「ふぅ、緊張するな」
平日の昼間。アタマに「ド」が付くほどでもないが、チョイ田舎な駅前広場に、この俺、狼獣人の落窪タロウ(32歳独身コイビト募集中ゥ)は、帽子を深く被って上着のポケットに両手を突っ込み、キョロキョロと周りを気にしていた。
「ここも……変わってねぇナァ」
もしかしたら知り合いと鉢合わせしてしまうんじゃないかとヒヤヒヤしている一方で、周りの風景を見てポツリと呟いてしまった。ナニを隠そう、ココは、俺の地元――生まれ故郷なのだ。生まれ故郷つっても、畑だとか山だとかに囲まれたド田舎ってわけでもなく、電車で片道30分もあれば都会に行ける程度。田舎なのか都会なのかハンパなトコってこった。ホラ、駅前にコンビニがあるかとか、牛丼屋があるかどうかとか……心当たりあるだろう?
俺は高校卒業後、ガミガミうるさい両親との実家暮らしがイヤだったもんで、就職を理由にして都会に飛び出した。一度は就職したものの、都会の荒波に揉みに揉まれて……結局1年で辞めちまった。その後も就職活動はしたものの、段々と面倒臭くなって、今やボロアパートで細々と稼ぐ寂しいフリーターにまでなったと。
そんな俺が今日、地元に戻ってきた。理由は実家に帰るためではなく、仕事のためだ。地元に就職したのかって? そうじゃないんだなコレが~。
「よぉ、狼のニイちゃん。アンタが、落窪タロウかい?」
その時だった、俺の視覚外から声を掛けられた。ハッとその方向を見ると、そこに立っていたのは虎獣人の雄。虎獣人という大型種族故にガタイが俺よりもデカく、歳もおそらくは俺より5歳か10歳は上そうに見えて、頭にタオルを巻いたタンクトップの恰好からトラックの運ちゃんみたいに見える。
「あ、ハイ……ドモ」
強面な虎オッチャンに声を掛けられたもんで、俺はドギマギしながらボソボソと頭を縦に振った。虎オッチャンは「ふぅん……」と俺の足から耳の先まで軽く見ると「んじゃ、コッチ来い」とだけ言って歩き出した。俺はまた「あ、ハイ」と小さく返事をするとその背中に続いた。
「ニィちゃん、こういう仕事は初めてか?」
線路沿いにも黙々と歩いていた俺と虎オッチャンだったが、虎オッチャンが話しかけてきた。強面な顔に似合わず、気まずい沈黙の空気をどうにかしたいと思ったのだろうか。
「えっ! ええ、まぁ、ハイ……」
「そうか」
俺のドギマギした返答に、虎オッチャンはそれだけ言うとまた沈黙が流れた。あー緊張して俺の語彙力が回らない……天気とかの話でもしようかと思ったが、再び虎オッチャンが口を開いた。
「AVに出ようと思うくらいだ。それ以上は詮索しねぇよ」
そう、俺が帰りたくもない地元に戻ってきたのは仕事のため――AVに出演するためだ。たまたま見かけたチラシで……条件が割と当てはまっていたということと、アパートの家賃が冗談抜きでヤベェってことで早急にカネが必要になったので、藁にも縋る気持ちで電話したのだ。
電話の相手は男の声で、丁寧に対応すると、履歴書と、身長体重そしてアソコの大きさとか性癖趣味嗜好など細かく書いた書類をとある場所に郵送してほしいと言われた。そして数日後「迎えを寄越すので指定する場所に待機しててほしい」と言われ、今に至るのだ。
AVかぁ……俺も堕ちるとこまで堕ちたな、と思うが、今日のメシにも困っているのだ、仕方ないのだ。それにホモスケベ出来てカネまで貰えるんだ、一石二鳥じゃねぇ? とポジティブに考えよう。そうそう言い忘れてたが俺はホモだ。雄好き。チンポ好き。ケツにチンポほしい……。
「へぇ~、ここにこんな場所があったんだな……」
虎オッチャンに連れられて辿り着いたのは、木々が茂る小さな林。地元には長年暮らしていたはずだったが、こんな空き地があったとは知らなかった。うんまー地元とはいえ無頓着だったからかな。
その林の中には、中型トラックが停めてあった。運転席と助手席のみのトラック部分に、銀色のコンテナを牽引しているというオーソドックスなタイプだ。
