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巨龍来襲-交易商-趙 承恩(チャオ チェンエン)の闘い
第3騎士団からの一報
「巨龍-瑠璃の翼、来襲!!」
この報告を契機に、備えていた各騎士団、及び協力組織が動き出す。先ずは....
各騎士団の観測部隊に随伴させた『茶毛商会』の通信部隊。その中の一つ、第3騎士団に同行していた通信部隊が、商会がジークランド全土に張り巡らせた魔導通信ネットワークに、一報と、観測結果の詳細を送り込んでくる。その情報は各中継地点を経て、商会本部へと伝達される。其処の魔法陣演算室にてエラー訂正等の処理をされた正確な『生』の観測情報が、本部と魔法陣ネットワークで直結された第2騎士団の居る王宮へと伝送されていく。
第2騎士団は、ジークランド全軍の指揮を執る、いわば『大本営』。騎士団長の赤き龍人:ガルガンが、他の三龍が内の一つ『焼けつく山嶺』の予測出現ポイントへ自ら出撃している今、事実上のジークランド全軍の頭脳は、札付きの不良騎士....獅子のエラセドが担う事となる。
普段が普段だけに、部外者からは全く信用されていないが、こういう時のエラセドの頭脳は、全ての可能性を考慮し、非常に冷徹だが合理的な判断を下していく。其れこそ、どの部隊で何人の戦死者が出るかまでをも、計算に入れた判断を....
商会を介して伝えられた観測結果より、エラセド達が事前に計算・予測していたパターンの内の一つとほぼ合致した事から、それに基づいた作戦計画が発令され、商会本部を経由して、魔導通信ネットワークに接続している、各騎士団に随伴している商会の通信部隊の魔導師に伝えられ、更に各騎士団に伝えられていく。
その様子を商会本部で見守るのは、三週間前に通称「ゴトラス事件」で賊に拉致され、救出されるまでの一週間、拷問まがいの監禁をされ続けた、商会の会頭・趙 承恩(チャオ チェンエン)と、その他の商会の上役達。過酷な監禁生活から、巨龍へ対応するまでにの復帰は困難と目されていたが、救出後、僅か三日間の休養を経て、業務に復帰。精力的に巨龍対応へ陣頭指揮を行い続けていた。その姿に鼓舞されて、商会の社員達も与えられた自分達の役割を果たす為に懸命に働き続けて、今、この時を迎えているのであった.....
特に熱心に情報を精査しているのは、社員達とその家族を安全に避難させる役割を負った『巨龍事案』対策専従課の面々。
対策専従課は、巨龍の位置を特定できた時点で、商会の社員とその家族を何処に避難させるのか?その計画策定と実行の任を帯びている。しかし....まだ、四龍の内の一つの位置が判明しただけである。他の三体が何処に居るのか判らなければ.....
専従課の面々に焦りが募る。
『早く、他の三体を....』
一方、会頭の趙 承恩(チャオ チェンエン)は....
「今の所、通信は上手く行っとるようじゃの....」
「システムに障害は見られません。観測データ、順調に第二騎士団へ転送されて行きます」
通信システムの管理魔導師の言葉に、趙が呟く
「さて....エラセド、お前さんの出番じゃぞ。この次はどう出る?」
実の所を言えば、趙の「ゴトラス事件」で負ってしまった『傷』は、全く癒えていない。肉体的な変調も続いているのを薬で抑え、トラウマになってしまっている監禁生活の記憶を、仕事に没頭する事で抑え込んでいた。気を緩めれば暴れだしそうなこの『傷』を、社員達への義務感と、ジークランド市民への恩義を拠り所にして抑え込んでいた。
『此処で儂が立ち続けなければ、示しがつかない』と....
今でも、一人になると、躰が震えてしまう。
『また、無力に拐かされてしまうのではないか』と....
自分の能力(ちから)、危険災難を「臭いで察知できる」事を、指揮判断能力を過信してないかと、自信がぐらついてしまう。
監禁中に受けた数々の恥辱的な仕打ちにより、堕ちてしまいそうになった自分の心。本当に今は大丈夫なのか?
こんな時、一番側に居て欲しい悪友....ゴードフは居ない。だが甘えた事など言ってられない。友は、今、もっとも危険な場所へ赴いているのだ。守りたい者の為に。
自分には、自分を支えてくれる者達が、今この場に、こんなにも居る。だから....
「どの神でも構いません。儂に、今、この場に立ち続ける力をくだされ....」
我知らず、震える拳を握りしめて、そっと呟いた。
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