ある雨の日のこと。

  「な、何をしているの?」

  ガツガツむしゃむしゃと、そう貪り喰う音。

  狼獣人を喰らう鷲鳥人。

  餌食と捕食者どちらも知らぬはずがない。

  立ち尽くす獅子獣人ライハ、ライハ・スターウオッチャーにとって、それはどちらも親友であったのだから。

  「なんで!

  「どうして!」

  「何故って?

  「私たちは獣人だ」

  この日、ライハの親友ガルー・ノーウィングは、旧友鷲乃宮イーグルに捕食された。

  振りむき様、イーグルの鋭い眼光、それがライハを射抜く。

  「その爪と牙は何のためにある?」

  突如飛び掛かるイーグル。

  ライハとイーグルの爪と爪、それがぶつかり合う鍔迫り合い!

  「イーグル!

  「キミはカーニヴォアになったんだね?

  「シトシンのメチル化が進行して!」

  「ふはは!今頃気づいたか!

  「だが、もう遅い!

  「お前もこいつと同じく、我が血肉にしてくれるわ!」

  「でもなんで!?

  「なんで、ガルーなの?」

  「理由? そんなものは必要か!」

  「どうして!?

  「友達だと思ってたのに!」

  ライハは一歩踏み出して、「《音声認証:コマンド・ライトニング》」そう唱えれば、バイオマシンが音声を受容し、化合分解を促進する。

  空気中の様々な物質から、陽イオンと陰イオンを生み出し、イーグルの方へ電流を放たんとする!

  「《音声認証:コマンド・フレイム》」

  しかし、陽イオンと陰イオンに分解するより炎を生み出す方が容易い。

  ライハがコマンドを送ったバイオマシンごと焼き尽くさんと、イーグルの生み出した炎がライハの方に放たれる!

  「しまった!」

  そこへ一匹の人影!

  ライハが目を開けると、そこには焼け焦げた恋人、蛇人のヴェルディ・キラカトルの姿があった。

  「ヴェルディ! ヴェルディ!」

  「ふむ、命拾いしたか」

  イーグルは、遠くから駆け付ける狩人の気配を察すると、まだ雨の降る空へと飛び立った。

  それから数年が経ち。

  「イーグルの情報は?」

  「まだ、情報は入ってません」

  「そっか」

  ライハは、カーニヴォアを狩る狩人になっていた。

  この世界では、カーニヴォアになる前。植物の放つマナと呼ばれる栄養素からエネルギーを獲得できる存在をメイジヴォアという。

  そして、シトシンのメチル化が進み、他の獣人を喰らわねば生きていけなくなった存在がカーニヴォアだ。

  獣人は、シトシンのメチル化が進行することで、マナからエネルギーを得られなくなってしまうのだ。

  そう、イーグルのように。

  「引き続きよろしくね」

  「えぇ」

  イーグルとの再会はそれからさらに数年後のことだった。

  「イーグル! ガルーの仇!!!」

  「ふむ……中々やるではないか?」致命傷を負うイーグル。

  「だが、これでどうだ?」

  イーグルの放った羽、そのケラチン質がバイオマシンにより鋭く硬く変質し、ライハに突き刺さる。

  「痛っ!」

  「これでお前もカーニヴォアだ!」

  「えっ、どういうこと?」

  イーグルは、メチル化を促進し、カーニヴォアへと変容させる毒を、羽にまとわせていたのだ。

  「お前もこれでカーニヴォアの苦しみを知ることになるだろう。

  「お前はこれからどうするのだ?」

  「どうするって?」

  「生きたくば、獣人を狩る他ない」

  それからしばらくして、マナからエネルギーを得られず、ライハはやせ細っていった。

  「大丈夫ですか!?」

  イーグルの情報収集を依頼していた相手レイナルドス。

  ライハは今、レイナルドスのもとで匿われていた……。

  「大丈夫って、もうダメだってわかってるんでしょ?」

  カーニヴォアからメイジヴォアに戻る方法はない。

  「……ライハさん、せめて最期は楽にして差し上げましょう」

  ライハを安楽死させようとするレイナルドス。

  死の淵際、ライハの生存本能が突如働いた。

  気が付けば……ライハはレイナルドスを喰らっていたのだ……。

  「ぼくも……イーグルと同じ……!?」

  それからは狩って狩って狩りまくって、己が命を食い繋ぐライハ。

  それは、孤独で……。

  永い永い時だった。

  「レイナルドスの仇!」

  ライハは竜人の爪を受け、致命傷を負った。

  「イーグルも最期はこんな気持ちだったのかな?」

  「イーグル……?」

  「かつてぼくを狩人にした獣人の名さ」

  その雨の日。

  ライハは竜人に狩られた。