「中に入れ。さっそく撮影を始めるから、ホラ」
ええ、コンテナの中でってどんな撮影? と思ったが「ホラ」と軽く背中を押され促される。もうここまで来て退かせないぞという無言の圧だろうが、俺もここまで来てはもう退けないなと半ば諦めの気持ちでもあったので、気乗りはしないがモタモタせずトラックのコンテナの扉の前まで歩いた。
「――ンッ! え?」
虎オッチャンが開けてくれたコンテナの中を見た瞬間、俺は驚いてしまった。コンテナの中に待機していたのは、SMのボンデージ姿の牛獣人と馬獣人の雄。筋肉モリモリマッチョメンの変態的な肉体に、黒革の煽情的な露出の多い恰好をしており、それでいて鞭やバイブを握り構えている姿からして彼ら二人はSMにおけるM役ではないということは分かる。
そしてそんな二人の周りの床には、手錠、ロープ、ディルドー、スケベな下着、ビニールシート、何かの液体が詰まったペットボトル、何かが入った箱、ナニかで使うナニか……色んなオモチャ。このコンテナの空間の中で俺がナニをされるのかを物語っていた。だが、俺が驚いたのは、それらのことではなかったのだ。
俺は一度、コンテナの扉の前から素早く離れて真横からコンテナの外観を見た。相変わらず銀色の壁をしていて、面白味も何もない無骨なトラックのコンテナだ。そしてまたコンテナの扉の前まで戻ると、そこからコンテナの中を見渡した――。
「壁が……透けてる?」
外から見れば四方が銀の壁に阻まれたコンテナなのだが、そのコンテナの中からだと、外の様子が丸見えだった。前方にはトラックの運転席、下を見ればトラックの四つのタイヤ、左右は外の様子が見え、ガラスの壁どころかそもそも壁なんか無いじゃんかと思えるほど。
「ナニコレ! マジックミラーってやつ? ホントに魔法みたいじゃん」
などと俺は素直に感嘆の声を漏らすのだが「サッサと入りな」と背中を虎オッチャンにグイッと押されると同時に牛と馬に両肩をガッチリとホールドされてコンテナの中に引きずり込まれた。有無など言わせぬ内に、俺から衣服を乱雑に剥ぎ取ってスッポンポンにすると、財布やアパートの鍵といった貴重品だけはコンテナの隅っこに放り、全部の衣服をコンテナの外に放り棄ててしまった。俺が「あっ」と言う間に虎オッチャンによってコンテナの外から扉を閉められ、ガチャンと鍵を掛けられてしまった。これで俺は外に逃げることも出来なくなり、逃げ出すにしても真っ裸という状況になってしまった。
馬と牛は鼻息を荒げながら、俺を両脇から掴むと、コンテナの中央に鎮座してある「X」の字型の板のようなものに背を着けさせた。そして「X」の字のそれぞれ四方の先端には鎖付きの枷があり、それを俺の手首足首にガチャンッと填めた。こうして俺は全裸で、バンザイをするような姿勢で体の前を隠すことも出来ない……!
「――アッ! ちょっ、そこはッ!」
されるがままでアタフタするばかりで抵抗も反論も出来なかった俺がやっと口を開いたかと思えば、口から出てきたのは情けない喘ぎ声。馬の男が、ボトルからタップリとローションを手の平に垂らすと、膝を着いて俺のケツに塗りたくってきたのだ。
牛も馬も指の一本一本がゴツゴツとして太くて長くて、指の一本からして俺のチンポくらいはありそうなシロモノ。そんなチンポ指で俺のケツをベチャベチャと塗り回し撫で回したかと思うと、窄んでいた俺の肛門にズボッと指先を突っ込んできて、俺は小さく悲鳴を上げてしまった。
俺の悲鳴が合図だったのか、トラックが動き出した。運転席に座るのはあの虎オッチャンで、見かけ通りやはりトラックの運ちゃんだったようだ。ケツを弄られてるときにトラックが後退するもので『バックしますバックします』という機械的なアナウンスが流れるのは何の冗談か。
(え、ちょっと待て……まさか……まさか!)
