「少子高齢化社会」や「晩婚化」が日常的に取りざたされている獣人社会の中で、密かに注目を集めている施設があった。その名も「箱船」。静かな郊外に立地を構え、何でも「ゆりかご前から独り立ちまで」という触れ込みで、出産前から義務教育期間までの手厚い家族支援が受けられるというのだ。しかし、館内の取材を断っているのか、写真付き・映像付きの記事は無く、いつしか「国家が暗躍している秘密組織なのでは?」とも噂が立つほどであった。その真偽を確かめるべく、青年は取材を敢行するのだった。編集長からはゴーサインをもらい、事前連絡も取った所、ふた返事で承諾を得ることができた。
事前連絡と段取りの打ち合わせから一か月が経ち、約束の日時に赴くと、入り口で自分よりも一際大きな体格をした女性が現れた。青年の頭上で丸みのある穏やかな声がする。
「あら、君がここの取材をしたいって言っていたライターさん?」
「あ、はい!豊満舎(とよみつしゃ)の重茂 信夫(しげも のぶお)と申します」
信夫はスーツの内ポケットから名刺を手渡した。女性は丁寧にそれを受け取ると、裏面にペンで何かを書き込んでいた。
「信夫さん、信夫さん、信夫さん・・・・・・良い名前ね。私は若松 菜々緒(わかまつ ななお)よ。名刺も渡しておこうかね」
菜々緒は胸元に着けていた名札をずいっと見せてくれた。片側だけで自分の顔はあろう大きな胸が近づいてきたことに、茂夫は一瞬たじろいだが、失礼が無いようすぐに名刺を受け取った。名刺の裏には生年月日が記載されており、年齢からはかなりのベテランだと感じたものの、年を感じさせない快活さも感じた。
「立ち話はこれくらいにして、まずは入館の手続きから案内しますね」
「は、はい!」
茂夫は彼女に促されるまま入館の手続きを済ませると、応接室のような場所へと案内された。お茶を頂きながら、事前連絡の内容に沿って取材内容の確認が行われた。
「早速だけれども、この施設についてどれくらい知っているのかしら?」
「そうですね・・・・・・ここのサイトを事前に目を通して、大規模な産婦獣科(さんふじゅうか)(獣人版の産婦人科)だなと感じました」
「成程。確かにここは産婦獣科が業務の中心だけれど、それ以外にもやっている業務があるの」
菜々緒はソファーに深く腰掛けながらお茶を啜った。座るとより彼女の大きな身体が強調される。大きな胸と負けず劣らずのお腹に、信夫は釘付けになりそうだった。
「それは何でしょう・・・・・・?」
信夫は気取られないよう、再びお茶を啜った。
「代理母業務よ」
「代理母・・・・・・?」
「種族や年齢、体質や病気などを理由に子供を授かれない人のためにね」
学生時代に聞いたことのある単語が飛び出してきて、信夫はお茶の入った器を机の上に置いた。
「小規模で請け負っている場所はちらほらあるけれども、ここはちょっと特殊でね。代理母の依頼から出産、その後の育児もサポートしているの。勿論、私もね」
菜々緒は自分のお腹をぽん、と叩いてみせた。よくよく見てみると、確かに年齢相応に太っているにしては丸みのある大きなお腹だった。横から見るとその大きさは一目瞭然だった。
「まぁ、大きいおばちゃんだからパッと見ただけじゃあ分からないこともあるわよね。早速施設を案内するわね」
菜々緒の案内を受けながら、信夫は様々な施設を見て回った。プライバシーの観点から、利用者やスタッフの顔が紙面に載らないよう指示を受けた。住居棟に医療棟、保育施設まで完備されており、触れ込みに違わぬ充実ぶりを見せていた。移動しながらの質問で、ここは少子化対策の一環で試験的に運用しているのだそうだ。菜々緒は最後に病院の待合室のような場所に到着すると、近くにあった椅子にどっかりと腰かけた。
「実際に歩いてどうだったかしら?」
「パンフレットやサイトでは分からなかった部分も多くて、思ったよりも広大な産婦人科というよりも小さな町のような感じがしましたね」
「小さな町ねぇ・・・・・・あながち間違いでもないかもしれないわね。明日以降はより詳しい案内や紹介をするわね」
「ありがとうございます。所でここは────」
「若松菜々緒さん、2番診察室へどうぞ」
落ち着いた男の声の館内放送が鳴ると、菜々緒は「よっこいせ」と呟きながら立ち上がると、指定された診察室へと向かっていった。
「信夫さんも一緒に来てくれるかしら?」
「え、あ、はい」
信夫は菜々緒と共に、診察室へと入っていった。
診察室には、彼女に負けず劣らずの体格を持ったシャチ獣人が椅子に腰かけていた。突き出たお腹は長年の貫禄によるものだろうかと考えていたが、すぐに頭を切り替えて名刺を差し出した。
「こ、こんにちは。豊満舎から来た重茂と申します」
「こんにちは。私は産婦獣科の若松 勇那(わかまつ いさな)と申します」
若松という苗字を聞いた信夫ははっとした表情を浮かべながら菜々緒の顔を見上げた。
「あら、気付いちゃった?勇那さんは私の夫なんです」
「やっぱり・・・・・・」
信夫は体格相応の夫婦が並んだことで、彼らの体格やお腹の大きさに更に圧巻されてしまった。勇那は机の書類にさらさらと何かを書き込んでいった。
「じゃあ診察を始めようか。体調は変わりないかい?」
