学校イチの不良獣人を遠征合宿に連れていった話

  目の前に広がるのは一面の畳。裸足で触れるそれはかなり冷たく、ところどころベタついている。

  体育館の3分の2ほどの広さであるこの建物は平らな屋根で覆われており、開放感はそこまでない。そのため鼻をつんと突く刺激中に時折顔をしかめたくなるが、徐々に慣れるぞと隣の中年男性から言われた。

  その人は監督。山岳のような体格をどっしりと木製の長椅子に乗せ、目の前に映る光景を見つめている。それは僕もまた同じだった。

  全く馴染みのないこの景色で、僕はとある条件のために連れて来られていたのだ。このどうしようもない不良校が誇れるただ一つの要素である部活動、その合宿に。

  眼前には白を纏った多くの獣人や人間が準備体操をしており、その中にはあの人もいる。

  そう、この学校で一番手のつけられない人物である、百目鬼先輩が。

  [newpage]

  「先輩、一回ぐらい部活行ったらどうですか?」

  帰り道に呟いたこの言葉が、全ての始まりだった。じめじめする梅雨も明け、夏本番へと差し掛かっていた頃のこと。

  ワイシャツに汗を滲ませた先輩を見ていると、やっぱり熱のこもりやすい獣人にとって夏は強敵だということが分かる。毎日必ず1回は学校で着替えるのに帰る頃にはこの有様だから、そうとう大変なんだろう。

  次の日からは夏休みということで、お決まりの合宿の話で各部は盛り上がっている。幽霊部員とはいえ、先輩も所属している以上は対象なのだ。

  そんな先輩はめんどくさそうな顔をしながら僕を見下して返す。

  「はぁ?合宿だぁ?んなモンいいんだよ。つまんねぇし」

  「強すぎて…ですか?」

  「……ま、まぁな」

  僕の視界から顔だけを背けて呟く。確かに強すぎるが故の悩みなのだろうと思うが、僕はまだ一度も先輩らしい部分を見たことがない。恋人なんだし、せめて部活で活躍している姿ぐらいは見たいとは思っていた。

  「でも、先輩の道着姿とか見てみたいですよ。絶対カッコいいですよね」

  「別にお前に見せるほど良いもんじゃねーよ。夏の合宿なんて地獄だぞ?」

  「でも青春って感じでいいじゃないですか。僕は体ちっちゃいんで活躍はできないですけど」

  「ハッ、お前の体じゃ一瞬で吹っ飛ばされちまうかもな!」

  意気揚々と高らかに語る先輩は、ずかずかと足音を立てながらアスファルトを進む。その意気、次の言葉でどうなるかは見ものだった。

  「だから、柔道部のお手伝いさんになりました」

  「要はパシリってか?なら別に………え?」

  「だーかーら、先輩のいる部活のお手伝いをすることになったんですよ。1人先生が体調悪いっていうから、顧問の先生が柔道部にいる先輩のツテで僕に頼んできたんです」

  「は……はぁぁ!?」

  全ての歯が見えるくらい口を大きく開けた先輩はその場で動かなくなった。だが、尻尾の毛先が小さく揺らいでいたのだけは見えていた。

  「あの野郎……どうせ熊田の差し金だろ!!」

  熊田とは柔道部の顧問の先生だ。先輩と同じ獣人で、種族は熊。いつも豪快かつおおらかな雰囲気で生徒から人気の先生だが、先輩と話すことのできる唯一と言っていいほどの先生でもある。

  今回直接先輩に伝えずに僕を利用してきたのは、先輩が僕をかまっている噂がそこまで広まってしまっているということでもあったのだが…まあ、僕も興味があったので話に乗ることにしたのだ。

  僕が行くなら、先輩も絶対に行かざるを得ないだろうと踏んでの判断だった。

  「僕は全然いいんですけどね、一回ぐらい経験してみたかったんで!でも先輩、その間は会えなくなっちゃいますね」

  「何日だ…?」

  「4泊5日だったかな?まあ、ほぼ1週間みたいなもんですけど、大丈夫ですか?」

  驚きを隠せない様子の先輩。今その頭の中では必死に考えを巡らせているのだろう。

  さ、諦めて合宿行きましょう?どうせ宿題もせずにダラダラするなら、長い夏休みの5日ぐらいは運動したって構わないじゃないですか。

  そう言いかけながらも我慢していた僕は、黙って先輩の返答を待っていた。うるさく響く蝉時雨が鳴り止まぬ中、毛皮がぺったりとついている先輩が次第に口を開いていく。

  『しょうがねぇなぁ』

  その言葉が出るのは分かっていた…はずなのに。

  「べっ…別にぃ!?5日ぐらいお前がいなくたって少しは我慢できるし…帰ってくるまで、げ、ゲームとかしてればあっという間だろぉ!!」

  おろおろしながらもハッキリ言った先輩の答えは、ノーということだった。かなり衝撃を受けてしまった僕は体が動かなくなり、乾いた返事をしてしまう。

  「えっ…」

  「俺がのこのこついて行くとでも思ったか?あんなあっちい空間は人間でさえキツイってのに、獣人の俺が行くなんてムリがあるってんだ。そ、それにその話…どーせウソに決まってんだろ!?」

  「先輩…」

  すぐに折れてくれると思ったが…意外と頑固な人のようだ。僕がついていくというのは本当なんだけど、おそらく今の先輩には効かないだろう。

  でも正直、先輩のいない合宿は絶対嫌だった。だからこそなんとかして連れていかなければならない。

  だとしたら…色々と手段を考えたが、結局奥の手を出すしかなさそうである。

  意を決した僕は少し悲しげな表情を装って俯く。そして、先輩に聞こえるか聞こえないかの声量で呟いた。

  「せっかく…させてあげようと思ったのに」

  「……あ?なんか言っただろ今」

  「言ってないです。じゃあ僕だけで行ってきますから、1人寂しく勝手にちんちんでも弄っててください」

  「は!?おい、ココで言うなよバカ!!それより何言ったか教えてくれよ!!」

  わざとらしく走ってみると先輩は猛ダッシュで追いかけてきた。

  その巨体ゆえにドタバタという効果音がよく似合う足音を立て、歩幅の違う身長差のせいですぐに追いつかれてしまう。手を握られ、じっとりと汗ばんでいた先輩の肉球はいつもより柔らかかった。

  「別に…何を言っても先輩は付いて来る気がなさそうなのでやめときます」

  「なら言うだけ言ってみてもいいじゃねぇかよ?俺は何言っても行かねぇからな」

  かかった。これで先輩が了承してくれなかったら本気で休もうか悩む。というか、こういう考えが浮かんでしまう時点で僕自身も少しずつ染まり始めているのもどうかと思う。

  「……す、好きにさせてあげようかなって…」

  「あん?」

  「そんなに先輩が強いなら…合宿での試合に全部勝てたら、僕のことを好きにしてもいいかなって言おうと思ったんですよ…!」

  あえて顔を真正面に捉え、手のひらを強く握り返しながら言い放つ。数秒遅れてやっと意味を理解したであろう先輩の顔から、ぼしゅうという蒸発音が聞こえたような気がした。

  [newpage]

  そして時は今に至る。絶対に約束は守るという確約のもとで、僕は先輩を連れてくることに成功したのだ。

  顧問の熊田先生も嬉しがってくれたし、先輩もなんとなくだが雰囲気を味わっていたように見えたので結果的に良かったかなと感じる僕であった。

  にしても、さすがは柔道部。体格の良い人たちの集まりというか、鍛え抜かれた筋肉に見惚れてしまっていた。

  厚い道着の上からでも分かるほどゴツゴツした輪郭や、時折覗く胸元の胸筋、野太い手首と足首…男らしさの詰まった彼らは、華奢で弱々しい体を持つ僕からしたら羨望の塊のようなものだ。

  もともとこういう嗜好性は持っていなかったはずなのだが…おそらくほとんどが先輩のせいだろう。毎日のようにあんな逞しい体を見ていれば、否が応でも頭に焼き付いてしまう。

  さらにはそれが性的なものにまで見えてしまうから余計に大変だった。勃起まではしないものの、目で追いかけてしまうから気づかれないようにするだけで精一杯だ。

  先輩の影響は本当に計り知れない。まさか性癖まで歪められてしまうとは思わなかった。

  しかし一番恐ろしいのは、それを受け入れてしまっている自分がいるということなのだけど。

  ふと先輩を見ると同級生から珍しがられたりからかわれたりしている。嫌な顔をしつつも抵抗せず、僕には見せない普通の先輩としての姿を見せていた。

  こういう時だけは少しだけ寂しい気持ちになる。恋人を目の前で誰かに取られたような、突然別れを告げられてしまったかのような、言いようのない気持ちに襲われるのだ。

  でもそれはいつも、いろいろなことを考えて自分で抑える。僕にしか見せない先輩の顔とか、可愛い顔とか、いやらしい声とか…下の部分に熱が溜まる前にやめるが、その時点でもう開き直っているから問題ない。

  でもさっき少し面白いことを聞けた僕はそればかり思い出していた。先輩のちょっとした秘密である。

  ───

  それは更衣室でのことだった。実を言うと先輩はこの時まで行く気はほとんどなく、まるで駄々をこねる子供のように拒んでいた。

  仕方なく顧問の熊田先生が僕に任せることになり、他の部員は一足先に道場へ向かうことになっていたのである。しかしこれは、僕にとってはこれ以上ない状況だった。

  一度見てみたかった先輩の道着姿を、さらには着替える過程までもを間近で見ることができたからだ。着るために先輩は上裸になったり下着姿になったりするが、それを見ていた僕に下心など全くなかった。

  あるのはただ、いちスポーツマン通しての先輩の姿。喧嘩もしなければ怖くもない、日本古来の武術を身につけた1人の獣人としての姿に…僕はずっと見惚れてしまったのである。

