埼玉県人ムスリム会

  ここはちよつと未来のサイタマ。

  完全に電子化されて、国籍や民族、言語が失はれた世界。

  一匹のバイオねこが路地裏を行く。

  彼女の名前は[[rb:Stray > ストレイ]]。

  サイタマ縣人はそれを見て、驚いてブザーを鳴らす。

  または厳戒態勢となつた。

  サイタマ県人は猫を見た事が無いのか?

  さうでは無い。

  正確には、猫に伴ふ小型ドローンを見て、アラートを発令させたのであつた。

  もう存在しないが、彼らはかつて中国の小型ドローンで爆撃を受けた事を、遺伝子レベルで記憶してゐたのである。

  ドローンに憑りついた人間の魂。

  彼の名は[[rb:VAIO > ヴァイオ]]であつた。

  彼は彷徨へるムスリムであり、「埼玉県人ムスリム会」といふのを訪ねて、この街にやつて来てゐた。

  猫はホログラムであり、実際の猫ではない。

  埼玉県人ムスリム会は、片仮名のサイタマになる前、埼玉生まれのムスリムと、埼玉在住のムスリムによつて結成された連絡会であつた。

  片仮名のサイタマにも現存してゐるかは不明だが、埼玉県人ムスリム会は、最後までサイバネ化に抵抗し、ネットスフィアへのアクセス権を持つ[[rb:部族 > トライブ]]として有名であつた。

  原始的な埼玉県人が、東京都に不法滞在し、民族問題となつてゐた時代もある。

  VAIOは懐かしいと感じた。

  記憶素子は彼には残されてゐないのに、何故かさう感じた。

  この街にはgallerìaといふ男がゐた。

  [[rb:同郷の者 > サイタマー]]は彼をガレリーと呼んだ。

  彼を性的な目で見る者達は、ガレちやんと呼んだ。

  イカれた呑んだくれのホームレスは、彼をギャルだとか、ギャリーとか呼んだ。

  また、サイタマには、ドスパラやマウスといつた者もゐた。

  彼らはここサイタマの街では、「アウトサイダー」と呼ばれてゐた。