草の大陸、トレジャータウン。
街に繋がる交差点ではバリケードが敷かれ、ギルドの弟子達や探検家、保安官、フランツ、市街地から移動したカフカが防衛線を維持している。避難民のほぼ全員がギルド内に避難し、残り僅かとなっている。ギルド内ではヘレンとヤミラミ達が医療拠点を設けて、負傷者を続々と受け入れている。
バリケードの向こうから時の守護者達がマスケット銃を放ち、弾丸は土嚢やサーナイトのソフィが作り出すサイコキネシスの壁で塞がれる。
「クソッ、キリがない‼︎」
また1人、暴徒の頭をマスケット銃で撃ち抜いたカフカは次弾を装填するために土嚢の陰に身を潜める。その間にフランツは石や木片を掴み、太い腕で投げ飛ばす。
「油断するな‼︎新手が来るぞ‼︎」
フランツが声を上げた直後、彼が投げた石や木片が暴徒に命中する。数人は頭部を負傷し倒れるが、大半の暴徒は僅かに怯み、それでも武器や農機具を手に接近してくる。
「ちょっと…これはまずくないかしら…」
大量の暴徒や時の守護者を前にして、接近戦を仕掛けていたチャーレムのエレナはバリケード内に撤退し、フランツと同様にボウガンや投擲攻撃を行っている。
「あれだけの敵に攻撃されたら、流石の俺たちも終わりだぞ‼︎」
「…クソッ」
サンドパンのソルとストライクのグリムもバリケード内から投擲やボウガン、火炎瓶などで応戦するが、それでも暴徒の数には勝てずにいる。
保安官事務所のジバコイルやコイル達も電撃を放つが、暴徒の勢いを止められずにいる。
カフカの耳に大きな物音が聞こえる。
彼が視線を向けた先は海岸に続く脇道であり、その先には複数の武装した人影が見える。その正体を見抜いたカフカは目を見開き、仲間達に声をかける。
「敵だっ‼︎」
海岸に続く脇道にはバリケードが存在せず、慌ててフランツとソルが土嚢を投げて壁を作る。その間にエレナが一時的にサイコキネシスの壁を作り、撃ち込まれるマスケット銃やボウガンの矢から皆を守る。
「ヤツら…皆殺しにした漁村のボートを奪ったのか‼︎」
フランツは時の守護者達がボートをどのように確保したのかを見抜き、カフカは舌打ちし、マスケット銃を放つ。弾丸は先頭を歩くトリデプスに当たるが、その硬い身体に傷をつけることはできなかった。
2人のトリデプスを先頭に時の守護者達は脇道を進み、バリケードに近づいてくる。
その光景を見たソルが顔を青くさせ、ポツリと呟く。
「おいおいおい、コイツはまずいぞ…」
海岸に目を向ける。そこには複数のボートがあり、乗っている時の守護者達が続々と上陸してくる。防衛線が2方向に増えた事で戦力を分散せざるをえなくなる。
ソルの呟き通り、状況は非常に不利になりつつある。
マスケット銃やボウガン、各々の技では暴徒の勢いを削ぐ事ができず、カフカ達はジリ貧の戦いを強いられた。だが、今になり防衛線が増え、より戦いが苦しくなる。
カフカは2方向の敵の集団に目を向け、脳裏に仲間の姿を映した
「エミル…ノア…」
未来の世界にいる仲間を思い、カフカは装填したマスケット銃を構える。
直後、冷たい風が交差点に吹き付ける。
バリケード内にいる一同は熱気を冷ますような冷たい風に目を細めるが、直後に強烈な吹雪が辺りを襲う。
吹雪は的確にバリケードを避け、正面の暴徒と脇道から接近してくるトリデプス達、そして海岸にいた時の守護者達に襲いかかる。突然の冷気と雪が彼らの動きを制限し、なにより勢いと熱を奪っていく。暴徒の動きが鈍くなり、時の守護者達の持つマスケット銃の火種が消え去る。
瞬く間にバリケードの外に大量の雪が積もり、暴徒や守護者達の脚を止める。
それを見たカフカは「今だっ‼︎」と大声を上げた。
直後、バリケード内にいた面々は投擲やボウガン、各々の技で遠距離攻撃を行い、暴徒や守護者達にダメージを与える。暴徒や守護者の中には踵を返して撤退しようとする者もいるが、大量の雪と冷気が彼らを襲い、瞬く間に全身を凍らせていく。
バリケードと暴徒達の合間は少しの距離しかあいていない。だが、そこには絶対的な気温差が生じており、雪と冷気がバリケードを守るように展開される。
やがて、雪と冷気は止まり、バリケードの周囲には大量の積雪と氷の彫像ができた。無事だった暴徒は来た道を撤退したが、海岸から上陸した時の守護者達は全員が凍りつき、一目で死亡していることがわかる。
突然の光景にカフカ達は目を丸くさせるが、海岸続く脇道から現れた姿を見て、カフカは驚きの声を上げる。
「エミル⁉︎ノア⁉︎」
脇道からゆっくりと姿を現したのは、共に未来の世界で時の守護者と戦っていた星の調査団の生き残り、セレビィのエミルとラプラスのノアだ。ノアの絶対零度で海岸線にいた時の守護者達を背後から襲い、更にバリケードの周囲にいた敵も排除した。
戦況をコントロールしたノアに続き、エミルも原子の力、サイコキネシスなど強力な技を惜しみなく使い、撤退する暴徒や時の守護者達に追撃を加える。
やがて、バリケードの周囲の安全は確保され、カフカ達は安堵のため息をこぼす。脇道からバリケード内に合流したエミルとノアはカフカの顔を見つめ、嬉しそうに微笑む。
「久しぶりですね、カフカさん」
「無事でなによりでしたよ」