  時折手伝ってみると、さらにその凄さを実感するのだった。少し薄汚れたその道着は先輩のごつい体格を見事に覆い隠し、長年使い込まれたものなのだと初めて触った僕でも十分に理解できた。

  まだ帯を巻いていない状態の道着姿はかなりエロ……じゃない。かっこいいのだ、冗談抜きで。

  柔道着特有の開いた胸元からは先輩の誇りとも言える胸筋が覗き、鍛え上げられた腹筋までもが頭角を表している。体中に刻まれた古傷も相まってか、男なら誰でも憧れてしまうような造形美だった。

  普段制服でしか見ない先輩の新たな一面を目撃し、興奮が抑えきれない。むしろこっちの方が個人的には好みだったとも思う。

  「先輩……めちゃめちゃかっこいいじゃないですか…!」

  「…う、うるせぇよ!くそ、恥ずかしい…」

  「ええっ?僕はすごい感動してますよ。先輩にもこんなかっこいい姿があったんだなって」

  「そんなに言うなって!」

  「なんでですか?」

  「……ちょ、調子狂うんだよ!オメーがチラつくと…試合に集中できねぇかもしれねぇんだからな」

  なんたることだ。ついに先輩の枷になってしまったことに、僕は逆に喜んでいた。いや、ここは先輩からしたら喜ぶべきことではないのだけど。

  でも先輩には是非とも勝って欲しい、僕を好きにしてほしいとも思う。

  舞い上がっていた僕は先輩の試合の時にわざとらしく視線を送ってみたい気もしていた。しかしダメだ、いくらしたくても流石にやってはいけないことだと自分に言い聞かせる。

  理性と本能が頭の中でせめぎ合いながら闘争を続けている。趨勢は五分五分だが、どちらも先輩の道着姿に惚れていたのは事実だった。

  頭の中で悶々としながら、道着の袖を腕に通して前に閉じようとしたその時だ。

  「……ぅひっ!?」

  「え?」

  いつも性交をする時に聞く可愛らしい声が更衣室にこだました。もしここに人がいたら案外マズかったかもしれない。

  背中側にいた僕が近づこうとすると、先輩は前面を隠すような格好になった。

  「先輩、まだ帯結んでないですよ」

  「いっ、いいから!あとは自分で全部できっから、先行ってろ!」

  隠すのが下手な先輩は、いつも通りの時とそうでない時の差が激しい。しかもそう言う時は、だいたいそっち系の理由になると僕は前々から思っていた。

  自分の中で最大限の素早い動きをし、丸太みたいな先輩の腕をくぐり抜けてとある部分に触れた。

  「ッひゃん!?」

  当たりだ。おそらく、一番と言っても過言ではない先輩の弱いトコロ。

  触れたその部分に欲情を感じてしまった僕は、いつもみたいに指を這わせる。ちょっとだけ…理性が本能に消されかけた時、今まで経験したことのない強さで腕を掴まれた。

  「い゛ッ…!」

  「ああっ!す、すまねぇ!!」

  あまりの強さにとっさに悲鳴をあげてしまう。力の抑制を少しだけ解いてしまった先輩はすぐさま柔らかく僕の腕をさすり、泣きそうな目で謝ってくれた。

  「ごめんな、痛かったろ…?」

  なんで今は今にも泣き叫びそうな子供の顔をしているんだ。傷だらけでも愛くるしさを感じてしまった僕は腕の痛みなどとうに忘れ、同じ目線に立ってくれた先輩の鬣を撫でていた。

  「全然…大丈夫です。ごめんなさい、僕も少し冷静じゃありませんでした」

  「いや、俺も言わなかったのが悪い」

  「……じゃあ、そこって…」

  こういう時だけ回転の早くなる僕の頭は、なんとなくその理由を推測してしまう。道着でそこを隠したまま、先輩は小さく呟くのだった。

  「……初めは全然大丈夫だったんだ。でもだんだんやってくうちに道着と擦れていって、気がついたらすげぇ敏感になっちまってた」

  「やっぱ、そうなんですね…」

  「多分もとから感じやすい体だったのかもしれねぇ。本当はこんなことを理由にしたくねぇが…だから辞めたってのもあるかもな」

  意外と深刻な問題だったんだな。初めて聞く先輩の話でもあったせいか、受け止める重みが全く違った。

  次第に幾度も交わった過去の記憶が蘇り、さらに申し訳なさが胸の奥から込み上げてくる。

  「そんな部分を勝手に弄って…すみませんでした、先輩」

  「ああいや、だからといってお前が悪いわけじゃないし、その…気持ちよくなかったって言うのは、嘘になる」

  「……」

  「まあ本当は、どうにかして対策できたらいいんだけどな…ハハッ」

  そのあと、何も言わずに先輩自ら抱きしめてくれた。まだ正午にすらなっていないというのに、その毛皮はぐっしょりと濡れている。

  でも全く気にならなかった。むしろ、試合が始まってしまえばあまり近づくことのできないであろう先輩に触れられて嬉しかったのだ。

  だがその時ふと、僕の頭の中にいい案が浮かんだ。

  「あ、じゃあ先輩、これならどうですか?」

  先輩の腕を優しく退けてから、持ってきた小さめの箱型バッグを開く。半透明なプラスチックのケースに入れられたそれを見て、先輩は首を傾げた。

  「ば、バンソウコウ?」

  「これを貼れば、擦れる時の感覚は少し減るんじゃないですか?」

  「でも毛皮もあるし…汗だってこれからとんでもねぇ量かくんだぞ」

  「先輩、今の絆創膏を知りませんね?ちゃんと毛皮のある獣人専用もあって、人間のものより何倍も剥がれにくくなってるんですから!」

  「そ、そうなのか…?」

  話し続ける僕をよそに先輩は未だに不思議がっているが、時間がないのですぐに貼ることにするのだった。

  「追加はたくさんありますから、剥がれたら言ってくださいね。もし聞かれたら喧嘩した時に怪我したとでも言っておけば大丈夫ですよ」

  「お、おう…」

  何故か、本当に夫婦みたいだと僕は感じてしまった。下心などない純粋な関係のように思えた。

  上を見上げると、不安げに鼻をヒクつかせながら僕を見つめる獣の顔が見える。これから先輩のかっこいい姿が見れるんだという期待と、その期待に応えられるか不安だと言わんばかりの表情をしている先輩が可愛くて、やっぱりちょっとだけいたずらをしたくなってしまった。

  絆創膏を貼る直前。既に十分汗ばんでいた先輩の乳輪に、僕は優しく口付けをしたのだ。

  「ひんっ!?」

  唐突な出来事と微弱な快感に体をびくりと震わせた先輩の声は、可愛らしかった。

  塩辛い味がちょっとだけ口内を満たすが、一瞬すぎてそれはすぐに消えてしまう。すぐに水分をタオルで拭き取り、絆創膏を貼り付ける。

  反対側も同じようにすると、先輩は再び嬌声をあげてくれた。

  「僕からのおまじないです。先輩が勝てますように、って…へへっ」

  自分でもやっておきながら恥ずかしくて、顔を下に向けてしまう。そんな僕に先輩は音もなく近づき、両肩をがっしりと掴まれた。

  目線を上げると真っ赤になった獅子の顔があり、ぎゅっと閉じていた黒い脣が開く。

  「あ…ありがとう…!全部、一本で勝ってやるからな。ちゃんと見とけよ…っ!」

  それはあの時の告白のように、しかしあの時よりもハッキリとした言葉だった。

  次第に互いの口が近づいていく。顔を傾け、数秒後には密着してしまいそうな距離にまで迫る。

  「おーい百目鬼ぃ!!まだ来ねぇのかよ!」

  その言葉が引き金になり、それぞれが顔を思いっきり離した。すんでのところで理性を取り戻した先輩が叫ぶような大声で返す。

  「うっ、うるせぇ!今行くよ!!」

  「じゃっ、じゃあ先輩…頑張ってくださいね」

  「おう。やってやるぜ」

  握り拳を肩まで上げた先輩は、ニカっと笑って背中を見せてくれた。それは番長などではなく、ただ1人の獣人としての姿であった。

  [newpage]

  合宿初日。言うまでもなく、一本勝ちで全勝。

  陰ながら見ていた僕でも、その強さを肌で実感した時間だった。本当に気が散ると思ったからベンチにいても極力見ずにいたけど、あんなに強いとどうしても目がいってしまう。

  まずその威圧感だ。それだけで並大抵の相手はすくんでしまい、簡単に隙を晒していた。

  それ以外はかなり経験を積んだ人たちでなければまともにやりあうことすら出来ず、一番体格の良かった人間でも先輩はほぼ無傷で一本勝ちした。

  張り合いがあったと言えるのは先輩と同じぐらいの体格をした虎か熊の獣人だけで、一度は技ありを与えたもののすぐに一本で取り返すのだった。追い詰められた時に発揮するその精神力と馬鹿力は、喧嘩で培われたものなのだろうな。

