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道物語(ロードストーリー)第十一幕 ラート村一時帰還編

  ローレスの第一収容所とズロム城を攻略し 一度故郷に帰る事になった

  長い旅路の中でも特別な“回帰の道”を選んだ。

  目指すは、ラート村――

  “まだまだ主義”を胸に抱いた剣士の、原点の地。

  ラート村へ向かう直前――

  どこからともなく、陽気で張りのある女性の声が響く。

  ⸻

  ???

  「おやおや? あらまあ、見覚えのある顔があるじゃないの。

  アルベルト君じゃない、久しぶりねぇ~!」

  ⸻

  現れたのは、派手な赤紫のスーツにヒョウ柄のスカーフを巻いた商人――

  エスゲコー・レオパルド。

  大きなトランクを引きながら、どこか舞台役者めいた動きで現れる。

  ⸻

  アルベルト

  (苦笑しながら)

  「エスゲコー……相変わらず、派手な登場だな」

  ⸻

  エスゲコー

  (ウインクしながら)

  「当然でしょ? 商売は“目立ってなんぼ”よ~!

  それより聞こえたわよ、ラート村に戻るんでしょ? 送るわ、あたしのキャラバンで。

  みんなまとめて乗せてあげる!」

  ⸻

  ティミス

  「……また妙な情報網ね。どこで聞いたの?」

  ⸻

  エスゲコー

  (涼しい顔で)

  「秘密よ。情報は仕入れてナンボ。

  でもまあ、困ってるヒーローさんたちを助けるのも商人の義務ってことで♪」

  ⸻

  グランジャス

  「……利用できるものは利用するか」

  ⸻

  マリーナ

  「移動の手間が省けるのはありがたいわ」

  ⸻

  シシオ

  「昔、エスゲコーと交易したことがあったな。相変わらず商売上手だ」

  ⸻

  カリン

  「なんか楽しい人……?」

  ⸻

  メルディス

  「派手すぎてちょっと……目がチカチカする……」

  ⸻

  エスゲコー

  (指を鳴らして)

  「じゃあ準備するわよー!

  道中、珍しいお菓子と最新の旅話、たっぷり用意してるからお楽しみに♪」

  ⸻

  こうして、旅団はエスゲコーのキャラバンに乗り、ラート村へ向かう。

  懐かしき原点の地へ――

  変わった自分たちが、どう迎えられるのかを確かめに。

  【ラート村・入口】

  小さな門のような木のアーチが立つ村の入り口。

  懐かしい風景が広がる。麦畑の香り。澄んだ空気。穏やかな暮らしの匂い。

  ⸻

  ティミス

  「……懐かしいわね。アルベルト、久しぶりでしょ?」

  ⸻

  アルベルト

  (しみじみと村を見つめながら)

  「……ああ。けど、どこか……小さく見えるな」

  ⸻

  マル

  「ヒーローの故郷って感じですねぇ。えらくのどかで、殺気もねぇ」

  ⸻

  カリン

  「なんか、ほっとする……」

  ⸻

  すると――

  村の奥から、元気な声が響く。

  ⸻

  村の少年

  「アルベルト兄ちゃんだー!! みんなー!! 帰ってきたよー!!」

  ⸻

  村人たちが集まり始める。

  老人、農夫、子供、かつての仲間たち……。

  そして――

  ⸻

  村長(ヨルゴ)

  「……こりゃ驚いた。アルベルト! 無事だったか!」

  ⸻

  アルベルト

  「ただいま、村長。仲間たちと戻った」

  ⸻

  村長は目を細める。

  村長

  「……そうか。今じゃお前の名前、あちこちで聞くぞ。

  “世直し旅団ロードストーリーズ”とか言ったか。

  お前らのしたこと、ちゃんと届いてる。……村の誇りだよ」

  ⸻

  グランジャス、少しそっぽを向くようにして呟く。

  ⸻

  グランジャス

  「……やっぱ、原点に戻ってきた感じだな。始まりの地に」

  年季の入った木造の道場の前で、年老いた男がほうきを持って庭掃除をしていた。背中は曲がりつつも、放つ気配は今も鋭い。

  ナミハチ(ほうきを止めて)

  「……ようやく帰ってきたか、アルベルト。」

  アルベルト(深く頭を下げる)

  「師匠。ただいま戻りました。」

  ナミハチ

  「ふん……で?その腰の剣、まだまだ使い込めてないな。」

  アルベルト(嬉しそうに笑い)

  「ええ、だから戻ってきました。“まだまだ”ですから。」

  ラート村・ナミハチの道場――

  まだ朝の冷気が残る道場の庭。風が草を揺らし、木々がざわめく中、アルベルトは道場着に着替え、腰の剣を締め直していた。

  アルベルト(深く一礼)

  「師匠、久しぶりに稽古をお願いします。……今回は、本気で。」

  ナミハチ・スラム(ゆっくりと振り返り、静かに木刀を取る)

  「お前が“本気”というなら、こっちも“全身全霊”で行くぞ。覚悟はあるか?」

  アルベルト(目を見据え、刀を構える)

  「はい。」

  パァン――!

  木刀と刃が交錯する音が、空気を裂いた。

  初撃、ナミハチの木刀が鋭く振り下ろされる。アルベルトは反射的に受け止めるが、その衝撃で足が土にめり込む。

  ナミハチ

  「悪くはない。だが足運びが甘いッ!」

  今度は回り込むような足さばきから、肘打ち――そのまま足払い。アルベルトは寸前で跳ねのけて反撃に出る。

  アルベルト

  「……でも、俺は前とは違う!」

  ズバッ――!

  鋭く伸びる一閃。それは今までの彼になかった“切り開く意志”を宿していた。

  ナミハチの頬に、ほんの小さく浅い傷が走る。

  一瞬の静寂。

  ナミハチ(目を細め、ニヤリと笑う)

  「……ほう。口だけじゃなかったか。成長したな、“まだまだ”の若造。」

  ナミハチは木刀を下ろし、肩を回す。

  ナミハチ

  「だがな……“強さ”とは己を鍛えることだけじゃない。“守りたいものを守れる覚悟”だ。今のお前にはそれがある。」

  アルベルト(刀を納め、深く頭を下げる)

  「ありがとうございます、師匠。」

  その様子を見ていた仲間たちは、道場の端でそっと拍手を送っていた。

  カリン(腕を組みながら)

  「やっぱり、いい顔になってきたじゃない。」

  メルディス

  「うん……“本物の剣士”になった感じ。」

  グランジャス(腕を組んで)

  「俺らも、まだまだだな。」

  朝の稽古を終えたアルベルトが刀を納めると、背後から静かに歩み寄る足音があった。

  グランジャス(微笑みながら近づく)

  「ナミハチ殿、お久しぶりですな。」

  ナミハチ・スラム(振り向き、笑顔を浮かべて)

  「おう、これは男爵殿。……久しいな。あいかわらず威風堂々としておる。」

  グランジャス(懐かしそうに)

  「あなたの剣は昔から理と魂が通っている。弟子の成長を見て納得です。」

  ナミハチ(頷きながら)

  「弟子ってのはのう、血縁より深くなる時がある。この馬鹿者は、まだまだじゃがな。」

  アルベルト(苦笑しながら)

  「“まだまだ”って言われるたびに、前に進める気がするんです。」

  ナミハチ(笑いながら)

  「なら良い。“まだまだ主義”は、お前の剣と共に生きておる。」

  その様子を見ていたシシオが口を挟む。

  シシオ(肩をすくめながら)

  「弟子の方が弟子らしいな、グランジャス。」

  グランジャス(笑いながら)

  「言われてみれば、確かに。……だが、俺もまだまだだ。」

  ナミハチ(満足そうに頷いて)

  「よい流れじゃ。……ところで皆、いまどんな旅をしておるのか、詳しく聞かせてもらえんか?」

  アルベルト

  「ええ、聞いてほしいです。いま、俺たちはこの世界を変えようとしてるんです。」

  ラート村・ナミハチの道場――

  焚き火の前、囲炉裏を囲むようにしてナミハチ、アルベルト、グランジャスたちが腰を下ろしている。柔らかい夜風が紙障子を揺らし、囲炉裏の火が静かに爆ぜる。

  アルベルト(湯飲みを手にしながら)

  「……そういえば、師匠。どうしてローレスからこの村に?」

  ナミハチは湯飲みに目を落とし、一拍置いてから静かに語り始めた。

  ナミハチ・スラム

  「……わしはな、元々ローレスの軍属じゃった。鍛錬も教練も……剣の道にすべてを捧げてきた。」

  グランジャス(うなずきながら)

  「聞いたことがあります。ローレス最強の“火斬の鬼”と呼ばれていたとか。」

  ナミハチ(鼻で笑う)

  「昔の話じゃ……だが、あの頃のローレスは、武力の誇示と弾圧を正義だと思っていた。わしも……最初は信じて疑わんかった。」

  アルベルト

  「何か、きっかけが?」

  ナミハチは、少し目を細め、語りを続ける。

  アルベルト「バカ息子に説教されてなそれで考えを改めてたのじゃよ」

  ナミハチ

  「その夜、妻と大喧嘩した。『そんな道を歩むなら、一緒におれん』と。……わしは剣を置いた。ローレスを捨て、家族を連れて、この村に来た。……あの時、妻は許してくれたよ。」

  ティミス(目を伏せながら)

  「……それは、勇気のいる決断だったはず。」

  ナミハチ(微笑んで)

  「命令よりも、大事なもんに気づくのが遅かっただけじゃ。……だが、この村の静けさが、ようやく“剣”と“心”を結び直してくれた。」

  ナミハチはふっと笑い、髭をなでながら囲炉裏の火に目を落とします。

  ⸻

  ナミハチ・スラム

  「……グランジャス殿、まったくその通りじゃ。尻に敷かれるくらいが、家は丸く収まる。わしのような頑固者には、ちょうど良い女房でな。」

  ティミス(くすりと笑って)

  「その“ちょうど良さ”がわかる男が、一番信頼できるのよ。」

  グランジャス(酒を片手に得意げに)

  「うちもそうですよ。家に帰れば嫁さんに頭が上がらない。だが、戦の場じゃ俺の判断に従ってくれる。バランスってやつですね。」

  ナミハチ

  「ははっ。わしも、家では茶碗洗いと薪割りが当番じゃよ。女房に言われんうちにやるのがコツじゃ。」

  マル(笑いながら)

  「奥方様たちのほうが、ずっと上手に“戦”をしてるってことですな。」

  アルベルト(ぽつりと)

  「……俺も、そういう関係を築けるように、ならないとな。」

  ナミハチ(真顔でアルベルトを見る)

  「お主ならできる。だが“剣”だけじゃない。心の修行も忘れるなよ。」

  ⸻

  囲炉裏の火は静かに揺れ、夜の風が木々を鳴らす。

  その温かく、穏やかな時間の中で、彼らはそれぞれの「守りたいもの」に思いを馳せていた。

  ナミハチ そこのお嬢ちゃんとは良い関係なのか?

