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怪人のアジトに潜入 〜後編〜

  〜熊森雷太視点〜

  蛙怪人の攻撃で俺達は幻覚を見せられ執拗に精液を搾り取られようとしているところを達也君に助けられた。今は鞄から達也君が事前に作った薬を飲みとりあえず体力と精力を回復しているところだ。しかしなぜか体が動かない…ヘドロによる汚臭と媚薬の甘い匂いがそうしているのだろうか。団さんも吾郎さんもすっかり気力を取り戻したのだが俺と同じように体が動かないようだ。達也君の加勢に行きたいのにまた何も出来ないのか?

  「達也君は本当に凄いな…俺達が出る幕はない。」

  「こんな時に何を言ってるんですか!達也君は今蝦蟇怪人と対峙してるんですよ!?怪人を倒すのが俺達ヒーローの仕事じゃないですか!」

  「だがな…怪人の攻撃で疲労してるんだ。十分に休んだら達也君のところに行って加勢しに行こうと思っている。」

  団さんと吾郎さんはこう言っているが…こうしている間にも達也君は蝦蟇怪人との戦闘を繰り広げている。達也君だって怪人の攻撃を受けている筈だ。何れは怪人に捕まって執拗に精液を搾り取られるかもしれない。そうなったら俺はなんのためにヒーローになったのか分からない…体が動かないのは怪人による恐怖と体力の消耗だ。しかしそんなこと言っていてはいられない…!俺は…達也君がいないと生きていけない…!達也君は俺の恋人なのだから…。そう思い俺は体を無理にでも動かし一歩ずつ歩を進めようとした。

  「くっ…達也君…今行くぞ…。」

  「熊森!無茶するな!お前だって…」

  「俺は…達也君を助けたいんだ!」

  その時である。今の言葉に応えるように俺の体に異変が起きる。体が怪人のように大きくなり体毛も茶色だったのが金色に輝いていた。しかもこの状態になると疲労もなくなったような気がした。俺は急いで団さんと吾郎さんを背中に乗せると地下道を駆け抜ける。

  「な…熊森、これは“怪人化“だよな?」

  『話は後でしましょう!今から達也君のところに向かいます!』

  走っていて気づいたのだがヘドロと汚臭は俺には効果がなかった。これは怪人になった影響だろうか…これなら俺でも対等に闘えそうだ。更に団さんと吾郎さんにも影響がなく全て弾かれているようだった。俺は急いで達也君の元に走った…今から助けに行くからな!

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  ヘドロと汚臭の中を駆け抜けて数分…随分奥まで来たような気がする…そこはただ広いだけで何も無く汚臭を放つヘドロが撒き散らされていた。中央には蝦蟇怪人が仁王立ちして構えているのが見える。達也君はというと息を切らして蝦蟇怪人の攻撃を避けながら技を放っている…しかしそれほどダメージを与えられていないようだ。ただ蝦蟇怪人の舌が切れている所を見ると達也君は少しは傷をつけられたらしい。

  『くっ…ちょこまかと動き回るな。しかも仲間も来てしまったか…お前ら!あいつらを捕らえてくるのだ!』

  蝦蟇怪人の手下達が俺達に襲ってくる。団さんと吾郎さんはまだ回復してない…ここは俺がやるしかないな!と俺は二人を乗せたまま手下達に突進していく…この姿になると技が使えなくなるようでこれしか手段がなかったのだ。手下達はヘドロを吐き出しているが俺には全く効果がなかった。

  『なっ…!吾輩の手下達が…。』

  後は蝦蟇怪人だけだ…!俺はすぐに達也君の所に行こうとしたが手下が放ったヘドロから触手が現れ妨害されてしまう。これだと突進では突破出来ない…!そう思った俺はすぐさまヘドロから離れた。

  『まあいい…吾輩がお前らを捕らえればいいだけの話だ。』

  触手は達也君の方に向かっていく。達也君は反応が遅れ捕まってしまった…急いで助けに行きたいが触手のせいで思うように動けない。

  『さて…こいつから精液を搾り取らせてもらおうか。それから吾輩の手下となるがいい。お前らはこいつの後で搾り取ってやるからな。』

  蝦蟇怪人は達也君に近づくと口を開けパックリと体を丸呑みしてしまう。多分だがヒーローを中に入れて精液を吸収するつもりなのだろう。

  『それよりお前…“怪人化“しているようだな?今怪人化した人族を元に戻す薬を作っているところだ。今飲み込んだ奴は人族だがお前は獣人だな?』

  こいつ…達也君が人族だと分かっていたようだ。しかも俺のことまで…それにしても本当に人族を元に戻す薬を作っているらしいがその材料にヒーローの精液が含まれている。でもそれがあれば達也君も元に戻るかもしれない。