  こうして僕は、先輩にさらに惚れ込んでいくのだった。

  その日の夜中のことだ。

  「はぁ〜!?今日はやれないだとぉ!?」

  「せっ、先輩!!声が大きいですよ…!」

  合宿所にある綺麗な多目的トイレの中、僕と先輩は2人で会議なるものをしていた。それは先輩の望みを叶える、重要なものだ。

  「でも、全部の試合とは言いましたよね。そこは覚えてますか?」

  「それは覚えてるけど…ホントにそうなのかよ?」

  「さすがに1日分だけじゃ張り合いがないですもん…でも今日はちょっと先輩がカッコ良すぎたんで、特別ですよ?」

  そう言うと同時に、先輩の着ていたダボダボのジャージに下着もろとも手を掛ける。先輩が反応するよりも先にすぽーんとずり下ろすと、こんもりした黒い塊が姿を表した。

  皮を被るソレからわずかに漂う雄特有の香りが、鼻を心地よく刺激する。

  「はぇっ!?」

  「あんなに強かったとか、先輩ズルいです」

  そして勃ってもおらず、皮も剥けていない先輩のチンポを掴む。通常時ですら僕の勃起時に近いその肉棒をむにむにと揉み、皮を上下に擦ったりした。

  「ちょっ、ちょっ、おい、待てって…あ、なにしっ…!」

  「ちょっとだけ、先輩を気持ちよくさせてあげようかなって思っちゃったので」

  その日はずっと興奮しっぱなしだった僕は今日この時この瞬間、腹を括った。目の前で膨らみつつある凶器に近づき、しばらくその形を眺める。

  やがて大きく口を開けて、まだ発達途中である先輩のチンポを咥え込んだのだ。

  「あ゛!!おい、やめ…嘘だろ…っ!?」

  「[[rb:ふほひゃはいれす > うそじゃないです]]」

  「あっ、ああっ、ぅあ、やべっ……まて、待てって…!」

  その言葉に反し、なりふり構わず口を動かし続ける。ぺろぺろと何度も同じ部分を舐めたり、浮き上がった血管をつぅーと撫でるだけで先輩は腰を震わせ、尻尾をぴんと真っ直ぐにしていた。

  さらに垂れ下がっていた袋も一緒に揉み、卵みたいな大きさの睾丸を縦横無尽に転がしていく。その度に、間近に見えていた太ももがびくんびくんと震えていた。

  次第に、その肉棒も反応を示してきてくれていたようだ。ぷくりと粘液が溢れ出し、それを舌で掬い取ると言葉にならない味が口内を満たす。

  それに伴って自身から分泌されていく唾液の量はどんどん増していき、響く音がより卑猥なものになっていく。じゅぷじゅぷと聞いたことのない音色に欲情してしまっていた僕も、言うまでもなく自身の男根は屹立していたことには気づいていた。

  「おい…!それ以上やったらもう…でる…ッ!」

  「むぁ、それは危ない」

  即座に口を開けて顔を離していく。雄臭くて粘っこい液体が口の中に残るなか、先輩のブツを見るとだらだらと先走りを存分に垂らしていた。

  「はぁ、はっ、お、おい隼汰…どうしたんだよいきなり…」

  息を切らして言葉を紡ぐ先輩。まるでそれは、僕が咥えるだけで先輩の全てを支配できてしまいそうな気持ちにさせるのだった。

  「思った以上に先輩がカッコよくて、惚れちゃったんです。だから頑張ってフェラしてあげたくなりました」

  「お前……」

  獅子獣人の顔が紅潮していく。耳はひょこひょこと動き、尻尾がどこかへ飛んでいってしまいそうなほど暴れていた。

  「今は風呂入ってたからいいけど…次やる時は、絶対に洗う前にすんじゃねぇぞ」

  「え、なんでですか?」

  「きっ…汚ねぇからに決まってんだろ!!……お前の口ん中、そんなので汚したくねぇんだよ…」

  「…あ、ありがとう…ございます…」

  傷だらけの図体からは考えられない言葉を恥ずかしげに発した先輩。その気遣いや優しさから見るに、やっぱり普通にいい人なんだと改めて思った。

  本当に、僕もこの人が大好きなんだなぁ。

  「とっ、とにかくそこまで言うなら、きちんとやってくれよ。明日も試合なんだからな!」

  「……ふっ、はいはい。分かりましたよ、じゃあ座ってください」

  唐突に不良っぽい言葉を使うから少し笑ってしまった。そんな彼に寄り添うように近づき、股を広げる。

  天を向いてそそり立っていた先輩の肉棒を再び掴むとその太さ、そしてこれが口に入るのかとに少しだけ不安が募った。

  「先輩、すみません。腰は降らないでくださいね。僕死んじゃうと思うので」

  「わ、分かったよ。でもそんなにやりすぎると収まりつかなくなるから、ほどほどにしてくれ」

  「了解です。じゃ、いただきます」

  至って普通に、何気ない食事をする時のように。

  先輩の精をこれから食すという気持ちに昂っていた僕は、ゆっくりと再びその肉棒を咥えた。やはり太く、全てを咥え込むのは不可能に近いだろうと悟る。

  とりあえず今はその形を覚えるように口を止め、鼻だけで息を吸った。風呂に入った先輩の体からはボディーソープのいい香りがしていたが、そこに混じって確かな雄の匂いも存在していた。

  その発生源である陰毛に隠れた皮膚へ目をやりながら、根本を掴んで再び舐め始める。熱く、太く、ビクビクと絶え間なく脈打ち続けていた。

  それはまるで別の生物が先輩のチンポに擬態しているかのように、またはここにだけ特別な運動能力があるのようだった。その物体を口ないしは舌の動きだけで確認するたびに、先輩は柔らかな声を発してくれる。

  感じている。それだけで、僕の気持ちも高まっていく。

  気持ち悪さなど全くない。むしろ先輩のモノを掌握しているというような気持ちにもなり、申し訳ないが優越感にすら浸っていたと思う。

  本当は尻も一緒に弄りたかったが、それは次の機会まで我慢することにした。もともとこれは予定になかったことだし、今そうしては明日先輩がどうなるか分からない。

  じゅぼっ、じゅぼっとさらにその音は大きさを増していき、先輩の喘ぎ声もだんだん蕩けてきていた。

  「……あ♡…ぐ、んぉっ♡」

  「[[rb:ふぁれ、へんはい? > あれ、先輩?]]」

  「…ハッ!くっ、くそ…こんなんで喘ぐとかそろそろ本気でへんた……っんあ゛あ゛っ♡」

  その言葉を待たずして再開してみると、先輩はまた可愛らしい声を発してくれた。正直、僕はこの声が大好きである。

  あんなに屈強だった先輩がこんなにも蕩けた様子になるなんて誰が見てもエロいだろうし、それを独り占めできている僕は幸せ者だと毎回ありがたみを感じていた。

  「おいっ♡まて♡そんなっ♡♡いじんなって♡」

  そんなこと言いながら僕の顔を離そうとしないのがその証拠。先輩の力なら簡単だろうに、それでも不可能なのは分かっていた。

  否、出来ないほどの責め方をしていたからだ。さらに増した潤滑材である先輩の先走りと共に、今度は裏筋を狙っていた。

  ガクガクと腰を抜かしかけている。鍛え上げられた極太の太ももは、この図体からは考えられないほど速い速度で震えていた。

  人でも獣人でも弱いこの部分は、いくら負けなしの先輩であっても快楽の沼へと落としてしまうのだ。正直初めてではあったのだが、適当に舐め回すだけでも効果はてきめんだということを同時に確認した。

  「……あ♡だめっ♡無理♡しゅん、た…で、でるっ♡飲んで…いや、飲まな…あひっ♡あ、……ん゛がぁ゛ッ♡♡」

  その瞬間、口の中に半分だけ存在していた凶悪チンポがぶるぶると震え出した。というより、暴れたといった方が正しいだろう。

  先輩のイく宣言に身構えた僕だったが、それが完了するよりも先に熱い液体が上顎を直撃していた。ビュルビュルと一気に噴射されるそれは予想以上に粘っこく、飲み込むまでかなり時間を要した。

  先輩の雄らしさそのものを具現化したようなその白濁は濃厚で、鼻からどんどん精子の匂いが突き抜けていく。全てを受け止め切れるわけもなく、無惨にもぼたぼたと僕の口の端から、綺麗なトイレの床へと垂れ落ちていった。

  それでも口内に残っていた分だけはと必死に顔を上げ、先輩の遺伝子をごっくんと飲み干す。初めて味わった味覚に舌は混乱し、細い食道を通って侵入された胃は熱い液体に反応を示す。

  腹に残る熱が体中をじわじわと温めていく。僕はこの時、先輩の分身を少しだけもらったような気分になった。

  「……ぷは、ふぅ…めっちゃ出ましたね、先輩」

  「はっ、はぁ…おま、飲んじまったじゃねぇかよ…」

  たった一回イっただけだというのに、性交したあとみたいな疲れ切った顔をしていた。顔を含む全身が汗びっしょりになっているし、そこまで気持ちよくなってくれたのだろうか。

  「別にいいですよ、先輩のなんだし。僕だって先輩からいろいろとされてみたかったんですからね?」

  「……そっ、それは俺だって…してみたい気持ちはあるけどよ。体のデカさが違い過ぎんだよ」

  そう、それが一番の問題だった。僕が攻めに回るだけならまだいいが、逆となると話は別だ。

  まあもとよりお互いにそれを承知で付き合ったのだが、やはりやりたくなってしまうのもまた言い切れないのである。だからこそ今日のことを言ったのだった。

  そのために自分ができる範囲で尻穴を拡げてきたのはまだ内緒だが、先輩は僕のことを心配してくれているようにしか思えなかった。

  「ま、それ以外でも先輩だったら方法はあるんじゃないですか?ちゃんと勝った時のことも考えておいてくださいね」

  「うっ、か、考えてるっての…!」

  行き詰まってから返す言葉の時は、だいたい嘘だ。たぶんまだ決まってないんだろうな。

  でもそれが先輩らしい所でもある。そう思いながら床を拭いて洗面所で口を洗い、目線を送る。

  「今日はめちゃくちゃカッコよかったです。先輩、ちゃんと柔道強かったんですね、びっくりしました」

  「……ありがとよ」

  「あと3日、頑張って下さいね。最終日までに全部勝ったら、先輩の好きにしていいですから!じゃあ、おやすみなさい」

  なぜか恥ずかしくてたまらなかった僕は半ば逃げるように出ようとする。先輩はそれを察してくれたのか、何も言わずに見ているだけだった。

  が、もう一つ言い忘れたことを思い出してドアを開けた。びくりと体を震わせた先輩の顔を堪能しながら、ひそひそ声で呟く。

  「……ごちそうさまでした」

  その言葉が先輩を射抜いたかは分からない。けど、言いたかったことを言えてスッキリした僕は軽い足取りで部屋へと戻るのだった。

  しかしあまりにも浮かれ過ぎていたせいで先輩と同じ部屋だったということを思い出すのは、もう少し先のことだ。

  [newpage]

