とある月夜
森は一段と静けさを増し
人は眠りにつく
起きているのは動物達、もしくは
夜に姿を見せる影のみか
「ここか」
城より少し遠い場所に
その影達はいた
身を黒の衣装で包み闇に溶け込む
「周りは俺に任せろ」
「行くぞ」
短い言葉を交わし
二つの影は城へ、一つの影は森へと
消えていった
程なくして二つの影は
城から出てきた
片手に何かの巻物を持って
二つの影の後ろからは
もう一つの影の姿が見えた
森へ消えた影ではない
一つだと思っていた影は二つ、三つと
数が増えていった
追われているのだろう
最初の二つの影は
不気味に笑っていた
風のざわめきの音と共に
金属音が周りに響く
そこに会話はない
只々影達がそれぞれの武器を持って
闘っていた
人間離れした身体能力
一般の人間には出来ない其れを
容易くやってのける人々
その人達は世に言う所の『忍者』
と呼ばれるもの
武士の勢力があまり強くない世の中
裏で支えていると言っても
過言ではない存在
そんな者たちの闘いは
目を奪われるものだった
追っている方の影たちは息を荒げ
追われている方は
涼しい顔をしていた
強さは歴然、そこに
追い討ちをかける影の姿が現れた
その者の登場に複数の影は身構えた
影二つと入れ替えに
その影一つとなった
逃すまいと影たちがとっさに追う
とすると大きな影が目の前に現れた
その影は雲の間からさした月光の下
鋭い目をこちらに向けていた
大きな影の正体は狼だった
それも一匹ではなく五匹
狼たちの中心には先ほどの影が
身を低くして構えている
それは狼たちを
使役している様にも見えた
頭巾から覗く髪は狼の様な
灰色をしており
瞳の色も酷く似ていた
その影はおそらく少年
何の合図も無しに狼たちが
一斉に襲いかかってきた其れを
武器を持って制する
しかし狼たちには一切当たらず
防戦一方だった
一旦身を引いて態勢を整える
その間に狼たちも
主であろう影の元へ寄り添う
そこから睨み合いが始まった
木々が騒めきこの闘いを
煽っている様だった
どの位そうしていただろうか
相手の言葉でこの闘いは
終焉を迎えた
「お前ら、 食事の時間だ」
そこからが早かった
狼達は一斉に影に飛びつき
容赦なく肉を引きちぎる
耳を塞ぎたくなる様な叫び声と
肉が裂ける音、咀嚼音
その姿はまさに『化け物』
と言ってもいい
その間少年は空を見上げ
指笛を鳴らす
するともう一つの影が現れた
影は少年の腕に乗り顔を覗く
「これを学園まで届けてくれ」
もう一つの影、
鷲の足に文を結びつけ
そのまま腕を横に振る
その反動で鷲は空に浮上し
頭上を一周して何処かへと
消えていった
「食事は終わったか」
狼達は満足そうに
少年の方へと駆けた
体と口周りには血糊が
べっとり付いていた
下級生には到底見せられない
「帰るか」
少年は狼達と共に森へと姿を消した
そこに取り残されたのは
無数に散らばった骨だけだった
番外編(その後)
「ハチお疲れ様」
「お疲れ様」
狼達に付いてしまった汚れを
落としていると
今回の任務で一緒だった
同じクラスの
鉢屋三郎と不破雷蔵が現れた
二人は五年生指定の制服ではなく
黒い忍装束を着ていた
「任務完了だ」
「ハチ、手伝おうか?」
「大丈夫だ、先に寝てていいぞ」
「いや、終わるまで待ってる」
三郎と雷蔵と俺はろ組での
唯一の生き残りだった
入学当初はもっと仲間がいたが
皆んな辞めてしまったり、
帰らぬ人となったりしたから
色々な悲しみや苦しみを乗り越えて
今の俺たちがいる
それにろ組は結構生き残れた方だ
い組は二人、は組にいたっては
一人として残らなかった
その為か上級生達の絆は深くなる
しかしそれは時として致命傷と
なるだろう
それでも俺はこの三人で卒業したい
だからもっと技を磨いて強くなる
俺たちはもっと上へ登る
その為に
『感情を捨てる』
「彼奴らも馬鹿だよな」
「そうだね、学園の著書を
持って行くんだもん」
「それさえしなければ
学園側も動かなかったのに」
「それにさ」
「ん?」
「あいつらも運が悪かったなって」
「ハチのこと?」
「そう、雲の多い夜で森の中
絶好の獲物狩りだよ」
「自ら獲物になって、愚かだよね」
その日以降学園により付くものは
居なくなった
がまた聞くことになる
あの時の
悲痛な叫びを
その時の話はまた後で