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自分とパーティーの紹介を終えた冒険者2人に「ありがとうございます」と礼を言った職員が次に視線を向けたのは、最後となった面布と青年。
「こちらの冒険者2名はとある高位貴族の方より依頼を受けて同行する事になりました。まず、3等級のカルセさん。彼は通常、パーティーを組まず個人で活動していますが、今回はお弟子さんである4等級のアドさんも一緒に行動します」
全員の視線が集まる中、面布はその場で軽く頭を下げ「どうも」と簡単な経緯と自己紹介始めた。
「ご紹介に預かりました。3等級のカルセです。皆様には「面布のカルセ」と呼ばれる事が多いですね。今回、雇い主様より遺跡調査に同行するよう言われまして、皆様及び一緒に行動するアド様の護衛をする事になりました。以後よろしくお願いします」
軽く顎を引いて頭を下げた面布に続き、青年も口を開く。
「アドだ。等級は4。冒険者になったばかりだが、戦闘はそれなりにこなしてきた。実績としては個人での小規模迷宮踏破。足手まといになるつもりはない。以上だ」
青年の簡素すぎる自己紹介が気に入らないのか、こめかみをピクピクと引きつらせながら黙って聞いていた小太りの貴族が不満も顕わに声を上げた。
「冒険者組合は我ら貴族を何だと思っているのだ?!愚鈍な貴様らに仕事を与える尊き存在だぞ?!わざわざ依頼を出してやったというのに、用意出来たのは女に、経験不足の集団だと?!おまけに他の貴族からの横槍とは、我は聞いておらんぞっ!!」
興奮して捲し立てる小太りの貴族に、席を1つ挟んで座っていた支部長が口を挟む。
「待ちな。アタシら冒険者組合は依頼の内容をしっかりと検討した上で、依頼主が満足できるように最善を尽くしてるよ。「不屈の砦」の場合は職員が説明しただろ?護衛対象に女性がいるとなれば、同性である女の冒険者が居た方が守りやすく、護衛される側も安心ってもんさね」
支部長は一瞬言葉を区切り、ちらと男性冒険者に視線を移し続ける。
「そしてアンタの言う通り、「栄光への導き手」の平均等級は甘く見積もっても3等級。けどね、メンバーは2等級を目指す向上心のある奴ばかりだ。そこらの3等級より一様に能力は高いよ。後はまぁ、現在の王都支部で手が空いている2等級はそこのバーグと、パーティーメンバーに居る1名だけだったのさ。こっちは考えうる限り最高の戦力を用意したつもりだが・・・どうだい?まだ[[rb:不満 > 文句]]があるかい?」
支部長の言葉に小太りの貴族は悔しそうに唇を歪め、「くっ・・、無い」と端的に答えて2つのパーティーについては納得の姿勢を見せた。
「ならば、そこの2人については―」
「それは知らないよ。連絡の遅れかなんかだろ?アタシも今朝聞いたさね」
面布と青年について更に問い詰めようとした言葉を遮られ「ぬぐっ?!」と呻いた小太りの貴族。
そこへ自己紹介以降、無言を貫いていた遺跡調査主任である眼鏡貴族が唐突に口を開いた。
「ベラルドルダ卿。彼らは問題ない」
急に話しかけられた小太り貴族は「えっ」と言葉を失くし、慌てて眼鏡貴族に問う。
「で、ですが閣下、御身に何かあっては!」
そう心配を口にした小太り貴族に、眼鏡貴族は顔を固定したまま視線だけをキョロリと向けて念を押すように再度言葉を発した。
「何も、問題、ない」
向けられた圧に小太り貴族はぶるりと体を震わせ「―はっ!失礼致しました!」と答えて半端に浮かせていた腰を下ろす。
「・・・では、他に質問が無ければこれで顔合わせは終了となりますが、よろしいですか?」
そう職員が貴族側に問うと眼鏡貴族は軽く頷いて了承を示し、それを確認した小太り貴族も「よかろう」と同意した。
「道中の差配は騎士らと調整するが良い、後は任せたぞ「ワイズ」」
「はっ!」
小太り貴族がそう声を掛けると、後ろに立っていた護衛騎士の1人が踵を打ち合わせてビシリと居住まいを正して答える。