エミルのノアの声を聞き、カフカは破顔し彼らに抱きつく。久方ぶりに仲間と再会し、彼らは互いの無事を喜び合う。
「まさか…お前達も過去の世界に来ていたとはな…」
カフカが小声で呟き、エミルが微笑む。
「ガルム鉱山から逃げた後、ノアさんと合流してずっと潜伏していました。そして将校がディアルガの秘宝と時の歯車を使い、過去の世界から時の波紋を開いた機会に便乗して、一緒に渡ってきちゃいました」
「私たちは霧の大陸に到着しましたが、なんとなく流刑地を目指せばカフカさんとグレーゴルさんと合流できる気がして…勘が当たりましたね」
エミルとノアは微笑むが、続けて視線をフランツに向ける。その意図に気付いたカフカは慌てて2人とフランツの間に入り、声を上げる。
「フランツは俺の仲間だ‼︎コイツも過去の世界を体験して、将校達の異常さに気がついたんだ‼︎」
カフカの説明を聞き、ノアは「なるほど」と呟く。納得のいかない表情ではあるが、そのような事を言っている余裕は今はない。ノアとエミルはフランツ、そしてバリケード内にいる者達に挨拶し、プクリンのギルドに続く階段を見上げる。
そこにはギルドの主人であるヘンデルの姿があり、彼は階段を降りてくる。ギルド内で全てを仕切っていたヘンデルは防衛線が維持できたことに安堵のため息を漏らし、バリケード内の者達に労いの言葉をかける。
「つい先ほど、最後の避難民を収容したよ。君達もお疲れ様…ただ、申し訳ないけど新手が来る可能性もあるから、バリケードの修理と再配置をお願いするね」
ヘンデルの言葉に続き、ギルド内からは弟子達や無傷の牡達が降りてくる。彼らはジバコイル保安官の指示に従い、土嚢や丸太などを運び、脇道にもバリケードを敷く。
戦闘に参加していたソルやソフィ達はその場に座り、休息を取る。
その間、ヘンデルは白銀の世界と化したバリケードの外を見て、驚きの表情を浮かべる。
「これは…絶対零度という技だね。僕も見るのは初めてだけど…これだけの威力で精確に敵のみを捉えるとは…お兄さん、結構やり手だね‼︎」
ヘンデルに褒められたノアは恥ずかしそうに微笑み、視線をカフカとフランツ、エミルに向ける。
「…仲間を守るためなら、私も鬼になります。そのために敵の命を奪うことになっても、躊躇する暇はありません」
ノアの声を聞き、ヘンデルは大きく頷く。カフカ達も首肯し、ノアは笑みを浮かべる。
ふと、エミルの口が開く。
「…そう言えば、グレーゴルさんは?姿が見えないけど…」
彼女の問いにカフカとフランツ、ヘンデルは顔を見合わせる。そしてカフカは「どう説明すべきか…」と言葉に悩んでいる。そんな彼を見たエミルとノアは不思議そうに首を傾げる。
直後、頭上から声が聞こえた。
「親方様‼︎」
カフカ達が上空に視線を向けた。そこにはギルドのNo.2であるノイズの姿があり、彼は上空から辺りを偵察していた。ノイズは慌てて高度を下げ、急いでまた着地し、ヘンデル達に向かって声を上げる。
「異端審問官と新たな暴徒が接近しています‼︎それに森の診療所が火の海になっています‼︎」
ノイズの報告を聞いたカフカ達の顔が凍りつく。診療所、いや洋館にはニコルやオズワルド、そして大量の重症者がいる。洋館の周りには付近の村々から逃げてきた住民もいる。
その知らせを聞いたヘンデルはバリケード内の面々を見渡し、素早く指示を出す。
「フランツとカフカは洋館の応援に行って‼︎無理はしなくていい‼︎救える者だけを救って‼︎遅滞戦闘は不要だから‼︎他の者は現状でバリケードを守って‼︎」
ヘンデルの指示に皆が従い、ノイズは偵察のために再度飛び立ち、そしてカフカとフランツは共に駆け出す。
その背中をエミルとノアは心配そうな顔で見届ける。
*
オズワルドは激しい衝撃を覚え、地面に蹴り倒された。
内臓と頭蓋内を激しく揺さぶられ、オズワルドの視界が大きく揺らぐ。
地面を転がる彼の腹を牝のバシャーモ、異端審問官のリラが踏みつけ、リラはゴミを見るような目でまたオズワルドを見下ろす。彼女の周囲には部下である異端審問官や暴徒の姿があり、オズワルドに憎悪の目を向ける。
麻薬と覚醒剤を投与されたリラであるが、その口からは冷静な言葉が飛び出す。
「コイツは教会の地下でアイザックス大司教を殺害した下手人だ。今すぐに処刑しなさい」
腹部への衝撃からまだ立ち直れていないオズワルドを見下ろし、リラが冷たく言い放つ。彼女の言葉を聞いた異端審問官達はオズワルドを肩に担ぎ、近くの開けた場所へと移動する。
肩に担がれたオズワルドの視界の隅で、燃え上がる洋館が見える。
館内には多くの重傷者がいるが、火に包まれた洋館からは凄まじい悲鳴と絶叫が響く。洋館の周りには逃げ惑うゼクロム教徒やレシラム教会穏健派、そして避難民の姿がある。怒れる暴徒達は丁寧に森の中を探し、隠れている者を見つけ出し、引き摺り出す。
牡ならばその場で殺害し、若い牝は暴徒が襲いかかる。中には貴金属や貨幣を差し出す避難民もいるが、暴徒はそれを奪い、無慈悲に殺害していく。
オズワルドの視界の端に、子供のピカチュウを抱えて森の中を逃げ惑う牝のライチュウの姿が映り込む。その背後には農機具で武装した暴徒が迫っており、ライチュウの息が切れつつある。
