白銀の過去 第二話

  「ふぅ...休憩にしようか。テオ」

  「はい!お腹ペコペコです!」

  朝早くから始まった稽古にひと段落付けヘルガとテオは休憩に入った。少し早めに休憩に入ったシロが日が当たって暖かい道場の縁側で横になっていた。

  「お。終わったか。おめーのかぁさんがみんなが終わらねぇと飯出さないって言って待ってたんだよ。俺も腹減った。」

  「一緒に稽古すればよかったのにねぇ」

  「1体1の打ち込み稽古だろ?間に入れるかよ。」

  「別に二人一緒に相手しても良かったんだけどねぇ。それに同じ体術使いだし猫族なんだから体の使い方もそっちの方がお手本になると思ってるんだけど」

  「俺は教えるようなタマじゃねぇよ」

  そんなことを話していると手伝いに行ったテオと母が昼食を持ってきていた。

  キンキンに冷えた麦茶と様々なフルーツ、母が作った少し毛の入ったギチギチのおにぎりを頬張りながら縁側でゆったりと休憩をする。

  「イヴさんのお話聞かせてください!」

  「そうだったね。いいよいいよ聞かせてあげる。」

  興味津々に聞いてくるテオに微笑み返す。

  「あら。あなたからイヴ君の話するなんて珍しいわね。」

  「昨日命日だったし私だって聞かれたら答えるよ母上。それにもう昔の話だし。」

  そう言って縁側に手に持っていた麦茶のグラスを置き、話し始めた。

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  稽古というより訓練は苛烈を極めていた。

  任務地が雪原ということ、相手になるであろう雪豹族はそういった環境に適応していることなど我々にとって不利な状況で戦闘をするのだ。雪面に備えた足腰の強化は必須である。今まで道場の硬い床板や庭の芝生や土、2人で過ごした花畑近くの草原でしか実践的な稽古はしていなかった。こちらの地域も雪は振るけれど任務地ほどの積雪はなく、積もっても膝下くらいであった。走り込みから始まり、重量物を持ちながら山を登ったり常に実践のためと着ていた鎧の中には熱が篭もり、気を抜けばまたあの日のようにダウンしてしまうような日々が続いた。

  「ぬぉぉぉぉ!!ふぅゔん!!!」

  カルナが後ろでオーバーとも思えるような呻き声を上げながら太い丸太三本を背に山の斜面を登っていた。

  「大丈夫?あんたオーバーワークよそれは」

  イヴとヘルガは背に石を積まれた背負子のみであったが、麓でカルナは隊長に志を見せるためか自分でそこら辺に倒れていた丸太を拾って背負子に載せたのである。

  さすがに心配になり手を伸ばすが、その手を跳ね除け大丈夫と強がるがその目は割かし虚ろであった。

  「ヘルガも大丈夫か?」

  少し先行しているイヴがこちらに手を伸ばす。

  「えぇ。ありがとう」

  イヴの手を取り先に行くと伝え、斜面を登る。

  後ろから待ってくれと弱音が聞こえた気がするが敢えて聞こえない振りをして先に進む。後ろから追うように着いてきていた隊長にカルナが激を飛ばされていた。

  「やっと頂上か。腰が痛えよ。」

  「疲れたね...」

  ここまで気丈に振舞ってきた二人だったが流石に弱音がこぼれる。少し経った後にカルナがゼェゼェと死にそうな表情で登ってきて思わず飲んでいた水を吹き出しそうになった。

  「お前ら...チームワークてもんを..知らねぇのかよ」

  そう言って背負子を下ろし地面に大の字で寝そべる。

  「自分で蒔いた種でしょう?こうゆうのは徐々に増やしてくもんよ」

  「その通りだぞカルナ」

  隊長が後ろからコクコクと頷きながら歩いてきた。

  彼も同じ背負子を背負い、イヴやヘルガより多めに石を積んでいたのにピンピンした様子であった。

  「流石ですね。隊長」

  イヴはそう言って隊長の背負子を下ろすのを手伝いながら太鼓持ちをする。

  「慣れだな。さぁ小休憩をしたら下るぞ。少し雲行きも怪しいしなるべく早くだからな。」

  「そういえば任務地にはいつ出向くんでしょうか。」

  「下ったら話そう。さぁ行くぞ。」

  登ってきたルートとはまた別の道を進みながら山を下っていく。街が見えてくる頃には雨も降り出し暗くなる山道を慎重に下る。相変わらずカルナは呻き声と泣き言を言っていたが、他の隊員に笑われていた。

