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出前の天丼を親友と食べながら、のんびりと会話する。
話題は勿論、青年から貰った品について。
「さてはて。取りあえずお試ししてみたワケですが・・」
「こっちで大っぴらに使えないマジヤバなブツだったね」
「ほんそれ・・使わないに越したことはないけど・・」
そこまで言って、ぱくりと一口。
あぁ、茄子の天ぷら美味ぇ・・
「さっきも言ったけどさ。腕輪してたらまず大きな怪我はしないだろうから、薬の方は念の為って思うしかないんじゃない?」
「あんま気にし過ぎるのもね」と、親友はレンコンの天ぷらを口に運ぶ。
「うん・・「なるようになる!」って程度に考えておくよ」
「そうね。でも本当に警戒心は上げてってよ?」
「分かりました」
「よろしい」
そう言って、納得したらしい親友はセットで付いてきた味噌汁を啜った。
あれだけ説教されたらね、殊勝な態度にもなるってもんです。躾られたともいう。
てかこの天丼、初めて頼んだけど本当に美味しいな!
リピしよ~っと。
注文した店をお気に入り登録していると「てかさ」と切り出された。
「貰いものについて「悩んでる」って言ってたけど、どう扱うかの話で良かったの?」
「あ。いや~・・何か凄い物貰った自覚があるだけに、何か申し訳なくてさ・・お返しとかしなくて良いのかなぁって思って・・でさ。実際、ロハで貰う理由も無いから「カレールーの売り上げから差っ引いて欲しい」って言ったんよ?」
「うん。そしたら?」
「・・・笑顔で押し切られました・・」
渋々受け取った後に代金を支払う事を言ったからか「今、受け取ったよな?それはもうアヤの物だ」って。
「あの完璧イケメンフェイスの笑顔で圧を掛けて来るんだもん・・耐えられませんでした・・」
「あれま。じゃあ今回の品代はもう諦めるしかないとして・・何か頼み事とかされた時に配慮してあげたら良いんじゃない?勿論アコの無理のない範囲でさ」
「うん・・そう言えば遠征?で水竜が居る遺跡に行く人らの護衛任務に就くとかって言ってたから、何かお役立ちグッズとか贈ろうかな?」
「・・それなんてロープレ?」
眉根を寄せて言う親友に「あはは!だよね!私も似たような事思った!」と返して、自分も味噌汁を飲む。
うん。これも美味しい。
今度青年と食べる時に注文するのもアリだな。
夕食を終え、金貨を預かった親友は「換金出来たら振り込むね~」と帰って行った。
受け取った金貨の枚数?・・100枚以上とだけ言っておきます。
大金が手元にあるのと一緒で、自宅だというのに落ち着かなかったから親友が直ぐに来てくれて本当、助かりました。
今の金の価値を知るまでワクワクしてたのにね。
仕方ないよ~。根っからの庶民だもの。
さて。
青年は今日「時間が出来たら顔を出す」とか言ってたけど・・[[rb:12時 > タイムアップ]]までに来れるかな?
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
隣国へ旅立つまであまり猶予が無い。
姉の手助けもあったが、無事兄二人を説得してなんとか調査隊の護衛任務に就く事を認めてもらえた。
・・・これでもかと防御の魔道具や魔術陣を刻んだ防具を渡されたが・・
全て使用すると全く身動きが取れなくなる有様には、苦笑せざるを得なかった。
近くに居る時ならまだしも、遠く離れるとなると心配で仕方ないらしい。
今回の任をしっかりとやり遂げ、兄らの安心へ繋がるよう努めるとしよう。
急に決まった任ではあるが、元々護衛の枠は空いていたらしく「寧ろ、あちらからは感謝されるだろう」と言ったのは今回の人員を調整していた担当文官だ。
そして文官から告げられた内容には「王族が赴くとなると色々と不都合がある為、身分を隠して行くように」と想定していた事も。
勿論、皇国の上層部と、現場の責任者には知らせる。
「何があっても皇国に責任を追及しない」と誓約した上でだ。
実際、王族として赴けば夜会や会談といった面倒な仕事で遺跡の調査どころではなくなるだろう。
それに、だ。周囲にはまだ魔法を使えるようになった事実は伏せておいた方が良いというのが、自分と兄姉たちの考えだ。
唯の冒険者として身分を偽り行動するのに否やはない。