森の中を白い影が駆けている。
白い影がライチュウに覆い被さり、オズワルドの視界から消える。
辺りに血と臓物の臭いが広がり、美しい森は地獄絵図と化す。その頃になり、ぼんやりとした頭で辺りを見渡すオズワルドは、開けた場所で地面に降ろされる。そのまま腕力のあるズルズキンに身体を拘束され、強引に跪かされる。
オズワルドは崖のそばにある切り株の上に頭を置かれて、彼の横には巨大な斧を持った処刑人のカイリキーが立つ。カイリキーの身体と斧は鮮血で染まっており、首からは異端審問の証である魔除けの飾りを下げている。
オズワルドはなんとか抵抗しようとしたが、ズルズキンがオズワルドの動きを拘束し、彼の頭を切り株に固定する。
その光景を見たリラは閉口したまま片手を高くあげる。
処刑人がオズワルドに向かって、斧を高く掲げる。
オズワルドは横目で処刑人を見上げる。彼の斧は鈍く輝き、炎の光で照らされている。
(あぁ…綺麗だ…)
それを見たオズワルドは他人事のように見ている。彼の視界の端では、リラが高く上げた手を振り下ろした。
直後、森の中から飛び出した白い影が処刑人の脇腹を蹴り飛ばし、ズルズキンの顔面に棍棒を叩き付ける。処刑人は大きく仰け反り、手にした斧を自身のつま先に落としてしまう。
血で汚れた斧の切れ味は悪く、処刑人のつま先に喰い込み、足趾の骨を破壊する。辺りに処刑人の野太い悲鳴が広がり、ズルズキンは折れた鼻骨と歯から溢れる血を止めようとうつ伏せになる。
突然の出来事にオズワルドの反応が遅れる。
次の瞬間、茶色い影が森の中から飛び出し、暴徒や異端審問官達を蹴り飛ばす。
白い影と茶色い影に続き、森の中から姿を現したのは、高速のギャロップに跨るレシラム教騎士団の遊撃隊である。白い影、ザングースのコールマンと茶色い影、ミミロップのミストはそれぞれギャロップに跨り森の中を駆け、避難民を救っていた。
「異端審問官リラ殿‼︎騎士団団長並びに摂政エリース殿より身柄の保護命令が出ている‼︎投降せよ‼︎」
遊撃隊の隊長であるオーダイルがよく響く声で降伏勧告し、それを耳にした異端審問官や暴徒に動揺が走る。
オズワルドが騎士団の方に目を向けた。
騎士団の中には先程のライチュウとピカチュウの親子の姿があり、彼女らが保護された事でオズワルドは安堵の息を吐く。
「よぉ、久しぶりだな…オズワルド」
「キザキの森では世話になったわね」
コールマンとミストの蹴りにより、処刑人やズルズキン、異端審問官達は陣形を崩してしまい、一部の者がコールマンとミストに反撃する。そこに、抵抗する意思を確認したレシラム教騎士団が突撃し、異端審問官達や暴徒に襲いかかる。
その光景を見たリラは呆然とした表情で立ち尽くし、武装したコジョンドが彼女の前に立ち塞がる。コジョンドは手にした大剣でリラに斬りかかるが、リラは最低限の動きで切先を避け、後方に逃れる。
腐っても元調査団の団員、しかもレックウザのいる空の柱を踏破した経験のあるリラは、麻薬と覚醒剤を投与されても本能で戦う事ができる。
コジョンドは更なる追撃をリラに放つが、リラは最低限のステップで回避し、コジョンドと距離を置く。
リラの視界にはコールマンやミスト、遊撃隊により武装解除される暴徒や異端審問官、処刑人の姿がある。中には抵抗する者もいるが、遊撃隊の放つ槍や矢により、命を落としている。
処刑人の頭に何本もの矢が刺さり、うつ伏せになるズルズキンの背中に槍が突き刺さる。
部下が続々と命を落とす中、リラは近くを転がっている暴徒の死体から剣と盾を拾い、それでコジョンドの大剣を受け止める。直後、リラの体重の乗った一振りがコジョンドを吹き飛ばし、他の団員を巻き添えに転倒させる。
麻薬と覚醒剤を投与され、廃人寸前まで落ちこぼれていたとは思えないリラの動きにコールマンやミストは驚きの顔を浮かべる。
「…たく、化け物が…」
コールマンは小声で悪態をつき、団員の落としたボウガンを拾い、リラに放つ。リラは飛んできた矢を切り落とし、代わりに剣を投げつける。高速で飛んでくる剣を見たコールマンは即座に回避するが、直後に接近してきたリラに腹を蹴り飛ばされ、地面を転がる。
「…調子に乗るな‼︎炎の死神め‼︎」
ミストはリラを字名で呼び、暴徒の持っていた火炎瓶を投げつける。だが、リラは小石を拾い投擲し、火炎瓶を空中で割る。辺りに燃料と炎が飛び散り、ミストは思わず怯んでしまう。
その間に接近したリラはミストの横っ面を殴り、地面に転がす。
直後、大剣を構えたコジョンドがリラに斬りかかる。リラはコジョンドの大剣の軌道を見切り、盾で弾く。突然の出来事にコジョンドは対応しきれず、その間にリラは彼の頬を殴り飛ばす。
暴徒や異端審問官とは違い、兵士として、そして元調査団団員として厳しい訓練と実戦の経験のあるリラは、凄まじい戦闘能力を有する。
「放てっ‼︎」
遊撃隊の隊長を務めるオーダイルの命令に合わせて、団員達は揃ってボウガンを放つ。矢はミストとコジョンドを避け、リラに向かって一直線に飛んでくる。だが、リラは異端審問官であるゴロンダの身体を掴み、腕力に物を言わせて彼を盾にする。
