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私は、女王に妊娠させられたあと、明るく清潔な部屋に通された。
そこには、横一列に妊婦が並び、幸福そうな笑顔を絶やすことなく談笑していた。
自分の席には、樹脂なのか糸なのかよく分からないもので作られた安楽椅子があった。座れば柔らかく、適度な弾力があった。この座り心地の良さは何だろう! 恐らく、今までの人生でこれ以上の椅子に座ったことはない。
いや、こんなことに感動しているわけにはいかない。こんなつまらないことに絆される訳にはいかない。
女たちは、全く不幸そうに見えなかった。蟲たちに監視されているからと疑わないではなかったが、不幸そうな顔や反抗の色を見せて、何か都合が悪いのなら、私は何かしらの罰を受けている事だろう。
彼女たちは、何かと、私に話を持ちかけたが、蟲に魂を売った人間などに話をする義理もないので、それらを一切断った。
彼女たちの会話は、他愛のない日常会話ばかりであった。何故、そんなことで、話題が続くのか不思議で仕方なかった。
これは、どうやら、出産の後、暫く休みが取れるらしい。
ここが襲撃された当初は、本当に地獄でしかなかったらしいが、今の女王が支配するようになって、あらゆるものが、清潔で、快適になったという。
魔力的な問題か、それとも栄養の問題なのか、妊娠期間も二ヶ月ほどに短縮したらしい。
そんな諸々の説明をしてくれたのは、この国の元王女である人物だった。
本人曰く、今、ここにいる女は皆平等だそうだ。
「平等? 奴等は、沢山人を殺しているじゃない! 連れて来られた時にも一人食べられたのよ!?」
反論してみたが、苗床の適性のない子は、遠からず苦しんで死ぬ。それよりかは、麻酔で酔った状態で殺されて、我々の血肉になる事は、最善の選択だと答えた。
血肉? 殺された哀れな人々を私も食べさせられる事になるのだろうか?
そこまで考えが至った時点で、言葉を失った。
ここの人達は、なんておぞましい事を、ごく普通の事として受け容れられているんだろうか?
元王女の話を遮り、もう聞きたくないとばかりに顔を背けた。
もはや、ここで、何も食わずに飢死するのを選ぶほかない。そう決意した直後ぐらいに、食事の時間が始まった。
食事の時間と言っても、特に決まった時間があるわけではなく、世話をしている蟲達が、頃合いを見計らって個別に行っているようだった。
遠くから、うんうん、あんあん嬌声が聞こえていたが、実はこれが食事の光景だとは思っていなかった。
隣の元王女のところに、二匹の蟲がやってきた。二匹とも蜂型の個体だ。
彼女は、それを恍惚の表情で迎えた。
一匹が前に残り、もう一匹が後ろに回った。
前方の蟲は後足を広げて、腹部を前に突き出し、彼女の股間に突き当てた。
ちょくご、じゅぶじゅぶと音を立てて、触手がヴァギナに出し入れされているのが分かった。
元王女は、恥も外聞もなく嬌声を発して、「そこ」とか「もっと」と、下の口からの"食事"を催促した。
そして、前の蟲の胸を揉みし抱き、声にならない声を発して、その行為を楽しんだ。
そうこうしていると、後ろの蟲は頭越しに、苗床の彼女に口づけをして、その口の中からも、なにやら触手らしいものを突き刺しているのが分かった。
そして、喉が脈打つのが見える。
最終的に、くぐもった声で、何か絶叫しているようだ、目を見開いて、腰をガクガクと震わせ、両手は、椅子をあらん限りで掴んでいた。
蟲達が、離れると、下の口からも上の口からも白濁液を零しつつ彼女は力尽きた。
白目を剥いて、口を開き、下をだらりとたらし、身体は小刻みに震えている。
後ろにいた蜂は、前の蜂の局部を舐め清め、そして、彼女を含め、周囲をすっかり綺麗に舐め取って撤収した。
先ほどの覚悟はなんだったのだろう? 意思はまだ強いが、明らかに股間が濡れ、身体が熱くなっているのが分かる。
自分はアレを求めているのか? 理性は絶望した。
別の蟲が現れた、蝶型の奴と、蜘蛛型の奴である。
蝶が前で、蜘蛛が後ろに陣取った。
状況は、先と何一つ変わらない。だが、悔しいかな、実に気持ちがいいのだ。意識が飛びそうになるぐらいに。
硬くて長い触手が、股間をこれでもかと刺激し、そして、子宮内に、少しずつ何かを補給しているのだ。それが、腹部全体に響いて、刺激は増強される。
声を上げずにはいられない。
「やめて!」
と叫ぶけれど、身体が求めているのは、自分でも分かった。
続いて、口からの摂取の時間だ。
首を振って抵抗をしてみたが、蜘蛛の両手で押さえられる。
そして、あの気持悪い触手だらけの口が近付き、私の口を塞いだ。
触手は、口の中で広がり、喉の奥に張り付いた。
そして、何かが食道に押し込まれていくのが分かる。しかし、その刺激もまた快感を感じる何かがあった。喉の奥の方に、こんな性感帯があるとは思わなかった。それとも、蟲の分泌する特有の成分がそうさせているのだろうか?
