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【119】お姉さまにアニメを観て頂いた・・ら?

  「あたくし魔女さんが今「推し」ている作品を観てみたいですわ。魔女さんがお好きな作品を知って、魔女さんの事をもっと深く理解したいのです」

  微笑む[[rb:美人さん > お姉さま]]の言葉に虚を突かれ、はっと気付く。

  『そうだよ。最初から美人さんは「推しを教えて」って言ってたじゃん!』

  こちらの[[rb:アニメや映画 > サブカル]]を好きになってもらいたい、自分の「好き」にマイナス感情を持ってほしくないという気持ちが先行して、美人さんの発言がスポンと抜け飛んでいた。

  これは大変失礼な事で、よろしくない事態である。

  しかし、時は戻せない。

  やらかしてしまった以上、ここからはきちっと対応して挽回するしかっ!!

  『腹を括れ頼子っ!友達のお姉さんに嫌われたくはない・・けど!今はその要望に、誠実に答える事が何より大切!!』

  狐面で隠れた目を閉じ、膝の上でぐっと拳を握って決意と共に気合を入れる。

  ふぅ・・よし。

  ではっ!今一番好きな「推し」作品を、堂々と披露しようではないか!!

  「分かりました・・今「推し」ている作品。直ぐにご覧頂けるよう準備しますので、もう少々お待ちください」

  「まぁ!ありがとう存じます!」

  「楽しみですわ」と笑う美人さんに「お待ちになる間、よろしければ」とお菓子を追加で勧める。

  因みに、出したのは紗○。

  またしてもチョコだけど、これは見た目も食感も面白いから気に入ってくれるだろうと期待して、手持ちのを冷やしておいたんだよね。

  早速、パキリと一口齧った美人さんは途端にキラキラ目を輝かせた。

  「美味しい・・なんと美味な!細い格子状で美しい層をなし、それをかみ砕く心躍る食感に、舌の上で溶けて混ざる二種類の味・・1から10まで計算し尽された、素晴らしい「ちょこれいと」ですわっっ!!」

  「これぞ神の御業!」と食べかけのチョコを頭上に掲げて大仰に褒め称える美人さん。

  うん。この面白可笑しいテンションにも、大分慣れて来たぞ?

  「気に入って頂けたようで良かったです。では、暫くお待ちを~」と一声かけて、自ら生み出したチョコの神様的な存在に感謝を捧げる美人さんを放置して、天井から吊り下げた背景隠しの天蓋カーテンを捲って席を立つ。

  机に移動して視聴してもらうアニメをタブレットで開き、ダウンロードしてスタンバイを完了させてから天蓋の内側に戻った。

  そうして、まだ紗○の素晴らしさを滔々と口にしている美人さんに声を掛ける。

  「クリスさん。お待たせしました。用意できましたよ?」

  「そして見た目も二色の相反する色彩が・・はっ!?魔女さん?!も、申し訳ございません!少々取り乱してしまいましたわ」

  立ち上がっていた美人さんは着席して、恥ずかしそうにそそ、と髪を撫で押さえて扇を開き顔の下半分を覆い隠した。

  「大丈夫ですから、お気になさらず~。それで・・私の「推し」作品。用意しましたけど、早速ご覧になりますか?」

  「はいっ!勿論ですわ!」

  恥ずかしさに肩をすぼめていた様子から一転、閉じた扇を力強く握ったままの拳を胸元で構え、興奮を隠す事なく答えた美人さん。

  うーん。このヲタクに近いテンション、親近感増すわぁ~・・

  「では、先にそちらで再生して問題ないか、確認しますねっと・・」

  言いながら、向こう側に自撮り棒を付けたスマホを出して適当な曲を流す。

  美人さんが耳にした日本語を、翻訳の魔道具を介して問題なく理解出来た事を確認。

  『よし』と一つ頷いて、緊張にドッキドッキと高鳴る心臓を無理矢理意識の外に追いやり、再生ボタンを押したタブレットを向こう側へ置いた。

  「これは「アニメ」という種類の作品で、今私が一番「推して」いるモノになります」

  結果、美人さんは驚きに固まり、食い入るように画面に集中したのだった。

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  20分少々の1話目が終わり、エンディング曲の後に画面が止まっても、微動だにせず固まったままの美人さん。

  余りに動かないので、『悪い方向にショックを与えてしまったか』とめちゃくちゃ焦る。

  「あ、あの・・大丈夫、ですか?」

  恐る恐る。そーっと声を掛ける・・と、突如がばっ!と顔を上げ、私の映るモニターを掴んでガクガクと揺すりだした!