「勿論よ。でもやっぱり足腰の負担はしんどいわね・・・・・・」
菜々緒は腰をとんとんと叩きながら答えた。
「そうか・・・・・・代理母さんたちが安心して移動できる手段も考えて言った方がよさそうだね。じゃあ今度は胎児の状態とミルクの健康チェックをしていこうか」
勇那は彼女の顔を見ながら、会話の内容をさらさらと書類に書き込んでいた。菜々緒は彼の指示のまま、するすると上半身の衣服を脱ぎ始めた。
「────!!?」
「あら、びっくりさせちゃったかしら」
信夫は慌てて顔を逸らした。
「だ、大丈夫です!ただ、いきなり脱いだものですから・・・・・・」
「そうよね。おばちゃんでもいきなり脱いだらビックリしちゃうわよね」
菜々緒はそう言いながら慣れた手つきで着ていた衣服を畳んでいた。制服から解き放たれた乳房は衣服越しに見るよりもはるかに大きく、片側だけで信夫の頭を容易く覆えてしまう程のブラによって更なる拘束を受けていた。菜々緒は何のためらいも無くブラを外すと、大きく突き出たお腹に乳房が何度か弾むようにして存在感を露わにした。菜々緒は勇那から消毒液のボトルを受け取ると、手のひらにたっぷりと垂らして乳房に塗り付けていった。乳首や乳輪を入念に拭き終えると、備え付けのベッドの近くにあった器具を操作して細長いカップ状の容器を乳房に当てがった。
「よっこいせ・・・・・・っと」
菜々緒はどっかりとベッドに横になると、機械のスイッチを起動した。モーターの駆動音と共に、掃除機で大きなものを吸い込んだような音が鳴りだした。暫くすると、彼女の乳首から乳白色の液体が溢れ、細い線は徐々に太さと勢いを増していった。吸い込まれた液体は管を伝って、機械に備え付けられた透明なタンクに注がれていった。勇那は菜々緒に繋がっている機械とは別のものを持ってくると、慣れた手つきで起動していった。画面が点いたのを確かめると、ゴム手袋を嵌め、ジェルをたっぷりと手に絞り出して彼女のお腹に塗り付けていった。勇那がハンコのような機械を彼女のお腹に押し当てると、画面には彼女の胎内と思しき影が映し出された。
「うんうん、順調に育ってるね。どの子たちも元気そうだ。それに、ミルクの栄養バランスや量も良好だね。ただ・・・・・・数が増えてる気がするんだ」
「この間の治験の影響かしら・・・・・・あら、さっき誰かがお腹の中で蹴ったわ」
「全く、元気な子供たちだ。この後や明日以降の面談は大丈夫そうかい?」
「そうねぇ・・・・・・いつもなら一人でも何とかなるけれど、今回はちょっと心配かな」
「私もお手伝いできれば良いんですが・・・・・・」
勇那はそう言いながら自身の大きなお腹を撫でた。不意に、彼のお腹が動いたような気がした。
「せめて身の回りのサポートだけでもしてくれる人がいると助かるんだけれど、今から募集をかけても集まるかしら・・・・・・?」
考え込んでいる若松夫婦に、信夫は割って入るように尋ねた。
「あの、すみません・・・・・・お二人はどのような話をしているのでしょうか?守秘義務などに触れない範囲でお聞かせ願いませんか?」
2人ははっとした表情を浮かべて信夫の顔を見た。
「これは失礼しました。依頼主のプライバシーを守らねばなりませんので個人名は明かせないのですが、彼女は今、別々の依頼主から10人ほど妊娠してまして、いつ生まれてもおかしくない状態なんです」
信夫は驚きのあまり言葉を失った。双子や三つ子の話はよく聞くが、二桁ともなると鼠や兎系で稀にしか聞かない話であった。勇那は続ける。
「現状は信夫さんが聞いての通りです。手伝える人員が足りない状態でして・・・・・・そこでなのですが、もしよろしければ信夫さんにお手伝いいただけないかと思うのです」
「私が、ですか・・・・・・?でもお手伝いなんて全くの未経験ですし、やってもいいんでしょうか?」
菜々緒が寝そべった姿勢のまま話しだした。
「そこまで畏まらなくても平気よ。あくまで私のサポートをしてくれればいいだけだし、私もその都度で指示を出すわ。マニュアルだってちゃんとあるから安心して」
当人はちょっとしたトラブル位の認識なようだ。
「住む部屋を含めた衣食住と、金銭的報酬は勿論弾ませてもらいます。勿論、信夫さん次第ではありますが・・・・・・」
信夫は話の内容をノートにまとめて暫く考えた。
「念のため、編集社に連絡を入れても良いでしょうか?」
「分かりました。必要でしたら私に代わっても構いませんからね」
信夫は編集長に電話をかけた。数コールの後に聞きなれた声が返ってきた。事の次第を伝えた所、「密着取材と思ってキッチリ取材してこい」との事だった。
「編集長からは密着取材だと思ってキッチリ働いてこい、との事でした・・・・・・」
信夫の答えを聞いた二人は安堵の表情を浮かべた。
「じゃあ暫くの間、よろしくね。信夫さん?」
菜々緒から差し出された手を、信夫はしっかりと握りしめた。
「ここはさっき案内した居住棟で、私の部屋よ」
菜々緒はそう言いながら部屋の鍵を開けた。部屋の中は白を基調とした清潔感のある部屋になっており、病室と言うよりもホテルを思わせる雰囲気を持っていた。各所の手すりや段差の無い間取りなどから、妊婦へ気遣いを随所に感じさせられた。