  「さて勤務地についてだが、ベースキャンプの準備が出来次第て感じだ。予定通りであれば1週間後だが、悪天候が続けば先延ばしになるかもしれん。1ヶ月のうちには行くことになるだろう。そこまでのうちにしっかり訓練を叩き込むからな。」

  他の隊員によるとベースキャンプと言っても広めの洞穴を補強したものらしい。中は日中でも氷点下の日もあったと視察の際のエピソードを話してくれた。狼族も寒冷地耐性自体はあるが、そこで寝るとなると厳しいかもしれない。一抹の不安を抱えながら出立のための準備をするため、家路に着いた。

  その夜、なんだか寝付けないと理由をつけてイヴがいつもの草原で話そうと誘ってきた。もう婚約するって言ってるんだから別に理由なんていらないのにと返したが照れくさそうに頭をポリポリ搔くだけで何も言わなかった。少し眠い目を擦りながら彼に手を引かれいつもの花畑に足を運ぶ。

  「いつ式挙げようか。」

  「うーん...落ち着いたらでいいんじゃない?」

  「まぁそうだよな。早くウェディングドレス着たヘルガ見たいな。」

  「似合わないよ。でも着てみたい。」

  そう言ってイヴに笑いかける。

  「これはめてみて。」

  イヴは突拍子もなく指輪を取り出しヘルガに差し出す。

  「え!?」

  「もっと早く渡したかったんだけどね。お揃いだよほら。」

  そう言って私の手の隣に手を添えてきた。

  形容し難い幸せを感じながら空に手をかざす。今日は少し雲があったけれど雲間から差す月光が指輪を照らして我々の誓いを祝福するようであった。

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  「この辺でひと段落かな」

  「これまたロマンチックなこった」

  「そうね。恋って感じでしょ?」

  少し顔を赤らめるテオとにやにやしながら聞いていた母のいじったらしい笑顔が少し癪だったが気を取り直して稽古の続きをすることにした。

  「さ、稽古の続き始めましょ。シロ。テオにアドバイスしてあげて。」

  「分かったよ。いいかテオ、拳ってのはこう..なんて言えばいいんだろうなーシュッって出すんだよシュッて」

  説明を聞いて真似はしてみるもシロにとってはなんか違うようで頭にハテナを浮かべるテオに頭を悩ませていた。

  「実践の方がはえーな。ヘルガ相手してくれ。見てろよテオ」

  「あぁいいよ。本気でいいかい?」

  「負けねぇぞ」

  お互いに一礼をしてヘルガは棍を、シロは我流の体術ではあるもののずっしりと構える。

  達人同士の間合いと言うべきかジリジリと近づく二人。

  先に動いたのはシロであった。まさに猛虎の如く、体勢を低く保ちヘルガの懐に駆け寄る。

  一方ヘルガは予見していたように棍を軸にひらりと空に舞いながら避ける。だがシロも低く保っていた体勢から瞬時に切りかえ逆立ちのような態勢から蹴りを繰り出す。

  今にもシロのかかとが軸にしていた棍に当たろうかといったところでヘルガは棒高跳びのような要領でさらに高く跳び、反動を利用してシロのかかとを弾く。重心の乗った一撃であったのだろう。シロは体勢を崩し、後ろに退く形で立ち上がるが痛えと片足でトントンと跳ねている。

  ヘルガも修羅であった。隙をさらしたシロの脇腹に棍を振り抜こうといったところでヘルガの母の止めと掛け声が上がり棍は寸止め。木の棍とは言え重量も遠心力も乗ったものをピタリと止めるのはヘルガが歴戦の騎士であったことを示すかのようだった。以前稽古用の棍を持たせてもらったがあんなに軽快に動けるのが不思議なくらい重かったし戦闘用に持っているものなんて先端は重りがついていたり、素材ももっと頑丈そうだったので更に扱いは難しいだろうと、幼いながらに感じたテオであった。

