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ダサい虎人に一目惚れしたらとんでもない事になった話(後編)
――三連休最終日の電気街。
メインストリートは、今日もうんざりする程賑わっている。
そんな中、スマホを片手に、俺はあっちへうろうろ、こっちへうろうろとさ迷い歩いていた。
同じ客引きのメイドに『遊びに来てニャン♪』と声を掛けられ、断るのも面倒なので無視して素通りする事3回目。
いっそ『私はゲイです。女性お断り』なんて札を首からかけてやろうか、と苛立っていると。
「健吾さん!!」
人ごみの向こうから、俺を呼ぶ声が聞こえた。
そちらに目を向けると、そこにはお目当ての虎人の姿。
「泰牙!!」
俺は安堵し、思わず頬を緩めながら、人ごみをかき分け声の主のもとへと駆け寄る。
「よかった…探しましたよ!
もう、すぐ人ごみに紛れるから…」
ふっくらとしたフォルム、太陽色の毛に、こげ茶色の虎縞。
相変わらず絶妙にダサいシャツに、色の褪せたズボン。
背中には、四角い大きなバックパックを背負っていた。
ぱちくりとした眼の上の太い眉を顰めて、スマホを片手に[[rb:士縞泰牙 > しじま たいが]]はため息をつく。
「ごめんごめん、気づいたらはぐれちゃって」
平均身長以下で、しかも服装や髪形に特徴がないせいか、人ごみに入るとすぐに紛れ、迷子になるという特殊能力がある俺。
学生時代はこの特徴のなさのせいで、よく友達に『モブ島』と馬鹿にされていたものだ。
俺は顔の前で両手を合わせると、すまん、と頭を下げる。
もう、と泰牙は腕を組むと、
「それじゃ、行きましょう!」
すぐに機嫌を直し、にこりと笑いかけた。
その笑顔が眩しすぎて、俺は思わず目を細めてしまう。
見慣れてきたはずなのに、いまだにこの笑顔には良い意味で慣れない。
――衝撃的な出会いから、早二週間。
改めてお付き合いを始めた俺たちだったが、互いに恋愛経験値が乏しすぎるせいで、一般的なカップルよりもずいぶん鈍足というか、スローな恋愛をしていた。
とは言え、泰牙が仕事の日はこうして俺が足しげくこの電気街に通い、一緒に夜まで電気街をぶらついたり、逆に車で家まで送ってもらって、そのまま部屋でイチャついたりと、ほぼ毎日のように会っているおかげか、お互いに距離感のような物が掴めてきてはいる。
俺は慣れない敬語をやめ、タメ口で話すようになった。
……元来、こういうへりくだった喋り方というか、社会一般的なマナーみたいなものが壊滅的に苦手なせいで、俺は半分社会不適合者の様な生活を送っているのだ、仕方がないだろう。
一方泰牙は、慣れた間柄であっても、敬語のほうが落ち着くということなので、喋り方は以前のままで継続だ。
まぁ、むっちりと丸くて笑顔が眩しく、誰に対しても人当たりが良い、まさに人畜無害の極みのような外見をしている泰牙なので、敬語は板についているというか、むしろ敬語のままでいて欲しいようというか。
……下衆な話をすれば、同い年で容姿に恵まれ、並外れた文才も持ち、さらに一物もずいぶん立派なモノを持っている。
本来であれば俺なんかが付き合えるはずもない、ヒエラルキー最上位層の泰牙が、自信なさげにヘコヘコする姿に若干の興奮を覚えている、というのもある。
そんな俺の少し屈折した嗜好を、まぁ当人は知る由も無いんだろうけど。
泰牙の働くパソコンショップの前で待ち合わせをしていた俺たちは、泰牙が観たがっている映画を目当てに、PCショップから程近い場所にある映画館へと向かっている途中だった。
そして、大した距離がないにも関わらず、あっという間に俺が人混みに消えてしまい、慌てて合流した、という訳だ。我ながら情けない話である。
「――まあ、映画が始まるまではまだ余裕がありますし、そんなに急がなくても大丈夫なんですけど」
のしのしと歩きながら、泰牙はスマホで映画館の上映スケジュールを確認していた。
左斜め後ろにくっつくようにして、その背中を必死に追う。
いや、本当は隣を歩きたいのだが…周りに歩行者が多すぎるせいで、普段引きこもっている俺はなんというか、上手に歩けない。
正直、人ごみに酔いそうですらある。
しかも、人間より根本的に運動能力が高い虎人は、無意識ではあるのだろうが、自然と歩幅も大きくなり、歩く速度も上がっていく訳で。
そうしていつの間にか、お互いの歩くペースに齟齬が生まれてしまう。
「ちょ、泰牙、待って…」
いつの間にか、泰牙と俺の間に大柄な犀の獣人が入り込み。
さらにその後ろに小柄な男の獅子人と、仲睦まじげに手をつなぐ人間の女が続く。
再び人波に飲まれかけた俺は、嫌な冷や汗をかいていた。
三十路になって、流石にそう何度も迷子になるのはなんと言うか、シャレにならない。
「泰牙!泰牙!!」
もう一度、トーンを上げて声をかけると、ようやく虎人は気づいてくれたようで、
「健吾さん!
もう、またそんな後ろに…」
足を止めると振り返り、手のかかる子供を見るかのように苦笑した。
しかし、
「ごめん、ちょっと歩くの、早い…」
追いついた俺が息を整えながら言うと、泰牙はしまった、という表情を浮かべ、
「す、すいません!気が利かなくって…」
後頭部に手を当てると、申し訳なさそうに頭を下げた。
いいよいいよ、と言うと、俺は左隣に並び、泰牙の大きな左手を右手でぎゅっと握る。
平均体温が高めのその肉球から、じんわりと心地よい体温が伝わってくる。
この、少しざらついたぽかぽかの肉球が好きだ。
汗で湿っていたりすると、ぴたっと互いの手が吸いつくような、心地よい密着感がある。
「け、健吾さん!?」
突然の行動に驚いたのか、虎人はビクッと体を震わせると、目を白黒させた。
「こうやってほら、手をつないでれば迷子にならないでしょ」
俺が言うと、
「あ、そ、そそそそうですね、うん、うん」
なぜか目を泳がせる。
あれ?もしかして、まだ人前で手を握るとか時期尚早だった?と俺が案じていると、
「ご、ごめんなさい、その、ちょ、ちょっと、ふふ触れるとその、ええと…」
ちょっぴり前かがみになると、俺の耳元で囁く泰牙。
額が汗でうっすら湿っている。
あ、もしかして、人前で男同士で手を握るのって恥ずかしかったりするのか?
数少ない友人曰く、俺はそういった心の機微に疎いせいか、突然空気の読めない行動をとる節があるらしい。
それに、もしも知人に手をつないでいる所を見られたら、言い訳も面倒だろうし。
一人納得すると、俺は繋いでいた右手を離した。
あっ、と小さく呟くと、泰牙は何とも言えない表情で俺の顔を見る。
――付き合ってもう2週間。
この虎人の童貞ムーブは未だに直る兆し見えない。
いや、こうして触れるだけで意識してもらえるってのは、悪い気分ではないんだけれど。
でも、なあ…。
「もしかして、勃っちゃった?」
耳元に口を寄せ、こっそりと質問する。
虎人は、顔を真っ赤にして小さく頷いた。
「すいません、意識しちゃって…」
「ははは…」
どうにも敏感すぎるようで。
このまま歩くと更に悲惨な事になりそうで、俺たちはその場から動けなくなってしまった。
さて…とりあえず収まるまで待ってみるか、と考えたものの…
通りを行き来する人々が、道の真ん中で立ち止まった俺達を横目で睨みながら通り過ぎていく。
中には露骨に舌打ちをする者もいて。
「うぅ、ほんと、すみません…」
ほっとくと、このまま消えてなくなりそうなほど萎縮する泰牙。
図体は立派なのに、仕草や行動が一々小物っぽいというか、卑屈というか。
「俺が急に触ったのが悪いよ。
泰牙は何も悪くない!」
そんな姿も愛おしくて、俺はカラ元気を出して励ます。
「う、ううん!!そんな!僕が悪いんです!