「子供たちが使っていた部屋があるから、案内するわね」
「お子さん、もう独り立ちされたんですね」
「えぇ、だいぶ前にね。だから普段は『お客さん』を泊めるお部屋になっているの」
案内された子供部屋は、最初の部屋と比べて半分以下の面積だったものの、信夫にとっては寝泊まりに事欠かない程度の広さを持っていた。
「お気遣いありがとうございます。ただ、まさか密着取材になるとは思ってもみなかったので、寝泊まりの道具を持ってきてませんでした・・・・・・」
「それなら気にしなくて大丈夫よ。急な依頼だから制服と下着はこっちで準備するわ」
異性から「下着」という言葉が飛び出したことに驚きながらも、下着については丁重に断ることにした。
「すみません、制服はありがたいんですが、肌に身に着けるものは自分で買わせてください・・・・・・」
「あら、ごめんなさいね。久方ぶりに息子が帰ってきたみたいな感じがしちゃって」
どうやら菜々緒さんのお子さんは自分と同じくらいの年齢らしい。
「はい、これが今日の予定よ。今日は取材があったから仕事の量はそれほど多くないけれど、もうじき依頼主の方と面談することになっているわ。明日からは一週間分をまとめてお渡しするわね」
菜々緒はそう言いながら手帳のコピーと思しき書類を信夫に手渡した。
「依頼主との・・・・・・プライバシー的に、私はいない方が良いですかね」
「うーん・・・・・・確かにそれも一理あるけれど、お茶汲みや面談記録の整理をお願いしようかな。依頼主さんのプライバシーを保護してくれるなら、取材自体は問題無いわ」
「プライバシーに配慮した上での取材は可能と・・・・・・分かりました。ではまず何から始めましょうか」
「そうねぇ・・・・・・まずはそのスーツから制服に着替えるところからね」
「あ、じゃあ今のうちに近くのお店で色々と買ってきても良いですか?」
四十分後、買い物と着替えを済ませた信夫は、ソファーでくつろぐ菜々緒に声をかけた。
「お待たせしました」
「あら、良く似合ってるじゃないの。窮屈だったり緩かったりしたらいつでも言うのよ」
まるで・・・・・・というか母親そのものだった。それから菜々緒は面談までの流れとこの施設のポリシーについて説明してくれた。
「子供第一」で代理母をやっているそうで、代理母出産に当たっては依頼主の収入や普段の素行、社会的地位、周囲からの協力を仰ぎやすい状況かなどを厳しく審査した上で許可をするか否かを決めているらしい。また、審査を通った後や出産後も定期的に面談や研修、共同生活などの形で代理母との信頼関係を育んだり、親になる自覚を育ませるのだそうだ。更に彼女は象獣人という種族柄、身体が丈夫なため様々な治験に参加することもあるのだそうだ。先ほどの検査ではその影響か胎児が増えている可能性があるということだったのだ。
「新記録更新と聞こえた気がするんですが、差し支えなければ以前の記録をお聞かせ願えますか?」
「そんなに畏まらなくてもいいわよ。確か最高記録は五年前、この施設を立ち上げたばかりの頃に8人だったかしら。それも種族別々で」
俄かに信じがたいが、目の前で十を超える赤子を宿しているらしい彼女が語るのだから、不思議と信憑性が湧いてしまった。
しばらくすると、部屋の奥からチャイムが鳴った。信夫が扉を開くと、一組の熊獣人の夫婦がやって来た。
「こんにちは、以前連絡していた日蔵と申します。貴方は・・・・・・」
「あ、ここの施設を取材させていただいている重茂です。今は菜々緒さんのサポート役を任されています」
信夫は日蔵夫妻を奥の部屋へと案内した。夫婦と彼女は面識が多い方なのか、出会ってすぐに熱い抱擁を交わしていた。
「今日も来てくれてありがとうね」
「いつ生まれてもおかしくないと聞いて駆けつけてきました。会社からも有給扱いで休みを頂けました」
「あらあら、嬉しいわね。子供たちもあなたたちに会いたくて元気に動いてるわ」
「本当だ・・・・・・動いてる」
他愛ない雑談を挟みつつ、夫妻は近況報告を続けた。話の内容から察するに、体質や病気の影響で子供に恵まれないのだそうだ。しかし、実家や故郷の人たちのコネもあるようだった。信夫が用意したお茶菓子を頂いて暫くすると、菜々緒の携帯端末が震えた。
「ちょっと失礼。あら、急患?他の人たちは手一杯で私に・・・・・・分かったわ。すぐに行くから待ってて頂戴」
菜々緒は通話を切ると、申し訳なさそうな表情で夫妻に頭を下げた。
「丁度呼び出しがかかってしまったので、次回はいつ頃にしましょうか・・・・・・?」
日蔵夫妻の奥さんが答えた。
「いつ生まれてもおかしくないのでしたら、次回は出産に立ち会えたらと思います。残るお話は落ち着いてからでも大丈夫です」
「それは心強いわ。この子達も会いたがっているでしょうし」
菜々緒のお腹が「どくん」と動いた。
夫妻を見送ると、菜々緒はてきぱきと衣服と荷物を整えていった。
「信夫君、せっかくだから私の仕事の様子、撮影してみない?」
「え、いいんですか?ではぜひ!」
「ちょっと刺激が強いかもしれないけれど・・・・・・まぁ詳しい事は向こうで説明するわね」
2人は駆け足気味に病棟へと向かっていった。