  アルベルトは一瞬ぎょっとして顔を赤らめる。

  ティミスは表情を崩さず、お茶をすすっているが、耳がほんのり赤い。

  ⸻

  アルベルト(あたふたしながら)

  「い、いや! その……戦友というか、仲間というか、あの……」

  グランジャス(ニヤリとしながら)

  「おやおや、師匠、核心を突きましたな。」

  ナミハチ(にやにやしながら)

  「わしはもう歳だからのう、若いもんのそういうのが気になってな。どうなんじゃ? ティミス嬢、どう思っとるんじゃ?」

  ティミス(静かに、笑みを浮かべ)

  「私は……信頼してますよ、彼の選択も、剣も、心も。あとは……彼がどう動くか、ですね。」

  マル(からかい口調で)

  「おやおや。こりゃあラート村の夜は甘くなりそうですぜ。」

  カリン(小声で)

  「メルディス、こういうの、いいよね。」

  メルディス(うなずきながら)

  「ええ……でもティミスさんって、ほんとに大人だわ。」

  ナミハチ(笑いながらも、ふと真顔になり)

  「アルベルトよ、人の心も剣の間合いと同じじゃ。遠すぎれば届かんし、近すぎれば斬れてしまう。ええ間合い、見極めろよ。」

  ⸻

  アルベルトは拳を軽く握り、深くうなずく。

  照れもあったが、真剣な決意がそこにあった。

  ティミスも、目を細めてその姿を見つめていた。

  アルベルトの母 アルベルト久しぶりにカレー作るから手伝いなさい

  アルベルト「えっ、母さんのカレー!? ……わかった、すぐ手伝うよ!」

  ⸻

  ラート村の台所には懐かしい香りが漂い始める。

  大鍋、色とりどりの野菜、スパイスの壺。アルベルトの母が手際よく材料を並べていく。

  ⸻

  母「あんた、昔は玉ねぎもまともに切れなかったのにねぇ。」

  アルベルト(笑いながら)

  「今は悪魔も斬れるぞ。玉ねぎくらい余裕さ!」

  母「変な自慢するんじゃないよ。……包丁はこっち、野菜はよく洗ってからね。シシオさんも来てるなら多めに作らなきゃ。」

  グランジャス(匂いにつられて)

  「おや、これは……もしや名物“カルナット家の秘伝カレー”?」

  母(にっこり)

  「覚えててくれたのね、男爵さん。ウチの家のカレーは甘口よ。」

  メルディス「わぁ……いい香り。何か隠し味でも入ってるんですか?」

  母「んふふ、それは企業秘密よ。でもアルベルトには教えてるわ。いざというとき嫁さんに作ってもらえるようにね!」

  アルベルト「ま、待て母さん、変な誤解を生むようなことを……!」

  ティミス(平然と)

  「覚えておきます。レシピ、後で教えてください。」

  母(満足げに)

  「ふふ、よきかなよきかな。じゃあ、そこの子はサラダ担当ね。あ、シルクーちゃんはご飯研いでおいて!」

  シルクー「は、はいぃっ!」

  カラスト「ぼくもなんかやるー!」

  母「じゃあ、デザートのお皿並べて。みんなで作って、みんなで食べる。それが一番のごちそうよ。」

  ホルスター「こんな素晴らしい気候なら、野菜も育てやすそうですわね。土も良さそうですし、日当たりも申し分ない…!」

  ⸻

  母「あら、あんた畑やってるの?」

  ホルスター「ええ、実は以前ちょっとした農園の管理をしていたことがありまして。斧ばかり振り回してると思ったら大間違いですわよ?」

  グランジャス(笑いながら)

  「ホルスター殿、収穫祭では大活躍でしたからな。豪快な割に手入れは繊細で……あのトマトは絶品だった。」

  ホルスター(照れながら)

  「お褒めに預かり光栄ですわ。ラート村でも、空いている畑があれば少しお手伝いさせていただけませんこと?」

  母「そりゃ助かるわ。おじいちゃんが手入れしてた畑が今は空き地になっててね。誰かに任せたいと思ってたところよ。」

  ホルスター「まぁ、それは素晴らしいお話! さっそく明日の朝、様子を見に行っても?」

  母「もちろん。朝露が残ってるうちが見ごろよ。」

  ⸻

  マル「農業と武道の両立とは恐れ入りやすな……なんて多才なんだ、姐さんは。」

  ホルスター(ふふんと胸を張って)

  「美は、畑仕事にも宿るものですわ。草むしりにすら品格はあるのですのよ?」

  ⸻

  そんな会話の中、台所の窓から差し込む陽光が、豊かな緑と穏やかな風を照らしていた。

  ラート村の、静かで力強い暮らしが、仲間たちの心をゆるやかに癒していく――。

  グランジャス「孤児院の先生してたら、そりゃ畑くらいはするわな。子どもらに食わせるには、自分で作るのが一番だからな。」

  ⸻

  ホルスター(にこやかに頷き)

  「ええ、あの子たちに栄養のあるご飯を食べさせたい一心で、土と向き合いましたわ。時には虫と格闘して、時には野菜と語り合って……」

  カリン(驚いた顔で)

  「語り合うんですか?」

  ホルスター(真顔で)

  「当然ですわ。作物にも気持ちはありますのよ。『今日も育ってくれてありがとう』って、毎朝話しかけてましたわ。」

  メルディス(感心して)

  「だからあんなに美味しかったんですね……。」

  シーフェ(じっと見つめながら)

  「…ホルスターさん、やっぱりただの戦斧お姉さんじゃないね。心が強い。」

  ⸻

  グランジャス「ま、そういう地に足つけた人間こそ、本当に頼れるってもんよ。……俺も今度、少し手伝わせてくれ。剣じゃ耕せんが、クワくらいなら使えるぞ。」

  ホルスター「もちろん歓迎ですわ。グランジャス様と並んで畑仕事とは、絵になりますわねぇ。」

  ⸻

  ラート村の穏やかな空気の中、

  畑仕事の話題に花が咲く――

  束の間の平穏が、皆の心に静かに染み渡っていた。

  ルプス「ジメジメしないから毛もゴワゴワしないし、これなら治療しやすい環境だ。衛生的だし、消毒薬の効果も落ちにくい。」

  ⸻

  シーフェ(メモを取りながら)

  「うんうん、確かに。温度も湿度も安定してるし、感染リスクも低そう。メスの切れ味も保てるよ。」

  マリーナ(辺りを見渡して)

  「こういう場所に診療所があったら、村の人も安心ね。」

  ルプス(少し照れくさそうに)

  「ま、今すぐ開業するわけじゃないけどな……でも、もし旅を終えたら――こういう静かな場所で、医者として暮らすのも悪くないと思ってる。」

  シーフェ(にやっとして)

  「だったら、わたし助手に立候補するね。薬の管理も、メスの洗浄も、任せてほしいな。」

  ルプス(軽く笑いながら)

  「お前が助手か……ふふ、それは心強いな。」

  ⸻

  ラート村の柔らかな風の中、

  ルプスはふと、自分の未来の輪郭を思い描いていた。

  それは戦いから離れた、静かで優しい日々だった。

  医師コンビ、ルプスとシーフェは、

  頼まれるより先に、自発的に村人全員の診察に乗り出していた。

  ⸻

  シーフェ(笑顔でメモを取りながら)

  「おじいさん、これはね、カルシウムが足りてないわよ。骨がスカスカになっちゃうわ。ちゃんと干し魚とか、牛乳を摂らなきゃ。あと、日光もね。朝の散歩は続けてね。」

  おじいさん「そ、そうかねえ……最近は腰が重くてな」

  シーフェ「じゃあ、ストレッチも一緒に覚えて帰ってね!はい、手上げて〜♪」

  ⸻

  ルプス(診察ベッドに大工の親方を押し倒しながら)

  「ったく……尿路結石かよ。水分足りてない上に、しょっぱいもん食いすぎだ。

  大工の頭がトイレで倒れたって噂になったら笑いもんだぞ。」

  大工親方「ひ、ひでぇ言い方だなぁ……!」

  ルプス「いいから横になって。今から超音波を使って砕く。すぐ終わる。耐えろ。」

  (手際よく装置を取り出し、治療を始める)

  ルプス「はい、終了。石は粉々。三日は塩分控えろよ。」

  大工親方「あ、あんた神かよ……」

  村人たちは最初こそ驚いていたが、

  二人の見事な連携と知識の深さ、そしてなにより優しさと本気さに心を打たれ、

  感謝と尊敬の声が村中に広がっていった。

  ⸻

  シーフェ(日記に書きながら)

  「なんだかんだ、こういう時間って一番心が温かくなるかも。」

  ルプス(遠くの空を見上げながら)

  「俺たちの旅はまだ続くけど……

  この村には、帰って来る理由ができたな。」

  ルプスとシーフェは、次々と村人を診察していく中で、

  ついに村の顔役である村長に対しても、容赦なく言い放った。

  ⸻

  ルプス(血糖値のデータを見ながら腕を組み)

  「……村長さんよ。この数値、ヤバいぞ。甘い物取りすぎだ。このままだと糖尿予備軍、いや、ほぼ一歩手前だな。」

  村長(汗をかきながら笑って)

  「そ、そんなに甘いもの食べとらんよ! 毎日あんみつをちょっと……あと羊羹と、夜にまんじゅう少々……」

  ルプス(顔をしかめ)

  「“ちょっと”であんみつとまんじゅうと羊羹……?

  それを毎日続けたら誰だって血糖値上がるわ!」

  ⸻

  一方、シーフェは近くで診察していた中年女性に軽く説教をしていた。

  シーフェ(にこやかに、しかし目は笑っていない)

  「**あなた、間食多すぎ。**昼と夕方にそれぞれお菓子とパン食べてたでしょ?

  それじゃ胃が休む暇ないわ。少し控えなさい。」

  女性(肩をすくめながら)

  「でも…口寂しくて…」

  シーフェ(メスを軽く指に回しながら)

  「じゃあ代わりにお茶を飲んで。それでも食べたいなら小魚せんべいくらいにしとくの。

  ……いいわね?」

  女性「……は、はいっ!」

  ⸻

  こうして、二人の医師による村の健康管理は容赦なく続く。

  その鋭い指摘と手厳しい愛情は、ラート村の住人たちを確実に“元気”へと導いていった。

  ⸻

  グランジャス(村の広場で様子を見ながら)

  「まるで……二人とも鬼医者だな。でも悪くない。いや、むしろ良すぎる。」

  アルベルト(ストレッチしながら)

  「俺らも気をつけないとな、おっさん。」

  グランジャス(苦笑いして腹をさする)

  「ああ。……最近ベルトの穴がキツくなってきた気がするしな。」

  マル(手帳を見ながらぼやくように)

  「全くですな。こっちは三度三食しっかり食って、酒も甘味も嗜んで、そりゃあ内臓も休まる暇がない。」

  ⸻

  シーフェ(背後から無言で現れ)

  「……聞こえてたわよ。次はあなたたちの診察ね。」

  ルプス(聴診器を首にかけながらにやり)

  「さ、覚悟しな。俺らの“検診コンビ”からは逃げられないぜ?」

  ⸻

  アルベルト・グランジャス・マル(同時に)

  「うっ……!」

  マル(苦笑しながら)

  「これはこれで、処刑場より怖ぇですな……」

  ⸻

  村に笑いが広がる中で、旅の仲間たちの絆は、健康チェックとともにさらに深まっていくのだった。

  グランジャス(腹をぽんぽん叩きながら)

  「俺はなぁ、中性脂肪がやばいんだよなぁ……最近数値見たらギョッとしたぞ。」

  マル(自分の腹を触りながら)

  「私は……腹回りが……ズボンのボタン、破裂したことあるんですぜ。」

  アルベルト(肩をすくめつつ)

  「俺も……鍛えてるつもりだったけど、最近は腹筋より脂肪のほうが主張してきた気がする。」

  ⸻

  シーフェ(カルテを片手に冷静に)

  「ええ、ええ。**三人とも立派な“予備軍”**ね。内臓脂肪・血糖値・肝機能、オールチェックよ。」

  ルプス(ニヤニヤしながら聴診器トントン)

  「よし、緊急メタボ改善合宿始めっか?」

  ⸻

  グランジャス「う……」

  マル「いまさら逃げても手遅れですな……」

  アルベルト(顔を伏せながら)

  「地獄の筋トレタイムが始まる……」

  ⸻

  村の平和な時間の裏側で、“おっさんトリオ”の戦いが静かに幕を開けたのだった。

  次なる敵は悪魔でも魔族でもなく――生活習慣病!