それにその、ほんとはもっと握って欲しいのに…」
情けない体制になりながらも、ぶるぶるをかぶりを横に振る泰牙。
同い年なのに、なんとなく幼く見えるのは、このボディランゲージの豊かさ故だろうか。
「…兎に角、適当な場所で少し休憩しよっか…」
往来の真ん中で大柄な成人男性(デブとは言わんぞ)が二人で固まっていたら通行の邪魔である。
人々の顰蹙を買うのも仕方がない、悪いのはこっちだ。
迷惑になるので、移動しようと俺が提案すると、泰牙はうんうんと泣きそうな顔で頷いた。
ぐるりと辺りを見回す。
とにかく座れる場所を、と思ったが…自分の低身長のせいで見えるのは通行人の頭ばかりだ。
すると、
「あ、あそこ、あそこに行きましょう!」
言うや否や、泰牙は及び腰のままで歩き始めた。
急いで後を追う。
[newpage]
そこは小さな公園だった。
電気街の裏通り、少し寂れた場所にそれはあった。
「へぇ、初めてここに来るなぁ」
キョロキョロと辺りを見回しながら、そんな事を思わず呟いていた。
泰牙は速足で片隅にある二人掛けのベンチに向かうと、ちょこんと右端に寄せて座る。
電気街は、メインストリートこそ賑わっているのだが、1,2本ほど筋を跨ぐと閑散としている。
ずさんな都市計画の弊害と言うか、観光に特化させすぎた反動と言うか。
かつては電気街にひしめいていたマニアックな店達が、押し寄せるメイド喫茶や家電量販店に追いやられ、密集したのがこのエリアだ。
物見遊山に電気街に遊びに来た人々が時折迷い込むものの、半分以上の店舗が錆びたシャッターを下ろしているこの惨状を見て、くるりと踵を返してきた道を戻って行く。
まぁ、俺だって用事が無ければここに足を運ぶ事なんて無いだろう。
「この辺りは人が少ないから、男二人で一緒にいても、平気ですよ」
ハンカチで額の汗を拭いながら、泰牙が言う。
いや、俺は気にしていないんだけど。
こうして穏やかな顔をしているが、その下腹部に目を落とすと、むっちりとした腹の下で、鎌首を持ち上げた立派な一物が窮屈に震えているのが見える。
「この辺り、泰牙は詳しいの?」
俺もつられてエレクトしそうになり、慌てて話を変える。
泰牙は小さく頷いた。
「店長が、近くのマンションに住んでるんですよ」
へぇ、と驚く。
寂れているとはいえ、ここは都市の中心部にほど近いし、地下鉄の駅も徒歩圏内である。
賃貸だとしても、賃料は決して安くはないだろう。
そこそこ儲かってるのかな、あのショップ。
「店長がかき集めたジャンクパーツを受け取りに、自宅に行く事があって」
「へぇ~、そうなんだ」
「いつもパンツ一丁でいるんで、目のやり場に困るっていうか。ははは」
呆れたように笑う泰牙。
その言葉に、少しだけ嫉妬心を感じてしまう。
「店長、身長高いしスタイルもいいよなぁ」
いつ店に行ってもアロハシャツを着ている店長だが、肩幅は広く、服の上からでもスタイルが良い事が窺える。
年齢はもう50に近いのだろうが、時たま咥え煙草でパーツをいじくりまわすその姿は、どこかアウトローな職人めいた雰囲気があって、熟した男の魅力を感じる。
まぁ俺の好みではないのだが…
「それが、特にスポーツや運動をしている様子はないんですよね。
やっぱり狼人だからですかね?」
言いながら、虎人は自分の丸い腹に目を落とす。
「泰牙は、店長の事、そういう目で見たりしないの?」
俺が聞くと、キョトンと目を丸くした後、ぶーっ、と泰牙が噴き出した。
「な、ないない!あれはない!」
そして、肩を揺らしてげらげらと笑い始める。
普段あまり見せない表情に、俺はちょっと驚いていた。
「ほんとに~?」
「ないない、あ、ないです!ないですって!」
慌てて敬語に戻る泰牙。
「とにかく、僕はその、け、健吾さんひ、一筋だから…」
「ごめん、なんか意地悪なこと言って」
一筋だから、という言葉が嬉しくて、俺は思わず泰牙の手を握る。
すると、
「健吾さんだって、すごく魅力的だから、その、心配です」
手を握り返しながら、泰牙は言った。
「お隣の牛人の人とか、凄いじゃないですか」
「ああ、アレね…」
いつも、夜に出かけては朝方帰宅する、職業不詳の牛人。
昼間に音を立てると、即座に壁ドンしてくる面倒な奴だ。
――こないだ泰牙がウチに遊びに来た時に、偶然部屋の前ですれ違ったのだが。
なぜか、俺たちを見てギョッと目を見張っていたのを思い出す。
「まーアレは、音に敏感ですぐ壁ドンしてくる以外には、特に関りも害もないよ。
それに俺も、死ぬまで泰牙一筋って決めてるし」
「健吾さん…」
人通りもなく、薄暗い公園の片隅で。
俺たちは、じっと見つめあう。
すると…
「――あっ!」
急に泰牙が声を上げて、慌てた様子で繋いでいた手を離した。
若干落ち着きを取り戻していた股間が、目に見えてモリモリと膨れ上がる。
「も、もう!触っちゃダメですよ!」
「でも、イイ感じの雰囲気だったし…」
「きょ、今日は映画を見に来たんです!!
だからその、こんな、勃っちゃうなんて。
こんなの…」
困ったような恥ずかしがるような。
赤らめた頬に汗をにじませて、苦笑いをする虎人。
こんなの見たら、こちらだってムラムラしてしまう。
と。
俺は、対角線上、公園の隅にあるそれに気づく。
「――トイレ」
それは、公衆トイレだ。
滅多に使われていないのだろう、入り口には蜘蛛の巣が張っている。
「ちょっと、トイレいこう、泰牙」
俺は泰牙の手を取ると、トイレに向かい歩き始める。
あ、ちょっと、と声を上げてついてくる泰牙。
急に俺が動いたせいか、はち切れそうな股間を隠そうともしていない。
しかし。
何かを予感しているのか。
「も、催したんですか?」
そう言う割には顔は赤く、目は何かを期待するように蕩けて見えた。
「泰牙」
その期待に、俺は応えよう。
公衆トイレに。
男が二人、連れ立って入る。
これはもう、何をするのか。
確定的に、明らかだ。
「――抜こう」
[newpage]
トイレの中は、想像していたよりも、なんというか普通だった。
外観がアレだったので、中はさぞかし荒れているのかと思ったのだが、特に嫌な匂いもしない。
「け、健吾さん、やっぱりその、駄目じゃないかな…」
囁くようにひそひそと声量を下げ、この期に及んで往生際の悪い事を言う泰牙。
だが、反してズボンの前がうっすらと濡れているのが見える。
中のパンツがどうなっているのか、想像に難くない。
「じゃあ、やっぱりやめとく?」
俺がそう意地悪に聞くと、泰牙は何も言わず。
そして、獣人用に広く間取りをとってある洋式の個室に俺が入ると、バックパックを片手に、後ろからおずおずと泰牙が続いた。
どん、と扉が閉まり、ガチャリと鍵がかかる音。
……泰牙、今自分で鍵閉めたな。
可愛い顔して、まったく…
俺は洋式便座に腰かけると、目の前に立ち呆ける虎人に、
「やっぱりやめる?」
もう一度、小声で問いかける。
実は本当にしたくない、と思ってるんだったら悪いなぁ、なんて後ろめたい気持ちもある。
すると、今度は泰牙は首を横に振って、
「ぬ、ぬき…たい」
今にも決壊しそうなダムのように、パンパンに張った自身のズボンの前を見つめながら、涙目になって言った。
素直でよろしい。
「念のために聞くけど、替えのパンツは?」
「その、3枚…ほど…」
多いな。
しかし、泰牙だと3枚でも少ないようにも感じる。
「おし。じゃ、早速…」
目の前に出た下っ腹に目線を映す。
ベルトを外さなければ、と、シャツの裾をたくし上げると、ベルトの上に、毛皮に覆われた脂肪がでんと乗っているのが見える。
両手をそこに突っ込んで、ベルトを外…は………外…し…
「ごめん、ベルト外れん…」
肉と毛皮の壁に阻まれ、俺の指が折れそうになる。
バックルの金具に挟まれた指先が、じんじんと痛んだ。
「あ、え、ご、ごめんなさい!」
裏返った声で、泰牙が謝る。
そして一瞬ためらった後、カチャカチャと音を立てて、自分でベルトを外し、チャックを下ろす。
じじ、という音に続いて解放された下腹部。
その下に見えるダサいトランクスは、相変わらずぐちゃぐちゃに濡れていた。
当然、亀頭の部分のみならず、こちらから見える面のほとんどが、しっとりと黒く染まっている。
そして、その布面をぐいっと突き上げる、見慣れた狂暴な一物。
ごくり、と喉が鳴る。
冷静にリードしているつもりだったが、俺の頭も熱を持ち、上手く回らなくなってきた。
そっとゴム紐に手をかける。
少し指を引くと、途端にむっと青臭い匂いが鼻先をくすぐった。
視線を上げる。
ぎゅっと目を瞑って、何かに耐えるような表情の泰牙。
そりゃそうだろうな、と熱に浮かされる頭で考える。
初めてのセックスをして以降。
実は、俺の部屋に来る度に、二人で前と同じようにセックスに興じていた。
付き合いたてのカップルなんだ、それはまあ当然なのだろうが。
しかし、毎回俺たちは、キスをして、お互いの一物を触りあって。
抱き合いながらしごきあい、そして射精する。
とまぁ、俗に言うバニラセックスを繰り返していた訳で。
それは十二分に興奮するし、幸せだけど、やっぱりその先に進みたい、という気持ちはあった。
ただ、人並外れて繊細な泰牙を傷つけたくなくて。
セックスって、やっぱり汚い、嫌な物だと思って欲しくなくて、いつしか俺は怯えるように、同じ行為を繰り返していた。
だから。
実のところ、今回こうやってトイレで…つまりまぁその、屋外で行為に及ぶ、という暴挙を思いつき、行動に出たのは。
内心、泰牙を試すような部分があったのだろう。
こいつにも、俺と同じように、もう少し、先に進みたい気持ちがあるのか。
それとも、今はまだ、綺麗なセックスだけを繰り返したいのか…。
でも、たぶん、まぁ、大丈夫だろう。
2週間付き合ってきたのだから、わかる。
泰牙は、実のところ…多分、思ったより変態的だ。
目の前でひくひくと震える、張り詰めたその中身を解放するため。
俺は、トランクスに力を込めて、おろす。
「っ!!」
その瞬間に、泰牙の亀頭の先端が引っかかってしまったせいだろうか。
勢いよく飛び出したその先端から、ぴちゃり、と透明な雫が糸を引いて俺の顔に跳ねた。
相変わらず、量も匂いもとんでもない。
「あっ、わっ!!」
当人も面食らったのだろう。
声を潜めるのも忘れ、泰牙は慌ててタオルを取り出そうと、バックパックに手を伸ばす。
しかし、俺はそれを右手で制すると、
「大丈夫…」
そのまま右手で顔の水滴を拭い、そしてそれをべろりと舐めた。
うっすらと塩気を感じる。
「泰牙の、これも、俺は大好きだから。
焦らなくていいよ」
「け、健吾…」
そして。
改めて、俺はそれと相対する。
ぐい、と天を衝く肉色の柱。
先端以外は包皮に包まれ、その幹は先走りで既にてらてらと光っていた。
この角度からだと、親指ほどの太さの裏筋と、そしてその周囲を這う細い血管が良く見える。
根元からぶら下がる、子供の握りこぶし程の大きさと、重量感のある睾丸。
そして、間近にするとより強烈な、人によっては不快感を感じるであろう、獣と青い精の匂い。
人間には無い野性的ななこの匂いが、俺の脳を犯す。
下腹部が熱を帯びるのを感じる。
無言で、泰牙のペニスを掴む。
手首程もあるその太さに、熱く脈を打つその生命力に、こうして触れる度に感動してしまう。
亀頭の部分に、俺が鼻を近づけると…
そこで、泰牙は察したのか、腰を引いた。
「だ、駄目!」
ぼんやりとした眼で言う。
「汚いから…」
「汚くない」
俺は即答する。
「泰牙だって、少し匂いがする方が興奮するって言ってたじゃん」
そう返すと、
「人間の匂いは薄いから、あれくらいでちょうどいいんです!