  『お前ら…まさか狸獣人を人族に戻したいと思っているのか?だが…こいつはもう元に戻ることはないだろう。今までに何回も怪人化した奴は…な。』

  な…何を言ってるんだ?達也君が…人族に戻れない?俺はこの言葉を聞いて蝦蟇怪人を攻撃するのをやめてしまった…。[newpage]

  〜氷海達也視点〜

  「ここは…。そうか、私は蝦蟇怪人に飲み込まれたんだね…。」

  蝦蟇怪人のお腹の中は触手が蠢めいている。ただ…私には一切近寄ってくることはなくその場で動いていた。今ヒーローの姿になっているのになぜ…?とりあえず私は歩き回り外に出る方法を探す…しかしここはかなり広い。どこまで続いているか分からないこの空間で出口を探すのは困難だった。と、突然目の前に扉が現れる…私はノブに手をかけゆっくりと開ける。そこにはー

  「え…?これってどういうこと?」

  目の前には研究所のような施設が広がっていたのだ。そこにはかなりの人数の研究者がいて…カプセルの中にヒーロー達が捕らえられていた。カプセルにはホース状のものが取り付けられていてその先にはかなり大きい容器があった。多分ヒーローの精液をそこに溜めるのだろう。

  「彼らに私は見えてないのか…多分幻覚を見せられているんだろうな。それにしてもこの研究所は見覚えがあるような気がする。」

  私の不安は的中した。そこには私の父と母がいたのだ。私の両親が科学者と言うのは誰にも話していない。私は両親の仕事が終わるまで中に入らせてもらえなかったけど…こんなことをしているとは知らなかった。

  『ヒーローを怪人化させる研究は楽しいな。』

  『そうね、次は一般人を怪人にする研究をしましょう。このことはあの子には内緒にしないといけませんね。』

  『もし見られたらあの子を怪人に…。』

  私を…怪人に?私にそんな隠し事をしていたなんて…もしかしてこの蝦蟇怪人の過去のことなのだろうか…。

  『この話は置いといてまずはこのヒーローを怪人化させてみるか。』

  両親の目の前にはガタイのいい牛獣人が手足を手錠にかけられ大の字にされていた。ヒーロースーツはビリビリに破かれ全裸にされている…今は何故か気絶しているようで多分麻酔か何かを打たれているかもしれない。

  『獣人のヒーローは本当にガタイがいいな。手触りもいいし何より怪人に適する体躯をしている…これは期待できるな。』

  父親らしき人物が牛獣人の体を嫌らしく撫でている。胸…腹と下に手を下ろし牛獣人の股間に到達…それをじっくりと観察すると掴んで上下運動を開始する。

  「おお…擦るだけで先走りが出てくるな。おい!もっと快感を味合わせるために精力増強剤を打ってくれ。」

  牛獣人に精力増強剤が投与される…それで牛獣人のものがさらに大きくなる。反応がよかったのか先走りが出る量が増えている。

  『もうそろそろ精液が出そうだな…急いでカプセルに入れるのだ。そして精液の採取を開始してくれ。それから怪人薬の投与だ。』

  父親は母親を連れ研究室を出ていった…他の研究者は牛獣人をカプセルに入れ装置を取り付ける。装置を稼働させると牛獣人はすぐに痙攣し始め大量に精液を噴出させる…あまりに多かったため容器の半分くらい溜まっていた。と同時に牛獣人にも変化が起きる…体が大きくなり体毛がどす黒くなりお腹の部分が膨れ上がる。更に手足が短くなり水かきのようなものがついている…そして牛獣人のものは体の中に入ってしまっていた。今の彼は牛獣人…ではなく蛙獣人?今私を飲み込んだ怪人のようになっていた。

  『気分はどうだ?牛のヒーローさん…いや、今は蝦蟇怪人か。』

  『グヘヘ…吾輩をこんな姿にしてくれたことに感謝している。吾輩はこれからどうすればいいんだ?』

  『貴方にはこれからヒーローの捕獲をしてもらいます。それからその姿を維持するために精液の採取をお願いするよ。』

  『了解了解、しかしそう簡単に捕まらないだろ…吾輩の能力もまだ分からないからな。能力を教えてくれないか?』

  『貴方の能力はヘドロ攻撃です。そのヘドロから触手と媚薬のような甘い匂いが発生します。それでケモヒーローの嗅覚を刺激させることができます。』

  『なるほど…ただそれだと近寄らないからおびき寄せたほうがいいだろうな。それなら地下に居城を作りヘドロで手下を携えヒーロー達をここまで連れてきてもらおうと思う。』

  『方法はお任せします。採取した精液は手下達に持ってこさせて下さい。それを使って怪人薬を作成しますので…。』

  …こうやって怪人を生み出していたんだ。私はこの光景を見て両親に怒りを覚えていた…と同時に幻覚がなくなり元の場所に戻る。触手は相変わらず私には近寄ることはなく汚臭と甘い匂いを漂わせている。こんなことしてる場合じゃないな…と私は再び出口を探すため歩き回るのだった…。

