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獣欲の地下闘技場~正義の双壁、公開絶頂の贄~

  第一章 深淵

  地下五階

  エレベーターではなかった。錆びた鉄梯子を五層分、垂直に降りた先にそれはあった。

  最後の梯子から飛び降りた瞬間、靴底がぬるりと滑った。

  コンクリートの床に薄く張った液体——汗か、血か、あるいはもっと穢れたものか——が、蛍光灯の残滓を鈍く反射していた。

  「深淵闘技場《ヴォイド》」

  表社会のどの地図にも載らない。

  警察のデータベースにすら、所在地は推定座標しか記録されていない。

  それほどまでに隔絶された闇の祭典だった。

  空気が、重い。

  地上のそれとはまるで別の物質のようだった。

  湿度が肺を圧し、一呼吸ごとに粘膜へ纏わりつく。

  汗の酸味、乾いた血の鉄臭、精液の甘ったるい腐敗、そして安物の合成薬が揮発した化学臭——それらが幾層にも重なり、鼻腔の奥で溶け合って、吐き気にも似た温もりになる。

  換気など存在しない。

  この場所に流れ込む新鮮な空気は、入口の鉄扉が開く数秒間だけだ。

  それすらも、すぐに数百の肉体が放つ熱気に呑まれて消える。

  天井は低い。赤い照明が不規則に明滅し、その点滅のたびに影が痙攣するように揺れた。

  壁面には配管が剥き出しになり、そこに結露した水滴がときおり落ちて、床の水溜まりに小さな波紋を作る。

  リングを囲むマットは元は白だったのだろうが、今では黄ばみと赤黒い染みに覆われ、前試合の体液が乾ききらないまま新たな液体を吸い込み続けていた。

  足を踏み入れれば、スポンジのように沈み込み、離すときにはくちゅりと粘った音が鳴る。

  観客席は三層構造。最下層はリングと同じ高さで、金網越しに選手の体臭すら嗅げる距離。

  中層はパイプ椅子が雑に並べられ、上層はVIP用の革張りソファが据えられている。

  だが上層も下層も、今夜は同じ熱狂に呑まれていた。

  数百人の男たちが、紙幣を握りしめ、安酒を煽り、欲望を隠そうともせずに叫んでいる。

  「警官どもが獣になるまで何発イクか、全財産賭けたぞ!」

  「正義の肉体がぶっ壊れる瞬間を見逃すな!」

  「先にケツ掘られて泣くのはどっちだ!?」

  下品な笑声が反響し、空き缶が転がり、使い捨ての注射器が足元に散乱する。

  誰もそれを拾わない。ここではそうした残骸こそが床を飾るタイルであり、退廃の証だった。

  ルールはただ一つ。

  「負け=獣化」

  敗者は観客の眼前で人間の尊厳を剥奪され、薬と精液によって獣人へと変貌させられる。

  理性を失い、肉欲に溺れ、公開のリングの上で絶頂を晒す——それがこの闘技場における最高の見世物だった。

  第二章 鋼の双壁

  ギンガ、28歳。

  警視庁特殊急襲部隊——通称SAT——の元エース。身長186センチ、体重92キロ。

  逆三角形に発達した広背筋が肩甲骨の下でうねり、胸板は装甲板のごとく厚い。

  腹部は八つに割れた筋肉が深い溝を刻み、腰から下は短距離走者のように絞り込まれた大腿四頭筋と、鉄柱を思わせるふくらはぎで構成されている。

  格闘術は合気道をベースに打撃と関節技を融合させた独自のスタイル。現場では「受けた攻撃をすべて返す鉄壁」と評された。その異名が、やがてコンビ名の片翼となる。

  コテツ、38歳。

  ギンガの十年先輩であり、刑事課きっての鬼刑事。

  元ボディビルダーという異色の経歴を持ち、178センチの身長に110キロの筋肉を詰め込んだ肉体は、ギンガとはまた異質の威圧感を放つ。凝縮された僧帽筋が首をほとんど埋め、三角筋は砲弾のように丸く盛り上がり、前腕は成人男性の太腿ほどの太さがある。