  2日目も見事に全勝、3日目がスタートした。久々に百目鬼先輩が戻ってきたことにより顧問の熊田先生はおろか、部員全員の士気が上がっていたように見えた。

  それは先輩が楽勝という内容ではなく、死に物狂いで相手と戦っていたからだろう。先輩からしたら僕が関わっているからなのだけど、みんなからしてみればあんなに素行の悪い先輩がここまで必死になっているのは初めてだったからだろうな。

  「っしゃオラアァァ!!!!」

  腹まで響く雄叫びが柔道場を満たす。一度も負けられないという先輩の意思が、あろうことか部内全員のやる気を底上げさせてしまったらしい。初めは怯えていた後輩ですら声を張り上げて応援したり試合に出たりしており、先生にとっては最高の状況だっただろう。

  そのあまりの熱気に少し気圧された僕は逃げるようにして手伝いへと回ることにしたのだ。

  今日も晴天、他の学校の人たちと一緒に洗濯物の仕事をこなしていた。さすがは柔道部というだけあって染み付いた汗は手強く、洗濯しがいがあるというものだ。

  部員全員が道着を2着ずつ持ってきており、今日はその第一号目。思った以上に重労働で、水分を吸うと一気に重くなるから匂いが取れなくなる前に急いで洗うのが地味に大変だった。

  洗濯機に入れる前にまずは手洗いをする。そうしないと洗濯機自体がダメになってしまうらしい。

  洗っては洗濯機へ放り、また洗っては干してを無心で繰り返す。外で行っていたために汗は止めどなく流れ、水筒を持ってきてよかったと心から思っていた。

  そして最後に残しておいた一着をカゴから取り出す。他のものよりは綺麗だが、染み付いた香りが確かにその過去を物語っていた。

  裏地には『百目鬼』という金色の刺繍が施されたその道着を、誰よりも丁寧に洗っていく。最後に残しておいたから疲れはあったが、それ以上に真剣に手を動かし続けた。

  僕の服の倍はあるであろう大きさのそれを懸命に洗い終え、黒い帯へと移った時のことだった。そういえば帯の色って強さに関係あるとか聞いたことあるけど、確か黒が一番強かったはずでは?

  いや…それよりも今は完全に別の考えに思考が霞み始めていた。ほのかに香るその匂いは、一昨日嗅いだアレと全く同じものだったのだ。

  ごくり、と生暖かい唾が喉を通る。汗が頬を伝い、じりじりと照りつける日差しが痛かった。

  だがそんな感覚は一瞬で消え失せ、目の前の帯に目線が釘付けになってしまう。

  先輩の匂い。下着までとはいかずも、上裸を覆っているたった一枚の道着をこれだけで固定しているのだ。腹筋や腰あたりに溜まった汗ぐらい、十分に染み付いているはず。

  加えてそれが巻かれる場所は、男の大事な部分の近く。獣人であり夏はとんでもない量の汗をかく先輩なら…道着を通り越してその放出された魅惑の水分を吸収していてもおかしくはない。

  呼吸が浅くなっていくのが分かる。むくむくと、自身のブツが膨らんでいく。 周りに誰もいないかどうかを懸命に確認し、少し[[rb:人気>ひとけ]]のないところへ桶ごと持っていった。

  「一回ぐらい…なら…」

  自分がその言葉を発したことに気付かぬまま、ゆっくりとその帯を鼻へと近づけた。さっきまで漂うだけだったその匂いが強烈になり、鼻腔が嬉しい悲鳴をあげる。

  人間では到底敵わない、雄獣人が発するそれはまるで…薬物にも等しかった。真夏の部活終わりの柔道部に駆け込んだらきっと、こういう気持ちなんだろうなと勝手な妄想を膨らませる。

  極限まで引っ張られた自身の下着はジャージにまで及んでその形を作り、さらには鈴口から液体が溢れ出していることまで理解できてしまった。もちろんそうか、大好きな先輩の匂いなのだから。

  

  一度だけとあんなに頭の中で反芻したにも関わらず、2回、3回、4回…と何度も繰り返してしまう。大きく深呼吸をするように、鼻だけで。

  饐えた雄の香りが脳内を麻痺させ、無意識に全裸の先輩を思い浮かべてしまった。気がつけば僕はその後ろに立ち、指にローションをつけ、ぐちょぐちょといつもみたいに尻をほぐし始める。

  「あっ、んぁっ」という先輩の蕩けた声が響き渡り、それと同時に自身の心臓の鼓動もどんどん早くなっていく。誰も敵わないその獅子獣人は僕にだけその痴態を晒し、ビクビクと体を震わせてくれる。

  やがてとろりと液体を垂らす穴に破裂しそうなほど膨張した僕の男根を突き立て、ずぶりとひといきに押し込んで……

  「なーにしてんだ、こんなトコで」

  「ハッ!?」

  その声で天地の全てがひっくり返ったような気持ちになった僕は、ばっしゃぁと盛大な音を立てて帯を桶へと叩き込んだ。が、もう遅いだろう。

  声のした方を見ると、道着姿の百目鬼先輩が突っ立っていた。

  「せっ、せせ先輩!?あれ、試合は、さっきまで…!」

  「なんでこんなとこにいんだよ、みんな探してたんだぞ」

  そう言いながら腰をどんどん下ろしていく。まずい、おしまいだ。

  十分に今までのことを見られただろうな。加えて未だにハッキリ残っているジャージの膨らみが、言い逃れできない証拠として残っていたからだ。

  1発殴られることを覚悟した僕は、目をぎゅっと思いっきり瞑る。

  「……?」

  しかし何も起こらなかった。ゆっくりと目を開けると、あろうことか先輩の分厚い胸板が目の前に鎮座していたのだ。

  ヤンキー座りのような姿勢になった先輩は見事に僕の体、ひいては洗濯桶すらもすっぽりと覆い隠し、後ろの茂みから人が来なければ完全に誰からも見えない状態だった。

  「せっ、先輩…?」

  「早くソレ収めろ。待ってやるから」

  「……!」

  思っていたこととは全く違う先輩の行動に言葉が出なかった。察したような顔をする先輩の瞳を見つめながら、訳の分からない思考をどんどん巡らせる。

  だが目の前にある先輩の胸筋がそれを許してくれなかった。加えて試合終わりの蒸れた汗の香りが漂い、それこそ嗅いでいた帯と同様かそれ以上だったとも思う。

  さらに興奮してしまう前に体全体を反対側に向け、指で地面を擦って心を落ち着かせるしかなかった。

  ようやく収まりがついた時には体中が汗でびっしょりだった。先輩の方をチラリと見ると、まだ周囲を警戒してくれているようだ。

  なんだかこの状況は僕自身が先輩に守られているようで、謎の大きな安心感を感じてしまう。でも、これ以上先輩に迷惑をかけるわけにもいかない。

  「先輩、収まりました。ありがとうございます、隠してもらって」

  「ったく…ま、これから昼休憩だしちょうどよかったな」

  「えっ、じゃあ早く終わらせないと!」

  まだ先輩の分を洗い終わっていないことを思い出し、桶を持って所定の位置へと戻ろうとした時だった。

  「ちゃんと洗えよ、このヘンタイ野郎」

  「うっ…わ、分かってますよ…っ!」

  狙い澄ましたかのように、すれ違いざまに言われた僕はぐうの音も出なかった。そりゃ、あんな所を見られてしまっては反論のしようがない。

  だが今は考えることはやめだ。とにかく昼ごはんに間に合うように、急いで仕事を済ませなければならなかったからだ。

  今まで先輩に何回も変態と言ってきたが、今日限りで使うことをやめようと思った。

  だって僕も、同じ変態になってしまったと身をもって知ったからだ。けど、これ以上はなんとかして抑えていこうとも固く誓った。

  [newpage]

  そして迎えた4日目。5日目は午前中で帰るだけなので、実質これが最終日である。

  やはり先輩も疲れの色が見えるのか、動きのキレも少しだけ悪くなっているような気がした。それもそのはず、ただでさえ獣人にとっては辛い空間なのに、一瞬でも気を抜いたら負けという極限状態の中で試合をし続けるのも大変の一言では言い表せないだろう。

  でもそんなことなど気にもしないかのように、先輩はその体を酷使し続ける。数ヶ月ぶりにやったとは思えないほど力強く、逞しかった。

  そして最後の一戦。先輩と同じくらいの体格をした相手との戦いは凄まじいものだった。

  気が緩んだ方が負けと言っても過言ではない状況の中で、まさに一進一退とも言える技の掛け合い。途中で先輩が寝技に持ち込まれた時は、柄にもなく精一杯の大声を僕は送ってしまっていた。

  その声が届いたのか、どこから湧いてくるのかも分からない力で無理やりそれを振りほどき、そのままの勢いで背負い投げ。

  そして見事、合宿において全ての試合で勝ってしまったのだ。しかも宣言通り、全て一本で。

  全部勝つとは心のどこかで思っていたが、まさか一本で勝つとは思わなかった。その後はみんなで百目鬼先輩によってたかってその偉業を称賛し、照れ臭そうにする先輩を僕は遠巻きに眺めていた。

  夜。打ち上げの焼肉パーティーは盛大なものだった。食べる量が半端ない部員の人たちの影響で、用意した肉がどんどんなくなっていくのが逆に清々しかったほどだ。

  料理の手伝いに忙しなかった僕を見かねた先輩が何度も焼いた肉を持ってきてくれたり、途中で他の人が代わってくれたりして、なんだか僕も楽しかった。話せる人も増えたし、なんだかんだで先輩を連れてきてよかったと心から思うのであった。

  これから始まる、2人だけのお楽しみを頭の隅に置きながら。

  暗くなった部屋の中で、僕はせっせと動き回る。

  いびきをかいて寝る先輩に気づかれないよう支度を進め、準備していたものをショルダーバッグに詰めていく。もとはと言えば、僕はこのためだけにこの合宿に来たようなものなのだ。