で、でも僕は、獣人だからその、ちゃんと洗っとかないと…」
そこまで言って、口をつぐむ。
こう言いたいのだろう。
『舐めたらだめです』、と。
だけど、俺は素直じゃなくて、悪戯好きな嫌な奴だから。
「チンポ。舐めていい?」
そう、挑発するように言った。
訪れる、数秒の沈黙。
カチカチ、と泰牙の牙が鳴っている。
震えているのか。
「け、」
すると、泰牙が急に、両手で自分の顔を覆った。
そして、
「健吾…さんに、嫌われたくない…」
今度は、ガチガチと良く聞こえる、歯の鳴る音と共に。
掠れた声で言う。
「…好きだからするんだよ」
落ち着かせるために、左手を虎人の尻に回し、尾の付け根の辺りをさする。
こうされると落ち着く、と以前本人から聞いたからだ。
続いて、尻を揉みしだきながら、あん摩をするように、掌を動かす。
少し硬い獣毛が、踏み固められたカーペットの表面のように、ざりざりと引っかかる。
そして、左手を動かしながら、改めて震える逸物を見つめる。
こんなに熱く滾り、だらだらと涎すら垂らしているのに、その持ち主はこれ以上は駄目だと、嫌われたくないから止めろ、と言う。
その矛盾した肉体と精神が、経験の浅さからくる葛藤が、見ていてとても愛しい。
右手をそっとペニスに添えると、俺は軽く力を込めて、皮を剥く。
俺は、この仮性包茎の一物が大好きだ。
こうやって剥くと、中から、泰牙の一番汚いものが出てくる。
怒張するカリと、その下にところどころ付着する黄色みを帯びた恥垢。
青い匂いが薄れ、代わりに小便の様な軽いアンモニア臭が漂う。
俺はそこに顔を近づけると、そっと、躊躇いなく舌を伸ばした。
「あ、あうっ…!!」
触れた瞬間、電気ショックでも浴びたかのように、顔を覆ったまま泰牙が声を漏らす。
舌先で、カリの下をちろちろと舐めた。
じんわりと、苦いような、しょっぱいような、えも言われる味が広がる。
この2週間。
ウチに風呂もトイレもないせいで、いつも俺たちは綺麗とは言えない体で抱き合ってきた。
だから、汚い部分を晒したくない泰牙にとって、たぶんあれが限界の行為だったんだろう。
でも、俺はそんな臆病で繊細な虎に、本当に、心底惚れこんでいるのだ。
例え足の裏でも尻の穴でも、喜んで舐められる。
だから、このくらい、俺にとっては正直なんともないのだ。
「…泰牙、見て」
亀頭の周りをあらかた舐めとると、俺は囁いた。
「う、う」
鳴き声にも似た声を上げながら、泰牙が顔を出した。
怯えているくせに、口の端が笑むように歪んでいる。
そして俺は、一度亀頭の先端に軽くキスをすると、口を開いた。
「あ、ううっ!!!!」
必死に声を潜めながら、虎人が体を震わせる。
俺は歯を当てないように注意しつつ、舌の先端でちろちろと鈴口を刺激した。
さきほど全て嘗めとったはずなのに、それでもえぐみのある味が口の中に広がる。
そして次に、蛇が獲物を丸のみする様に、口を大きく開けると、ゆっくりと顔を埋めていく。
が、当然こんなバカでかい一物を、全て咥えるなんて人間には不可能である。
だから、自然と亀頭を咥えた辺りで動きが止まってしまった。
しかし。
「あっ、すごっ、うんっ…」
おそらく、人生で初めての感覚なのだろう。
泰牙は今まで見たこともない程に顔を歪め、快楽の波に抗っているようだった。
そして俺はと言えば、口いっぱいに頬張ったものの、その大きさと、そして洋式便座に腰かけているせいで狭まった、頭の可動域のせいで動けなくなっていた。
出来る事と言えば、空いた手で根元からペニスをしごく事と、舌を使って亀頭を愛撫する事くらい。
だが、それだけでも十分なようだ。
先ほどから、口いっぱいに液体が流れ込んでくる。
「く、苦しくない…?」
心配そうに泰牙が言うが、俺は大丈夫だよ、と目で返した。
何より、どんなに苦しかろうが、この愛しいチンポを口から離すなんて考えられない。
まるで乳房を求める赤子のように、俺は無様にむしゃぶりついていた。
俺の、最愛の人なのだ。
味覚で、脳で、心で。
全てで泰牙を感じたい。
俺がそうしていると。
不意に、違和感に気づく。
「あ、ご、ごめん…」
虎人が遠慮がちな声を上げ。
そして、ペニスがびくびくと波打ちながら、口の奥の方へと押し込まれる。
「ん、んっ!!」
思わず声が出るが、泰牙は聞こえないようで。
ゆっくりと、腰を動かし始めた。
「け、健吾、きもちいい…!!」
熱に浮かされるように口走りながら、ゆっくりと腰を前後させる泰牙。
――うおっ、マジか、と内心で焦る俺。
実際のところ、別にこれが人生初のフェラチオという訳では、ない。
初体験の際に獅子人のものをしゃぶった事があるからだ。
ただ、あの時の相手のサイズは、俺とそう変わらない大きさ…つまり、獣人としては控えめなサイズだったため、俺も平気な顔でいられたが、今回は話が別だ。
こんなにデカいチンポ、全部叩きつけられたら、喉の奥まで使わなければ呑み込めないだろう。
イラマチオ。
流石にそこまでは、出来ない…
焦る俺。
歯を立てないように必死になるせいで、顎が外れてしまうのでは、と焦燥する。
そんな俺の内心と反比例するように、きっと本能的に行われているであろう腰の動きが、少しずつ速度を上げていく。
離したい。
離したくない。
逡巡する俺。
どうする!?
どうすればいい!?