だが冗談だとか笑い話だとかそんなこと言ってる場合ではなかった……ここでようやく俺は気付いてしまった。AVの撮影とは聞いていたが、具体的にどこでどんなAVを撮るのかというのはトップシークレットだということで当日に教えてもらおうと思っていたのだが、どうやらコレが答えらしい。
そう、マジックミラー号というやつだ。
「ちょっとタンマタンマ! 一回停めて、一回降ろしもがっ」
とんでもないAVに応募してしまったと俺はパニックになり、一旦止めてほしいと口にしたものの、牛によって口にギャグボールを突っ込まれて黙らされてしまった。よく見ればコンテナの天井の四隅や三脚のついたカメラのレンズがこちらに集中している。俺がこのコンテナに乗り込んでしまった時点でもう撮影は始まってしまったのだ。
「ンンンッ! ンッ……ンーフ、ン~!」
馬は俺のケツにローションでヌルヌルになった指をズボッと突っ込み、一呼吸置いては引き抜き、一呼吸置いては突っ込み、また一呼吸置いては引き抜くといったケツ慣らしを進めていく。牛はギャグボールを咥えている俺の顔を牛特有の分厚い舌で舐め回しながら、緊張とスケベとでピンピンに硬く立っている乳首をギュウッと摘まんだり引っ張ったりして弄ぶ。
それにしてもこの牛馬コンビは見かけによらず中々のテクニシャンのようで、初対面のはずの俺の体をまさぐりつつもドコが性感帯かを探り当てソコを重点に刺激させ身も心も昂らせて、緊張で縮こまってたはずのチンポがもうギンギンにフル勃起しちまって、亀頭はパンパンに膨れ上がり鈴口から我慢汁がトロトロと滴っちまう。思えば乱暴に服を剥ぎ取ったり俺を拘束したはずだというのに、その割に俺は怪我どころか痛い思いはしていない。恐らくはそのスジのプロなのだろう。たぶん。
(わ~! 停めろ停めろ! あっいやっ停めちゃダメ……けど、わああああ――)
カラダを弄ばれて身も心もイイカンジには熟れてきたものの、それでもパニックになってしまうのは、コンテナ全方位から見える外の景色。
外からは決して、コンテナの中も自分たちの姿も見えていないのだろうが、それでも内側から見れば壁が透明な上に、リアルタイムで道路を走っている――“その場に居る”という臨場感。たまにすれ違う通行人が、公園で遊んでる仔どもが、庭で花壇の手入れをしている主婦とかが、トラックの方をチラっと見るのは「あ、トラックか」程度であり断じてコンテナの中の痴態が見えているわけではない。
(見られてる、見られてる、見られてる……!)
だが、見えているわけがないと分かっているつもりでも「やっぱり見えていたら……」という考えが離れない。自分が万年金欠のフリーターダメ狼だと自覚はしているが、それでもかつて長年住んでいた上に、引っ越してから音信不通だったとはいえ顔見知りも多いし親しくしてるヒトも多かった。そのヒトたちに見られてるのでは……! と。
「アッ! アフィンッ!」
ギャグボール越しで俺は悲鳴を上げてしまった。牛がSMで使うような、ゴムのような棒のようなモノで俺の勃起チンポと、その下でブラ下がるタマタマちゃんをブッ叩いたのだ。敏感なトコを殴られて萎える……と思ったが、金的をされたことにより「子孫を残さなければ」という生物が本来持っているであろう本能が働いたのか、ますますチンポがギンギンビンビンに上を向いてしまう。
(おうふっ……ソコをダメにされたら俺、お婿に行けなくなっちゃう……)
万年金欠フリーターなダメクソホモ雄狼が結婚してお婿に行けるのかだって? 余計なお世話じゃい、キンタマとチンポがある限り望みはあるんだい。そんな俺のセルフ言い訳なぞ知らぬ牛馬は、SMで使う鞭で俺の胸やケツを叩き、ローションで慣らしたケツにディルドーを突っ込み、チンポを扱き、俺をイジメる。
(あ、アイツって同じクラスだったゲンタじゃね? ……隣にいるスッゲェ巨乳美獣な奥さんってまさかクラスのアイドルだったフウコちゃんか! 結婚したんだ~……あれっ、もしかして今すれ違ったのって野球バカだったサクタか。おっ、小学校の校庭に居るのってレオスケか……先生になったのか?)
