スルファ オオカミ男性
「……オオカミさん、朝早くから引き留めちゃって
ごめんなさいね。大切な愛車に傷をつけられて、
ただでさえ災難だったのに……。
体調は大丈夫ですか?」
「うん、急に警察に囲まれて不愉快だとは思うんだけど、
あなたを疑っているわけじゃないんだ。
ただ、昨日の夕方、
亡くなったウサギの彼とちょっとした
口論があったって聞いてね。
その、車をぶつけられたときのこと……彼、
どんな様子だったか、
少しだけ私に教えてもらえるかな?」
「ああ、 ぶつけられたのはコッチなのに
逆ギレされて本当感じ悪かったぜ。
…近くの町で今日やる祭りを楽しみに来たのに…まったく。」
(オオカミの不満に深く共感するように、
何度も小さく頷きながら)
「本当にそうだよね……。
せっかく楽しみにしていたお祭りの日に、
ぶつけられた側が逆ギレされるなんて、
本当に理不尽だし、頭にくるのも当然だよ。
嫌なことを思い出させてしまって、ごめんね。」
「……それでね、そのあと彼とはもう、
お話ししたりはしなかったのかな?
例えば、夜になってから……彼が部屋から
出てきたり、誰かと一緒にいるところを
見かけたりはしなかったかい?」
「古いモーテルだから、窓の外の様子や、
駐車場の方の音なんか、意外と聞こえたり見えたり
したんじゃないかと思ってね。
何か少しでも、
気になったことがあれば教えてほしいんだ」
「ブランシュと…えっと、
ブランシュは第一発見者のヤギの……俺の連れだ。
…で、ブランシュに『部屋で吸うな』って
言われちゃって、仕方なくクルマで
タバコを吸ってると、 二十三時ぐらいかな?
自販機とこ歩いてる彼を見たぜ。」
(言葉を聞いて、手元のメモに『二十三時』と
書き留める。そして、怒らせないように、
さらに声を低く、優しくして問いかける)
「あぁ、なるほど。
お連れのブランシュさんに言われて、
車の中でタバコを吸っていたんだね。
……車の中なら静かだし、
外の様子もよく見えただろうね。
二十三時ごろに彼を見かけた、か。
大切な情報をありがとう。」
「……ねぇ、そのとき、彼は一人だったかな?
それとも……誰か他の人と一緒に、
自販機の方へ歩いて行ったりはしなかったかい?
暗かったから見えづらかったとは思うんだけど、
もしそのとき、彼の隣に『誰か』がいたとしたら…
…その人の背の高さとか、姿の雰囲気とか、
少しでも覚えていることがあれば教えてほしいんだ」
「俺はオオカミだぜ?暗くて見えにくいなんて事、無いさ。で、俺はそのウサギしか見てないぞ?
…でも自販機と反対側の部屋のドアが
閉まるのを見たな、
確か…キツネの部屋だったはずだ。」
(「暗くて見えにくいなんて事無いさ」という
言葉に、さすがオオカミさんだな、
と感心したように小さく微笑んで頷く)
「……あはは、失礼しました。さすがオオカミさん、
夜目が利くんだね。
失礼なことを言ってごめんなさい。」
(手元のメモの『二十三時』の横に『ウサギは一人』
『キツネの部屋のドアが閉まる』と書き加え、
少し声を潜めて)
「なるほど……二十三時の時点では、
ウサギの彼は一人で自販機の方へ
歩いていたんだね。
でも、それと同時に
『キツネさんの部屋のドアが閉まるのを見た』……。
それはもの凄く重要な手がかりだよ。
教えてくれて本当にありがとう。
……ねぇ、そのキツネさんの部屋のドアが
閉まったとき、車の音……例えば、
誰かが車でモーテルから出ていったり、
新しく入ってきたりする音は聞こえなかったかい?
それから、あなたが車の中でタバコを吸い終わって
部屋に戻るまでの間に、他に何か『おや?』と
思うような小さな音や、
不自然な影を見かけたりはしなかったかな?」
「……見てないな。
…でも一つだけ言っておきたい事がある。
彼の連れのウサギの女性。
最初、近く通った時に滲んだ血の匂いがした。
俺的には怪しいと思ってるんだが…」
(あなたの言葉を聞いて、
一瞬だけ表情を険しくする。
しかしすぐに、情報をくれたあなたへ
感謝するように優しく微笑んで深く頷く)
「……滲んだ血の匂い、ですか。」
(手元のメモに『ウサギの女性』『血の匂い』と
大きく書き込み、
本当に真剣な表情であなたを見つめる)
「さすがオオカミさんだ、素晴らしい嗅覚ですね。
警察の鑑識でも気づかなかったかもしれない。
そんな重要な違和感を教えてくれて、
本当にありがとう。
彼女、外傷のない彼を見てひどくパニックに
なっていたけれど……その血の匂いは、
もしかしたら彼女自身がどこかに
怪我を負っているか、あるいは……もっと別の
『理由』があるのかもしれないね。
さっき彼女、長袖の腕を
ずっときつく掴んでいたんだ。」
「……よし。車の出入りは特になかった、
キツネさんの部屋のドアが閉まった、
そして彼女から血の匂いがした、だね。」
「おかげで、昨夜のモーテルで何が起きていたのか、
点と点が少しずつ繋がりそうだよ。
お祭りの前の大事な時間に、
たくさん質問に答えてくれて本当にありがとう。
もう行って大丈夫ですよ。
楽しいお祭りになると良いですね。車の傷の件も、
ちゃんと手続きが進むようにしておくからね」
「ああ、頼んだぜ。…なぁこの後
ブランシュにも取り調べするんだろ?
今朝発見してから気分が悪いんだ、
あまり刺激しないでくれ。」