――そう、決断を迫られた時だった。
睾丸を揉みしだいていた右手に、キュっと玉が持ち上がるような感覚が伝わった。
それが何か理解するより早く、
「あ、っがあ、あっ!!!」
泰牙が、初めて見せる野性的な声を出し、そして口の中の亀頭が一層膨らみを増す。
やばい。
脳裏に走る危機感。
しかし、それよりも俺は、それを受け止めたい、と思ってしまった。
そして、口を開け、鈴口の前で構えた瞬間。
ぱっくりと割れた先端から、すさまじい勢いで精液が放たれた。
びちゃ、と音を立てて、口の中に熱い液体が注がれる。
「――ハァ、あぁああ…」
目を虚ろに開き、俺が口で受け止めている所を眺めている虎人。
上気し、荒く息を吐きながら、
「と、止まらない…」
困惑した声。
俺は左手で出鱈目にペニスをしごき、右手で乱暴に睾丸を圧迫する。
「だ、駄目、止まらない!」
口を満たし、そして溢れた精液が、俺の胸元と股を濡らす。
脱いどきゃ良かったな、と汚れていくシャツを見てふと思ってしまう。
そして、たっぷり10秒ほどだろうか。
その金玉の容量をあきらかに越えているだろう、と思わずにいられない程大量の精を放って、ようやくそれは止まった。
ずぶぬれになった俺は、ごくり、と喉を鳴らして、その濃厚な白濁を飲み込む。
美味しい、と感じる。
そして、訪れる沈黙。
左手に握る一物がゆっくりとその怒張を失い、萎びていく。
「ごめん…」
ぽつり、と言う虎人。
「こんな、はずじゃ…」
射精し終わって、冷静になったのか。
理性を取り戻した顔だ。
まったく、自分だけ楽しんで…。
俺はがたり、と立ち上がると。
泰牙の胴に、汚れが付くのも構わずぎゅっと抱き着いた。
わわ、とバランスを崩し、トイレの壁にもたれる虎人。
俺はその顔に狙いを定めると、
「――ん、わっぷ!」
キスをした。
ん-ん、ん-、と泰牙が呻くが、構いはしない。
俺はその頭を抑えると、口の中にわずかに残していた泰牙の精液と、俺の唾液が混ざった液体を流し込んだ。
んっ!と一声唸ったあと、逃げようと身じろぎするが…しかし観念したように、虎人は動きを止める。
代わりに、太い舌が俺の口の中に差し込まれ、液体を押し返す。
俺はその舌をずるずるとすすると、再び液体を泰牙の口の中へ返す。
そして、泰牙がそれを、ごくり、と飲み干した。
「いきなり、こんな、ずるい…」
すこし責めるような声色で、泰牙が言う。
いや、まぁ…賢者タイムに入ったのにこういうことされたら怒るよなぁ…とは思うが。
けど俺自身は、泰牙の精液を飲み干しただけで、まだ興奮し続けているのだ。
ずっとチンポはビンビンに勃起しているし、俺だってしゃぶって欲しい、と内心少し期待している。
すると…
「け、健吾さん。見て」
言いながら、泰牙が自分のペニスを持ち上げる。
先ほどまで萎びていたそれが、再びゆっくりと硬さを取り戻している。
「その、僕…も、もう、映画館は今日は、いいから、その」
困ったようにコリコリと頬をかく虎人。
顔が真っ赤だ。
「と、トイレだとその…狭いから…」
「……うん、帰ろうか」
俺が言うと。
泰牙は嬉しそうに牙を見せて笑い。
「タオル、一応準備しといて、せ、正解でした…」
と、バックパックから大判のバスタオルを取り出しながら再びいつもの調子に戻るのだった。
[newpage]
「それにしても、その」
揺れる車内。
軽自動車を運転しながら、泰牙が口を開く。
「さっきは、なんかすごく汚しちゃって、ほんとすいませんでした…」
「ん?いや、全然気にしてないよ」
俺はそう返しながら、でもなぁ、と思案していた。
車内は、強烈な雄の匂いでむせ返っていた。
そりゃ、いくらバスタオルで一生懸命拭いた所で、全身に浴びた獣人の精液の匂いが取れるはずがない。
「すいません、僕らのってその、人間のに比べると匂いもきついし、ねばついてるからふき取りにくいし…」
と反省している様子の虎人。
だが、別に泰牙が悪いわけではない。
というか、獣人に惹かれている俺がむしろ悪いのだ。
「ま、とりあえず今日はこのまま俺の家に向かって、ンで俺だけシャワー浴びて…」
――、と。
そういえば…
「…あ、でも今の時間、シャワー使えないんだ」
俺は思い出した。
そういえば今朝、設備の点検のために、夜までアパート全体が断水している、と書かれた紙がポストに入っていたのだ。
「えっ、そんな!!」
「あはは、まぁこんなに早く家に帰るとは思ってなかったから」
しかし、どうしたものか。
シャワーも浴びずにこんな匂いをまき散らしながらアパートを歩いて、もしも誰かとすれ違ったりしたら奇異の目で見られるだろうし。
かといって、ネカフェのシャワーを使おうにも、やっぱりこの匂いをさせたまま受付する訳にもいかないし…
鼻先を指で抑えながら、んー、と考えていると…
「じゃ、じゃあ今日は、僕のうちに来ますか?」
前を向いてアクセルを踏み込みながら、泰牙が言った。
「え、いいの?」
予想外の言葉に、俺は思わず虎人の横顔をまじまじと見てしまう。
泰牙は、実家に住んでいるらしく。
普段は両親や兄弟がいるため、俺を連れ込むのが難しいとの事だった。
なので、まぁそれなら仕方ない、といつもウチに招待していたのだが…
「今日は、両親共旅行に行っているんです。
弟は、この時間はもういないはずですし」
少し緊張した面持ちの泰牙。
……大切な恋人の家なのだ。
一度はどんな場所なのか、入ってみたいなあとは思っていたが…
「そういうことなら、今回はお邪魔しようかな?」
俺が言うと、虎人は鼻息を荒くしながら、はい!と元気よく応えた。
尻の下から狭苦しそうに伸びたしっぽの先端が、ぴくぴくとご機嫌そうに動く。
一方俺は、恋人の実家で行う情事のことを考えて、甘い背徳感に股間を膨らませるのだった。
泰牙の実家は、俺が住んでいるアパートから車で10分ほど離れた、閑静な住宅街の一角にあった。
高台に造成された住宅街は景観もよく、街の景色が一望できる。
いい場所に住んでるなぁ、と感心していると。
「着きましたよ」
という泰牙の声とともに、車がゆっくりと停止した。
そこは、至極庶民的な、ごく普通の家屋だった。
車を降りると、さすが獣人の住まう家というか、人間用の家より一回り大きな玄関扉が出迎える。
鍵をガチャガチャと回すと、どうぞ、と言いながら俺を迎え入れる泰牙。
玄関に入ると、ピカピカに光るフローリングの床と、そしてすぐ目の前にある2階へと上がる階段が目に入る。
足元に目を落とすと、普段泰牙が履くような、デザインセンスが壊滅的なスニーカーが二足と、同じくらいのサイズでまともなデザインのスニーカーが2足。
なるほど、こっちは多分、弟さんのスニーカーだな、なんて考えながら、俺が靴を脱ごうとすると…
「足元滑りやすいんで、気を付けてくださいね」
と虎人に注意された。
「うち、肉球保護のために、フローリングをワックスで二重にコーティングしてるんで、多分人間が歩くとすごく滑りやすいと思います」
なるほど…獣人も大変だな。
フローリングの上に立つと、確かにするすると滑りやすくなっている。
注意されていなければ、きっとバランスを崩して転倒していただろう。
「えっと、それじゃあ…ど、どうしましょう」
玄関に上がって早々、泰牙はもじもじとしている。
心なしか、すでに一物がふっくらと膨らみ始めているようで…
「俺、匂い大丈夫かな?」
すんすんとシャツの匂いを嗅いでみるものの、鼻がマヒしているのかまるで感じられない。
泰牙は鼻先を俺のシャツに近づけると、
「……実は僕も、さっきからもう鼻がマヒしちゃってて…
あ、でもとりあえずお風呂はいりましょうか。
その間に、服洗濯しちゃいましょう!」
と言って、バックパックを床に下ろし、中からビニール袋に包まれたタオルを取り出した。
先ほど俺が体を拭いたタオルだ。開けたら凄まじい匂いがするに違いない…。
「じゃぁ、えっと…シャツ脱いじゃってください。
ズボンも一緒に洗濯します?」
そりゃ、まとめて洗ってもらえれば大変ありがたいのだが…
「あ、でも、大丈夫?
俺、パンイチで歩き回ることになるけど…」
ご両親は旅行に行っているとしても、もしも弟さんが帰って来た時に俺の姿を見たら、変に思われるんじゃないか?と心配になる。
しかし、泰牙は大丈夫、と微笑むと、
「弟は、今日は遅くまで帰らないはずですし。
洗濯機に乾燥機能ついてるんで、それまでには乾きますよ」
と言って、はい、と手を出してくる。
それじゃあ、と俺はシャツとズボンを脱ぎ、手渡した。
「ちょっとお風呂洗ってから沸かすんで、それまで…えと、僕の部屋で待っててください!
