心奪われた狩りの姿

  オレはグラス、狐獣人。

  他の獣人を食べて暮らしている。

  子供の頃、夜中に、ある狼獣人の狩りの様子に心を奪われて以来、捕食者になると決めていたのだ。

  月日が流れ、ある満月の夜。

  オレは狼獣人と再会した。

  ………………

  「狼である私に挑むとは無謀な狐ですね」

  「そうかもな。

  「だがな……。

  「お前はオレを知らないかもしれないがオレは知っているぞ。

  「幼き頃心奪われたあの狩りの姿を遠い木陰から見ていたのだ」

  「ふふっ、あなたにとって私は特別な存在なのですね。

  「なら別の意味で特別な存在にしてあげましょう」

  ………………

  「ふははっ、流石だな。

  「やはり、お前にはかなわないようだ」

  「ふふっ、あなたの雄姿、しかと見届けましたよ」

  その時、狼は狐に口づけをした。

  「な、何を」

  「ほんのお礼です」

  そして、オレの意識は遠のいていく。

  口づけの際、口移しに毒を飲まされたのである。