  パワーで圧倒し、一撃で相手を沈める——それがコテツの流儀だった。

  二人は「鋼の双壁」と呼ばれた。

  ギンガの技巧とコテツの剛力。

  守りと攻め。

  盾と鎚。

  互いの欠点を補い合い、どんな現場でも二人で突破してきた最強の刑事コンビ。

  その「鋼の双壁」が、今夜、粉々に砕かれようとしていた。

  潜入捜査は、完璧に失敗した。

  計画は周到だったはずだ。偽造した招待状、変装、裏社会の仲介人を通じたコネクション。

  だが闘技場の受付に立った瞬間、すべてが瓦解した。

  受付の男——顔の半分が機械化された元軍人——は、二人の身分証を一瞥しただけで薄く笑った。

  「警察《サツ》の犬が二匹。ようこそ、ヴォイドへ」

  背後から首筋に注射器が突き刺さり、意識が白く飛んだ。

  目が覚めたとき、ギンガは自分の状況を理解するのに数秒を要した。

  衣服が、ない。シャツも、スラックスも、靴も、靴下も。

  腕時計すら外されていた。代わりに身につけているのは、スポーツ用のジョックストラップ一枚きり。

  白い布地が股間を辛うじて包んでいるが、臀部は完全に露出している。

  ウエストバンドと二本のストラップが臀部の輪郭をむしろ強調するように食い込み、丸出しの尻肉が赤い照明の下で無防備に晒されていた。

  隣を見れば、コテツも同じ格好だった。

  リング中央。数百人の視線が、二人の剥き出しの肉体に注がれている。

  ギンガは奥歯を噛み締めた。

  全身の筋肉が反射的に強張り、肩甲骨の間に冷たい汗が一筋、背骨を伝って腰まで流れ落ちた。

  空気は蒸し暑いのに、その汗だけが氷のように冷たい。恐怖ではない——と、自分に言い聞かせる。

  屈辱だ。

  警察官がこんな場所で、こんな姿で、見世物にされている。

  その事実が、訓練で鍛え上げた精神の芯を、細い針のように刺す。

  視線を落とせば、自分の胸板が呼吸のたびに大きく隆起し、汗の薄い膜がその表面を覆っていた。

  鎖骨の窪みに溜まった汗が、呼吸の振動で揺れる。

  腹筋の溝にはまだ汗は届いていないが、すでに皮膚がうっすらと湿り気を帯び、赤い照明を鈍く弾いている。

  足元に目を落とす。素足だった。

  靴も靴下も奪われ、裸の足裏がマットに直接触れている。

  その感触が、不快を通り越して生理的な嫌悪を催させた。

  前試合の残滓を吸い込んだマットは体温のような温もりを持ち、足指の間にねっとりと纏わりつく。

  踏み変えるたびに、くちゅ、と小さな音が鳴り、その音が静まり返ったリングに妙に大きく響いた。

  足裏から伝わる湿り気が、じわじわと神経を侵食する。

  (……警察官として……こんな場所で……ケツ丸出しで……素足で……この汚れたマットの上に立たされて……)

  思考を振り払うように、ギンガは拳を握った。

  掌にも汗が滲んでいる。

  指の間から絞り出されるように溢れる汗が、拳の締まりを僅かに鈍らせる。

  隣のコテツは、もっと静かに怒っていた。

  鉄のような前腕の血管が浮き上がり、拳が白くなるほど握り込まれている。額

  に浮いた汗が、深い皺の溝を伝って眉間に集まり、鼻梁を滑り落ちる。

  だがその目は据わっていた。十年の修羅場を潜り抜けた男の、腹の底に沈めた怒り。

  「ギンガ」

  低い声が、喧騒の底を縫うように届いた。

  「……戦うぞ。ここから出る」

  その一言で、ギンガの背筋に電流が走った。そうだ。

  まだ終わっていない。

  コテツがいる。

  俺がいる。

  「鋼の双壁」は、まだ砕けていない。

  司会者の野太い声が、天井のスピーカーから降り注いだ。

  「本日のスペシャルマッチィ! 正義の警察官コンビ『鋼の双壁』が、獣人軍団と二対二の公開バトル! 負けたら即・薬・漬・け! リングの上で人間やめて、獣になってイキ狂うまで生配信! さあ賭けは始まってるぞ! 何回射精するか、どっちが先に獣化するか、全部オープンだ!」