二階に上がってその…右手の部屋です。」
俺の体をまじまじと見つめながら、泰牙が言う。
現在パンツ一丁の俺、下半身は先ほどからずっとフル勃起しっぱなしで、泰牙の目線も自然とそこに集中する。
はっと顔を上げると、へへ、と照れるように笑って、泰牙は汚れた衣服を手に、奥の部屋へと姿を消した。
おそらくそこが脱衣所なのだろう。
――さて。
言われた通り、階段を上り二階へ上がる。
右手のドアには、TAIGAと書かれたネームプレート。
ドアを開けると、なんというか、いかにもオタクっぽい部屋が俺を出迎えた。
小学生くらいの年齢からずっと使っているのだろう、古びた学習机に怪獣のフィギュアが並んだスチールラック。
窓には青いカーテン。ベッドのサイズはキングサイズ…に見えるが、獣人用なのでなんとも言えない。
すでに時刻は17時。日は半ば沈み、カーテンの隙間から夕焼けの赤い光線が斜めに差し込んでいた。
なんとなく、不思議なノスタルジーを感じる。
足を踏み入れた俺は、ベッドに腰掛ける。
学習机の上には、半田ごてと適当に転がされた機械の基盤。
机の上に備え付けられた本棚には、俺にはよくわからない、工学系の本がぎっしりと詰まっている。
家でしっかり勉強してるんだな、と泰牙の真面目さに感心する。
…しかし、なんか緊張するな。
それに、一人だと暇だし…
と所在なくそわそわしていると…
がちゃり、とドアノブが回る音が聞こえた。
「あ、もう準備できた?」
振り向くと、ドアから半分顔を突っ込むような形で、こちらを見る泰牙。
しかし、何か言うでもなく、ぼんやりと俺の顔を見ている。
「…泰牙?」
もう一度声をかけると、
「あ、ああ、ごめんごめん」
と言いながら、部屋に入って来た。
ドアを後ろ手に閉めると、俺の左隣にボフッと音を立てて座る。
いつの間に着替えたのだろうか、俺と同じパンツ一丁になった虎人。
普段のダサパンツではなく、ごく普通のこじゃれたボクサーパンツを穿いている。
「お風呂沸いた?」
質問する俺に対し、
「あ、ええと、まだ…」
と返しながら、泰牙は俺の体をまじまじと見つめる。
なんだ、もしかして我慢ができないのか?
「やっぱり風呂に入る前に一回ヤリたくなっちゃった?
ま、俺はどっちでもいいけど…」
言いながら、俺はパンツの上から自分の一物を撫でて見せる。
ずっと臨戦態勢だった俺の一物がテントを張り、一番高い部分が先走りで黒く塗れている。
そして泰牙の右手に、左手をそっと重ねた。
「泰牙…」
太い眉の下でくりくりの目を丸くして、こちらを見る泰牙。
ふと視線を下すと、ずっしりと重量感のある膨らみが目に入る。
すると、ゆっくりと泰牙が、俺の体に右の手を伸ばした。
何も言わず、じっと見つめあいながら、俺の左の乳首にそっと指をあてる。
しっとりとした肉球の感覚が心地よく、思わず下半身に一層力が入る。
それに気づいたのか、泰牙はゆっくりとした動作で俺の胸に顔を寄せると…
「んっ、ふっ…!」
べろり、と舌を出し、俺の胸を舐めた。
「泰牙、すご…」
思わず声が漏れる。
いつも、セックス中でもまごまごしている姿とは違い、なんだか今の泰牙は、とてもリラックスしていて、セクシーに見える。
自宅にいるからだろうか?
泰牙は舌で俺の乳首を刺激しながら、体を密着させ、そして左手を俺のボクサーパンツの紐にかけた。
じらすような緩慢な動作で、指先がゆっくりとパンツの中に差し込まれる。
「んあっ、泰牙、すげえ…」
その指先が、濡れて敏感になった俺の亀頭に触れる。
泰牙は俺の反応を見ながら、暫しその指をぬるぬると動かした後、今度は指だけではなく、手のひらごと滑り込ませる。
そして俺のチンポを、暖かな肉球で包み込んだ。
痺れる様な快感に、思わず腰が動いてしまう。
「動かないで…」
耳元で、吐息交じりにささやく泰牙。
「足、開いて…」
どうしたんだろう、今の泰牙は妙に冷静に見える。
しかし、その股間を見ると、いつもの大ぶりな一物が主張しているのが見えた。
しっかりと興奮しているようだ。
俺が言われるがままに股を開くと、先ほどまでペニスを愛撫していた左手が、俺の睾丸へと滑るように移動する。
びくり、と俺が体を震わせると、今度は
「腰、浮かせて」
と、まるで命令するように、少し強めの口調で言う泰牙。
いつもの泰牙はこんな風に言わない。
もしかして、二重人格でもあるのか…?
しかし、興奮して頭が碌に回らない俺は、言われるがままに腰を浮かせ…
そして、泰牙はより俺に密着すると、左手を、今度は睾丸からもっと奥に…つまり、俺の尻へと動かした。
そうしてもぞもぞと指を動かすと、難なく俺の一番恥ずかしい部分を探し当てる。
先ほど俺の先走りに触れたからか、その指先が、ぬるぬると淫靡に動いているのを感じる。
「力抜いて…」
命令され、俺が全身から力を抜き、泰牙に身を任せると。
肛門に、圧迫感。
「ちょっと待って泰牙、さすがに尻はまだ早い…!」
慌てて俺はストップをかける。
しかしそんな俺を制するように、泰牙のキスが俺の口を塞いだ。
乱暴に蠢く舌が、口の中に滑り込んでくる。
前歯、歯茎、それらを撫でるように這う舌に、俺は抵抗できず…
―――ガチャリ。
ドアノブが捻られるのと、俺の尻の穴に指がぬるりと侵入するのが、ほぼ同時だった。
「ちょ、ちょっ!!」
弟さんが帰ってきたのか!?
とにかく俺は泰牙の影に隠れるように身を寄せる。
まるで生娘だ。
肛門に指を挿入したまま、泰牙は身じろぎもしない。
想定外の状況に驚いたのだろうか。
そしてドアが開き――
「お待たせしました!
健吾さん、一緒にお風呂――」
泰牙が、晴れやかな笑顔で顔をのぞかせ。
泰牙と俺を見て、きょとんと目を丸くした。
……ん?
「おかえり兄貴ー!!!」
唐突に。
耳元で、虎人が声を上げる。
「この人、兄貴の彼氏?
めちゃくちゃ敏感じゃーん!エッロ!」
????
頭の中が、?で埋め尽くされる。
え?泰牙?
尻の中に指を残され、甘い感覚を下半身に感じながら。
俺は、混乱する。
すると。
「え、え、え?」
と、部屋の入口にいた泰牙が目を白黒させたかと思うと…
「だ…だ…ダイキー!!!!!!」
叫ぶや否や、こちらに向かって突進してきた。
そして硬直する俺を前に、ふーふー、と鼻息荒く仁王立ちする。
「けけけけけ、健吾さんになにやってんだ!!!!」
と、見たこともない夜叉のような顔で叫ぶ泰牙。
そこで俺は、初めて理解する。
この、目の前でブチ切れているのが泰牙だ。
じゃあ、さっきから俺の尻に指を差し込んでいる、この虎人は…
「あ、ごめんね兄貴、可愛かったからつい」
ぬぽっ、と肛門から指が抜かれ、俺はううっ、と呻く。
泰牙と同じ顔、同じ声、同じ体格のその虎人は、唖然とする俺に向かって、
「大毅。弟です」
と言って、これ以上ないくらいに綺麗な笑顔を見せた。
[newpage]
窓の外から、子供たちがはしゃぐ声が薄っすらと聞こえる。
夕日はもう落ちきって、夜の闇が部屋の隅を、じんわりと侵食していた。
「兄貴。落ち着いて」
ボコボコに殴られて、たん瘤だらけの顔で虎人…[[rb:士縞大毅 > しじま だいき]]が口を開く。
「おおおおお、落ち着いてられるかぁ!!!!
お、お前、お前、お前…!!!」
先ほどから錯乱しているのは泰牙。
そして俺は…
…気づかなかったとは言え、泰牙以外のヤツと、やってしまった…
と、打ちひしがれていた。
「いやだって、あんなにザーメンの匂いぷんぷんさせてりゃ、兄貴に何かあったのかなって心配になって様子見に行くに決まってんじゃん」
この中で一番冷静な大毅が、悪びれもせずに言う。
ちなみに、泰牙も風呂に入る気満々だったからか。
いつものダサいトランクス一丁である。
普段なら、相変わらず芋臭くて最高だな!!とか何とか考えるのだが…
今の俺には、この二人…双子の虎人達を交互に見ながら、
「ごめん、ごめん泰牙…」
そう、言うことしか出来なかった。
一方泰牙は、先ほどから俺を一言も攻めず、大毅を鬼の形相で睨んでいる。
しかし…違和感を抱いていたのに、疑わなかったのは俺だ。
俺にも、責任はあるのだ…。
「でもさ、兄貴」
口を開く大毅。
「兄貴って童貞じゃなかった?
この人ともうヤったの?」
この期に及んで涼しい顔、一体コイツは何を言い出すのか、と驚いてしまう。
なんというマイペース。
なんという空気の読めなさ。
俺もそこそこ空気読まないタイプだが、流石にここまで突き抜けていると、もう感心する他ない。
「も、もう僕たちは、セックスをしたよ!
ば、バリバリ!!」
顔を真っ赤にして、馬鹿正直に答える泰牙。
すると、大毅は笑顔を浮かべて、
「おめでとう!
