004-005
ダインと近しい精神構造を植え付けられたニアとフェカトは、ツェリの変化が楽しくて仕方ない、同種では有るが姿の異なる遊魔が産み出される事は淫紋の模様からも明らかで目を離せない状況でも有る。
そう、ダインの魔進化は数を重ねる毎に時間が短縮されており、その例に倣うならツェリの変容も一気に進む筈である。
だが、淫紋はくっきりと形を成しているのに、肉体の変化は見られず少々期待外れなのだが、ツェリの魔力は増大しており、魔進化の継続は疑いない。
フェカト 「いまいち動きが見られませんね、なんかこう角とは生えないんですか」
ダイン 「ああ、ツェリは天使型ですからね、背中の翼以外は大きな変化は無いんですよ、ですが耳は翼っぽくなってますよ」
ニア 「髪に隠れて解らないにゃ、でも天使型ってダイン様の流儀から外れてるにゃ」
ダイン 「確かに天使など想像の産物だと思っていますが、神聖なイメージが有る事は事実なんですよ、アーグル人がどう思うかは解りませんが、飛ぶという行為に清らかな印象は有りますよね」
フェカト 「それは勿論です、天翔ける処女は穢れの無い証ですから、ですが翼という事はツェリは遊魔形態で飛べるという事ですよね」
ダイン 「はい、淫魔に与えていた能力ですがツェリにはそれを付与しようと思います、人前に立つ役目を与える以上、それぐらいの能力は有った方がいいでしょう」
ニア 「ニャアは色んな遊魔が産まれる方が楽しいにゃ、特にツェリは襲いたくなるからちょうどいいにゃ」
ダイン 「猫は鳥が好きですからね、ですが問題は尻尾なんですよ、天使には尻尾が有りませんし、尻尾の有る鳥も見た事が有りませんから、ですが遊魔には尻尾が絶対的に必要なんですよ」
フェカト 「尻尾の形が決まってないのに魔進化させちゃったんですか」
ダイン 「いや、尾羽のところの膨らみから尾ニプルが生える予定ですが、完全に納得したわけじゃないんですよ」
ニア 「それだと羽毛の無い尾ニプルになるにゃ、でも余り羽毛に拘る事も無いと思うにゃ、アレはむしりたくなるにゃ」
ダイン 「うーん、本能を刺激するんでしょうか、ならこのままで行きましょう、剥けて異質なモノが露わになるのも面白味が有りますからね」
結局ダインの悩みはそれ程重いモノでは無い、自身の中で決まった結論を誰かに後押しして欲しいだけなのだ、遊魔達もそれを理解していて今では望む答えを返す様にしている。
フェカト 「ですが通常の状態のツェリって面白味が少ない様な」
ニア 「フェカトが天使を解って無いからにゃ、人に翼が生えるだけで結構変わるモノにゃ」
フェカト 「そういうモノなのですか、ダイン様の感性を疑っている訳ではありませんが、実物を見て見てみないとどうとも言えませんね」
フェカトの言葉にダインは不安を感じてしまうが、すでにツェリのイメージは完成している、ならば実物を完成させてから改めてどう感じるか聞く事にする、遊魔の外見を変化させる事などダインにとってさほどの手間でも無いのだ。
そうして、ツェリの変容は加速していく、この方法で何人もの遊魔を産み出したダインにとっては最早手馴れたもので、眠っているツェリは本人の意志が及ばないところでダインのモノへと産まれ変わるのだ。
白くて大きな翼が背中から上半身を覆う様に成長すると、フェカトはダインの思惑を理解したようで感想を口にする。
フェカト 「なるほど白い翼ですか、白という色には聖なるイメージが有りますからね、人にこの大陸を譲ったドラゴンも白竜だったとの言い伝えです」
ダイン 「確かにそういう逸話でしたね、私が解析したドラゴン遺物は白竜では無かった様ですが」
フェカト 「アレは邪竜の遺物と言われてますから、まぁ人類に敵対したドラゴンは全て邪竜で、聖竜は白竜だけですけどね、私の解釈ではドラゴン同士のいざこざで不利だった白竜勢力が人類を取り込んだんですよ」
ダイン 「聖竜と言う割には冷めた見方ですね」