そして、二匹ともタイミングを合わせたのか、私の胃と子宮が満たされ、白濁液が溢れたところで、私は絶頂した。
声を上げても言葉にならず、目を見開こうにも、眼球は常に上を向き、首は後ろに反れてしまう。
苦しさと快楽の為に、口は開けっぴろげになり、舌を突き出さずにはいられなかった。
この状態では、胃の中のモノを吐くとか飲み込むとか出来ず、ただただ腔内に残った液体が重力に従ってだらだらと落ちるに任せるしかなかった。
全身の痙攣が止まらない。身体が大きくビクつくと、膣内に残った僅かな精液が、ぶりぶりと音を立てて噴出した。
そんな時に、優しく手を差し伸べる蟲があった。
身体や顔、頭をさすり、私が落ち着くまで待っていてくれたのだ。
落ち着いてから気付いたが、それは蝶型の娘であった。蝶は、口の構造上、クリーニングには向かなかったからだろう。
蜘蛛はせわしく、私の周りで働いていた。
「落ち着きました? 慣れれば、もう少し楽になりますよ」
蟲は喋れないものだと信じていたので、これには驚いた。
人間の可愛らしい声の中に、何か、異様なものが混じる声だった。
「あ、ありがとう」
うっかりと答えてしまう。
反抗の意思は捨てられないまま、しかし、周囲の妊婦も、自分の世話をしてくれる蟲達も、親切で優しい為に、部分的に絆されてしまった自分に気付く。
椅子は、不思議と床擦れすることはなく、また定期的に、身体は舐められて、全身は清潔に保たれた。
糞尿ですら、言えば、排泄の時に綺麗にしてくれる。
糞尿から清掃、食事まで同じ口で行うのは不潔に思われるが、彼女らの唾液は、抗菌性と清浄性に優れていて、お互いの口をなめ合う事で、すっかり綺麗になってしまうのだ。
その為、妊婦が集まるこの部屋は、悪臭とは無縁であり、否、むしろ、彼女たちの分泌する体液は、馨しいほどであった。
元王女曰く、今の女王になって、妊婦もその子供が死ぬことはなくなり、それ故に、この国の勢いが衰えることはないのだという。
人間世界のそれと比べて、非文明的に見えて、実は、非常に優れた社会構造になっているのではないか?
"休暇"が取れたら、それを探りたい気持ちになった。
元女王は、私よりも少し早く妊娠させられたようで、私よりも腹は、大きく膨れるようになった。
人間の妊娠後期の二倍以上にも膨れるようになった。
私も、それに近いぐらいになって、少しばかり息苦しくなってきた。
胎動が外からも見えて、ぐねぐねと蠢くのが見えた。
「私、もうじきだから、部屋を移るね。また今度会いましょう? 色々案内してあげるから」
そう言って、彼女は、蟲達にうやうやしく運ばれていった。
そして、私も運ばれる時が来たのだ。
これから怪物を産むのだと分かっていながら、我が子である事、そしてその誕生を心待ちにしている事を自覚せざるを得なかった。
聞く話によると、育児は育児で、専門の蟲達がやってくれるらしい。
片親は全て女王であるから、私は全ての母親であり、全ての兄弟と同じなのだと言う。
逆を言えば、我が子と言う意識も薄いらしい。そんなモノなのだろうか?