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  〜熊森雷太視点〜

  達也君が蝦蟇怪人に呑み込まれて数分が経つ…今頃触手に弄ばれて精液を採取されているに違いない。今から助けに行きたいが目の前にヘドロの触手が邪魔をし更に汚臭と甘い匂いを漂わせている。団さんと吾郎さんには危険だがこれから逃れる場所がない…二人を守りながら蝦蟇怪人と戦わないといけないのだ。

  『どうした?かかってこないのか?吾輩を倒さないと狸獣人は助からないぞ?それとも吾輩に素直に捕まって執拗に精液を搾り取ってほしいのか?』

  蝦蟇怪人が挑発している…俺一人で倒したことは一度もない。今までずっと達也君と一緒に闘ってきた…しかし隣に彼はいない。達也君に助けられてばかりだから今度は俺一人で闘わないとな…。

  『お?やっとやる気になったのか?しかし…いいのか?背中にいる奴らを降ろさないのか?大丈夫だ、そいつらを捕まえることはない。』

  とか言っておいて狙うつもりだろ…ヒーローの精液を採取するために怪人はいるのだから。そんな脅しを無視して俺は怪人と睨み合う。

  『吾輩の言葉を無視するとはなんたることだ。仕方ない…お前の実力見せてもらうぞ。吾輩を楽しませてくれ給え。』

  余裕な笑みをする蝦蟇怪人…やはり二人を降ろしておけばよかったのか?と思ったらいつの間にか二人共降りていた。

  『すぐにやられるなよ。さあ…行くぞ!!』

  先制で蝦蟇怪人がヘドロ攻撃をする。そのヘドロから触手が現れ俺に襲いかかる!俺は今怪人化しているので奴の攻撃はものともしない。ただ俺の攻撃も奴には通用しない…奴の体は粘液でコーティングされていて物理攻撃を弾いてしまうようだ。それなら雷技を使いたいがそれよりも炎技の方が効きそうだ。しかし今の姿の俺には使えない…どうしたらいいんだ…。余計なことを考えていたせいで俺はヘドロの触手に捕まってしまった…。

  『おいおい…戦い中にそれはご法度だぞ?呆気ないがお前の精液…とことん搾り取ってやるからな。』

  俺のものに触手が群がってくる…怪人化しているせいか元の姿の時よりもかなり大きくなっている。それに触れられた瞬間すぐに先走りが垂れてしまっていた…やはり俺は怪人化するにはまだ早かったかもしれないな…。

  『怪人化したとはいえまだ能力を使えないんだな。狸獣人の方は既に能力を使えていたようだな…なぁ、そうだろ?』

  『は…はい。目の前で目撃しましたので…。』

  『確か怪人の精液を与えれば覚醒するそうだな?こいつ…いや、こいつらを吾輩の手下にするのは面白くないか?』

  『そ、そうですね。』

  こいつら…ってまさか!?振り向いた時にはもう遅かった…団さんと吾郎さんがヘドロの触手に捕まり俺の所に引き寄せられていた。

  『まずは…怪人のお前からだな。』

  蝦蟇怪人が俺に近づいてくる。そして俺のものをスリットにすっぽりと入れてしまった。入れられただけで先走りが出てきてしまう…怪人化していると感度がより良くなってしまうのかもな…。

  『両側にいる奴らは暇そうだな。お前らは触手で弄んでやるよ。』

  結局怪人に精液を執拗に搾り取られる羽目になるのか…俺達は怪人と触手に襲われ地下内に喘ぎ声を漏らすのだった…。[newpage]

  〜氷海達也視点〜

  未だに私は蝦蟇怪人のお腹の中を探索中だ。出口は全く見つからず途方に暮れていた…と目の前にまた扉が現れる。

  『じゃあ…行ってくるぜ。』

  どうやらあの時の続きのようだ。蝦蟇怪人はこれから研究室を出るところか…

  『おい、そこの餓鬼。俺の仕事を手伝ってくれるか?』

  餓鬼って…蝦蟇怪人の目の前には子どもがいた。もしかして私?

