おさそい

  ──約束の日の朝。

  「準備は出来たでチュ?」

  「もちろんでチュ!おかあさん!」

  「なら良いでチュ。じゃ、気を付けて行ってくるでチュ!」

  「はーいでチュ!」

  「あっ、それとお泊りするなら迷惑はかけないようにでチュ。」

  「わかったでチュ!いってきまーすでチュ!」

  あたちはお母さんにそう言って巣穴からピョコンと出ると、急いで雪山を駆け下りて行ったでチュ。

  今日はずっと前に友達から誘われて、とある場所へと向かおうとしてるんでチュ。

  それは、ある日のことでちた。

  「あ、子ネヂミちゃん……っ。」

  「ん?なんでチュ?」

  「もし良かったら、今度……その、わたし達のお家に来ませんか?」

  「っ、チュ……!?」

  今年も冬になって里山の森にも雪が積もりだしたので、いつも通りあたちのお姉ちゃん的な存在であるウサギの友達・ラビッピと遊んでいた時の事でチュ。

  夕暮れに差し掛かってそろそろ帰ろうとしたら、突然ラビッピに誘われまちた。

  一瞬何の事か分かりませんでちたが、ふとラビッピが今はとあるモグラ達と住んでる事を思いだすとびっくりしまちた。

  「ぁ……ダメなら、いいですよ?何となく、その……今ならきっと、子ネヂミちゃんのことも迎えてくれると思ったんです……っ。」

  「そー、なんでチュか?」

  「はい……!皆さんとても優しいし、わたしはもうモグラーニャさん達の家族ですから……//// それに、7人も[[rb:姉弟 > きょうだい]]が居て、みんな子ネヂミちゃんくらいの年なので、きっと仲良くなれると思います……!」

