乗れないかな、実際にリッタがこうなった以上ルゥも同じだと思うから、でもダイン君のやり方のヒントは貰ったからルゥ也に頑張ってみるよ」

  ダイン 「ルゥの存在は私の不安ですので頑張って下さい、不安を感じないと色々と鈍りますからね」

  リレッタ 「強敵のいない生活って張合いがありませんから、リッタも学院を出た時にティアスの存在の大きさを実感しましたから」

  フェカト 「アレは迷惑なぐらい存在感有りますよね、散々苦労させられましたし、でもダイン様が二人共遊魔にしてくれたお陰で姉妹というより良い関係に成れたと思います」

  リレッタ 「そうなのですか、以前ティアスはフェカトの事を姉と言ってましたが」

  フェカト 「流石に王族のティアスを妹扱い出来ませんよ、ですが尽くすフェカトを姉の様に感じたんでしょうね」

  ルーフィン 「本当に眷属同士が仲良いみたいですね、ルゥの所はもっとギスギスしてるのに」

  リレッタ 「リッタは明確に避けられてましたよ」

  ダイン 「いいんですか、不利な内情バラしちゃって」

  ルーフィン 「というよりダイン君のところがおかしいですよね、ザキトスの時代は日常的に魔族同士の殺し合いが有ったらしいですし、中にはザキトス殺そうとした魔族もいたという話です」

  ダイン 「それは心休まりませんね、何故その様な事を許していたんでしょう」

  ルーフィン 「そこは根底が強さだっただからだと思います、ダイン君やルゥは楽しさですけどね」

  ダイン 「体育会系というヤツですか、戦闘力を基準にすれば序列が明確ですからね、序列を必要としていない遊魔とは別物ですね」

  ルーフィン 「人類圏からは駆逐されたみたいですけど、混沌大陸には複数の魔族国家も有るみたいなんですよ」

  ダイン 「そうなんですか?」

  フェカト 「あそこは名前通りの混沌ですから、人類国家に魔族国家、異種族国家など大小様々の国家が有って絶えず戦乱が続いているそうです、魔獣という脅威も存在してますし」

  ダイン 「厨なる心を掻きててられるところですね」

  リレッタ 「チュウなる心って何ですか」

  ダイン 「口外するのが恥ずかしい心ですかね、ですが人に言えない事ほど楽しかったりしますよね」

  ルーフィン 「うん、で、その厨なる心がダイン君の強さの源なわけだ」

  ダイン 「その通りですよ、より変態的な嗜好を持つ方が優れた遊魔と言えますね」

  フェカト 「それってダイン様以外ではナナの独壇場になっちゃいます」

  七実 「やはり正妻は偉大だっていう事ですね、ダイン様は角が立つのが嫌だから濁してますけど」

  ダイン 「いや、その地位は私を一番甘やかした者に与えられる地位ですね」

  ルーフィン 「凄いなぁ、そういう事言えちゃうんですね」

  七実 「そこはやっぱり信頼ですよね、ダイン様に甘えられるのは皆んな好きなんですよオッパイ飲んで貰えると特別な感情も芽生えて来ます」

  ルーフィン 「それ解ります、子供って感覚が芽生えますね」

  ダイン 「母性というヤツですか、わざわざ乳魔と命名したからには何か特別な能力を秘めているんですか、リッタの母乳は別に仕込まれては無かったと思いますが」

  ルーフィン 「ああ、それは男を眷属に加えないという意思の表れですね、乳が最も女性らしさの表れだと思いますから」

  ダイン 「男性嫌いなんですか?」

  ルーフィン 「嫌いというより苦手ですね、外面しか見てない様な感じが、でも実際乳魔を増やして行くと外面を重視しちゃってます」

  ダイン 「そうですよね、いくら私が自分好みの見た目を作れても、元の水準が低い者を用いようとは思いませんから、それに狩る獲物は美しい方が盛り上がります」

  ルーフィン 「アーキアやリエルは楽しめたでしょう、幾ら見た目が良くてもルゥには要らない子達でしたから」

  ダイン 「やっぱりワザと何ですね、アーキアは貴女の事を嫌ってましたから」

  ルーフィン 「あの二人とはいい思い出なんか有りませんから」

  ダイン 「なら私は楽しい思い出を作りましょう、楽しんで生きるのが遊魔ですからね、遊魔のユウとは遊ぶという意味なんですよ」

  ルーフィン 「結構理想的な生き方ですよね、力を持ちつつ強欲では無いんですね」

  ダイン 「欲しい女性を手に入れているのは強欲だと思いますが」

  ルーフィン 「幸せを与えているなら良いじゃ無いですか、でもアーキアやリエルも幸せなんですよね」

  ダイン 「その筈です、リエルはまだよく解りませんがアーキアはここでの生活を楽しんでますね」

  ダインがそう言ったタイミングで扉がノックされ、アイヤがワゴンにお茶セットを乗せてやって来た、ダインとしては遊魔食文化の凄さを見せつける事でルーフィンに対して優位を見せつけたいのだ。

  おまけ

  ルーフィンの乳魔 ルーフィンが自らの種族を乳魔と名付けた理由には、母乳によるコミュニュケーションを行う事を意図していた為である。

  ダインが自身を唯一の異性として遊魔の結束を高めているのに対して、ルーフィンの乳魔は母乳を与え合う事で上下関係を築いているのだ。

  だが、ルーフィンとその眷属の間には絶大な信頼関係を築けている反面、眷属同士の間の仲はあまり良くない様で、既に幾つかの派閥が形成されて争い始めているのだ。

  ザキトス魔族に比べて、支配者としての地位を確立させたルーフィンの乳魔は一段進んだ権力構造を作りあげたとも言えるが、思考自体を植え付けて調和を生み出している遊魔に比べると乳魔は纏まりを欠いていると言える。