  「あ…はい。何をしたらいいですか?」

  『そうだな…お前、薬を作れるか?吾輩の能力を強化させたいのだが…。』

  「それぐらいなら出来ますよ。」

  『将来は親達よりも立派な研究員になりそうだな。その時は吾輩の手下として迎えてやろう。』

  「あ…ありがとうございます。」

  その時蝦蟇怪人は嫌らしい顔つきになっていた。とりあえず後をつけていると研究室に入っていった。そこは薬を作っているところで私はここの研究者として配属していた。当時私は16歳だったのだが研究者の中で一番有能だった。

  『お?レシピなんてあるのか?』

  「ええ…自分で作ったものは全て書くようにしています。」

  『これは使えるな。これから薬の製作はお前に任せる。』

  「はい、分かりました…。」

  このレシピ…確かなくなったような気がする。この2年後に吾郎さんと逢い翠川研究所で覚えてるだけ書いた筈だ。

  『ほう…怪人から元の姿に戻す薬も作っているのか。それにはヒーローの精液が必要不可欠なんだな…おっと、吾輩は何を言っているんだ。じゃあ完成したら吾輩のところまで持ってきてくれ…一つやり忘れた事があるからな。』

  「は…はい。」

  蝦蟇怪人が研究室を出ていく…後をつけたいがレシピの事が気になっていた。こっそりと覗き見しているとその中に私が忘れていたレシピがあった。

  「“怪人を…させる薬“のレシピ?ここだけ掠れていて読めないけど…。素材は“怪人の一部ならどれでも“か…これを使ったら我を忘れて暴れ回るのか。でも私が蝦蟇怪人から奪った薬は…。」

  その時隣の部屋から物音がした。行ってみると蝦蟇怪人が暴れ回り研究室を破壊していたのだ。ところどころから火が舞っていて研究者も倒れている…。

  『お前ら吾輩をよくも怪人にしてくれたな!吾輩は元はヒーローだったんだ。早く元に戻せ!それからここにいるヒーロー達も解放しろ!』

  蝦蟇怪人はヒーローの記憶が残っているようだ…そこには両親もいて蝦蟇怪人と揉めているようだ。

  『うっ…早くしろ…。』

  「お前ら!早く蝦蟇怪人に怪人薬を投与しろ!研究室が壊されたらヒーロー達が逃げてしまう!!」

  両親は蝦蟇怪人に怪人薬を投与しようと注射を投げた。その時蝦蟇怪人に変化が起きる…体から粘液が溢れ注射器が刺さらず弾いてしまう。

  「まずいな…それならこれだ!」

  今度は薬を怪人の口の中に無理矢理入れた。漸く蝦蟇怪人は落ち着きを取り戻したのだが…研究室は酷い有様になっていた。

  『はぁ…はぁ…済まない。吾輩は我を忘れていたようだ。』

  「薬の効果が弱くなったんです。今度はより強い薬をお作りして投与しますのでここでお待ち下さい。」

  『あ、そのことなんだがな…あの餓鬼がいただろ?そいつに頼んだんだ。』

  「何だと!?あの子だけは駄目だ!今から行って…」

  「あ、あの…薬が出来ましたので持ってきました…。」

  子どもの時の私が蝦蟇怪人に薬を渡そうとした…しかし父親が薬瓶を取り上げ割ってしまう。それを見た蝦蟇怪人は…

  『おいお前…吾輩の薬をよくも駄目にしてくれたな!』

  「薬なら私が作ると言ったはずです!この子になぜ頼んだんだ!」

  『…駄目なのか?吾輩はこいつに命令をしただけだ。吾輩はこいつに魅力があったから頼んだんだ。それを指図するとは…』

  「まだ良心が残っているのですね…仕方ない。貴方は失敗作なのでここで死んでいただきます。」

  『吾輩が…失敗作だと?ふざけるな!死ぬのはお前らだ!!』

  蝦蟇怪人が本領発揮し両親を含む研究者を全員殺してしまった。そして研究室を破壊し私を担ぎ脱出した。

  『悪かったな…お前は吾輩を忘れるんだ。ところでまだ名前を聞いてなかったな?今度逢った時のために聞いておきたい。』

  「私は…氷海達也です。」

  『そうか、お前は吾輩のことを忘れるんじゃないぞ?』

  そう言って蝦蟇怪人は記憶処理のスキルで私の記憶を忘れさせる。なんで今までこんなことを忘れていたのか漸くわかった。さっきのことはもう忘れて今はここから出る方法を考えないと…とふと思ったのがさっきの薬のレシピだ。蝦蟇怪人の一部を使えばきっとここから出られて熊森君達も助けられる…しかしそれを使っていいものなのだろうか。