フェカト 「ドラゴンも知的生物ですから打算で生きていますよ、それに調停歴以前の伝承ですから何処までが真実かも解りません、ですが人が扱う巨人の記述は残されてます」
ダイン 「なら混沌大陸のドラゴンと接触すればマギガントの出自が解るかも知れませんね、ザキトス戦役でクガトの魔導士が使った物は戦後に消失したとの話ですし、何より何処から来たのかも解っていませんからね」
フェカト 「ですが混沌大陸には抵抗が有ります、本当に調べるつもりなのですか」
ダイン 「その為の準備も行なっていますからね、遊魔を滅ぼせる勢力が存在するのか確かめる事は重要です」
ニア 「ニャア達の世界は完璧な地図が有ったからにゃ、ここの地図じゃここが星なのかも解らないにゃ」
フェカト 「星って夜空の星ですか、ダイン様の居た世界は星の正体も解明してるんですね」
ダイン 「それは話すと長くなるのでやめておきましょう、ですが私の居た世界は球の表面だった事は判明しています、まぁ世界は一周出来るとだけ解ればいいですね」
フェカト 「一周ですか、益々解りません」
ダイン 「ずっと東に進むと西から元の場所に辿り着くという事です、この世界でもそれを試してみたいんですよ、まぁ惑星上という前提が有りますけど、空を飛んで行けばちゃんと一周出来る筈です」
フェカト 「確かに面白そうな話ですけど、不安も多いですね」
ダイン 「ですから最大限の戦力を整えたいわけです、まぁ一気に一周では無く混沌大陸に中継点を設けるつもりですが、ルーフィンとの共同探索も決定してますしね」
フェカト 「ポロルグはクガトと違って海路が使えませんからね、ですが浮行船はやり過ぎだと思います」
ダイン 「どうせ私は行けませんからね、ですが探索する者に不自由な思いはさせたく無いんですよ、携帯食など準備は始めていますが、混沌大陸への探索は更なる探索の足掛かりとして最適です、何せ大陸の存在が確定してますから」
ニア 「ニャアは探索のお役目に立候補したいにゃ、森で培った経験は必ずダイン様の役に立つにゃ」
ダイン 「そう言ってくれるのは有り難いですね、異形が先だったニアは他の者より私への依存度が低い様なんですよ、ですから長期間の探索を任せても少し安心出来ます、それにちゃんと他の者も同行させますし」
フェカト 「その言い方だと、他はリエルですよね、リエルも遊魔以前に異形でしたから」
ダイン 「いや、本人の意思を重視しますよ、それに混沌大陸の探索はツェーリアが片付いた後ですね、浮行船の建造にまだ時間が掛かりますし、ツェーリアも安定させないと」
フェカト 「それは直ぐだと思いますけど、アーグルの人間はダイン様が思う以上にダイン様を評価してますよ、口に出す人間こそいませんがククジア民衆は王の選定戦へ出て欲しいとも思っていますし」
ダイン 「そうなんですか、でも私は大国の王みたいに面倒な事は嫌ですよ、それに私の治世は民衆に厳しいとも思いますし、それに正当な方法で王位に着いても面白く無いですよね、国は盗ってこそ面白いんですよ」
フェカト 「ダイン様は権力よりも経過を楽しんでますからね、ツェーリアの王族は厄介な人に目を付けられたものですね」
ダイン 「提案してきたのはフェカトじゃ無いですか、ですがこのやり方は実に私好みです」
フェカト 「はい、この白い翼のツェリを見てフェカトも成功を確信しました、これなら民衆の良い扇動役になってくれるでしょう」
ダイン 「フェカトのお墨付きが有れば心強いですね、ツェリにはテガスでマギガントの練習をして貰います、リレッタの黒騎士衣装を使いましょう、学院生に正体がバレると事ですから」
フェカト 「確かにこの歳でマギガント騎士は目指さないですからね、魔王ルゥの戯れも役に立ちますね」
ダイン 「マスクマンは中身が代わっても解らないモノですよ」
ニア 「賭け闘技で戦う騎士もプロレスラーも似たようなモノにゃ」
ダイン 「流石にそれは言い過ぎですよ、騎士は八百長試合とかやりませんし、王都の戦いはそれで楽しかったですから」
