大地の悪熊、覚醒す(前編)

  獣人たちが平和に暮らす惑星「アイランド」

  異世界より転移してきた悪の組織タイラントは、所有する科学技術を用いて自然豊かなアイランドを汚し、星に住む獣人たちを実験材料として拉致し、怪人に改造する等の非道な行為をおこない侵略戦争を仕掛けた。悪辣なタイラントの所業を黙って見ていられなかった獣人たちは「ガイア」という自然を操る力を持つ者達をヒーローとして集め、「ガーディアン」を結成したのだった。

  タイラントが拠点を構える要塞にて、玉座に座る帝王ダイナス。その眼下には武人将軍アイアントプスと科学将軍イビルフロッグが跪いていた。

  「先日の其方らが企てた作戦だが…首尾はどうだ」

  厳かな声で問いかける帝王ダイナス。その声は静かだが、どこか怒りを孕んでいるようにも聞こえた。

  「はっ…!獣人の子供達をさらうためにガッコウなる施設に戦闘員を送り込み、そこまでは良かったのですが…」

  作戦の立案者でもあるアイアントプスは声を震わせながら報告を始める。

  「またもやガーディアンズを名乗る奇怪な能力者どもに邪魔をされ…作戦は失敗に終わりました…!」

  しばしの沈黙。報告を終え、跪いたまま顔も上げられないアイアントプスは息をすることも忘れ帝王の言葉を待った。

  「このバカモノが!何度ヤツらに我々の計画を邪魔されておるのじゃ」

  謁見の間に帝王の怒気を孕んだ声が響く。

  「ははぁ…面目次第もありません」

  跪いていたアイアントプスは叱責を受けて床に平伏し、硬い角が生えた角を擦り付けんばかりに頭を低くした。

  「しかし、其方らが立案した作戦を彼奴らが何度も打ち破ってきた事実は重く受けなければならんのう…彼奴らの奇怪な能力…たしか『ガイア』と言ったか?」

  「グヘヘ…帝王様。あの者達…この星ではヒーローと呼ばれているそうですが、彼らが使う『ガイア』という力は自然を操ることができるようです」

  今まで黙って跪いてイビルフロッグが下卑た声で喋る。同じ地位にありながらも不様な醜態を晒しているアイアントプスを嘲笑するような表情を浮かべたイビルフロッグ。彼は自らの研究により獣人を怪人へと改造してタイラントの戦力にすることを可能にした実績を評価され、この地位まで上り詰めていた。

  「自然とな…なるほど、確かに彼奴らは炎、風、大地の力を用いて戦っていたのう。イビルフロッグよ、そこまで調査ができておるのであれば、もちろん対策も考えているんじゃのう?」

  「ゲゲゲーロ…もちろんにございますよ。この科学将軍イビルフロッグにかかれば、あの『ガイア』という力を我がタイラントに取り込むことも可能かと」

  「なんと、それは誠か!?」

  イビルフロッグの俄に信じがたい言葉に思わず平伏していた顔を上げて大声を上げるアイアントプス。

  「ゲロロ…負け犬、いや負けトリケラトプスは黙るゲコ。帝王様、私の作った最高傑作、怪人スメルスカンクの力で、まずはヒーローを捉えて参りましょう」

  再び平伏すアイアントプスを見下ろしながらイビルフロッグは帝王の御前で自信を孕んだ声で新たな作戦を立案する。

  「なるほど、おもしろい。其方のその悪辣な知恵を持ってして、この作戦成功させ我に『ガイア』の力を献上してみるがよい」

  「必ずや良い報告を…ゲコ」

  イビルフロッグはその丸々と太った体を屈めて、悪辣な笑みを浮かべながら深く頭を下げるのであった。

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  「はぁ…」

  ラーメン屋にて1人ため息を吐くツキノワグマ獣人・熊江武蔵。ヒグマ獣人ほどではないが大柄な体で、ラーメンを食べ終えて平常時より丸く膨らんだ腹を摩りながら物憂げな表情を浮かべていた。

  「なんだい、あんちゃん。女にでも振られたかい?」

  「ち、違うわい!オイラにだって色々と悩みはあんだよ」

  顔馴染みラーメン屋大将の豚獣人が声をかけると、普段は愛嬌のある丸い顔を精一杯ふてくさせ、そっぽを向く武蔵。「こりゃ重症だ」と苦笑しながら厨房に戻った大将の背中を見送りながら武蔵は先程あったことを思い返していた。

  「疾風の奴め。あとで絶対覚えてろよ」

  数時間前、ガーディアンズの秘密基地にて言い合いした目の上のタンコブの顔を思い出しひとりごちた武蔵。そう、何を隠そうこの熊江武蔵こそがタイラントに立ち向かう組織ガーディアンズに所属するヒーローの1人・ランドイエローだった。

  作戦会議にて自分の力を軽視した発言をしたウインドブルー、虎淵疾風と言い合いになりカッとなって基地を飛び出して来たところだった。

  「たしかにオイラのガイアじゃ、まだ砂や岩を動かすくらいしかできないけどよぉ…あんな言い方ないぜ」

  武蔵のガイアは大地を司る力。力を使いこなすことができれば、砂嵐や地震すら起こすことができる強力な能力であったが経験不足と才能不足で未だ使いこなすことができていなかった。それをヒーロー部隊のリーダーである疾風にあげつらわれたのだった。

