この世界では、8歳以上で必ず神殿に行く。
それは、自分のパートナーなるモンスターを召喚するためだ。
ここは、神殿。この世の理を決める神様に一番近く、声が届きやすい場所。
白く光り輝く召喚陣の上に僕は立つ。
「神様、僕は子供を残す能力と性欲を差し出すから、この使い魔の人になる能力と使い魔の言語理解を望む」
召喚されたばかりの黒い子狐を腕に抱えながら、僕は叫んだ。
能力と思考でついになるから、交換成り立つはずだ。
ポンと何がはぜるような音がした。
僕と子狐を包むように真っ白な煙が出た。
腕の中にあった柔らかな消えて、ムチムチとした人肌の感触にかわる。
一気に腕が重くなる。
「パートナー、寒い」
煙で前が見えないが、子狐は服を持っていないようだ。
当たり前か。
僕は羽織っていた召喚式用の床に引きずるほど裾の長いローブを子狐に被せた。
前にはボタンがついている。
煙が晴れる前にとかけ違いも気にせずボタンを止めていく。
煙が晴れるとそこには、自分と同じくらいの年の少年がいた。
真っ黒な黒髪で、アーモンド型の黒目に、スッと伸びた鼻、整った小ぶりの唇。
僕そっくりの美少年に子狐はなった。
僕との違いは、その頭の横からは人ではない横にとんがったモフモフとした耳が生えていた。
そして、腰からはモフモフとした黒い尻尾が生えていた。
信頼できる人が欲しかった。
子狐にとっては身勝手な願いだとわかってる。
そして僕が王座を望まないことのアピールになる。
そばに付き添いとして立つ母は、ツボに入ったのか笑いそして、僕の頭を撫で回した。
そのほかの周りの神官や僕たちを連れてきた大人は目がこぼれそうなほど開き、固まっていた。
ここは、神殿。この世の理を決める神様に一番近く、声が届きやすい場所。
もし叶えられなかったとしても、ここでこんな宣言をしておけばしばらく安全だろう。
僕は何番目か忘れられた側室の母から生まれた王子だ。
継承権はほとんどないとはいえ、よく狙われていた。
継承の条件の一つは子供を持つこと。
僕はその条件をこれで満たせなくなった。
王になる気がないことを、このたくさんの人が集まる神殿で大々的にアピール証明したのだ。
[newpage]
10年後。
勇者リブ・レイブ・ビスケが魔王を討伐した。
王族との結婚が計画された。
勇者との子供を持った王族が次の王になると言う噂も流れた。
勇者は筋肉質で、朱色の髪で切れ長の目。
身長も高めだ。
容姿がよくて、身長が高いたかいと城の婦女子たちが騒いでいた。
王女の異母姉妹たちは喉から手が出るほど欲しがるだろうな。
男の王子の僕、クロコワド・ス・プリンには関係ないことだと思っていた。
男が嫉妬する余地もなく、崇拝するほどの男だ。
羨ましいとは思わずにいられない。
誰かから求められることになんて。
(いいなあ)
そう思っていた。
遠くから見ても筋肉ムキムキの絶世の美丈夫だとわかる姿には、細マッチョの僕は羨ましいと思ってない。思ってないったら、思ってない。
城の中、仕事が終わり、僕は自分の部屋へと戻ろうと歩いていた。
「あなたが欲しいです」
突然真っ赤なバラで視界がいっぱいになった。
真っ赤な薔薇の花束を差し出された。
反射で押し返そうとしたら、押し付けられて渡された。
目の前には勇者リブとその使い魔の赤虎レドガー。
リブは、顔を赤らめて、真剣な目で僕を見てきていた。
男である僕が男の勇者リブに告白されたのだ。
勇者は俺の目をじっと熱い眼差しで真剣に見ている。
そして、その男の後ろに控える虎がまるで獲物を狙う目で、僕の隣の狐、ココを見ていた。
「え、え!」
僕は固まった。
周りに人が集まってくる。
どうしよう。
「クロコは、ものじゃなーい。僕の大切な主人」
ココは人の姿をとり、僕の腕をひっぱりその人混みから引っ張り、部屋に連れて行ってくれた。
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「クロコ、それどするの?」
部屋に戻ったら、ココが眉間に皺を寄せて、すぐ聞いてきた。
「そうだね。早く水につけないと萎れちゃうね」
「そうじゃない!アイツ、なんでクロコのことものみたいに欲しがったの!」
確かにあの言い方は少し雑な気もある。
しかし、よくある告白の言葉だ。
「クロコでさえ、俺を無理やり人形にしたけど、美味しいご飯や寝床、報酬や休暇とかちゃんと用意してたけど、アイツはバラの花束一つだよ!」
そこかあ、ここは欲しいを契約ととらえたのか。
「本気でクロコが欲しいなら、クロコが大好きな食べ物なんか用意すればいいのに。薔薇なんかじゃお腹いっぱいにならないし」
「『本気』って、ココの嘘発見にも嘘が引っ掛からなかったの?」
ココには特殊能力として嘘発見がある。
それに引っかからない。
「アイツ本気でクロコのこと欲しがってるよ。」
「酒に酔って姫君の誰かと間違えたとかが良かったのに」
あの赤面から、姫君の誰かに恋をして、緊張して、酒に頼り、姫君たちに似ている中性的な僕と間違えたのではないかと期待していた。
しかし、それは無惨に崩れ去った。
僕は、バラの花束を床に落とした後ろにあるベッドに倒れ込んだ。
十二本のバラの花束が床を転がる。
「僕はどうしたらいい」
ため息と共につぶやいた。