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【131】え?・・これで話は終わりなん?/森での狩り。

  さらさらと、お狐さまの毛並みを堪能しつつ脳内で必死に情報を捏ね繰り回し、起死回生の閃きを得んと足掻く。

  ・・だが、何もっ!良い考えが、浮かばないっ!

  なんたって状況が詰んでるからねっ!

  誰だってこんなにっちもさっちも行かない状態で名案は浮かばないと思います!

  だからアタクシ、悪くなくってよっ!

  もう殆ど諦めの境地。

  頭の中ではふわふわした空間が広がり、『なんとかなれー♪』と流行りのちんまい生き物が悟りを促して来ております。

  ・・このフレーズを知ってるだけで、漫画もアニメも観た事ないんだけどね。

  現実逃避が進み、思考は既に取り留めのない流れに身を任せてしまっている。

  あ~。緋翠たんの毛皮は最高の癒しやでぇ~・・

  「・・・という訳で、おいちゃんはドロンします!晶ちゃん。何かあったらまた連絡してね♪」

  「分かりました」

  「・・はぇっ?!何?何ですか?!」

  「・・アコ。もしかして聞いてなかった?」

  「・・・てへっ?」

  視線を逸らし小首を傾げて見せると、親友はアホをの子を見る目で「あんたって子は・・」とため息を吐いた。

  マジめんご。

  「あっはっは!本当、仲良しだねぇ!それじゃあもう一回説明してあげよう!」

  「すみません。お願いします」

  「りょーかい!あのね、本当だったら魔除けとして護符的なモノを綾小路さんに持たせるつもりだったけど、そうするとそちらのお方の邪魔にしかならないから、おいちゃんはこのまま何もせずに今日は消えるねって話!」

  「あ、そうなんですね。わかりました」

  という事は・・治療の謎はもう聞かないで帰る感じ?

  「ん?腑に落ちないって顔してるね。目が治った件ならもう触れないから安心していーよ?」

  「えっ?良いんですか?」

  「うん。その方が今は「吉」っておいちゃんの「勘」が言ってるからね!」

  「そう、ですか・・正直助かります」

  「まぁ本音はさ。綾小路さんが「癒しの超能力者」なのか、未来の「生体ナノマシン薬」を持ってるのか、はたまたRPGに出て来る「ポーション」みたいな魔法薬を作れるのか、年甲斐もなくワクワクしちゃうし、もうめっっっっちゃ気になってるけど。「勘」に逆らうとエライ目に会うからねぇ・・我慢我慢ってワケ♪」

  そして顎を掴むようにして撫でた男性は「ふっ。俺様のシックスセンスがそう囁くのさ・・」と、何かのキメ台詞のような事を言って、ニヤッと唇の端を吊り上げると一転。

  おふざけ交じりのニヒルな雰囲気を消し去って「じゃ、おいちゃんは消えまーす!」とソファから立ち上がる。

  「そゆことでまたね晶ちゃん!綾小路さんも、何かあったら連絡ちょ!」

  「あ、はい。ありがとうございます」

  「お疲れ様でした。また連絡します」

  「おう!んじゃね~!」

  ひらひらと手を振って、男性は足取り軽くあっさりと部屋を出て行った。

  後に残された親友と2人。何となく黙ったまま、さらさらとお狐さまをモフる。

  つ、疲れた・・

  短時間でぐるぐる色んな事考え過ぎて精神的疲労がパない・・

  よし。こうなったらやる事は一つ・・

  「アコ」

  「アキ」

  そうお互い同時に声をかけ、はたと視線を合わせて言った。

  「「歌うかっ!」」

  それから親友メインで2時間みっちり歌いましたとも。

  私は親友が休憩する時にちょこっとだけマイクを握りましたさ。

  お狐さまはというと歌が始まったらすいっと消えちゃったよ。

  残念。もうちょっと堪能したかった・・また明日辺りにでも声を掛けようっと。

  ストレスを発散させるべく歌いまくった後、さて帰るかと会計に行ったら既に支払い済みと言われてびっくらポン。

  延長したし、飲み物も追加したのに・・五味さん。粋な事なさる。

  「普段からこういう気遣いだけしてれば良いのに」とは親友談。

  そだね。でもあの人はアレな態度を心底楽しんでるみたいだから、それは儚い期待ってヤツだと思います。

  こうして、突如発生した怪我人を魔法薬で治しちゃった件は、ぐだぐたな感じで一応の幕引きとなりました。

  あ゛~つっかれたぁ~・・

  流石に今日はもう原稿作業しないで寝よ・・

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  休憩場所である街道近くの森へ、褐色肌と三つ編みと、共に下草をかき分けて歩く。