  「オイラより遅くにヒーローになった翔真のヤツはもう力を使いこなしてるもんな…」

  炎のガイアを持つ新人ヒーローのファイアレッド、鷹野翔真の顔が脳裏に浮かぶ。天才とは、まさにああいうヤツのことなんだろうなぁ…そんな嫉妬心を振り払うように食べ終わったラーメンのスープに浮かぶ脂を箸で弄っていたところで。

  「きゃーー!!」

  「誰か助けてーー!」

  するどい悲鳴が外から聞こえ、慌てて武蔵は席を立った。

  「まさかタイラントのヤツらが…!へへ、気晴らしにちょっと暴れさせてもらうか。大将ごちそうさん!」

  お代をテーブルにいた武蔵はラーメン屋を飛び出し悲鳴の主の下へ走った。

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  「待ちやがれ!」

  悲鳴が聞こえた方へと走った先には、案の定いつもの黒タイツ戦闘員が小さい子供獣人を取り囲んでいるところだった。

  「てめぇら、この熊江武蔵様の目が黒いうちは子供たちには手を出させねぇぞ!」

  元来、子供好きな武蔵は今まさに子供達を連れ去ろうとしている黒タイツ戦闘員に啖呵を切ると天に向かって身につけていた黄色いブレスレットを掲げた。

  「ガイアチェンジッ!」

  かけ声と共に武蔵の大きな体を光の粒子が包んでいく。粒子が武蔵の体に付着するとスーツ上の固体として安定化されていく。

  全身を黄色と白のスーツが覆い、バイザーの着いたヘルメットが装着されると武蔵、いやランドイエローは大きな雄叫びを上げる。

  「大地の守護者ランドイエロー!てめぇら、覚悟しやがれ!サンドアタァック」

  名乗り上げたランドイエローが地面に手を着くと、辺りの石や砂が浮かび上がり戦闘員に襲いかかっていく。

  「イィー!」

  「ヒギィーー!」

  小石や砂利が当たれば痛そうな情けない声を上げる戦闘員達。

  「今のうちだ!とっとと逃げやがれ!!」

  地面に手を当てたまま幼児たちに目を向けるランドイエロー。

  「う、うん!ありがとう、ヒーローのおじちゃん」

  戦闘員の円陣が乱れてできた抜け穴から幼児たちが逃げ去るのを認めたランドイエローは安堵の表情を浮かべる。

  「へへっ、おじちゃんって呼ばれるのは早すぎる気がするけどな。あとはコイツらを倒せば…あん?なんだこの臭いは?」

  と、あたりが黄色いモヤのような物に覆われていくのを感じたランドイエロー。同時に強烈な異臭が嗅覚を刺激していることに気づく。

  「くせぇ!なんだこの臭いは?ぐっ…なんだ力が抜け…」

  視界を完全に黄色いモヤで覆われ鼻がもげそうな強烈な臭いに耐えていたランドイエローだったが、ふいに力が抜けていくのを感じてガイアの力を解いていく。

  「グフフ、オレの素晴らしい臭い、味わってるかぁ?」

  「てめぇは…怪人か!」

  黄色いモヤの中で現れたのは、黒と白の体に、大きな尻尾をフリフリと揺らしながら歩くスカンク獣人…いや、スカンク怪人だった。

  「いかにも。オレはイビルフロッグ様の忠実な下僕、怪人スメルスカンクだ。どうやらヒーローはおまえ1人のようだなぁ。ちょうどいい。オレの新たな力を試させてもらうぞぉ」

  淀んだ赤い瞳でニタニタと笑いながらランドイエローに話しかけるスメルスカンク。

  「オイラが練習台ってか?ふざけんじゃねえ、くらえ!サンドアタッ…お、おい、どうなってたんだこりゃあ…」

  ガイアの力を使おうと力んだランドイエローだったが、途端に体から力が抜けていた。

  「ククク、さすが天才イビルフロッグ様だ!このガスにはなぁ、オレの素晴らしい臭いの他にイビルフロッグ様が作られた貴様らのガイアの力を奪う成分が込められてんだよぉ」

  「な、なんだと…ぐっ、うぉぉ!」

  スメルスカンクの言葉に耳を疑うランドイエローだったが、その間にもガスの臭いが脳を刺激してスーツにまで臭いが染み込んでいく。

  「くせぇ!くっそ、どうなってやがる!力が…入んねぇ!」

  「だいぶん気に入ってくれたようだね。どれ次の段階に行くとしようか」

  そう言って大きく息を吸ったスメルスカンクが腹に空気を入れて力を込めた瞬間。

  ブーーーーッ!