  グランジャス(そっと紙を取り出して)

  「これ……去年の健康診断の結果だ。渡しておくよ……頼む、優しくしてくれ……」

  シーフェ(受け取ってさっと目を通す)

  「……えぇと、総コレステロール高め、肝機能の数値が……これは飲み過ぎね。」

  ルプス(覗き込みながら)

  「中性脂肪の数値がグラフ突き抜けてるじゃん!おいおい、“人間大トロ”になってどうすんの?」

  グランジャス(苦笑しながら頭をかく)

  「いやぁ……冬場に鍋がうまくてなぁ……それと昼に菓子パンを……ついな……」

  シーフェ(ため息交じりに)

  「来月から週一で検診と指導、いいわね?あとアルコールは週2以下、お菓子は月に2回まで。」

  グランジャス(顔を青くして)

  「そ、それはもう“禁酒宣告”じゃないか……」

  ルプス「命と酒、どっち取る?」

  グランジャス(両手を挙げて)

  「命ッ!!」

  ⸻

  こうして、“最も硬い鎧を着ていた男の心”が、村の女医たちの指導で丸裸にされていくのであった――。

  戦いは、まだまだ続く。

  ホルスター(少し恥ずかしそうに)

  「最近……なんだか胸が張ってて……」

  シーフェ(じっと見つめてから、ちょっとあきれ気味に)

  「ホルスタイン型のニアマーラ族なら、定期的に搾乳しないとダメでしょ。体質的に溜めすぎると炎症起こすの、知らないわけじゃないでしょ?」

  ホルスター(目を逸らしてモジモジ)

  「……その、シシオさんとかいたし……タイミングが無くて……」

  シーフェ(ピシャリと)

  「タイミングの問題じゃないでしょ。戦闘中に胸が痛んだらどうするのよ?次の戦いまでに、ちゃんと管理すること!」

  ⸻

  ルプス(後ろからマリーナに小声で)

  「……あまり言いたくないが、ウロコの状態、ひどいぞ。背ビレの辺り、ボロボロになってる。」

  マリーナ(目を見開いて)

  「えっ、嘘……まさか、そんなに……?」

  ルプス(真剣に)

  「乾燥と塩分不足だな。多分ここ数日、風呂の水質が肌に合ってなかった。保湿と塩分バランス、今日から調整する。あと日光浴も少し足りてない。」

  マリーナ(少し落ち込みつつ)

  「……ありがとう、ルプス先生。うち、見かけ倒しの魚類になりたくないから、ちゃんとケアする……」

  ⸻

  こうして、ロードストーリーズ一行は再び己の身体と向き合う時間を迎える。

  旅は続く。だがその前に――健康管理こそが最強の備えであることを、彼らは知るのであった。

  (村の宿屋の裏にある、簡素だが清潔な洗面所。木製の棚にはタオルや薬草が並び、窓からやさしい夕日が差し込んでいる)

  ⸻

  シーフェ(腰に手を当てて、キリッとした顔)

  「ほら、さっさと脱いで。溜めすぎてると詰まって化膿するって言ったでしょ。」

  ホルスター(顔を真っ赤にしながら

  (ホルスターはもじもじしながらも、シーフェの真剣な眼差しに根負けして、洗面器の前に座る)

  ⸻

  ホルスター(頬を染めつつ)

  「……あんまり、見ないでくださいね。なんか恥ずかしいですわ……」

  シーフェ(淡々と、しかし優しく)

  「医者に恥ずかしいも何もないわよ。ほら、力抜いて。搾り方は前に教えた通り。ゆっくり、優しく。」

  (ホルスターがそっと乳房を押さえ、ゆるやかに搾りはじめると、白濁した乳がぽたぽたと洗面器に落ちていく)

  ホルスター

  「……ん……ふぅ……こんなに……溜まってたんですのね……」

  シーフェ(顔色を見ながら)

  「だいぶ張ってたわね。しこりもあったし、搾るたびにちゃんと様子見ること。あんた、放置しすぎよ。」

  ホルスター

  「だ、だって……あまり人前でこういうの……」

  シーフェ(軽く肩をすくめて)

  「ニアマーラ族なんだから、これも体のメンテナンスの一部でしょ。戦闘にも響くのよ?」

  (少し搾った後、シーフェがやわらかいタオルを温めて渡す)

  シーフェ

  「はい、温タオル。終わったら冷やして。明日は念のため消炎の薬も塗っておくから、また来なさい。」

  ホルスター(小さく微笑み)

  「……ありがとうございます、先生。なんだか、スッとしましたわ。」

  シーフェ(笑いながら)

  「はいはい。じゃあ明日もちゃんと搾るのよ。“ホルスタイン”なんだから。」

  ⸻

  (洗面所には、さわやかな風と、乳の香りがほんのりと漂っていた)

  (ホルスターが少し赤面しながら、洗面器を片付けていると、ふとため息をついてつぶやく)

  ⸻

  ホルスター

  「……マルがいたら、冷やかされたり茶化されたり、もう面倒だったところですわ……」

  シーフェ(くすりと笑って)

  「確かに。“あっしの知らないとこでそんな濃密な女の時間が~”とか言いそうね。絶対ウザい。」

  ホルスター(うなずきながら)

  「グランジャスさんやアルベルトさんなら平気なんですけどね。不思議と。」

  シーフェ(苦笑しつつ)

  「ま、あの二人は“見るより聞いたほうが恥ずかしい”タイプだから。気にしても仕方ないわよ。」

  ホルスター(ちょっと安心したように)

  「ふふ、ですね……。ああ、でも次からはちゃんと自分で管理しますわ。シシオさんにも……あまり甘えてばかりいられませんし。」

  シーフェ(背中をぽんと叩いて)

  「そうよ。ちゃんと自立した“戦士”でいなさい、ホルスタイン娘。」

  ⸻

  (ホルスターは苦笑しながら「その呼び方なんとかしてくださいまし……」と呟いたが、どこかすっきりした表情だった)

  (洗面所の静けさの中、ホルスターがぽつりと回想するように口を開く)

  ⸻

  ホルスター

  「昔……孤児院で働いてた頃、乳幼児やお乳の出が悪いお母さん達の代わりにあげてたんですよ。あたしのミルク。」

  シーフェ(一瞬黙って、真顔で)

  「……あんた、聖母か何か?」

  ホルスター(照れたように笑って)

  「いやいや、ただ他に方法がなくて……あの子たち、ミルクも手に入らないこと多かったし。泣いてる子抱いて、胸張ってたら自然と……」

  シーフェ(やや感心して)

  「すごいじゃない、そういうの。なかなかできることじゃないわよ。自分の身体使って命を支えるなんて、まさに『女の強さ』ってやつ。」

  ホルスター

  「……最初は恥ずかしかったですけど、あの子たちが元気になるなら、なんでもよかったんです。ミルクを飲んで、眠って、ちっちゃな手で服をぎゅっと握ってくるの……。」

  シーフェ(優しく笑って)

  「……それ、もう母親だね。」

  ホルスター(目を細めて)

  「……あの子たち、今も元気でいるかな。ちゃんと、ご飯食べて、笑っててくれたら嬉しいんですけど。」

  ⸻

  (少しの沈黙のあと、シーフェはホルスターの背を優しく叩き、洗面器を片付けながら口元をゆるめる)

  シーフェ

  「大丈夫よ。あんたがあげたそのミルクで、あの子たちの心も身体も、ちゃんと育ってる。そういうもんよ。」

  ⸻

  ホルスターは少し目を潤ませながら、ふと笑みをこぼした。

  シーフェ(やや驚きつつ)

  「両方で1リットル……!? あんた、牛乳パックかっての。」

  ホルスター(気まずそうに笑いながら)

  「ニアマーラ族って、もともと母乳の分泌量が多いんですよ……栄養価も高めで、昔から子育て向きって言われてて……」

  シーフェ(腕を組んで少し考え込む)

  「確かに医療書でも見たことあるわね。ニアマーラ族の乳腺組織は発達してるって。ホルモンバランス崩れたり、搾らずに溜めると発熱や炎症のリスクもあるんでしょ?」

  ホルスター(うなずく)

  「ええ、だから定期的に搾ってるんですけど……旅先だと忘れがちで、張って痛くなっちゃって……」

  シーフェ(あきれつつも優しく)

  「まったく、放っておくと乳腺炎になって命取りよ? 医者としても言っておくけど、旅の途中でもちゃんと自己管理してもらわないと困るからね。」

  ホルスター(ぺこりと頭を下げて)

  「すみません、シーフェさん……」

  シーフェ(洗面器を確認しながら)

  「……で、これどうする? 貴重なたんぱく質ではあるけど」

  ホルスター(少し困ったように)

  「うーん、昔みたいにミルク必要な赤ちゃんがいればいいんですけど……」

  シーフェ(冗談まじりに)

  「マルがいなくて正解だったわね。いたら“それ売って小遣いにしよう”とか言い出しそうだし。」

  ホルスター(笑って)

  「言いそうですね、あの人なら……」

  ⸻

  洗面所の中には穏やかな空気が流れていた。外では仲間たちが準備を整えつつあり、再び旅が始まろうとしていた——だがこの小さな一幕もまた、彼らの旅の「日常」の一つだった。

  シーフェ(洗面器を見つめながら真顔で)

  「……砂漠地帯でなら売れるかしら。保存できれば、貴重な栄養源になるわよね。」

  ホルスター(慌てて)

  「ちょ、ちょっとシーフェさん!? 売るんですかこれ!? 私のミルクを!?」

  シーフェ(冷静に、メスを拭きながら)

  「何言ってるの、医療物資としてよ。水も食料も乏しい砂漠地帯じゃ、たんぱく質と脂質を同時に摂れるミルクは重宝されるの。」

  ホルスター(顔を赤くしながら小声で)

  「で、でも私……動物じゃないし……」

  シーフェ(くいっと眼鏡を上げる)

  「ニアマーラ族の乳は種族間でも消化しやすいって論文に書かれてたし、カルシウムも豊富。下手な保存食より有用よ? 医者としての提案だけど。」

  ホルスター(目を伏せながら)

  「なんか……複雑な気分です……」

  シーフェ(肩をすくめて)

  「嫌なら無理にとは言わないわ。でも、“あのマル”が聞いたら全力でマーケティング始めるでしょうね。“冒険者が飲むミルク!産地直送!”って。」

  ホルスター(笑いながらため息)

  「もう目に浮かびますね……あとで“ローレスの方にも売ってくれ”とか言われそう……」

  シーフェ

  「とにかく、搾乳は習慣づけて。医者としても、仲間としても、健康第一よ。あと……保存方法は後で私が考えるわ。」

  ホルスター

  「うぅ……ありがたいけど、やっぱりちょっと恥ずかしいです……」

  —

  軽いやりとりの裏には、仲間としての信頼と絆がしっかりと築かれていた。砂漠で売るかどうかはともかく、旅はまだまだ続く──。

  シーフェ(真剣な表情でホルスターを見つめながら)

  「今回はね、ホルスター。あなたの属するニアマーラ族の中でも、“ラクダ型・ヤギ型・ヒツジ型・ウシ型・ヤク型”の系統は特にそうだけど――定期的な搾乳が必要なのよ。」

  ホルスター(少し戸惑いながら)

  「う、うん……それは前にも聞いたけど……。でもどうして“特に私”が?」

  シーフェ(静かに頷きながら)

  「あなたは“ウシ型”の中でも、ホルスタイン種――つまり、乳排出量が極めて多い系統なのよ。だからこそ、他のニアマーラ族よりも身体の負担も大きいの。搾乳の間隔を開けすぎると、体調にも大きく影響するわ。」

  ホルスター(少し肩を落として)

  「……やっぱり私だけ、色々面倒かけちゃってますよね」

  シーフェ(微笑みながら)

  「そんなことないわ。種族の特性なんだから、ちゃんと向き合うのは大事なことよ。むしろ、それを放っておく方が無責任だもの。」

  (少し間を置いて)

  シーフェ「……それに、“グランジャス”なら。あなたが何も言わなくても、体調の変化を気遣って、いざというときは黙って手を回してくれるような人でしょ?」

  ホルスター(頬を染めながら)

  「……あの人、たまに鈍いけど……でも、そういうところは確かにあります……」

  シーフェ(笑いながら)

  「ふふ、わかる。言葉より行動で示すタイプよね。まったく、おっさんたちは素直じゃないんだから」

  ホルスター(そっと洗面器を見て)

  「……でも、誰かに頼ってもいいのかな。たまには。」

  シーフェ(優しく背を撫でながら)

  「いいのよ。**誰かに頼るのは、弱さじゃなくて、生き方の一つ。**ちゃんと支えてくれる人が、あなたの近くにいるなら――なおさらね。」

  外では――

  ラート村の穏やかな午後、ホルスターは搾乳を終えて洗面所から出てくると、どこからか子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてきた。

  声のする方へと足を運ぶと、そこには近所の赤ちゃんや幼い子供たちが集まっており、草の上ではしゃぎながら遊んでいた。

  その輪の中に、すでにマリーナやカリン、さらにはティミスまで混じっていて――。

  ホルスター

  「……賑やかですね」

  マリーナ(笑顔で赤ちゃんを抱きながら)

  「ここの子たち、元気で人懐っこいのよ。ほら、ホルスターも来て」

  小さな女の子がホルスターの方へと駆け寄ってきて、彼女の手を掴む。

  女の子

  「おねーちゃん、だっこー!」

  ホルスター(少し戸惑いながらも)