  「どう?手本になったかい?」

  「速すぎてよく分かんなかったです。」

  「本気で叩きやがったなヘルガ。後で腫れるぞこれ。」

  「止めと言われなかったら吹き飛ばしてたところよ。母上に感謝しなさい。」

  「いくら本気とは言ってもよォ」

  「騎士の時もこうやって稽古を?」

  「何回勝負したか分からないくらいやったわ。勝率はどちらかと言えばイヴの方が高かったけど。」

  「イヴってやつそんなに強かったのか。」

  「白銀の貴公子なんて言われた時もあったくらいに強かったよ

  」

  「聞いた事ねぇよ」

  その後も少し稽古を続けた後、終いとなった。せっかくだからとヘルガの母が晩御飯も用意して頂き、お言葉に甘えてということで一緒に食べることとなった。

  「話の続きお願いします!」

  「そうねここからは戦争云々の話だし今までのような華々しい感じじゃないけどいいかい?」

  「はい!ヘルガさんのこともっと知りたいです!」

  子供の単純さと愛嬌を前面に出したような表情でテオはヘルガに話す。

  「はいはい。」

  そう言ってまたゆっくりと話し始めた。

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  その翌日、出発の目処が立ったと隊長から通達があった。吹雪に見舞われることもあったが1週間後には拠点の準備が整い、物資を持って出発するとのこと。

  新兵以外の隊員は視察のため、1度行ったことがあるため実情を知ってか少し嫌な顔をしていた。

  「いつまでもこっちいたいけどなー」

  「そうはいかん。与えられた任務を遂行するまで帰って来れんぞ。現地に行ったあとも訓練はするからな。これまでとは訳が違うから覚悟しとけよ。」

  カルナは嫌な顔をして、こちらに振り返る。前を向きなさいとハンドサインを送り、隊長の話を聞く。ミーティングも終わり自由訓練の時間となった。

  「イヴ。相手してくれよ」

  「今か?出発に大怪我と嫌だし寸止めにしてくれよ。」

  思い出したかのようにカルナはイヴに1体1を申し込む。嫌々ではあったがイヴも付き合うようだ。

  イヴは木刀を手に取り腰に差し、カルナも背筋を伸ばしたりと準備運動をして、両者一礼。私の始めという合図を今かと待つ2人の間には鋭い眼光がバチバチと火花を散らしている。

  「始め!」

  掛け声と同時に目にも止まらぬ速さでイヴが居合を叩き込む。遅れて音が聞こえるほどの速さに圧倒され、カルナは防ごうとするが、スパンと小気味いい音を鳴らし、床板に倒れ込む。カルナの喉元に刀を立て寸止め。勝敗は一瞬だった。

  カルナは何が起こったのか分からない様子でイヴが差し出した手を取り立ち上がる。

  「速すぎだろお前。目の前から消えたぞ。」

  相当強く踏み込んだのだろう。イヴがいた場所の床板は少し凹んでいた。イヴの居合と強い踏み込みから派生し接近する速度は音速に届きそうな程速い。初見でこれを防げる奴など余程の猛者でないと無理だろう。咄嗟に防ごうとしたカルナもあっぱれと言ったところである。

  流石に圧倒されたのかその日は再戦は申し込んでこなかったが、次の日もまた次の日も再戦を申し込んでいた。カルナの拳は一切届きそうになく、当たってもイヴがいなそうと構えた刀の峰を掠める程度だった。それぐらいイヴは間合いの取り方が上手いし前に見せた一閃以外の手駒の数々があった。

  悔しがるカルナではあったが意気消沈する様子は見せず、むしろ自分を負かすような相手に興が乗っているのか楽しそうに稽古をしていた。流石に出発前の日には稽古はしていなかったが、カルナもようやく防げるようになったと自慢してきた。実戦だったら真剣だから防いだ瞬間死ぬよと伝え、考えてなかったと緊張感の無い一言がカルナからこぼれていた。

  出発の日、各々自分の荷物と何ヶ月分か分からないほどの食料や物資を馬車に運びこみ大勢の街の人々に囲まれ、出発した。進むにつれ外の空気が涼しくなっていく感覚と戦地に行くという緊張感が馬車内を渦巻く。見送られる際、王から餞の言葉をかけられていたが、全然耳に入らなかった。