数秒後、飛来した矢の嵐がゴロンダの身体に続々と突き刺さり、彼は生きたまま針山と化す。矢尻で目を潰されたゴロンダの呻き声が聞こえた直後、リラは死にかけのゴロンダを投げ捨て、駆け出す。
リラは瞬く間に遊撃隊に接近し、先頭のマニューラを蹴り飛ばす。リラに向かってオーダイルの放つハイドロポンプが飛んでくるが、リラは身体を仰け反らせ、それを回避する。直後、リラは体勢を整え、オーダイルに向かってナイフを投げつける。オーダイルは飛んでくるナイフを盾で防ぐが、その間に接近したリラの蹴りがオーダイルの顎に当たり、彼は脳震盪を起こして転倒する。
その際、オーダイルの巨体は遊撃隊の団員達を巻き込み、幾人かを行動不能にした。
波導弾が飛んでくる。
解放され、力を蓄えたオズワルドの放った波導弾がリラを襲うが、リラはオーダイルから奪った盾で波導弾を防ぐ。波導弾のエネルギーが爆散し、団員達はあちこちに転がっていく。
そこにコジョンドが斬りかかる。
コジョンドは大剣を捨てており、代わりに取り回しに優れた剣で武装している。コジョンドの斬撃は素早く、リラは身を逸らして回避し、すれ違い様にコジョンドの背中を蹴り飛ばす。
直後、ミストがリラに向かって飛びかかる。
リラはミストの動きを視界の隅で捉えており、彼女に向かって拳を放つ。だが、ミストはリラの頭上を飛び越え、代わりに袋を落としていった。
「乙女の顔を傷つけた仕返しよ‼︎」
ミストの怒り声が響き、袋が裂ける。袋の中は小麦粉で満たされており、リラの視界を一瞬だけ奪う。
リラの腹部に激しい衝撃が走る。
その痛みにリラは苦悶の表情を浮かべ、動きが鈍る。回復した彼女の視界にはパチンコを構えたコールマンの姿が映る。彼は近くに落ちている石をパチンコで放ち、リラに一撃を喰らわせた。
「…あばよ、首刈り」
コールマンはリラを字名で呼ぶ。
リラの視界の端にミストの姿が映る。
リラがそちらを見た瞬間、体重の乗ったミストの飛び蹴りがリラの腹部に直撃し、リラの身体は吹き飛ばされた。そのまま彼女は崖の方に飛ばされていき、崖下へと消えて行った。
それを見届けたコールマンとミストは乱れた呼吸を整え、騎士団の団員達も安堵の息を吐く。
だが、オズワルドは見逃さなかった。
崖下へと落下する瞬間、黄色い影が森の中から飛び出し、リラと共に落ちて行った事を。
[newpage]
次ページは自殺描写があります。
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[newpage]
視界がぐるぐると回転する。
教会の地下牢から出された際、カウフマンから注射を打たれた。カウフマンは「栄養剤ですよ」と話していたが、間違いなく有害な薬であるはずだ。
だけど、私はそれで良かった。
エリスを逃す事ができ、憎いオズボーンが死亡した以上、リラに生きる理由はなかった。今のリラはカウフマンの脅しに屈し、薬を投与され、彼の言葉を脳内で反芻するだけの存在となった。
そんなリラは草の大陸へと連れて行かれ、カピンタウンや村々を襲い、異教徒や旅人、不審な者、反抗的な者を次々と処刑して行った。その姿はさながら歩く死神であり、誰もがリラから逃れるように走り去る。
草の大陸でリラが殺した数は両手で数えても足りない。
それでもリラは止まらず、ひたすら村々を襲い、村民達を殺して回る。そんなおり、リラはある村を滅ぼした後、エリスの気配を感じた。本来ならばエリスの身の安全を考え、近寄るべきではないが、麻薬と覚醒剤で思考力を奪われたリラは本能のままに行動していた。
彼女が覚えている光景は、その先で炎に包まれる洋館を見上げ、アイザックス大司祭を殺害した犯人を捉えたところで途切れていた。
次にリラが覚えている光景は腹部に走る衝撃と崖から落下していく光景、そして視界に映る黄色い影であった。黄色い影はリラに抱きつき、共にぐるぐると回転しながら崖を落下した。
リラの嗅覚が、覚えのある匂いを捉える。
リラの手が、覚えのある身体に触れる。
リラの目が、覚えのある優しい笑顔を捉える。
リラの意識が、はっきりと覚醒する。
崖下に落下したリラは全身に走る痛みを覚え、ゆっくりと身体を起こす。崖の上では燃え上がる洋館の炎と黒煙、そして騎士団に討伐される暴徒と異端審問官、安全なギルドへ逃げる避難民の声が広がっている。だが、崖下には他に気配がなく、リラは辺りを見渡す。
リラは気づいた。
かなりの高さの崖から落下したが、彼女は骨折もせず、ほぼ無事である。何ヶ所か打撲痕と太腿に刺さった木片による傷があるが、落下した高さを考えると奇跡といえる怪我である。
だが、リラは即座に気がついた。
彼女を護るかのように下敷きになる影に。
「…ライラ?」
影、いや大陸を超えて追いかけてきたライラが、ようやくリラに追いついた時は、まさに崖下に落下しようとする瞬間であった。ライラは音と匂いから状況を理解し、杖を捨て、不自由な脚で崖から飛び、リラに抱きついた。そのまま彼女を護るように体勢を変え、自身の身体を下敷きにして地面に衝突した。
状況を理解したリラは慌ててライラから降りて、彼の身体を揺さぶる。直後、ライラの口から大量の鮮血が飛び散り、リラの顔を赤く染める。