  本日の護衛である半精霊の「B」は、私の背後斜め上の定位置で浮き、付いてきていた。

  「今日狙う獲物は決まっているのか?」

  前を行く褐色肌に小声で問うと、「おぅ!」と思いの外元気な返事が返って来る。

  『静かにしなくて良いのか?』と疑問に思うと同時に、背後の三つ編みから「まだ獲物の気配が無いから普通に話して大丈夫よ~」と思考を読んだかのような言葉を掛けられた。

  「そうか、分かった。それで、何を狙う?」

  「今日の晩メシは移動中にちらっと見かけた「角猪(ホーンボア)」だぜ!」

  「「角猪」?美味いのか?」

  「おぅ!アイツら茸ばっか食うからな、すげぇ美味いぞ!それに毛皮も角も金になるしな!まぁ、今日の休憩場に「掃除屋」は来ねぇだろうから、角だけ持って毛皮は捨てて行く事になるけどよ」

  「そうか・・それで、私は何をすれば良い?」

  つい「惜しいな」とどうにも出来ない事を言いかけ、続く筈だった言葉を問いに変えて投げ掛ける。

  「仕留めるのに良さそうな場所を見つけたらアドとフラウは待機な。アタイは別行動で獲物を釣る。で、アドたちの方に引っ張ってくから、フラウが仕留める役。アドは周囲の警戒と、何かあった時にフラウを助ける役な!」

  「分かった。邪魔にならぬよう努める」

  首肯してそう答えると、褐色肌は振り向き「そんな「1級案件を受けた」みたいな顔しなくても大丈夫だぜ?フラウも引き狩りは慣れてるしな!」と笑って言った。

  「そうよ~。気を楽にして、どーんと構えていた方が案外上手くいくわよ~?」

  「それに失敗しても晩メシがねぇワケじゃねぇから、楽しんでいこうぜ!」

  「あぁ。分かった」

  2人の言葉に頷いたものの、この狩りの結果で夕食の品数が変わるというのは、それなりに大事だろうと気合を入れる。

  旅の間、食事は一番の楽しみだ。

  食事内容の良し悪しは「不屈の砦」の指揮にも係わるだろう・・

  それに、彼女らにはこれからも色々と世話になりそうだからな。これは是非とも成功させたい。

  だが、狩りは初めてだ。そんな私が下手に手を出せば、2人に余計な手間を取らせるだろう。

  となれば、私は周囲の警戒に集中しよう。

  程よい緊張感を体に染み渡らせ、聴覚を強化しつつ薄く広く魔力を放ち警戒範囲を広げる。

  結果、私たちの後から森に入ったらしい幾人かの気配を後方に。狙う獲物らしきやや大きめの生き物の群れを、ここから500歩程行った所にそれぞれ感知した。

  その事を2人に報告しようとした時、丁度褐色肌が獲物の痕跡を見つけたらしく「止まれ」と告げる。

  「うん。そこそこ近いな・・このまま少し辿ってみよう。良さそうな場所があったらそこで別れるって事で」

  「分かったわ~」

  「了解した。それと、今魔力感知でそれらしき気配を見つけたが・・」

  余計だったか?と思いつつ伝えると、褐色肌は「お?本当か?」と目を輝かせた。

  「すげぇなアド!距離と方向が判んなら教えてくれ!」

  「あぁ。この方角で、500歩程先だ」

  不安は杞憂だったようで、ずいと近づき詳細を訊ねる褐色肌に胸を撫で下ろし、人差し指で方向を指し示す。

  「・・・そんな遠くを感知したのか?すげぇな・・」

  「本当ね~。これなら安心して警戒を任せられるわ~」

  「分かった。任されよう」

  頷き、腰に佩いた剣の鞘を軽く叩いて答えると、2人は満足そうに頷いた。

  そこから無言のまま先導する褐色肌に付いて移動し、武器を振り回すのに良さそうな開けた空間を見つける。

  そして予定通り離れて行く褐色肌を見送り、静かに待つこと暫し。

  感知していた群れから一つ、大きな気配が離れこちらに向かってくるのを察知した。

  「釣り上げに成功したようだ。あと20秒程で来るぞ!」

  「りょうかぁ~い、初撃は任せて~!アドさんはちょっと下がっててね~」

  「分かった」

  指示に従い開けた空間の縁近くまで下がると、三つ編みは片足を引いて[[rb:斧槍 > ハルバード]]を斜めに掲げ構える。

  と、そこへドドドっと鈍く響く地鳴りと、バキバキと木を折る音が聞こえて来た。

  そして唐突に藪から褐色肌が飛び出し、「3の1!」と簡潔に告げて、剣を構える私の横を通り過ぎる。

  褐色肌の言葉通り3秒後、一頭の大きな生き物が藪を突き破り現れた。

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