  馬車に揺られる途中、雪が激しくなり始め近くにあった洞窟で一休みするが一向に止む気配のない雪と吹き抜けてくる風が背筋を伝う。あれほど蒸れて暑かった鎧に感謝するとは思わなかった。

  雪も落ち着き、また歩みを進める。数多の人々が踏み抜いてきた山道も雪が降り積もりどこが道なのか分からないほどだった。導くように生えている針葉樹の森を抜けると、そこには白銀の世界が広がっていた。

  「綺麗...」

  そうつぶやくヘルガと寒さと馬車で酔ったのかダウンしているカルナ、単純な眠気に襲われて熟睡しているイヴ。

  その隣には隊長がうたた寝しているのか腕を組みながら目を瞑っている。

  長旅を終え、拠点に着いた。

  積荷を降ろし、それぞれの準備を終わらせる。聞いた通り少し広い洞窟に柱とかで補強しただけであった。吹き抜ける風を防ぐために戸も付いていたが隙間風がどうしても入ってきてしまう。日も暮れ外は真っ暗である。適当な設備の説明とここからの生活についての説明を一通り聞いた後、我々は眠りについた。

  次の日からは現地での実践的な訓練に加え、地の利を理解し戦いにどう向き合うかを突き詰めていった。和解という案も出たには出たのだが、貿易商などが度々襲われていることを鑑みるとそれは無理だと判断された。

  とは言えこちらの隊員の総数は30人程度なのに対しあちらが何人戦いに赴いてくるのかが未知数なのが気がかりであった。首謀が1人いてそれが相当のやり手であるということは分かっていたのだが、そのような猛将には大体多くの軍勢が付き物である。

  「なんの情報も無いのですか。」

  「我々は不利をひっくり返すための人員だ。攻め入るとなれば王国から軍が派遣されるだろうがこちらから動かない限りは...」

  「王国も計画性が無いですね。」

  「全くだ。」

  参謀と隊長が頭を抱えている。それ見てやはりとんでもない場所に来てしまったと新兵の3人は不安になるのだった。

  北の氷雪地帯と言っても東西に伸びており東は海岸、峠を越えた後西には高山地帯である。我々はその峠に拠点を置き、東西を監視しているのだが不定期に吹きすさぶ吹雪のせいで監視もできたものでは無い。鷲族と鯨族に協力を仰ぎたいが鯨族はそもそも海中戦しか出来ないし、鷲族もここから更に北へ北へと向かって過酷な高所に拠点を置いているため30人の中で数人を派遣するにもリスクが大きすぎる。

  現地での生活に慣れてきたある日、洞窟内で筋力強化をしていたら偵察に行っていた隊員1人が焦った様子で洞窟内に入ってきた。その後2人が入ってきたのだが1人は満身創痍といった感じでうなだれていた。すぐに医療班が彼の治療に当たる。

  「何があった!!」

  「急襲にあいました...3人で何とか応戦しようとしたのですが奇襲に反応出来ず彼が集中攻撃を受けてしまい...相手は10人程の徒党を組んでいて」

  「とりあえずよく生きて帰ってきた。」

  「今までこういった事が無かったから推測するに今回の偵察ルートの付近に彼らの拠点が近い可能性がある。猫族なのに徒党を組んでとはなかなか不可解だがここからは偵察のルートを狭め、多くの人員を割くようにする。お前も傷だらけだ。早く治療してもらえ」

  そんな出来事が起きた後日、新兵3人と他の隊員2人で偵察を行くこととなった。今まで以上に奇襲に気を使いつつ、他の種族の痕跡を探す。するとどこからともなく話し声が聞こえてくる。すぐさま5人は身を隠し、匂い消しを使う。

