008-027
人類大陸周辺の遊魔達がダインへの支援を模索している中、支援を受ける側のダインはそれ程焦りは無かった。
むしろ花園ことラグム・デムの探索と機能回復に多忙な時を過ごしており、ラグム・デムと遊魔の技術の融合とも言える遊花も続々と誕生して、遊魔として迎えられている。
オハナⅢ 「遊魔基礎知識にクステーシャの再生が定着しましたね、087ユニット由来の者は全て自分のクステーシャの再生を完了しました」
ダイン 「動力でもある魔法細胞が干涸びているのが原因で、魔鋼のフレームは錆びませんからね、ですが再生から先が個々の腕の見せ所ですよ」
オハナⅣ 「色々な特性の魔動力を組み合わせて、自分に最適化させるんですよね、ダイン様の推奨は地中探索ですけど」
ダイン 「仮想敵が地の王の勢力である以上当然ですよ、地に潜むモノの最大の利点は目に見えない事です、人は見えるモノには警戒しますが見えないモノには警戒し難いですから、そもそも存在を認知しないと警戒も抱きませんし」
オハナⅣ 「でも遊魔の魔力探知が優れていて良かったです、ダイン様が推奨した基本型の精度でも50メートル地下の岩喰いを探知出来ますから、マギマイナーならその十倍ぐらいでしょうか?」
ダイン 「乗り手の魔力次第ですね、マギマイナーの稼働魔力だけなら300〜400メートルぐらいでしょう」
オハナⅢ 「それだけの距離があれば襲われる前に察知出来ますよね?」
ダイン 「相手の攻撃手段によるでしょうが、地の王が遠距離火器を使ってくれば探知は不可能ですよ、まぁ相手がこちら以上の探知能力を持つのが前提でしょうけど」
オハナⅣ 「それは難しいでしょう、岩喰いは魔力の扱いに長けてませんから」
ダイン 「探知方法は魔力だけでは有りませんよ、熱や音、人の感覚では解らないレーダー波とかも有りますしね、そもそも魔術のあるこの世界だと、私の知らない探知方法があるかもしれません」
オハナⅢ 「今出来る事をちゃんとこなして、次に備えるですね」
ダイン 「はい、私は遊花を見て来ます、出来る者は互いのクステーシャを使って整備練習をして下さい、魔動力は遊魔の能力でなんとでもなりますが、装甲とフレームは直せませんからね、あと、見た目を自分流のアレンジするのも醍醐味ですよ」
オハナⅣ 「ラグム・デムは全ての機体の均一化を義務化してますが、そんな事をしてもいいんですか」
ダイン 「パーソナルカスタムは量産機最大の楽しみです、遊魔の魔動力で個々人にあった機体に調整出来ますから、能力が変わるなら見た目も変えるべきでしょう、自己表現の良い機会ですね」
オハナⅢ 「なら武装を変えてみてもいいんですよね、今の装備は私に合って無いと思うんですよ、変えればもっと戦えます」
ダイン 「それもクステーシャで作ってみて下さい、鍛治仕事も出来る筈です、金属の加熱は魔術で可能ですよね、別のオハナに頼めばいいでしょう、出来ない事は他の者に頼むんですよ」
オハナⅣ 「087ユニットの時は当たり前でしたが、遊魔になって他人を頼る事って減りましたから・・・大概の事は一人で出来ますから、クステーシャの操縦が良い例ですよ、あれは二人で動かす機体なのに」
ダイン 「ですが一人で出来た方が上手く扱えるでしょう?」
オハナⅣ 「はい、同じラグム・デムユニットでも相性の良い二人をペアにして動かしてましたから、でも思考の一致などは不可能でしたよ、同じ個体の複製体二人をペアにしても上下操縦の特性は同じですから」
ダイン 「ラグム・デムは人以上を作らない様ですからね・・・別に遊魔は私を超える能力を手に入れても良いんですよ、誰も超えようとはしませんけど・・・」
オハナⅢ 「遊魔の能力を発揮するには思い付きが重要だと思います、確かに知識は与えて貰いましたが経験を経て得た知識じゃないと発想は生じ辛いのかも知れません」
ダイン 「興味深い意見ですね、確かに耳長のフィセーリアは色々と模索するのが得意でしたが、遊魔の創造の双璧は人間の七実とムジカでしたから」
オハナⅣ 「人類大陸の工房で活躍する人達ですか、オハナⅣもそういう方向性で頑張ってみたいです」
ダイン 「なら初めに道具ですよ、基礎知識の中にクラフト・ゾッフォという工作仕様機があるので参考にして下さい、私からのアドバイスとしては回転を上手く使う事です理由は浮遊母艦建造などを調べて下さい」
オハナⅢ 「こんなに話込んでもいいんですか、そろそろ遊花の誕生の時間だと思います」