俺の腸内がディルドーの挿入で圧迫される苦しさと悦びの中、フと外の風景に目をやってみると、その中には見覚えのある面々が。お腹だけが膨れたマタニティドレス姿の美獣な雌虎と、買い物帰りなのかスーパーのビニール袋を両手から提げた雄虎が談笑しながら歩いている虎夫婦。片手にスポーツドリンクを握ってジョギングをしている熊獣人の男。かつて卒業した小学校の校庭で、ジャージ姿で生徒の仔たちに何か喝を飛ばしている獅子獣人の男。
みんな小学校や中学校以来か、あるいは高校卒業後は音信普通になっていたが、もしかして音信不通になっていたのは俺だけで、彼らは同窓会とか度々顔を合わせているのかもしれない。みんな、それぞれ真っ当な職に就き、結婚し、日常を謳歌している――。それに対し今の俺はというと、万年金欠で挙句の果てに、こんな変態AVに出演して地元をウロウロしながら痴態を晒しているという。この落差、このギャップ、この惨めさに、薄っすらと快楽とはまた別の涙が目に浮かぶ。
「ンンッ! アンッ! ンンンッ!」
だが何より情けなくて惨めなのは……この状況が……とても……キモチイイと……感じてしまっていること……! 牛馬のテクニックでアタマが惚けただけではない、生まれ育った馴染み深い地元で、こんな情けない痴態を晒しているという羞恥心や、もしかしたら見られているかもしれないという危機感と焦燥とで露出癖がビンッビンッに刺激されて、もうこれだけで果ててしまいそうだ。
すると、馬が俺の両足首の枷を外すと、両足の太ももを抱えて駅弁体勢になる。レザーのパンツに指を突っ込むと、そこから「ボッロリンッ!」という効果音でも出そうなほどの御立派なデカチンが飛び出してきた。
時間を掛けて俺のケツを解し、準備万端整ったということだろう。だが馬が準備オーケーだとしても俺の方の心の準備はノーである。身も心も悦楽に浸っていたものの、あんな凶悪でバカデカイ――俺の足ほどあるんじゃねーのって思えるほどのデカチンを目の前に、蕩けていた俺の目付きもカッと見開いて戦慄してしまう。
(待った待ったそんなの入らないダメ止めてアーッ!)
ギャグボールで口を塞がれている以上、口からはヒューヒューと空気と涎の泡が噴き出るのみ。俺の無言の抗議虚しく、馬のデカチンが俺の肛門の先端部分をヌルヌルと突いて撫で回したその後、ズブブブゥっと放屁のような空気と肉の擦れる音と共に俺のケツの中に入り込んできた。
事前に馬のゴツイ指とローションとで慣らしていたものの流石は筋肉モリモリマッチョメンの変態馬のデカチンなもんで、水鉄砲からミサイルランチャーほどの差があるモノをぶち込まれて俺は今後二度ともうウンコ出来ないねぇと言われるかもしれないと覚悟するほどの強烈さ。こうやって冷静に実況してるがハッキリ言って現実の肉体の方の俺はこの世のものとは思えない唸り声の絶叫を上げている。
だが馬もやはりテクニシャンだったようで、可能な限り俺が苦しくならないようにゆっくりと、ゆっくりと奥に突っ込んだり、身を引いたりしてくれる。強面だけどこういう細かな優しい気遣いが出来るのがモテるオトコってやつなのかもしれない。プライベートでも付き合いたいナァ、なんて。
そんな心優しいデカマラファックが功を成したようで、腸内を圧迫する苦しみはやや残るものの、デカマラが俺の中を蹂躙し掻きまわす度に俺の塞がれた口からは激しい快楽の喘ぎ声が溢れ、前立腺をデカマラの先端によってブチ殴られる度に射精どころかションベンと見紛うほどの潮が吹き溢れて俺と馬の体に降り掛かる。
そしてもう一人のサオ役である牛はというと、コンテナの隅に置いてあった箱のようなものを俺の傍に置くと、その箱の上に乗って、俺の顔面に牛のデカチンをグイッと突き付けてきた。馬にも負けず劣らずの極太チンポはもう我慢出来ぬとばかりに先走りがダラダラと垂れておりこちらもションベンかと思えるほど。