  「私は…今はヒーローなんだ。迷っている場合じゃない!」

  私は近くにいた触手の一部を切り取るとすり潰して薬を作った。そしてそれを一気に飲み干す…その瞬間私はその場で意識を失った。

  〜熊森雷太視点〜

  『はぁ…はぁ…。』

  『どうした?まだまだ出せるだろ?吾輩にもっと力を寄越せ!』

  蝦蟇怪人に俺の力が吸い取られていく…団さんも吾郎さんも限界がきているようだ。それに早くしないと達也君まで怪人にされてしまう…しかし体を思うように動かせず俺は蝦蟇怪人に身を委ねてしまっていた。

  『あの…狸獣人はどうなったのですか?』

  『あいつももう限界だろうな。吾輩の体の中で今頃盛大に精液を搾り取られている頃だろう…怪人になるのも時間の問題だ。』

  くっ…もう…意識が…体の力も抜けきっている…俺は…達也君を…。と、その時である。蝦蟇怪人がいきなり後にぶっ飛んだのだ。何が起きたのか分からないが…

  手足の触手が緩み俺達は地面に叩きつけられる。

  『な…なんだ!?吾輩の体に穴が開いているだと!?』

  『グルルルルルルル…』

  『お…お前、どうやって脱出した!?しかもその姿は….“怪人化“か!?』

  『グルルルルルルル…怪人、殺す…。』

  目の前に誰かいる…だが力が入らない。怪人は俺達を見ると怒りを覚え蝦蟇怪人に向かっていく。まさか…達也君なのか?

  『な…なんという力だ!吾輩に楯突こうなどと…』

  『(まさかこいつ…“怪人を凶暴化させる薬“を使ったのか?それを使ったら我を忘れて暴れ回る…こいつらを助けるために自分が犠牲になって…。元に戻すには私が持っている元に戻す薬を使わないといけない。)』

  怪人は我を忘れ蝦蟇怪人を攻撃する。蝦蟇怪人は防御するだけで攻撃することが出来ないようだ。

  『終わりだ、死ね…蝦蟇怪人。』

  『!!やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!』

  蝦蟇怪人は抵抗虚しく倒れる。地下に漂っていた匂いはすっかり消えヘドロも全て消え去った。怪人は血塗れになり雄叫びをあげていた。とー

  『お…お前、まさか私の子…なのか?』

  『な…何だと?』

  『私は氷海拓人、研究者で…お前の父親だ。』

  『…知らぬ、もう私の両親はいないのだから。』

  『お前は人族らしいな?それで漸く分かった。』

  『…私はもう親のことなんか忘れた。今頃現れても遅い。その薬は自分に使うがいい。そのために奪ったのだから。』

  そう言うと怪人は走っていってしまった。カメレオン怪人は俺に近づくと鞄から薬を取り出し飲ませる。

  『私はこれからあの怪人を追いかける。君達は十分に休んでくれ。』

  「俺達も行きます。それより今の…本当なんですか?達也君の父親って…。」

  『聞かれていたか、あの子は知らないようだが私だけは生き残った。自分に怪人薬を投与して…そうだ、その時の話をしておこうか。』

  カメレオン怪人は俺達に当時のことを話してくれた。研究者としてヒーローを怪人にしていたこと…達也君が研究者として薬を作っていたこと…。

  『あの子は本当に凄かった。薬を作るのが一番上手かったのだ…。当時はヒーローの精液と怪人薬を合成して強化薬を作っていたのだ。私はそれが楽しくなってしまって…それをあの子に見られてしまったのだ。それからあの子は研究所で一緒に働くことになりの薬を作ることになった。あの子の作る薬は全て効能が良くてな…怪人達には秘密にしていたんだがその時ここにいる蝦蟇怪人に目を付けられてしまったのだ。私はあの子が怪人に奴隷にされるのを恐れてずっと隠していたんだ…。』

  「達也君がそんなことを…でも今では研究者としてヒーローの手助けをしてくれている。俺は達也君がいないと駄目なんだ…。」

  『それなら…この薬をあの子に使ってやってくれるか?私はもうあの子を止めることは出来ないかもしれない。それから…私を殺してくれ。』

  「それは駄目です!貴方はやっと達也君に逢えたんですから…それに薬ならもう一つあります。達也君が事前に作っていたものがありますのでそれは貴方が使って下さい。」

  『…あの子にはもっと生きていてもらいたい。あの子を救ってくれ…それから一緒に行くとしよう。私はあの子に罪滅ぼしをしないといけないな…。』

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  完全に回復はしていないが歩くくらいは出来るようになった。三人を乗せ俺達は怪人を追いかける。あれがもし達也君なら助けないといけない。