  「う、うん……よいしょ。あら、軽いですね」

  抱きかかえると、赤ちゃんのような匂いがふわりと鼻をかすめる。温かく、小さく、そして無防備な命――。

  ティミス(そっと近づき)

  「あなた、案外母性強いのね」

  ホルスター(恥ずかしそうに視線を逸らし)

  「……昔は、そういう役回りが多かっただけです。乳児に母乳をあげたり、寝かしつけたり。戦いより、そっちの方が得意だったかも」

  カリン(にっこり笑って)

  「それも立派な力よ。“守る”ことには色んな形があるんだから」

  しばらくして、ホルスターの腕の中で赤ちゃんがすやすやと眠り始める。

  ホルスター(小声で)

  「……こんな日常がずっと続けばいいのに」

  マリーナ

  「きっと続けられるわ。私たちで、そういう未来を作っていけばいいのよ」

  ホルスターが赤ちゃんを抱えていると、突然――。

  グランジャス(近づきながら)

  「ホルスター、その子……うんちしてるぞ。オムツ替えが必要だ。こっちへ」

  ホルスター(あたふたしながら)

  「えっ、ええっ!? そ、そうなんですか!? あ、ああ確かに匂いが……!」

  慌てて赤ちゃんの背中を確認すると、すでにオムツの端が少しだけ膨らんでいる。ほんのり温かく、香ばしい匂いがホルスターの鼻をかすめる。

  グランジャス(苦笑いしつつ布おむつと水を持ってくる)

  「ここに布オムツと清拭用の水がある。村の子はこういうのが多いからな、慣れてるんだよ俺」

  ホルスター(赤面しつつ)

  「うぅ……すみません、手伝っていただけますか……?」

  グランジャス

  「任せとけ。足持って、優しくな。ああ、拭くときはちゃんと前から後ろ。逆だとよくないんだ」

  ホルスター

  「ふ、ふむ……なるほど……あの、意外と詳しいんですね」

  グランジャス

  「昔孤児院で先生してたって言ったろ? こういうのは日常茶飯事だ」

  そう言いながら、手際よく赤ちゃんのオムツを取り替えるグランジャス。ホルスターも横でおろおろしながらも、次第に要領を掴んでいく。

  ホルスター(おむつを当てながら)

  「……こうですか?」

  グランジャス(頷きながら)

  「おう、上出来。ほら、赤ちゃんも機嫌よくなったろ」

  スヤスヤと再び眠りにつく赤ちゃん。その顔を見て、二人は小さく笑い合った。

  ホルスター

  「……なんか、こういうのも悪くないですね」

  グランジャス

  「そうだな。こういう平和な時間、ちゃんと守っていかないとな」

  グランジャス(赤ちゃんをあやしながら)

  「……ホルスター、お前なら慣れてるだろ。孤児院の先生やってたんだから、オムツ替えくらい」

  ホルスター(苦笑して肩をすくめ)

  「そうですねぇ……あの頃は一日何十枚って替えてましたし、寝ながらでもできましたよ」

  グランジャス(笑いながら)

  「じゃあ、俺の出る幕じゃなかったな。つい世話焼きたくなってな」

  ホルスター(手早くオムツを替えながら)

  「ふふ、でも嬉しかったです。こうしてちゃんと子どもの扱いができる大人が周りにいるのって、安心感ありますから」

  グランジャス(少し照れたように)

  「俺はお前ほどじゃないさ。でも、誰かを守りたいって思うのは同じだ」

  ホルスター(赤ちゃんに微笑みながら)

  「この子たちの未来のためにも、もっと頑張らないとですね。平和な世界を守るために」

  グランジャス(しっかり頷いて)

  「ああ、そうだな」

  グランジャス(腰に手を当ててどっしりと)

  「育児が出来ない男ってのはな、情けないもんだ。戦場での度胸とはまた違うぞ」

  マル(口をすぼめて少し肩をすくめ)

  「羨ましいですな……俺はある程度成長した子供相手ならいくらでも遊べるんですけど、赤ちゃんは……正直怖い。あんな小さい命、壊しちゃいそうで」

  ルプス(医療鞄を肩から下ろしながら)

  「マル、あんたの手先の器用さなら大丈夫だろ。あとは慣れと、少しの観察眼さ」

  シーフェ(赤ちゃんをちらりと見ながら)

  「本当に大事なのは“この子は何を求めてるのか”を感じ取る力。戦闘でもそうでしょ? 敵の意図を読む。あれと似てるわ」

  マル(目を見開いて)

  「なるほど……ああ、そう考えると、少し親しみが湧いてきましたよ。次に泣いたら俺が抱っこしてみましょうかね」

  ホルスター(笑いながら)

  「その時はちゃんと首を支えてくださいね? マルさんなら、きっと良いお父さんになれますよ」

  マル(照れ笑いしつつ帽子をくいっと)

  「そいつは早すぎる誉め言葉ですな……でも、悪い気はしない」

  グランジャス(腕を組みながら満足げに)

  「よし、これでまたひとつ“情けない男”が減ったな。俺たち“世直し旅団”の面子なら、育児くらいお手のもんでなきゃな」

  グランジャス(赤子を抱いたまま、ぽつりと)

  「……俺なんて常に四苦八苦だったよ。ドルセニアじゃ、育児ノイローゼになった親の代わりに子どもを預かることもよくあった。授業を教えながらな」

  マル(目を見開いて)

  「え、それってつまり……先生をしながら、保育士みたいなことも?」

  グランジャス(うなずきながら赤子をあやす)

  「ああ。昼は学校で授業、夕方は家庭訪問。夜は疲れた親が寝られるように、泣き止まない赤ん坊を抱いて歩いたもんさ。今思えば……ようやったな俺」

  ホルスター(少し驚きながらも優しく微笑む)

  「グランジャスさん……そんな一面があったなんて。子ども達、きっとあなたのこと大好きだったでしょうね」

  グランジャス(照れ隠しに鼻を鳴らして)

  「うるせぇ、そんな柄じゃねぇよ……でも、たまに“おじちゃん”って呼ばれてな、くすぐったかったな」

  シーフェ(目を細めながら)

  「なるほど……どうりで抱き方が慣れてるわけね。医師としても安心して任せられるわ、グランジャスさん」

  ルプス(感心したように)

  「情熱と責任感の塊だな。……見直したよ」

  マル(ふっと笑って)

  「やはり“男爵”の名は伊達じゃない。子どもを守るってのは、政治よりも何倍も価値あることですぜ」

  グランジャス(少しだけ寂しげな目で赤子を見つめながら)

  「……まぁ、あの頃の子らは、今頃どうしてるか分からんがな。でも、生きてりゃそれでいい。元気で、笑ってりゃな」

  カリン ご主人様は本当にお人好しなんだから そこがいい所たんだけど

  メルディス あんな所初めて見ました

  シルクー かっこいい

  カラスト さすがだね

  グランジャス(苦笑しながらも、少し照れて)

  「やめろやめろ、褒められるの慣れてねぇんだよ。」

  カリン(頬を膨らませて)

  「でも本当のことでしょ? 子供にも動物にも優しいし、村人にも信頼されてるし……それにちゃんと手も動くのよ?」

  メルディス(興味津々な目で)

  「私は剣の訓練の時しか知らなかったから……おむつ替えてあやしてるダーリンなんて、なんだか別人みたいで」

  シルクー(ふわっと頬を染めながら)

  「うん……なんか、かっこいい……」

  カラスト(口笛を吹くように)

  「これが“ギャップ萌え”ってやつじゃないかな。ギャップってやつはズルいね〜。惚れ直す人、続出じゃない?」

  グランジャス(バツが悪そうに後ろ頭をかく)

  「ちげぇよ、そんな立派なもんじゃねぇ。ただ、見捨てられなかっただけだ」

  ルプス(腕を組んで)

  「その“ただ”が、なかなかできることじゃない」

  シーフェ(赤ちゃんの額を拭きながら微笑んで)

  「……本当に。こういう人が、命を繋ぐんだと思う」

  マル(わざと大げさに)

  「さぁて、ご主人様がモテモテで嫉妬の嵐が巻き起こる前に、畑仕事でも手伝いにいきますかねぇ〜」

  ホルスター(くすっと笑いながら)

  「そうですね。私も牛舎の掃除がまだ残ってますから」

  グランジャス(赤子を抱いたまま、ふと空を見上げて)

  「……平和ってのは、こういう日常の中にあるんだな。だから、守らなきゃいけねぇ」

  メルディス ダーリンはこの後どうするの?

  グランジャス 少し近くの丘に行く

  カリン ご主人様、一人で大丈夫?

  グランジャス(赤子を優しく村の母親に渡しながら、柔らかく微笑んで)

  「心配すんな、ちょっと空気を吸ってくるだけさ。ラート村の風も、たまに恋しくなるんだよ」

  メルディス(心なしか寂しそうに)

  「……じゃあ、帰ってくるときは声かけてね。私、ダーリンが一人で抱え込むの嫌だから」

  カリン(ふくれ顔で頬をつつく)

  「ほんとに、たまには甘えてくれてもいいのに。私たち、戦友なんだから」

  シルクー(おそるおそる手を挙げて)

  「もし怖い夢とか見たら、呼んでくださいね……あ、えっと、私は夢を追い払うおまじない得意なので……」

  グランジャス(軽く頷いてから、口角を上げて)

  「ありがとな。じゃ、行ってくる」

  ⸻

  グランジャスは少し歩きながら、夕暮れに染まるラート村の風景を背に、丘の上へ向かいます。かつて修行を重ねた場所。風に揺れる草、遠くの鐘の音、小さく見える村の灯り。

  彼の胸中には、今の“平和”と、これから向かう“戦い”が交錯していました。

  アルベルト 俺も行ってくる

  ティミス わかったわ

  リセリナ 珍しいわね

  ティミス(穏やかな表情で手を振る)

  「ふふ、たまには男同士の語らいもいいんじゃない?ゆっくりしてきなさい」

  リセリナ(艶やかに微笑みながら、少しだけからかうように)

  「グランジャスさんに甘えに行くの?めずらしいこともあるものね」

  アルベルト(軽く手を振り返しながら)

  「……たまにはな。今は、ちゃんと話したいと思っただけだ」

  ⸻

  アルベルトは静かに足音を立てず、グランジャスの背を追いかけていきます。夕暮れの光が背中を照らし、二人の影が草原に伸びていく。

  丘の所にある岩に腰掛けている

  アルベルト「ここに居たかおっさん」

  グランジャス「アルベルトか」

  グランジャス(草の上に腰を下ろし、ため息をつく)

  「……色欲の間で言われたこと、ずっと引っかかっててな。

  “期待してるんでしょう?応えてあげなさいよ”って。

  まるで心を見透かされたようだった。あいつらのこと、分かってるつもりでいて、

  でも……踏み出せないんだよな」

  アルベルト(隣に座り、夕焼けを見ながら)

  「俺もだ。ティミスのこと、ずっと隣にいてくれてて、強いのに、

  たまに寂しそうな目するんだ。言いたいのに、口が重くなる。

  “仲間だから”って、言い訳してる気がしてさ」

  グランジャス(少し笑って)

  「俺も、メルディスにもカリンにも、期待されてるのはわかってるんだ。

  あの時の言葉が耳から離れなくてよ……“あなたの目は、誰かを幸せにする目だ”ってな」

  アルベルト(目を伏せて)

  「でも怖いよな。期待に応えようとして、もし傷つけたらって。

  俺は、誰かの希望でいたいけど……誰かの涙の原因にはなりたくない」

  グランジャス(風に髪をなびかせて)

  「……だからこそ、思うんだ。俺たちみたいな奴は、“選ばなきゃいけない時”が来る。

  その時に、逃げない強さが欲しい。剣を振るだけが強さじゃないよな」

  アルベルト(拳を握り)

  「ああ……剣も心も、真っ直ぐに振れなきゃ意味がない」

  ——風が一陣、二人の髪と想いを揺らしていく。

  グランジャス(立ち上がり、アルベルトの背を軽く叩く)

  「よし、腹決めようぜ。俺たち“まだまだ”なんだからな。

  今は言えなくても、言おうと思ってる。それで十分だ」

  アルベルト(微笑みながら)

  「おう……まずは一歩ずつだな、相棒」

  アルベルト 俺ら愛に気づかない馬鹿野郎だったな今度はしっかり答えないとな

  グランジャス(うなずきながら、少し笑う)