  観客が沸き立つ。紙幣が舞い、怒号が渦を巻く。

  リングの対角線上から、二つの影が近づいてきた。

  一体目——ウルフ獣人。身長二メートルを優に超える灰色の巨躯。

  全身を覆う剛毛の下に、人間離れした筋肉が鎧のように重なる。

  口元から覗く牙は親指ほどの太さがあり、黄色い双眸が爛々と光る。

  四足でも二足でも動ける獣人特有の体幹。

  その足元から放たれる獣臭が、数メートル先のギンガの鼻腔にまで届いた。

  二体目——タイガー獣人。橙と黒の縞模様が全身を彩る筋骨隆々の獣。

  ウルフ獣人よりやや小柄だが、その分密度が違う。

  しなやかな四肢は瞬発力に特化し、光を弾く鋭い爪が五本ずつ、両手から伸びている。

  低い唸り声が、腹の底に響く振動となって空気を震わせた。

  ギンガの相手はウルフ獣人。コテツの相手はタイガー獣人。

  ギンガは構えを取った。左足を半歩引き、重心をやや後方に。

  合気道の基本構え。

  両手を開き、相手の動きを読む。

  足裏がマットの湿り気を感じ取り、わずかに滑る感覚に眉をひそめる。

  靴がない。この湿ったマットの上で裸足で戦うことの不利を、瞬時に計算する。

  踏み込みが甘くなる。回転技は滑る。

  足指で掴むようにマットを噛み、なんとか摩擦を確保する。

  足の甲に浮いた汗が、照明の赤い光を滲んだように反射した。

  コテツは両拳を胸の前に構えた。ボクサー崩れの構え。

  だがその足は柔道家のようにどっしりと開き、重心を低く落としている。

  裸の足指がマットに食い込み、太い指の腹が湿った表面を押し潰す。

  ゴングが鳴った。

  第三章 互角

  金属音がリングに反響し、残響が消えないうちにギンガは動いた。

  合気道の入り身——相手の攻撃線を外しながら間合いを詰める独特の歩法。

  裸足の足裏がマットを擦り、微かな湿った摩擦音を立てる。

  ウルフ獣人が右の爪を振り下ろす。風切り音。

  ギンガは半身で躱し、その腕の軌道に沿うように滑り込んだ。

  「でりゃああっ!」

  掌底。鳩尾の真下、横隔膜を狙った一撃。

  手のひらに伝わる衝撃は重く、ウルフ獣人の毛皮越しにも腹筋が凹むのがわかった。

  獣人の巨体が一歩後退し、黄色い目が驚愕に見開かれる。

  観客席がどよめいた。

  「おい……人間が押してるぞ!?」

  ギンガは追撃の間合いを測る。

  心拍が跳ね上がっている。アドレナリンが全身を巡り、筋肉の一本一本に火が灯るような感覚。

  鎖骨の窪みに溜まっていた汗が、動きの衝撃で弾け、胸板を一筋流れ落ちた。

  だが今はそれが心地よかった。体が動く。技が通る。戦える。

  右では、コテツが先手を取っていた。

  タイガー獣人が飛びかかるのを見切り、低い姿勢からのタックル。

  110キロの筋塊が爆発的に加速し、タイガー獣人の腰を捉えてリングに叩きつける。

  マットが大きくたわみ、湿った飛沫が四方に散った。

  「ギンガ、行けッ!」

  コテツの怒号。タイガー獣人を押さえ込みながらも、相棒への檄を飛ばす余裕がまだある。

  ギンガは頷き、ウルフ獣人に向き直った。

  獣人は体勢を立て直し、四足の姿勢から地を蹴る。

  速い——だがSATの訓練で培った動体視力が、その軌道を捉えた。

  左に跳び、回転。裸足の踵がマットを抉り、湿った表面に弧を描く跡を残す。

  回転の遠心力を乗せた後ろ回し蹴りが、ウルフ獣人の脇腹を捉えた。

  肋骨に響く鈍い衝撃。獣人が横向きによろめき、苦悶の唸り声を漏らす。

  同時に、コテツの肘打ちがタイガー獣人の顎を掠めた。

  獣人の首がのけ反り、牙の間から血混じりの唾液が飛ぶ。

  あと数センチ深ければ——顎を砕いていた。

  二人の攻撃が、まるで計算されたかのように同期する。

  長年の連携が身体に刻んだリズム。

  片方が攻めれば、もう片方が相手の退路を塞ぐ。

  片方が退けば、もう片方が前に出て時間を作る。

  それが「鋼の双壁」の真髄だった。

  ギンガの胸にわずかな希望が灯った。

  (……いける。このまま攻め続ければ……!)

  しかし肉体は正直だった。

  三分が経過した頃、ギンガは自分の呼吸が荒くなっていることに気づいた。

  胸板が大きく上下し、吐く息が熱い。この地下の淀んだ空気は酸素が薄いのか、あるいは緊張と運動で消費が激しいのか。

  額から流れた汗が眉毛に溜まり、瞬きのたびに目尻へ流れ込む。

  塩辛い刺激に視界が一瞬ぼやけ、手の甲で拭う。

  その一瞬の隙にウルフ獣人の爪が空を裂き、ギンガの左頬を浅く掠めた。

  熱い線が走る。切り傷。大したことはない——だが、初めての被弾だった。

  足元にも変化が出始めていた。

  試合開始時にはまだ耐えられた素足の不快感が、運動による発汗で加速度的に悪化している。

  足裏に滲んだ汗がマットの残滓と混じり合い、ぬめりのある膜を形成していた。

  踏み込むたびに足指が滑り、力の伝達が数パーセントずつ削がれていく。

  特に回転技のとき、軸足の親指が流れる感覚がはっきりとあった。

  (……踏ん張りが利かなくなってきた……)

  右ではコテツも消耗の兆候を見せ始めていた。

  ボディビルダーの肉体は瞬発力に優れるが、持久力に難がある。

  密度の高い筋肉は酸素を大量に消費し、三分を超える連続運動で乳酸が急激に蓄積する。

  コテツの呼吸が荒くなり、首筋の太い血管が怒張していた。

  額から流れ落ちた汗が顎先で玉になり、動くたびにマットに飛び散る。

  だが、まだ戦える。

  ギンガはウルフ獣人の突進を躱し、背後に回り込んで首に腕を巻きつけた。

  裸絞め。

  SATで最も得意とした制圧技。腕に全体重を預け、獣人の気道を締め上げる。

  毛皮越しに伝わる獣の体温は異常に高く、まるで炉に抱きつくようだった。

  皮膚に接する部分から汗が噴き出し、腕が滑りやすくなる。

  だが歯を食いしばり、締め上げ続ける。

  ウルフ獣人がもがく。

  巨体が暴れるたびにギンガの体が振り回され、裸の足が宙を蹴る。

  マットに着地したとき、足裏がずるりと滑った。

  汗で濡れた足指がマットの表面を掴みきれず、体勢が崩れる。

  その一瞬だった。

  ウルフ獣人の肘が、ギンガの脇腹を抉った。

  「がっ……!」

  呼吸が止まる。横隔膜が痙攣し、肺の中の空気が一瞬で絞り出された。

  腕が緩み、獣人の首から外れる。

  マットに膝をつき、脇腹を抱えて喘ぐ。

  視界の端で、ウルフ獣人が振り返るのが見えた。

  黄色い目が、獲物を見つけた捕食者の光を帯びている。

  (……まずい)

  五分が経過していた。

  コテツの方にも転機が訪れていた。

  タイガー獣人を二度目のタックルで倒そうとした瞬間、獣人の後ろ足がコテツの膝裏を蹴った。

  関節が逆方向にたわみ、痛みが雷のように走る。

  体勢が崩れたところに、タイガー獣人の掌底がコテツの胸板を打った。

  110キロの巨体が二メートル吹き飛び、ロープにもたれかかる。

  「コテツさん!」

  ギンガが叫ぶ。

  だがその瞬間、ウルフ獣人の拳がギンガの背中を打ち据えた。

  肩甲骨の間、脊椎のすぐ横。衝撃が脳天まで突き抜け、一瞬視界が白く弾けた。

  マットに手をつく。

  四つん這い。

  汗が顎先から糸を引いてマットに落ちる。

  胸板を伝い、腹筋の最初の溝に初めて汗が溜まった。

  それが呼吸のたびに揺れ、やがて溢れて二段目の溝へ流れ落ちる。

  身体が、この苛酷な戦闘の代償を汗として搾り出し始めていた。

  起き上がろうとする。

  足裏がマットを踏む。

  滑る。

  汗と前試合の残滓が混じった表面は、もはや裸足では踏ん張りが効かない泥濘のようだった。

  足指を必死に曲げ、爪先でマットの繊維を掴もうとする。

  指の間に溜まった汗がぬるりと溢れ、グリップを奪う。

  それでも立ち上がった。

  (……まだだ。まだ戦える。ここで倒れたら……コテツさんを一人にすることになる……!)