  「なるほどでチュ……。」

  「えっと、無理にとは言わないです……。子ネヂミちゃんが良けれ……。」「いくでチュ!」

  始めは乗り気がしませんでちたが、何だかラビッピのお話を聞くうちに、あたちも行ってみたいと思えてきてつい言葉を遮って返事をしちゃったでチュ。

  ただハリネズミのあたちが、モグラの[[rb:住処 > おうち]]に行ってもいいのかって不安はありまちたけど。

  「ほ、ホントですか……!?」

  「うんでチュ!ラビッピのおさそいなら、あたちはことわるりゆーなんてないでチュ♪」

  「子ネヂミちゃん……っ、ありがとうございます……!////」

  びっくりして目をぱちくりさせつつも、あたちを見るラビッピへそう答えるあたち。

  いつものように頬を赤らめて、嬉しそうにしてまちたね。

  「じゃぁ……いつにするかは、子ネヂミちゃんにおまかせしますね……っ。親ネヂミさんに心配かけちゃいますし……。」

  「わかったでチュ♪ ぜったいいくから、たのしみにまっててでチュ!」

  「はい……!」

  そうして、あたちはラビッピとのお約束で、モグラーニャ達の[[rb:住処 > おうち]]へ行く事になったのでチュ。

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  しばらくすると、森が見えてきたでチュ。

  ただ、そこでどこか見覚えのあるペンギンのお姉ちゃんが居まちた。

  「あ!エンペラでチュ!」

  「……ん?あ、子ネヂミじゃん。」

  ペンギンのお姉ちゃんこと、エンペラ。

  見た目はちょっと怖そ~だけど、とってもやさしいでチュっ。

  「なんか慌ててるみたいだけど、何処行くの?」

  「ちょっと、いそぎのようなんでチュ!」

  そう聞かれると、あたちはシャカシャカとその場で足を動かしてみせまチュ。

  でも、エンペラは興味なさそうな反応を見せると、何か思い出したように森の外へと振り返って。

  「ふーん。あ、そーいえばアンタの事待ってる子が居るよ。」

  「チュ?わわわ、すっかりまたせちゃったでチュ!またねでチュ~!」

  「あぁ、気をつけてなー。……っと、アタシもそろそろ帰るかー……。」

  エンペラの言う子が誰なのかすぐに分かると、あたちは慌てたようにエンペラと別れて森の外へと向かいまちた。

  あれから結構な時間が経ってたと思うので、きっと待ちくたびれてる頃でチュね……。

  その、待っている子の元へと向かうあたち。

  たちまち、森の中を駆け抜けるとその姿が見えてきまちた。

  「あっ!ラビッピー!」

  あたちを待っていた子、こちらの声で小さく手を振るラビッピの姿がそこにはありまちた。

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  「子ネヂミちゃん……っ。良かったです……。」

  「ハァッハァッ、おくれてゴメンでチュ!」

  「ぇ、えっと、大丈夫ですよ……? ぁ、もう行きましょうっ、こっちです……っ♪」

  「はいでチュっ。」

  ラビッピのもとへ辿り着くなり、息を切らして謝るあたち。

  でも、ラビッピはどこか安堵した様子を見せると、すぐにあたちのおててを繋いで案内を始めまちた。

  次第に森から遠ざかっていくと、目の前には大きな切り株が見えてきまちた。

  すると、ラビッピは突然足を止め。

  「チュ?」

  「ぁ、ちょっとここで待っててください……!」

  あたちはそう言われるがまま、その場に立ち止まると、ラビッピは切り株の方へと走っていきまちた。

  不思議そうに、切り株まで走っていくのを見ていると、ふとモグラらしき姿が見えて、その人と話しているのが見えたでチュ。

  「あれ、もしかちて……。」

  待っててと言われたので、あたちはその場からラビッピとそのモグラの様子を見ていまちた。

  すると、突然あたちは何者かに足を掴まれたでチュっ。

  「チュ!!」

  「んー?あ、ハリネズミだー!」

  驚いて足元を見ると、不意に目が合ってしまいまちた。

  そんなあたちの足元に居たのは、目の前に居るのよりも小さい、子供のモグラでちた。

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  「な、なにするでチュ!ってか、びっくりさせないででチュ!」

  「あっ!こ、子モグラさんダメですよ……!」

  あたちの声に気づいたのか、ラビッピは慌ててあたちの元へと駆け寄って、あたちにしがみつく小さなモグラを止めようとしてまチュ。

  でも、小さなモグラはあたちに構ってほしいのか、離れようとはしないでチュ。

  「ラビッピ!たすけてでチュ~っ。」「あそんであそんでー!」

  「わわわっ。じゃぁ……後で、みんなでお散歩しましょうっ♪」

  「ほんとー?わーい!」「あ、ありがとでチュ……ラビッピっ。」

  ラビッピが小さなモグラに言い聞かせたおかげで、何とかあたちは解放されたでチュ。

  見たところ、あたちと変わらない風な感じなのに、普通にあたちの方がおねーちゃんでチュね。

  「ごめんなさい……っ、子モグラさんがそちらへ行ってたなんて思わなくて……。」

  「んーん、べつにきにしてないでチュっ。でも、ほんとーにいっしょにくらしてたんでチュね。」

  そう、首を横に振りながら。

  ラビッピ本人からは、ただモグラーニャが好きなコトしか知らされてなかったでチュが、風の噂で今はラビッピがモグラ達と一緒に住んでるらしいコトは聞いてまちた。

  ただ、まさかそれが本当だったなんてビックリでチュね。

  「ぁっ……そういえば、まだ子ネヂミちゃんには言ってなかったですね……。」

  「だいじょーぶでチュっ。」

  「良かったです……っ。じゃぁ、改めて……っ!」

  「チュ?」

  申し訳なさそうに言うラビッピを[[rb:赦 > ゆる]]すと、ラビッピはそのままあたちの前に来て向き直り、その後ろからモグラーニャ達が出てきまちた。

  そして。

  「ようこそ……!」

  「「「「「「「「「オレ(私/わたし/ぼく)達の[[rb:住処 > うち]]へ!」」」」」」」」」

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  あたちはモグラ達に迎えられると、とうとう自分以外の住処に来たんだなって思いながら、自分よりもおっきいモグラの夫婦とラビッピ、同じくらいのモグラの子供達に巣穴へと案内されまちた。

