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定規に巻いた清潔なタオルで顔を拭ってやり、呼吸が落ち着いたところでお茶を飲ませる。
そうしてやっと、拘束を解くことが出来た。
いや、先に解いたら倒れ込みそうでさ。怪我とかしたら嫌じゃん。
先程まで散々弄り倒した事を棚に上げ、胸の内で誰にともなく言い訳を述べる。
「大丈夫?ごめん。ちょっとやり過ぎたわ」
流石に申し訳なくて謝罪を伝えると、青年はしゃがれた声で「謝らないでくれ」と答えた。
「・・自分で、望んだ事だ。アヤは、悪くない・・」
「・・・まぁ。アド君がそう言うなら・・」
「あぁ。だから、その・・・」
「うん?」
青年はシャツの前を合わせ、肌を隠しながら何やらもごもごと口ごもっていたが、小さく頷くと顔を上げた。
その目は羞恥に濡れていたが、奥にはトロリとした欲望が見えた気がした。
「・・・また、シて・・貰えるだろうか・・」
若干の上目遣いでそう請われた頼子はドッ!と跳ねた心臓を反射的に押さえる。
おい待て。イケメンずるいぞ!?
裸シャツに首輪で、さらに潤んだ目で上目遣いとかヤバい!
助けて!自分の性癖に殴り殺されるっ!
誰だっ!?あんな格好させたのは?!
私だよチクショウ!
視界の暴力に耐えられず、胸を押さえたまま後ろを向くと「アヤ?」と背後から掠れた、心配そうな声がした。
未だドッ!ドッ!と早鐘を打つ心臓を落ち着けようと服の上から押さえ、後ろ手でぷらぷらと手を振って「何でもな~い。気にしないで~」と敢えて間延びした声で答える。
「そうか。なら、良いんだが・・」
「・・・うん。あの、さ・・君が望むなら・・その・・またその内、ね?」
ちらりと視線を向けながらそう伝えると、青年は嬉しそうに頷いた。
「ああ!是非に!」
その満面の笑みを見て、欲望に素直過ぎる青年がちょこっと心配になった頼子だった。
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
投げ渡された黒い革のベルトを、自らの首に巻いていく。
羞恥と、それを遥かに上回る期待感で心臓が高鳴り指が震えた。
一枚一枚服を脱いでいく様を、腕を組み顎に指を添わせた彼女の視線が這う。
もう、それだけで背筋が震える程に興奮した。
シャツの上から巻いたベルトが、肩の高さで固定されギチリと鳴ると、肌を隠すことが叶わなくなり、屈辱的な姿勢にぞくりとする。
彼女からの支配を、首に繋がる紐越しに抵抗することなく受け入れた。
前回の経験により、否応なしに分身は期待に満ち満ちてすぐさま固くなり、自身の有様に羞恥が溢れるものの・・
背徳的な快感があっという間に塗りつぶしてきて、どうでもよくなってしまう。
黒縁の眼鏡を掛けた彼女の目元が愉しそうに細まる度、腰から背中にかけて何とも言えない、ぞくぞくとした快感が走る。
声を抑える事を禁じられ、それを言い訳に思い切り嬌声を上げる事の、何という解放感か。
触れる事の叶わぬ、絶対的優位な場所から下される命令に従う安心感に浸り、ただ快感を追う事だけを考えればよい状況に興奮は何処までも加速する。
じりじりと積み重ねられる初めての快感が、身体の中で燻り続ける熱を集め、捏ね、凝縮していく。
胸で弾ける、びりっとした刺激が背骨から分身の芯を貫いて、濁った嬌声を上げさせた。
そこへ性具など取り入れられては堪ったものでは無い。
不思議なトロリとした液体が助けとなり、きつく狭い穴へと自身を誘い込まれれば、欠片程しか残っていなかった理性が完全に取り払われて、自分の喉から獣のような声が漏れた。
支配され、それを受け入れ、快楽を解放し、耐えに耐えて凝縮した魔力を精と共に放つ快感といったら堪らない。
更に、達して鋭敏になった状態での拷問的な快感の追い打ちで、脳が焼き切れるような錯覚に陥り目の前で火花が散った。
もう何も触れていないのに、分身の先が痺れるようなじんじんとした感覚は、余韻を何処までも引き延ばす。
こうして、私の二度目の真なる解放は幕を閉じた。
前回もそうだったが、凝縮した魔力を排出した事で体がとても軽く感じられる。
ぎちぎちと弓を引き絞るように抑え、耐えていた感覚が全くない。
身体と共に魂まで解放されたような清々しさだ。
なので勿論、次回の約束も取り付ける。
彼女は素直な願いには弱いらしいと察して、平常になりつつある事で戻って来た羞恥を脇に置き、懇願した。
結果は了。
喜び勇み「是非に!」と言葉を返した時には、意識は既に次回へと向いている。
次は彼女からどんな悦楽を与えて貰えるのだろうか?