  六分。

  ギンガとウルフ獣人が再び対峙する。

  だが明らかに力関係が変わっていた。

  ギンガの掌底は届いても威力が落ち、獣人の毛皮を揺らすだけで内臓には響かない。

  一方、獣人の爪はギンガの防御を掻い潜り、胸板に浅い裂傷を刻んだ。赤い線が三本、左の胸筋を斜めに走る。傷口に汗が染み、焼けるような痛みが広がる。

  コテツも苦しんでいた。

  タイガー獣人の連撃を腕で受け止めるたびに、前腕の筋肉が悲鳴を上げる。

  ガードの上からでも、獣人の爪は皮膚を裂いた。

  両前腕に無数の赤い線が走り、滴る血が汗と混じって肘から落ちる。

  「ギンガ……まだ耐えろ……!」

  コテツの声に、初めて焦りが混じった。

  ギンガはその声を聞いて、胸の奥が軋むのを感じた。

  十年間、どんな現場でもコテツの声には余裕があった。

  「大丈夫だ」「俺がいる」「任せろ」

  ——そんな言葉と共に、常に先頭を切ってきた男。

  その男の声が、揺れている。

  (……コテツさんが焦っている……ということは……本当に、まずいのか……)

  七分。

  ウルフ獣人の攻撃が苛烈さを増した。

  もはや力を試しているのではなく、明確に仕留めにかかっている。

  右の爪、左の爪、突進、噛みつき——攻撃の一つ一つが致命的な軌道を描き、ギンガは躱すだけで精一杯になった。

  反撃の隙がない。

  足裏が滑るたびに体勢が乱れ、回避が遅れ、爪が皮膚を掠めて新たな傷を増やす。

  汗が止まらなかった。

  もはや額や胸板だけではない。

  背中全体が汗で覆われ、腰を伝って臀部の割れ目に流れ込む。

  ジョックストラップのウエストバンドが汗を吸い、肌に張り付く。

  股間を包む布地も湿り気を帯び始め、動くたびにべたりと肌に密着しては離れる不快な感触が加わった。

  足指の間からは、絞るように汗が湧き出していた。

  マットを踏むたびに、指の腹と素材の間に汗の薄い膜ができて摩擦を奪う。

  それはほんの零コンマ数秒の滑りだが、獣人の速度を前にしてはその零コンマ数秒が命取りになる。

  八分。

  ギンガの左腕を、ウルフ獣人が掴んだ。

  逃げようとした。だが獣人の握力は万力のようで、引き剥がせない。

  毛皮に覆われた巨大な手が手首を包み込み、骨が軋むほどの圧力をかけてくる。

  捻り上げられた。

  腕が背中に回され、肩関節が限界角度まで押し上げられる。

  靭帯が悲鳴を上げ、肩甲骨の周囲に灼熱の痛みが爆発した。

  「あ……ぐうっ……!」

  膝が折れそうになる。

  耐える。足指に力を込め、マットを掴もうとする。

  だが汗で滑る足裏は踏ん張りを許さず、じりじりと押し込まれていく。

  足指の爪がマットの繊維に食い込み、必死に抵抗するが、湿った表面が指を裏切り続ける。

  (……力の差が……これほどまでに……!)

  SAT時代、あらゆる体格差を技術で覆してきた。

  人間相手なら。だが獣人の筋力は人間の数倍。

  しかもこの環境——裸足、汗、狭いリング、消耗した身体——すべてが不利に働いている。

  九分。

  ウルフ獣人の追い打ちは容赦なかった。

  腕を極めたまま、もう片方の手でギンガの後頭部を掴み、マットに叩きつける。

  顔面がマットに沈み込み、前試合の体液が染み込んだ表面が頬に密着した。

  ぬるりとした温もりと、甘ったるい腐臭が鼻腔を直撃する。

  「う……くっ……!」

  起き上がろうとする。

  だが背中に獣人の膝が乗り、体重で圧し潰される。

  肺が圧迫され、呼吸が浅くなる。

  胸板がマットに押し付けられ、滲み出した汗がマットの液体と混じり合う。

  腹の下では汗が溜まり、動くたびにぐちゅりと音を立てた。

  右では、コテツが追い詰められていた。

  タイガー獣人の牙がコテツの肩に食い込んだ。

  鋭い犬歯が僧帽筋を貫き、血が噴き出す。

  コテツの顔が苦痛に歪み、太い腕で獣人の頭を引き剥がそうとするが、噛みついた顎は鉄のように動かない。

  「ぐ……おおっ……!」

  血が肩から胸板を伝い、腹筋を赤く染めながら流れ落ちる。

  汗と血が混じり合い、ジョックストラップのウエストバンドに到達して赤黒い染みを作る。

  コテツの足が後退する。裸の足裏がマットを擦り、汗の膜の上を滑りながら後退する。

  踵が濡れたマットの端に引っかかり、体勢が大きく崩れた。

  タイガー獣人はその隙を見逃さなかった。

  肩から牙を抜き、すかさず掌でコテツの胸板を打つ。

  仰向けに倒れたコテツの腹を、大きな足で踏みつける。肉

  球の下で腹筋が凹み、コテツの口から血混じりの唾液が飛んだ。

  「ぐはっ……!」

  十分。

  ギンガはマットに押し付けられたまま、必死に首を捻ってコテツの姿を見た。

  血塗れの先輩が腹を踏まれ、顔を歪めている。その姿が、ギンガの精神を深く抉った。

  (……コテツさん……俺が……守らなきゃいけないのに……)

  ウルフ獣人がギンガの髪を掴み、顔を持ち上げた。

  強制的にコテツの方を向かされる。

  「見ろ。お前の相棒が潰される」

  低い獣の声。嘲りを含んだ、ゆっくりとした日本語。

  ギンガの目に、コテツの苦痛の表情が映る。

  あの鉄の男が、歯を食いしばり、額に脂汗を浮かべ、全身を震わせながら獣人の足圧に耐えている。

  だがその目だけは、まだ折れていなかった。コテツもまた、ギンガを見ていた。

  (ギンガ……諦めるな……)