彼女に案内された部屋は分娩室だった。ガラス一枚を隔てた部屋の中央で、大きなお腹を抱えた大柄の妊婦が苦痛に喘いでいた。分娩室なら極めて当たり前の光景だが、信夫にとって予想外な点があった。
「この中を見るのは初めてだったわね」
菜々緒は彼の考えを見抜いたかのように呟いた。
「男でも妊娠するなんて・・・・・・」
「まだ試験中な所も多いけれど、本人の希望で代理母の母胎役を受けてもらう事もできるの」
彼女の視線の先には、パートナーと思しき男が、陣痛に身をよじる妊婦(夫)の手を握っていた。
「状況は?」
「バイタルは安定していますが、一向に破水が来ていない状態です」
「分かったわ。滅菌済みゴムサックを用意して頂戴。サイズはXLで。映像記録は大丈夫かしら?」
「問題ありません。パートナーと母胎のプライバシーを保護する前提ですが」
菜々緒は近くにいた助産師に状況を確認すると、近くの小部屋へと向かった。暫くすると、菜々緒は下半身を露わにした姿で部屋から出てきた。
「!?」
彼女の股座には、第二の鼻のように大きな逸物がぶら下がっていた。
「あら、そういえば言ってなかったわね・・・・・・詳しい事は後で説明するわね。しっかり撮るのよ」
「わ、わかりました・・・・・・」
驚く信夫をよそに、菜々緒はあっけらかんと信夫に答えて分娩室へと入っていった。彼女が入ると、頼れる助人が現れたかのような雰囲気に包まれていた。
「あんまり時間をかけると母胎の負担が大きくなるわ。手早く済ませるわ」
ビデオカメラの画面には、信じられない光景が映っていた。菜々緒が軽く屈むようにして力むと、「ぐぐっ・・・・・・」と垂れ下がっていた逸物が大きく膨れた腹を打つようにそそり立った。スタッフは慣れた手つきで袋の封を切ると、コンドームのようなものが出てきた。そそり立つ彼女の逸物に、ぴっちりとコンドームが覆い被さっていく。その上から更に粘土の高い液体を塗り広げられていく。
「さぁお母さん、ちょっと苦しいかもしれないけれど、しっかり踏ん張るのよ?」
菜々緒はそういうと、分娩台に乗る妊婦の股座めがけて一気に腰を打ちつけた。
「ぐうぅぅぅっ────!?」
妊婦が押しつぶされるような声を漏らし、上半身が一瞬だけ跳ね上がった。菜々緒は自身のお腹越しに妊婦の状態を確かめていった。激しく腰を打ちつけるような交尾ではなく、じっくりと、しかし迅速に逸物を奥深くへと捻じ込んでいく。
「ここ・・・・・・ね?」
菜々緒が大きく腰を逸らすと、ブシュッ!水風船に穴が開いたような音と共に、結合部からは大量の液体が溢れ出た。菜々緒はそれを確かめると手早く逸物を引き抜いた。ゴムの先は吐精したと思しき白濁した液体で満たされていて、彼女の逸物という栓が抜けたことで、更に羊水が溢れ出てきた。
「さ、あとひと踏ん張りだよ!」
菜々緒はゴムを付けながら妊婦(夫)の助産を始めた。彼女の「手助け」を受けてからは、陣痛に苦しんでいた先の姿が信じられない程、出産は順調に進んでいった。どういう原理なのか、妊婦は胎児の頭や胴が出てくる度に自身の逸物から盛大に吐精していた。後処理も含めておよそ三時間にも及ぶ大仕事を終えると、菜々緒はスタッフにゴムを回収されて、着替えを済ませて出てきた。
「お、お疲れ様です・・・・・・」
「記録はちゃんと撮れたかしら?」
「えぇ・・・・・・一応は。載せられるかは分かりませんが」
「まぁそうよね。詳しい事は後で説明するわ。まずはお夕飯を食べに行くとしましょうか」
「は、はい・・・・・・」
急に入ってしまった仕事を片手間に片付けたかのように話す菜々緒に、信夫は軽く眩暈を覚えるのだった。
夕飯を終え、信夫は菜々緒から借りた部屋の机で、その日に起きた出来事を取材ノートにまとめていった。何から何まで自分の知らないことだらけな事に加えて、雑誌のコンプライアンスや雑誌の求める記事などを踏まえて取捨選択をしていく。暫くすると、部屋の扉から声がした。
「信田さん、お風呂のお手伝い良いかしら?」
「あ、はいただい・・・・・・ま?」
扉を開けると、目の前の景色は記憶に新しい大きなお腹と巨大な逸物で埋め尽くされていた。あまりにも突然の出来事に、信夫の頭はついに思考を停止した。
「あら、大丈夫かしら?お腹で良く見えなくて」
彼女の言葉に、信夫は我に返った。
「ぇあ!?あ、ああぁ・・・・・・大丈夫です。ただ、何で裸なんですか・・・・・・?」
「ごめんなさいね。これからお風呂に入る所だったから。それに、もう三度目だから慣れたでしょう?」
「ま、まぁ確かにそうですが・・・・・・」
偶然とはいえ、今日だけで彼女の上半身と下半身をそれぞれ別の時間に見てしまったのだ。今更驚くことも無い。信夫は菜々緒に連れられる形でお風呂場へと入っていくのだった。
湯船は、信夫には小さなプールのように見えた。彼女が三人ほど入ったとしてもゆったりと手足を伸ばせそうな位の菜々緒はバルブを捻ってシャワーを浴び始めた。温かいお湯が丸みを帯びた彼女の全身を撫でるように滑り落ちてゆく光景に、信夫は生命の神秘すら感じてしまっていた。
「そろそろ身体を洗うのを手伝ってくれるかしら?」
菜々緒はどっかりと椅子に腰かけると、石鹸を泡立てた布を手渡した。
「あ、はい!」