  「魔女さん魔女さん魔女さんっっ?!」

  「はいっ!魔女さんです!く、クリスさん?とりあえず落ち着いて―「これが落ち着いていられるとお思いですのっ?!」はいっ!スミマセンっ!!」

  発した言葉を結構な勢いと声量でぶっ千切られ、思わずシャキッ!と椅子の上で背筋を伸ばす。

  え、ヤバい怒らせた?

  やはり何の説明も無く、イキナリ見せたのはマズかったか?

  アニメの成り立ちとかストーリーとか世界観とか・・それともコメディ・・作品のテンションが受け付けなかったとか?

  そんな予想に思いっきり気落ちして、ショックで胃がキリキリしそうになりながら、ふぅふぅと荒い呼吸でチベスナの如く目が据わった状態の美人さんに、やっとの思いで言葉を返した。

  「あの・・こちらの作品、お気に召しませんでした・・か?」

  「―っ気に召す召さないの話ではございませんっ!」

  バンっ!と台を叩いて叫ぶように言うその勢いに圧倒されて「はぇい?!」と情けない声で答える私。もう泣きそうっス。

  つん、と鼻と目の間が痛くなりかけたその瞬間、美人さんはモニターに鼻をくっ付けるようにして叫ぶ。

  「これで終わりってどういう事ですのっ?!!」

  「え・・?・・と?」

  その言葉の意味が理解出来ず、脳内フリーズできょとんとしながら答えると、憤りを爆発させた美人さんは増々声量をUPさせて言った。

  「で・す・か・らっ!これで終わりなのは何故なのですか?と問うています!続きは?!続きはありませんのっ?!」

  「え?あ、はい。あります、よ?」

  「なんとっ!素晴らしいですわっ!やはり神は居られたのですね!!」

  「あたくしは今途轍もなく感動しておりますわっ!!」と両手を広げて天井を仰ぐ美人さん。

  その仕草と雰囲気に、うっかり天使のはしごに照らされる様を幻視する。

  ついでに讃美歌的な音楽が流れたらもうバッチリ?だね。

  え~と。つまり・・アニメは喜んでもらえた、らしい?

  『たぶん大丈夫だよね?』と思いつつ、美人さんに問いかける。

  「あの。クリスさん的に、この作品は・・どうでしたか?」

  「「どう?」!そんな魔女さん!あたくしの様子を見てお分かりになりますでしょう?!とても気に入りましたわ!もう何もかもが目新しくて、なんて素晴らしいのでしょうっ!あたくし、感動に胸が震えておりましてよっ!」

  そこからはもう怒涛の感想と質問タイムになりました。

  青年とは違い、美人さんは観て気になった事は直ぐに質問するのではなく、終わってからまとめてするタイプだったらしい。

  たっぷり15分間は視聴したアニメの感想を語られ、続いて倍の30分間は質問に応答した。

  結論。

  美人さんはオタクへの一歩を踏み出しました・・

  たぶん直ぐに首までずっぽり埋まった立派なオタクへと成長すると思います。

  えっと・・これって私の所為、だよねぇ・・・

  いやぁ、元々素質があったと思うんだけども。

  このままでは[[rb:腐女子に目覚める > 腐れる]]のも時間の問題、かも?

  いや、まだそうと決まった訳では、ワケではっっ!!

  う゛~・・。

  アド君は衆道を知ってたみたいだけど、あっちでの[[rb:男性同士の恋愛 > BL的な]]モノってどういった認識なんだろう・・

  普通に受け入れられているのか、それとも邪教の如く忌避されているのか。

  『・・これは確認しておいた方が良さそう、だね』

  そろそろ腐女子から貴腐人へ進化しそうな私だ。

  うっかり、何の気なしに美人さんを[[rb:そっちの道 > 腐女子]]に引きずり込んでしまうかもしれない。

  自重しろ?

  はっ!だ~か~らっ!

  そんなん出来てたらマトモな社会人やっとるっちゅーのっ!

  オタクに関する事では自分が一番信用ならねーわっ!

  [[rb:社会不適合者 > キモオタ腐女子]]舐めんなよ?!

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