  間の抜けた音と共にスメルスカンクの尻穴からピンク色のガスが噴出され、すでにあたりを充満していた黄色いガスと混ざり合っていく。

  「てめ、なんのつもりだ!あっ…おっ、おおっ…♡」

  「どうやら気に入ってくれたようだなぁ、ランドイエロー」

  先ほどまで臭いに苦しんでいたランドイエローだったが、ふと自分の体が臭いに反応して感じていることに気づいてしまった。

  「くっ…あっあぁ♡て、てめぇ、オイラの体に何しやがった!?」

  「さっきオレが出したのはいわゆる催淫ガスってヤツだぁ。偉大なるイビルフロッグ様は研究の末、この惑星の生物にも「性欲」というのがあることを突き止めたのだ。おもしろいなぁ、ヒーローといえど性欲には勝つことができない。ほら、自分の股間を見てみろぉ」

  「お、おぉ…♡あっ、そんなバカな…」

  促されるままに自分の股間を見て絶句するランドイエロー。ヒーロースーツの下で自らの小ぶりなイチモツが屹立していた。

  「ははっ、まるで子供みたいなサイズだ。さっき逃げた子供達が見たら笑われるんじゃないか?」

  「うるせっ、うっ…うぉぉ♡はぁ、はぁ、てめぇら何が狙いだ…あっあっ♡」

  「そんなことは今はどうでもいい。目の前の快楽に溺れろ」

  自分のモノを馬鹿にされながらも何とか理性を保とうとするランドイエロー。そんな彼を嘲笑うようにスメルスカンクは近づいていき、鋭い爪でスーツ越しにランドイエローの乳首を弄っていく。

  「あっ…!♡あぁ、ああ!♡や、やめろ…♡やめて…くれっ!♡」

  「おや、乳首も感じるんだなぁ?これは将来有望だ。ゆくゆくは私の配下として専用の奴隷として従事してもらうのもいいかもしれないなぁ」

  「何を言って…はぁはぁ…やがる?」

  「いや、なんでもないさ。さて、そろそろ頃合いだ」

  「なっ…あ!あっあああ!♡」

  何か言いかけたスメルスカンクを訝しむランドイエローだったが、途端に快感が全身を走る。乳首を弄っていたスカルスカンクの右手がスーツ越しにランドイエローのモノを握り扱き始めたからだ。

  「やめっ!!♡あっ…やめて…♡」

  「ふふ、いいことを教えてやろう。オレのガスは尻からだけじゃなく、この口からも出せるんだよ」

  「ま、あん♡まさか…♡」

  刹那、ランドイエローのヘルメットに覆われた顔にスメルスカンクのマズルが密着していき。

  ハァァァーーー♡

  「んんんんーーーーーーー!!!!♡♡♡」

  ビュルルビュル!!

  強烈な臭気のピンク色のガスが直接鼻に浴びせられた瞬間、ランドイエローの頭は真っ白になり何も考えられなくなり、股間からとめどない勢いで精液を出してしまった。異性との性行為の経験もなく一人慰めることしかしていなかった武蔵にとって最上級の快感を味わい、白目を剥いて全身を震わせながらの射精に体力、そしてヒーローの力を奪われていった。

  ビュルル!!ビュル、ドクドク

  音まで聞こえる勢いで放出された精液は股間を覆っていたヒーロースーツに情けない染みを作り、地面に流れ落ちていく。

  「あっあぁ♡はぁはぁ…あっ」

  射精によりガイアの力まで使い果たしたのか自然とヒーロースーツが解除されるとドサリとその場に倒れ伏す。涙と涎に顔を汚し、未だ股間をビクビクさせるツキノワグマ獣人・武蔵の姿がそこにはあった。

  「ふん、他愛もないな。おまえが弱いからこんなことになるんだよ」

  「お、おいらは…よわひっ…ひぐっ♡おやっさん、翔真…疾風ぇ…ごめんよっ」

  途端に秘密基地で言われた隼汰の言葉が脳裏を過ぎる。ヒーローとしての姿を捨て、情けなく射精している自分は身も心も弱いのだとわからせられてしまったのだ。そこで体力も限界を迎えたのか、純真な黄色い瞳を弱々しく揺らしながら意識が遠のくを武蔵は感じた。

  「安心しろ、イビルフロッグ様がおまえの真の力を開放してくれるからよぉ…よし、基地まで運べ」

  「イッイィ♡イィ♡…イッ、イィーーー!」

  ガスの力で盛り合っていた戦闘員達に命令を下すと、戦闘員達はイソイソと行為をやめて武蔵の大きな体を異次元空間に運んでいく。

  その場には淫らな匂いと武蔵の放った白い精が残されたのだった。

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  「武蔵の野郎、先走りやがって!」

  「おい、武蔵どこにいる?」

  タイラントの戦闘員が現れたと通報を受けたガーディアンズのヒーロー、ブルーウインドとファイアレッドが現地に到着する。

  そこには誰もいなかった。しかし、どこか嗅いだことがないような異臭と栗の花のような匂いが残されていた。

  「ん、これは…?」

  ブルーウインドが地面にできた白い水たまりに何かが落ちているのに気がつく。ドロっとした白い液体が付着したソレは武蔵が常に大事に身に着けヒーローの証と自負していた黄色い変身ブレスレットだった。