  準備は抜かりなかった。あとは先輩を起こして、風呂へと入らせるだけ。

  「先輩、せ、ん、ぱいっ!」

  ペチペチと頬毛をたたき、[[rb:微睡>まどろ]]んだ目をする獅子獣人を叩き起こす。

  「んにゃ…まだ、寝かせろ……」

  ごろんと寝返りを打った先輩は枕に顔を埋め、また眠ろうとする。疲れているのは申し訳ないのだが、それよりももっと大きな気持ちが勝っていた僕は呆れたような声で揺さぶった。

  「じゃあ、僕としなくていいですね?」

  「………それは、嫌だ」

  やっと薄目を開けてこちらを見た先輩は、ほぼ上裸で寝転んでいる。手足は布団から盛大にはみ出し、あの立派な面影はどこにもなかった。

  「じゃあ、まずは体洗ってきてくださいね。焼肉臭いので」

  「わ、分かったよ…」

  よし、まずは第一段階。この部屋にはなんと備え付けの小さな風呂がある。先輩がそのままの格好で向かっていったのを確認した僕は、メモ帳にメッセージを書き残して部屋を出た。

  「風呂出たぞ…っていねーじゃねーかよ!……ん?」

  『今からここに書いてある道順をたどってきてください。たぶん先生たちも寝てるとは思いますが、くれぐれも見つからないように気をつけて!』

  ───

  ガチャリと、小さな音を立てて扉が開かれた。畳のある部屋に足を踏み入れると、つい頭を少しだけ下げてしまうそうになる。だが数ヶ月柔道と離れる前の彼にとっては何度もした行為であり、叩き込まれた作法は今もなお覚えてしまっているようだった。

  なぜここはいつも同じ匂いなのだろう、なぜここの床はいつもベタベタしているのだろう。

  好きじゃないのに、気が付けば足を踏み入れてしまっていた。夏ではあるが、夜のせいか一瞬だけ畳がひんやりとしたような気がした。

  「……おい、いるのか?」

  「あ、先輩?バレずに来れました?」

  「もちろんだ。俺の忍び足を舐めてもらっちゃ困るぜ…って、どこいるんだ?」

  「ここ、ですっ!」

  辺りを見渡していた獅子獣人は、積み上げられたマットの影からひょこっと現れた人間に驚く。完全にサイズのあっていない柔道着を着ている彼はまるでお化けのような風貌であり、それが逆に滑稽にも思えてしまったであろう。

  ダボダボな道着の中心からは細身の体が覗き、下は裸だということだけは分かった。同時に、同じく目線を送っていた彼もまた目を見張ってしまうのだった。

  「じゃーん、びっくりしました?先輩のを借りて……え?」

  先輩の格好に驚いてしまった僕は目を見張ってしまう。電灯こそつけなかったものの、月の光によってほのかに明るかった道場内によってその姿はハッキリと確認できた。

  そこにはジャージではなく、なんと道着を身に纏った先輩がいたのだ。この数日間何度も見ていたその姿は、やはりいつ見ても逞しいものである。

  「お前…なんでそんなもん着てんだ…?」

  「いっ、いや…こっちの方が先輩、喜ぶかなって思って…ていうか先輩こそどうしてそんな?」

  「……おっ…同じこと、考えてた…」

  「えーっ…先輩と同じ考えとか、僕も変態じゃないですかぁ」

  「バーカ、もうお前も同じなんだよ」

  完全にしてやられた2人は、お互いを見ながら笑う。小さく乾いた声は、広すぎた道場に消えていった。

  この道場の鍵の管理は交代制になっており、最終日は僕の担当だったのでそれならばと使うことにしたのである。そのための準備や用意もしてあり、先生たちがここに来ることは絶対に無い。

  加えて防音で窓も天井にしかなく、明かりはつけなくても十分見えるから問題ない。まさにうってつけの場所なのである。

  「これで思う存分できますよ。じゃ、先輩の好きにしてください。なんでも言うこと聞きますから」

  そう言って僕は、身の丈にあっていない先輩の道着を着ながら両手を広げる。

  「本当にか?」

  「本当ですってば」

  確認しながら、先輩はじりじりと距離を詰めてくる。見上げるようにしてその顔に視線を向けると、月明かりに陰ったその表情は読み取れなかった。

  気づくと先輩はその大きな口をぐぱっと開けており、牙からは少量の唾液が垂れかけているのが見えた。

  「あ」

  「……?」

  「あーーー」

  たぶん、キスしろと言っているのだ。しかし高すぎる先輩の身長に僕が届くはずもなく、ただ先輩が口を開けて待っているのを眺めることしかできなかった。

  「ったく、届かねぇのかよ?」

  「だ、だって先輩が…んむっ!?」

  わざとらしく焦らされた先輩の罠にハマった僕は、そのまま勢いよく彼の口を覆い被せられる。顔だけが乗ってきているのに圧が強すぎて、どんどん膝が沈んでいく。

  先輩の長くて大きな舌で無理やり唇をこじ開けられ、無造作に口内を蹂躙されてしまう。練習すらしたことのない先輩は、それは乱暴とも呼ぶべき程の適当ぶりだった。しかしその必死な口虐に情けなくも屈してしまっていた僕もまた、ビクビクと体を震わせてしまっていたのだけど。

  「んふっ、うむぅっ…ぷは、んちゅ……じゅるっ…ちゅぷ…」

  「フっ…ング……ぢゅる…むぐっ、ハフッ…んむっ…」

  先輩のマズルは思ったよりも柔らかく、スンスンと繰り返す鼻息はいつも以上に荒い。垂れ流れていく2人分の唾液など気にせず、熱い密着を繰り返す。

  気がつけば僕は先輩の大きな胸に抱きついてしまっており、屹立したそれを押し当てていた。その壁の向こう側では、びたんびたんと何度も畳を叩きつける音が聞こえたような気がする。

  やがて互いの唾液を交換し終えた僕たちは、細く透明な糸を引いて顔を離す。まだ暗がりで見えなかったが、先輩は笑ってくれていたと思う。

  「へっ、キスしただけで抱きついてくるとは、オメーも十分ヘンタイだな」

  「だって……しょうがないですよ」

  身体中が熱い。心なしか、準備してきた尻が少しだけ疼いたような気がした。

  「んじゃ、言わせてもらうぜ」

  ああ、これから先輩のモノを受け止めるのか。自分の体に持ってくれよと喝を入れ、次の言葉を待つ。

  と思っていたのに、ひょいと先輩の太い腕で持ち揚げられて目線が同じになった。先輩が普段見ている視線と同じ高さになり、彼の瞳に映る僕が見えたような気がする。

  「お前が俺を好きにしろ」

  [newpage]

  「…………はい?」

  「だから、俺の言うことを聞いてくれるんだろ?…なら俺を好きにしろって言ってんだよ」

  「それって…」

  「何回も言わすなよ!早く俺のケツにぶち込んでくれって言わなきゃ分かんねぇか、このアホっ」

  軽くゲンコツを食らった僕であったが、その答えが未だに理解できていなかった。

  確かに先輩の言うことは聞くつもりだった。でも先輩は、「俺を好きにしろ」って言った。

  ならきっと、そういうことでいいのだろうか。そう判断した僕は、優しく下ろしてくれた先輩の顔を見上げる。

  「じゃあ、好きにしますよ?」

  「ああ。帰ってからなんて待ちきれねぇよ」

  やっぱり変態じゃないですかと言おうとしたが、堪えてすぐに取り掛かることにした。道着を着た先輩を押し倒し、ゆっくりと下だけを脱ぎ取っていく。

  だがその時、追い討ちをかけるようにその事実が僕を驚かせた。

  「ちょっ、もしかして先輩…パンツ履いてきてないんですか…!?」

  「………わりーかよ」

  部内の誰かに聞いたことがある。柔道着はその通気性の悪さから、たまに下着を履かない人がいると。

  聞いた時は冗談でしか聞かなかったが、まさかここでその人に出会うとは思いもしなかった。いや、この場合は単純に先輩がエロい人だけだと思うが。

  それでも大ダメージを食らった僕は完全にしてやられてしまい、喜びのため息を漏らしてしまう。

  「はああぁぁぁっ……!」

  道着を掻い潜り、ぎゅうっと先輩の胸に抱きついた。じっとりと汗ばんだ毛皮は妙に触り心地がよく、このまま眠ってしまってもいいぐらいだ。

  また体を洗ったばかりではあるが着ていた道着のおかげで、再びあの汗の香りが僕の鼻を刺激してきていた。2着目は時間の都合上洗わずに持って帰ることになっており、先輩はそれを着ていたのだ。

  ムワリと漂う先輩の匂いが充満した道着の中は、まるで自分が天国にいるかのように錯覚させる。

  ああ…あの時の匂いをまた、こんな最高の形で嗅ぐことができるなんて。もし僕が鼻の利く獣人だったなら脇に顔を埋めてやろうかとも考え、少しだけ人間をやめたくなった。

  腹の上に生温かい粘液が塗りたくられているのが分かる。おもむろに前後に擦ると、甘い声とともにその肉棒からとぷとぷと溢れ出していた。

  興奮が高まり続けていた僕は起き上がって先輩の太ももを押し上げ、待ち望んでいた小さな部分を見つめる。ヒクヒクと恥ずかしげに収縮を繰り返すそこは、既に淫らな液体を垂らしていた。

