私が彼女と出会ったのは、中学生になってすぐのことだった。
その頃、両親が経営する会社は赤字続きで倒産寸前だった。
当時は家族3人生活していくのも精一杯で、同級生たちを見るたびに「どうしてうちだけがこんなに貧乏なのだろう」と思っていた。
そんなとき、両親の借金を肩代わりしてくれる資産家が現れた。ただし、肩代わりの条件としてその資産家の娘が私の婚約者になった。
正直言って納得はできなかったけど、この暮らしから抜け出すためには、なりふり構っていられなかった。
初めて彼女と会ったときに、資産家一家がクモ獣人であることを知った。
当時、クモ獣人は他種族から怖がられ、蔑まれる存在だった。私も最初は少しだけ怖かったことは覚えている。
ただ、それ以上に彼女が悲しげな表情をしていたことが気になった。
もしかしたら、彼女もこれまで辛い思いをしてきたのかもしれない。そんなことを考えるうちに、怖さはなくなっていた。
それからは、定期的に彼女と会うことになった。
最初はお互いぎこちなかったけど、徐々に打ち解けて、初めて笑顔を見せてくれたときは少し嬉しかった。
私が大学生になったころ、彼女と一緒に住むようになった。たまにケンカすることもあったけど、仲良く暮らしていた。
ただ、それでも婚約者の話に納得できていなかったからか、彼女に対して恋愛感情はなかった。いや、あったけど認めたくなかったのかもしれない。
社会人になってからも、しばらくは何も変化はなかった。でも、そんな関係は彼女のイタズラをきっかけに変わった。
彼女は自分の気持ちを私に告げ、煮え切らない私を押し倒した。そして、彼女は出会ったときのような悲しげな表情をしていた。
そのときに、初めて自分の気持ちに気づいた。婚約者とか関係なく、彼女のことが好きだと。
私は無意識に彼女を抱きしめて、自分の気持ちを伝えた。彼女は驚いた後、大粒の涙を流した。
その後、結婚を前提とした付き合いから始めた。彼女とはすぐに結婚しても良かったけど、親同士が決めたことへのささやかな反抗だった。
実際、付き合ってから最初の彼女の誕生日にプロポーズをして結婚した。
そして今、子どもが2人生まれて家族4人で楽しく暮らしている。
妻は子どもたちが酷い目に遭わないか心配しているけど、今のところそんなことはなく過ごしている。
それに、この先妻や子どもたちがそんな状況に陥りそうになっても、私が命をかけて守ってみせる。
これからも、子どもたちが楽しく過ごせますように。
そして、妻とずっと添い遂げられますように。