  「ああ。気づいてなかったわけじゃないんだろうけどな。怖かっただけだ。

  愛ってのは、剣よりもずっと重い時がある。だけど……逃げてたら男がすたるよな」

  アルベルト(真っ直ぐ前を見据えて)

  「うん。向き合わないと。

  ティミスは、何も言わなくても待ってくれてた……それに甘えてたのは俺だ」

  グランジャス

  「俺もだ。メルディスもカリンも、ちゃんと見てくれてたのにな……

  “あの人は人のために戦う”って、そう言ってくれた。でも俺が肝心なところで

  黙ってたら、それは不誠実ってやつだ」

  アルベルト(少し笑って)

  「俺ら、馬鹿だけど、次は間違えたくないな。ちゃんと伝える。

  “お前が好きだ”“一緒にいてほしい”って、言葉でな」

  グランジャス

  「おう……戦場で命賭けてるくせに、

  恋のひと言でビビるなんて情けねえけど、それが人間ってもんだろ」

  ——二人は立ち上がり、夕日に背を押されるように歩き出す。

  アルベルト

  「じゃあ俺、明日こそ言ってくるよ。腹くくってさ」

  グランジャス

  「俺も言う。“お前らが好きだ”ってな。選ぶ覚悟もある。

  ――もう、愛に気づかないふりは終わりだ」

  二人は何事もなかったかのように戻ってくる

  そして就寝

  翌日の昼下がり

  アルベルト

  「ティミス、ちょっとだけ……二人で、話そう」

  ティミス(ドキッとしつつも、顔を赤らめてうなずく)

  「わ、わかったわ……うん」

  ——二人は少し離れた丘の木陰へ。セミの鳴き声が、夏の夕暮れを彩っていた。

  しばらく沈黙が流れたあと、アルベルトは意を決したように口を開く。

  アルベルト

  「今までさ、ずっと……お前の想いには気づいてた。

  だけど、どうしても“応えたい”って言葉がうまく言えなかった。

  戦いだの、使命だの、自分を言い訳にして……本当は、怖かっただけだ」

  ティミス(少し目を見開いて、でも黙って聞いている)

  アルベルト

  「けど今ははっきり言える。ティミス、お前のことが好きだ。

  戦いの中でも、村の中でも……どこにいても、お前が隣にいてくれたらって思う」

  ——ティミスは驚いたように口元を押さえ、次第に瞳が潤んでくる。

  ティミス

  「……ほんとに? 本当にそう思ってくれてたの?」

  アルベルト(うなずいて、笑う)

  「お前はずっと俺のそばにいてくれた。それが、どれだけ支えになってたか……

  だから、これからも俺の隣にいてくれ。ティミス」

  ——ティミスは感極まりながらも、そっとアルベルトの胸に飛び込む。

  ティミス

  「うん……うん、私でいいなら、ずっと一緒にいる!」

  ——風が二人の髪を撫で、夏の空がゆっくりと夜に変わっていった。

  ——ラート村の広場の片隅。空気はすっかり夜の色に染まり、虫の声が静かに響く中――

  マル(楽器ケースを背負って歩いていた)

  「さてと、オイラは芸の練習でもするかな。今日のうちに仕上げておきたいし――って、うぉっ!?」

  ――背後からヌルッと伸びるリセリナの触手が、まるで意思を持つかのようにマルの胴と腕に絡みつく。

  リセリナ(にっこり微笑みながら)

  「たまには静かに語り合いましょ。逃げないで、マル」

  マル(目を丸くして)

  「ちょ、ちょっと待ってリセリナさん!? い、今オイラ手がふさがってるんだけど!? 楽器が潰れ――おわっ、近い近い!」

  ――触手は柔らかく、しかししっかりとマルの動きを止めるように巻きついており、マルはじたばたするが逃げられない。

  リセリナ(首を傾げながら)

  「ねぇ、あなたって本当は何を考えてるの? いつも冗談ばっかりで本音が見えない。私は……少し寂しいのよ」

  マル(一瞬動きを止め、真顔になる)

  「……そんな風に思わせてたのか。ごめん。

  オイラなりに皆を笑わせたくて、深く突っ込まれないようにしてたけど……

  リセリナさんにまで距離を取ってたつもりは、なかったよ」

  リセリナ(触手を少しゆるめながら)

  「ふふ、それだけ聞ければ十分よ。今日はちょっとだけ、あなたを独り占めしたかったの」

  マル(ちょっと照れたように笑いながら)

  「お、おう……じゃあ今夜だけは、特別サービスってことで」

  ——二人はそのまま、満天の星の下で静かに会話を続けていく。

  触手はやがてそっと解かれ、代わりにリセリナの肩がそっとマルの腕に寄り添っていた。

  ——場所はラート村のはずれ、色とりどりの花が咲き誇る静かな花壇。

  その中心に、リセリナの魔力で生み出された透明な触手の檻が浮かび上がる。

  檻の中には……ちゃっかりマルが座っていた。

  ⸻

  マル(頭をかきながら)

  「いやー、ほんとに入れられちゃうとは思わなかったな。

  ここ、リセリナさんのお腹の……中? 的な?」

  リセリナ(楽しそうに微笑みながら)

  「正確には私の腹部触手で作った『小さな楽園』よ。ここなら誰にも邪魔されないでしょ?」

  マル(周囲を見回しながら)

  「すっげぇ……花が夜でも咲いてる。匂いも……なんだか落ち着く。

  まるで“心の内側”って感じがするな」

  リセリナ(檻の外から、檻に手を添えながら)

  「マル、あなたって本当に賢いわ。おちゃらけてるようで、ちゃんと周りを見てるし、空気も読む。

  ……でも、自分のことになると、なんだか遠慮するよね?」

  マル(少し黙ってから、笑う)

  「……鋭いなぁ。

  たぶんオイラ、誰かに必要とされるのは嬉しいけど……

  “深く入り込みすぎる”のが怖いんだよ。失うのが、怖いからさ」

  リセリナ(目を伏せて、優しく)

  「それでも、私はあなたに近づきたいの。怖がられても、閉じ込めても、こうやって“あなたの本音”が聞けるなら」

  マル(微笑みながら立ち上がって、檻の中で手を伸ばす)

  「……だったらさ。オイラがここから出たときは、“次の一歩”を踏み出したって思ってくれる?」

  リセリナ(小さく頷き、触手の檻をほどく)

  「ええ。マル、いつでも出ていいのよ。檻なんて、本当は最初からなかったのかもしれないわ」

  ――触手の檻がゆっくりと解け、マルが外に出る。

  二人の間に吹いた夜風は、ほんのりと甘い花の香りを乗せていた。

  リセリナ(にやりと微笑んで)

  「本当なら、捕食用の袋に入れてもよかったのよ……あったかくて柔らかい、

  でもちょっと酸性が強い“おなかの中”にね」

  マル(一瞬ビクッとするも、すぐに肩をすくめて笑う)

  「うへぇ……そりゃまた、スリル満点な愛情表現だな……

  でもまあ、あんたが本気でそうしたら、オイラもう逃げられねぇな」

  リセリナ(少し顔を赤らめながらも、小悪魔的に)

  「逃げさせないためにやるのよ?

  安心して、消化はしない。ずっとあったかく包んであげるだけ」

  マル(少し視線をそらして)

  「……あんたさ、ほんとに時々ドキッとさせるよな。

  その優しさも怖さも、ぜんぶ“好き”って気持ちでくるから……タチ悪いぜ」

  リセリナ(ゆっくりマルに近づいて、指先で胸元を軽く突く)

  「じゃあ、覚悟して。私はあなたを、飲み込まなくても“喰らう”つもりでいるわ。

  あなたの心も、想いも、言葉も——全部ね」

  マル(小さくため息をついて)

  「ったく……ほんと、参っちまうよ。

  でもまぁ……悪くないかもな。そういうのも」

  シシオ(包丁で野菜を切りながら、ちらりと横目でホルスターを見る)

  「……昔は、こんなふうに並んで料理することなんて、想像もしてなかったな」

  ホルスター(手際よくフライパンを振りながら微笑む)

  「ふふ、あなたはずっと外で戦ってばかりだったものね。

  でも、私には分かってたわよ。あなた、意外と家庭的だって」

  シシオ(少し照れたように口元をゆがめる)

  「……家庭的って柄じゃないさ。けど、こうやって隣に立ってると……落ち着く」

  ホルスター(ふと手を止めて、柔らかく微笑む)

  「私もよ。孤児院で子どもたちにご飯を作ってたときと似てるけど……

  あなたと一緒に作るのは、全然違うの。言葉にしにくいけど、あったかいのよね」

  シシオ(火を弱め、隣の鍋の味見をする)

  「悪くない味だ。けど……お前が隣にいると、何作っても旨くなる気がするな」

  ホルスター(少し赤くなりながら)

  「……もう、うまいこと言って。ずるいんだから」

  (手を拭いて、彼のエプロンを整えてあげる)

  シシオ(ふっと笑って)

  「お前と過ごせる日常が……一番ありがたい。

  戦うだけが俺の人生じゃないって、気づかせてくれたのはお前だよ」

  ホルスター(小さくうなずいて)

  「じゃあ、これからも支え合っていきましょ。戦場じゃなくても、私たちは最強よ」

  ——キッチンには、スパイスの香りと静かな幸福の空気が漂う。

  ここで言うのはちと違うが 好きだ

  ホルスター(手を止めて、一瞬硬直する)

  「……えっ?」

  シシオ(目をそらさずにまっすぐ言葉を重ねる)

  「こういう場所で言うのは場違いかもしれんが……

  俺は、お前が好きだ。今までも、これからも、ずっと」

  ホルスター(顔がみるみる赤くなり、手元のフライパンの音も聞こえなくなる)

  「……う、うそ、急に何よ……もう……」

  (俯いて唇をかみしめながらも、肩が小さく震えている)

  ホルスター(ぽつりと)

  「……私も。あなたのこと、ずっと前から」

  シシオ(やわらかく笑いながら)

  「知ってた。でも、言葉にしないと伝わらないこともあるからな。今、伝えたかった」

  ホルスター(目に涙をためながら微笑み)

  「……料理、焦げちゃうわよ。ちゃんと見てて」

  シシオ(笑いながら)

  「ああ。……これからも、隣でな」

  ——

  周囲にはまだ誰も気づいていない。

  だが、二人の距離は確かに、今、深く結ばれた。

  夕暮れのラート村

  赤く染まった空の下、小さな公園の片隅で風に揺れるブランコ。

  そこには、カラストとシルクーの二人の姿が──。

  ⸻

  カラスト(ゆっくりとブランコを漕ぎながら)

  「……静かだね、シルクーちゃん」

  シルクー(小さく頷いて)

  「うん……。なんだか、こういう時間って、不思議な感じがする」

  カラスト(笑って)

  「うん。冒険してると、怖いこととか、戦わなきゃいけないことばかりで……

  こうやってただ座ってるだけでも、すごく大事な時間に思えるよ」

  シルクー(足をそっと地面につけながら)

  「……わたしね、こういうの、初めてなの。誰かとこうして並んで、空を見たり……風に揺られたり」

  カラスト(少し顔を赤くして)

  「俺も……。なんか、シルクーちゃんといると、心があったかくなる。あの……えっと……」

  (言いかけて、照れて目をそらす)

  シルクー(ほわんとした笑顔で)

  「えへへ……わたしも。カラストといると、安心するの。

  ……怖くなくなる。誰にも言えなかったことも、言えそうな気がする」

  カラスト(勇気を振り絞って)

  「……ずっと一緒にいたいって、思ってる。……迷惑じゃないなら」

  シルクー(ぱっと顔を赤くして、でも強く頷く)

  「ううん、うれしい。わたしも、同じ気持ち……!」

  (ふわりと風が吹き、シルクーの髪の先とカラストのフードが揺れる)

  ブランコがきぃこ、きぃこと、やさしく二人の間を繋いでいた。

  この想いがいつか、恋という言葉になるその日まで──

  淡く、純粋なふたりの気持ちは、夕空にそっと溶けていった。

  ラート村の夜。

  焚き火を囲んだ簡素な宴の席。

  マリーナとバイラスは木のカップで酒を酌み交わしている。

  ⸻

  マリーナ(酒を一口飲み、ジト目でバイラスを見つめ)

  「……で? なんであんた、あんな女所長に惚れたわけ?」

  バイラス(苦笑しながら、杯を傾ける)

  「昔の話だ……まだ俺が若くて、信念より力に酔っていた頃さ。

  彼女の目は、まっすぐで……迷いがなかった。自分が信じる“秩序”のためなら、どこまでも冷酷になれる。それが……当時の俺には、眩しかったんだ」

  マリーナ(少し鼻で笑って)

  「つまり、“強い女”が好きだったわけね? わかるけどさ……

  あの女、冷たすぎて血が通ってるのか疑うわよ」

  バイラス(苦々しく)

  「……その通りだ。

  気づいた時には、俺の“剣”は彼女の命令のためにしか振るえなくなっていた。

  愛と忠誠を履き違えてたのさ」

  マリーナ(酒をくいっと飲み干して)

  「ふーん……あんた、案外ロマンチストね」

  バイラス(微笑んで)

  「マリーナ殿こそ、どうして俺とこうして飲んでくれてるんだ?