「ライラ‼︎」
リラは子供のように泣きながらライラの名前を呼ぶが、ライラは口から大量の血を流し、呼吸も弱々しい。体格が良く、かつ高身長のリラを護ったライラの内臓は激しい衝撃を受け、多数の肋骨が折れている。折れた肋骨は肝臓や肺に突き刺さり、多量の内出血を起こしている。
その事を理解したリラは泣きながらライラの名前を呼ぶ。彼の目を覆う白い布がずれ落ち、ライラの顔が露わになる。ライラは僅かに目を開けてリラを見上げ、微かに笑った。
「ま、た…会えたね…り、ら…」
黒く半透明の影がライラの上に覆い被さるが、すぐに消える。
ポツリと呟いた後、ライラの胸の動きが止まる。それを見たリラは絶叫し、ライラの身体にしがみ付き、子供のようにわんわんと泣いている。
「ご、ごべんなざい…」
涙と鼻水で顔を汚したリラはライラに謝罪する。それは落下から救ってくれた事に対してか、或いは水の大陸で彼を見捨てた事に対してか、リラ自身もよく理解していなかった。
リラは顔をぐちゃぐちゃに汚したままライラを見下ろし、彼に口付けする。
ライラとのキスは、血の味がした。
何度もライラの名前を呼び、何度も謝罪の言葉を口にする。たが、ライラ自身がリラの声を聞くことはなく、リラの泣き声が崖下に広がる。
物音が聞こえた。
涙目のリラがそちらを見ると、そこには複数の人影がある。その姿や見覚えのある背格好から、彼らがリラ達に滅ぼされた村の生き残りであり、避難している最中だとリラは理解できた。
「…首刈りだ」
集団を先頭していた若いリングマが言う。続けて彼の後ろにいるヘルガーが口を開く。
「炎の死神だ…」
リングマとヘルガーの呟きを耳にした避難民達が続々とリラの下に集まり、周囲を包囲する。その目には憎悪の炎が宿り、ライラの傍に座るリラを見下ろす。
「俺の妹はコイツに撲殺された…」
牡のツンベアーが話す。
「俺の妻はコイツらに生きたまま槍で刺し殺されたよ…」
牡のリングマが話す。
「…俺の子供はこの女に踏み殺された…」
牡のヘルガーが話す。
憎悪の炎が彼らの目から溢れて、集団に燃え広がる。その光景を見上げたリラは、ふと避難民が若い牡ばかりである事に気がついた。
(あぁ…そうか…)
リラは自嘲する。それが彼らの怒りを買い、辺りに罵声が響く。
(逃げ足が遅い牝や子供、老人は私達が殺したのだから…)
体力のある、逃げ足が速い若い牡のみがリラ達から逃げられた。もっとも、それがリラ自身の首を絞める結果となっている。
「…私の番か」
リラがそう呟いた直後、怒りに燃えるバンギラスが泣きながらリラの脚を掴み、近くの叢へと引き摺り込む。リラは手を伸ばし、ライラの手を握ろうとしたが、彼女の手は届かず、そのままリラは叢の中へと姿を消した。
直後、怒りに燃える民衆が続々と叢の中へと入っていく。
憎悪に燃える若い牡達が、憎悪の対象であり、美人で若い牝であるリラに何をするかは、火を見るより明らかだ。叢の中でバンギラス達はリラを地面に組み伏せ、強引に彼女の股間を開かせる。リングマはリラの口にタオルを押し込み、自決できないようにする。
「…よくも、俺の妹を…」
ツンベアーが憎悪の目でリラを見下ろし、リラの股間に性器を挿し込む。愛撫をしない状態で挿し込まれたリラは悲鳴をあげそうになるが、自身が犯してきた罪を思い、声を押し殺す。
血と死を目の当たりにして、興奮しているツンベアーの攻めは力任せであり、リラを壊そうとする。それでもリラはツンベアーの憎悪を受け入れ、自身の罪と向き合っている。
リラの首筋にナイフが突き立てられる。
「…噛んだら首を掻っ切ってやるからな」
妻を失ったリングマは泣きながらリラの口に性器を突っ込み、喉の奥に挿れる。その感覚と臭いでリラは嘔吐しそうになるが、彼らはリラを許しはしない。
バンギラスは彼らの傍に立ち、剃り立つ性器をリラに見せつけながら順番を待つ。ヘルガーの姿はその場になく、遠くから声が聞こえる。
(他の者達に知らせに行ったのか…)
上下の口を犯されながら、リラはぼんやりと考える。直後、ツンベアーとリングマがリラの中に体液を放つ。彼らが己の性器を抜いた後、間髪入れずにバンギラスがリラに襲いかかる。リラはバンギラスの太い性器を黙って受け入れ、視線をライラの方に向ける。
ライラの顔は空を見ており、リラの方を向いていない。
その事を視認したリラは安堵の溜息を漏らす。
(良かった…ライラに汚い私を見せずに済む…)
リラの視界の端にヘルガーの姿が見える。その後方には幾人もの牡達が立っており、憎悪の対象であるリラを睨みつけている。
バンギラスの性器に貫かれながら、リラは自嘲した。
「…待っていてね」
リラは小さな声で呟いた。
バンギラスに犯されながらも、リラは唐突に手を伸ばし、リングマの持つナイフを奪う。リングマが驚きの表情を見せるが、リラはお構いなしにナイフの切先を自身の左首筋に当て、力任せに右側へと引き裂いた。
辺りに鮮血が飛び散る。
激痛と熱が広がり、リラは自身の血液で溺れる感覚を抱く。視界が白黒に点滅し、リラの下半身は激しく痙攣する。
突然のリラの行動にバンギラスは驚き、そのままリラの中で射精する。彼は慌ててリラから性器を抜き、距離を置く。
