悪い子でも…

  悪い子、悪い子、悪い子、悪い子、悪い子、悪い子…。

  ごめんなさい…。

  良い子じゃなくてごめんなさい。

  悪い子でごめんなさい。

  いつも困らせてごめんなさい。

  大人しく出来なくてごめんなさい。

  理想の姿になれなくてごめんなさい。

  何も出来なくてごめんなさい。

  何の取り柄もなくてごめんなさい。

  邪魔でごめんなさい。

  ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…。

  頑張るから、努力するから、ちゃんと、結果出すから、だから…。

  側にいて。

  見捨てないで。

  独りにしないで。

  置いて行かないで。

  離れないで。

  お願い…。

  愛して…。

  悪い子、悪い子、悪い子、悪い子…。

  頭の中に文字が溢れる。

  今まで言われてきた多くの鋭い言葉達が、剥き出しの心に突き刺さる。

  苦しい、痛い。

  血が出る。

  ドクドクと心から溢れ出す血は、一体どこへ流れゆくのか。

  ごめんなさい…。

  良い子じゃなくてごめんなさい。

  悪い子でごめんなさい…。

  いつも困らせてごめんなさい。

  大人しく出来なくてごめんなさい。

  理想の姿になれなくてごめんなさい。

  何も出来なくてごめんなさい。

  何の取り柄もなくてごめんなさい。

  邪魔でごめんなさい。

  ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…。

  周りからの避難や否定が増えるに連れて、俺の中からありがとうはなくなり、ごめんなさいが増えていった。

  俺に期待し続ける大人に、俺を良いように使う大人に、表しか見ない大人に、もうウンザリしているはずなのに…。

  頑張るから、努力するから、ちゃんと、結果出すから、だから…。

  必死でしがみついている自分がいた。

  どんなに貶されても、ゴミを見るような目付きで見られても、無視をされても、殴られても蹴られても、ただひたむきに前を向いて生きてきたのは、努力をし続けてきたのは、いつかその努力が、力が、してきた行為が、役に立つ日が来ると信じていたからだ。

  だけど本当は…

  俺が失敗する度に、結果を出せない度に、僅かな反抗を見せる度に、溜め息を吐いて、怒りを抱いて、俺を憎んで離れていく周りに、「あぁお前はダメだったんだ」と、「欠陥品」と、罵って離れていく周りに、本当は……。

  側にいて。

  見捨てないで。

  独りにしないで。

  置いて行かないで。

  離れないで。

  お願い…。

  愛して…。

  そう、必死に手を伸ばしていたのかもしれない。

  気付かないうちに、人が離れていくことへの恐怖心は麻痺して、いつしか追うことさえしなくなっていた。

  こっちに背中を向ける光景に見慣れて、あぁまたかと、泣くことさえなくなって。

  更には、捨てられる前にこっちから手放して、突き放すようになった。

  もういいんだと。

  努力は報われないし、光なんてなくて。

  辛いことばかりで、でも死ぬに死ねなくて。

  自分を見失って、人の手の上で踊らされて。

  それにすら慣れた頃、貴方は現れた。

  多くの人が素通りしていく中、貴方だけは違った。

  その瞳に、俺を写して、真っ直ぐに俺を見つめて、言ったんだ。

  「生きろ」と。

  死のうとしていた俺に、何もかも失った俺に、大事な事も自分の感情も先を見通す思考も、全てを手放そうと、諦めて絶望していた俺に、たった一言生きろと、貴方は言った。

  その一言で、俺は救われた。

  嘘だと思う?

  でも本当なんだ。

  貴方が俺を救ったんだよ、あの時あの場所で。

  貴方が俺を生かしてくれた。

  俺に生きる場所も、価値も意味も何もかもを与えてくれたんだ。

  そして何よりも大きな、無償な愛を。

  俺が誰にも貰ったことの無いほどの。

  大きな、温かい愛を。

  貴方はたった一人、俺だけに注いでくれた。

  それがどれだけ嬉しかったか、分かる?

  俺は貴方に、感謝してもし切れないんだ。

  だから、一生を使って返させてよ。

  あの時助けてくれた恩をさ。

  これからもずっと一緒にいたい。

  変だよね。

  貴方といるのに、何も不安に思う必要なんてないのに、胸がざわめく。

  でもさ、そんな事を言ったら、きっと貴方は俺を抱き締めて、こう言うんだろうね。

  『何も不安に思う事なんて無いんだよ、貴和』

  今、俺は最高に幸せで、胸を張って言えるんだ。

  貴方のことを愛していると。

  「……愛してるよ、千秋さん。」

  END