牛にギャグボールを外してもらうなり俺は即座に牛のデカチンに喰らいつき頬張った。勢いでガッついてしまったため喉に詰まらせてしまい一瞬オエッて嘔吐きそうになってしまうが、牛もやはり気遣いの出来るテクニシャンのようで、俺の頭を鷲掴みにするものの、俺が落ち着くのを見計らってからグイッと引き寄せてから牛のデカマラを咥えさせてきた。
歯を立てないようにするには口をチンポよりも更に大きく開けて舌や口内で丹念にしゃぶり舐める必要があるのだが、口に入れた時点でもう口をあんぐりと開けてもまだまだ足りないくらいに極太なもんで、自然と歯が付いてしまうのだが、肉の塊であるはずの牛のチンポの方が硬いのではと思えるほどで、多少なら歯を立てても大丈夫かもしれない。いやむしろ、舌だとか口内なんて生温い刺激よりも軽く噛んだりした方がより刺激があるようだ。
「すいませーん、ちょっとよろしいでしょうか?」
濃厚ケモホモ3Pックスをしている中、トラックが一旦停車していたところに声が。それはなんと警察官――あれ、この警官、まさかキンジか? あの頬の傷まだ残ってる――犬獣人のキンジ。コイツもかつてのクラスメイト。家庭科の授業でフザけて、自分の頬を包丁で切って「ブラックジャック!」ってバカなイッパツ芸をやらかしたことがある……当然ながら先生や親たちにすんごい怒られたのは昔懐かし。
「同じ場所をグルグル回っている不審なトラックを見かけたという通報があったのですが、失礼ですがどちらの会社のトラックでしょうか……」
――マズイマズイマズイ! 不審に思われてコンテナの中でも調べられたら、AVの撮影をしていたことが……かつての幼馴染である俺だってことがバレちまう。すると、トラックの運転手である虎オッチャンが、ポケットから何か……よく見えなかったが、何かのカードのような、名刺のようなものを一枚出すと、それを警官キンジに見せた。
「…………あ! ああ、ハイ……大変失礼いたしました。お疲れ様です……」
それを見たキンジは、怪訝な表情から無表情へと変わり、そして最後には一瞬驚いた表情を浮かべると、そこから冷静になろうと深呼吸をしてから、小さく何度も頷き、トラックから離れた。そして虎オッチャンもすぐさまエンジンを掛けて移動を始めた……何を見せたんだか。
ともかくそんな危機も乗り越えてマジックミラー号の撮影(ホントに撮影してんのか?)は再開した。トラックが俺の生まれ故郷をあちこちと走り回る風景の中、俺は牛と馬にファックされ続け、何度も意識が飛びそうになったが、せめてもの意地が俺の中にも残っていたようで潮をビシャビシャと噴き洩らしながらも射精だけは堪えていた。
牛と馬も同様で、塩辛いガマン汁はたっぷりと滲みだすものの、タプンタプンと片方からしてニワトリの卵並みのキンタマの中に溜め込んでいるであろう精子が未だに噴き上がってこない。ハテ何かのタイミングでも待っているのだろうか。
だがそのタイミングとやらが分かってしまった。トラックが同じ道をグルグル回っていたのだが、いきなり進路を変えると今までとは違う道を走り始めた。そしてその道を、その道の先にあるものを、俺は知っている――。
牛馬コンビもそれを察したのか腰を今まで以上に前後に振り、俺の口とケツを激しく犯す。俺も負けじと上下の口を必死に開いて気を保たせながらイくのを抑える。トラックは二度三度、信号機の前で止まり、十字路を曲がり、おそらくはゴールへと近づいていく。
(俺の……実家……)
見慣れた道、その方向。トラックが行こうとしているのは、俺の実家だろう。オヤジやオフクロはどうしてっかな……と、今更になって両親のことが少し心配になるも、今の俺のこんな姿を見たら情けなさ過ぎて泣くだろうなぁという諦めや焦燥も。だがそれでいて興奮もする当たりやはり俺って親不孝~ゥ。
もうすぐ俺の実家。もうすぐ俺の家の前までというところで牛馬コンビのラストスパート。ドブドブパンパンと、毛皮と毛皮、肉と肉、汁と汁がぶつかり合う艶めかしいイヤらしい音が激しくなる。俺ももう我慢の限界だ……キンタマの中で抑え込んでいた俺のザーメンたちが「早く外に出してくれー!」と騒ぎ立てる。もう……もう、ダメ――ッ!