  『近いぞ、早く見つけて薬を飲ませないとな。』

  そこに着いた時血の匂いがした…禍々しい空気が張り詰めている。そこにさっきの怪人がいた。俺達を警戒し後退りをしているようだ…。

  『大丈夫だ。私達はお前の敵ではない。』

  『…黙れ。私の前に立った者は全て敵とみなす。』

  「達也君!元に戻ってくれ!!」

  『…ヒーローは敵だ。精液を寄越せ…。』

  怪人は何を言っても話を聞いてくれないようだ。達也君だとは思うけど…今まで正気を保てていたが今回は怪人に意識を持ってかれているらしい。

  『それなら私と闘ってくれ。』

  『…お前はヒーローじゃないだろ?だがなぜヒーロー達と一緒に行動している?怪人はヒーローの敵だ。やるならそいつらとやってくれ。まさか…ボスを裏切るつもりなのか?』

  『私はとっくにボスと縁を切っている。』

  『…仕方ない、一撃で仕留めてやる。』

  怪人がカメレオン怪人に向かっていく。あまりの速さに目が追いつかない…気づいた時にはカメレオン怪人が腕から血を噴き出していた。と、同時に怪人にも変化が起きる…突然息切れを起こし苦しみ出したのだ。

  『お前…私に何を飲ませた…。』

  『怪人になった者を元に戻す薬だ。これからもこの子達と一緒にいてやってくれ…それがお前にとって幸せだと思うんだ。』

  『………………。』

  『私は蝦蟇怪人の企みを阻止すべくずっと探していた。出来れば元に戻してやりたかったのだが…それよりもお前が怪人になることを恐れたんだ。』

  『………………。』

  『すまなかったな…私の後を継いでくれているとは思わなかった。ヒーローの仕事…頑張れよ…。』

  カメレオン怪人は倒れてしまった…それを見た怪人は目に涙を溜めていた。と同時に倒れてしまう。

  「大丈夫ですか!?今助けます!」

  『俺はいいからあの子を診てやってくれ…あの子は今薬の効果で抵抗をしている。お願いだ…あの子を助けてやってくれ…。』

  と言われても何をしたらいいか分からない。と、吾郎さんが何かを思いついたのか怪人の腕を見ていた。

  「…怪人の心に“ダイブ機能“を使って入るのはどうだ?一度試したことがあっただろ?それで怪人から達也君の心を救うんだ。」

  あの時は吾郎さんが消滅して…それを助けたのは達也君だった。また使うことになるとは…達也君の過去を覗き見するのはあまりしたくないな…。

  「…吾郎さんに任せます。」

  「よし、じゃあ…全員で行くぞ。絶対に達也君を助けるんだ。」

  吾郎さんが“ダイブ機能“を発動させる。怪人の前に大きな穴が開いた…俺達は決心し穴に飛び込むのだった。[newpage]

  “ダイブ機能“を使って怪人の中に入った俺達。周りは暗闇で何も無い…どこを進めばいいのだろうか。とー突然研究所のような施設が広がっていた。そこにはかなりの人数の研究者がいて…カプセルの中にヒーロー達が捕らえられていた。カプセルにはホース状のものが取り付けられていてその先にはかなり大きい容器があった。多分ヒーローの精液をそこに溜めるのだろう。それよりも俺達のことは見えてないらしい…とー

  『ヒーローを怪人化させる研究は楽しいな。』

  『そうね、次は一般人を怪人にする研究をしましょう。このことはあの子には内緒にしないといけませんね。』

  『もし見られたらあの子を怪人に…。』

  『この話は置いといてまずはこのヒーローを怪人化させてみるか。』

  目の前にガタイのいい牛獣人が手足を手錠にかけられ大の字にされていた。ヒーロースーツはビリビリに破かれ全裸にされている…今は何故か気絶しているようで多分麻酔か何かを打たれているかもしれない。

