混沌探索編 第八話 謎の廃棄坑道

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  北進を急ぐダイン達は砂漠地帯に入り、かなり進んだところでちょうどいい感じの岩山を見つける、砂漠と行っても砂地よりも岩石地帯が多い感じで植物は少なく、寒暖差の大きそうなこの土地では見つけた岩山は野営を行うのに最適だと言えるだろう。

  ダインは手振りでレ・ミュウに降下を伝えると先行して岩山上空を旋回して状態を確認してから麓に着陸する、レ・ミュウはダインの動きを観察して同様に着陸するとダインが言葉を掛ける。

  ダイン 「少し早いかも知れませんがここで野営しましょう、この先に進んで適地が見つかるとは分かりませんからね」

  レ・ミュウ 「それが賢明な判断だと思います、ミュウの感覚でも強い魔力は感じませんでしたから、でも、山に走る亀裂には変な魔力が有りますね」

  標高200メートルぐらいの岩山にはちょうど両断する様な亀裂が走っており、ダインの好奇心を掻き立てているのは間違いない。

  ダイン 「取り敢えず荷物番をお願いします、私は岩山の探索を続けますから、もしかすると亀裂の中に洞窟とか最適な場所があるかも知れませんからね」

  レ・ミュウ 「分かりました、くれぐれも気を付けて下さいね」

  レ・ミュウもダインの探究心を抑える事が無理な事を承知しているので了承する、魔力探知に優れたレ・ミュウはダインの魔力変化で状況の推測を容易いと考えている為だ、そして何よりレ・ミュウ自身が一人でやりたい事があった。

  レ・ミュウの了承を得たダインは探索の邪魔になる荷物を下ろすと、意気揚々として亀裂に侵入して行く、その断面図は風化しているものの何か巨大な刃物で両断された様に真っ直ぐで、人為的な行いの結果生じた物だと推測出来る。

  ダイン思考 『風化の具合から見て最近の物では有りませんね、昔の墓石の風化ぐらいでしか推測出来ませんが、千年は経っているのでしょうか?』

  ダインは直感でそう感じたが、レ・ミュウが何も言わなかった以上、レ・ミュウ誕生以前の痕跡だと推測していた。

  レ・ミュウに色々尋ねたダインは魔龍になってもその記憶が維持されている事を確認しており、レ・ミュウの記憶に無いという事はレ・ミュウ自身も知らないと予測したのだ。

  ダイン思考 『この断面、熱じゃ無く両断ですね、そんな事が出来る兵器が存在していたという事ですか、確かに魔導を応用すればこの岩山を両断する兵器も可能かも知れませんが、意図は不明ですね』

  不思議な痕跡ではあるが既に時間経過があり過ぎて多くの情報を読み解く事は不可能だ、ただ形状から巨大な刃物を下に生やした飛行物体が通り過ぎながら付けた物だとは推測出来て、ダインは刃物付き浮遊母艦の様なモノを想定している。

  ダイン思考 『上部構造からの推測はこれ位でしょうか、後は深部の探索ですね』

  ダインは一旦レ・ミュウに見える位置まで移動すると、今度は低い高度で裂目へと侵入していく、そこは上部と変わらない切断痕跡が続いていたが、ちょうど中央ぐらいで大きなトンネルが姿を現す。

  ダイン思考 『切断面はコレを狙って作られてのでしょうか、この広さならば荷物の持ち込みも可能でしょうからミュウを呼び寄せましょう』

  より安全な野営地を見付けた以上、場所を変えるべきだと判断したダインはミュウの元へと戻る、すでに探査の開始から一時間は経過していた為に借りの野営地からは煙も上がっている。

  ダインはゆっくりとレ・ミュウに近付くと、魔導鍋に魔力を注いで何かを調理しているレ・ミュウに声を掛ける。

  ダイン 「何か調理の最中でしたか、より適地を見つけたので移動したいですが食べてからにしましょう」

  レ・ミュウ 「ミュウの料理は直ぐに終わりますのでお待ち下さい、主が調達してきた乾麺を使ったスープを作ってみたのでお召し上がり下さい、ちゃんと干肉で出汁も取りましたので」

  ダイン 「それは気が効きますね、ちょうど空腹を感じていたところです」

  レ・ミュウ 「味の方は自信が有りませんが、ちゃんと遊魔流を心掛けたつもりです」

  ダイン 「基礎がちゃんとしていれば大丈夫ですよ、あと秘訣は変な欲を出さない事です、最低限の足し算で作られた物は安心出来る味ですから」

  レ・ミュウ 「はい、教えには忠実ですのでご安心下さい」

  遊魔思考に染まったレ・ミュウは初めての料理をダインに味わって貰いたいと考えて機会を伺っていたのだ、似た様な料理は以前ダインが作っていた事があり、レ・ミュウはそれを参考にして初めての料理に挑んだのだ。