(熱い)
白黒に点滅していた視界が少しずつ暗くなる。
熱が食道に流れ込み、リラの胸は真っ赤に染まる。
リラの呼吸に合わせて首元からは血の泡が溢れ出し、それを見たヘルガー達は思わず後ずさる。掠れた笛の音のような呼吸音をあげるリラは、薄れいく意識の中、バンギラスに手を伸ばす。
バンギラスは恐怖のあまり、後方に下がる。だが、リラの指が指す方向に目を向け、「あっ」と小さな声を上げる。
「お…ねが…」
リラは水音混じりの声で呟く。
(痛い)
リラは思う。
(熱い)
自身が火刑に処した人々の事を。
(熱い…)
火炙りの恐怖と痛みと熱。
(怖い…)
串刺しになる感触。
(…ライラ)
大切な人を失う恐怖。
(エリス…)
子を奪われる恐怖。
黒く半透明の影がリラに覆い被さるが、すぐに消える。
リラがエリスの顔を思い出した頃には、彼女は息を引き取っていた。
その死に顔はとても穏やかで、リラはようやく自由になれた。
リラの自死を見た牡達だったが、それでも怒りは収まらない。牡達はリラの顔にタオルをかけて隠し、その身体に群がる。
「まだ暖かい…早く済ますぞ‼︎」
牡達はリラの脚を開き、思いのままに欲望をぶつける。
死してなお、リラの肉体は辱めを受ける。
だが、魂はライラの元へと向かった。
*
暗かった視界が意識と共に回復していく。
少しずつ視界が開けていき、意識が回復した牝のゾロアーク、ニコルは始めに頭痛を覚えた。次に寒さを感じ、辺りを見渡す。
ニコルがいるのは暖炉の焚べられた部屋であり、ニコルは室内にあるベッドに横になっている。天蓋付きの豪華なベッドの脇には絵が飾られており、元の持ち主のセンスの良さが感じられる。もっとも、今は床に散らばる酒瓶やゴミが台無しにさせている。
次にニコルが感じたのは水音と違和感だ。
ぼんやりとしたまま、ニコルは視線を音が聞こえる方に向ける。そこにはニコルの股間に顔を埋める人影、牡のゴウカザル、ヴィレムの姿がある。
ヴィレムはニコルの両膝を曲げて股間を開かせたまま、彼女の膣を舐めている。
少しずつ意識が回復してきたニコルは状況を理解し、慌てて股関節を閉じようと力を入れる。
だが、ヴィレムは易々とニコルの脚を掴み、邪魔をする。
「おはよう」
口元をニコルの体液で汚したヴィレムは、狂気の笑みで彼女を見下ろす。舌舐めずりし、ニコルの体液を体内に取り込んだヴィレムはニコルの両足首に結んだロープを引っ張り、彼女に強引に開脚させる。ヴィレムは再びニコルの股間に顔を突っ込み、膣に舌を入れる。
下半身から広がる違和感にニコルは悲鳴をあげ、腕を振ろうとした。だが、ニコルの両腕は縄で縛られており、寝台の柱に固定されている。
ニコルの口には自決予防のタオルが噛まされており、ニコルの口から言葉にならない呻き声が漏れる。口角から涎を垂らしながら呻くニコルを見下ろし、ヴィレムはニヤリと笑う。彼はニコルの膣から口を離し、続けてニコルの大きな乳房にしゃぶりつく。涎で満たした口内にニコルの乳頭を含み、欲望のままに吸い付く。その痛みにニコルは悲鳴を漏らすが、タオルが邪魔をし、呻き声のみが漏れる。
「あぁ…うめぇ…コイツは極上の牝だな」
ニコルの膣と乳房の味を堪能したヴィレムはニコルの首筋を舐め、彼女の口からタオルを取り出す。タオルの下には金属製のリングがあり、ニコルの口を内部から固定している。一定の大きさで顎を固定されたニコルの口角から涎が垂れ、それをヴィレムが舐め取る。
薄く笑ったヴィレムはニコルの顎を掴み、彼女の口内に自身の舌を入れる。ニコルの舌に己の舌を絡めて、執拗に舐め続けるヴィレムは恍惚とした表情を浮かべ、ニコルは目尻から涙をこぼす。
膣、乳房、口とニコルの全身を堪能したヴィレムはベッドから降りた。ニコルは首を回してヴィレム、そして室内を観察する。
ニコルが最後に覚えている光景は、燃える洋館から脱出し、森の中でヴィレムに捕まった時だ。
果たしてオズワルドとヘレンが無事に逃げ出せたのか、トレジャータウンがどのようになったのか、今のニコルには理解できずにいる。だが、室内の品の良いインテリアと汚れた床を見比べ、ニコルは一つの事実に気がつく。
この部屋の主人はヴィレムではなく、彼が乗っ取ったのであると。
それが意味する事は部屋のある建物自体が時の守護者達に制圧され、拠点として使われている可能性があるという事だ。ニコルは自身の想像を呪いつつ、ヴィレムの動きを見ている。
ヴィレムはテーブルに置かれている酒瓶を一気に仰ぎ、ニコルの顔を見る。
「ガルム鉱山では悪かったな…あの時は牡のリオルだと思っていたが、まさか牝だったとはな」
そう話したヴィレムは椅子に腰掛け、ニコルを見てニヤニヤと笑みを浮かべる。
「将校の野郎にお前が牝だとバレると…十中八九お前を犯すはずたからな…あの時はお前の尻と口で我慢して、黙っていたよ」
ヴィレムは酒瓶を空にして、床に投げ捨てる。
「…ようやく、極上の牝を手に入れたんだ…楽しませてくれよ」
ニコルの視線がヴィレムの股間に向く。そこには巨大な一物があり、剃り立っている。ヴィレムの意図を理解したニコルはなんとか逃げ出そうと身体を動かすが、ロープが邪魔をする。
