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魔女様と生贄君

  はぁ全く、いい加減生贄を捧げても何も変わらないことに気づいて欲しいものだな。

  捧げられるたびに、死体処理の手間が増えるというのに。

  お、目が覚めた?

  おはよう。

  ……ん?そうだよ。私が死の森に住んでいる魔女だよ。よろしく。

  君は、生贄にされた子でしょ?名前はなんていうの?

  ……名前ないの?あぁいわゆる捨て子ってやつか。だから君、生贄にされたんだね。

  可哀想に……こんなことしても、現状は何も変わらないのに。

  んー?どういうって、私は神様じゃないんだよ。生贄を捧げたからって、雨を降らすことも晴れにすることも。気温の上げ下げとかそういうことができる訳じゃない。自然の摂理を捻じ曲げることは基本的にタブーなの。

  起こったことを防ぐことはできても、それ自体を発生させたり止めたりすることはできないって訳。

  だから、最近頻発している地震だったり、近いうちに起きる火山噴火を止めることはできない。諦めな。

  そんなに落ち込まなくていいよ。あの人間たちの願いを兼ねることはできないけど、生贄は有意義に使ってあげる。

  あぁ、やっぱり綺麗な目。肌もすごく綺麗。腕や足の形、指の長さや爪の透明感。あなたはとても素敵な素材ね。

  そう。私は魔女よ?魔女はとっても怖い存在。知ってるでしょ?

  あなたはね、村のために捧げられた。でも、村の壊滅は防げない。生贄の意味はなくなる。でも、私に捧げられたものなんだから、私がどうこうしても問題ないでしょ?

  あなたは私の作る薬の材料になるの。

  嬉しいでしょ?捨てられて、生きている価値のないあなたが、私の薬になることで価値を見いだせるなんて。

  ん?そうね。あなたは村のためには死ねないね。あなたの死は、私のためになるの。

  ……どうして命乞いをするの?怖くなった?

  あなた、バカなの?あなたはあの人間たちに殺されそうになってるのよ?いや、実質殺そうとした。だって、今あなたはここにいるのだから。そんな奴らのために死ねないなら生きたいなんて……自分がどれだけわがままを言ってるのかわかるの?

  ……村のためなら死ねるけど、生贄としての役割を果たせないなら死にたくないか……生贄っていうものが、貴方の死の理由ってことね。素材として死ぬんじゃなくて。

  んー、貴方の信念みたいなのはどうでもいいけど……

  ふふ、面白いわね。

  今までここにきた子は、とにかく死にたくないからって口からでまかせを言ってたけど、貴方は違うみたいね。気が変わった。貴方を生かしてあげる。

  ……でも、生かしてあげる代わりに貴方は私に代償を払ってもらう。

  まぁ簡単に言えば契約みたいなものよ。貴方を生かす代わりに、貴方は私に体を差し出しなさい。

  左目と四肢。それが貴方を生かす代償として支払うものよ。

  安心して、片目がなくなっても見えなくなる訳じゃない。手足がなくなっても、手間だけど義手と義足を準備してあげる。

  ん?言ったでしょ?薬の素材よ。それで、どうするの?いいの?嫌だ?

  ……うん、本当に生かしてあげる。その代わり貴方は、私の身の回りのお世話をしてもらう。ご飯作ったり掃除したり、出かけるときは荷物持ち。

  どう?……ふふ、じゃあ交渉成立ね。

  それじゃあ、ショックや痛みで数日間は意識を失うだろうから、目が覚めたらまた挨拶をしてあげる。

  これからよろしくね。私の可愛い生贄くん。

  【完】

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