信夫は我に返って泡立てた布を受け取ると、彼女の身体を洗い始めた。座っているとはいえ、大きなお腹がつかえていて下半身は洗い辛いのだろう。これは必要な事であり、決して疚しい気持ちでやるべきではないと言い聞かせながら、身体を入念に洗うことにだけ頭を働かせた。しかし、お手伝いとはいえ、異性の身体に間接的にも触れるのに緊張は隠せずにいた。背中を洗い、足元も裏側も含めて丁寧に洗っていく。幸い、彼女のお腹や胸のお陰で自分の姿はあまり見えていなさそうなのが救いだった。
「じゃあ、最後にお腹まわり、お願いね」
最後の関門が残っていた。信夫は「失礼します」と声をかけながら彼女の大きなお腹へと手を伸ばした。運動会で転がした大玉のようなお腹に泡立てた布を当てていくと、「もごっ」と何かが動いたのに驚いて手が跳ねあがった。
「びっくりさせちゃったかしら?」
「あ、あはは・・・・・・すみません。妊婦さんに言うべき言葉じゃないかもしれませんけど、こうして間近で見ると凄く迫力があるなって」
「気にしてないわよ。それにビックリしたでしょ?おばちゃんなのにおちんちんが生えてて」
「それは・・・・・・はい」
「実は生まれつき生えてる『両性具有』ってやつでね。若い頃は色々と苦労したわ。もしも嫌だったら、無理に洗わなくても大丈夫だからね」
「い、いえ!大丈夫です」
「そう?ならお言葉に甘えてお願いしようかしら」
信夫は眠っている蛇を捕まえるかのように、彼女の逸物に手を伸ばした。完全に萎えていながらもその存在感は中々のもので、間近で暴れられたらひとたまりもないと本能的に感じた。いつも自分のものを洗うよりも丁寧に、そして優しく洗い上げていく。布越しにも伝わる脈動と共に、睾丸からはずっしりと重みを感じた。
「そろそろ流しても大丈夫かしら?」
「あ、はい!大丈夫です」
信夫はこの時、自分が無意識に息を止めていたことに気付いて、大きく深呼吸をした。
身体を洗い終え、菜々緒は湯船にざぶんと入っていった。
「よかったらあなたもお風呂に入っちゃいなさいな」
「あ、じゃあ・・・・・・お言葉に甘えて」
信夫は濡れて貼りついた制服をいそいそと脱いで身体を洗うと、彼女の浸かっている湯船に入った。のびのびと足を延ばせるどころか、工夫しないと顔まで沈んでしまいそうだった。
「貴方の体格じゃ溺れちゃうわね。私の所までいらっしゃい」
菜々緒の手招きに、信夫はおずおずと近付いていった。彼女の傍に座ると、菜々緒は自身の鼻と腕で信夫の身体を安定させた。
「これで肩まで浸かれるわね。苦しかったら言ってちょうだい」
「あ、ありがとうございます・・・・・・」
ぴっとりと誰かに密着しながらのお風呂は、幼い頃のお風呂を思い出した。目の前には巨大な乳房が浮かんでいる事以外はゆったりと湯船に浸かることができたのだった。
「信夫さんは私に何か聞きたいことはあるかしら?」
「聞きたいことですか?そうですね・・・・・・」
信夫はしばらく考え込んで、質問をいくつかに絞った。
「じゃあ、まずは旦那さんとの馴れ初めを聞いてみたいです」
「勇那さんとの?そうねぇ・・・・・・よくある職場恋愛って所かしら。最初は取っつきにくい仕事一筋みたいな印象があったんだけれど、治験や代理母の時に丁寧にサポートしてくれてね。自分が両性具有なことを打ち明けても驚かなかったの。だから私、『この人の子供なら産んでもいいかも』ってアタックしたら、向こうも了解してくれてね。それから子供も生まれて独り立ちして・・・・・・それから色々あってこの病院で働いてるのよ」
彼女の話によると、勇那さんとの間に生まれた四人の子供たちは、今では各地で家庭を持っているらしい。彼女の仕事についても理解を示しているのだそうだ。
「立派な旦那さんですね・・・・・・あの、菜々緒さん」
信夫は思い切って質問を重ねた。
「あの急患に施したアレは何なのでしょうか?」
「あの急患?あぁ、あの妊婦さんにした施術ね。あれは『お迎え棒』って言って、子宮や産道に刺激を与えて陣痛を促したり、羊膜を破って破水を促すのよ。出産に時間のかかっている時や、羊膜が破れないときにする事が多いわね。私も何度か受けたことがあるし、今日みたいにすることもあるの」
聞きなれない単語や状況が飛び出してきたものの、それから信田はいくつかの質問を重ねていった。湯船での会話ということもあってか、するすると質問や話が盛り上がっていくのだった。
お風呂のドア越しに、見たことのある大きな人影が見えた。
「ただいま」
「あら勇那さん。よかったらどうぞ」
扉からぬぅっと巨大な影が現れた。大きなお腹と、それを支える逞しい巨躯を携えていた。そのお腹は年相応の肥満と言うよりも、まるで────
「あ、勇那さんお疲れ様です」
彼の奥さんと一緒に湯船に浸かっている状況を本人に見られるのは、信夫には途轍もなく気まずく感じた。
「あら勇那さん、おかえりなさい。先に信田さんとお風呂、入らせてもらってるわ」
「あぁ、そのようだね。私もこの後、お風呂に行こうと思っていた所だ。信田さん、今日の取材はどうだったかな?」
「そうですね・・・・・・初日から既に予想外の情報が多すぎて、消化しきるのに時間がかかりそうです」
信田は苦笑いを浮かべた。勇那の口元が緩んでいた。