  モグラーニャとは、いつかの雪山で穴の中と外両方でお邪魔してまちたけど、なんだかあの頃を思い出す光景でチュね。

  「モグラのあなってこんなにひろいんでチュね。」

  「うん!そーだよ?ねぢみさん!」

  「パパががんばったんだってー。」

  周りを眺めながら進むと、水色と赤のスカーフのモグラが言いまチュ。

  まあ、前を行くウサギも通れるようにおっきくしたんだと思いまチュけど。

  「さぁ着いたぞ~。」

  「へー、ここが……。」

  モグラーニャがそう言うと、顔を上げまちた。

  そこには、ハリネズミであるあたちが初めて見るような巣窟の光景が広がっていまちた。

  「どうですか……?子ネヂミちゃん……っ。」

  「ねぢみさんのおうちよりおっきいでしょー!」

  「ま、まぁまぁでチュっ。」

  「えー!」「もしかしておっきいの?」

  「うっ……そ、それはー……。」

  巣の中を眺めていると、ラビッピとモグラの一人が楽しそーに話しかけてきまチュ。

  どー見てもあたち達の方が数は多いでチュし、巣もこっちよりはおっきいでチュが、下手に来られたら困るので誤魔化そうとするあたち。

  そんなやり取りをしていたら、モグラのお母さんらしき人が来たでチュ。

  「ネヂミさん、だったかしら?」

  「チュ?そーでチュけど……。」

  顔を見ると、途端にあの頃のコトを思い出すあたち。

  きっとあたち達のコト、この人はまだ許してないでチュよね……。

  でも、そう不安に思っているとモグラのお母さんはあたちに目線を合わせ。

  「初めまして、私はモグリーナよ。モグラーニャとラビッピさんからアナタの話は聞いてるわ。」

  「ど、どーも……でチュ……っ。」

  気まずいと思って視線をそらすあたち。

  すると、様子に気づいたラビッピはあたちの隣に、モグラーニャはモグリーナさんの横に来て。

  「子ネヂミちゃん、大丈夫ですよ……っ。」

  「ああ。お前も、悪気があった訳じゃないだろう?」

  「それは……。っ、ラビッピ……。」

  「子ネヂミちゃん……っ。」

  ラビッピに優しくハグをされるあたち。

  確かにあたち達は、今目の前に居るモグリーナさんを含めたモグラを捕まえてたでチュ。

  ただ、それは全部あいつの指示だったでチュ。別にあたち達にはそんな気なんてなかった。

  でも、だからと言ってあんなコトをしたのは事実でチュ。

  「わたしも、最初は同じ気持ちでした……。でも、モグラーニャさん達皆さんに温かく迎えられて、今はこうして家族にもなっちゃいました……っ//// なので、子ネヂミちゃんも大丈夫です……!」

  「よしよし」と頭を撫でられ、まるでお姉ちゃんのような雰囲気を見せるラビッピに、あたちとした事が急に目に水が浮かんできて、ラビッピに顔を埋めたままあたちは泣き崩れまちた。

  「ラビッ……ピ……っ、っっ……ち、チュゥ……う、ウェェェェンっ!」

  「ふぇっ!?こ、子ネヂミちゃん……?」

  「あらあら、どうしたの?」「お、おい……何で泣くんだ!?」

  「あ!らびっぴねーたんがねぢみさんなかせたー!」

  「わわわっ、わたしのせい……ですか!?」

  アタフタするラビッピの様子が肌越しに伝わってくる中、あたちはしばらくそのまま泣き続けたでチュ。

  ラビッピも含めて、あたち達はあんなコトをしたのに、温かく迎えてくれるなんて良い人達過ぎるでチュ……。

  きっと、お母さんもそれを知ってたからお誘いには反対しなかったんでチュね。

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  あれからしばらく経って、泣き止んだあたちは7人のモグラ達と遊んであげまちた。

  いつもはラビッピがモグラ達のお姉ちゃんとして、遊んであげてるみたいでチュが、今日はあたちも頑張るでチュ!