  声にはならない。だが視線が語っていた。

  ギンガは自分の足指に意識を集中した。

  マットの上で汗に塗れた裸の指が、それでもなお繊維を掴もうと蠢いている。

  一本一本の指が独立して動き、滑りながらも僅かな凹凸を探り、支点を求めて必死にもがく。

  その原始的な抵抗こそが、まだ自分が戦っている証拠だった。

  だが——

  十一分。

  ウルフ獣人がギンガを引き起こし、背後から羽交い絞めにした。

  両腕を極められ、首に太い前腕が巻きつく。

  スリーパーホールド。

  気道と頸動脈を同時に絞める窒息技。

  息が、止まった。

  喉が圧迫され、空気が通らない。

  血流も遮断され、脳に酸素が届かなくなる。

  視界の端から黒い靄が侵食し、赤い照明が霞んでいく。

  耳鳴り。心臓の鼓動だけがやけに大きく聞こえる。

  足が宙を蹴る。裸の足がマットを求めて振り回される。

  つま先が湿った表面を掠め、汗の飛沫が散る。

  だが支えは得られない。

  身体が獣人の胸板に引き寄せられ、背中に灼熱の体温と剛毛の刺激が伝わる。

  (……息が……できない……こんな……簡単に……)

  意識が薄れかける。

  その縁で、SAT時代の記憶が閃光のように過ぎる。

  極限状態での窒息訓練。水中での息止め。

  拘束された状態からの脱出。

  すべて経験してきたはずだ。

  だが獣人の怪力の前では、あの訓練が笑い話のように思えた。

  人間の限界を想定した訓練では、人間を超えた存在に対処できない。

  (……SATの訓練が……通用しない……)

  その事実が、酸素を失いかけた脳を焼いた。

  十二分。

  コテツが倒された。

  タイガー獣人の膝蹴りが腹に入り、前屈みになったところを後頭部から叩きつけられた。

  マットに顔面を打ち、衝撃で意識が途切れかける。

  だが途切れる前に次の痛みが来る——背中に獣人の足が乗り、脊椎が軋む。

  「がっ……は……!」

  コテツの太い指がマットを掻く。

  爪が湿った表面を引っ掻き、無意味な溝を作る。

  全身が汗でべとつき、血と混じって肌が赤銅色に光る。

  呼吸は断続的な喘ぎに変わり、胸板の上下が不規則に痙攣する。

  (……俺が……先輩として……ギンガを……)

  思考すら纏まらない。身体が動かない。

  十三分。

  ウルフ獣人がギンガの首を解放した。

  だがそれは慈悲ではなかった。

  窒息寸前で解放し、再び絞める——を繰り返す嗜虐。

  ギンガの顔が紫から赤に戻り、貪るように空気を吸い込む。

  肺に流れ込んだ空気が燃えるように熱い。

  全身の毛穴から汗が噴き出し、もはや肌の表面全体が液体の膜で覆われていた。

  胸板を流れる汗は一筋ではなく、面で広がり、腹筋の六つの隆起をなだらかに濡らしながら下腹部へ達する。

  臍の窪みに一瞬溜まり、溢れ、ジョックストラップのウエストバンドに吸い込まれていく。

  布地はもはや重く水分を含み、股間に密着して中身の輪郭を赤裸々に浮かび上がらせていた。

  足元では、裸足の足裏から垂れた汗がマットに小さな水溜まりを作っていた。

  足指の間は完全にふやけ、指と指の間に溜まった汗が動くたびに細い糸を引く。

  踏みしめる力すら衰え、指は半ば開いたままマットの上に力なく広がっていた。

  十四分。

  二人はリングの中央に追い詰められた。

  ウルフ獣人とタイガー獣人が左右から挟み、退路を完全に断つ。

  ギンガとコテツは背中合わせになり、互いの体温と汗の湿り気を背中越しに感じながら、最後の抵抗を試みた。

  ギンガの拳が繰り出される。

  だが腕が上がらない。肩関節を極められたダメージが残り、掌底の高さが十センチ低い。

  ウルフ獣人は余裕でそれを躱し、カウンターの爪撃を脇腹に叩き込んだ。

  コテツの肘打ちも空を切った。

  タイガー獣人が軽やかに後退し、反撃の蹴りでコテツの膝を刈る。

  バランスを失い、片膝をつく。裸の膝がマットに沈み、湿った音が鳴った。

  十五分。

  終わりが来た。

  ウルフ獣人がギンガの首を掴み、一息にマットに叩きつけた。

  同時にタイガー獣人がコテツの後頭部を掴み、同じようにマットに押し付ける。

  二人の顔がマットに沈み込む。湿った表面が頬を吸い、鼻と口を塞ぐ。

  汗と血と体液が混じったマットの臭いが、最後の抵抗すら溶かしていく。

  ギンガの手が、無意識にコテツの手を探った。

  指先が触れた。汗で滑る指同士が、それでも絡み合おうとする。

  だが獣人たちはそれすら許さなかった。

  二人の手を引き離し、それぞれの腕を背中に捻り上げる。

  完全敗北。

  ギンガの身体が細かく震えていた。筋肉の痙攣ではない。それは、正義の警官としての矜持が、音もなく崩れ落ちる震えだった。

  リングの中央。赤い照明が不規則に明滅し、二人の汗まみれの裸体を容赦なく照らし出す。

  ギンガは四つん這いのまま、ウルフ獣人の巨躯に背後から覆い被さられていた。

  熱い毛皮が背中に密着し、剛毛の一本一本が汗でぬめった皮膚を刺すように擦れる。

  コテツも同じく、タイガー獣人の体重に押し潰され、太い僧帽筋を波打たせながらマットに顔を埋めていた。

  観客席から、野次と歓声が津波のように押し寄せる。

  「ほら見ろ! 正義の警官のケツ穴が丸出しだぞ!」

  「SATのエースが、獣のチンポ待ちしてる顔してんじゃねーか!」

  「鋼の双壁? はっ! 今はただの肉便器だろ! 早く犯せ!」

  数百の視線が、二人の剥き出しの尻肉に突き刺さる。

  ジョックストラップはすでに引き裂かれ、ギンガの引き締まった尻の谷間も、コテツの逞しい尻肉も、一切の防御なく晒されていた。

  素足の足指がマットの湿った表面を掻き毟り、汗と前試合の体液が混じった水溜まりを広げていく。

  足裏の感触——ぬるぬるとした温もり——が、屈辱をさらに増幅させる。

  (……こんな……こんなところで……警察官の俺が……ケツを晒して……観客に……見られて……)