  『獣人のヒーローは本当にガタイがいいな。手触りもいいし何より怪人に適する体躯をしている…これは期待できるな。』

  研究者が牛獣人の体を嫌らしく撫でている。胸…腹と下に手を下ろし牛獣人の股間に到達…それをじっくりと観察すると掴んで上下運動を開始する。

  「おお…擦るだけで先走りが出てくるな。おい!もっと快感を味合わせるために精力増強剤を打ってくれ。」

  牛獣人に精力増強剤が投与される…それで牛獣人のものがさらに大きくなる。反応がよかったのか先走りが出る量が増えている。

  『もうそろそろ精液が出そうだな…急いでカプセルに入れるのだ。そして精液の採取を開始してくれ。それから怪人薬の投与だ。』

  男女の研究員は研究室を出ていった…他の研究者は牛獣人をカプセルに入れ装置を取り付ける。装置を稼働させると牛獣人はすぐに痙攣し始め大量に精液を噴出させる…あまりに多かったため容器の半分くらい溜まっていた。と同時に牛獣人にも変化が起きる…体が大きくなり体毛がどす黒くなりお腹の部分が膨れ上がる。更に手足が短くなり水かきのようなものがついている…そして牛獣人のものは体の中に入ってしまっていた。今の彼は牛獣人…ではなく蛙獣人?今まさにさっき闘っていた奴にそっくりだ。

  『気分はどうだ?牛のヒーローさん…いや、今は蝦蟇怪人か。』

  『グヘヘ…吾輩をこんな姿にしてくれたことに感謝している。吾輩はこれからどうすればいいんだ?』

  『貴方にはこれからヒーローの捕獲をしてもらいます。それからその姿を維持するために精液の採取をお願いするよ。』

  『了解了解、しかしそう簡単に捕まらないだろ…吾輩の能力もまだ分からないからな。能力を教えてくれないか?』

  『貴方の能力はヘドロ攻撃です。そのヘドロから触手と媚薬のような甘い匂いが発生します。それでケモヒーローの嗅覚を刺激させることができます。』

  『なるほど…ただそれだと近寄らないからおびき寄せたほうがいいだろうな。それなら地下に居城を作りヘドロで手下を携えヒーロー達をここまで連れてきてもらおうと思う。』

  『方法はお任せします。採取した精液は手下達に持ってこさせて下さい。それを使って怪人薬を作成しますので…。』

  『じゃあ…行ってくるぜ。』

  蝦蟇怪人が研究室を出ていった。とりあえずついていってみると目の前に子供の研究員が現れる。

  『おい、そこの餓鬼。俺の仕事を手伝ってくれるか?』

  「あ…はい。何をしたらいいですか?」

  『そうだな…お前、薬を作れるか?吾輩の能力を強化させたいのだが…。』

  「それぐらいなら出来ますよ。」

  『将来は親達よりも立派な研究員になりそうだな。その時は吾輩の手下として迎えてやろう。』

  「あ…ありがとうございます。」

  その時蝦蟇怪人は嫌らしい顔つきになっていた。とりあえず後をつけていると研究室に入っていった。そこは薬を作っている最中のようだ。

  『お?レシピなんてあるのか?』

  「ええ…自分で作ったものは全て書くようにしています。」

  『これは使えるな。これから薬の製作はお前に任せる。』

  「はい、分かりました…。」

  『ほう…怪人から元の姿に戻す薬も作っているのか。それにはヒーローの精液が必要不可欠なんだな…おっと、吾輩は何を言っているんだ。じゃあ完成したら吾輩のところまで持ってきてくれ…一つやり忘れた事があるからな。』

  「は…はい。」

  蝦蟇怪人が研究室を出ていった…その時隣の部屋から物音がした。行ってみると蝦蟇怪人が暴れ回り研究室を破壊していたのだ。ところどころから火が舞っていて研究者も倒れている…。