ダイン 「そうでしたね、遊花から生まれた遊魔の能力について色々検証しないと行けませんからね、まぁ失敗など気にせずに色々試して下さい」
ダインはそう告げると、花園の循環システムに向かう、現状で堕印付き遊魔が休息室には居ない為に空間レイヤーを使った移動が出来ないのだ。
そうして循環カプセルに乗り込んだダインは行き先を設定してから目を閉じる、自身しか居ないこの空間は想像に適している、そういった時ダインは視覚情報をカットして想像力を向上させる。
歩行や飛行よりも早い時間でダインは休息室へと到着する、だが、現状稼働しているカプセル群と循環システムの間には距離があるので、次の移動方を飛行に定めると翼を拡げてふわりと中に行く。
ダイン思考 『遊花が上手く行けばこの区画の再稼働を進める必要が有りますね、開戦迄になるべく多くの戦力を集めないと、リリルカのクステーシャ運用も上手く行ってましたから、遊花リリルカが楽しみですね、あとペーテという娘も準備が整ったとの報告がありましたね』
軽く今後の行動を考えていたダインは、直ぐに稼働カプセル群へと辿り着いた、未だラグム・デムが使用している010のカプセルは使えないが、001〜009は遊花と名付けられた個体達が生まれ出る時を待っている。
ダイン思考 『001〜003はリリルカ複製体ですが、007の進みが早いですね、成長の個体差の現れという奴ですか、007は操縦適正の高いオハナⅣと同じ個体の複製ですが、ナンバーの割り振りに失敗しましたね、まぁちゃんとした名前も考えて上げましょう、自分で付けさせても良いですし』
ダインは適当な事を考えながら、休息から育成に変化したカプセルを眺めていると、初めて目を開いた007カプセルの個体と目が合う、そしてダインの顔を見た目007個体は笑顔を浮かべる、本能的にダインが自分の味方である事を理解しているのだ。
ダイン 「いい笑顔ですね、身体の方は大分安定している様ですね、状態の確認は・・・」
ダインは007カプセルの有機組織に手を触れると情報を読み取って行く、遊魔細胞が融合したラグム・デムカプセルならば容易に情報を得る事も出来る。
そして、既に007の完成を確認するとカプセル自体の制御機能を支配下に置いて、007を解放する為の準備を始める。
ダイン 「あーんですよ、あーん」
ダインが大口を開けて007に指示を促すと、育成カプセルの中の007も真似をして大口を開けると、そこに一本の触手が潜り込んで行く。
何も知らない者にとって酷な行いにも見えるが、007は嫌がる様子も無く、逆にはむはむと齧り付いて、触手の味を確かめている様だ。
ダイン思考 『魔進化前提の個体であまり自我の成長は促していませんが、思った以上に好奇心を持つ様ですね、触手の味が初めての味の筈ですが気に入ってくれた様です、何せ遊魔の触手は甘いですから』
そう、変な事だが、遊魔の生体細胞は甘いのだ、糖とは違う独自の甘味料が生成されており、ベタ付く事なく甘い。
007に喰まれる触手は次第に形を変えて、呼吸器官を覆うマスクの形状に変化する、007は甘い味を堪能するのに夢中で触手の変化に注意を払っていない様だが、うっすらと目を閉じ始めるとそのまま意識を失った様だ。
ダイン思考 『呼吸器からの排水は意識が無い方がいいでしょう、何せ大気を吸う事も初めてですから、先に身体に慣れて貰いましょう』
007の意識を失わせたのはダインなりの配慮だ、ただ、それだけでもなく物事を円滑に進める為の行いの側面の方が強く現れている、ダイン的には最終的に007が幸福を享受出来るなら、自身の悪行は過程として正当化してしまう。
ダイン思考 『流石に触手排水をされては私に悪意を感じるかも知れませんからね、遊魔としと私に拒否感を抱いた記憶は後々の後悔にも繋がり、最悪自己否定をしてしまうかも知れません、それはとても可哀想ですからね』
何だかんだで、ダインは理由を考え出す、自身を悪だと認識はしているダインだが、遊魔に対しては悪行など行うつもりはない、そう、ダインは遊魔達にとってとても理想的な神の様な存在でもある。
007の作業が順調なのを確認すると、10機のカプセルの中で唯一自由に使えない010に注意が向かう、ラグム・デムの統合意思の代弁者を生み出しているという話だが、その内部に見える少女は007よりも幼く見える。
ダイン思考 『オハナⅢは第二期個体と言っていましたが、かなり成長が遅いですね、それとも統合意思というモノがまだ未完成で肉体の成長を止めているのでしょうか、まぁこの見た目でも私には問題ありませんけどね』