  「先輩…尻の中も洗いましたよね?」

  「当たりめぇだろっ!…早く、突っ込んでくれよ」

  その言葉に従って即座に男根を挿入したかったが、僕はあえて別の方法を試すことにした。麻痺した思考の下した判断に身を委ね、ゆっくりと顔を近づけていく。

  「ん゛ん゛っ!?な、お前…何して…っ!」

  つぅぅと穴に存在しているシワに沿って舌先を這わせる。そこに溜まった汗を掬い取るように、または自分の唾液でその部分を覆っていくように。

  今までで一番濃厚で、先輩の全てが凝縮されたような香りと味。玉袋の裏から漂うそれによって僕の視界は白け、失神しかけていた。

  「くぅ…んぁ、あっ……あ、あひっ…!」

  先輩の声が途切れると同時に、その体全てが震えている。今まで感じたことのないであろう感覚に驚愕と快感を同時に味わっていたらしく、また初めて聞く声を聞けたのが嬉しかった。

  時間が惜しかった僕はゆっくりと舌に力を込める。つぽっ、と小さな水音を立てて、先輩の最も危険な部分へと侵入した。

  「んぁっ!?…お、おい…だめ、やめろって…!」

  頭を抑えられるが、もう止めることなどできやしない。先輩の手を掴んでから指の隙間に自身の指を差し込み、恋人繋ぎのような形で制した。

  その間にもずぶずぶと挿入していく舌は先輩のナカの温かさを感じ取ってきており、柔い腸壁を隅々まで堪能し始めている。それもこれも自分の意志でやっているはずなのに、それを振り切ってどんどん前進していく。

  やがて唇の全てが先輩の会陰部に密着し、舌のほとんどがその穴へと飲み込まれていったのだった。

  腹がへこへこと上下する感覚を乗せていた手のひらが感じ取り、荒い息継ぎが小さく聞こえる。先輩も着々と感じてきてくれているという確信が湧き上がってきた。

  男根ほど太くはないものの、より細かく動かすことのできるそれを一回だけ上に持ち上げてみる。

  「あっ♡」

  それだけで、先輩は喘いだ。びくんと腰が跳ね上がり、ガッチガチに膨張したチンポが動く。次いで何度もぐにぐにと舌をかき回してみれば僕が先輩を操作しているかの如く声を上げ、体をくねらせて悶えまくっていた。

  「ああっ♡あ♡んぁ♡♡ひんっ♡♡ぅう゛ッ♡♡♡」

  ぬちっ、ぬちっと淫らな音が耳元で響く。無防備に開いた先輩の足は痙攣し、股座からはどんどん雄の香りが放出されている。強すぎる精力のせいで溢れ出していた先走りが垂れ、僕の鼻を濡らしていった。

  直接的に先輩の粘液を喰らったために再び意識が飛びかけたが、なんとか堪えて続けていく。今まで男根でしか確認できなかった先輩の淫らなナカを、舌という直接的な器官によって確実に感じることができていた。

  「お゛い゛ッ♡♡なっ、なにし♡て♡あんっ♡♡やめ♡♡やめっ♡あっぐ♡♡」

  「ふーっ、ふぅっ、んぶっ…ふむっ…!」

  「ああ゛♡あ♡あ、あぁあっ♡やべ♡イっちま♡♡う゛♡がぁ゛っ♡♡」

  繋いでいた手のひらにびちゃびちゃと降り掛かり、温かい粘液が指の隙間を埋めていった。存分に1発目を出せただろう、そう思えるほどの量だ。

  僕はそのまま、きゅうきゅうと舌を締め付ける菊門から名残惜しむように舌を抜く。ぬぷんと抜けたと同時にその収縮が一段と激しくなり、先輩の蕩けた声が一瞬だけ大きくなった。

  「はぁ、はぁ、は…な、なにやってんだよ…!?」

  「僕が好きにしたいんですから、許してくださいね。でも先輩気持ちよさそうにしてたじゃないですか?」

  「ぐ、そりゃそうだけど…」

  「よし、次行きます」

  そういって仰向けのままの先輩を跨ぐように立ち、屹立した自身の男根を見せつけながら見下ろす。

  「せっかく準備したんですから…ちょっとぐらい、使わせてくださいね」

  「おっ、お前…まさか…!」

  用意していたローションを指につけた僕は、自身の穴へと挿入させていた。ぐりぐりと拡げながら、ゆっくり腰を下ろしていく。

  「待て待て!ゴムは!?そもそも俺のが入ったらお前のケツがどうなっちまうか分かんねぇんだぞ!?」

  「分かってます…!でも、僕が好きにしたいんですから何も言わないでください。無理だっていう判断ぐらいは自分でできますから」

  「隼汰…っ!」

  先輩のブツは出したばかりだというのに天を向き、初めて味わうであろう感覚を待ち望んでいる様子だった。それを下に見ながら、自身の尻穴とそれを密着させる。ずぶぶと侵入したそれに肛門が押し出そうとするが、必死に力を抜いていた。

  「ふっ…ぐぅ……ふうぅぅっ…!」

  慣らすために使っていた道具よりもはるかに太く、そして熱い。初めての感覚を全身で享受していた僕は、一心不乱で腰を落としていった。

  こういう時の体の構造は不思議なもので、口では咥えきれなかったモノなのにどんどん飲み込んでいってしまう。自分の尻が元からそうであったかのように押し拡げられ、直腸がゆっくりと拡張されていく。

  「あ、ああ…!っはぁ、んぐぅ…!」

  先輩も何か感じてくれているようだった。今まで突かれていただけだったのに、初めての感覚を感じていたその肉棒は歓喜に震えていた。

  そしてついに…僕の尻に先輩の太いチンポが、根元まで完全に入ったのである。正直苦しくて、すぐにでも抜いてしまいたかった。

  でも嫌だ。先輩の肉棒から伝わる熱を、ずっと感じていたい気持ちでいっぱいだったからだ。

  もうゴムなどどうでもよかった。それでも残る苦しさを紛らわすために、先輩の分厚い胸にゆっくりと抱きつく。

  「い…痛くねぇのか…?大丈夫か?」

  「大丈夫です…まさか全部入るとは思ってなかったですけど、どうですか?」

  「……す、すげぇ気持ちいいよ…」

  「それはよかったです。えへへ」

  あまりの苦しさに考えがまとまらない僕は、もはや笑うしかなかった。そうしてしばらく先輩の優しい抱擁を受け止めていようと思っていたのだが、ナカにある極太の肉棒が少しずつ動いていたことに気がつく。

  「せ、先輩…?」

  「仕方ねぇだろ…もう、イキそうなんだよ…っ!」

  「ええっ?動いてもいないじゃないですか…!」

  つくづく性欲の強すぎる先輩だと思う。でもそれが魅力でもあるのだし、嫌々ながらもせっかく頑張ったんだから少しは許してあげようと心を決めた。

  「じゃあ、中に出してもいいですよ」

  「はっ!?い、いいのか!?」

  「早くしないと抜いちゃいますからね」

  「まッ、待て、もう出るから!」

  そう言って先輩の肉棒が力み始める。それを感じた僕は抵抗するように直腸へと力を込め、尻穴を必死に締め付けながら揉みしだいた。苦しさがピークに達していたが、先輩が出すのはもうすぐだとなんとなく分かっていての行為だ。

  「あ゛!!おま、それ…やべっ、で…でる…ん゛ぅ゛ッッ!!」

  直後、ぶびゅうと熱い先輩のチンポからさらに熱い液体が流し込まれた。想像以上にどろどろとしたそれは僕の腹の中を一瞬で満たし、緩み切った穴から破裂音を出しながら入りきらなかった分が溢れ出ていく。

  人生で初めての経験をしたお互いの全身はこれまでにないほど震え、しばらく動けなかった。

  「あっつ……」

  僕は初めて直に感じた精液の温度に驚き、頭の中に浮かんでいた言葉がそのまま零れ出してしまう。

  「はぁ、は、はっ…だっ、大丈夫か…?」

  「だい、じょうぶです…やっぱ先輩、多いですね」

  「すまん…こればっかりはどうしようもできねぇ」

  「いいですよ別に。その、嬉しかったので……」

  欲していた酸素を何度も吸うたびに先輩の腹筋と胸筋が触れる。獣人の毛皮とつるつるの皮膚の間は汗でびしょびしょになっていて…いや、これは汗というよりは粘っこいものだった。

  その瞬間僕の脳はとある判断を下し、挿入されたままの尻を浮かせて自身の男根を見た。

  「うわ、ケツイキしちゃってる…」

  「え?」

  「ほんとに、先輩と同じ変態になっちゃったじゃないですか…付き合うんじゃなかったかなぁ」

  「す、すまんって…!どうする?どうすればいいんだ…?」

  先輩は口を震わせながら全てを失いそうな顔になって、僕の頭を何度も撫でながら必死に謝る。ちょっとからかってみたが案の定の反応を見せてくれた先輩に返した。

  「だから…責任取ってください」

  「……っ!」

  「変態同士、仲良くしましょうね」

  そう言った勢いで僕は尻から先輩のチンポを抜く。ごぶっと溢れ出す白濁の量が一気に増し、次第に腹の中を支配していた圧迫感から解放された。

  やっとすっきりできた僕はそのまま先輩の顔に近づけ、再び口づけをした。

  今度は僕が先輩の口内を蹂躙する番だ。ゆっくりと丁寧に、慈しむように舐め回していく。

  獅子獣人の巨躯がビクビクと反応するたびに、言いようのない高揚感に満たされた。肩を掴まれた僕は先輩から引き剥がされる形で口を離し、その瞳を見つめる。

  「交代すっぞ」

  「…はい、先輩。気持ちよくさせてあげますね」

  今夜も十分な熱帯夜だった。太陽は出ていないというのに、道場の中が昼間よりもずっと暑く感じる。

  それは獣人たる先輩から放射されていた体温か、はたまた僕自身から放出された体温か。だが中断するなんて考えはもうない。どれだけ周りが熱を帯びていようとも関係ない。

  この時間だけは何人たりとも邪魔することはできないのだと、そう思っていた。

  [newpage]