「そうだね。確かに特別な用事でもない限り、訪れる機会の無い場所だからね。菜々緒さんとのインタビューは終わったのかい?」
「はい。まだまだ話し足りませんが・・・・・・そうだ。今度は勇那さんにも色々とお聞きしたいですね」
「私にかい?私で良ければ喜んで」
勇那はざぶんっと湯船に浸かった。
「じゃあ、まずは・・・・・・菜々緒さんとはどのような馴れ初めがあったのでしょうか?」
「おぉ、いきなりそれを聞いてくるか・・・・・・本人の前だから少し気恥ずかしいようなもするけどね。一言でいえば職場恋愛だよ。彼女は最初、新薬の治験で知り合ったんだ」
勇那は彼女との馴れ初めを語り始めた。
元々、産婦人科医として働いていた彼はある日、代理母のモニターに参加した彼女をサポートすることになったのだそうだ。当時は道徳的に賛否の分かれていた行為に真っ先に身を投じた彼女の勇気に惹かれたのだという。菜々緒は自身の両性具有に悩んでいたものの、勇那がまっすぐに受け止めてくれたことでお互いに惹かれあったのだそうだ。そこから様々な治験や代理母としての実績を積み上げていった結果、この巨大な産婦人科施設のプロジェクトに参加することになったのだそうだ。
「それから私のような雄でも代理母ができるようにと、手術を施してもらったんだ」
「まさか勇那さんが真っ先に名乗り上げるなんて思わなかったわ。初めての出産のとき、中々生まれなくて私がお迎え棒をしてあげたのが懐かしいわね」
「おいおい、あの時の話は少し恥ずかしいからよしておくれよ・・・・・・これ以上は君ものぼせてしまうだろうから、続きはお風呂から上がってからにしようか。後の事は私に任せて、君は先に休むといい」
「そうね。私たちに付き合ってたら、貴方が先にのぼせちゃうわ」
菜々緒は勇那に目配せをした。勇那の頬が緩んだかのように思えたが、信夫はそれに気付くことはなかった。
「じゃあ、私はお先に失礼します」
信夫はそそくさとお風呂場を後にした。扉が閉まり、信夫の影がいなくなったのを確かめると、菜々緒は勇那に向き合うようにぴったりと寄り添った。勇那は菜々緒のお腹を撫でながらため息を漏らした。
「いつ生まれてもおかしくないというのに、まるで気配が無いな」
「お迎え棒したら、もしかしたら・・・・・・」
「確かにな・・・・・・丈夫なのが取り柄の一つとはいえ、それでも負担になっているだろう?」
「それは否定できないわね・・・・・・それに、勇那さんとはご無沙汰だから・・・・・・いい、かしら?」
勇那はごくりと唾を飲み込んで頷いた。菜々緒は母の顔から女の顔を浮かべると、湯船から立ち上がった。勇那もそれに続くと、湯船の蓋をしっかりと閉め、バスタオルをそこに敷いた。菜々緒がゆっくりとそこに寝転ぶと、だらりと足を広げて見せた。勇那は戸棚からローションを取り出すと、菜々緒の逸物を持ち上げて割れ目に塗り付けていった。菜々緒はローションの冷たさと、夫の指のこそばゆさに身をよじった。勇那のスリットからぬるりと逸物が伸び、自身の腹を打った。勇那は彼女のお腹にもたれかかるようにして近付いていく。
「あんまり焦らさないでちょうだい・・・・・・?」
「分かっているよ。でも、あんまり激しいのはナシだ。自分だけの身体じゃないんだからね」
「分かってるわよ」
勇那は探るように彼女の肉壺に切っ先の狙いを定めて腰を沈み込ませた。菜々緒の身体は久方ぶりの雄の味に震え、全身に痺れるような快感が走った。二人の交尾は激しく打ちつけるような荒々しさは無く、彼女たちの下で揺れる湯船のように静かに始まった。勇那の逸物が菜々緒の肉壺をくぐり、彼女の快感を覚えるポイントを的確に刺激していく。風呂場には立ち込める湯気と、互いの荒い息遣いだけが響いていた。
「勇那さん、相変わらず上手いわね・・・・・・」
「長い付き合い、だからな・・・・・・ッ!」
勇那は腰を仰け反らせて彼女の奥深くに吐精する。どろりとした溶岩のような子種は彼女の奥深くで弾け、肉壺は彼の子種を一滴も逃すまいと締め付けていった。それと時を同じくして菜々緒の逸物からも精液を吐き出し、勇那の腹にべっちゃりと広がった。しばし吐精と快感の余韻に浸り、勇那は萎えかけた逸物を抜いていく。
「あぁっ・・・・・・♡」
逸物が彼女の肉壺から抜け落ちたが、子種は一滴も零れることは無かった。
「破水は、しないみたいね・・・・・・」
「きっと君のお腹の中は居心地が良いんだろうな」
勇那は胎動する菜々緒のお腹を愛おしそうに撫でた。
「嬉しい誉め言葉だけれど、甘えん坊さんが十人もいたら大変ね・・・・・・」
菜々緒の逸物は大きな蛇のように鎌首をもたげ、切っ先からはどろりと蜜を弾けさせていた。
「それじゃあ、『こっち』も満足させてやらないとな」
勇那は菜々緒に再び向き合うと、自身の孔へ菜々緒の逸物を受け入れていった。
それから信夫は彼女の身の回りのお手伝いと取材の日々を過ごした。本来なら利用者以外の立ち入りが制限されている場所にも彼女の付き人ということでスムーズに取材をすることができた。住居や病院の棟だけでなく、代理母との信頼関係の構築やストレス発散を兼ねた娼館があるのには驚かされた。おまけに定期的に会う代理母の依頼主の家族とも次第に打ち解け、いつしか雑談に加わるようになっていった。
