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皮モノ1~醜形障害と美人の子

  フミは自分の事が嫌いだった。自分嫌いを克服するために、勉強に熱心に取り組み、品行方正な生活を心がけ、人から褒められるように生きていたけれど、自分が嫌いであった。

  鏡が嫌いだ、写真が嫌いだ、容姿に関わる全てが嫌いだ。

  自分は上手くやって行けている筈なのに、この何もかもがダメであるような感覚は、全て、生まれ持った容姿の所為なのだと思った。

  思えば、両親は余りにも素朴な顔で、色っぽさがないし、父方は百姓臭いし、母方は田舎臭い。

  世間一般からしたら、褒めるほどでもないが、かといって不細工でもない彼女は、「褒められない」と言う理由だけで、己の相貌を憎んだのだ。

  そんな風であるから、彼女は友達が少ない――友達が少ないのも顔の所為だと思うほどであるからだからだ。

  トワは、所謂美人であった。

  とはいえ、学校へは補欠でギリギリ入学を果たしたし、授業についていくのに必死であった。

  ただ、彼女は美貌云々は別として、垢抜けた性格と、明るい顔でこういうのを切り抜ける事を知っていた。誠心誠意謝れば、一日程度はレポート提出を待ってくれたし、アルバイトで嫌な客が現れても、それに健気に対処していれば、必ず仲間や常連が助けてくれたからだ。

  こんな二人の仲が決して良いモノとは思えないだろうが、世の中は不思議なことに、フミとトワが絶妙に知り合い、そして、今まで希少な関係を築けていた。

  トワはフミの事を、真面目で何でも出来る子と思っていたが、トワは自分に見方をしているから許しているけど、顔で上手く切り抜ける嫌な子ぐらいには思っていたのだ。

  大学二回生となった二人の夏は、特に何もないものとなっていた。

  フミは元より彼氏などいなくて、トワは不誠実な男に二又され、こっぴどい終末を迎えたばかりであった。

  そんな頃に、フミは怪しい占い師に声を掛けられ、「祖先が守っているがそれがむしろ邪魔になっている」とか言う怪しい売り文句に絆されて、ウン十万と言う金を支払ってしまった。