  「あッ♡んぅっ♡がっ♡♡ひぐッ♡♡」

  「ふっ、ふぅ、うんっ…!っはぁ、ふんっ!」

  「んぅ゛♡♡ぐふっ♡♡ひ♡♡あんっ♡♡ん゛♡ぉ゛ぉッ♡♡♡」

  ばっちゅばっちゅと連続した弾ける音が響く。雄と汗の匂いが漂う薄暗い柔道場の中で、激しい交尾を繰り広げていた。

  その獅子獣人は上に一枚の道着を羽織っているだけで、それ以外は何も身につけていない。かく言う僕も同じ格好をしていたが、この姿の先輩は今までで一番と言っていいほどエロかった。

  溢れる涙を滲ませながら舌を出して涎を畳に垂らしている。分泌量が凄まじいのか、口の端ではブクブクと小さな泡が作られ始めていた。僕が腰を前へ突き出すたびに大きな体を何度も震わせていて、それはまるで大きな魚を一本釣りした後に激しく動くあの感じにも見える。

  僕もまた溢れ出る先輩への想いと欲情はとうに限界を超えており、完全復活した自分の男根が抜き差しされるごとに自身の精力も増したのだろうかと考えていた。

  「先輩っ、どう…ですかっ!」

  「ぐぁ♡ぎっ♡きもち♡いい゛ッ♡♡あ♡しゅんたの♡ちんぽっ♡♡ふといっ♡♡ひぅ♡」

  「じゃあ、次はココですね…!」

  「んぁあぁ♡♡やっ♡♡や♡そこ♡ぐりぐりすん♡な゛ぁっ♡♡だめ♡イクイク♡♡イ゛ッち♡まうぅ♡♡」

  コリコリとした先輩の弱点に狙いを定めて半ば乱暴に突き刺す。そうすると先輩の肉ヒダは覚醒したかのようにまとわりつくことをやめ、亀頭から雁首、そして男根全体を揉むという行為に早変わりする。

  その心地良さたるや、何度交わったとしても飽きることはない。むしろ経験すればするほど病みつきになっていき、抜け出せなくなってしまうのだ。

  これはもう一種の麻薬にも等しいものだった。

  「やっぱり、先輩はこっちの方が…お似合い、ですっ…!」

  「っぐ♡ああ♡そうっ♡だなぁ♡♡んぁ♡さい、こうっ♡だぜっ♡♡」

  こうやって可愛く喘いでくれる先輩が本当に愛くるしい。あんなに間近でかっこいい姿の先輩を見たのに、今ではこんなにも淫らで狂った様を曝け出している。なんて罪な人なんだろうか。

  「はぁ、っはぁ、はぁ…ふぅ…」

  少し休憩がしたくなった僕は挿入したまま動きを止め、背中を丸めて先輩の腰あたりに顔を埋める。汗と先走りでぐしゃぐしゃになっていたにも関わらず、毛皮の触り心地はなぜか良かった。

  未だ上下を繰り返す逞しい腹筋を支えにして体を持ち上げると、ふと見えたその部分に目線が釘付けになる。

  「あれ?絆創膏、剥がれかけてますよ」

  初日に先輩の乳首に貼った大きな絆創膏が、半分剥がれ落ちていたのだ。

  「……んぁ?ああ、風呂入っても全然剥がれる気配しなかったけどな。流石に限界なんだろ」

  「あっ、そうだ先輩。動かないでくださいね」

  「え?お、おい、ちょっとなにして」

  先輩の訳が分からないという言葉も気にせずに近づき、絆創膏の近くにまで顔を寄せる。そしてもう一つの弱い部分を覆い隠していた薄い膜を舌でめくり、歯で挟んで固定した。

  「んひッ!?」

  そしてゆっくりと力を込め、ペリペリと残っていた粘着部分を離していく。淡いピンク色のそれが引っ張られ、大きく伸びては元の形に戻っていった。

  「はっ、くぁ…!………んあっ♡」

  最後に少しだけ残った部分を勢いよく引くと、先輩の声が裏返った。

  思った通りだ。

  「お、おま…」

  「動くと乳首噛んじゃいますから、じっとしててくださいね」

  「んなこと言っても…あ、そこは弱いって…知ってる、だろっ…!」

  だからこそだという僕の気持ちに気づいて欲しかったが、それぐらいは別に分かってもらえなくても大丈夫ではある。

  もう片方も同じようにして剥がすとさっきより体の震えが増し、予想以上に快感を得ていたように思えた。

  「だって今は僕が好きにしていいんですよね。もしかして…ホントは剥がしてくれるの待ってたんじゃないんですか?」

  その言葉で、みるみるうちに獅子獣人の顔が強張っていく。当てずっぽうで言ってみたから真相は僕にも分からないが、もしそうなら嬉しい。

  「まっ、待ってねーよ!俺がそんなこと…んひゃぃっ!?」

  言い切る前に問答無用でその膨らんだ小さな山を舐める。塩辛い汗の味がピリリと舌を刺激したが、同時に和やかな高揚感が身体中を隅々まで巡っていった。

  さらにそのままぺろぺろと舌を動かすと、抱きついていた先輩の体が反射的に反っては戻る。

  「あっ♡あっ♡あ♡んん♡♡やめ♡やめっ♡♡ああッ♡♡」

  「我慢してましたもんね。今日ぐらい、ぐっちゃぐちゃにしてあげますから」

  「へ?……ふごっ!?お゛っ、お゛ぃっ…急に、始めん……ひゃあぁッッ♡♡」

  その時、必死に押さえていた僕の何かが切れた。

  一旦起き上がって体勢を立て直し、下腹部の密着をさらに強くして奥深くへと挿入していく。次にそのまま先輩の大きな体前面に覆いかぶさって利き手で先輩の大きなチンポを鷲掴みにし、もう一方で先輩の指と絡ませる。

  そして残った最後の口でピンク色の丸い膨らみへと再び食らいついた。

  何回か行為をしたおかげで技術もおおかた向上し、突きながら手で他のことをするぐらいならば容易く行えるようになっていた。今回は口という新たな操作先が増えたが、そこは乱暴でもおそらく大丈夫だろう。

  「あ♡あ♡あぁあァッ♡そんなっ♡ぜんぶ♡♡やめ♡♡ひぐっ♡♡♡」

  当の本人は息もできないほどの愉悦に浸っていたようだ。言葉すら発することができずに、ただ空気みたいな喘ぎ声を漏らしているだけ。

  それは男根を突き刺すたびに発されており、もはや僕が出してあげていると言っても過言ではない。気がつけば僕の腹には熱い液体が降りかかっていて、先輩がイったことを悟る。

  「アんッ♡♡あ♡ひぃっ♡ぐ♡♡ふッ♡♡んぎっ♡♡がっ♡」

  ゴムの装着などしていない。しようとも思わない。

  そのおかげで先輩の直腸の熱と感触を存分に味わうことができた僕はもう…死んでしまってもいいぐらいに夢心地だった。

  先輩の肉棒はビュクビュクと何度も白濁を放出させては僕と先輩の体を汚していく。限度などなく、もはや無限に出るのかとも思える。

  「しゅんっ♡だぁっ♡♡ぎも゛ち゛っ♡ひん♡♡あ♡♡もっと♡♡もっとぉ♡♡♡」

  「分かってますよ先輩…!」

  「ん゛おぉ゛っ♡♡アッ♡♡あ♡そこぉ♡すんげぇ♡♡きもちッ♡い♡あひゃん♡♡」

  止まらない、止まらない、止まらない。

  ずっとこのまま先輩と繋がれたら嬉しいのに。でも有限である時間の中で交わり続けていることは頭の隅で考えていたし、気がつけば月明かりも消え始めていた。

  そろそろラストスパートか。続きは帰ってからになってしまうと残念な気持ちになるが、今この状況に溺れている先輩を見ているとそんなことどうでもよくなった。

  今は今で、楽しめばいいのだ。

  乳首を舐め回していた口を離し、閉じる気配のない先輩のマズルへガブリと噛み付くように口を重ねる。ねっとりとまとわりつく唾液がすぐに僕の口内を汚し、エサにありつく飢えた獣のように舌を絡ませられた。

  次いで2つの手は先輩の胸にある2つの楕円を再び掴み、くりくりと弄り始める。

  「ん゛ん♡♡♡ふッ♡♡んん゛ぅッ♡♡ぅ゛う゛っ♡んンぅ〜〜ッッ!!♡♡♡」

  完璧だ。そう直感した。

  ずこずこと突き刺す腰振りを忘れず、僕も必死で施しを続ける。先輩は今まで交わってきた中で一番と言えるほど震え、悶え、喘ぎ、悦んでいた。

  鍛え上げられた身体中の筋肉が痙攣している。フガフガと荒い鼻息が耳元に降りかかり、僕の興奮も限界を超えて高まっていく。熱帯夜のせいで溢れ出る汗は尋常ではなく、羽織っていた柔道着はきっと昼間と同じくらい…いやそれ以上に先輩の水分を吸っていたかもしれない。

  漂う精液の匂いと、先輩特有の体臭。体を洗ったボディーソープの香りなどはもう無く、雄臭さだけがこの場を満たしていた。

  先輩は僕のもので、僕は先輩のもの。昂る気持ちのまま、先輩に自らマーキングされにいくようにすりすりと体を擦り続ける。

  「せんぱ……でます…ッ!」

  「お゛う゛っ♡♡オメェのっ♡ザーメン♡♡やっとケツにっ♡くれんだな♡♡」

  「あげますから…!ちゃんと、受け取ってくださいっ…!」

  「おもいっきり♡♡ごいっ♡♡おれもっ♡あ゛ん♡♡だすぞぉっ♡♡」

  玉袋が熱を帯び、力がこもる。尿道から勢いよくせりあがったそれを留めるのはもう限界だった。

  「ん゛っ…!い、い゛ぐぅッッ…!」

  「おれもっ♡でるっ♡♡ひ♡っぐぅおぉ゛おオ゛ォっ♡♡♡♡♡」

  ぶるっと全身が震えた瞬間、ついにそれは鈴口から飛び出していった。噴射した勢いで自身の男根が暴れ狂い、先輩の直腸を押し拡げていく。

  どくどくと流れ出ていく白濁はナカを満たし、先輩よりも量が少ないから溢れてくることはなかった。その分しっかり栓をしていたために密閉されたその空間では、際限なく粘液が[[rb:揺蕩>たゆた]]っていたことだろう。