取材開始から一か月が経とうとした夜、信田がいつものように取材内容を整理していると、給湯室の辺りで硬いものが割れる音がした。部屋から飛び出すと、菜々緒が床にうずくまっていた。床には割れたカップの破片が散らばっていた。
「大丈夫ですか!?」
「あ、信田さん・・・・・・いてて・・・・・・どうやら『来た』みたい」
信田は彼女の言わんとしていることが分かった。
「お怪我はありませんか?」
「平気よ。急に来たからびっくりしちゃって・・・・・・」
信夫は手早く破片を処理して、菜々緒の身体をなんとか支えながらベッドへと運んでいった。いつもの余裕のある表情は無く、時折くる陣痛の波に額から汗が滲んでいた。
「信夫君、ちょっと私の鞄を持ってきてくれるかしら・・・・・・?」
信夫は彼女の指さす先にある鞄を手渡すと、ガサガサと中を漁って端末を取り出した。暫くすると、端末を操作する手が止まってしまった。
「どうかしたんですか?」
「分娩室が今はどこも開いてないみたい」
彼女の告げた状況に、信夫の背に冷たい汗が流れた。
「つまり、ここで・・・・・・?」
菜々緒は頷いた。これまで彼女が助産をする様子は見てきたが、信夫はただの記者に過ぎない。「出産」という一大事を任されるのは荷が重すぎる。しかし、彼女にとって今現在、頼れる相手は自分しかいない。取材が終わるまでは彼女のサポート役ではないか。信夫は顔をバシバシと叩いて菜々緒に向き直った。
「菜々緒さん、何を準備すればいいですか?」
「それじゃあ・・・・・・まずは戸棚からバスタオルをありったけ用意して頂戴。まだ陣痛が始まったばかりだから焦らなくて大丈夫よ。勇那さんや依頼主の人たちには連絡を入れたから」
しかし、病院の営業時間を過ぎても生まれる気配が訪れることは無かった。陣痛の波が狭まっているものの、彼女がどれだけ出産経験が豊富だったとしても、十人以上も身籠っている上に臨月から大幅に過ぎているにも関わらず一向に「その先」が訪れない故の消耗は信夫の目にも明らかだった。信夫は菜々緒を気遣うように彼女の腕を握ったり、汗を拭いたり、水を飲ませたりして彼らの到着を待った。
「なんだか、初めての出産を思い出すわ」
菜々緒が呟いた。
「初めての・・・・・・?」
「そう。この施設が出来て間もない頃よ。勇那さんとの子供を妊娠した時はこんな風に中々破水が起こらなくってしんどかったわ・・・・・・。その時は勇那さんがお迎え棒で破水させてくれてね。それからはさっきまでの陣痛が嘘のようにあっという間だったわ。それからかな、私もお迎え棒をするようになったのは」
暫くすると、集団が近づいてくる音が部屋越しに聞こえたかと思うと、扉が勢いよく開かれた。勇那の後ろには依頼主の家族が集まって来ていた。
「待たせたね。もう大丈夫だ」
「勇那さん・・・・・・」
菜々緒はほっと安堵のため息を漏らした。勇那は菜々緒の着ていた服を丁寧に脱がせると、自身の下半身を露わにした。
「なんだか昔を思い出すわね・・・・・・」
勇那がこくりと頷くと、スリットから鳩尾に届く勢いの逸物がぬるりと鎌首をもたげた。勇那は慣れた手つきでコンドームを装着すると、菜々緒の足を優しく開いてみせた。薄いゴム膜に覆われた逸物にたっぷりとジェルを塗りたくり、菜々緒の逸物を持ち上げて切っ先をあてがった。
「さ、もうひと踏ん張りだ」
菜々緒が頷いたのを確かめて、勇那は深々と菜々緒の腰を打ちつけた。いつもの行為とは違い、慎重に、それでいて丁寧に腰を沈めていく。シャチ獣人故に表情の変化は乏しいものの、「絶対に助ける」という強い信念を、信夫は感じた。
「・・・・・・そこ、だな。菜々緒さん、準備はいいかい?」
「えぇ、いつでも来て頂戴」
勇那は初めて腰を引いて、最初よりも力強く腰を打ちつけた。勇那の身体が小刻みに震え、一時の余韻に浸る。
「────来たわ」
菜々緒が微かに声を漏らした。勇那はゆっくりと腰を引き、逸物を抜いた。次の瞬間、堰を切ったように羊水が溢れ出した。
「よし、それじゃあ────」ばしゃっ。
勇那の股座から、半透明の液体が溢れ出した。
「・・・・・・あらあら」
「私も来てしまったみたいだね・・・・・・」
勇那は菜々緒の隣に座りこんだ。信夫は何が起きているのか見当もついていなかった。
「実は私も代理母中でね。まさか私も産気づくなんて思わなかったよ。信夫さんや皆、手伝ってもらえるかな?指示はその都度出すから安心して」
「わ、分かりました・・・・・・!」
信夫たちは協力して二人の出産を手伝い始めた。菜々緒はシーツをちぎらん勢いで全身で踏ん張っていく。彼女の逸物を押し上げて、最初の赤子が出てくる時には、既に日付が変わってしまっていた。
「がっ、あ・・・・・・っ!!」
「ぐっ・・・・・・おぉ・・・・・・!」
産道を潜り抜ける胎児に前立腺が押しつぶされ、胎児が命の門を潜り抜けようと旋回する度に二人の逸物からはとめどなく精液が吐き出された。信夫や依頼主の夫婦たちが息を合わせて赤子を引きずり出していった。
「「ん”おぉぉ・・・・・・あぁ・・・・・・・・・・・・ッ!!」」
ぶびゅっ!!びゅるるるぅぅぅぅぅーーーーーーーー!!