反抗的なニコルの様子を見たヴィレムはニヤニヤと笑いを浮かべるが、唐突に室内に入ってきた人影を見て、表情を凍らせる。
人影、牝のヒスイゾロアーク、グレーテは室内に入り、片手でヴィレムを制する。ヴィレムは不服そうな表情で後ろに下がり、椅子に腰掛ける。
グレーテはベッドの端に腰掛け、拘束されているニコルを見下ろし、頬を撫でる。グレーテはニコルとそっくりな白い顔を歪ませ、ニコルを見つめる。
「ようやく会えた…」
グレーテはニコルを見下ろし、そのまま彼女に口付けする。ニコルの口内にグレーテの舌が入り、ニコルの歯茎をなぞり、舌を絡め合う。その感触にニコルは強い吐き気を覚え、喉を鳴らす。
グレーテは苦しむニコルを見下ろし、ニコルの乳房を鷲掴みにする。その痛みにニコルは再度悲鳴をあげるが、グレーテはお構いなしにニコルの乳房を揉み続ける。
「…孤児院を出た時も、研究室でもニコルは私を拒絶した…なぜだ?」
強い口調でグレーテが尋ねるが、ニコルはギロリと強い眼差しで睨み付け、憎悪の感情を露わにしながら口輪越しに声を出す。
「おまへひゃしふんかってなせいひゃくひゃからひゃ…」
口輪で口を閉じられないニコルは、はっきりと話せない口で言葉を紡ぎ出し、グレーテを睨みつける。その姿を見たグレーテは溜息をこぼし、ニコルの目を見つめる。
「…私を愛してくれないか?」
グレーテが静かに尋ねる。だが、ニコルは首を左右に振り、グレーテの愛に拒絶を示す。ニコルの意思を確認したグレーテは悲しそうに目を細め、ベッドから立ち上がる。グレーテはベッド脇のナイトテーブルに手を置き、引き出しから何かを取り出す。
グレーテはそれに液体を垂らし、自身の性器に装着させる。
ニコルの視界に、ペニスバンドを装着したグレーテの姿が映り込む。異様な姿にニコルは恐怖の目を浮かべ、彼女を見上げる。グレーテは悲しそうに目を細めたが、そのままベッドに登り、ニコルの股間を見つめる。
「…愛してくれないなら、せめて私の慰みに付き合ってもらおうか」
グレーテは小声で呟き、股間から出た突起物に液体を垂らす。そのままニコルの身体に覆い被さり、バンドをニコルの膣に挿し込む。
股間に入る異物の感触にニコルは目を見開き、直後に腹部を内側から圧迫する感触に悲鳴を漏らす。ニコルの膣から血が流れ、ニコルの処女はあっという間に玩具に奪われた。
痛みに悲鳴をあげるが、口輪が邪魔をして、言葉にならない。股間と腹部を内側から圧迫してくる感触と股間を裂くような痛みにニコルは悲鳴を漏らすが、グレーテは涙目のまま、腰を動かし始める。バンドにつけられた双頭の突起がグレーテの性器にも刺激を送り、グレーテは顔を歪ませる。
ベッドの上で交わる2人の牝を見て、ヴィレムは酒を飲みながら笑みをこぼす。
処女を失ったばかりのニコルにとって、玩具を挿入される事はいきなりすぎた。室内にニコルの悲鳴が響き、目尻から涙をこぼす。グレーテもまた目尻から涙をこぼし、淡々とした雰囲気のまま、腰を振り続ける。
やがて、グレーテは動きを止めて、ニコルの膣からバンドを引き抜く。ニコルの悲鳴が聞こえた直後、バンドは抜かれ、先端には鮮血と性液がこびり付いている。
それとニコルの顔を見比べたグレーテは、溜息をこぼし、天井を見上げる。天蓋がグレーテの視界に広がり、彼女は空虚な目をみせる。
「虚しい…こんな事をしてもニコルは私を愛してくれない…」
グレーテはそう呟き、息が切れつつあるニコルを見る。ニコルの顔面は涙と汗と涎で汚れており、彼女は強気な眼差しでグレーテを睨みつける。その姿を見たグレーテは視線をヴィレムに向け、小声で呟き出す。
「…ニコルは私を愛してくれない…でもニコルの子供なら私を愛してくれるかもしれない…」
ポツリと漏れたグレーテの呟きがニコルとヴィレムの耳に届く。直後、ニコルは鳥肌をたてた。
ニコルは何か言おうとしたが、それより先にグレーテが口を開く。
「ニコルを孕ませろ」
グレーテの命令を受けたヴィレムは驚いた表情を浮かべるが、すぐに狂気の笑みを見せる。彼は「良いのか?」とグレーテに尋ねるが、グレーテは躊躇なく頷く。
「ニコルは私を愛してくれないが、私はニコルを愛している…愛の結晶が欲しいんだよ」
ヴィレムはグレーテの言葉を聞き、酒瓶を投げ捨てた。そしてグレーテと入れ違いでベッドに登り、ニコルを見下ろす。ヴィレムの股間から一物が顔を覗かせており、グレーテの使っていた玩具以上の長さと太さがある。
それを見たニコルは恐怖で身を震わせるが、ヴィレムは身を屈めてニコルの耳元に顔を近づける。
「安心しろよ、俺は将校より上手で、モノも立派だ。気持ちよくしてやるよ」
直後、ヴィレムは一物に唾をつけて、ニコルの膣に押し込む。玩具とは比べ物にならない長さと太さのある一物が挿し込まれ、ニコルは大きく目を見開く。ニコルは喉の奥から空気の塊を吐き出し、顔を仰け反らせる。だが、ヴィレムは恍惚とした表情でニコルの膣の奥まで一物を挿し込み、小声を漏らす。
「あぁ…あったけぇ…狭いし、ギチギチだな」
ニコルの耳元でヴィレムが囁く。だが、彼の言葉はニコルに届いておらず、ニコルの目は焦点が合わずにいた。