  ギンガの脳裏に、警視庁の制服を着た自分の姿が浮かぶ。

  市民を守る盾。SATの誇り。

  だが今、その誇りはマットの上で、汗と血にまみれて踏み躙られようとしていた。

  ウルフ獣人が低く笑った。熱い息がギンガの耳朶を舐める。

  「正義の警官のケツ……締まりが良さそうだな」

  巨大な獣の陰茎——人間のそれを遥かに超える太さ、表面を血管と棘状の突起が覆う、赤黒く脈打つ肉棒——が、ギンガの窄まりに先端を押し当てた。

  熱い粘液が、窄まりの皺に塗りつけられる。

  観客の視線が、そこに集中する。

  カメラのフラッシュが焚かれ、生配信の画面に二人の恥部が大写しにされる。

  「やめ……ろ……! 俺は……警察官だ……! こんな……公衆の面前で……!」

  声が震える。だがウルフ獣人は腰を一気に突き出した。

  ずんっ……!

  「あああああっ……!!」

  内臓を抉られるような衝撃。

  ギンガの背中が弓なりに反り、目を見開いた。

  獣の肉棒が、根元まで一息に埋め込まれる。

  窄まりが限界まで引き伸ばされ、棘状の突起が腸壁を掻き毟る。

  痛みと異物感が、脳天まで突き抜ける。汗が一気に噴き出し、胸板から腹筋の溝を伝って滴り落ちる。

  「ぐ……うううっ……! 抜け……! 抜いてくれ……!」

  隣ではタイガー獣人がコテツを同じく貫いていた。

  110キロの巨躯が、獣の猛々しい一撃に貫かれ、太い前腕の血管が浮き上がる。

  「がああっ……! くそ……っ……! 俺の……ケツに……何を……!」

  コテツの声が、苦痛に歪む。観客が沸き立つ。

  「見てみろ! 鬼刑事のコテツが、獣のチンポで泣き叫んでるぞ!」

  「警官のケツ穴が、獣の形に広がってんじゃねーか! 最高の見世物だ!」

  ウルフ獣人が腰をゆっくり引き、再度深く突き入れる。

  ぐちゅっ、ぐぽっ、という淫らな水音がリングに響く。

  ギンガの腹筋が波打ち、獣の肉棒の形が下腹部に浮き上がるのが自分でもわかった。

  棘が前列腺を抉るたび、電流のような快感が混じり始める。

  (……いや……こんな……感じるはずがない……! 俺は……正義の……!)

  だが身体は正直だった。

  汗でぬめった尻肉が、獣の腰に打ちつけられるたび、ぱんっ、ぱんっ、と卑猥な音を立てる。

  足指がマットを掻き、素足の裏が汗の膜で滑り、踏ん張りが利かない。

  観客の嘲笑が、耳に突き刺さる。

  「ほら、腰振れよ警官! ケツ締めて獣のチンポを味わえ!」

  「正義の双壁が、公開レイプでイキ顔晒すなんてな! 警察の面汚しだ!」

  ウルフ獣人の抽送が徐々に速くなる。

  根元まで埋め、棘で腸壁を掻き回し、前列腺を執拗に刺激する。

  ギンガの陰茎が、半ば強制的に勃起し始め、先端から透明な我慢汁が糸を引いてマットに落ちる。

  「は……あ……っ……! やめ……ろ……! 見るな……! みんな……見てる……!」

  羞恥が胸を締め付ける。

  警官として、絶対にあってはならない姿。

  裸で、ケツを犯され、観客の前で勃起し、喘いでいる。

  SATの訓練で鍛えた精神が、ぐちゃぐちゃに掻き乱される。

  コテツも同じだった。

  タイガー獣人の爪が腰を掴み、容赦ないピストンが続く。

  太い陰茎がコテツの巨躯を貫き、腹の底まで抉る。

  コテツの胸板が汗で光り、血と汗が混じった滴がジョックストラップの残骸から落ちる。

  「う……ぐおおっ……! ふざけるな……俺は刑事だ……! こんな……玩具に……されるなんて……!」

  だが声は次第に甘く掠れていく。

  獣の肉棒が前列腺を的確に打ち続ける。

  コテツの陰茎も、太く硬くなり、脈打って先走りを垂らす。

  観客の野次がさらに熱を帯びる。

  「コテツのデカマラがビンビンじゃねーか! 警官なのに獣チンポで感じてんのかよ!」

  「ギンガもコテツも、ケツ穴がヒクヒク言ってるぞ! 負け犬の悦び顔だ!」

  二人の抽送が同期するように激しくなる。

  ウルフとタイガーの腰が、交互に、または同時に打ちつけられる。

  リングに響く水音、肉のぶつかる音、喘ぎ声。汗が飛び散り、マットをさらにぬめらせる。

  ギンガの意識が、快楽の波に飲み込まれそうになる。

  抵抗しようと尻の筋肉を締めるが、それが逆に獣の肉棒を締め付け、獣をさらに興奮させるだけだった。

  「締まるな……正義のケツ……最高だ……」

  ウルフ獣人が嘲りながら、深く、深く、突き上げる。

  棘が前列腺を擦り、圧迫する。

  ギンガの陰茎が限界まで勃起し、尿道が熱く疼く。

  (……だめ……出る……! こんな……ところで……射精なんて……警官として……!)