  レ・ミュウ 「鍋のままですがお召し上がり下さい、余り物は汚さない方が良いと思いますので」

  ダイン 「ミュウの作った物はミュウから食べていいんですよ、当然お腹も空いているでしょう」

  レ・ミュウ 「そういう訳には行きません、主が空腹のままでは何も食べる訳には行きません」

  ダイン 「なら一緒に食べましょう、交互に食べればいいですよね」

  レ・ミュウ 「はい、家族ならでは食事ですよね」

  こうしてダインとレ・ミュウは一つの鍋の食事を分け合う、遊魔史上で最もダインと近しい食事であったが、それに嫉妬する者などここには存在しない。

  ダイン 「ミュウは料理が初めてでしたよね、ですが出汁と塩加減が絶妙で凄く美味しいですよ」

  レ・ミュウ 「主に褒めて貰えてミュウ幸せです、一緒に料理を食べれる事も」

  ダインの好みの基礎を理解しているレ・ミュウの料理が好まれない筈など無かった、それに主食として入れたレブナン乾麺はスープに直に投入して煮込む事を考慮された物で、レ・ミュウの料理は最適解でも有ったのだ。

  汁まで食べ尽くした鍋を布で拭うと、ダイン達は荷物を纏めて移動の準備を始める。

  ダインの見つけた横穴は直径が約4メートルの真円の様な構造で、人工物を思わせそれがまだ奥にまで繋がっている様なのだ。

  横穴は亀裂に向かい合う様に存在しており、亀裂が作られた理由はこの地下通路を探り当てる様に作られたとも考えられる、つまりこの横穴は何かの秘密基地の跡では無いかとダインは推測しており、早く探索してみたいのだ。

  横穴に移動して状態を確認したレ・ミュウはその表面を指で掻くと推測を口にする。

  レ・ミュウ 「多分、耳長岩喰いの協定前の物ですね、岩喰いマギマイナーが作った穴の特徴があります、協定以前に岩喰いが北進を企んで耳長と衝突した事が有りましたから、その時の跡だと思いますけど・・・もっと新しい物かも」

  ダイン 「マギマイナーとはマギガントの一種ですか?」

  ダインとしては穴の作られた時期よりも、新しい魔導具が気になった。

  レ・ミュウ 「掘削魔導具ですね、構造はマギガントと変わりませんが余り大きくは有りません、太くて手の長い構造で尻尾の様に掘削魔導具が備わってます、それを四つん這いになって掘削魔導具を前にして使うんですがかなりの速さで坑道を作れるそうです、あと、マギメイルという戦闘用も作られてましたね」

  ダイン 「なるほど、その掘削魔導具という物は回転して堀進むドリルの様な物なんですね、だから真円の坑道が出来ると・・・レブナン島の坑道にもこういう場所が有りましたね」

  レ・ミュウ 「岩喰いの生活圏は地中ですから、ミュウもよく解って無いんですよ、でも東方の耳長領域にも進出している様です、耳長自体が中央大陸を放棄しましたからね」

  ダイン 「この大陸の地下には岩喰いの一大国家が存在しているという事ですか?」

  レ・ミュウ 「その可能性は有ります、地上はザキトス魔族と魔獣が闊歩してますけど、主な生活圏が地下だった岩喰いは耳長程被害を受けていないと思われるので」

  ダイン 「私の世界の戦争でも、坑道使ったゲリラ戦で大国を撤退に追い込んだ事例が有りました、ましてや岩喰いはこの様な坑道を掘る技術を有しているなら、逆に勢力を拡大させている可能性も有りますね」

  レ・ミュウ 「お役に立てずに申し訳ありません」

  ダイン 「相性の悪い相手ですから仕方ありませんよ、ですが情報は集めておきましょう、この坑道は使われていない可能性が高いですが奥の探索を進めましょう」

  ダインは意思を表明して早速奥へと踏み込もうとする。

  レ・ミュウ 「お待ち下さい、今度はミュウもお供します、その為には入り口に蓋をした方が安全だと思います」

  ダイン 「確かに用心しておいた方が良さそうですね、下から岩を上げて入り口を塞いでおきましょう」

  ダインとレ・ミュウは坑道の入り口上部を外から故意に破壊して一先ず穴を塞ぐと、障壁を上手く使って崩落を持ち上げて中に入るとまた穴を塞ぐ、この作業を行っていれば、飛び猿の群れが物資を盗みに来ても手も脚も出ない筈だ。