ダインの好みは上よりも下に広い、雄の穢れを許さない思考を持つ為に必然的に好みが若くなるのだ、だが、繁殖可能まで成長している事は絶対に譲れない条件で、生物の理に忠実なのだ。
そして、ダインはしばらく010を観察すると、007が次の段階へと移った事を知って、そちらに注力する事にする。
007のカプセルは既に液体が抜け、温風が循環して身体を乾かしている状態で、この段階なら呼吸器官の排水も終わって直ぐに出せる状態だ。
ダイン思考 『取り敢えず出してみましょうか、この状態でも遊魔細胞を内包してますから、環境適性は高い筈です』
遊魔細胞の有無が087などのラグム・デムユニットと遊花の大きな違いである、羊水で青年期まで成長させる過程は同じだが、ラグム・デムユニットは飽和羊水の呼吸から大気呼吸への順応に時間が掛かるが、遊魔細胞を持つ遊花は直ぐに対応可能だと想定されている、つまり遊花はラグム・デムユニットに比べて色々頑丈に作られているのだ、これは肉体の短期投入を意図して生み出された為の仕様だといえよう。
温風の風が収まって、007の髪が下に垂れると解放の時間となる、ラグム・デムのカプセルは抉れた幹に透明なカバーを被せて閉じる構造をしており、被さった透明カバーが徐々に上へと跳ね上がると007の身体が生まれたと言っていいだろう。
そしてダインは手を延ばして007の顔に触れてその感触を確かめると、強めに頭を撫でて首の動きを確かめてみる。
ダイン 「ちゃんと首が据わってますね、遊魔細胞の為せる技でしょうか」
九人の087シリーズを魔進化させたダインは、その首が細い事に不安を感じていた、首の太さとは脊椎動物の頑強さの現れともいえ、魔進化していない087シリーズの弱点とも言える、これは液体内で育った為に頭の重量が軽減された事と飽和羊水の酸素濃度が高い為に、細い気管を通る液体からでも十分な酸素が供給された結果生じた特徴でもあった。
遊花007 「あっ、創造主しゃま」
目覚めた007はダインを自らの創造主としてちゃんと認識している、早期運用を想定されてはいるが、ダインに対する絶対的信奉を抱く事に対しては抜かりない。
ダイン 「良い娘ですね、私の立場を認識してくれている様です」
遊花007 「はい、ゆーかにとって創造主しゃま親以上の存在です、でも親ってなんなんでしょう」
ダイン 「強いて言うなら元となった個体の事でしょうか、まぁ私も親と言えますが・・・」
遊花007 「創造主しゃまは創造主しゃまです、一番貴い存在だと記憶されてます、そしてゆーかに本来の力を与えてくれるとも・・・」
ダイン 「自らの不完全をちゃんと認識してますね、なら尋ねますが貴女は今以上を望みますか?」
遊花007 「ゆーかはゆーまに成る為の存在、ゆーまに成る事が使命です」
ダイン 「ですが、それには痛みを伴いますよ、耐えれますか?」
遊花007 「痛くても完全を望みます、ゆーかを早くゆーまにして下さい」
自身が望む解答に、ダインはまた007の頭を撫でると、抱き寄せて抱え上げる、このままカプセルで抱く事も可能だが、遊花の完成度が想像よりも高く仕上がっている以上、早く場所を空けて次の遊花の創造を始めた方が有益だと判断したからだ。
そして、遊魔への魔進化を見る事が他の遊魔にとっての最高の褒美である事を、ダインがちゃんと認識している為の場所の移動でもある。
おまけ
クステーシャ再生計画 外骨格型魔導機クステーシャは巨人型のマギガントに比べて、複雑な形状をしているが、遊魔にとっては扱い易い魔導機である、その理由としては、稼働に関する魔動力の重要性が高い為である。
人間の骨格を参考にしたマギガントは自ずと人間に近しい動きに制限されるが、クステーシャの外骨格は言わば鎧に近い構造で関節部分などは、魔動力の稼働状況で180度以上の稼働範囲を持たせる事も可能である。
そして遊魔の追加部位も魔導細胞によって、人に不可能な構造でも稼働させる事が出来る、尻尾がその代表例で、蛇の様に動いたかと思えば拡げて人を丸呑みにさえ出来る。
魔動力も実際は魔導細胞によって稼働しており、魔導細胞を自在に操れる遊魔はマギガントより労力をかけずにクステーシャを操る事が可能になるのだ、その上、遊魔細胞から増殖させた魔導細胞は遊魔の意思で自己進化可能で、個々の意思に沿った専用クステーシャが産み出されて行く。