何にしても、私は別の個室へと連れられてきた。
別室に入ると、私は、蜘蛛型の娘、数人の手によって、天井から吊される事になった。
うつ伏せに近い、斜めの体勢で、丁度、腹が一番下になるように巻かれた。
乳を圧迫しないように胸はたすき掛けにされ、腹はその周囲を取り巻くように糸を架けられる。
宙に浮いているような不安定さを感じないでもなかったが、実際、私が多少動こうと、ゆれることなく安定している。
そこから、今度は、産前最後の"食事"に入った。
口からの摂取はなく、全て、ヴァギナからの摂取となるが、これが入れ替わり立ち替わり挿入されることになる。
流石に激しくされると、身体は揺れたが、他の娘が手を握ってくれたりして、不安になる事はなかった。
もう、何時間犯されただろう? 意識は遠のくが、しかし、それでも、自分の状態を見る事が出来た。
腹は、大きく垂れ下がり、大人の女性でも一人分は入る大きさだった。
常に液体が注ぎ込み、溢れているので区別が付かないが、しかし、胎動も確かに強まっている事を感じた。
腹は歪に変形し、人ならざる者が、その中にいるのだろうと言うのが嫌と言うほど分かる。
こんな状態になっているというのに、苦痛はそれほど感じなかった。むしろ、自分の生殖器が嫌というほど犯されていると言うのに、なおも感じてしまう自分が悔しい。
半狂乱になりながらも、目に入る光景だけは冷静で見られているのは、快楽と苦痛が衝突しているからなのかも知れない。
身をもだえていると、それは突然やって来た。下腹部が締め付けられるような痛みである。
人間の陣痛なら、もっと手優しいモノからくるのだと聞くけれど、蟲のそれは、妊娠期間の短さもあるだろうが、すべてがスピーディーである。
腹全体が収縮している痛みの中で、特に下腹部に来るモノが非常に強い。
そうこうしていると、子宮口がもぞもぞしているのが分かる。明らかに、中で我が子が蠢いている。
流し込まれた体液なのか、それとも羊水なのか、ヴァギナから何かが噴出するのが分かる。その度に、快感を感じざるを得なかった。否、痛みの周期の間に来る快感の所為で、噴き出しているのかもしれない。
私は、叫び、そして喘ぎながら、この周期を耐えた。
次の段階では、骨盤を割り、そして下腹部を切り裂くかのような――否、現実そうなる痛みが全身を貫いた。
メキメキと言う振動と、音が駆け抜け、そして、体液がどっと外に溢れた。
身を捩らせながら、頭を出し、両腕を出し、そして、中脚と後足を前のめりに出しながら、上体が出て来る。
子供は、げほげほと嘔吐きながらも、呼吸を始めた。
最後に、蟲としての腹部を取り出すと、私の中の、胎盤と羊水が滝のように落ちていくのが分かる。
我が子の大きさは、人間で言う所の5歳ほどに見えた。勿論、その子は手を含めると脚部は八本ある蜘蛛型の怪物であるのだが。
他の蟲は、我が子を舐めて清めたり、或いは私の下腹部の処置をしたりと大忙しだった。
そうして、この子が、私の前に連れて来られる。
「産んでくれてありがとう」
産まれたばかりの子は、手を伸ばし、震える私の頬を包み込んだ。私も、感動の涙を流しながら――原因不明の感情の高ぶりだ。感動としか言いようがなかった――こちらからも手を伸ばし、「産まれてくれてありがとう」と返した。
怪物を産むなんて、当初は全くの狂気の沙汰であったが、完全に毒されてしまったのかも知れない。
人間に恨みはないが、この子とその仲間の繁栄を望まずにはいられなかったのだから。
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