――キキーッ。
トラックがゆっくりと停車した。ゆっくりと……とはいっても、普通の車よりも大きくて重い鉄の塊が停車すればその反動も大きく、前方へと軽く重心が傾く。その前方へ傾く勢いを利用して馬が最後の一突きを「ドパァン」と俺のケツの奥に深々と突き入れて、そしてそのまま止まった。
――ブブビュルルッブブパッ。
粘液と空気が弾ける汚い音がコンテナの中に響いた。それは俺の口の中に射精した牛のザーメンと、馬が俺のケツの中に射精したザーメンと、そして俺が前立腺を責められ続けたことによるトコロテン射精ザーメンの音が合わさったものだ。俺も、牛も、馬も、トラックも、しばらく停まったままだった。
トラックは俺の家の前で停車していた。見慣れた俺の家。家の庭には、狼の老人がしゃがんでいた。それは俺のオヤジ。庭にしゃがんでいて、庭の草むしりをしていた。傍から見れば隠居老人の平穏な日常だろう。そのすぐ傍で、実の息仔が、トラックの中で変態AVの痴態を晒しているなど夢にも思わないだろう。
(オヤジ……)
オヤジはフと、こちらの方を向いた。まさか俺の姿が見えているのではと、射精疲れして惚けていたアタマの中でヒヤッとしたが、不審なトラックが家の前に停まっていれば誰だって気になるだろう。そのすぐ後に、トラックは再び動き出し、そこから走り去っていった。オヤジはこの不審なトラックが気になったのか、姿が見えなくなるまで怪訝な表情でこちらを見ていたのだった。
「お疲れさん」
出発地点である林の中に戻ってきたトラック。虎オッチャンがコンテナを開けると、中に入って来て俺らを見渡した。強面の牛馬たちは表情こそ崩さないものの、肩を上下させていて全力の射精だったようで。そして俺はというと、上下の口から大量のザーメンを注ぎ込まれてハラがパンパンに膨れており、上下の口からゴポッと吐きだしそうな気持ち悪さと、それでいて今まで味わったことのない激しくて危険な変態プレイで射精しキモチエカッタ……という充実感とで、意識がゴチャゴチャしていた。
「おーおー、随分と愉しんだようだなぁ。ちゃんと撮影出来てたのかぁ? ええ?」
初対面のときから仏頂面だった虎オッチャンは俺たちの情けない痴態と艶めかしさに、ニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべて設置されてたカメラを確認する。
「この町でマジックミラー号の撮影するってハナシになって、どうせならウケ役にはこの町出身のヤツにしようぜってことになって……そんなところに、この町出身のお前が応募してきたからよ、すげぇ偶然だよな?」
虎オッチャンは録画されたカメラの映像を再生したり停止したりしているようで、カメラから俺たちの喘ぎ声が聞こえてくる。
「愉しかったか? かつての知り合いとかも居ただろう? そいつらに自分のこんな情けない姿見られてるかもしれねぇなんて……ゾクゾクするよな!」
この虎オッチャン、ただのトラック運転手じゃなくて、もしかしてこのAVの企画主なのか? いやそもそも、コレは本当に……AVの撮影なのか? 定点カメラだけおいて後はただセックスするだけなんて……本職じゃないからよく知らないが。
「ナニはともあれイイモン撮らせてもらったよ。報酬は弾んでやる。あとさ」
カメラをカチャカチャとセットし直すと、虎オッチャンはタンクトップを脱いで上半身裸になった。虎オッチャンはニカッと白い歯を見せて不敵な笑みを浮かべる。そして馬と牛は、コンテナの隅に置いてあった誰かの上着を羽織ると、コンテナから出て、扉を閉めて鍵を掛けてしまった。そして牛が助手席に座り、馬が運転席に座ると、エンジンを掛けた。
「もう一周、愉しまねぇか?」
トラックが後退し『バックしますバックします』という機械的なアナウンスが流れ始める。
終