  そんな彼女には、これまた胡散臭い魔術書が送られてくる。

  どういうわけか、フミはそれを熟読してしまう。

  フミは自分の部屋にトワを呼び出す。

  トワ的には、フミの部屋は清潔で片付いているから好きであった。

  フミはラグの下に魔方陣を描き、そして、暗唱を省略する呪いを予めやっておいてから、フミを部屋の真ん中に座らせた。座布団があれば、自然に座るだろう。

  魔法は当然のように発動した。尤も、光や音と言った演出はなかった。ただ一つ、フミの心の中に、上手くいったと言う確信があるだけである。

  上手くいったのは間違いないが、何も反応がないと流石に心配である。何気なく、しかし不自然に、トワに呼びかけてしまう。

  「何?」

  返事は普通である。立ち上がり、こちらを見つめる。

  その瞬間である。

  トアは胸を押さえて、突然苦しみ出す。

  ここで普通の精神なら、「大丈夫?」の一言ぐらい声を掛けそうだが、フミは自分の作戦が首尾良く進んでいる事に、胸がすく思いがしていた。

  苦しむトアを静かに見守る。

  半狂乱とも言える苦しみが過ぎると、突然の嘔吐を始める。

  汚イキに近い声を立て、まさにゲロゲロと言う声と共に、赤黒い液体。たまに肉片が混じる液体を吐き続けた。

  それが一段落して、「フミちゃん。ごめん。突然気持ち悪くなって……」と状況を繕おうとしたトワは、これまた赤黒い失禁をする。

  最初何のことか気付かなかったようだが、気付くと驚き、そして取り乱した。

  取り乱すと、また吐き気が戻ってきたのか、ゲロを吐いていく。

  吐く量と共に、彼女が痩せ細っていくように見えた。

  最早、飢饉のアフリカの子供のような骨と皮のような状態にまでなると、背中だけが異様に盛り上がるようになった。

  「私死んじゃうのかな?」

  トアの言葉に、フミは冷徹な視線を投げかけるだけだった。

  最後の言葉のあと、背中が開き、そしてそこから、液体と肉片が流れ出ると、彼女は、一枚の皮となっていた。

  部屋の掃除は、部屋にモノが少ない彼女にとって、そんなに難しい作業ではなかった。

  彼女の服を洗濯し、皮は風呂場で洗い、そしてそれに袖を通した。

  皮は厚ぼったい感じがしていて、こんなのを着ても大丈夫かしらと思っていたが、手を置くまで突っ込み、ぐー、ぱーを何度かやっているうちに、腫れぼったさが失われる事が分かった。

  色白で素直に伸びた綺麗な指だ。

  足を通し、胸や股間の位置を合わせる。背中を合わせるように引っ張ると、不思議な力で閉じていく。

  頭を閉じててしまうと、やや作り物っぽいトアが経っていた。

  作り物らしさは、鏡の前で表情を作ったりしていたら、なんとなく馴染んできたので、流石だなと思ったのだ。

  見れば見るほどトアは美人であった。

  スリムで、かといって肉付きは悪くなく、大きな傷や痣はない。目はぱっちりしていて、ストレートの髪は綺麗で、表情は豊かだ。

  「なるほどね」

  フミはトアの服の感想が終わると、下着から何から全て彼女のモノを奪って外に出た。

  「学外の人間なら、妙なエンカウントはないでしょう」

  電車に乗り込むと、そんなに込んでいないのに、真面目そうなサラリーマンが隣に座った。その時点で、もう不快感MAXであったが、左側に座ったそいつは、わざわざ左手を自分の背中から通して、自分の尻を触ったのだ。

  「いや!」

  立ち上がると、サラリーマンは、素知らぬ顔をしてる。他の人間も、関わろうとしてこない。

  怖くなって、すぐに電車を降りると、なんとなく視線を感じる。視線は改札に近づくにつれた強くなり、そして出ればもっと多くなる。

  誰ともない視線があちこちから飛んでくる。

  服の着方を間違えたのか? 化粧がおかしかったのか? 何か不味いモノがどこかについてないか?