  荷物の安全を確保したダイン達は憂い無く探索を開始する事にする、取り敢えず三日分ぐらいの食料と水を持つと低速で飛行しながら坑道の奥を目指す。

  ダイン思考 『レブナン島の坑道と違って一本道なのは助かりますね、途中横穴と上に続く抜け穴は有りましたが、あれは残土の排出用ですね』

  坑道はただ真っ直ぐに延びてはいるが、ちゃんと掘った土の排出口などもある中々凝った作りになっている、一度排出口から上を確認してみたが、ちゃんとカモフラージュを施した状態で空気の取り入れ口も兼ねている様だ、そして坑道の構造の把握は岩喰い坑道を発見するにあたって大きな情報ともなり、混沌大陸探索での大きな成果に繋がるであろう。

  そして、二時間程奥に進んだ所に大きな空間が作られており、一先ずそこを探索する事にする。

  地下空間は天井8メートル、縦50メートル、横100メートル程の大きな空間で、天井には換気と残土排出用の縦穴、そして下に延びる井戸まで作られている。

  空間の一角に積み上げられた土からは、岩喰いの主食でもある岩茸が自生しており、ここが坑道の中での生活空間なのだろう。

  そして、驚いた事に薄汚れたマギマイナーも三機程放置されており、ダインは初めて見るマギマイナーにここでの宿泊を決める。

  レ・ミュウ 「ミュウは縦穴から上を調査して来ます、一応状況は確認した方がいいと思いますから」

  ダイン 「はい、上の調査は頼みますね、何ならここを拠点にしても良さそうですから、荷物を取りに行く事も考えましょう、もっともあれだけの岩茸があれば数年分の食糧が有りそうですけど」

  レ・ミュウ 「ミュウ、岩喰いじゃ無いから毎日あんなのは嫌です、手頃な獲物がいればついでに狩って来ますね」

  ダイン 「私はマギマイナーを調べるのと食事の用意ですね、岩茸を使って何か作っておきますよ」

  レ・ミュウ 「主の料理なら岩茸でも食べれるかも、でも何か探して来ますね」

  ダイン 「一応、目安の時間は決めておきましょう、上限三時間でお願いしますね」

  レ・ミュウ 「その意図有る時間設定って」

  三時間という時間は、空を飛んで入った岩山へと往復出来る時間でも有る、ダインは敢えてちょうどの時間を与えてレ・ミュウに自らの思惑を伝えたのだ。

  そしてそれを察したレ・ミュウも荷物の回収に向かう事にする、居るか居ないかわからない獲物を探すよりも、確実に有る保存食を回収した方が合理的だとレ・ミュウも判断したからだ。

  レ・ミュウが出発した後ダインは先ず水源の確認を行う、浮遊魔術で井戸の中を調べると水源はそのまま飲める状態に有る様で水量も豊富だ。

  ダインは尻尾の先を水源に浸してそのまま伸ばして空間まで上がると、根本から尻尾を切断して長方形の水溜に変化させる、下部の水源に浸した先端から水が汲み上げられて水溜に溜まって行く様子を確認すると、今度は本題ともいえるマギマイナーの調査を始める。

  ダイン思考 『確かにミュウの言葉通り小さなマギガントですね、お尻がアタッチメントになっていて尻尾の交換が可能で、上半身が180度回転して長い腕を後脚にする事で四足歩行形態へと変型出来る訳ですか』

  マギマイナーの構造はダインに衝撃を与えていた、マギガントよりも小柄なこの機体は変型機構を有しており、坑道掘削に適した形状へと変化する事が可能なのだ。

  それから約二時間ダインはマギマイナーを調べるのに夢中になっていたが、ちゃんとレ・ミュウとの約束を思い出して食事の準備を始める事にした、例え従属する立場の者との約束で有っても必ず守るのがダインなのだ。

  おまけ

  岩喰い系巨人魔導具 マギマイナーを祖とする岩喰い巨人魔導具は、マギマイナーから変形機構を取り除いたマギメイルへと進化する。

  マギメイルは戦闘用ではあるが装飾品としての側面も強く、岩喰いの社会ではより芸術性の高いマギメイルで競い合っている。

  次に産み出されたのが、マギメイルを大型化したマギマメイルで、マギマイナーやマギメイルの全高が4メートルぐらいなのに対して、1・5倍の6メートルの全高を持つ。

  このマギガメイルを改修して人間用にされた物がゾゥティで、その形が不揃いなのは元のマギメイルの特性を受け継いでいるからだと言える。

  基本マギマイナーから派生している岩喰い巨人魔導具ではあるが、例外とも言えるのがマギガマイナーである、この機体はマギマイナーよりも古い機体で岩喰いが開発した物では無いと言われている。

  全高10メートルでマギマイナーと同様の変形機構を有するが、他の巨人魔導具とは異なる特別な機能を搭載している。

  現在、地の王を頂点とする混沌岩喰いは劣化版のマギガマイナー生産しており、遊魔と混沌大陸で合間見える日も近付きつつある。