あぁ。本当に、楽しみでならない。
そうこうしている内に夜半もとうに過ぎたということで、今回はこれにて解散との流れになった。
堺である鏡の周囲は酷い有様で、各自掃除が必要になったのも大きい。
・・・素晴らしい一時だっただけに、片づけは煩わしい。
特に彼女は一人暮らしとの事だから、実に面倒な事だろう。
「では、コレは貰うぞ?」
「いや、気に入ったんなら良いけど・・マジか・・」
彼女からの支配の象徴である首輪を強請れば、渋々ながら許された。
嬉しい。
可哀想な者を見るような彼女の目に少しばかり興奮が戻って来る。
「ん゛んっ!そ、それと、こちらの器は少し借りても良いか?アヤと、そちらの世界についての説明材料にしたい」
咳払いして、「にほんしゅ」とやらを注いでいた器を掲げる。
「あぁ。相談するって言ったね。魔法院だっけ?」
「魔術院だ。鏡の解析と分析を依頼する」
「はいはい了解。ほんじゃ、今日はこの辺で~。また明日の昼過ぎにね!おやすみ!」
歯を見せて笑う彼女の就寝の挨拶に、ドキリと心臓が高鳴る。
「あ、あぁ。おやすみ!」
こちらの返事を待って、彼女側の鏡に布が掛けられ彼方の様子が分からなくなった。
・・就寝の挨拶は基本、家族間でしか交わされないものだ。
しかも成人していれば精々傍仕えとやり取りする程度で、年頃の異性となど交わした事が無い。
否応なしに彼女を意識してしまい、羞恥とは違う恥ずかしさで顔が火照る。
「参った・・本当に、参った・・」
感謝と、崇拝にも近い心の有り様に動揺しつつ、歓喜に身体が震える。
「これが恋、か・・」
生を受けて18年。
初めての恋心を自覚して、感動に身を震わせていると部屋をノックする音が耳に届く。
入室の許可を求める声に「暫し待て」と答え、急ぎ首輪を外した。
圧迫感が無くなり、どことなく寂しく感じつつ首元のボタンをきっちり留め直す。
「もういいぞ、入れ」
「失礼致します」
入室してきたのは物心ついた頃から自身に仕えてくれている、たった一人の傍仕えだ。
身の回りの世話全てを彼が一人でこなしている。
「おや、随分とすっきりされたようで」
「あぁ。身体が浮きそうなくらい軽く感じる。やはり彼女は素晴らしい」
「・・異界の者にアディード様をお任せするのは本当に、本当に断腸の思いです」
「わたくしがお手伝い出来れば・・」と俯く傍仕え・・ハーフエルフのジャスパーに苦笑しながら労いの言葉を口にする。
「ジャス。いつも君には世話になっているし、とても感謝している」
「アディード様・・」
「だが君の魔力とは相性がとことん悪い。こればっかりは手伝ってもらう事は出来んよ」
「本当に、悔しゅうございます」
「気持ちは嬉しいが声を抑えてくれ。あちらで彼女も片づけの最中だ。すまないが、こちら側を頼めるか?」
「・・・・はぁ。・・承知致しました」
口惜しさを堪えて、ジャスパーは行為で汚れた鏡、床を魔法で綺麗に洗浄し片づけていく。
「これも頼む」と置かれた紐とベルトには眉を潜めたが、何を言うでもなく同じように洗浄魔法を施してくれた。
「遅い時間ですが、湯浴みになさいますか?」
「あぁ。頼む」
「畏まりました。既にご用意出来ております」
「助かる。それと・・」
「お飲み物ですね?喉に良い物をご用意致します」
「湯浴みの後にお召し上がりください」とのジャスパーの気遣いに感謝して頷きを返すと、彼は深々と礼をした後で静かに退出して行った。
着替えを用意しに行ったのだろう傍仕えの後ろ姿を見送ると、小部屋には一人きりとなる。
この部屋は自室の隣にある、魔力を消費するため・・自慰をするための部屋だ。
人一倍どころか、人十数倍ほど魔力を貯め込めてしまう体質の私は、毎日一定量の魔力を排出しなくては体が持たない。
魔法を使うことが殆ど出来ないため、魔力を多量に含む精液を体外へ放出することにより体調を整えている。
ただの、生きるために必要な行為だった自慰が、彼女の手にかかれば全く違うモノとなったのには感動すら覚えた。
彼女の魔力は心地よい。
基本、他人の魔力は私には毒となる。
周囲に漂う魔力ですらジワジワと心身を侵食し、勝手に集まり凝っては身体を蝕む。
だが、直接ではないにしろ、彼女の身の回りにあった道具たちに染み付いた魔力の残滓は、私には魔力排出の特効薬となった。
滞り、凝り固まった魔力へ馴染み、流れを促し、排出の手助けとなる。
唯一無二の特性だ。
弟妹を除く家族は、私の効率の悪い魔力消費の方法を知っている。
知っていて、もっと良い術は無い物かと方々に情報を求めていたのだ。
まさか鏡が異世界に繋がり、そこで見つける事になろうとは・・一体誰が思ったろう。
「洗浄魔法を受けてすら、アヤの魔力は弱まりもしない、か・・」
汗などで汚れていた首輪は、ジャスパーに洗浄され今は汚れ一つない。
だが、彼女の魔力は尚も健在だ。
触れた指先からじわりと浸透してきて、集まり始めていた魔力の流れを阻害し、排出を促す。
正に、私には解毒剤でありお守りだ。
「これで更に魔法を使う事が出来るようになれば・・魔力排出が流入の早さを上回り、他の者と・・家族と触れ合う事も可能になるかもしれん」
生まれてこの方、家族との触れ合いを避けざるを得なかった青年は、瞳に強い光を宿し強く、強く首輪を握りしめる。
オレグラント王国王弟、王位継承位第三位。
アディード・オレグラントは期待を胸に、浴室へと足を向けた。
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