二人の絞り出すような咆哮と吐精と共に、一人目の赤子がこの世に飛び出した。バスタオルで身体を拭き、鼻に溜まっている羊水を吸い出すと、元気な産声を上げるのだった。生まれた子供を彼らの胸元に預けると、赤ん坊は本能のまま乳首に吸い付いていった。しかし、出産はまだまだ終わらない。緩んだ産道によって、次の子たちは比較的スムーズに飛び出していった。前立腺を磨り潰すように産み落とされる命を祝福するかのように、2人の逸物からは子種が迸った。
何時間にもわたる格闘の末、最後の一人が産み落とされると、部屋中に歓喜の声が上がった。どの子も代理母を依頼した人たちの遺伝子を色濃く受け継いでいるものばかりだった。部屋中に精液と羊水、汗の入り混じったむせ返るような匂いを気にする者はおらず、ただただ二人の出産を祝う者達であった。最後に産んだ子のへその緒を切り、布に包んでいると突き破らんばかりに大きく膨らんでいたお腹は萎んでいた。
「お疲れ様、菜々緒。新記録達成だな」
勇那が菜々緒の手を握った。
「えぇ・・・・・・暫くは休暇を取らせてもらうわ」
菜々緒は重みのすっかりなくなったお腹を撫でながらほっと溜息をついた。しかし────
ぶしゅっ!
「・・・・・・え?」
「・・・・・・まさか」
胎盤が出てくるのを待つばかりと思っていた二人の股座から、潮を噴いたように体液が溢れ出した。さっきよりも一際大きな塊が、広がり切った筈の産道を更に広げて潜り抜けていく。萎えかけた逸物に追い打ちとばかりに血流が集まりだした。信夫は真っ先に彼らの助産に動いた。信夫はとめどなく溢れる精液と羊水にまみれながらも、彼らの赤子を少しずつ、そして確実に引っ張り出していった。
「胴まで出ましたよ、もう少しです・・・・・・!」
信夫の一言に、2人は最後の力を振り絞った。
「「ん”ん”お”ぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・・・・ッ!!!!!!」」
ぶッしゅぅぅぅぅぅぅ――――――――――――――――――ッ!!!
一際大きな吐精と共に、菜々緒と勇那は代理母として産んだ子供たちに負けず劣らずの赤子を産み落とした。それも双子で。見た目は二人の種族の特徴を合わせたような見た目をしており、2人とも象寄りの男の子と鯱寄りの女の子の双子が生まれたのだった。
「菜々緒さんに勇那さん、これって・・・・・・」
そう言いかけた信夫だったが、2人とも萎えかけた逸物から潮を噴きながら気を失ってしまっていた。
二人が目を覚ましたのは、その日の夜だった。長時間にも渡る出産で体力も精力も使い果たした上に、度重なる吐精の快感が重なって気絶してしまったらしい。生まれた子供たちは新生児室に運ばれ、すぅすぅと寝息を立てていた。
「ごめんなさいね、夫婦そろって急に気絶するなんてねぇ・・・・・・」
「慣れない助産ですまなかったね。でも、君も初めてな割に手際が良くて助かったよ」
信夫ははにかんだ。
「そういえば、何でお二人の種族の要素を持った子供が生まれたんですかね・・・・・・」
二人の、赤子をあやす手が止まった。
「それは・・・・・・まぁその・・・・・・」
「ねぇ・・・・・・」
二人は顔を見合わせて気まずそうにはぐらかした。信夫は敢えて深く聞こうとはしなかった。
無事に取材を終え、信夫の密着取材を基にした記事が完成した。スタッフとの密着取材が功を奏したようで、他の雑誌が撮影できなかった部分についての記事が好評だったようだ。何か月かすると、菜々緒夫婦から写真と共に手紙が届いた。あの日の代理母依頼で集まった夫婦たちに抱えられた赤子たちに囲まれた夫婦の写真には、PRのための取材をしてくれないかというものだった。信夫は上司や病院と日程の都合を相談し、再び『箱舟』へと赴くのだった。受付で入館の手続きを済ませると、制服に着替えてとある病室に案内された。そこには、看護師の衣服ではなく、手術や検査を受ける時に切る薄手の衣服に身を包んだ菜々緒と勇那が分娩台と思しきベッドに座っていた。
「あら、久しぶり。元気そうね」
「菜々緒さんも元気そうで。今回はどんな取材をすればいいんですか?」
「ここのPRや研修用に、代理母までの過程を撮影したくてね。勇那さんもお手伝いすることになったの」
「こうして二人並んでの代理出産はいつぶりだろうね。少し緊張しているよ」
勇那はぽりぽりと指先で頬を掻いた。
「撮影の準備ができたら合図して頂戴」
信夫は持ってきた撮影機材のセッティングを始めた。
「撮影の準備が整いました」
信夫の合図と共に、代理母役の二人が、依頼主と思しき獣人と打ち合わせを始め、それから看護師が菜々緒たちの腕に点滴を繋いでいった。スタッフたちが短い言葉のやりとりを通して、時折説明を挟みながら、代理母になるための作業が進んでいった。そして、部屋の奥から大きな注射器のようなものが彼らの股座に差し込むと、中に詰まった白濁した液体を少しずつ注いでいった。暫くすると、別の看護師が点滴の中身を調整していった。すると、2人のお腹が少しずつ、そして確かに膨らんでいき、もごもごと何かが蠢いているのが見えた。
「勇那さん、準備はいいかしら?」
「うん、大丈夫。菜々緒さんもしっかりね」
そう呟くと、2人の股座からばしゃっと液体が床に吐き出された。そして看護師の合図を受けながら出産が始まるのだった。