それじゃあ、もう俺がセックスの事を教えなくても、兄貴は大丈夫なんだね!」
と、あっけらかんと言った。
え?と泰牙の顔を見る。
当の泰牙は、あっ、と困ったように目を丸くする。
「そ、その、うん…」
耳としっぽをしゅんと下ろし、困ったようにこちらを見る泰牙。
そして俺は察する。
――なるほど、つまり…
「アドバイザーって、もしかして、この…?」
そう言うと、
「はい!俺が兄貴の原稿作成に一役買いました!」
と、元気に手を上げる大毅。
その勢いで、肉の付いた胸が揺れる。
な、なるほど、まぁこれくらい色々ぶっ壊れてれば、いろんな経験してそうだが…
「…と、いうわけで」
くるりとこちらを振り向く大毅。
「じゃ、約束守ってもらおっかな」
「約束?」
「大毅!!!!」
俺が首を傾げ、泰牙が大声でそれを制する。
しかし、大毅はマイペースな顔で。
「兄貴、童貞卒業したら、ちゃんとセックスしてるところ俺に見せてくれるって、約束してたよね?
当たり前のように、とんでもないことを言い始めるのだった。
「は?」
その言葉に俺は固まってしまう。
泰牙はそれに何も答えず、ただただ頭を抱えるのだった。
事の発端は、泰牙が同人ゲームのシナリオライターに抜擢されたことから始まる。
元々純愛物の小説を書いては小説投稿サイトにアップロードしていた泰牙。
その文才に目を付けた、とある同人サークルの主がいたそうだ。
これから作る同人ゲームのシナリオライティングをしてほしい、と依頼されたのだが、童貞である為濡れ場の表現ができない、と断ろうとした。
しかし、そこで一肌脱いだのがこの、双子の弟である大毅だった。
元々頭のねじが3本くらい飛んでいた大毅は、日ごろから遊び歩いては、毎晩違う男と逢瀬を重ねる日々を送っていた。
その自分の経験で良ければ、兄にいくらでもその内容を語ってあげるので、それを原稿にしてしまえばいい、と提案をしたらしい。
最初は躊躇った泰牙だが、物は試しに一本原稿を仕上げてサークルの主に見せたところ、それが大ウケ。
そうして、大毅の経験を筆に乗せる、いわば18禁ノベルのゴーストライターとして、見事に原稿を書ききったのである。
しかし、大毅は途中で協力するのに飽きてしまい、最後のほうはいやいや経験を語っていたそうだ。
そしてそこで出した、大毅が性の経験を語る条件、というのが…
「兄貴が、童貞を卒業して立派にセックスができるようになったら、目の前で実践して見せて」
…という事らしいのだ。
「一応聞くけど…なんでそんな約束をしたの…?」
俺の問いに、泰牙は目を伏せる。
「ま、あの時の兄貴、切羽詰まってたしね」
泰牙と同じ声で、他人事のように大毅が言う。
「その、健吾さんには言ったと思うけど…死ぬまで一人でいるのが怖くて…
だから、その、この仕事を通して、その…知識を増やして…せ、セックスして…」
……つまり、童貞を卒業すれば、恋人が出来て、さみしい思いをしなくてすむ、と…
そういう事なのか?
「でも、結局原稿が完成しても、そういう知識が増えただけで…
そういうことをしたい、と思える人に巡り合えなくて…」
「ね、健吾さん、おかしいでしょ。
セックスなんて、別に誰とやったって同じなんだから、とりあえず適当に童貞捨てちゃえばいいのにな」
呆れたようにこちらを見る大毅。
しかし、俺はそうは思わなかった。
「その、俺は…泰牙が、ずっとその、守ってて良かったって思うけど」
「健吾さん…」
ぱっと顔を輝かせる泰牙。
俺の場合、大毅が言うように、軽い気持ちで初体験をして。
そして痛い目にあってしまった苦い経験があるから。
立ち上がると、泰牙の傍へ歩み寄る。
そして、おもむろにその胸に抱きついた。
「俺は、不器用な泰牙が、好きだよ…」
「ありがとう…ごめんね…」
胸に耳を当てると、どくどくと高鳴る心音が聞こえる。
泰牙は俺の背中に腕を回すと、ぎゅっと、しがみつく様に抱き返した。
「……で。約束は?」
俺たちが抱き合って、10秒くらい経ったころだろうか。
眠そうな声で、大毅が言う。
「大毅、いい加減に…」
普段俺には見せない兄としての声で、泰牙が𠮟りつけるが…
「じゃ、約束破るんだ」
と、拗ねたように大毅が言うと、泰牙は黙り込んでしまう。
まあ、言っていることは滅茶苦茶だが、実際に泰牙がそういう約束を交わしてしまった、というのは事実なんだろうし…
それに、こんなでも一緒に住んでいる兄弟なのだ、ここで禍根を残したいとは泰牙だって思っていないだろう。
「――泰牙、俺、いいよ」
だから俺は、決意した。
「大毅の前で、エッチ、しよう」
えっ、と泰牙が驚くのと、泰牙がピュー!と口笛を吹くのが、同時だった。
「い、いや、その」
顔を真っ赤にする泰牙。
まさか俺がこんなことを言いだすとは思っていなかったのだろう、
「で、でも、お、弟だよ」
同じ屋根の下に住む弟に、情事を見られる…というのは抵抗があるだろうが…
「だって泰牙、さっきから、勃ってるよ」
えっ、と自分の下半身を見る泰牙。
そこには…本人の意思とは裏腹だとは思うが…トランクスの下で持ち上がった、泰牙の一物。
「いや、こ、これは」
「兄貴、俺だって人に見られてたら興奮するよ」
こともなげに言う大毅。
俺は…どうなんだろう。
さっきから痛いほど勃起しているのは、人に見られているからなんだろうか。
「その、一度見せれば、それでいいんだろ?」
俺が念を押すと、大毅は大きくうなずいた。
「俺は、兄ちゃんが大好きなの。
だから、兄ちゃんが一人前の男になったなって、それが知りたいだけ」
と偉そうに言っているが、大毅のボクサーパンツの前も、パンパンにテントを張っている。
さすが兄弟、というか、なんというか…
「……とにかく、そういうことらしいから、さっさとやっちゃおう」
「うう…恥ずかしい…」
先ほどまで弟に見せていた、高圧的な態度はどこへやら。
今では、いつも通りの泰牙に戻ってしまっていた。
[newpage]
「それじゃ、その…」
ベッドの上で膝立ちになり向かい合うと、パンツ一丁の俺と泰牙は、お互いの目を見つめあう。
落ち着くために泰牙の手を取ると、ぎゅっと握る。
そりゃ最初から、こうやってその、泰牙の家で事に及ぶつもりではあったが…
「ほら、みてるよ~」
と、椅子に腰かけてこちらを見ている泰牙。
しかも、なぜかボクサーパンツを脱いでいる。
「ど、どうして大毅、パンツ脱いでるんだよ…」
泰牙の目線の先に、完全に勃起しきった大毅のペニスがあった。
双子なだけあって、ほとんど泰牙と同じ形、サイズをしている。
そこから、普段泰牙からしている匂いと同じ匂いがしているのに、俺は少し興奮してしまっていた。
「え、俺だけパンツ履いてるほうがいやじゃない?