  ……気まぐれか?」

  マリーナ(目を逸らして、少しだけ頬を赤らめ)

  「……バカ。誰かが見張ってないとまた変な女に引っかかるでしょ。

  それに、今のあんたは昔よりずっといい顔してるから……」

  バイラス(驚きながらも柔らかな笑み)

  「……光栄だ」

  ⸻

  焚き火の炎が、ふたりの影を揺らす。

  一杯、また一杯。

  酒と、少しの素直な言葉が、ふたりの距離をほんの少し近づけていた──。

  焚き火の炎がぱちぱちと音を立て、星空の下で夜が静かに深まっていく。

  ⸻

  マリーナ(指でカップの縁をなぞりながら、ぽつり)

  「……あんたが変わったの、分かるよ。

  あの獄守城で剣を交えたとき、もう“命令に従うだけの剣”じゃなかった。

  あたしには、分かるの」

  バイラス(視線を落とし、炎を見つめながら)

  「……それでも、まだ過去の罪は消えない。

  ローレスに与したこと、マユリを止められなかったこと……」

  マリーナ(首を横に振る)

  「消そうなんて思わなくていい。

  でも、ちゃんと背負って前に進むなら、それは“償い”になる。

  ……あたしたち、誰だってそんなもん背負ってるんだよ」

  バイラス(驚いたようにマリーナを見る)

  「マリーナ殿も、か?」

  マリーナ(笑って、酒を注ぎ足す)

  「……あたしは、昔“人魚姫”って呼ばれてたの。

  歌で人を魅了して、戦場で踊って……気に入らない命令に逆らったら、故郷を追われた。

  あたしも今、やっと“自分の意思”で泳いでるところ」

  バイラス(静かにうなずき)

  「……なら、同じだな」

  マリーナ(杯を掲げる)

  「じゃあ、罪人ふたりの“門出”に、乾杯ってとこかな?」

  バイラス(微笑み、杯をぶつける)

  「──乾杯」

  ⸻

  カシンと木のカップが鳴り、ふたりは同時に酒を口に含む。

  そのあと、少し沈黙が続いた。

  やがてマリーナがそっとつぶやく。

  ⸻

  マリーナ

  「ねえ、もし……これからも一緒に旅をして、どこかでまた“戦い”じゃない時間を過ごせたら──

  あたしの歌、もう一度聞いてみたい?」

  バイラス(まっすぐ見つめて)

  「……ああ。心から、聞きたい」

  ⸻

  その返事に、マリーナはほんの少しだけ、目を細めて笑った。

  その笑顔は、戦場では見せなかった、どこか柔らかく、あたたかいものだった。

  焚き火の火が少し揺れた。

  星明かりと炎の光の間で、マリーナの瞳は真っすぐにバイラスを映していた。

  ⸻

  マリーナ(静かに、しかし迷いなく)

  「……あんたが、自分の信念を貫くって言うなら、

  私も、それを信じてついていく。

  そして──

  ……私は、そんなあんたを想うわ」

  ⸻

  一瞬、風が吹いた。

  それでも、ふたりの間に漂う言葉の熱だけは、消えなかった。

  ⸻

  バイラス(小さく息をのんで、そして目を閉じる)

  「……俺のような者に、そんな言葉をくれるとは思わなかった。

  剣と炎の中でしか、生きてこなかった俺に……」

  マリーナ(口元だけで微笑み)

  「なら、これからは海と歌の中でも生きなさい。

  そういう世界を見せてあげる。──私が、ね」

  ⸻

  バイラスは黙って立ち上がり、ゆっくりとマリーナの隣に座った。

  焚き火の前で、肩がそっと触れ合う。

  —

  バイラス(ぽつりと)

  「……信念を貫くのは、恐ろしいものだな。

  だが今なら、あんたとなら──恐れずに行けそうだ」

  マリーナ(頷きながら)

  「なら約束よ。

  あたしも、どんなときでも歌うわ。あんたの背に風を送るために」

  ⸻

  ふたりの間に、何の装飾もいらない絆が静かに結ばれた。

  それは誓いの指輪よりも、ずっと力強く、確かなものだった。

  夕暮れの薬草小屋。

  外では風が涼しく、虫の声がかすかに響く。

  中ではシーフェとルプスが薬草を粉砕し、瓶を並べながら静かに作業を続けていた。

  —

  シーフェ(ミントの葉を刻みながら)

  「……やっぱりこの辺の薬草は質がいいわね。湿気が少ないからかしら」

  ルプス(粉末をすり潰しつつ頷く)

  「保存もしやすい。

  それに、村の子たちの体調もだいたい把握できた。次の月までには栄養剤も仕上がる」

  —

  しばらく無言で手を動かすふたり。

  それは医師と助手というより、戦友のような、呼吸の合った関係。

  —

  シーフェ(ふと手を止めて)

  「ねぇルプス。

  私たち、こうやって薬を調合して……

  どこまで人を救えるのかなって、時々考えるのよ」

  —

  ルプス(目を細めて)

  「救いきれるわけがない。けど──それでも、やるだろ?」

  シーフェ(小さく笑って)

  「……そうね。そう言うと思ったわ」

  —

  ルプスは瓶にラベルを貼りながら、ちらりとシーフェを見る。

  —

  ルプス

  「お前も変わったな、少しずつ。

  前よりも、誰かを思って動いてる。……感情でさ」

  シーフェ(少し照れたように頬を掻きながら)

  「それ、医師としては失格かもしれないけど……

  今の私は、きっとこっちの方が好き」

  —

  一瞬だけ沈黙。

  夜風がそっと吹き込み、干した薬草が揺れる。

  —

  ルプス(静かに)

  「俺も……今のお前の方が、好きだ」

  —

  シーフェは手を止めて、ルプスの横顔を見る。

  薬の香りと、静かな鼓動の間に、言葉のいらない想いが流れていた。

  夕暮れどきの調合小屋。

  薬草の香りが静かに満ち、窓の外では子どもたちの笑い声がかすかに響く。

  作業の手を止めて、シーフェがふと呟くように言った。

  ⸻

  シーフェ

  「ねぇ、ルプス。あんたさ……病院か診療所、開いたら?」

  ⸻

  ルプス(少し驚いたように)

  「……俺が?」

  ⸻

  シーフェ

  「ほら、ここには医者も設備もないし、私たちが診てるけど……

  ずっと巡ってるわけにもいかないでしょ?

  あんた、腕も知識もあるし、信頼されてるわよ。村の子たち、あんたのとこに真っ先に来るもの」

  ⸻

  ルプス(薬瓶の蓋を閉めながら小さく息をつき)

  「診療所か……考えたことはなかったわけじゃないけどな。

  落ち着いて拠点構えるって、どうにも性に合わねぇと思ってた」

  ⸻

  シーフェ(くすっと笑いながら)

  「でも最近、よく村の空見てるじゃない。

  あれって……“根を張る”準備なんじゃないの?」

  ⸻

  ルプスは少し照れくさそうに目をそらし、黙って瓶を棚に戻す。

  やがて、ぽつりと答える。

  ⸻

  ルプス

  「……ああ。誰かが背負ってやらなきゃならねぇ場所ってのが、

  ようやく見えてきた気がするんだ。

  俺がやるか。ここで、診療所を」

  ⸻

  シーフェ(頷きながら、そっと微笑んで)

  「よし決まり。私も手伝うわよ。

  だって私は──“助手”だからね。名実ともに」

  ⸻

  ルプス(口元を緩めて)

  「頼りにしてる、“先生”」

  ⸻

  静かに始まろうとしていた、小さな村の診療所の物語。

  それは、彼らふたりのこれからの物語でもあった。

  夕焼けの中、ラート村の広場。

  草の上に敷かれたゴザの上で、グランジャスは背筋を伸ばしながらストレッチをしていた。

  近くでは子どもたちが笑いながら走り回り、風に乗って土の匂いが運ばれてくる。

  ⸻

  グランジャス(腕を大きく回しながら)

  「そういや──近々、道の横に“鉄の箱”が人を乗せて走るらしいぞ。

  電車? 列車? よくわかんねぇが……なんかそういうのが来るって、村の連中が言ってたな」

  ⸻

  近くで腹筋をしていたマルが顔を上げて、

  マル

  「そりゃまた時代の最先端ですな。

  ……って、電車がこの辺り通るのか? まさかラート村にも駅が?」

  ⸻

  グランジャス(足を伸ばして座り、ふぅと息をついて)

  「ああ、なんでも東のフォーゼリア方面から引いてきた路線らしい。

  元々は軍用物資を運ぶためだったとかで……今は民間用に切り替える計画らしいな」

  ⸻

  ホルスター(腰に手を当ててストレッチしながら)

  「それが本当なら……村から都市部まで行くのが一気に楽になるわね。

  物資の流通も改善されるし、観光や医療の応援も期待できるわ」

  ⸻

  まあ、俺たちみたいな冒険屋が駅前にたむろするような時代が来るかもしれんぞ?

  “ラート発、王都行き、次の停車駅は夢と希望”ってな」

  ⸻

  ルプス(肩を回しながらぼそっと)

  「線路に魔物が住み着かなきゃいいけどな……」

  ⸻

  カリン(楽しそうに)

  「ねぇねぇ、ご主人様、電車の先頭に立って“出発進行!”って言ってみて!」

  ⸻

  グランジャス(立ち上がり、胸を張って)

  「ラート村駅、勇者号ただいま出発──!」

  (みんながくすくすと笑う)

  ⸻

  のどかな村に、静かに近づいてくる新しい時代の足音。

  鉄の箱はまだ見えないが、それぞれの心には、もう走り出していた。

  ラート村の広場。涼しい風が吹く午後、みんなが木陰や縁台でくつろいでいるなか、

  グランジャスはゆっくりと立ち上がり、ストレッチの流れで一歩前に出る。

  カリンとメルディスが並んで座って談笑していたその前で、彼は静かに、けれど力強く言葉を放つ。

  ⸻

  グランジャス

  「……カリン。メルディス。

  お前らにはずっと世話になりっぱなしで、守られてばっかだったけどよ。

  今はもう――はっきり言える。

  ……好きだよ。どっちもな。本気で、だ」

  ⸻

  場が一瞬、静まり返る。

  焚き火のぱちぱちという音と、風に揺れる木の葉の音だけが響く。

  それを見ていた仲間たちの表情に、次第に優しい笑みや驚きが浮かびはじめる。

  ⸻

  カリン(頬を染めながらも照れ笑い)

  「ふふっ……やっと言ってくれた。

  ご主人様はやっぱり……不器用なとこが、可愛いんだから」

  ⸻

  メルディス(顔を真っ赤にして、小さく拳を握る)

  「ずるい……こういうの、反則だよ……。でも……うれしい……っ!」

  ⸻

  マル(少し離れたところから見ていて)

  「くぅ~、青春してますなあ! 甘酸っぱい……!」

  ⸻

  ティミス(アルベルトの腕に寄りかかりながら)

  「ふふっ……グランジャスって、やっぱり素敵な人ね」

  ⸻

  シーフェ(ルプスに肘でつつきながら)

  「ほら、ああいう時はちゃんと気持ち伝えるの。わかった?」

  ⸻

  ルプス(肩をすくめて)