フェカト 「ティアスも結構楽しんでいたと言ってましたね、特にリレッタ戦はダイン様も追い詰められていたとか」
ダイン 「機体特性を活かした武器で攻撃されましたからね、反撃を受けない攻撃は私にも有効ですから」
フェカト 「リレッタのやり方は有効だと思いますけど、結果的にダイン様が勝ちましたよね」
ダイン 「まぁ遠距離攻撃は飛び道具でないと難しいですね、ですがマギガントの指では弓は無理ですから砲を開発するべきでしょう、一応プランは考えてますが」
フェカト 「ホウって何だか抜けた感じがしますけど、弓より凄い武器なのですか」
ダイン 「矢の速度が早くて直線的に狙える武器です、大きな物を砲と言って小さい物を銃と言うんですよ、マギガントのサイズならば砲なんですが、地球文明の砲はここでは難しいですね」
フェカト 「再現出来ないほど難しい物何ですか」
ダイン 「原理自体は簡単ですが、材料を集めるのが難しそうです、ならアーグルの技術と砲の原理を組み合わせた武器を製作する方が楽だと思います、既に応用する技術の算段は出来ていますし」
フェカト 「やはりダイン様は凄いですよね、テガスの食堂の料理も格段によくなりましたし」
ダイン 「それに気付くとは、フェカトも根幹が解って来ましたね」
フェカト 「いえ、街の評判を答えただけですけど」
ダイン 「魔導の加熱と蒸気圧は相性が良いんですよ、地球の蒸気機関は燃料を燃やして熱を生み出す必要が有るんですが、アーグルの魔導技術なら、魔鋼を魔力で加熱出来ますから、そして水を気化させて蒸気圧を生み出せば色々と転用出来るわけです」
フェカト 「水蒸気って食材を加熱させてるやつですよね、他の使い道も有るんですか?」
ダイン 「テガスの食堂に導入している蒸気オーブンは主に油を集める事が目的なんですよ、地球で蒸気機関になり変わった内燃機関は油を燃焼させて動力に変える物ですから、私の計画でも油を必要としていますので、蒸気オーブンを使って細々と集めてますが、普及型動力の本命は魔導蒸気機関です」
ダインとフェカトが難しい話を始めたので、ニアはダインの膝に頭を乗せて眠り初めてしまった、地下室内に居た他の遊魔達もツェリを拘束した事で安全を確認して、各々の職務に戻って行ったのだ。
ダインの身の安全は重要だが、それを確認した以上はダインの理想を叶える為の仕事を進めた方が喜ばれる事を理解している為でもある。
ダイン 「私達も一眠りしましょうか、外見的にツェリを作り変える事は終わりましたが、身体を若返させる事にはまだ時間が掛かる様ですから」
ダインはそう言って後ろに倒れ込むと、衝撃を受けたニアが飛び起きて状況を理解すると直ぐにダインの隣で添い寝を始める。
フェカト 「まぁSEXだけがご褒美でも無いですよね、ダイン様の隣で得られる安らぎも遊魔にはご褒美ですから」
フェカトもまたダインの隣に添い寝すると、三人は直ぐに眠りに付く、精神のコントロールに長けた遊魔は休息を行う事にも無駄が無いのだ。
おまけ
新工房の噂 基本旧工房で働く工員達にも公開されていない新工房だが、全く中を見た人間がいないわけではない。
魔鋼を工房内へと運ぶ役を担った者や、旧工房で作られた品物を運び込んだ者などが内部について語る事があるのだが、その話の殆どが信じ難いモノが多い。
例に挙げるなら、通常の数倍の大きさを持つゾッフォフレーム、炎を吹く筒、空中に浮かぶゾッフォなど、語った者が嘘を語っていると一蹴される内容が多いのだが、中には信憑性の高い情報もあり、その代表例が四つ腕のゾッフォだ。
この四つ腕ゾッフォは二腕で物を固定しながら、残る二腕で作業をしていたと言われ、工員達もその有用性を大いに認めている。
だが、その四つ腕ゾッフォの行っていた作業が巨大ゾッフォの組み立てで有った事から、信憑性が疑われてしまっている。
現在ダイン達の活動はほぼ新工房へと移っており、消費される魔鋼量から考えてもかなりアーグルの常識から外れたモノが作られている事は確かな様だ。