どうせ二人とも裸になるんだし」
自分のペニスをしごいて見せる大毅。
泰牙と同じ顔、同じ声で、同じ物を目の前でしごいているのだから、思わず俺の物も、完全に勃ってしまう。
そして泰牙は、というと…やはり俺と同じようで、何も言わないが、股間を大きく膨らませていた。
「ううう、健吾…」
涙目でこちらを見る虎人。
そりゃ、泣きたい気持ちもわからないではないが…
「早く終わらそう…」
言って、俺は自分のボクサーパンツに指をかけた。
泰牙も覚悟が決まったのか、小さくうなずくと、自分のトランクスに手をかける。
そして…
「うわ、兄貴、すご…」
だらだらと先走りを鈴口から垂れ流す双子の兄のペニスを前に、大毅が息を飲んだ。
「み、見ないで…」
「泰牙」
ぎゅっと目をつぶってしまう泰牙の肩に手を置くと、
「俺だけを見てて」
そう言って、俺は虎人にキスをした。
「んっ、ん」
付き合い始めて、もうキスは何度もしているから。
俺は、泰牙がどんなキスをすれば興奮するのかがわかる。
分厚い舌を、音を立てて吸い上げる。
じゅるる、と淫猥な音を立てて、二人の唾液が舌の上で混ざり合う。
「泰、牙…」
言いながら、俺は泰牙に抱きつき、二人の男根を重ねるように腰を密着させた。
そして舌を絡めながら、ゆっくりと腰を動かす。
「んあ、健吾…気持ちいい…」
すると、このようにとろんと目を潤ませて、泰牙は快感に身をよじらせるのだ。
先端からとめどなくあふれる汁が、二人のペニスを濡らしていく。
腰を動かすたびに、ぬちゃ、と粘液質な音が響く。
いつの間にか、窓からさす光は完全になくなり。
部屋の中は、薄闇に包まれていた。
そうしてしばらく快感をむさぼった後、俺たちは長い長いキスを終える。
たっぷり3分近くはキスをし続けていたせいで、まるで二人の口が一つになったような錯覚すら覚えていたので、口を話すと途端に寂しくなる。
いつもなら、ここから互いの男性器を刺激しあうのだが…
俺は、公園でやったように、泰牙にフェラチオをしようとする。
すると…
「け、健吾さん、僕が」
いうが早いが、泰牙に強い力で押し倒された。
ベッドが軋み、俺の視界には天井と泰牙しか映らなくなる。
「僕がしゃぶるから、大毅の、見ないで…」
はぁはぁ、と甘い息を吐きながら、泰牙が言う。
しかし、泰牙は多分、気づいていない。
泰牙自身、キスをしながら、時たま自分のペニスをさする大毅のことを、チラチラとみていたことを。
意識しているのは、嫌悪感なのだろうか。
それとも、兄弟という間柄をかなぐりすてて、雄として三人で交わりたい、と心根では思っているのだろうか。
「んっ、ん…」
俺のペニスに鼻先を近づけると、んはぁ、と息を吐く。
そして、口を開けて、ぱくり、と咥えた。
「はっ、ちょ、泰牙…!」
下半身が、熱を帯びる。
何かをしゃぶることに向いていない獣人のマズルから、涎がだらだらとたれ落ち、それを泰牙がしゃぶりながらすすり上げるので、自然とバキュームフェラに近くなる。
その凄まじい快感に、俺は果てそうになってしまう。
「泰牙、い、イキそう…」
俺が思わず口走ると。
ぱっ、と口を外し、泰牙が俺の顔を見る。
「まだ、いかないで…ほしい…」
その顔を見て、俺は、ああ、そうか、と察した。
こんな状況でも、心のどこかで、泰牙はこのセックスを、楽しんでいるのだ。
今まで30年間、経験を知らなかった体は、本当はこんなにも淫らな事を求めていたのだ。
「ごめん、我慢するよ」
俺は答えると、もう一度しゃぶって、とペニスを泰牙の鼻先に突き出す。
目を細め、再び口に含む泰牙。
気づくと、無言で大毅が立ち上がって、己の一物をしごきながら俺たちの一挙手一投足に注視していた。
その先端から、泰牙ほどではないものの、糸を引いて液が垂れ落ちるのが見える。
そして、大毅の視線は次第に、俺ではなく泰牙へと注がれ始めた。
ぶるんぶるんと一物を揺らしながら俺のものを貪る、双子の兄に。
俺は、この状況に、少しずつ頭がイカれていくのを感じていた。
そっと、左手を差し出す。
すると、待ってましたというように、大毅がこちらに近づいてきた。
そして俺は、大毅のペニスを左手に掴む。
固く、熱を持つそれは、泰牙のものと寸分たがわぬ形をしている。
「泰牙」
俺が声をかけると、真っ赤に上気した顔でフェラチオをしていた虎人が顔を上げる。
「泰牙、俺は、」
救いの糸なのか。
それとも、滅びへ向かう道なのか。
わからないが、俺は泰牙へと、その言葉を伝える。
「泰牙、兄弟だから抵抗があるかもしれないけど、俺は今、その、」
ここから先を言ってもいいものか、逡巡する。
泰牙は今、正常な判断が出来ていない、とは思う。
しかし、だからこそ、本当に裸になった泰牙の姿を見たい、と思った。
「……兄貴」
静かに口を開いたのは、大毅だった。
「俺、兄貴のこと、ほんとに好きなんだ」
ぽつり、と。
初めてのフェラチオに興奮している俺たちの前で、大毅が言葉を続ける。
「兄貴のこと、多分、愛してる。
けど、俺は兄貴に幸せになってほしいから、健吾さんと付き合っててほしい」
じり、と一歩近づく大毅。
俺の左手の中で、大毅の一物がびくりと震える。
「でもお願い、今日だけは、俺も兄貴と一緒になりたい」
そして、涙をぽろりと零す。
まったく同じ顔で見つめあう二人の虎人。
泰牙は何も言わず、大毅は返事を待つように、ごくりと息をのんだ。
そして、泰牙が、こくりと頷くと。
俺の下半身から顔を離し、
「大毅、今日だけだぞ」
兄らしく、どこか威厳のある声で言うと。
弟の一物へと顔を近づけ、その先端を、ぺろりと舐めた。
「あっ、にいちゃん、」
先ほどまであんなに余裕ぶっていた大毅が、子供のような声を出す。
俺は、まるで泰牙が二人になったような気がして、ふふ、と思わず笑っていた。
「大毅くん、泰牙の事が大好きなら、あんな態度とらずに、素直に言えば良かったのに」
俺が言うと、大毅は泣きそうな顔で、
「だって、双子だし…兄弟で好きとか、おかしいだろ」
その顔が、いつも俺が見ている泰牙とそっくりで、ドキッとしてしまう。
目線を泰牙に移すと、泰牙も少し落ち着いたのか、
「す、素直にい、言ってくれれば、その…」
なんてもごもご言っている。
…とりあえず。
「まあ、その…
言ったん仕切り直して、三人で、する?」
俺が提案すると、二人は同じ顔で、同時に頷いた。
[newpage]
じゅぱじゅぱ、と濡れた音が暗い部屋に響く。
泰牙が大毅のペニスを加え、そして俺が、泰牙のペニスに舌を這わせる。
「あ、兄貴…すげぇ…」
今日初めてフェラチオをする兄の姿を見て興奮しているのか、大毅が腰をうねらせながら快感に悶えている。
そして泰牙も興奮しているのか、俺が少ししゃぶるだけで腰を震わせて快感に耐えていた。
唇をすぼめると鈴口にあてて、一気に吸い上げる。
先走りがじゅるじゅる、と口の中に水たまりを作る。
俺は顔を上げると、今度は大毅の傍へ近づくと…
快感に呻く顔に、口づけをした。
うっ、と呻きながらすぐに口を開き、キスを懇願する大毅。
そこに、口の中にためていた泰牙の先走りの汁と、俺の唾液を混ぜたものを流し込み、そして封をするようにキスをする。
実の兄にペニスをしゃぶられながら、兄の恋人に口の中を蹂躙され、芋虫のように大毅がもがく。
俺たちは、タブーを幾重にも破りながら、本来であれば理性が許さないはずの行為に没頭していく。
と。
ふいに、大毅が上半身をもたげると、
「健吾さん、ちょっとこっち来て」
と催促した。
「さっきの続き」
言いながら、俺の尻を撫でる。
そして、
「兄貴も、ちょっとこっちに来て」
と、一心不乱に弟の性器をしゃぶっていた兄に声をかけた。
「大毅…」
そんな己の行動に気恥ずかしさを感じたのか、泰牙が頬を染めながら近づいてくる。
「兄貴、ちょっとさ、健吾さんの尻使えるようにしようよ」
「えっ、けん、健吾さんの?」
心配そうに俺の顔を見る泰牙。
大丈夫だ。
どうせ、いつかは挑戦したいと思ってたし。
それが早まっただけだ。
いたずらっ子のようににやりと笑うと、大毅は俺の頭の前で胡坐をかいた。
目の前に、そそり立った泰牙の弟のペニスが現れ、汗と恥垢の匂いが香る。
「健吾さん、しゃぶって」
言われた通り、俺は…大毅のペニスを口に含む。
昼間泰牙のをしゃぶったのと同じように、亀頭が口に入ったあたりでいっぱいいっぱいになってしまった。
「兄貴、健吾さんのお尻に、兄貴のチンポの先っぽあててみて」
「えっ、ぼ、僕が?」
言われた通りに、泰牙が俺の腰に手を当てて、後ろからペニスを俺の肛門にあてがう。
「今ここローションないから、兄貴のそれ、ローション代わりに使っちゃえばいいよ」
いいよって、そんなこともなげに言うが…
俺が顔を上げて、無理じゃないか、と表情で伝えると、
「大丈夫大丈夫!人の肛門って、思ったより伸びるから。
さっき指先突っ込んだ時にさ、健吾さんのケツ、多分俺のが入るなって思ったんだ。
んで、俺のが入るなら、兄貴のも入るでしょ?」
――マジか?こんなのが入るの?
俺は、大毅のペニスを咥えながら、頭の隅の冷静な部分で考える。
しかし、残りの熱に浮かされた部分が、どうなってもいいから受け入れてみろよ、と破滅的な声を上げていた。
「でさ、ほんとは指で先に慣らしたほうがいいんだけど。
指サックみたいなのないし、俺たちの指だと、一本ならともかく、本数増やしちゃうと爪や毛皮で肛門に傷つけちゃうかもだから~」
嫌な予感がする…
「そのまま、ゆーくり、亀頭で慣らしていく感じで挿れちゃったらいいよ」
「ちょちょ、マジで!?それでいけるの!?」
思わず声を荒げるが。
大毅は胸を張ると、
「大丈夫!俺はいつもネコするときはそうやってるから!」
え、マジで?
それで大丈夫なの?
「健吾さん…」
困ったような声を出す泰牙。
俺は…
「…ほんとに、大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫!」
うーん、まあ、セックスが趣味みたいなやつがそういうなら大丈夫なのか…?