  だが身体はもう制御不能。

  獣の抽送が、敗北の「トコロテン」状態へと導いていく。

  まるでチューブから押し出されるように、前列腺を執拗にミルキングされ、精液が根元から搾り上げられる。

  コテツも同じく、タイガー獣人の猛攻に喘ぎ、太い陰茎をびくびくと震わせる。

  「は……あっ……! くそ……出る……出ちまう……!」

  観客が総立ちになる。

  「イケ! 警官ども! 獣のチンポでトコロテン射精しろ!」

  「正義の精液をマットにぶちまけろ!」

  ウルフ獣人が最後の突きを入れる。

  根元まで埋め、棘を前列腺に食い込ませ、熱い獣の精液を一気に注ぎ込む。

  同時に、ギンガの身体が限界を迎えた。

  「あああああああっ……!! 出る……出るうううっ……!!」

  びゅるるっ! びゅっ、びゅるるるっ!

  ギンガの陰茎が、観客の眼前で激しく痙攣し、大量の白濁をマットに叩きつける。

  射精の勢いが強すぎて、腹筋の溝を伝い、胸板にまで飛び散る。

  素足の足指がマットを掻き毟り、足裏が汗と精液の水溜まりを広げる。

  その瞬間——薬と獣の精液が融合し、変貌が始まった。

  背中から灰色の剛毛が一斉に生え、肩甲骨が広がる。胸板がさらに厚くなり、腹筋が獣の逞しいプレート状に再構築される。

  陰茎が巨大化し、赤黒く獣のそれへと変わる。瞳が黄色く輝き、牙が伸びる。

  だが理性は、まだ完全には消えていない。最後の人間の声が、絶望に叫ぶ。

  (……俺は……ギンガ……正義の……警官……だった……のに……!)

  隣ではコテツも同時に射精を迎えていた。

  「ぐおおおおっ……!! 射精……する……あああっ……!!」

  どびゅっ! どぴゅるるるっ!