ヴィレムはニコルの頬を舐め、腰を振り始める。下半身から響く振動がニコルを揺らすが、今の彼女にそれを感じる事などできなかった。
ぼんやりと天井を見つめるニコルを見て、ヴィレムは顔を歪める。彼は緩急のついた動きで腰を振り、額に汗を浮かべる。
ヴィレムの手がニコルの乳房を鷲掴みにして、乱暴に揉む。ニコルはそれにも反応しない。
やがて、ヴィレムは低い呻き声を漏らし、ニコルの身体に抱き付く。ヴィレムは腰をニコルの股間に密着させ、何度か腰を細かく震わせる。
数秒後、ヴィレムが深く息を吐き出し、ニコルの身体から離れる。一物が抜かれたニコルの膣からは白い液体が垂れており、ニコルは目尻から涙をこぼす。
ヴィレムはニコルの涙を舐め取り、視線をグレーテに向ける。一連の出来事を傍で見ていたグレーテは、既にバンドを外しており、反応が弱いニコルを見て口を開く。
「…殺すな、だが確実に孕ませろ」
グレーテの命令を受けたヴィレムは「りょーかい」と軽い返事をする。彼は水差しからグラスに水を注ぎ、一気にそれを仰ぐ。その間、グレーテはニコルの傍に歩み寄り、彼女の耳元で囁く。
「既に知っていると思うが、ここは我々が制圧した。人質はまだ20-30人ほどいる」
グレーテは静かに話す。ニコルの瞳は焦点が合わず、空を眺めている。
「…逃亡や自殺を図ったら、他の人質を全員殺す」
だが、グレーテの一言を耳にして、ニコルの瞳は僅かに揺れる。彼女の双肩に他の人質全員の命を載せる事で、ニコルは過去に自身が行った臨床試験の光景を思い出す。
何度も瞬きをするニコルを見て、グレーテは微かに笑う。グレーテはニコルの口輪とロープを外し、「逃亡や自殺を試みたら報告しろ」と命じ、部屋を後にした。
その後ろ姿を見届けたヴィレムは休憩を終え、ベッドに登り、再び剃り立つ一物をニコルの膣に挿し込む。先ほどのグレーテの言葉が効いたニコルに反抗の意思はなく、ヴィレムはニコルを抱き上げ、自身は胡座をかき、挿入したままニコルを抱える。重力が加わり、ヴィレムの一物がより深くニコルの膣に挿さる。一物の先端はニコルの子宮口を叩き、その感触と痛みにニコルは悲鳴をあげる。
その瞬間、ヴィレムはニコルに口付けし、自身の舌をニコルの口の中に挿れる。
ヴィレムは舌を介してニコルの口内に唾液を流し込み、ニコルは涙を流しながら上下の口でヴィレムを受け入れ続ける。
だが、今回のヴィレムは先程とは異なり、ゆっくり丁寧に腰を動かす。
先程はグレーテの目もあり、ヴィレムはとりあえず腰を動かしていた。今のヴィレムは非常に丁寧に腰を動かして、時には動きを止めて、余韻をニコルに与える。
「安心しろ、俺は将校より上手い、なにより大きさが違うからな」
将校の一物も決して小さくはないが、ヴィレムは規格外の大きさを有している。彼の一物はニコルの膣内で脈動し、ゆっくりと解していく。その間、ヴィレムはニコルの骨盤の後面を撫で、彼女の緊張を落としていく。
ヴィレムの舌がニコルの首筋から頬を舐める。
「…ふぁあ」
その瞬間、ニコルの口から嬌声が漏れ、ヴィレムは微かに笑う。ニコル自身も己が感じていることに驚きを隠せず、きょとんとした顔でヴィレムを見る。胡座をかいたヴィレムはいったん一物を抜き、ニコルの身体を後方から抱き締め、再び一物をニコルの膣に挿入する。
その際、ヴィレムの指はニコルの膣口とクリトリスを触り、刺激を彼女に送る。
ヴィレムの口が背後からニコルの首筋を甘噛みする。
「…あぁん」
上下から送られる未知の感覚にニコルは嬌声をあげる。ヴィレムは指先でニコルの乳頭が硬くなっているのを確認し、ニコルの耳元で囁く。
「気持ちいいだろう…次の感触は忘れるなよ」
ヴィレムはニコルの耳に息を吹きかけ、一物を挿入したままニコルの膣口を撫でる。合わせてニコルの首筋や耳を甘噛みし、ゆっくりと腰を動かし始める。
「あぁ…いぃ…!」
ニコルの口から快感に溺れる悲鳴が漏れる。
ヴィレムはニヤリと笑い、そのままニコルに対する攻めを続ける。ニコルの額は汗ばみ、呼吸が浅くなる。クリトリスと乳頭は硬くなり、ニコルは下腹部が熱くなる感覚を覚える。
丁寧かつ弱点を攻めたヴィレムの動きは、ニコルの身体に性的な快楽を教え込む。
やがて、ニコルは空を仰ぎ、口をぱくぱくと動かしながら四肢を硬直させる。数秒後、ニコルは絶頂を迎えて、身体は本能に従い、ヴィレムの一物から性液を搾り出そうと痙攣する。
ヴィレムはニコルの一番奥で精液を放つ。
絶頂を迎えたニコルは失禁し、泣き始める。
子供のように泣くニコルをヴィレムは後方から抱き締め、耳元で囁く。
「気持ちいいだろう…安心しろ、これが生き物としての本能さ」
ぼんやりとした頭でニコルは話を聞き、それを見たヴィレムは再びゆっくりと身体を動かし始める。全身が敏感になったニコルは嬌声をあげるが、その声に抵抗感はなく、ヴィレムの愛撫を受け入れている。
ヴィレムはニコルを四つ這いにさせ、自身は後方からニコルに覆い被さる。獣のように交尾する姿に、ニコルの顔が赤く染まる。だが、ヴィレムはニコルの弱点を探りあて、一物で刺激を送る。指先が乳頭を刺激し、やがて快感に負けたニコルが再度絶頂を迎え、ヴィレムの精液を最奥で受け止める。
室内にニコルの嬌声が響く。