  「っはぁ、はぁ、はっ……せ、先輩…」

  「はあ♡はひっ♡はぁっ♡んはぁっ♡」

  口角を上げたまま、虚な目で宙を仰ぐ先輩。放心状態なのだろうか。

  そう思った瞬間に何故かむくむくと再び復活し始めていた自身の男根が、まだいけるだろうと僕の意思に反していた。

  それに抗えなかった僕は、ぬぽんと尻穴から勢いよく男根を抜く。

  「んぁんっ♡」

  ごぷごぷと白い粘液を垂れ流す魅惑の穴をずっと見ていたかったが、すぐに実行に移すことにした僕は先輩の胸元へ跨がってゆっくりと座る。

  僕の真下には涙と涎でぐちゃぐちゃになった獅子の顔。顎下にまで生えた立髪に玉袋を乗せて、成長を続ける男根をマズルに乗せる。

  分泌された先走りが先輩の鼻を濡らすと、匂いに反応したのかヒクヒクと微動していた。その光景はイったばかりの僕を興奮させるには充分すぎるものであった。

  「先輩…しゃぶって、くれますか?」

  「……ハァ、ハッ、ハッ、んむぁ…」

  がぱっと開いたその大口は、全てを飲み込んでしまいそうな穴だった。喉奥にあるぶら下がったものまで見えたそこに、だらだらと透明な液体を垂らす自身のチンポを挿入する。

  おそらく今の先輩はまともな思考すらないだろう。それでもざらざらしたその舌を這わせてくれたのは本能からなのか、今までのキスを思い出しているのかは分からない。

  「んうっ……先輩、動かしますよ…!」

  腰をぐいと前に突き出し、とろとろになった口内へと前進させていく。それは尻穴とは全く異なる空間で、いつもとは違う別次元の快感を提供してくれていた。

  生ぬるい唾液に包まれながら必死に舐め回すその舌は、まるで精を貪るためだけに生きる生物のようだ。的確に、そして連続的に気持ちいい場所を弄られていた。

  あまりの蕩け具合に力が抜けそうになるが、残りの体力を振り絞って動き続ける。次第に強く、そして速くなり、気がつけば先輩の頭を掴んでしまっていた。

  「んぶっ、ぶふ、んぁ、んむぅっ…」

  「は、はっ、はぁ、せんっ…ぱい…!」

  「むふぅっ♡あむッ…んん゛っむ♡うぶっ♡」

  激しい鼻息と[[rb:咽 > むせ]]ぶ声が響く。同時に、大量に生成されていた先輩の唾液と僕の先走りが見事なまでに融合し、抜き差しするたびに淫らな水音が奏でられる。

  ぢゅぽっ、じゃぽ、ちゅぷ、じゅるっ…

  まるで粘液を満たした小さな水槽のようだ。わずかに開いた口の隙間から音が漏れては消えていく。溢れ出す液体は先輩の鬣を通り越して柔道着の襟に飛び散り、匂いをどんどん上書きしていった。

  短めに伸びたネコ科のマズル。それは僕の男根を咥えるためだけに持っているのだと勘違いしてしまいそうになるほどピッタリと密閉されており、まさに第2の穴とも呼べる場所だろう。

  ああ…目の前で僕のモノをしゃぶっているのは、紛れもない百目鬼先輩なのである。誰からも恐れられ、誰も勝てない強さを誇る屈強な獅子獣人が今…美味しそうにチンポを頬張ってくれているのだ。

  こんなことをされた僕は高らかな優越感ともっとしてやりたいという[[rb:邪 > よこしま]]な思考に染まってしまいかけたが、すぐにそれは取り戻した理性によって抑制された。

  これから先もずっと、先輩と一緒にいたい。

  そんな彼への想いでいっぱいだったのだ。その想いが、かろうじて理性を繋ぎ止めてくれた。

  「あ、ああっ…もうっ……!」

  やがて訪れた限界によって歯を食いしばる。しっかりと自身の陰毛を先輩の鼻先に密着させると、体の痙攣が一段と激しくなった。

  獣人の鼻は僕の匂いを存分に嗅いでくれただろうか。覚えていてくれたら嬉しいと思いながら…僕は果てた。

  「うぅっ、い゛っ…いくッ……んぐっ…!」

  「んん゛ん゛ッう♡♡んむぅ〜っ♡んぅっ♡♡んぅっ♡♡」

  先輩の喉仏が激しく、そして絶え間なく動くのが見えずとも想像できた。少しの沈黙が流れた後、ごきゅっという唸り声にも似た音が響き渡る。

  飲んでくれた。美味しかっただろうか。

  しかし限界を超えて射精したせいか、体はもうボロボロだった。汗は滝のようにダラダラと垂れ、まるでサウナで激しく運動したかのような量が身体中から溢れ出している。

  「せんぱ……あぁぁっ、そんな、吸わないで…!」

  男根を抜こうとした時、じゅるるという音と共に引き止められる。鈴口の中に残った精液まで吸い取ろうとするその口に不意を突かれた僕は、完全に腰を抜かしてしまった。

  ビクつく体を腕で必死に支えてなんとか耐え、まだまだ物欲しそうに伸びる舌を無視して体を離していく。至福の糸は重力に従って下へと伸びては落ち、淡い桃色の薄っぺらな生物に最後の餌付けを完了した。

  「はぁ、はぁ、はぁっ…せっ、先輩…」

  「はぁっ、はっ、しゅんたっ……ありが、とな…」

  「……っ…」

  汗と涎と精液でめちゃくちゃになっているにも関わらず、満足げに口角を上げる獅子獣人であった。その目も声も、彼の何もかもが愛おしく感じた僕は深い安心感に包まれる。

  力の入らない体が先輩の胸板に沈んでいく。急激に眠気が襲いかかり、意識が遠くなる。

  ダメだ、起きないと。後始末をしないと…バレてしまう。

  しかし無理だった。体が言うことを聞かず、何かに押し潰されるような形で起き上がれない。

  「……最後まで面倒かけさせる奴だな。…ったくよ」

  膨らんだ胸筋を感じると同時に聞こえたのは、そんな言葉だった気がする。天に召されてしまうほどの悦楽を体感した僕の視界は既に暗く陰り始めていた。

  最後に感じたのは分厚い胸板に生えた毛皮の感触と、頭を撫でるゴツゴツした手のひら。だがそこに生えていた肉球が極上の睡眠導入剤となり、ゆっくりと瞼を閉じていくのだった。

  [newpage]

  翌日。午前10時、バス乗り場にて。

  「今年の合宿も、暑い中よく頑張ったぞお前たち!」

  ガンガンに響く大声を響かせる熊田先生の表情は晴れやかで、ずっと笑顔のままだ。円陣を組むように並んだ部員たちの顔も心なしか晴れやかに見える。

  もちろん僕の隣にはあの先輩がいるわけで。タンクトップにハーフパンツというなんとも目の保養になる格好をしており、抱きつきたくなる気持ちを抑えるのが大変だったけど…

  そして最後の挨拶を終えてそれぞれが我先にとバスに乗り込む時、僕は熊田先生に呼び止められた。

  「今回は本当に助かった。まさか本当に百目鬼の奴が来るとは思わなかったけどな。どうやって説得したんだ?」

  「いやぁ、はは…」

  なんとか適当な理由でやり過ごす。セックスするために連れてきたなんて死んでも言えない。

  「しかしまあ、アイツも不思議と前より強くなってる気がするんだよな。冗談抜きで逸材だよ」

  

  「じゃあ、もしできたら試合の時は頼んでみますね。了承してくれるかは保証できませんけど…」

  「おっ、本当か?ならダメ元でもいいからよろしく頼むな。今回の合宿で少しは楽しかったって思えれば、俺は嬉しいよ」

  そう呟く先生は、本当に先輩の事を思ってくれているんだなと改めて知った。この学校にも、少なからず悪く思っていない人がいる事に安心感を覚える僕であった。

  そして騒がしいバスの中へと場所は移る。もちろん僕は先輩の隣で、一番前の2人席。酔いやすい僕を気遣ってくれたのか、あえて前を選んでくれたのだと思う。

  あの後、僕は完全に気を失ってしまったらしい。先輩が全ての後始末を済ませ、道着を着たままの僕を部屋まで運んでくれたそうだ。

  清掃用具は持ってきていたけど、あれだけ放出された液体をどうやって1人で処理したのかが気になって仕方がない。しかし匂いに関しては柔道場のおかげでそこまで苦労はしなかったそうだ。

  さらには体洗いから着替え、おまけに道着も短い時間で手洗いしてくれたとのこと。完全に目が覚めてしまった先輩は、そのままの勢いで全てをこなすことができたと話していた。

  先輩の苦労に感謝の意を示しつつ窓際に座って微睡んでいた僕は、隣で腕を組んでいた先輩の腕に頭を寄せる。

  「……重い」

  「寝不足なんです。寝させて…ください…」

  毛皮から香る匂いに、昨日の記憶が突然脳裏に再現された。甘く激しい行為、先輩の蕩けそうな声。それは未だ、鮮明に残っている。

  どれも思い出すだけで股間に熱が溜まっていく。あんなに出してじんじんと痛む男根が、無理をしてでも屹立しようとしていた。

  でもそれは、再び頭頂部に乗せられた手のひらによってすぐに引いていく。さわさわと柔らかく撫でてくれる肉球は心地良く、僕はそれに身を委ねるようにして意識を閉じていった。

  こうして、無理矢理連れてきた先輩との合宿は終わりを迎えた。だがそこから数日も経たないうちに交尾を再開することになるのは、また別の話。