  『お前ら吾輩をよくも怪人にしてくれたな!吾輩は元はヒーローだったんだ。早く元に戻せ!それからここにいるヒーロー達も解放しろ!』

  蝦蟇怪人はヒーローの記憶が残っているようだ…そこにはさっきの男女の研究員もいて蝦蟇怪人と何やら揉めているようだ。

  『うっ…早くしろ…。』

  「お前ら!早く蝦蟇怪人に怪人薬を投与しろ!研究室が壊されたらヒーロー達が逃げてしまう!!」

  男性研究員は蝦蟇怪人に怪人薬を投与しようと注射を投げた。その時蝦蟇怪人に変化が起きる…体から粘液が溢れ注射器が刺さらず弾いてしまう。

  「まずいな…それならこれだ!」

  今度は薬を怪人の口の中に無理矢理入れた。漸く蝦蟇怪人は落ち着きを取り戻したのだが…研究室は酷い有様になっていた。

  『はぁ…はぁ…済まない。吾輩は我を忘れていたようだ。』

  「薬の効果が弱くなったんです。今度はより強い薬をお作りして投与しますのでここでお待ち下さい。」

  『あ、そのことなんだがな…あの餓鬼がいただろ?そいつに頼んだんだ。』

  「何だと!?あの子だけは駄目だ!今から行って…」

  「あ、あの…薬が出来ましたので持ってきました…。」

  子どもの時の私が蝦蟇怪人に薬を渡そうとした…しかし父親が薬瓶を取り上げ割ってしまう。それを見た蝦蟇怪人は…

  『おいお前…吾輩の薬をよくも駄目にしてくれたな!』

  「薬なら私が作ると言ったはずです!この子になぜ頼んだんだ!」

  『…駄目なのか?吾輩はこいつに命令をしただけだ。吾輩はこいつに魅力があったから頼んだんだ。それを指図するとは…』

  「まだ良心が残っているのですね…仕方ない。貴方は失敗作なのでここで死んでいただきます。」

  『吾輩が…失敗作だと?ふざけるな!死ぬのはお前らだ!!』

  蝦蟇怪人が本領発揮し男女の研究員を含む研究者を全員殺してしまった。そして研究室を破壊し子供の研究員を担ぎ脱出した。

  『悪かったな…お前は吾輩を忘れるんだ。ところでまだ名前を聞いてなかったな?今度逢った時のために聞いておきたい。』

  「私は…氷海達也です。」

  『そうか、お前は吾輩のことを忘れるんじゃないぞ?』

  な…達也君は蝦蟇怪人と認識があったのか。それが俺に逢う2年前のこと…ということは達也君は既に研究員として働いていたのか?

  「俺達に逢う前にこんな過去があったとはな…達也君が薬を作っていた理由が漸く分かった。やはり達也君はヒーローの手助けをしていたんだな。」

  話していると目の前に一人の子供が現れる。しかし俺達を見ること無く走り去ってしまう。とりあえず追いかけて見るとそこにはー

  「達也君!?」

  「く…熊森君?団さんに吾郎さんまで…どうしたんですか?私はこれからこの怪人と融合しようと思ってるんです。」

  達也君の前には熊の怪人が…彼はそれを愛おしそうに触っている。このままだと本当に怪人になってしまう…!

  「達也君!俺達は助けに来たんだ!」

  「…邪魔しないでください。私の過去…見ましたよね?私は研究員としてヒーローを怪人にする研究をしてたんです。それに私の両親は私を怪人にしようとしてたんですよ?それに蝦蟇怪人と約束したんです。また逢えたら奴隷として一緒にヒーローを捕獲しよう…と。」

  「違う!達也君はヒーローを助けようとしていたんだ!」

  「ヒーローですか…確かに私は助けようとしました。だけど蝦蟇怪人だけは助けることは出来なかった…両親が邪魔をしなければ…ね。」

  「達也君、カメレオン怪人が言ってたんだ。怪人に奴隷にされるのを恐れて隠していたって…それに蝦蟇怪人は何かを企んでいてそれを阻止しようとしてたんだって言ってたぞ?」

  「…なんとなく分かってました。私も蝦蟇怪人のお腹の中で幻覚を…そこで過去のことを知りました。両親のやっていることがどれほど悪いかも…。」

  「達也君、あのカメレオン怪人は達也君の父親だ。…今逢わせてやるから早くここから脱出しよう。」

  俺は無理矢理達也君の体を引き寄せ怪人から引き離す。しかし達也君はまた怪人の方に行こうとしていた。

  「達也君…俺達とまたヒーローの仕事をしてくれないのか?」

  「勿論です…私は怪人になった人達を助けたくてヒーローの仕事を選んだんです。誰かは絶対に犠牲になってしまいますが…怪人から元に戻すにはヒーローの精液がいるんです。犠牲になるなら私一人で十分です。」

  『…言うことを聞くんだ。お前が犠牲になることはない。』

  「怪我してるのになんで来たんですか!?」

  『私が悪かったんだ。研究員としてヒーロー達を怪人にする研究をしていたから…本当にすまなかった。』

  「今頃そんなことを言われても遅いです。」

  『…お前にこれを渡しておこう。この子達の手助けになると思うぞ。お前が書き記した薬のレシピだ。』

  「…な、なんでこれを持ってるんですか?」

  『研究所から脱出しようとした時に見つけたのだ。逢った時に渡そうと思っていたのだが…14年かかってしまったな。』

  「…私、絶対に全ての怪人を元に戻してあげます。熊森君、カメレオン怪人に薬をあげてください。」

  『…もう私は助からない。だからこのまま逝かせてくれ…。』

  カメレオン怪人は力尽きてしまった…達也君の目から涙が溢れている。まあ父親だったのだから仕方がない。俺達はカメレオン怪人をその場に残し達也君を連れて怪人の外に出るのだった…。

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