  雪の中に身を隠し聞き耳だけを立てながらやり過ごす。どうやら2人組らしい男達が談笑しながら歩いていく。

  「狼族がここら辺うろついてるって言ってたけどよどうせまた商人となんかだろ?」

  「でも奇襲した奴らの中に犠牲者もいたらしいぜ。」

  「勘のいい奴がいたってことか」

  「俺らも戦いたくねぇけどなぁ」

  「そんなことミカド様に聞き付けられたら殺されちまうぜ」

  「だな。」

  どうやら拠点に向かっていくようでバレないよう目で追っていく。物音立てずに尾行していくと谷の間の洞窟に歩みを進める彼らの姿を確認した。

  「あった。」

  「アイツらも洞窟住まいか。全貌が見えねえな。」

  「流石に潜入出来ないし、あっちもこちらはうろついてるらしい程度の情報量だった。報告こそしてなかったけど襲われた3人でだいぶ抵抗してたみたいだな。」

  「2人で報告に戻る。君たち3人で出入口の監視を任せていいか?」

  「あぁ任せとけ。」

  新兵以外の二人の隊員が拠点へ報告に戻る。

  「どれくらい中が広いかだが、確認する術がないし」

  「何人出入りするか位は把握出来るわ。あそこだけが出入口とは限らないけど。」

  しばらくの間、出入り口を監視する。確認出来たのは20人程度ではあったが感覚的に3、4倍は中にいるだろうといった感じである。報告しに行っていた隊員が1度退避せよと伝えに来てその日は拠点へ戻るのだった。

  「拠点の把握は大きな進歩だ。だが返り討ちにしたのであればしっかり報告して欲しい。後は数だ。思いのほか早く戦になるかもな。」

  「こちらから吹っ掛ける形になるのでしょうか。」

  「数的にもそうだろうな。この人数で戦を有利に進めるのは難儀だがな。」

  戦のトリガーはどこにあるのかすらよく分からない。公地を不法に占拠している連中だが、我々の縄張りでは決してない。公的に裁きが下るはずだが今の情勢は猫族が幅を利かせすぎてそういった制裁も課せないのだろう。相手も兵を1人やられているのに呑気に喋りながら偵察していた。普通であれば激昂し、今にも本拠地を叩きに来る程であろうがこちらの拠点の位置が分かってないからなのか、そもそも戦う気すらないのか不透明感が拭いきれない。罠かもしれないと隊長に伝えはしたが、明確な意図が分からなければ迂闊に動けないと返された。ただヒリついた空気が流れるだけだった。

  消灯後、班の部屋で布団に寝ながら今日のことについて少しの間、話していた。部屋と言ってもカーテンの仕切りがあるだけだったが幾分は気が紛れる。

  「和解ってほんとに無理なのかな」

  カルナがぽつりと呟く。

  「下っ端なんてそんなもんなんだろう。なぜ戦わされるのか分からない人だって中にはいるよ」

  イヴが返す。

  「猫族自体そもそも群れないし、個の影響力が物を言うらしいからそういった人も生まれやすいのかもね。」

  「ヘルガ起きてたのか。」

  「まぁ。」

  そんな話をしながらその日も過ぎていった。

  ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

  「今日はここまでにしようか。箸が進んでないよテオ。冷めないうちに食べな」

  それを聞きテオは思い出したかのように取り分けられたご飯を口へ運ぶ。急いで食べたせいか少しむせていたのでゆっくり食べなと諭し、自分も話に夢中になってあまり食べてなかった。シロはと言うと話の途中でもなりふり構わず上手い上手いとバクバク食べていた。興味があるのか無いのかと少し呆れたが、聞き耳は立てていたので気にしないでおこうと思う。

  「ミカドってやつは聞いたことあるな。雪豹族の猛将だってなんかで読んだぜ。」

  シロは爪楊枝で牙の間に挟まった肉の筋を取ろうとしながら話す。

  「えぇ。名前も思い出したくないほどよ」

  「え、そうなのか。てことは戦ったのか」

  「なんたってイヴを殺したのはミカドだもの。」

  「す、すまん。思い出させちまった。」

  「ここまで昔話して思い出さないわけないさ。いいんだよシロ」

  「仇はうったのか」

  「いいや。生きてるのか死んだのかも知らない。」

  寂しげにヘルガは言うがその顔をには少し憎しみが混じっていたように見えた。

  「今日はここでおしまい。明日はアルベルト邸で夕食だから続きはそこで話すよ。ロルフからも聞けると思うよ。」

  夕食を食べ終えた後、少しの休憩を挟んでその日は幕を閉じた。