  「言いたい時に言うさ……その時が来たらな」

  ⸻

  グランジャスは二人に向き直り、両手を差し出す。

  カリンとメルディスがその手をそっと取る。

  なんだかんだ男女ペアっていう感じになったな

  グランジャスのつぶやきに、近くにいたアルベルトが「おっさんらしいな」と笑う。周囲には確かに、自然と寄り添うような関係になった仲間たちが――

  ⸻

  アルベルト(ティミスの肩に腕を回しながら)

  「俺とティミス。グランジャスはカリンとメルディス。シシオはホルスター……」

  ティミス(少し赤面して)

  「や、やめなさいよ、言わなくていいの!」

  マル(リセリナの触手からまだ抜け出せず)

  「おいらとリセリナもだし、カラストとシルクーも……」

  カラスト(ブランコに揺られながら)

  「ぼ、僕たちは……まだ“そういうの”じゃないけど……ね、シルクー?」

  シルクー(うつむいてもじもじ)

  「う、うん……でも……嫌じゃないよ……」

  ルプス(ため息まじりに)

  「ふっ。じゃあ俺とシーフェで〆か」

  シーフェ(すました顔で)

  「当然でしょ?あんたみたいな男、私くらいしか面倒見られないわよ」

  ⸻

  みんながそれぞれ、微妙に照れたり笑ったりしながらも、どこか安心し合う雰囲気。

  風が吹き抜け、ラート村の空に白い雲がゆったりと流れていく。

  このひとときが、旅の中で得た“ささやかな幸せ”であることを、誰もが心のどこかで感じていた。

  ⸻

  グランジャス(ぽつりと)

  「……なんだかんだで、ちゃんと“物語”してんだな、俺ら」

  グランジャス「たしか線路っていうのが明日にはこの村にもできるらしい。ほら、あそこの入口前の横の看板あたりな」

  アルベルト(目を輝かせて)

  「おおっ、あそこか!なるほど、あれが“鉄道の始まり”ってやつか……乗り物ってだけでワクワクするぜ」

  ⸻

  村の入口付近には、仮設の足場と木製の柵が設けられ、そこに鉄のレールが何本も積まれていた。看板には“フォーゼリア横断鉄道・ラート村駅予定地”と書かれている。

  ⸻

  ティミス(地図を見ながら)

  「これが通れば、フォーゼリア中央まで今の三分の一の時間で行けるわ。交易や物流も格段に楽になるはずよ」

  マリーナ(手を腰に当てて)

  「……つまり、村も人が増えて騒がしくなるってことね。治安、保てるかしら?」

  シシオ(眉をひそめながら)

  「ただの通過点で終わらせないようにしないとな。道の整備も必要だろう」

  ルプス「それに、外から病気が入り込む可能性もある。開通前に対策は必要だな」

  シーフェ「村の診療所も拡張しておくべきね。薬品やベッドの数も増やすわよ」

  ⸻

  グランジャス「……まあ、俺は単純に“旅の道”が増えるのが嬉しいけどな。知らない景色に会えるってのは、やっぱり胸が躍る」

  マル「おいらは、芸の巡業範囲が広がるってわけですな~!」

  カリン(そっとグランジャスの手を握り)

  「じゃあ、その時は一緒に行ってくれる?」

  グランジャス(笑って頷く)

  「ああ。俺の物語はまだまだ続くからな」

  ⸻

  アルベルト「何か“良いスポット”やお土産品があればいいんだけどなあ。観光とか名物とか……せっかく鉄道が通るんだし」

  アルベルトの母(手を止めて、くすっと笑い)

  「それこそ、“ここにしかないもの”でいいんじゃない?――ハートアップルの森とかさ」

  ⸻

  村の外れにある小高い丘。そこにだけ群生している、真っ赤でハート型をした果実――ハートアップル。

  見た目が可愛らしいだけでなく、ほんのり甘酸っぱくてみずみずしく、村では“祝いの果実”として大事にされてきた。

  ⸻

  アルベルト「あれか……確か“告白の木”って言われてた丘に生えてるやつだろ。小さい頃、あそこに登るの怖かったな」

  カラスト(小声で)「……シルクーと一緒に行ってみようかな」

  マリーナ「あんなのが外じゃ高級果実扱いになるんだから、世の中って不思議よね」

  ティミス「私、初めて食べた時涙が出そうになったわ。……美味しくて」

  グランジャス「村にしかないもの、か……人も景色も味も、全部“物語の中の一章”みたいだな」

  ⸻

  アルベルトの母(ふふっと)

  「アルベルト、あんたが“どこかの誰か”じゃなくて、“ラート村のアルベルト”としてここにいること、それ自体が特別なのよ」

  アルベルト(少し照れて)

  「……なんだよそれ」

  ⸻

  鉄道がやってくる前夜。

  灯りがともる村の台所では、カレーのいい香りが漂い、静かに未来への準備が進んでいた。

  グランジャス「ドルセニアだけじゃなくて……ラート村にも屋敷構えようかな」

  アルベルト「お、おっさん……マジかよ!?」

  グランジャス(頷きながら腕を組む)

  「マジだ。あんだけいい場所で、いい人間がいて、未来もある。普段は集会場として使えるし、子供たちの遊び場にもなってくれればいい。

  それに……俺も、こっちで過ごす時間が欲しいんだよ」

  ⸻

  村人たちはどよめき、仲間たちも驚いた表情を浮かべる。

  カリン(ぱっと笑顔になり)「やったぁ!ご主人様と一緒の村に住めるなんて……最高です!」

  メルディス「……じゃあ私も、ラート村の図書室、整えておこうかな」

  マル「グランジャスさん、館の設計はオイラがやりましょうか? どうせなら秘密通路付きのがいいですな!」

  ルプス「子供の頃、集会場っていうのがどれだけ楽しいかって、忘れがちなんだよな。…良い判断だ」

  シーフェ「…診療所併設してもいい? 子供が増えたら、怪我とかも増えるし」

  ⸻

  グランジャス「もちろんだ。むしろこの村の未来を見据えるなら、みんなが拠点として使える家でなきゃな。

  俺は“帰ってこれる場所”を作りたいんだ。……誰かが困った時に立ち寄れるような、そんな家をな」

  ⸻

  アルベルト(笑って)

  「……おっさん、カッコつけすぎだろ。でも……なんか、いいな。

  俺たち、なんだかんだで“帰ってくる場所”って欲しかったのかもしれねぇな」

  ⸻

  こうして、ラート村にもう一つの「灯り」がともる計画が静かに始まった。

  鉄道の開通とともに、彼らの人生にもまた一つ、新しい扉が開かれていく――。

  グランジャス「……今日はペアで寝てみるか」

  仲間たちは一瞬静まり返り、次の瞬間――

  アルベルト「え、それは……緊張するんだけど……!」

  カリン(当然のように手を上げ)「私はいつもと同じね。ご主人様と寝るのはもう慣れてるもの」

  メルディス(小さく笑って)「私も。というか、どこで寝ても同じ布団に入り込んでくるでしょ、カリン?」

  ⸻

  ルプス(首をかしげ)「これは、寝るって……どういう意味で?」

  シーフェ「ちょっと、言い方が軽率だったかもね。休息を共にするってことよ、たぶん」

  ホルスター「……誰と寝ても、オムツ交換や夜泣き対応よりマシでしょうね」

  (孤児院のプロ)

  マル「あ~こりゃ夜更かし組と熟睡組に分かれますなぁ」

  リセリナ(触手でマルを引き寄せながら)「あなたはこっち。今夜は逃さないわよ?」

  シシオ(ホルスターに目を向けながら)「……寝る前にもう一杯、お茶でも飲もうか」

  シルクー(モジモジと)「カ、カラストと、いっしょ……でも、いいかな……?」

  カラスト(頬を染めつつ)「……うん。一緒に、星を見ながら寝よっか」

  ⸻

  グランジャス(全体を見渡しながら)

  「まぁ、無理強いはしないさ。気まずかったら一人で寝てもいいし、そういう夜もあっていいだろ?

  でもな……この旅で得た“絆”ってやつを、今夜は少しだけ形にしてみようぜ」

  ⸻

  星空の下、それぞれのペアがそっと寄り添い、眠りにつこうとしていた。

  仲間として、恋人として、同志として……静かな夜は、やさしく流れていく。

  グランジャス「今夜は飲みたいが……ルプスに言われたし我慢だな。お茶にするよ」

  彼は腰を下ろし、湯気の立つ湯飲みを手に取った。

  ⸻

  ルプス(遠くから軽く手を上げて)

  「その判断、正解だよおっさん。内臓脂肪とγ-GTPの数値、忘れてないだろ?」

  グランジャス「はいはい、医者の言うことは絶対な……ったく、俺も年取ったもんだ」

  (でも、どこか穏やかな顔)

  ⸻

  ホルスター(お茶を注ぎにやって来て)

  「お茶には血糖値を下げる効果もあるんですのよ。…ほら、先生」

  グランジャス「お、ありがとうよ。そういうところが、やっぱ先生だな」

  メルディス(笑いながら)

  「チャラにはならないけど……。でも今夜は、大人たちが穏やかに語る夜ってのも悪くないわね」

  ⸻

  グランジャスは湯飲みを軽く掲げて、仲間たちに向けて言う。

  「乾杯はしないが――今夜に、静かな祝福を」

  星空の下、柔らかな笑い声と湯気が夜風に溶けていく――

  旅の仲間たちが、それぞれの絆を確かめ合う、穏やかな夜の始まりだった。

  シーフェ「ホルスター、今度から健康管理はルプスを含めて三人でしましょう」

  ⸻

  ホルスター(少し驚いた顔で)

  「三人で? わたくしも入るんですの?」

  ⸻

  シーフェ「そう。ルプスは診断と治療が得意。私は栄養と衛生管理が得意。

  でもね――患者の心に寄り添うのは、あなたが一番向いてるのよ。孤児院の先生だったんでしょ?」

  ⸻

  ホルスター(照れたように笑いながら)

  「まぁ……子どもたちと話すのは得意ですけど、大人にはどうかしら」

  ⸻

  ルプス(ちょうど通りかかって)

  「その“話しやすさ”が医療には必要なんだよ、ホルスター。

  俺たちはつい症状に目が行きがちだけど、人の気持ちに耳を傾ける力は医者にも看護にも必要だ」

  ⸻

  シーフェ「うん、だから三人でやるの。村全体を健やかに保つために」

  ⸻

  ホルスター「……わかりましたわ。私も微力ながら、頑張らせていただきます」

  ⸻

  ルプス「よし、じゃあ明日から三人体制の診療所ってことで」

  ⸻

  三人は軽く笑い合いながら、夜空の下を歩いていく。

  村にとって心強い、新しい医療チームが今、静かに結成されたのだった。

  アルベルト「ん? あれは……メソングの王子か? 立派な顔つきになったな」

  レフィアス(馬から降り、堂々と歩み寄りながら一礼)

  「久しぶりです、アルベルト殿、グランジャス殿。

  今日は――鉄道建設の件でご相談があり参上いたしました」

  ⸻

  グランジャス「相談? 何か問題でもあったか?」

  ⸻

  レフィアス「はい。実は……予定していた鉄路のルートが一部、古代の遺構を通過する恐れがありまして。

  建設を進めるにあたり、貴殿ら“ロードストーリーズ”の判断を仰ぎたく参りました」

  ⸻

  アルベルト「遺構か……また厄介なもんが出てきたな。中に何か封印されてるとか?」

  ⸻

  レフィアス「それは不明ですが、かつての“赤の儀式場”と記された文献が……。

  開封すれば災いがあるとも、ただの迷信とも言われています」

  グランジャス「ああ。鉄道を通すにしても、災いの種は事前に潰しておきたいからな」

  ⸻

  レフィアス「感謝します。私も可能な限り同行します」

  グランジャス「古代遺跡って……もしかして、アンラーロストのことかもしれねぇ」

  (ポケットから丁寧に折りたたんだ古びた写真を取り出し、レフィアスに見せる)

  ⸻

  グランジャス「これが十数年前に撮られた、アンラーロスト地下区画の封印扉だ。

  魔術式が刻まれていてな、通常の手段じゃ開かない。

  お前らの掘ってる場所、もしここに近いなら……マズいぞ」

  ⸻

  レフィアス(写真を覗き込みながら目を見開く)

  「これは……!

  我々の探査地図に記されている異常な地熱反応地点と――位置がほぼ一致しています……!」

  ⸻

  アルベルト「アンラーロスト……確か“迷われし英知”って意味だったか?