椅子を引かれた貴族2人は『これで話は仕舞だ』といった態度で席を立ち、声を掛けた騎士を残して足早に廊下へと続く扉へ向かった。
支部長も「見送ろうかね」とその背を追って退出し、更にその後を職員らも付いて出て行く。
最後に猫耳の職員が「では、話し合いが終わったら受付にお声がけください」と言い残し、扉が閉まった。
しん、と静まり返った室内で1人残った騎士が「ふぅ」と息を吐くと、くしゃりと髪をかき上げ気さくな調子で室内の者らに呼び掛ける。
「どもども皆さん!あの方たちの護衛を任されている護衛騎士の「ワイズ」だ。一応貴族の端くれで今回の護衛騎士を束ねる隊長という立場だが、気楽に「ワイズ」と呼んでくれ!じゃ、早速打ち合わせといこうか?」
やや身構えていた冒険者たちは予想外の騎士の態度に視線で意思を確認し合い、代表として「栄光への導き手」のバーグが答えた。
「いいだろう隊長さん。出発時間までそう間もない。早速詰めるとしよう」
「ああ!と言っても、細かいところはその都度臨機応変に動くしかないだろうから、今話せるのは基本の持ち場や合図の共有くらいかな?」
「そうなるね。そっちは護衛対象の乗る箱に同乗して、周りも囲うんだろ?ウチら冒険者側はさらにその周りを囲む形が基本隊形で良いんじゃないか?」
女性冒険者がそう提案すると、「ではそれで!」と護衛騎士が同意する。
と、面布が片手を上げて話に割って入った。
「わたくしは常にアド様の傍におります。それがご依頼主からの依頼ですので。ですが、皆様をお守りする事も仕事の範囲となってます。なので、わたくしの配置はアド様と共に隊の真ん中あたりに置いて頂いて、使役している半精霊を前と後ろの方に配したいのですが構いませんか?」
そう一息に提案して、上げていた手を下ろした面布に騎士は首肯して言う。
「あぁ、こちらとしては問題ないよ・・「不屈の砦」と「栄光への導き手」のお2人は?」
「・・配置としては問題ない。だが、お前らの参加は俺も今日この場で知った。カルセの実力は聞いているが、そっちのアドは今日登録したての新人だろう?だというのに護衛に参加とは色々不自然な点が多すぎる。こちらとしてはもう少しそちらの事情を明かして欲しいところだ」
そう不信感を滲ませる態度で言う男性冒険者に、女性冒険者も同意を示す。
「バーグに賛成。ウチらは依頼を受けると決めてから2つのパーティーで細かく話し合ってきたんだ。そこに急に割り込むからにはしっかり[[rb:事情 > ワケ]]を訊きたいね」
騎士と冒険者らの視線を集めた面布は「事情と申されましても・・」と小首を傾げた。
「わたくしはただの雇われ冒険者ですので、細かい事は何とも・・あ、戦闘は皆様の邪魔にならないよう気を付けて動きますし、アド様の分と合わせて食料も持参してますのでお気になさらず」
「・・話す気は無いと?」
ぴりっとした気配で問う男性冒険者に、面布はけろりと「そう取って頂いて結構です」と余裕綽々な態度で答える。
「随分と威勢がいいじゃないのさ・・依頼主は相当[[rb:デ > ・]][[rb:カ > ・]][[rb:い > ・]]ってワケかい?」
「そこも含めて黙秘します。ともかく、わたくしたちの事は「喋る荷物」程度に考えたらよろしいかと」
女性冒険者の探りもさらりと躱し、「ではお先に失礼します」と頭を下げたところで騎士が不意を突く形で声を掛けた。
「あのさ、そっちの彼。魔道具で変装してるね?」
下げた頭をすっと元の位置に戻した面布は、何食わぬ態度で「はて?」と先程とは逆向きに首を傾げて言う。
「騎士様が何を仰っているのか、わたくしには解りかねます」
「そんな風に隠さなくてもいいよ。僕は職務上そういった「人」の違和感を察知するのが得意でね。君らみたいな怪しい人物を護衛対象に近づける訳にはいかないんだ」
「解るだろ?こっちも仕事さ」と肩を竦めて見せる騎士に、面布は布の下で眉根を寄せた。
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