  コテツの太い陰茎から、勢いよく精液が噴き出し、マットを白く汚す。

  橙と黒の縞模様の毛皮が全身を覆い始め、筋肉が獣化する。タイガー獣人としての姿が完成する。

  射精と同時に、二人の理性が粉々に砕け散った。

  ウルフ獣人となったギンガは、獣の咆哮を上げた。

  「うおおおおっ……! もっと……! もっと犯せ……!」

  理性の欠片は消え、獣の欲求だけが残る。

  尻から溢れる獣の精液を、自分の手で掬い取り、胸板や腹筋に塗りつける。

  臭いを嗅ぎ、舌で舐め、興奮を高める。

  タイガー獣人となったコテツも、獣の目でギンガを見つめ、牙を剥く。

  「はあっ……はあっ……! サカる……! お前を……犯したい……!」

  二匹の新獣は、互いの身体に飛びついた。

  リングの中央で、精液まみれの肉体を絡め合う。

  射精の余韻でまだびくびくと痙攣する陰茎を振りながら、ウルフ獣人となったギンガは、獣の咆哮を上げてタイガー獣人となったコテツに覆い被さった。

  灰色の剛毛に覆われた巨躯が、橙と黒の縞模様の毛皮にぶつかり合う。

  熱い体温が互いの胸板でぶつかり、汗と精液と獣の体臭が混じり合って、リングの空気をさらに濃厚に淀ませた。

  「うおおおっ……! お前……熱い……!」

  ギンガの黄色く輝く瞳が、獣の欲情で燃えていた。

  変貌したばかりの身体は、まだ人間時代の記憶の残滓が疼くように敏感だった。

  灰色の毛皮の下で、元は鋼のような筋肉がさらに逞しく再構築され、肩甲骨が大きく広がり、背中のラインが獣特有の野性味を帯びてうねっている。手

  はすでに爪の生えた前足のような形状に変わり、しかし指の動きはまだ人間の頃の記憶を残したまま、貪欲にコテツの身体を探っていた。

  コテツも同じだった。

  タイガー獣人の橙黒の毛皮が汗と精液で濡れ光り、110キロを超える巨躯がギンガの体重を受け止めてマットに沈み込む。

  縞模様の胸板が激しく上下し、腹筋のプレート状に盛り上がった筋肉が、触れるだけで熱を伝えてくる。

  牙を剥き、舌を長く垂らした口から涎が滴り落ちる。

  「はあっ……はあっ……! ギンガ……お前の毛……硬い……いい……!」

  二匹はリングの中央で絡み合い、互いの身体の感触を貪るように確かめ始めた。

  ギンガの爪がコテツの背中をゆっくりと掻き下ろす。

  橙黒の毛皮を梳き分け、熱い皮膚の感触を爪の先で味わう。

  コテツの僧帽筋が、元人間時代の逞しさを残したまま獣の密度で盛り上がり、指の間で波打つ。

  逆にコテツの太い前足がギンガの灰色の胸板を鷲掴みにし、乳首の周囲を爪で軽く引っ掻く。

  元SATエースの胸筋が、獣化によってさらに厚く、硬く変わった感触に、コテツの獣の瞳がさらに輝く。

  「んぐっ……! ここ……熱い……お前の腹……硬い……!」

  二匹は互いの身体を舐め回し始めた。

  ギンガの長い獣舌が、コテツの首筋を這い上がり、耳の裏をねっとりと舐める。

  コテツの毛皮に染み込んだ汗と、さっき注がれた獣の精液の味が、舌に広がる。

  苦く、濃厚で、獣特有の獰猛な臭い。

  コテツも負けじと、牙を軽く立てながらギンガの肩を舐め、灰色の毛を濡らす。

  互いの唾液が混じり、毛皮をべっとりと濡らしていく。

  そして、二匹は同時に手を伸ばし、マットに飛び散った自分たちの白濁を掬い取った。ギンガの掌に溜まった熱い精液を、コテツの胸板に塗りつける。

  粘つく液体が橙黒の縞模様の毛皮に染み込み、筋肉の溝を伝って腹筋の谷間へと流れ落ちる。

  コテツも同じく、ギンガの灰色の腹板に自分の精液を塗りたくった。

  指を滑らせ、乳首から下腹部まで、ねっとりと擦り込む。

  精液のぬめりが毛皮を光らせ、獣臭をさらに強烈に漂わせる。

  「もっと……塗れ……お前の精……熱い……!」

  「うおおっ……! お前の身体……精まみれ……最高だ……!」

  二匹は精液を塗りたくりながら、互いの身体を転がすようにリングの上で横たわった。

  自然とシックスナインの体勢——横向きに絡み合い、互いの股間に顔を埋める形になる。

  マットの湿った表面が背中と側面に密着し、汗と精液の水溜まりが身体をさらに滑らかにする。

  ギンガの灰色の毛皮がコテツの橙黒の毛皮に擦れ合い、コテツの縞模様がギンガの胸板に食い込む。

  ギンガの視界いっぱいに、コテツの獣化した巨大な陰茎が迫っていた。

  人間時代より一回り太く、長く、表面に獣特有の血管と棘状の突起が浮き上がり、先端の赤黒い亀頭からはまだ精液の残りが滴っている。

  根元には獣の特徴である膨らんだ結び目(ノット)が脈打っていた。

  重い陰嚢が、毛皮に覆われたまま重々しく垂れ下がり、熱を放っている。

  コテツも同じく、ギンガのウルフチンポを目の前に晒されていた。

  灰色の毛皮に包まれた付け根から、逞しく反り返った肉棒。

  表面は熱く脈打ち、獣の棘が無数に生え、先走りと残精液でぬめ光る。

  「はあっ……はあっ……! お前の……チンポ……でかい……!」

  二匹は同時に顔を突き出し、無我夢中で相手の肉棒にしゃぶりついた。

  ギンガがまず、コテツの亀頭を口に含んだ。

  熱い、獣の味——精液と汗と獣臭の濃厚な混合物が舌全体に広がる。

  長い獣舌を巻きつけ、棘状の突起を一本一本舐め回す。

  口内が熱く湿り、唾液が溢れてコテツの肉棒をさらにぬめらせる。

  ギンガは頭を前後に振り、喉奥まで深く咥え込む。

  ぐぽっ、ぐぽっ、という淫らな水音がリングに響く。

  コテツのノット部分を唇で軽く噛み、舌先で尿道口を抉るように刺激する。

  同時に、コテツもギンガのウルフチンポを貪っていた。

  太い牙を立てないよう慎重に——いや、獣の本能で少しだけ立てて——肉棒を口内に収める。

  熱い脈動が舌に伝わり、棘が口蓋を擦る感触にコテツの喉が鳴る。

  ねっとりと吸い上げ、舌を螺旋状に絡めて亀頭を刺激。

  陰嚢を爪で優しく揉みながら、根元から先端までを一気にしゃぶり上げる。

  残った精液をすすり、味を堪能しながらさらに硬くさせる。

  「んぐっ……! じゅるっ……じゅぽっ……! お前の……精……もっと出せ……!」

  「うおおっ……! ぐちゅっ……れろれろっ……! ギンガのチンポ……美味い……!」

  二匹は横になったまま、完全に無我夢中だった。

  リングのマットに身体を預け、互いの腰を前後に振りながら、相手の肉棒を交互に深く咥え、浅く吸い、舌で執拗に舐め回す。

  ギンガの灰色の尻肉がコテツの顔に押しつけられ、コテツの橙黒の太腿がギンガの頬を挟む。

  爪が互いの尻を掴み、尻の谷間を広げてさらに深く顔を埋める。

  精液を塗りたくった毛皮同士が擦れ合い、ぬるぬるとした摩擦音が加わる。

  ギンガはコテツのノットを唇で圧迫し、尿道を舌で押しながら吸い上げる。

  コテツの腰がびくんと跳ね、獣の唸りが喉から漏れる。

  逆にコテツはギンガの棘を一本一本歯で軽く甘噛みし、先端を喉奥で締め付ける。

  ギンガの背中が弓なりになり、灰色の毛皮が震える。

  二匹の喘ぎと水音が重なり、観客の歓声さえ遠くに聞こえるほど没頭していた。

  精液が口の端から溢れ、互いの毛皮に滴り落ち、さらに塗りたくられる。

  新しい射精の予感が下腹部に溜まり始め、二匹はより激しく、互いのチンポをしゃぶり続け——理性など、完全に消え失せた獣の交尾が、公開のリングの上で永遠に続いていく。

  「もっと……しゃぶれ……! お前の精……全部飲む……!」

  「うおおおっ……! イキたい……一緒に……イケ……!」

  二匹の新獣は、シックスナインの体勢で横たわり、無我夢中に相手の獣チンポを貪り続けていた。

  精液まみれの毛皮が光り、リングのマットはさらに穢されていく。

  「見ろ! 元警官が獣同士でサカり狂ってるぞ!」

  「鋼の双壁が、精液まみれでイキ狂う姿……最高の絶望エンドだ!」

  二匹の獣は、リングの上で何度も射精を繰り返す。

  精液が飛び散り、マットを白く染め、互いの毛皮に塗りつけ、臭いを嗅ぎながらさらに欲情を高める。

  理性など、最初からなかったかのように。

  ギンガの心の奥底で、かすかに残った人間の記憶が、哀れに響く。

  (……正義の……警官として……こんな……淫らで……哀れな……)

  だがその声は、すぐに獣の喘ぎに飲み込まれた。

  「うおおおおっ……! もっと……犯せ……! イキ狂え……!」

  公開の地下闘技場で、二匹の獣は永遠に、絶望的に、淫らに交わり続けた。

  鋼の双壁は、完全に、獣欲の贄となった。

  ──絶望エンド

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