  様々な疑念が突き刺さってくる。

  外に出れば、軽そうな男に次々に声を掛けられ、モデル事務所まで相談される――モデルと言ってAV女優にさせる奴である。

  テレビで世論の取材をされる。どーせ頭の悪いコメントを求めているのだろう。ぴしゃりと言ってのけると、レポーターは苦虫をかみつぶしたような顔をして去って行った。

  フミの目論見としては、アホそうな男を引っかけて、軽くヤって、そして散々酷い目に遭わせてやろうと思っていたが、その経験は、全て自分が負うのだと気付いた。

  びっくりして、部屋に急ぐが、そこでもまた痴漢や付き纏いに遭遇して、惨めな思いと怖い思いしかしなかったのだ。

  部屋に戻ると、覚えていた魔法の言葉を唱える。

  鏡を見ると、トアの目から精気が消え、そして身体全体がむくみだし、胸の気持ち悪さに、手をやると、なにか、引き裂けそうな気配がする。

  思い切って指を突っ込んで左右に開くと、赤黒い液体と共に、自分の身体が姿を現す。

  肉片を引きちぎる様にして、顔を復元し、ソックスを脱ぐように足を外す。

  肉片一つ一つを見ると、トアの顔の断片である事が分かる。

  復元用に用意したマネキンに、この肉片を張り付けていく。

  かなりグロテスクだ――復元せずにゴミとして出すと言う選択肢もあったが、何かの都合で見つかるよりか、トアをこのまま支配した方が得だと思ったのだ。

  マネキンを魔方陣の真ん中に立たせて、魔法を唱えると、やや人形じみた動きのトアが現れる。

  「分かったでしょ? 美人もそんなによくないって」

  とはいえ、彼女が他でかなり得をしていると分かっているので、この経験はまた別にして、思うところはあった。

  上手く言葉に出来なかったが、そういう暴論を吐くと、トアは訥々と答える。

  「私ね、フミちゃんの事が好きで……フミちゃんと一緒になれたらなって思ってて……」

  「この魔法って、一度掛けられると、もう、肉の身体じゃなくなるんだよね?」

  と、気配がおかしいのを感じた。

  結論からすれば、フミに怪しい魔術書を送りつけたりしたのは、トアに他ならなかった。

  「私を眷属にしたんだから、満足させてね?」

  トアは自分の皮を脱ぐようにして、肩を外し、右手を抜く。そして、左手で持って、フミの右手に通してくる。

  トアがフミを超える魔法で彼女を押さえているからだ。

  右半身が済むと、もう、身体の支配権はトアが握っている。

  マネキンを脱ぎ捨て、すっかりフミがトアに飲み込まれると、「フミちゃん! いっしょになれたね!」と、病的な表情をして鏡に微笑んだ。

  それからオナニーを始める。

  トアは平気な表情をしているが、中身のフミは猛烈な快感を感じて身を悶えている。尤も、外側のトアが支配している以上、フミは何も出来ないでいる。心の中でトアに泣き叫び喚くだけである。

  「フミちゃん可愛い! そんなに泣いちゃって!」

  一通り遊び終わって、フミが憔悴していると、トアは誰かに電話を掛けた。

  「部屋に戻って待ってる」

  そう言うと、トアはフミの部屋を後にした。

  さて、今までトアの部屋に入った事がなかったが、その中身は異様なモノであった。拘束具や玩具がひしめいていたからだ。

  「皮だからこんなことも出来るんだよ」

  と、トアは自分の股間を引っ張り伸ばすと、その奥に電マを突っ込んできた。

  フミはそんな遊びをしたことがなかったから、この刺激には、瞬間と言えるほどのレベルでイってしまい、それからはもう、弄ばれるだけであった。

  「誰を呼んだか知らないが、早く来てくれ!」

  フミは心からそれを願った。

  その後現れたのは、大柄の女性であった――が、服を脱ぐと、当然のようにペニスがそそり立っている。

  「この人、クミちゃんね。玉は取ってあるから安心して」

  ひとりごちるように言うと、トアとクミはセックスを始めた。

  フミにとっては、挿入も初めての経験である。

  トアは溢れ出る血を見て、「あ、フミちゃん初めてだったんだ!」と驚き、そして「じゃぁ、もっとやらないとね」と笑う。

  それから激しいピストンが続き、痛みと屈辱に呻くしかなかった。

  セックスが終わると、トアは満足したような顔をしている。クミもその通りであった。

  実際、クミは部屋を一旦離れたし、道具を片付けたりしていたからだ。

  「やっと開放される」

  そう思った矢先、突然の吐き気がした。

  あの、赤黒いゲロを他の視線などものともせず、ただ、汚い音を出しながら、ゲーゲーと吐き、そして、失禁していった。

  クミは、二重になって放置されたフミとトアの皮を引き離し、それぞれを丹念に洗うと、フミの身体を支配したのだ。

  身体の大きさは不釣り合いだったが、皮を着ると、中身は補正されるようだ。

  鏡の前に立つ自分を見ると、「案外悪くないじゃない」と言う気持ちになった。

  しかし、自分の支配権は戻らない。

  振り返ると、トアは元の姿に戻っていた。

  「ごめんね! 貴方に教えたの全部うそで、さっきからが本当の魔術! フミちゃん、ずっと私の持ち物になったよ!」

  狂気じみた顔でそう宣う。

  クミは、フミの股間の皮を引っ張ると、自分のペニスを取り出した。

  「やったー、フミちゃんとセックスできる!」

  トアは、フミの皮を着たクミをセックスを始める。どこにそんな体力があるのだろう――この答えは、セックスの後に、自分一人だけが疲れているのに気付いたときである。

  二人で相互にセックスすれば、二人の疲労は一人分、だから倍セックスできると言う理屈で、二人分の疲労をフミが負う事になったのだ。

  フミの皮をお互いに着合ってのセックスは、翌日の夜まで続いた。

  フミもう、感情も感覚もなくなってしまっていた。

  洗われ、ベビーパウダーをまぶされ、そして、袋に入れて、箪笥にしまわれる。もう、自分は、終わってしまったのだと悟った。

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