  ネヂミの中ではあたちは真ん中くらいで、お姉ちゃんではあるけどむしろ妹みたいな存在でチュ。

  そんなあたちが自分よりちっちゃい子の、しかもこんなモグラ達の面倒を見てあげる事になるなんて思わなくて、どーすればいいのか分からないでチュけど、ラビッピがついてるから大丈夫でチュよねっ。

  「きゃっ!ううっ、捕まっちゃいました~……。じゃぁ、今度はわたしがオニさんですね……!捕まえちゃいます……っ!」

  「わー!」「にげろでチュー!」

  鬼ごっこではあたちは、モグラ達とおんなじで逃げたり、時にはオニになって捕まえたりしまちた。

  もちろん、あたちはハリネズミなのでケガをさせないように気を付けながらでチュが。

  「きゃ……っ!」

  「ラビッピつかまえたでチュー!」

  「うう、油断しちゃいました……。」

  「ねぢみおねーちゃんすごーい、ウサギさんにかったー!」

  「ふっふっふーでチュ♪」

  鬼ごっこが終わると今度は競争が始まりまちた。

  当然ながら勝ったのはラビッピでちたが。

  「ウサギとして、ここは譲れないです……っ!」

  「さすがでチュ!ラビッピっ。」

  「むー!このまえはかったのにーっ。」

  そんなこんなで、みんなで遊んでいるといつの間にか辺りが暗くなってきまちた。

  楽しい時間もあっという間に過ぎちゃいまチュね。

  「そろそろ、戻りましょう……!」

  「はーい!」「はーいでチュ!」

  モグラ達に釣られて挨拶をすると、あたちは一緒にモグラーニャの待つ巣穴へと戻っていきまちた。

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  夜になって、あたちはモグラーニャ達へお願いして一晩泊めさせてもらうことにしまちた。

  さすがに夜道を一人で帰るのは、幾らあたちでも心細いと思ったからでチュ。

  「そっか。もちろんいいぞ?」

  「ホントーでチュ!?……って、べ、べつにさみしいからってワケじゃないでチュからねっ。」

  「ねぢみおねーちゃん、かおまっかっか!」

  「子ネヂミちゃん、嬉しそうで良かったです……♪よしよしっ。」

  「チュ!?ちょっ、ラビッピまでひどいでチュ~っ////」

  「ハハハハハっ。」

  巣穴中に響き渡る笑い声に、あたちはここに来て良かったと思いまちた。

  いっそ、このままほんとーにモグラ達のお姉ちゃんになっちゃいたいくらいに楽しかったでチュ。

  でも、あたちにはラビッピと違ってお母さんも姉弟も居るでチュ。

  寂しいけれど、朝には帰らないといけないのでチュ。

  「さ、そろそろメシにするぞ!」

  「ネヂミさんも一緒にどうぞ。」

  「あ、ありがとーでチュ!」

  あたちはモグラの大家族(と一人のウサギ)と共にエサを食べ、そして毛づくろいを済ませまちた。

  そして。

  「んっ……そろそろ寝ましょうか……。って、あれ?子ネヂミちゃんは……?」

  「ねぢみおねーちゃんもうねちゃったよー。」

  「ぇっ、あ……ホントですね……♪ きっと、疲れちゃったのかもしれないです……っ。」

  「……らび……ぴ…………もぐ………。」

  あたちは、すぐに眠くなってしまったので一足先に眠りにつかせてもらいまちた。

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  「じゃ、あたちはもういくでチュ。」

  「ん、また来いよ?いつでも待ってるからさ。」

  「機会があれば、ネヂミさんのご家族にも会いたいわね。」

  「ぼくもねぢみおねーちゃんのおうちいきたい!」

  「もちろんいいでチュよっ。いちおーおかあさんにいっておくでチュ!」

  「たのしみー!」

  朝になると、あたちは巣穴の前でモグラーニャ達に見送られまちた。

  近くの森までは、ラビッピがついてくれるみたいなので一安心でチュ。

  「じゃぁ、行きましょうか……っ。」

  「はいでチュ! みんな、またねでチュ~!」

  そうして、あたちはお母さん達の待っている雪山の巣へと戻っていくのでちた。