「…だそうだから…その、ゆっくり、押し込んでみて」
少し不安は残るが、ダメだったらまぁ…その時はその時だ。
ややあって。
泰牙が、ぐっ、と腰に力を入れるのを感じる。
後ろの門が、こじ開けられるような感覚。
「っ、痛い…」
俺が顔をゆがめると。
「兄貴、そのまましばらく動かないで。
次第に慣れるから」
冷静に大毅が言う。
もうどうにでもなれ、と俺は大毅のペニスに舌を這わせる。
「そうそう、健吾さん、俺のチンポしゃぶってて…」
すると。
不思議なことに、少しずつ、痛みが薄れ始める。
「けんご、さん…」
切なげな声で泰牙が俺を呼ぶ。
一気にそのまま、腰を前に押し出したいのだろう。
「兄貴、あと少し我慢して。
ちょっとだけ、またゆっくり腰を前に突き出して…」
再び肛門が押し広げられ、痛みが蘇る。
痛みをごまかす様に、俺は大毅のペニスに夢中になり…
「兄貴、そろそろ、いいかも」
数十秒だろうか。
数分だろうか。
俺の表情から、痛みが引いたことを察したのか。
大毅が、最後のゴーサインを出した。
直後、ズンッ、と丸太をぶち込まれたような衝撃。
うっ、とうめき声が出る。
「あっ、兄貴!そんな急に入れたら…」
「だ、だって…」
腹の中に、凄まじい異物感。
後ろを振り返ると、俺の尻たぶを掴み、そこに腰を密着させて、情けない顔をしている虎人の姿。
「え、嘘、全部はい…たの…?」
確かに痛みはあるが。
耐えられないほどではない。
それよりも、体を内側から圧迫される、奇妙な感覚が広がる。
「とにかく、兄貴は今動かないで。
健吾さん、大丈夫?」
心配そうに俺の顔を見て…大毅はすぐに表情をいつもの調子に戻すと、にやりと笑った。
「兄貴、兄貴の恋人、大当たりじゃん、よかったね」
「え?」
泰牙が苦しそうに問い直す。
「もう、ゆっくり動いても大丈夫ってこと」
そんなやり取りを、俺はぼんやりと聞いていた。
痛いとか、苦しいとか、は多分、今は問題なさそうだ。
それよりも何よりも…
「た、泰牙、」
俺は息も絶え絶えになりながら、
「う、動いてほしい…」
そう懇願していた。
泰牙に気持ちよくなってほしい。
泰牙の種を、中に出してほしい。
泰牙のチンポを胎で感じながら、泰牙の弟のチンポを口いっぱいにしゃぶりたい。
「う、動きます…」
恐る恐る。
泰牙が肉の棒を引く。
うあ、と声が漏れる。
続いて、ぐち、と音を立てながらペニスが、俺の腹の奥まで差し込まれた。
「はぁぁあああっ…」
間抜けな声が出る。
「どう?健吾さん」
俺の鼻先でチンポをしごきながら、大毅が聞いてくる。
再び泰牙が腰を引き。
そして、ゆっくりと、また奥までピストンする。
「き、気持ちいい…」
便意とは違う、むずがゆいような不思議な感覚。
もっと、強くしてほしい、と思ってしまう。
「じゃあ兄貴、チンポ入れながら、健吾さんのチンポ触ってみて」
言われた通りに動く泰牙。
すると。
「すごい、ぐちゃぐちゃに濡れてる…」
え、そうなの?
俺は上半身を浮かして、自分の腰のあたりをのぞき込む。
そこから、たらたらと汁が漏れているのが見える。
「んっ、泰牙、ほ、欲しい」
それを見た俺は、頭が真っ白になってしまった。
「泰牙のが、ほ、欲しい」
「健吾さん…ッ!」
そして。
今までの比にならない強さで。
泰牙が、腰を叩きつけた。
バチバチっ、と目の前を白い火花が躍る。
なんとか自我を保った俺の鼻先で、大毅が見せつけるように一物をしごいている。
「健吾さん、前と後ろにチンポがあるの、どう?」
「ど、どうって」
再び泰牙が力いっぱい腰を打ち付け、ずるずるとペニスが俺の中に侵入し、俺の中を破壊していく。
「き、きもちい」
うまく言葉が出ない。
「ん?何?」
「気持ちいいっ」
「気持ちいいって、健吾さん。良かったね、兄貴」
大毅がそういうと、はぁっはぁっ、と嬉しそうに息を上げる泰牙。
ごっちゅ、ごっちゅと鈍い音を立てて、俺の中に何度も泰牙の剛直が挿し込まれる。
「ちんぽ、しゃぶらせて…」
俺が懇願すると、はい、と大毅がその巨根を差し出す。
それを咥えると、俺は、亀頭よりもっと先、幹の半ばまでを口に含んだ。
息が出来ず窒息しそうだが、お構いなしに俺は首を前に出す。
「うおっ、健吾さん、イラマできんの?苦しくない?」
心配そうに声をかけられるが、そんなものはどうでもよかった。
苦しいし、吐きそうだし、いまにもむせそうだ。
だけど、さっきから尻の中をかき混ぜる泰牙のペニスの感触だけでは、我慢できない。
「…わかったよ、健吾さん。じゃあ、そのまま喉で受けてね」
大毅も、限界が近かったのだろうか。
急に、後頭部に手をあてがわれると…
「…[[rb:射精 > で]]る!」
顎の下で睾丸が蠢き、太い裏筋がさらに俺の喉を拡げて震える。
そして、
「う、げほっ、ごはっ!!!
俺がチンポを吐き出すのと、その先端から精液が噴き出したのが、ほぼ同時だった。
「健吾ッ!!健吾さん!!出る!!!」
そして後ろでも、泰牙が動かしていた腰を止め、ガクガクと痙攣するように放精した。
「あっ、た、泰牙、あ、あつい」
大毅の精液を舐め、飲みながら、俺は腹の中に灼熱感が広がるのを感じる。
続いて、下腹部にじんわりとした快感。
「おお、健吾さんイってる」
最後の一滴まで精液を出そうと一物をしごいていた大毅が、俺の下腹部を見ながら嬉しそうに言う。
「ほ、ほんとだ、け、けんごさん、いってる」
――今、俺のチンポの周り、どうなってるんだろう。
やがて、20秒ほど経ったころか。
泰牙がぶるっ、と震えると、尻からずるりと何かが抜け落ちる感覚。
「ほら、健吾さん、最後まで舐めて」
言われる通り、俺は差し出されたペニスからこぼれた白濁の雫を舌で舐めとる。
どさり、と隣に泰牙が倒れこむ音。
そちらに顔を向けると、こちらを情けない顔で見ている泰牙の姿があった。
汗で毛皮がびしょびしょに濡れ。鼻からは鼻水が垂れている。
涙で潤んだ目で俺を見る目は、不安と後悔で濡れているように見えた。
「泰牙、」
俺はその虎人の右手に、俺の左手を添えると、
「愛してる、泰牙」
と言って、目を瞑った。
[newpage]
ざばー、と湯船から湯が溢れる。
俺と泰牙は、風呂に入って身を清めていた。
「……」
「……」
獣人の住む家は、やはり湯船もでかい。
そんなジャンボサイズの湯船の中、俺たちは肩を並べて。
お互いに、何も喋らず。
気まずい空気が流れる。
「――ちょっと二人とも、俺が悪いことしたみたいな空気出さないでよ」
体をごしごしと洗っていた大毅が、悪びれる様子もなく言う。
「ほら、気持ちよかったじゃん」
石鹸で泡立ったスポンジで、男根をしごきながら洗う大毅。
「……」
「……」
「3人で乱交なんて、珍しくもなんともないよ?」
そりゃ珍しくはないだろうが。
俺と、泰牙と、泰牙の弟。
この3人で交わるのは、いろいろと倫理的にダメすぎる。
「……まぁ」
口を開いたのは、泰牙だった。
「その、怒ってはないよ」
泰牙は大毅に言う。
そして、ざば、と水音を立てて立ち上がった。
「……たまには、いいんじゃないかな」
その腰にぶら下がる一物が、ぐいっと天を衝いている。
「泰牙がいいなら…」
俺も立ち上がる。
一人だけズル剥けの俺のチンポも、ガチガチに固まって上を向いていた。
「…じゃあ、まぁたまにはこの3人で遊ぶ?」
シャワーを浴びて泡を洗い流す大毅。
その左手で、ごしごしと勃起したペニスをしごいている。
「僕、ついこの間まで童貞だったのに…」
ふるふると肩を震わせる泰牙。
「どうなっちゃうんだろ…」
「兄貴…」
大毅が心配そうに声をかける。
「でも俺たち双子だから、本当は俺たち、同じくらいエロいはずなんだけど」
「……ぶふっ」
その言葉に、俺は噴き出してしまった。
行為の最中に、泰牙が見せた、ぎらついた空気。
この人畜無害に見える獣にも、ちゃんとそういう部分はあるんだ。
「俺は、泰牙と一緒なら、もっといろいろしたいよ」
そういって、裸の泰牙に抱きつく。
「ぼ、僕だって、健吾さんと一緒ならなんだって」
言いながら、俺の肩をぎゅっと抱く虎人。
まあ、今後どんなことをしようとも。
俺たちのこの気持ちがある限りは、なんだって楽しんでしまおう。
そんな、変な開き直りのような気持ちが、腹の底から湧いてきて。
俺は、思わず笑顔になるのだった。
「じゃ、次回は有名な縄師の人連れてくるからさ。
兄貴を縛り上げ…」
「だ、ダメ!それは怖い!」
「ははは、泰牙は縛られても似合いそうだけど…」
賑やかに風呂場に反響して。
ろくでもない3人の笑い声が、秋の夜にからりと響いた。
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