  失われた帝国の実験場……って話を聞いたことある」

  ⸻

  ルプス(メモを見ながら)

  「記録では、禁呪・精神操作・変異体生成の痕跡があったらしい。

  まさに触れちゃいけない類だな」

  ⸻

  シーフェ「放っておくと地上に影響が出る可能性もあるわ。封印が緩んでるならなおさら」

  ⸻

  グランジャス「レフィアス、この鉄道計画、いったん中断しろ。

  俺たちが現地を調査して、**危険がないか見てから再開するんだ。命の問題だぞ」

  ⸻

  レフィアス(真剣な顔で頷く)

  「承知しました。調査の間、建設班には別の作業を割り振るようにいたします」

  シシオ「……もう10年前の話になるか。

  ローレスの軍勢が一度、アンラーロストの封印を解こうとしたことがあったんだ。

  だが――開かなかった。いや、開けなかった。

  しかも、無理やりこじ開けようとして――返り討ちに遭ったと聞いた」

  ⸻

  (皆が静まり返る中、シシオは少しだけ声を低くして続ける)

  ⸻

  シシオ「当時の話じゃ、部隊の半数が消息不明、残りは精神を病んだり、突然変異のような異変を起こしたとも言われてる。

  上層部は『失敗した探査』として葬ったが、現場にいた兵士の話は生々しかったよ。

  『封印の奥に、何かがまだ蠢いていた』ってな……」

  ⸻

  グランジャス「そいつは冗談には聞こえねぇな。……遺跡が“目を覚まそう”としてるのか?」

  ⸻

  アルベルト「今になって再び封印の付近が調査対象になるってことは、

  封印そのものが弱まってきてる可能性もあるな……」

  ⸻

  ルプス「理屈としてはあり得る。封印は“術者の生存”か“定期的な魔力供給”が条件だったはず。

  もし、それが途切れたなら……時間経過で緩む」

  ⸻

  ティミス「何かが起きようとしてる……そんな気がする」

  シシオ「……封印の解き方は、分かってる。けどな……」

  (唇を噛み、しばらく沈黙する)

  「怖いんだよ。

  あの時、ローレスの研究班が掴んでた資料を、俺も後から目を通した。

  手順はな……実に明確で簡潔だ。

  “三つの鍵”を揃え、

  “真名”を唱えるだけ”――それで開く。

  それだけ、なんだ」

  ⸻

  アルベルト「それだけで、そんなヤバい場所の封印が?」

  ルプス「……魔力構造的には、封印側が能動的に“鍵を待っている”状態ってことか。

  危険な構造だな。完全な封印じゃない。“対話型”の封印だ」

  ⸻

  グランジャス「つまり、“望んでる”ってことか……。

  “開けてくれ”って、内側から訴えてるような……そんな感じか」

  ⸻

  シーフェ「そもそも、その中に何が封じられてたのかは?」

  ⸻

  シシオ「そこがな――記録がまるっと消えてる。

  “何か”が封じられてるのは確かだが、それが“何なのか”だけは、

  故意に削除されてる。まるで……“知ること自体が危険”みたいにな」

  ⸻

  (沈黙)

  ⸻

  アルベルト「……怖くても、向き合わなきゃならん時が来たのかもな。

  過去の誰かが封じてくれたその“何か”に、今度は俺らが……答えを出す番だ」

  ⸻

  ティミス「……そうね。逃げるだけじゃ終わらない」

  アルベルト「俺が行こう。

  その封印とやら――確かに怖い。けど……俺は、逃げない。

  レフィアス、その遺跡の手前まで線路を繋げてくれ。

  俺たちの“道”を未来に繋げるために。」

  ⸻

  レフィアス(少し驚いた表情で頷く)

  「……了解しました。

  王家としても、この“アンラーロスト”の謎はいつか誰かが向き合わねばならないと思っていました。

  ですが、今のあなたたちなら――“開けても、抗える”と信じられる。

  列車は明後日中には、ルートを延ばせるでしょう。

  そこまでに準備を整えておいてください」

  ⸻

  グランジャス「おいおい……また厄介ごとかと思ったら、

  今度は本当に“歴史を動かす旅”になりそうだな」

  ⸻

  シシオ「封印を破る覚悟、覚えておけ。

  そこから先は、“物語”じゃなくて、“現実の地獄”かもしれんぞ」

  ⸻

  ティミス「でも、行くんでしょ? アルベルト」

  ⸻

  アルベルト「ああ。俺が、俺たちが――**どこまで通じるのか試したいんだ。

  あの日“剣を取った意味”をな」

  グランジャス(小声で)

  「……実はな。カリンやメルディスには言ってないが――俺は本当の“姓”を隠してる。

  いや、隠してるっていうより……背負う覚悟がまだなかったんだ。」

  ティミス(物陰から気配を察して)

  「……知ってたわよ? あんたが何か背負ってるのは。

  でも、私たちにとっては“グランジャス”は今のグランジャスなの。

  それで十分じゃない?」

  ⸻

  グランジャス(少し目を細めて微笑む)

  「……ありがとな。

  でも、そろそろ隠してばかりもいられない気がしてな。

  “未来に繋がるレール”の先で、いつかこの名を名乗る時が来るのかもしれん。

  その時は――一緒にいてくれると、嬉しい」

  グランジャス(静かに、しかし確かな声で)

  「……俺の名はグランジャス・ラーブス・ドルセニア。

  かつて――いや、ほんの数年前まで、

  ドルセニア王国第14代目の城主だった。

  だが俺はすぐにその座を後任に譲った。

  “王”や“城主”と呼ばれる器ではないと思ったからな。

  いや、思い込んでいたのかもしれん」

  ⸻

  (場が一瞬静まり返る)

  ⸻

  カリン(ポカンとしつつも、微笑む)

  「……ふふっ。だから何よ、ご主人様。

  あたしにとっては、いつものグランジャス様だもの」

  ⸻

  メルディス(目を丸くして)

  「……え、えぇ!? そ、そんなすごい人だったんですか!?

  でも……ダーリンが王様でも、やっぱりダーリンですからねっ!」

  ⸻

  アルベルト(肩をすくめて)

  「ったく、どんだけ隠し事あるんだよおっさん。

  でもまぁ……そんなこと言い出したら、俺も結構あるしな」

  ⸻

  ティミス(腕を組んで)

  「つまり、“王”としてじゃなく、“男”として、今ここにいるってことよね?

  ……ふふ、嫌いじゃないわ、そういうの」

  ⸻

  ルプス(医師らしい冷静さで)

  「つまり、長年の隠されたストレスや責務を背負いすぎたってわけだな。

  ……定期検診、増やすか?」

  ⸻

  マル(やや驚きながら)

  「オイラの予想以上にスケールでかい人だったんすね……。

  でも仲間は仲間っす!」

  ⸻

  グランジャス(少しだけ目を細め、みんなを見る)

  「ありがとう……みんながいたから今の俺がいる。

  王としての名よりも、“仲間としての名”を誇りたいんだ」

  グランジャス(静かに、しかし力強く)

  「……王になるよりも、

  俺は――カリンとメルディスと一緒にいる方がずっといい」

  (そう言って、そっと両腕を広げ――)

  (カリンとメルディスを、優しく、だがしっかりと抱き寄せる)

  ⸻

  カリン(一瞬驚いたような顔になるが、すぐに嬉しそうに微笑み)

  「……やっと言ってくれたわね、ご主人様。

  その言葉、ずっと待ってたのよ?」

  (彼の胸に顔を預け、静かに目を閉じる)

  ⸻

  メルディス(顔を赤らめながらも、そっと抱きつき返す)

  「……ダーリン、うれしい……。

  王様なんかよりも、あたしたちの王子様でいて……ずっと……」

  ⸻

  (周囲では仲間たちがそっと見守る。誰も野暮なツッコミはしない)

  アルベルト(小声でティミスに)

  「やるじゃねぇか、おっさん……」

  ティミス(うなずき)

  「ええ、いい告白だったわ。……素直になった男は強いものよ」

  ⸻

  (夕陽がラート村の空を照らす中、

  グランジャスの決意と、彼を支えるふたりの想いが、

  確かにひとつに重なった)

  ――運命なんて、選べばいい。自分の手で。

  そんな風に思える、温かな時間だった。

  レフィアス、明日には繋がるか?線路

  レフィアス(地図と設計図を確認しながら頷く)

  「ええ――予定通り、明日には線路がラート村まで繋がります。

  鉄道技師たちが徹夜で仕上げています。問題はありません」

  (顔を上げて、少し微笑みながら)

  「これで、ラート村と外の世界が本当に繋がる。

  物資の流通も、旅の自由も、何もかもが変わるでしょう」

  ⸻

  アルベルト

  「ついに、か……。なんだか村じゃなくて街になる日も近いかもな」

  ⸻

  グランジャス(腕を組みながら遠くを見る)

  「鉄の道が繋がるってのは、それだけで未来を呼び込む道が通るってことだ。

  ……けど、変わるものと変わらないもの。そのバランスを俺たちが守らなきゃな」

  ⸻

  マル

  「ほんと、王様みてぇなこと言いますなあ、グランジャス様」

  グランジャス(肩をすくめて笑い)

  「もう王様じゃねぇよ。ただのドルセニアの男爵のおっさんだ」

  その脚には真紅の封蝋が押された手紙が括り付けられている。カモメは見慣れた村の一角、屋敷の前に舞い降りた。

  ⸻

  カモメの配達員(肩に乗せたカモメを撫でながら)

  「配達っす!グランジャス様宛て!」

  グランジャス(お茶を片手に)

  「ん?俺に?……サンキュ」

  (封を切り、内容を目で追う)

  (しばし無言)

  「……爵位昇格……!? マジかよ!?」

  ⸻

  アルベルト(寝起きの髪をかきながら)

  「んー?どうしたんだおっさん?」

  グランジャス(手紙をひらひらさせ)

  「王家の承認付きで、“侯爵”に格上げだとよ! しかも理由が“功績多数、地域発展の指導者”だってよ」

  ⸻

  カリン(ぱちぱちと拍手して)

  「すごいわご主人様!やっぱり見る人は見てるのね!」

  メルディス(くすっと笑いながら)

  「ダーリンはただの村の人じゃなくなってきてる……もう立派な“物語の主役”よ」

  ⸻

  マル

  「こりゃ、次に来るのは**“公爵”**かもしれませんなあ……」

  グランジャス(首を振りながら照れくさそうに)

  「……爵位なんてどうでもいいんだ。俺はただ、この場所と、みんなと、穏やかに過ごしたいだけだよ」

  レフィアス(手袋をはめながら、真剣な表情で)

  「グランジャス、早速で悪いが――俺を《ドルセニア城》まで連れていってくれないか?

  報告すべきことがある。お前も目を通したはずだ、鉄道計画だけじゃ済まない内容だ」

  ⸻

  アルベルト(少し驚いた表情で)

  「ドルセニア城……お前が? 急ぎか?」

  レフィアス(頷きながら)

  「ああ。王室文書と軍部記録の一部が改竄されてる。お前の爵位昇格の裏で何かが動いてる。

  アンラーロストの封印にも王家が関与してた可能性がある。

  今のうちに手を打っておきたい」

  ⸻

  アルベルト

  「じゃあ俺たちは先に遺跡に向かうんだな?」

  レフィアス(頷いて)

  「ああ。お前たちは予定通り《アンラーロスト遺跡》へ。

  線路の敷設も完了したはずだ。列車で行ける。グランジャス、これは二手に分かれた方が早い」

  ⸻

  グランジャス(考え込んで、そして笑う)

  「……ったく、貴族になってすぐに働かされるとはな。

  よし、俺が護衛つきでドルセニア城まで送る。お前一人じゃ危険すぎる」

  カリン(不安そうに)

  「ご主人様、気をつけてね……」

  メルディス(でも、微笑んで)

  「ダーリンなら大丈夫……けど、油断はしないでね」

  ⸻

  アルベルト

  「じゃあ、こっちは俺がまとめる!みんな、準備しろ、列車で出発だ!」

  ティミス(力強く)

  「シンズタワーで戦った仲間よ、今度は遺跡の謎だわ」

  ⸻

  まもなく、村に敷かれたばかりの新たな鉄路に列車が到着する。

  冒険は二手に分かれ――**“過去の謎”と“王国の闇”**が、静かに開かれようとしていた。

  ロードストーリー ラート村一時帰還編 [完]

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