つまり、担当文官からしてみれば、私はただの数合わせ。
同行する傍仕えの方にこそ、戦力として期待しているのが言葉の端々から窺えた。
それで良い。何の問題も無い。
そんなことより重要なのは、今日は彼女の所へ向かう余裕がない。という事だ。
細々とした事は傍仕えに任せつつ、あちらから購入した「かれーるー」の報告と、姉へ管理の移譲。
料理人の選定の補佐。
魔法の練習と検証。剣の訓練。
次兄から魔石を譲り受け「梟の黒」と面会、呪具の受け取り。
そして約束していた傍仕えの派遣。
自室で傍仕えを見送った時点で、既に夜半過ぎ・・
彼女との取り決めで、互いに日付を跨いだ時は声を掛けない事になっていたが・・
今日は、一度も顔を見ていないのだ。
『せめて気配だけでも感じて床に就きたい』
そう思い、水で満たしたグラスを手に小部屋へ向かう。
呼び掛け用のベルを鳴らすことなく、鏡を覆う布を避けて水の蔦をそっと送り込んだ。
あちら側に魔力波を放ち、魔力感知で様子を確認する・・
彼女は暗がりの中、机の明りだけを灯して何やら熱心に描き込んでいた。
『そういえば、そろそろ仕事を再開すると言っていたな・・』
これは駄目だな。とても邪魔立て出来ない。
もともと様子を見るだけのつもりであったし、今は大人しく去るとしよう。
カリカリと集中して線を引く彼女の背に、そっと就寝の挨拶を呟き・・
青年は静かに小部屋を後にした。
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
ぴぽーん。ぴぽーんと来客のチャイムで目が覚めた。
やべ。アラームかけ忘れてた・・
寝ぼけ眼でベッドを降り、眼鏡片手に洗面所で目ヤニが付いてないかだけチェックして玄関に向かう。
『綾小路さーん。お届け物でーす』
ドア越しに配達員の声が届き、少し焦って歩を早め眼鏡を掛けてドアスコープで確認。
念の為チェーンを外さずに顔を半分だけ見せる。
「あ、どうも。これお荷物です。サインはこちらで」
配達員は嫌な顔をせずに、笑顔で封筒を差し出した。
ドアの隙間をもう少しだけ広げて、こちらも笑顔で「ご苦労様です」と荷物を受け取る。
ドアを閉じ、鍵を掛けて部屋に戻りながら差出人を見た。
「あぁ、依頼してた写真か。スゲ、めっちゃ早い・・」
ネットプリントの注文を出したのは昨日なのだが、流石即日配送。
もう本当に助かります・・
「てか今何時・・・うわちゃあ、お昼回ってら」
封筒を机に置いて時計を確認すると、既に昼の12時を15分程過ぎていた。
昨夜遅かったからな。寝すぎちゃったよ。
ぼりぼりとお腹を掻きながらあくびを一つ。
『何か食べるべー』と冷蔵庫を覗くが、材料ばかりで物の作り置きが無い・・
「しゃーない。久々にコンビニにでも行きますか」
顔を洗って保湿して、適当なTシャツにズボンとパーカー。
小さな肩掛けカバンに財布とスマホとエコバッグ。
その外ポッケに約束どおり回復薬を2本入れた。
左の手首には結界魔道具とやらのバングルを装着。
このバングル。
手首を通したらきゅっと縮んでお肌にフィットしやがりましたよ。
しかも着けてる感覚とか全然無いの。
サイズ調整機能付きかよ。
まじビックリだわ。
あ、でもこれなら半袖の服でも腕に着けたら隠せるし、足首に着けるという手も使えますな。
便利便利と口ずさみ、キャップを被ってポニテにした髪の束をその後ろから出す。
玄関で動きやすい運動靴をチョイスしたら、鍵とチェーンを外してドアノブに手を掛けた。
深呼吸を一つして、ゆっくりとドアを押し開ける。
恐る恐る隙間から顔を出し、右、左と人気が無いか確認。
大丈夫そう・・かな?
そっと隙間から通路に出て、今度は自分の状態を観察した。
久しぶりに外に居る。
あんな事があったけど・・今のところは平気・・そう?
意外だ。
いや、自分の事をそこまで繊細とは思っていなかったが、それでも他人に危害を加えられ、死にかけたのだからして・・
まぁ、魔法薬やら結界の道具やらが安心材料になっているのかもしれない。
・・よし。ここでうだうだ考えてもしゃーない!
なるようにしかならんのだー!
小さく気合を入れて、頼子は一歩踏み出した。
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